説明

エピタキシャル基板およびその製造方法、固体撮像素子およびその製造方法、電子情報機器

【課題】高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能とゲッタリング能力を向上できて、製造工程も複雑化しない。
【解決手段】シリコン基板1の表面側に、砒素(またはアンチモン)がイオン注入されて高濃度N型層3が形成され、この高濃度N型層3上にエピタキシャル層4がエピタキシャル成長して形成されている。これによって、砒素(As)の拡散係数がリン(P)に比べて小さいことから、従来手法によるリンドープ基板に比べて製造工程における熱処理による不純物拡散(プロファイル拡散)を大幅に抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル基板およびその製造方法、このエピタキシャル基板上に形成され、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された固体撮像素子およびその製造方法、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像光を画像信号として電気信号に変換する固体撮像素子としては、CCD型イメージセンサやCMOSイメージセンサなどが知られている。このうち、CCD型イメージセンサは、光照射により信号電荷を発生する複数の受光部(フォトダイオード)がマトリクス状に設けられた受光領域と、この受光領域の各受光部で発生した電荷を信号電荷として読み出して垂直電荷転送動作を行った後に水平電荷転送動作を行う転送領域とが共通基板上に設けられている。
【0003】
このような従来のCCD型イメージセンサでは、近年の画素の縮小化に伴って、受光領域の不要電荷を排出する縦型オーバーフロードレイン構造におけるシャッタ電圧上昇を抑制することが重要であり、特に、エピタキシャル基板のN型領域のプロファイルバラツキによるシャッタ電圧のバラツキが顕著になってきている。このN型領域には、一般的には不純物元素としてリンが広く用いられている。
【0004】
また、従来のCCD型イメージセンサでは、製造工程内の重金属汚染による白傷などの画質劣化を抑制するために、基板のゲッタリング能力が重要となっている。例えば、特許文献1ではリン、砒素などの不純物を固相拡散法により基板に導入する方法が開示されている。この固相拡散法とは、リン、砒素などの不純物をポリシリコン膜上に塗布して熱処理を行うことによりポリシリコン膜内部にリン、砒素などの不純物を拡散させる方法である。
【0005】
図6は、特許文献1に開示されている従来のCCD型イメージセンサを形成するために使用するエピタキシャル基板の要部縦断面図である。
【0006】
図6において、従来の固体撮像素子100では、半導体基板101の表面101aおよび裏面101bのうちの裏面101b側にゲッタリング用不純物を導入したポリシリコン膜を所定厚さだけ酸化させてポリシリコン膜の厚さを縮めてポリシリコン膜102としている。この酸化で形成される膜は酸化膜103となる。このような酸化工程により、ポリシリコン膜102の厚さが縮められれば酸化前にポリシリコン膜内に導入されたゲッタリング用不純物が酸化工程により厚さの縮められたポリシリコン膜102内にほとんど集まるので残留する不純物濃度は高くなる。
【0007】
この酸化膜103の表面には保護膜104が形成される。この保護膜104は、工程中に重金属およびその他の汚染物が半導体基板101の裏面101bに浸透することを防止する役割をする。また、保護膜104は、後続工程に際し、半導体基板101の裏面101bに導入された不純物が外方に拡散されることをも防止する役割をする。このような保護膜としては、例えばシリコン窒化膜(Si)、シリコン窒酸化膜(SiON)などがある。
【0008】
ゲッタリング用不純物が導入されたポリシリコン膜を形成するために、まず、不純物を含んでいない状態でポリシリコン膜(図示せず)を摂氏700度以下の温度で、例えば、化学気相蒸着(ChemicalVapor Deposition、以下、CVD)方式により形成する。
【0009】
次に、ポリシリコン膜にゲッタリング用不純物をシリコン固溶度程度に、望ましくは、1020〜1021/cmの濃度、より望ましくは、3×1020/cmないし5×1020/cmの濃度で導入する。このとき、ゲッタリング用不純物としてはリン(P)イオンのほかに砒素(As)イオンなどが使用でき、望ましくは、これらのゲッタリング用不純物はシリコン固溶度程度に導入する。また、ゲッタリング用不純物をポリシリコン膜に導入する方式としては、イオン打ち込み方式、ドーピング方式および拡散方式などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-329857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された従来の基板ゲッタリング形成方法においては、製造工程が複雑化し、ウエハ裏面への不純物導入のため、CCD特有の機能であるオーバーフロードレイン部を別工程で形成する必要がある。また、オーバーフロードレイン部をリンドープ層で形成すると、CCD製造熱処理工程での不純物拡散が大きく、オーバーフロードレイン電圧のバラツキが増大するという問題があった。
