説明

エポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂プリプレグ、金属張積層板および印刷配線板

【課題】エポキシ樹脂に無機充填剤を充填して得られるプリプレグを加熱加圧成形する際に樹脂成分と無機充填剤の分離が発生せず成形性に優れており、且つワニスやプリプレグの安定性が良好であるエポキシ樹脂組成物、それを用いたエポキシ樹脂プリプレグ、金属張積層板および印刷配線板を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含む樹脂成分及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤が下記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物であるエポキシ樹脂組成物を用いる。


(式中、R1〜R4は、各々、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基、R5は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子機器等に用いられるエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂プリプレグ、金属張積層板および印刷配線板に関し、詳しくは良好な成形性が得られ、エポキシ樹脂組成物のワニスやプリプレグの保存安定性などに優れたエポキシ樹脂組成物、それを用いたエポキシ樹脂プリプレグ、金属張積層板および印刷配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の小型化、高性能化に伴い、プリント配線板は薄型化,スルホールの小径化および穴間隔の減少などによる高密度化が進んでいる。薄型化や高密度化に対応するため、金属張積層板では低熱膨張率化や高弾性率化の要求が高まっており、これらを解決する手段として無機充填剤が使用されることが多くなってきている。
【0003】
通常,エポキシ樹脂組成物に無機充填剤を使用する場合、充填量を増量するに従い、樹脂組成物の流動性が著しく低下する。そのためプリプレグを加熱加圧する際の成形性を考慮して、樹脂ワニスの硬化度を低くして良好な成形性を確保している。しかし、加熱加圧成形の際、樹脂ワニス中の樹脂成分と無機充填剤の流動性の差異により各々が分離する現象が発生し、金属張積層板において金属箔除去後の外観の低下や分離した部分での特性の不均一性等の問題を引き起し易い。
【0004】
このような加熱加圧成形時の樹脂成分と無機充填剤との分離を抑制するために高分子量樹脂を併用して流動性を制御する方法があり(例えば、特許文献1参照)、均一且つ良好な成形性を得ることができるが、これによりガラス転移温度(Tg)や耐熱性などの特性が低下する可能性がある。
【0005】
一方、エポキシ樹脂組成物のワニスやプリプレグには保存安定性が必要であり,硬化剤や硬化促進剤には潜在性が高く、樹脂組成物の長期保存が可能な材料を用いることが必須となっている。特にフェノール硬化系や芳香族アミン硬化系などにおいて、硬化促進剤としてイミダゾール化合物が好適に用いられるが、これらに用いられているイミダゾール化合物は潜在性が十分でなく、長期間保存することができない。なお、本発明において「潜在性」とは、目的とする温度でエポキシ樹脂を硬化させる作用を発揮するが、低温ではそのような作用を発揮せず、樹脂組成物を長期間に存在させる特性を云う。
【特許文献1】特開2001−240687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、エポキシ樹脂に無機充填剤を充填して得られるプリプレグを加熱加圧成形する際に樹脂成分と無機充填剤の分離が発生せず成形性に優れており、且つワニスやプリプレグの安定性が良好であるエポキシ樹脂組成物、それを用いたエポキシ樹脂プリプレグ、金属張積層板および印刷配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、エポキシ樹脂を含む樹脂成分、無機充填剤及び硬化促進剤を含むエポキシ樹脂組成物において硬化促進剤として特定のイミダゾール化合物を用いることで、上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂プリプレグ、金属張積層板および印刷配線板を提供するものである。
1.エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含む樹脂成分及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤が下記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1〜R4は、各々、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基、R5は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)
2.エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含む樹脂成分100質量部に対して、無機充填剤25〜250質量部、当該樹脂成分に対して一般式(1)で表されるイミダゾール化合物0.01〜10質量%を各々含む上記1のエポキシ樹脂組成物。
3.樹脂成分がさらに硬化剤を含む上記1又は2のエポキシ樹脂組成物。
4.上記1〜3のいずれかのエポキシ樹脂組成物を、基材に含浸した後、Bステージ化して得られたエポキシ樹脂プリプレグ。
5.上記4のエポキシ樹脂プリプレグの1枚又は所定枚数重ねた積層体の少なくとも一方の面に金属箔を重ね加熱加圧して得られた金属張積層板。
