説明

エピタキシャル成長装置及びエピタキシャル成長装置の製造方法

【課題】基板にエピタキシャル成長させる際に、供給される原料ガスの基板面内でのガス流速ムラを効果的に抑制でき、高品質のエピタキシャル層を形成できるエピタキシャル成長装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガス供給手段が、ガス供給源に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路と、垂直ガス流路の下流の端部に接続され、垂直ガス流路からのガスを水平方向に噴き出してサセプタ上に載置された基板にガスを供給する水平ガス流路とを有し、垂直ガス流路が、下流に向かって複数の流路に分岐していくツリー状の流路であるエピタキシャル成長装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に単結晶薄膜をエピタキシャル成長させるエピタキシャル成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体基板上に薄膜をエピタキシャル成長させる工程がある。このような、エピタキシャル成長に用いる従来のエピタキシャル成長装置の概略図を図5に示す。図5に示すエピタキシャル成長装置104を用いたエピタキシャル成長工程では、外気を遮断したチャンバー101内で、ガス供給手段102によりサセプタ109に載置された基板W上にガス供給源106からの反応性ガス105を供給し、供給された原料ガス105により基板W上で気相反応を起こさせて薄膜をエピタキシャル成長させ、その後、原料ガス105はガス排出手段103によりチャンバー101外へ排出される。
【0003】
このような装置を用いたエピタキシャル成長は、半導体装置の製造プロセスにおいて、バイポーラ素子の耐圧などを高めるために用いられており、素子においてもメガビットのメモリを製作する場合、α線によるソフトエラーやラッチアップを防ぐために必要な技術になっている。
【0004】
このような、エピタキシャル成長装置を用いて、例えばエピタキシャルウェーハを作製する際に、エピタキシャル層を平滑に堆積させるには、基板表面上での原料ガスの速度ムラを低減することが肝要である。しかしながら、基板の直径は現在300mmまで拡大し、枚葉式で処理されているため、広範囲で速度ムラのない流れを形成することは非常に困難である。その為、エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層の厚み分布は、原料ガスの流れに応じた凹凸が形成されることがしばしばである。
【0005】
このような問題に対して、図5に示すような装置104において、ガス供給手段102を、水平方向に向かって複数に分岐していくツリー状のガス流路にした装置がある。図6に、水平方向にガスが流れるツリー状のガス流路を有するガス供給手段102の上面からの概略図を示す。このような装置であれば、一つのガス供給源につながった複数のガス噴き出し口から噴き出すガス105の流量が同じであるため、供給するガス105の基板W面内での流速分布を均一にするのが容易で、エピタキシャル層の厚み分布が改善される。
【0006】
このようなガス供給手段を有する装置として、例えば特許文献1に示すように、帯片にガス流路となる溝を形成して重ね合わせ、ボルト等により結合した積層体のガス供給手段を有する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−516084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これらのような、水平方向に分岐しながら流れるツリー状のガス流路を有するガス供給手段でも、基板上でのガス流速のムラを十分には抑制できず、エピタキシャル層の厚み分布の十分な改善はできなかった。