【0012】
特許文献1に記載された従来の基板ゲッタリング形成方法のようにウエハ裏面への不純物導入ではなく、ウエハ表面側に不純物のリンを導入して高濃度ゲッタリングサイトを形成した後に、その上に、リンを導入してN型領域としてのエピタキシャル層を低濃度で形成してオーバーフロードレイン構造とする方法がある。この場合にも、オーバーフロードレイン部をリンドープ層で形成すると、CCD製造熱処理工程での不純物拡散が大きく、オーバーフロードレイン電圧のバラツキが増大するという問題があった。
【0013】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能を向上させることができると共に、高濃度N型層によるゲッタリングサイトを表面側近くに設けることによりゲッタリング能力を向上することができて、製造工程も複雑化しないエピタキシャル基板およびその製造方法、このエピタキシャル基板を用いた固体撮像素子およびその製造方法、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のエピタキシャル基板は、半導体単結晶基板の表面側に、砒素またはアンチモンがイオン注入されて高濃度N型層が形成され、該高濃度N型層上にエピタキシャル層がエピタキシャル成長して形成されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0015】
また、好ましくは、本発明のエピタキシャル基板における高濃度N型層の厚さが0.5μm〜2.0μmである。
【0016】
さらに、好ましくは、本発明のエピタキシャル基板における高濃度N型層は、前記砒素または前記アンチモンのイオン注入ドーズ量が1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲で形成されている。
【0017】
さらに、好ましくは、本発明のエピタキシャル基板における半導体単結晶基板はN型基板であって前記高濃度N型層は該N型基板よりも不純物濃度が高濃度である。
【0018】
本発明のエピタキシャル基板の製造方法は、半導体単結晶基板に対して熱酸化膜を形成し、該熱酸化膜を保護膜として砒素またはアンチモンをドーズ量1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲でイオン注入した後に熱処理して高濃度N型層を形成し、該高濃度N型層上の該熱酸化膜を除去した後に該高濃度N型層上にエピタキシャル成長による低濃度エピタキシャル層を形成するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0019】
また、好ましくは、本発明のエピタキシャル基板の製造方法における砒素またはアンチモンがイオン注入されて熱処理された前記高濃度N型層の厚さが0.5μm〜2.0μmである。
【0020】
さらに、好ましくは、本発明のエピタキシャル基板の製造方法における高濃度N型層を、酸素雰囲気中で摂氏950度3時間の熱処理を行うことにより形成する。
【0021】
さらに、好ましくは、本発明のエピタキシャル基板の製造方法における低濃度エピタキシャル層の形成は、トリクロロシランをエピタキシャル成長装置に供給してエピタキシャル成長させてリンドープ膜とし、エピタキシャル成長温度が摂氏1100〜1150度の温度範囲で行われる。
【0022】
本発明の固体撮像素子は、本発明の上記エピタキシャル基板のエピタキシャル層に、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の受光部が2次元状に形成されているものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0023】
また、好ましくは、本発明の固体撮像素子における複数の受光部のうちの垂直方向の各配列に沿ってそれぞれ配置されて列方向の各受光部からの信号電荷をそれぞれ電荷転送する複数の垂直電荷転送部と、該複数の垂直電荷転送部の終端部に配置されて該複数の垂直電荷転送部からの信号電荷を水平方向に電荷転送する水平電荷転送部と、該水平電荷転送部の終端部に配置され該水平電荷転送部からの各信号電荷を電圧信号に変換して増幅出力する信号出力部とを有するCCD型固体撮像素子である。
【0024】
さらに、好ましくは、本発明の固体撮像素子において、複数の画素部のそれぞれに、前記受光部が設けられ、該受光部に隣接して、該受光部からの信号電荷を所定方向に電荷転送するための電荷転送部および、この上に、読み出された信号電荷を電荷転送制御するためのゲート電極およびその上の金属遮光膜が配置され、該金属遮光膜は該受光部の上方が開口部で開口されている。
【0025】
本発明の固体撮像素子の製造方法は、本発明の上記エピタキシャル基板の製造方法により製造されたエピタキシャル基板のエピタキシャル層に、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の受光部を2次元状に形成する工程を有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0026】