6.上記5の金属張積層板を使用し、回路加工して得られた印刷配線板。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物を使用して得られる樹脂ワニスやプリプレグは保存安定性が良好であり、これにより得られるプリプレグは、加熱加圧成形する際にエポキシ樹脂成分と無機充填剤の分離が発生せずに優れた成形性が得られ、金属張積層板や印刷配線板などの電気・電子機器の材料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含む樹脂成分及び無機充填剤を含む樹脂組成物であって、硬化促進剤が特定のイミダゾール化合物であるものであり、樹脂成分は、エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含み、必要に応じてさらに硬化剤やその他の有機系添加剤(着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線遮蔽剤など)を含むものである。
先ず、樹脂成分に含まれるエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば良く、硬化後の樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)や耐熱性を向上するために、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0013】
分子内に2個のエポキシ基を有する化合物としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多官能フェノール類のグリシジルエーテル化合物、二官能アルコール類のグリシジルエーテル化合物および、それらの水素添加物等が挙げられる。また、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用する無機充填剤としては、特に制約はなく、例えば、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化チタン、マイカ、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ,ガラス短繊維,ホウ酸アルミニウムウィスカや炭化ケイ素ウィスカなどが挙げられる。これらの無機充填剤は2種以上を併用してもよい。
無機充填剤の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、25〜250質量部であることが好ましく,30〜180質量部であることがより好ましい。25質量部以上とすることにより、低熱膨張率や高弾性率の効果が得られる。一方、250質量部以下とすることにより、樹脂の流動性が悪くなることや、加熱加圧成形時の成形性が悪化し、かすれが発生することを防止できる。
【0015】
上記無機充填剤には、樹脂と無機充填剤の界面接着性や無機充填剤の分散性を向上させるために、各種カップリング剤やシリコーン重合体等を用いて無機充填剤の表面処理をすることが好ましい。カップリング剤としては、例えばシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が用いられる。
シラン系カップリング剤としては、炭素官能性シランが用いられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのようなエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシランのようなアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシランのようなビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなアクリル基含有シラン;および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプト基含有シランが例示される。
一方、チタネート系カップリング剤としては、チタンプロポキシド、チタンブトキシドのようなチタン酸アルキルエステルが例示される。これらのカップリング剤やシリコーン重合体は2種以上併用してもよく、その配合量は特に制限はない。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤が下記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物であることを特徴とするものである。
【0017】
【化2】

【0018】
一般式(1)において、R1〜R4は、各々、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基、R5は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。
1〜R4としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基およびフェニル基などが挙げられ、R5としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。
一般式(1)で表されるイミダゾール化合物は、例えばイソシアナート化合物とイミダゾール化合物を反応して得られる。
イソシアナート化合物としては、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,8−オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のアルキレンジイソシアネート等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
またイミダゾール化合物としては、通常のイミダゾール誘導体、例えばイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等の活性水素基を残した化合物等が挙げられる。
イソシアナート化合物とイミダゾール化合物の反応温度は通常30〜120℃程度であり、反応促進のために触媒を加えることも可能であるが、必ずしも必要ではない。また、非溶媒系、溶媒系のどちらで可能である。
【0019】