また、このようなツリー状の複雑なガス流路を作製する際の問題点として、ガス流路の内表面を電解研磨した場合、研磨ムラが生じてしまい、このようなガス流路にガスを流すと研磨が十分でない部分からの発塵によって、成長されるエピタキシャル層表面にパーティクル等が発生してしまうという問題があった。また、特許文献1のような装置では、電解研磨を良好に実施できたとしても、ボルトやクランプによる帯板の接合を行うため、温度変化に弱く、さらにはガス流路に隙間が生じやすく、空気等の混入による汚染や発塵の問題が生じることがあった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、基板にエピタキシャル成長させる際に、供給される原料ガスの基板面内でのガス流速ムラを効果的に抑制でき、高品質のエピタキシャル層を形成できるエピタキシャル成長装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも、エピタキシャル成長させる基板を載置するサセプタが内部に設置されるチャンバーと、該チャンバー内の前記サセプタ上に載置された基板にガス供給源からのガスを供給するガス供給手段と、前記供給されたガスを前記チャンバー外に排出するガス排出手段とを有するエピタキシャル成長装置であって、前記ガス供給手段が、少なくとも、前記ガス供給源に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路と、該垂直ガス流路の下流の端部に接続され、前記垂直ガス流路からのガスを水平方向に噴き出して前記サセプタ上に載置された基板にガスを供給する水平ガス流路とを有し、前記垂直ガス流路が、下流に向かって複数の流路に分岐していくツリー状の流路であることを特徴とするエピタキシャル成長装置を提供する。
【0011】
このように、ツリー状の垂直ガス流路であれば、ガス供給源からのガスをそれぞれ分岐した流路に均一に流すことが容易である。そして、エピタキシャル成長装置のガス供給手段が、ガス供給源に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路と、垂直ガス流路の下流の端部に接続され、垂直ガス流路からのガスを水平方向に噴き出してサセプタ上に載置された基板にガスを供給する水平ガス流路とを有するものであれば、垂直方向に流れてきたガスが水平ガス流路との接続部に当たることで、一度分散したガスの流れがガスの噴き出し口に向かって一定に揃えられて、その後水平方向に噴き出されるため、基板面内でのガス流速ムラを抑制でき、均一にガスを流すことができる装置となる。また、ツリー状のガス流路を垂直に配置して、垂直ガス流路とすることで、装置幅を大きくしなくてもガス流路を十分な数に分岐させたものとすることができる。
【0012】
このとき、前記垂直ガス流路が、上方から下方へガスが流れるものであることが好ましい。
このように、垂直ガス流路が、上方から下方へガスが流れるものであれば、処理される基板面内でのガス流速分布をより均一にできる。
【0013】
このとき、前記水平ガス流路と前記垂直ガス流路の下流の端部との接続部の外コーナー面が、R形状であることが好ましい。
このような、水平ガス流路と垂直ガス流路の下流の端部との接続部の外コーナー面がR形状であれば、流れてきたガスが外コーナー面に当たって逆流することが抑制され、ガスをより均一な流れで噴き出すことができる装置となる。
【0014】
このとき、前記ガス供給手段が、前記ツリー状の垂直ガス流路を並列に複数有するものであることが好ましい。
このような、ガス供給手段が、ツリー状の垂直ガス流路を並列に複数有するものであれば、2種類以上のガスを効率的に均一に流すことができる装置となる。
【0015】
このとき、前記垂直ガス流路及び/又は前記水平ガス流路の内表面が、電解研磨されたものであることが好ましい。
このような、垂直ガス流路及び/又は水平ガス流路の内表面が、電解研磨されたものであれば、ガス流路からの発塵を防止して、パーティクルの無い良好なエピタキシャル層を形成できる装置となる。
【0016】
このとき、前記ガス供給手段は、拡散接合されたものであることが好ましい。
このような、ガス供給手段が、拡散接合されたものであれば、ガスの漏れがなく、また、空気の混入等による汚染やパーティクル発生が防止されたエピタキシャル成長を実施できる装置となる。
【0017】
また、本発明は、少なくとも、エピタキシャル成長させる基板を載置するサセプタが内部に設置されるチャンバーと、該チャンバー内の前記サセプタ上に載置された基板にガス供給源からのガスを供給するガス供給手段と、前記供給されたガスを前記チャンバー外に排出するガス排出手段とを有するエピタキシャル成長装置を製造する方法であって、少なくとも、帯板に、ガス流路となる溝及び/又は穴を形成する工程と、前記溝及び/又は穴を形成した帯板の表面を電解研磨する工程と、前記電解研磨した帯板を他の帯板と重ね合わせて拡散接合を行うことにより前記帯板同士を接合してガス流路を形成する工程とを含み、少なくとも、前記ガス供給源に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路と、該垂直ガス流路の下流の端部に接続され、前記垂直ガス流路からのガスを水平方向に噴き出して前記サセプタ上に載置された基板にガスを供給する水平ガス流路とを有し、前記垂直ガス流路が、下流に向かって複数の流路に分岐していくツリー状の流路である前記ガス供給手段を製造することを特徴とするエピタキシャル成長装置の製造方法を提供する。