本発明の電子情報機器は、本発明の上記固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0027】
上記構成により、以下、本発明の作用を説明する。
【0028】
本発明においては、半導体単結晶基板の表面側に、砒素またはアンチモンがイオン注入されて高濃度N型層が形成され、高濃度N型層上にエピタキシャル層がエピタキシャル成長して形成されている。
【0029】
これによって、容易な製造方法によりオーバーフロードレイン機能及びゲッタリング能力を向上することができ、砒素の拡散係数が小さいことから従来手法によるリンドープ基板に比べて製造工程における熱処理による不純物拡散を抑制することが可能となる。このように、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能およびゲッタリング能力を向上することが可能となって、製造工程も複雑化しない。
【発明の効果】
【0030】
以上により、本発明によれば、容易な製造方法によりオーバーフロードレイン機能及びゲッタリング能力を向上することができ、砒素の拡散係数が小さいことから従来手法によるリンドープ基板に比べて製造工程における熱処理による不純物拡散を抑制することができる。このように、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能およびゲッタリング能力を向上することができて、製造工程も複雑化しない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1におけるエピタキシャル基板の要部縦断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、図1のエピタキシャル基板を製造する方法の一例を示した各工程フローを示す要部縦断面である。
【図3】(a)〜(c)は、電子に対するポテンシャルと基板深さ方向についての断面概念図である。
【図4】図1のエピタキシャル基板を用いた本発明の実施形態2におけるCCD型固体撮像素子の要部構成例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態3として、本発明の実施形態2の固体撮像素子10を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【図6】特許文献1に開示されている従来のCCD型イメージセンサを形成するために使用するエピタキシャル基板の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明のエピタキシャル基板およびその製造方法の実施形態1および、このエピタキシャル基板の実施形態1を用いたCCD型固体撮像素子およびその製造方法の実施形態2、このCCD型固体撮像素子の実施形態2を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばカメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の実施形態3について図面を参照しながら詳細に順次説明する。なお、各図における構成部材のそれぞれの厚みや長さなどは図面作成上の観点から、図示する構成に限定されるものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1におけるエピタキシャル基板の要部縦断面図である。
【0034】
図1において、本実施形態1のエピタキシャル基板5は、半導体単結晶基板としてのシリコン単結晶基板1(N型基板)の表面側に、不純物である砒素がイオン注入されて高濃度N型層3が形成され、高濃度N型層3上にエピタキシャル層4が形成されている。高濃度N型層3の厚さが0.5μm〜2.0μmである。また、高濃度N型層3は、砒素(またはアンチモン)のイオン注入ドーズ量が1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲である。シリコン単結晶基板1はN型基板であって高濃度N型層3はこのN型基板の不純物濃度よりも高濃度である。
【0035】
エピタキシャル基板5の製造方法としては、半導体単結晶基板としてのシリコン単結晶基板1(N型基板)に対して熱酸化膜2を形成し、この酸化膜2を保護膜として砒素またはアンチモンをドーズ量1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲でイオン注入した後に熱処理して高濃度N型層3を形成し、高濃度N型層3上の酸化膜2を除去した後に高濃度N型層3上にエピタキシャル成長による低濃度エピタキシャル層4を形成する。これによって、エピタキシャル基板5を製造する。よって、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能およびゲッタリング能力を共に向上させることができる。
【0036】