一般式(1)で表されるイミダゾール化合物は、イミダゾール基がイソシアネートでマスク化されており、活性水素を含有していない。そのため活性水素を有する通常のイミダゾール化合物を使用する場合と比較して潜在性が大幅に向上し、長期保存が可能である。
また、通常のイミダゾール化合物を用いると加熱加圧成形時に樹脂と無機充填剤との流動性の差異からエポキシ樹脂成分と無機充填剤成分が分離する現象が生じるが、一般式(1)で表されるイミダゾール化合物を用いるとそのような分離が発生しない。
さらに、一般式(1)で表されるイミダゾール化合物は、溶剤に対する溶解性も良く、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−メトキシエタノール等に容易に溶解し、作業性にも優れている。
硬化促進剤として用いる一般式(1)で表されるイミダゾール化合物の配合量は、樹脂成分に対し、0.01〜10質量%であることが好ましい。10質量%以上とすることにより、目的とするワニス特性が得られない。一方、0.01質量%以下とすると、反応性が低下するため樹脂硬化物の硬化度が低く、ガラス転移温度(Tg)などの低下を招く。
【0020】
樹脂成分において必要に応じて用いられる硬化剤としては、従来公知のものを使用することができ、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノール樹脂等を挙げることができる。これら硬化剤は2種以上を併用してもよい。
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、さらに着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線遮蔽剤などを適宜配合することができる。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂プリプレグは、上記のエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解してワニス化し、基材に含浸した後、Bステージ化して得られるものである。
ワニス化するために用いられる有機溶剤は、特に限定はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらの有機溶剤は2種以上を併用してもよい。
ワニスの固形分濃度(ワニス中のエポキシ樹脂組成物の濃度)は、特に制限はなく、樹脂組成や無機充填剤の種類及び配合量等により適宜変更できるが、50〜80質量%の範囲が好ましい。50質量%以上とすることより適度なワニス粘度とプリプレグの樹脂分濃度が得られ、80質量%以下とすることよりワニスの増粘等によるプリプレグの外観の低下などを避けることができる。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物を配合して得たワニスは,基材に含浸させ,例えば乾燥炉中で80〜200℃の範囲で乾燥させBステージ化(半硬化)させることにより、印刷配線板用のエポキシ樹脂プリプレグが得られる。
基材としては、金属箔張り積層板や多層印刷配線板を製造する際に用いられるものであれば特に制限されないが、通常織布や不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材としては、たとえば、ガラス、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維や、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維等及びこれらの混抄系が挙げられ、特にガラス繊維の織布が好ましく用いられる。
【0023】
本発明の金属張積層板は、上記のエポキシ樹脂プリプレグの1枚又は所定枚数重ねた積層体の少なくとも一方の面に金属箔を重ね加熱加圧して得られるものである。
すなわち、本発明のエポキシ樹脂プリプレグを1枚だけで、又は所定枚数を積層して、その片面若しくは両面に金属箔を重ねて、例えば、150〜200℃、1.0〜8.0MPa程度の範囲で加熱加圧して金属張積層板とすることができる。
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミ箔等が使用される。金属箔の厚さは、用途にもよるが、10〜100μmのものが好適に用いられる。また、前記の金属張積層板に、一般的な回路加工を施して印刷配線板とすることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物で使用するイミダゾール化合物は、潜在性が向上しているため、ワニスやプリプレグの安定性に優れている。さらに、該イミダゾール化合物は、加熱加圧成形時にエポキシ樹脂成分と無機充填剤成分の流動性の差異による分離を抑制することができる。従って、本発明のエポキシ樹脂組成物は、金属張積層板や印刷配線板などの電気・電子機器の材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0024】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、ワニス、プリプレグおよび積層板の特性を以下の方法で評価した。
【0025】
(1)ワニスおよびプリプレグのゲルタイム:
実施例および比較例で得られたワニスは、30℃の保管庫中で所定時間保存し、0.5mLを160℃のゲル化試験機の熱盤上に置き、ゲル化するまでの時間を測定した。実施例および比較例で得られたプリプレグは、30℃の保管庫中で所定時間保存し、樹脂粉0.5gを170℃のゲル化試験機の熱盤上に置き、ゲル化するまでの時間を測定した。
(2)積層板の外観:
積層板をエッチング方法により銅箔を全面除去した後、「かすれ」及び「樹脂成分と充填剤成分の分離の有無」を目視により評価した。
(3)積層板のはんだ耐熱性:
エッチング後の試験片を吸湿処理後〔プレッシャークラッカー(PCT)3時間処理〕後,288℃のはんだ槽に20秒間浸漬し,基板の膨れの有無を評価した。
【0026】
実施例1
(イミダゾール化合物Aの製造)