【0018】
このような、帯板にガス流路となる溝及び/又は穴を形成して、それを電解研磨することで、研磨ムラの無い良好な研磨を行うことができる。そして、電解研磨した帯板と他の帯板を重ね合わせて拡散接合してガス流路を形成することで、ガス漏れや空気混入等の無いガス流路を作製することができる。このような工程でガス供給手段を製造することで、ツリー状の複雑な形状のガス流路であっても、内表面が良好に電解研磨され、かつ空気混入等の無いガス流路とすることができる。これにより、ツリー状の垂直ガス流路と水平ガス流路により処理する基板に面内均一で、空気混入等の無いガスを流すことができ、膜厚均一で汚染やパーティクルの低減されたエピタキシャル層を形成できるエピタキシャル成長装置を確実に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明のエピタキシャル成長装置及び本発明のエピタキシャル成長装置の製造方法により製造された装置によれば、エピタキシャル成長させる基板に面内均一なガス流速分布でガスを流すことができ、膜厚均一で高品質のエピタキシャル層を形成することができる装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のエピタキシャル成長装置の実施態様の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のエピタキシャル成長装置のガス供給手段の断面形状の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のエピタキシャル成長装置の製造方法の実施態様の一例を説明するフロー図である。
【図4】本発明のエピタキシャル成長装置のガス供給手段のガス流路を部分的に示す概略図である。
【図5】従来のエピタキシャル成長装置の一例を示す概略図である。
【図6】従来のエピタキシャル成長装置のガス供給手段のガス流路の一例を示す概略上面図である。
【図7】本発明のエピタキシャル成長装置のガス供給手段の一例を分割して部分的に示す分割図である。
【図8】本発明のエピタキシャル成長装置のガス供給手段の他の一例を分割して部分的に示す分割図である。
【図9】実施例、比較例において成長させたエピタキシャル層のパーティクル数を示すグラフである。
【図10】実施例、比較例において成長させたエピタキシャル層の膜厚分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明のエピタキシャル成長装置の実施態様の一例を示す概略図である。図2は、本発明のエピタキシャル成長装置のガス供給手段の断面形状の例を示す概略断面図である。図4は、本発明のエピタキシャル成長装置のガス供給手段において、ガス流路を実線で、その他の部分を破線で示す概略図である。
【0022】
まず、図1に示す本発明のエピタキシャル成長装置14は、エピタキシャル成長させる基板Wを載置するサセプタ19が内部に設置されるチャンバー11と、チャンバー11内のサセプタ19上に載置された基板Wにガス供給源16からのガス15を供給するガス供給手段12と、供給されたガス15をチャンバー11外に排出するガス排出手段13とを有する。
【0023】
この他、本発明のエピタキシャル成長装置14は、サセプタ19を回転させるためのサセプタ回転機構23や、基板Wを加熱するためのランプ加熱装置(図示せず)等を適宜具備するものでもよい。
このサセプタ回転機構23は、サセプタ19を回転させることにより基板Wを回転させ、エピタキシャル成長が基板面内において均一に行われるようにするためのものである。
【0024】
そして、本発明のガス供給手段12は、図1、2、4に示すように、ガス供給源16に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路18と、垂直ガス流路18の下流の端部に接続され、垂直ガス流路18からのガス15を水平方向に噴き出してサセプタ19上に載置された基板Wにガス15を供給する水平ガス流路17とを有し、垂直ガス流路18は、図4に示すような、下流に向かって複数の流路に分岐していくツリー状の流路である。