図2(a)〜図2(e)は、図1のエピタキシャル基板5を製造する方法の一例を示した各工程フローを示す要部縦断面である。
【0037】
まず、図2(a)に示すように、シリコン単結晶基板1(以下、シリコン基板1という)を準備し、このシリコン基板1の表面を熱酸化処理することにより、シリコン基板1の表面に酸化膜2を成長させる。基板裏面(またはウエハ裏面)、基板側面の図示はここでは省略している。このとき、シリコン基板1はN型元素を含む基板を準備するが、不純物N型元素としては、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)を用いることができ、ここではリン(P)を用いるものとする。この酸化膜2の厚さは200〜500オングストローム程度であるが、この膜厚に限定されるものではない。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、シリコン基板1に対して酸化膜2の上から、不純物N型元素のイオン注入を行う。この不純物N型元素としては、ここではリン(P)を用いずに、原子量のより大きく拡散し難いヒ素(As)およびアンチモン(Sb)のいずれかを用いるものとする。ここでは、ヒ素(As)を用いるものとする。このとき、砒素イオンのイオン注入ドーズ量は1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲にあり、例えば大電流イオン注入装置を用いてイオン注入処理を行う。
【0039】
続いて、図2(c)に示すように、砒素イオンのイオン注入後、イオン注入時の注入欠陥を回復するための熱処理を行って、シリコン基板1中に高濃度N型層3を形成する。このとき、砒素のシリコン中の拡散係数はリンのそれに比べて遥かに小さいため(リンの拡散が例えば1μmのときに砒素の拡散は0.5μmで約半分)、欠陥回復に十分な高温熱処理を行うことが可能である。例えば酸素雰囲気中で摂氏950度3時間の熱処理を行う。これにより、高濃度N型層3をシリコン基板1の表面側で酸化膜2下に形成することができ、また、高濃度N型層3の高濃度層は高ゲッタリング能力を有することができる。このため、製造プロセス中に導入される金属汚染物のゲッタリングによる後述するCCD型固体撮像素子10の暗時白傷などの金属汚染に起因する不具合の特性改善、歩留り向上を図ることができる。この後述するCCD型固体撮像素子10において、高濃度N型層3に電圧を印加してオーバーフロードレイン動作を行うので、高濃度N型層3の厚さが厚くなるとオーバーフロードレイン動作がしにくくなるので、0.5〜2.0μmとする。
【0040】
この熱処理後に、図2(d)に示すように、エピタキシャル成長前に、シリコン基板1表面の酸化膜2をフッ酸洗浄により除去する。このとき、フッ酸洗浄時間としては酸化膜2を除去するのに充分な浸液時間での処理を行えばよい。
【0041】
その後、図2(e)に示すように、露出した高濃度N型層3上にエピタキシャル層4を、枚葉式のエピタキシャル成長装置により4.0〜7.0μmの膜厚にエピタキシャル成長させてエピタキシャル基板5を製造する。このエピタキシャル基板5が固体撮像素子用途の場合には、エピタキシャル層4はN型領域である必要があるため、トリクロロシランをエピタキシャル成長装置に供給してリンドープ膜とする。エピタキシャル成長温度は摂氏1100〜1150度の温度帯で行われる。これによって、高濃度N型層3を高濃度エピタキシャル層とし、エピタキシャル層4を低濃度エピタキシャル層としてオーバーフロードレイン構造とすることができる。したがって、高濃度N型層3の高濃度エピタキシャル層は原子量の大きい砒素イオン(またはアンチモン)が注入されているので拡散しにくく、しかも製造コストも安価に済む。
【0042】
このようにして形成されたエピタキシャル基板5は、上記のように高ゲッタリング能力を有すると同時に、後述するCCD型固体撮像素子10のオーバーフロードレイン機能に対するマージンを確保できるように作用する。次の実施形態2で詳細に説明するが、エピタキシャル層4の表面側に複数のフォトダイオード部(複数の受光部)が形成されてCCD型固体撮像素子10を形成することができる。
【0043】
後述するCCD型固体撮像素子10のオーバーフロードレイン機能、即ちシャッター電圧について図3を用いて簡略に説明する。
【0044】
図3(a)〜図3(c)は、電子に対するポテンシャルと基板深さ方向についての断面概念図である。
【0045】
エピタキシャル層4に複数のフォトダイオード部(複数の受光部)が2次元状に形成されており、まず、図3(a)に示すように、光入射により各フォトダイオード部(受光部)で光電変換された電子はフォトダイオード部とN型基板間のポテンシャル障壁の存在により、フォトダイオード部に蓄積される。
【0046】
次に、図3(b)に示すように、蓄積された電荷は画素信号としてCCDに排出された後、N型基板に正電圧を印加してポテンシャル障壁を低下させて、余分な電荷をN型基板側に排出する。
【0047】
