説明

エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置並びに表示素子

【課題】本発明の課題は、液状樹脂組成物を用いて半導体チップ、特に回路面にはんだ電極を有する半導体チップを封止する半導体装置及び表示素子の製造方法において、良好なはんだ接続性と高信頼性を同時に満足する半導体装置及び表示素子を得ることである。
【解決手段】 常温で液状であり、1分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂(A)、1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基と少なくとも1個の芳香族カルボキシル基を有する硬化剤(B)、及びフェノール性水酸基を1分子あたり3個以上有する硬化剤(C)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置並びに表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年半導体パッケージの軽薄短小化の技術革新は目覚しいものがあり、さまざまなパッケージ構造が提唱され、製品化されている。従来のリードフレーム接合に代わり、はんだのような突起電極により、回路基板(マザーボード)に接合するエリア実装方式は特に重要である。
【0003】
その中で半導体チップの回路面に直接はんだ電極が具備されたフリップチップはパッケージを最小化できる方法のひとつである。フリップチップ実装は、はんだ電極の場合、はんだ電極の表面の酸化膜を除去するためにフラックスで処理した後リフロー等の方法で接合する。その為はんだ電極、回路基板等の周囲にフラックスが残存し、不純物として問題となるためフラックスを除去する洗浄を行った後液状封止を行う。その理由としては、直接回路基板(マザーボード)にはんだ電極で接合するため、温度サイクル試験のような信頼性試験を行うと、チップと回路板の線膨張係数の差により電極接合部の電気的不良が発生するためである。
【0004】
該パッケージの封止は、半導体チップの一辺または複数面に液状封止樹脂を塗布し毛細管現象を利用して樹脂を回路板とチップの間隙に流れ込ませる。しかしこの方法はフラクッス処理、洗浄を行うため工程が長くなりかつ洗浄廃液の処理問題等環境管理を厳しくしなければならない。更に液状封止を毛細管現象で行うため封止時間が長くなり、生産性に問題があった。
【0005】
そこで直接回路基板に樹脂を塗布し、はんだ電極を持ったチップをその上から搭載しはんだ接合と樹脂封止を同時に行う方法が考案された(特許文献1参照)。この場合、はんだを回路基板に接合させるために、熱硬化性樹脂、硬化剤からなる樹脂組成物にフラックス作用を有する成分を添加することが特徴である。
更に、該接続封止方法に好適な樹脂組成物の検討も行なわれている(特許文献2−8参照)これらの検討の中でエポキシ樹脂/フラックス活性を有する硬化剤の組み合わせがパッケージとしての信頼性を上げる為に好ましい。具体的にはポリカルボン酸、フェノール性水酸基とカルボン酸を含む化合物などが検討されている。フラックス作用はほとんどがカルボン酸による発現であり、該カルボン酸は最終的にエポキシ樹脂と反応し硬化物マトリックスの一部となるため、信頼性の向上が期待されている。しかし、カルボン酸における架橋は、主としてエステル結合が生じるため、厳しい耐湿性試験(例えばプレッシャークッカー試験)を行なうと、部分的な加水分解に起因する架橋密度の低下による物性の低下、または未反応のカルボン酸による電気特性の低下を招いてしまう恐れがあった。フラックス活性の無い硬化剤を添加することにより硬化する前のカルボン酸濃度を少なくすることで前記問題点を解決できるが、同時にカルボン酸濃度の低下するため、フラックス活性が低下し、はんだの接続歩留まりが著しく低下してしまうという問題が発生する。
【特許文献1】米国特許5,128,746号公報
【特許文献2】特開2000−072083号公報
【特許文献3】特開2002−293883号公報
【特許文献4】特許3446731
【特許文献5】特許2003−183480号公報
【特許文献6】特許2003−082064号公報
【特許文献7】特許2001−329048号公報
【特許文献8】特許2001−302765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、液状樹脂組成物を用いて半導体チップ、特に回路面にはんだ電極を有する半導体チップを封止する半導体装置及び表示素子の製造方法において、良好なはんだ接続性と高信頼性を同時に満足する半導体装置及び表示素子を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前述の解決法に関し鋭意検討を行い、液状樹脂組成物においてフラックス活性を有するジヒドロキシカルボン酸を含む硬化剤とその融点より高い融点を有する多官能フェノール化合物を併用することにより、はんだ接合性、装置としての高い信頼性が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の目的は、以下の(1)〜(6)に記載の本発明により達成できる。
(1)
常温で液状であり、1分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂(A)、1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基と少なくとも1個の芳香族カルボキシル基を有する硬化剤(B)、及びフェノール性水酸基を1分子あたり3個以上有する硬化剤(C)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(2)
硬化剤(C)の融点が硬化剤(B)の融点より高いことを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
(3)
エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、硬化剤(B)が5〜50重量部、硬化剤(C)が5〜30重量部である請求項1、2に記載のエポキシ樹脂組成物。
(4)
請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を用いて作製された半導体装置。
(5)
請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を用いて作製された表示素子。
(6)