【0025】
このような、垂直ガス流路18がツリー状の流路であれば、容易なガス流量制御により基板面内で均一にガス15を流すことができる。そして、垂直ガス流路18内を垂直方向に流れてきたガス15が水平ガス流路に流れ込む際に外コーナー面に当たることで、噴き出し口に向かってガスのバラツキが抑えられ、より均一な流れとなる。これにより、ガス15が水平に均一に噴き出されるため、処理される基板Wの面内でのガス流速ムラを抑制でき、膜厚を均一にエピタキシャル成長させることができる装置となる。また、ツリー状の流路を垂直方向に流れる垂直ガス流路18とすることで、流路を多数に分岐させても、分岐させるための装置幅を大きくする必要がない。従って、スペース上有利である。
【0026】
このとき、垂直ガス流路18のガスが流れる方向としては、垂直方向であればよく、上方から下方あるいは下方から上方いずれでも特に限定されないが、図1、2、4に示すような上方から下方へガスが流れるものであることが好ましい。
このような、垂直ガス流路18内を上方から下方へ流れ、水平ガス流路17の下面に当たって水平方向に流れるL字型流路とすることで、下方から上方へ流れる逆L字型の流路に比べて、噴き出されるガス15の基板面内でのガス流速分布がより均一な装置となる。
【0027】
また、図1、2に示すように、水平ガス流路17と垂直ガス流路18の下流の端部との接続部の外コーナー面がR形状であれば、外コーナー面に当たったガスの逆流巻き込みを防止でき、ガスの流れをスムーズに水平方向に変えることができるため、より最適な流れを実現できる装置となる。
【0028】
また、図2(b)、(c)に示すように、ガス供給手段12が、ツリー状の垂直ガス流路18を並列に複数有するものであることが好ましい。図2(b)は、垂直ガス流路18の途中でガス1とガス2が混合されて水平ガス流路17に流れ出るもので、図2(c)は、ガス1とガス2が別の垂直ガス流路18内を流れて、水平ガス流路17内で初めて混合されるものである。
このような装置14であれば、2種類以上のガスや濃度の異なるガスを複数の垂直ガス流路18内にそれぞれ流して均一に混合することができ、様々なミキシングが可能となる。
【0029】
また、垂直ガス流路18及び/又は水平ガス流路17の内表面が、電解研磨されたものであることが好ましい。
電解研磨されたものであれば、内部をガス15が流れても発塵が無く、成長させるエピタキシャル層へのパーティクルの発生を防止できる。
【0030】
また、ガス供給手段12は、拡散接合されたものであることが好ましい。
このように、拡散接合であれば、隙間なく、温度変化に強い接合が可能であるため、本発明の複雑な形状のガス流路を有するガス供給手段12を作製する際に用いるのに好適である。
【0031】
この本発明の装置14において、水平ガス流路17は特に限定されず、垂直ガス流路18の各流路の位置に合わせたスリット等が形成されていてもよいし、図4に示すような、スリット等が無く、流路が分かれていないものでもよい。
【0032】
このような本発明のエピタキシャル成長装置を製造する方法として、以下、本発明のエピタキシャル成長装置の製造方法により製造する方法を説明する。
図3は、本発明のエピタキシャル成長装置の製造方法の実施態様の一例を概略正面図と概略断面図で説明するフロー図である。
【0033】
まず、本発明の製造方法において、図3(a)、(b)に示すように、帯板22a、22bにガス流路となる溝及び/又は穴20、21を形成する。例えば、図3(a)に示す帯板22aには、垂直ガス流路18となる溝20を正面図に示すようなツリー状に形成し、図3(b)に示す帯板22bには垂直ガス流路18となる溝20を帯板22aと同様に形成し、さらに水平ガス流路17となる穴21を形成する。溝及び/又は穴20、21の形成方法としては、例えば、エンドミルによる切削加工を行うことで形成することができる。
このとき、図3(a)、(b)では、帯板22a、22bの両方に溝及び/又は穴20、21を形成しているが、一方の帯板のみに形成することもできる。
【0034】
次に、帯板22a、22bの表面を電解研磨する。電解研磨の方法としては、特に限定されず、例えば、電解溶液中で研磨する帯板をプラスに接続して電気を流すことにより、表面の微小凸部が優先的に溶解されて光輝面が得られる。