このとき、図3(c)に示すように、本実施形態1のエピタキシャル基板5を使用すると、従来のエピタキシャル基板を使用する場合と比較して、砒素の拡散係数が小さいためにN型基板側のポテンシャル障壁幅が、リンを使用した際のポテンシャル障壁の幅よりも小さくなることから、N型基板側の印加電圧に対するポテンシャル障壁を容易に低下させることができて、シャッター電圧を低下させることができる。即ち、より低い印加電圧でオーバーフロードレイン動作を行うことが可能となって、シャッター電圧を低下させることができ、容易に画素設計および製造マージンを確保することができる。
【0048】
このようにして準備されたエピタキシャル基板5上に、詳細は次の実施形態2で後述するが、必要な製造工程を経てCCD固体撮像素子10が形成される。
【0049】
以上により、本実施形態1によれば、シリコン基板1の表面側に、砒素(またはアンチモン)がイオン注入されて高濃度N型層3が形成され、この高濃度N型層3上にエピタキシャル層4がエピタキシャル成長して形成されている。
【0050】
これによって、砒素(As)の拡散係数がリン(P)に比べて小さいことから、従来手法によるリンドープ基板に比べて製造工程における熱処理による不純物拡散(プロファイル拡散)を大幅に抑制することができて、オーバーフロードレイン電圧のバラツキを抑えることができる。したがって、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能を向上させることができると共に、高濃度N型層によるゲッタリングサイトを表面側近くに設けることによりゲッタリング能力を向上することができて、製造工程も複雑化しない。
【0051】
(実施形態2)
上記実施形態1では、不純物拡散(プロファイル拡散)を大幅に抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能およびゲッタリング能力を向上させたエピタキシャル基板5およびその製造方法について説明したが、本実施形態2では、エピタキシャル基板5およびその製造方法の実施形態1をCCD型固体撮像素子およびその製造方法に適用した場合について説明する。
【0052】
図4は、図1のエピタキシャル基板5を用いた本発明の実施形態2におけるCCD型固体撮像素子の要部構成例を示す縦断面図である。
【0053】
図4において、本実施形態2のCCD型固体撮像装置10は、エピタキシャル基板5のエピタキシャル層4に、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の受光部(フォトダイオード部13)が2次元状でマトリクス状に形成されている。
【0054】
即ち、本実施形態2のCCD型固体撮像装置10において、画素分離用のストッパ層11間の各画素部12にはそれぞれ、受光素子として入射光を光電変換して信号電荷を生成するフォトダイオード部13が設けられ、各フォトダイオード13に隣接してフォトダイオード部13からの信号電荷を電荷転送するための電荷転送部14およびこの上にゲート絶縁膜15を介して、これを電荷転送制御するための電荷転送電極としてのゲート電極16が配置されている。このゲート電極16上には、絶縁膜17を介して、入射光がゲート電極16により反射してノイズが発生するのを防ぐために遮光膜18が形成されている。また、フォトダイオード部13の上方には、遮光膜18の開口部18aから層間絶縁膜19、20を介して、各フォトダイオード部13に対応するように所定色配列の各カラーフィルタ21が配置されている。各カラーフィルタ21上には、各フォトダイオード部13および各カラーフィルタ21にそれぞれ対応するように、平坦化膜22を介して、光を集光させるためのマイクロレンズ23が配置されている。
複数の画素部のそれぞれに、
要するに、CCD型固体撮像装置10は、各画素部12毎に、各フォトダイオード部13が設けられ、各フォトダイオード部13に隣接して、各フォトダイオード部13からの信号電荷を所定方向に電荷転送するための電荷転送部14および、この上に、読み出された信号電荷を電荷転送制御するためのゲート電極16およびその上の金属(アルミニウムまたはタングステン)の遮光膜18が配置され、遮光膜18は各フォトダイオード部13の上方が開口部18aで開口されている。
【0055】
また、CCD型固体撮像装置10は、複数の各フォトダイオード部13のうちの垂直方向の各配列に沿ってそれぞれ配置されて列方向の各受光部からの信号電荷をそれぞれ電荷転送する複数の垂直電荷転送部(電荷転送部14)と、この複数の垂直電荷転送部(電荷転送部14)の終端部に配置されて複数の垂直電荷転送部(電荷転送部14)からの信号電荷を水平方向に電荷転送する水平電荷転送部(図示せず)と、水平電荷転送部の終端部に配置され水平電荷転送部からの各信号電荷を電圧信号に変換して増幅出力する信号出力部(図示せず)とを有している。
【0056】
上記構成により、複数の画素部12が2次元状に配置された撮像領域に入射した光は、まず、マイクロレンズ23により集光されて遮光膜18の開口部18aからフォトダイオード部13に入射される。
【0057】