回路面にはんだ電極が形成された半導体チップと回路基板とを、請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を挟み込むように組み立て、その後にはんだの融点以上に加熱し、該電極と回路基板とを電気的に接合し、該樹脂を硬化させて製造する半導体装置及び表示素子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従うと、良好なはんだ接続性が得られ、且つ装置としての信頼性、特に耐湿性において最終的に信頼性の高い半導体装置および表示素子を提供することができ、また半導体装置及び表示素子の組立工程を簡略化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に用いるエポキシ樹脂は常温(15℃〜30℃)で液状であり、平均エポキシ基が2以上であれば、使用することができる。その例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ、o−アリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、1,6−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、臭素型クレゾールノボラック型エポキシ、ビスフェノールDジグリシジルエーテル型エポキシ,1,6ナフタレンジオールのグリシジルエーテル、アミノフェノール類のトリグリシジルエーテル、等が挙げられる。これらは単独又は混合して用いても差し支えない。更にTg等の硬化物性を向上させるためにフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他固体の多官能エポキシ樹脂を液状のエポキシ樹脂に溶解、又は分散しても構わない。また、信頼性の優れた液状封止樹脂組成物を得るために、エポキシ樹脂のNa+、Cl-等のイオン性不純物はできるだけ少ないものが好ましい。
【0011】
次に本発明に用いられる硬化剤(B)は少なくとも2個のフェノール性水酸基と芳香族カルボキシル基を含むエポキシ樹脂の硬化剤であり、本質的にはんだ接合の際にフラックス活性を有することが必須の特性である。その例としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられ、これらは単独もしくは複数添加することができる。何れもフラックス作用を有することが本発明に利用するための条件である。
【0012】
本発明に用いるの硬化剤(C)はフェノール性水酸基を少なくとも三個以上含む化合物であり、(B)とは異なる化合物である。ここで硬化剤(C)は、本質的にフラックス活性が無いか、もしくは非常に効果が少ないことが必要である。また、硬化剤(B)の融点より高い融点であることが好ましい。より好ましくは硬化剤(C)の融点が硬化剤(B)の融点より20℃以上高いことである。硬化剤(B)を複数用いる場合はその内最も融点が高いものよりも、高い融点の硬化剤(C)を選定する。この様な硬化剤の組合せにより、良好なフラックス活性を維持しながら,硬化剤(B)の比率を最小限度に抑えられ、硬化剤(C)により従来懸念されていたカルボン酸に由来する耐湿性の改善が、フラックス活性を有する硬化剤(B)とその融点より高い融点を有する三官能以上のフェノールを添加することにより改良することができる。
その例としては、
4,4',4"-メチリデントリスフェノール、
2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、4,4'-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、
4,4',4"-エチリデントリス[2-メチルフェノール],
2,2'-メチレンビス[6-[2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]メチル]-4-メチルフェノール],
2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニルメチル)1,3-ベンゼンジオール、
4,4',4"-エチリデン-トリスフェノール、
4,4'-[4-ヒドロキシ-フェニル]メチレン]ビス[2-メチルフェノール],
4,4',4",4'"?(1,2-エタンジイリデン)テトラキスフェノール、
a,a',α"-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン
α,α,α'−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプルピルベンゼン
2,6-ビス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、
2,6-ビス[(4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-エチルフェノール、
2,2'-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5-ジメチルフェノール]
2,2'-[(4-ヒドロキシ-フェニル)メチレン]ビス[3,5,6-トリメチルフェノール]
2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール
2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-4,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール
4,4'-[4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]ビス[2-メチルフェノール]
2,6-ビス[(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-シクロヘキシルフェノール 2,6-ビス[(2,5-ジメチル-4,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチル-フェノール
2,2'-ビス[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5-ジメチルフェノール]
2,2'-[(3,5-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス[3,5,6-トリメチルフェノール]
2,6-ビス[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-4-エチルフェノール
2,6-ビス[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-3,4-ジメチルフェノール
2,2'-メチレンビス[6-[(2/4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-メチルフェノール
2,2'-メチレンビス[6-[(3-メチル-2/4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-メチルフェノール
4,4',4",4"'-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキスフェノール
4,4'-[4-[[ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)メチル]フェニル]メチレン]ビス[1,3-ベンゼンジオール]