このように、本発明の製造方法であれば、溝及び/又は穴20、21を形成した帯板22a、22bを電解研磨するため、管状の流路を電解研磨するよりも研磨ムラが生じにくく、ガスを流しても発塵の無い内表面を有するガス流路とすることができる。
【0035】
次に、図3(c)に示すように、帯板22a、22bを重ね合わせて、拡散接合を行うことにより帯板22a、22b同士を接合して垂直ガス流路18と水平ガス流路17を形成する。
拡散接合の方法としては、特に限定されず、例えば重ね合わせた帯板22a、22bを真空状態で、プレスしながら高温、高圧下で帯板22a、22b間の原子移動で接合する。このような拡散接合により帯板22a、22bを接合することにより、隙間が無く、温度変化にも強い接合が可能であるため、形成されたガス流路にガスを流しても空気の混入等による汚染やパーティクルの発生の無いエピタキシャル成長を実施可能な装置を製造できる。
【0036】
その後、図3(d)に示すように、水平ガス流路17を貫通させてガスの噴き出し口を形成して、図3(e)に示すように、最終的な面加工を施したり、ガス供給源16からのパイプを接続部に溶接して、本発明のガス供給手段12を完成させて、エピタキシャル成長装置14に取り付ける。
このように製造された、本発明のエピタキシャル成長装置14のガス供給手段12の接合面で分割した状態の概略図を図7に示す。
【0037】
上記では、垂直ガス流路が単層型のガス供給手段の装置の製造方法を説明したが、垂直ガス流路を並列に複数有する複層型の垂直ガス流路を有するガス供給手段の製造に関しては、例えば2層型の場合、3つの帯板に溝等を形成して上記と同様に拡散接合することで、図2(b)、(c)、図8に示すようなガス供給手段12を作製することができる。図8は、本発明のエピタキシャル成長装置14であって、2層型の垂直ガス流路18を有するガス供給手段12を、接合面で分割した状態の概略図である。もちろん、必要とあらば、4つ以上の帯板で作製した3層以上の垂直ガス流路を有するものとしても良い。
【0038】
以上のような、本発明の装置及び本発明の製造方法により製造された装置によれば、エピタキシャル成長させる基板に面内均一なガス流速分布でガスを流すことができ、膜厚が均一で高品質のエピタキシャル層を形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
上記の本発明の製造方法により製造された図1、4に示す本発明のエピタキシャル成長装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハ上にエピタキシャル成長を行った。ガス供給手段の垂直ガス流路の下流端の流路数が96ポートの装置とした。また、このガス供給手段は、図1、4に示すような、垂直ガス流路内をガスが上方から下方へ流れるL字型のガス流路とした。
エピタキシャル成長条件は、反応温度1150℃、水素流量70slm、TCS(トリクロロシラン)ガス流量10slmでエピタキシャル層を膜厚5μmまで成長させた。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様の装置とし、ただし、ガス供給手段は、垂直ガス流路内をガスが下方から上方へ流れる逆L字型のガス流路とした。エピタキシャル成長条件も実施例1と同様とした。
【0041】
(比較例)
図5、6に示す、ツリー状の水平なガス流路のガス供給手段を有するエピタキシャル成長装置を用いて直径300mmのシリコンウェーハ上にエピタキシャル成長を行った。ガス供給手段のガス流路の下流端の流路数が96ポートの装置とした。また、ガス供給手段は、帯板にガス流路となる溝を形成して、電解研磨し、その後ボルトとナットで帯板同士を接合したものとした。
エピタキシャル成長条件は、実施例1、2と同じ反応温度1150℃、水素流量70slm、TCS(トリクロロシラン)ガス流量10slmでエピタキシャル層を膜厚5μmまで成長させた。
【0042】
実施例1、比較例で形成されたエピタキシャル層のパーティクル数を測定した結果を図9に、エピタキシャル層の膜厚分布を測定した結果を図10に示す。
図10に示すように、実施例1における本発明の装置によれば、膜厚均一性が0.18%と非常に均一な膜厚のエピタキシャル層が形成され、同じポート数のガス流路の比較例(膜厚均一性=1.20%)に比べても膜厚均一性が高いことが分かる。また、図9に示すように、パーティクル数も実施例の本発明の装置の方が少なかった。このパーティクル数の低減効果に関しては、比較例が従来のようにボルトとナットで接合した一方、本発明の装置が拡散接合により帯板同士を接合したためと考えられる。