次に、フォトダイオード部13に入射された光は、フォトダイオード部13で光電変換されて信号電荷となる。この信号電荷は電荷転送部14に読み出されて所定方向(垂直方向)に順次電荷転送される。垂直方向に順次電荷転送された各信号電荷は水平方向に電荷転送された後に電圧に変換され、その変換電圧に応じて撮像信号として増幅されて出力される。
【0058】
以上により、本実施形態2によれば、上記実施形態1のエピタキシャル基板5を用いたCCD型固体撮像装置10において、砒素(As)の拡散係数がリン(P)に比べて大幅に小さいことから、従来手法によるリンドープ基板に比べて製造工程における熱処理による不純物拡散(プロファイル拡散)を大幅に抑制することができて、オーバーフロードレイン電圧のバラツキを抑えることができる。したがって、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能を向上させることができると共に、高濃度N型層によるゲッタリングサイトを表面側近くに設けることによりゲッタリング能力を向上することができて、製造工程も複雑化しない。
【0059】
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3として、本発明の実施形態2の固体撮像素子10を撮像部に用いた電子情報機器の概略構成例を示すブロック図である。
【0060】
図5において、本実施形態3の電子情報機器90は、上記実施形態2の固体撮像素子10からの撮像信号を所定の信号処理をしてカラー画像信号を得る固体撮像装置91と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を記録用に所定の信号処理した後にデータ記録可能とする記録メディアなどのメモリ部92と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示可能とする液晶表示装置などの表示部93と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を通信用に所定の信号処理をした後に通信処理可能とする送受信装置などの通信部94と、この固体撮像装置91からのカラー画像信号を印刷用に所定の印刷信号処理をした後に印刷処理可能とするプリンタなどの画像出力部95とを有している。なお、この電子情報機器90として、これに限らず、固体撮像装置91の他に、メモリ部92と、表示部93と、通信部94と、プリンタなどの画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有していてもよい。
【0061】
この電子情報機器90としては、前述したように例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラ、ドアホンカメラ、車載用後方監視カメラなどの車載用カメラおよびテレビジョン電話用カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、カメラ付き携帯電話装置および携帯端末装置(PDA)などの画像入力デバイスを有した電子機器が考えられる。
【0062】
したがって、本実施形態3によれば、この固体撮像装置91からのカラー画像信号に基づいて、これを表示画面上に良好に表示したり、これを紙面にて画像出力手段95により良好にプリントアウト(印刷)したり、これを通信データとして有線または無線にて良好に通信したり、これをメモリ部92に所定のデータ圧縮処理を行って良好に記憶したり、各種データ処理を良好に行うことができる。
【0063】
なお、本実施形態1では、特に詳細には説明しなかったが、シリコン基板1の表面側に、砒素(またはアンチモ)がイオン注入されて、シリコン基板1のN型濃度よりも高い高濃度N型層3が形成され、高濃度N型層3上にエピタキシャル層4がエピタキシャル成長して形成されており、これによって、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能を向上させることができると共に、高濃度N型層によるゲッタリングサイトを表面側近くに設けることによりゲッタリング能力を向上することができて、製造工程も複雑化しないという本発明の目的を達成することができる。
【0064】
以上のように、本発明の好ましい実施形態1〜3を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態1〜3に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態1〜3の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、エピタキシャル基板およびその製造方法、このエピタキシャル基板上に形成され、被写体からの画像光を光電変換して撮像する半導体素子で構成された固体撮像素子およびその製造方法、この固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた例えばデジタルビデオカメラおよびデジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、監視カメラなどの画像入力カメラ、スキャナ装置、ファクシミリ装置、テレビジョン電話装置、カメラ付き携帯電話装置などの電子情報機器の分野において、高温熱処理による不純物拡散を抑制することにより、基板性能に要求されるオーバーフロードレイン機能を向上させることができると共に、高濃度N型層によるゲッタリングサイトを表面側近くに設けることによりゲッタリング能力を向上することができて、製造工程も複雑化しない。