攪拌器、温度計、冷却器を取り付けた三つ口フラスコに、1,6-へキサメチレンジイソシアネート8.4gと2−フェニルイミダゾール(四国化成製、商品名2PZ)14.4gを仕込み、反応温度を室温より75℃まで昇温した後、遊離イソシアネートが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で確認されなくなるまで反応を行い、イミダゾール化合物Aを得た。
【0027】
(エポキシ樹脂組成物ワニスの調製)
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製エピクロンN−865)69質量部、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製エピクロン153)31質量部、フェノールノボラック樹脂(明和化成社製HF−4)40質量部、上記により得られたイミダゾール化合物A0.3質量部、シリカ80(アドマテックス社製SO−25H)質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分70質量%のワニスを調製した。
(プリプレグの製造)
上記により得られたワニスを厚さ約0.1mmのガラス布(日東紡績社製、#2116、E−ガラス)に含浸させた後、150℃で約5分間加熱乾燥して樹脂分48質量%のプリプレグを製造した。
(銅張積層板の製造)
上記により得られたプリプレグ4枚を重ね、その両側に厚みが12μmの銅箔を重ね、175℃、60分、3.0MPaのプレス条件で両面銅張積層板を作製した。
得られたワニス、プリプレグおよび銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0028】
実施例2
(イミダゾール化合物Bの製造)
攪拌器、温度計、冷却器を取り付けた三つ口フラスコに、1,6-へキサメチレンジイソシアネート16.8gと2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成製、商品名2E4MZ)22.0gおよびメチルエチルケトン10gを加えて80℃まで加熱し、還流下1時間反応を行い、イミダゾール化合物Bを得た。
(ワニス、プリプレグおよび銅張積層板の製造)
イミダゾール化合物Aに代えてイミダゾール化合物Bを0.3質量部使用した他は実施例1と同様にして,固形分70質量%のワニスを調製した。
得られたワニスを用い実施例1と同様にしてプリプレグおよび銅張積層板を製造した。ワニス、プリプレグおよび銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0029】
比較例1
イミダゾール化合物Aに代えて2−フェニルイミダゾールを0.4質量部使用した他は実施例1と同様にして、固形分70質量%のワニスを調製した。
得られたワニスを用い実施例1と同様にしてプリプレグおよび銅張積層板を製造した。ワニス、プリプレグおよび銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0030】
比較例2
イミダゾール化合物Aに代えて2−エチル−4メチルイミダゾールを0.4質量部使用した他は実施例1と同様にして,固形分70質量%のワニスを調製した。
得られたワニスを用い実施例1と同様にしてプリプレグおよび銅張積層板を製造した。ワニス、プリプレグおよび銅張積層板の評価結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
第1表より、実施例1〜2は、ワニスおよびプリプレグのゲルタイムの低下が小さいことから、保存安定性に優れることが分かる。さらに、プリプレグを成形した後の積層板にかすれが発生せず、且つ樹脂成分と無機充填剤成分の分離も見られず、はんだ耐熱性試験で異常ないことが分かる。一方、比較例1〜2はワニスおよびプリプレグにおいてゲルタイムが短縮し,成形後に樹脂成分と無機充填剤成分の分離が発生し、はんだ耐熱性が低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたワニスやプリプレグは、優れた保存安定性を有する。また,良好な成形性が得られると共に,加熱加圧成形時に樹脂成分と無機充填剤成分の分離が発生しないので、外観の悪化や特性の不均一化を招くことがなく,その他の積層板特性も良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含む樹脂成分及び無機充填剤を含むエポキシ樹脂組成物であって、硬化促進剤が下記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1〜R4は、各々、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基又はフェニル基、R5は炭素数1〜20のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
エポキシ樹脂と硬化促進剤とを含む樹脂成分100質量部に対して、無機充填剤25〜250質量部、当該樹脂成分に対して一般式(1)で表されるイミダゾール化合物0.01〜10質量%を各々含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂成分がさらに硬化剤を含む請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を、基材に含浸した後、Bステージ化して得られたエポキシ樹脂プリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のエポキシ樹脂プリプレグの1枚又は所定枚数重ねた積層体の少なくとも一方の面に金属箔を重ね加熱加圧して得られた金属張積層板。
【請求項6】
請求項5に記載の金属張積層板を使用し、回路加工して得られた印刷配線板。

【公開番号】特開2007−314748(P2007−314748A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234335(P2006−234335)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】