また、実施例2は、同様に測定したパーティクル数は実施例1と同程度であったが、膜厚均一性は0.28%であり、比較例よりは改善されているが、実施例1よりはわずかに低かった。この結果より、ガス供給手段が逆L字型よりL字型のガス流路の方が、形成されるエピタキシャル層の膜厚均一性がより改善されることが分かる。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0044】
11…チャンバー、 12…ガス供給手段、 13…ガス排出手段、
14…エピタキシャル成長装置、 15…ガス、 16…ガス供給源、
17…水平ガス流路、 18…垂直ガス流路、 19…サセプタ、
20、21…溝及び/又は穴、 22a、22b…帯板、 23…サセプタ回転機構、
W…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、エピタキシャル成長させる基板を載置するサセプタが内部に設置されるチャンバーと、該チャンバー内の前記サセプタ上に載置された基板にガス供給源からのガスを供給するガス供給手段と、前記供給されたガスを前記チャンバー外に排出するガス排出手段とを有するエピタキシャル成長装置であって、
前記ガス供給手段が、少なくとも、前記ガス供給源に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路と、該垂直ガス流路の下流の端部に接続され、前記垂直ガス流路からのガスを水平方向に噴き出して前記サセプタ上に載置された基板にガスを供給する水平ガス流路とを有し、前記垂直ガス流路が、下流に向かって複数の流路に分岐していくツリー状の流路であることを特徴とするエピタキシャル成長装置。
【請求項2】
前記垂直ガス流路が、上方から下方へガスが流れるものであることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記水平ガス流路と前記垂直ガス流路の下流の端部との接続部の外コーナー面が、R形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項4】
前記ガス供給手段が、前記ツリー状の垂直ガス流路を並列に複数有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項5】
前記垂直ガス流路及び/又は前記水平ガス流路の内表面が、電解研磨されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項6】
前記ガス供給手段は、拡散接合されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のエピタキシャル成長装置。
【請求項7】
少なくとも、エピタキシャル成長させる基板を載置するサセプタが内部に設置されるチャンバーと、該チャンバー内の前記サセプタ上に載置された基板にガス供給源からのガスを供給するガス供給手段と、前記供給されたガスを前記チャンバー外に排出するガス排出手段とを有するエピタキシャル成長装置を製造する方法であって、少なくとも、
帯板に、ガス流路となる溝及び/又は穴を形成する工程と、
前記溝及び/又は穴を形成した帯板の表面を電解研磨する工程と、
前記電解研磨した帯板を他の帯板と重ね合わせて拡散接合を行うことにより前記帯板同士を接合してガス流路を形成する工程とを含み、
少なくとも、前記ガス供給源に接続され、垂直方向にガスが流れる垂直ガス流路と、該垂直ガス流路の下流の端部に接続され、前記垂直ガス流路からのガスを水平方向に噴き出して前記サセプタ上に載置された基板にガスを供給する水平ガス流路とを有し、前記垂直ガス流路が、下流に向かって複数の流路に分岐していくツリー状の流路である前記ガス供給手段を製造することを特徴とするエピタキシャル成長装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−134871(P2011−134871A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292571(P2009−292571)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】