【符号の説明】
【0066】
1 シリコン単結晶基板
2 酸化膜
3 高濃度N型領域
4 エピタキシャル層
5 エピタキシャル基板
10 CCD型固体撮像素子
11 ストッパ層
12 画素部
13 フォトダイオード部
14 電荷転送部(垂直電荷転送部)
15 ゲート絶縁膜
16 ゲート電極
17 絶縁膜
18 遮光膜
18a 開口部
19、20 層間絶縁膜
21 カラーフィルタ
22 平坦化膜
23 マイクロレンズ
90 電子情報機器
91 固体撮像装置
92 メモリ部
93 表示部
94 通信部
95 画像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体単結晶基板の表面側に、砒素またはアンチモンがイオン注入されて高濃度N型層が形成され、該高濃度N型層上にエピタキシャル層がエピタキシャル成長して形成されているエピタキシャル基板。
【請求項2】
前記高濃度N型層の厚さが0.5μm〜2.0μmである請求項1に記載のエピタキシャル基板。
【請求項3】
前記高濃度N型層は、前記砒素または前記アンチモンのイオン注入ドーズ量が1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲で形成されている請求項1に記載のエピタキシャル基板。
【請求項4】
前記半導体単結晶基板はN型基板であって前記高濃度N型層は該N型基板よりも不純物濃度が高濃度である請求項1に記載のエピタキシャル基板。
【請求項5】
半導体単結晶基板に対して熱酸化膜を形成し、該熱酸化膜を保護膜として砒素またはアンチモンをドーズ量1×1013〜1×1016atoms/cm2の範囲でイオン注入した後に熱処理して高濃度N型層を形成し、該高濃度N型層上の該熱酸化膜を除去した後に該高濃度N型層上にエピタキシャル成長による低濃度エピタキシャル層を形成するエピタキシャル基板の製造方法。
【請求項6】
前記砒素またはアンチモンがイオン注入されて熱処理された前記高濃度N型層の厚さが0.5μm〜2.0μmである請求項5に記載のエピタキシャル基板の製造方法。
【請求項7】
前記高濃度N型層を、酸素雰囲気中で摂氏950度3時間の熱処理を行うことにより形成する請求項5に記載のエピタキシャル基板の製造方法。
【請求項8】
前記低濃度エピタキシャル層の形成は、トリクロロシランをエピタキシャル成長装置に供給してエピタキシャル成長させてリンドープ膜とし、エピタキシャル成長温度が摂氏1100〜1150度の温度範囲で行われる請求項5に記載のエピタキシャル基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のエピタキシャル基板のエピタキシャル層に、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の受光部が2次元状に形成されている固体撮像素子。
【請求項10】
前記複数の受光部のうちの垂直方向の各配列に沿ってそれぞれ配置されて列方向の各受光部からの信号電荷をそれぞれ電荷転送する複数の垂直電荷転送部と、該複数の垂直電荷転送部の終端部に配置されて該複数の垂直電荷転送部からの信号電荷を水平方向に電荷転送する水平電荷転送部と、該水平電荷転送部の終端部に配置され該水平電荷転送部からの各信号電荷を電圧信号に変換して増幅出力する信号出力部とを有するCCD型固体撮像素子である請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項11】
複数の画素部のそれぞれに、
前記受光部が設けられ、該受光部に隣接して、該受光部からの信号電荷を所定方向に電荷転送するための電荷転送部および、この上に、読み出された信号電荷を電荷転送制御するためのゲート電極およびその上の金属遮光膜が配置され、該金属遮光膜は該受光部の上方が開口部で開口されている請求項9に記載の固体撮像素子。
【請求項12】
請求項5〜8のいずれかに記載のエピタキシャル基板の製造方法により製造されたエピタキシャル基板のエピタキシャル層に、被写体からの画像光を光電変換して撮像する複数の受光部を2次元状に形成する工程を有する固体撮像素子の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれかに記載の固体撮像素子を画像入力デバイスとして撮像部に用いた電子情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−204674(P2012−204674A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68802(P2011−68802)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】