6,6'-エチリデンビス[4-(4-ヒドロキシフェニルカルボキシ)-1,2,3-ベンゼントリオール
ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,4-ジヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン
ビス(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン
1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられ、単独または複数用いることができる。
【0013】
本発明の場合、明確な融点を有することが必要であるため、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂の様な繰り返し単位及び分子量に分布を有するオリゴマーははんだ接続時の封止樹脂の粘度が上がるため接続性に支障をきたす恐れがあるため本発明に好ましくなく、使用する場合は、添加量等は制限される。
【0014】
また、これらの硬化剤は何れも吸湿し易くボイドの原因となるため用いる際は前もって乾燥を行うほうが好ましい。
硬化剤(B)と硬化剤(C)の好ましい添加量は、エポキシ樹脂100重量部に対し硬化剤(B)が5−50重量部、硬化剤(C)が5−30重量部である。この範囲を超えると、硬化物物性が大幅に低下し、半導体装置としての信頼性が低下する。 より好ましくはエポキシ樹脂100重量部に対して硬化剤(B)と硬化剤(C)の総計が10−50重量部である。この範囲を越えると硬化物物性の低下の恐れがある。更には硬化剤(B)の硬化剤総重量((B)+(C))に対する割合は10−70重量%であることが好ましい。10%未満では、耐熱性、信頼性向上が少なく、また70%を上回るとフラックス活性が低下し接続信頼性が支障をきたす恐れがあるためである。
しかし、本発明に従うとフラックス活性を有する硬化剤の添加量を大幅に低減することができる。
【0015】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進するために硬化促進剤を添加することができる。その例としては一般的にエポキシ樹脂の硬化促進剤として用いられるものであり、イミダゾール類、リン化合物、ジアザ化合物、第三級アミン等を挙げることができる。
【0016】
本発明では硬化物性を調節するため無機フィラーを添加することができる。その例としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、窒化アルミ等が挙げられる。用途によりこれらを複数混合してもよいが、純度、信頼性、コストの点でシリカが好ましい。さらには硬化物の靭性を向上するためにカップリング剤等で予めフィラーの表面を反応、吸着処理し樹脂との密着性を強固にすることもできる。その添加量は特に制限がないが、封止用樹脂組成物としての特性(耐湿性、作業性等)を保つためエポキシ樹脂組成物の80重量%以下であることが好ましい。より好ましくは70重量%以下である。上限値を超えると、接合の際、絶縁性のフィラーが半導体素子のはんだ電極と回路板電極との接合を妨げるからである。
【0017】
また本発明に無機フィラーを用いる場合、無機フィラーの形状は球状であることが好ましい。いわゆる破砕フィラーの場合はその鋭利な面により半導体素子表面の回路を破壊する恐れがあるからである。また、無機フィラーの粒径は平均粒径で6μm以下、最大粒径で30μm以下が好ましい。この範囲を超えるとはんだ接合時にフィラーにより妨げられ、接続不良を起こす可能性がある。
【0018】
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、前記液状エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機フィラー以外に、必要に応じて低応力剤、反応性希釈剤、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、カップリング剤等の添加剤を混合し、真空脱泡することにより製造することができる。これらの添加剤は何れもボイドの要因になってはならないため、耐熱性、揮発性、基材への濡れ性等確認の上添加することが好ましい。
また、当該エポキシ樹脂組成物の用途としては半導体封止用樹脂、半導体固定用樹脂、LEDなどの半導体を用いる表示素子などが挙げられる。
【実施例】
【0019】
本発明を実施例及び比較例で説明する。
<実施例1>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)100重量部、(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)10重量部、(C)成分として4,4',4"-エチリデン-トリスフェノール(融点245℃)20重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、得られたエポキシ樹脂組成物を回路基板に塗布し、上部よりフリップチップボンダーを用いて位置決めを行いながら融点221℃のSn−Ag系はんだが具備されたフリップチップを設置した。その際、フリップチップは約180℃に加温させておいた。次に最大温度245℃を5秒間保持するような温度プロファイルを用いてはんだを溶融、接続を行った。得られたパッケージの接続性を下記の接続性試験で確認した後、後硬化として150℃、90分にて封止材であるエポキシ樹脂組成物を硬化させ、下記ボイド確認、耐リフロー試験、温度サイクル試験、を行った。また、別途良品のパッケージを作成して下記耐湿性試験を行った。
【0020】
使用した半導体チップ
バンプ数:400(100バンプ/1ブロック)
バンプ高さ:80μm
チップサイズ:10mm角
パッシベーション:ポリイミド
チップ厚み:500μm
使用した基板:BT基板(接続パッド:金メッキ表面)
【0021】
(1)接続性試験(サンフ゜ル数10個/水準)
接続性はデイジーチェーンでつながった四つのブロック単位でテスターを用いて導通性を確認した。すなわちあるブロックにおいては一つでも接続不良が出た場合は導通しないため、接続性は導通ブロック数/総ブロック数(=4×10)でカウントした。
接続不良がおきた水準は以下の試験(2−4)を中止した。
(2)耐リフロー試験
接続率100%のパッケージを選び、30℃、60%、72時間吸湿させたあと最大温度260℃の温度プロファイルのリフローに3回通過させた後の接続性をテスターで確認した。また、封止樹脂の外観クラック、界面の剥離状態を超音波探傷装置(SAT)で調べた。一箇所でもクラック、剥離が生じたパッケージを不良とした。
(3)温度サイクル(T/C)試験
耐リフロー試験を行った後の良品パッケージを引き続き−55℃、30分/150℃、30分の条件でT/C試験を行った。
1500サイクル後の封止樹脂の外観クラック、界面の剥離の状態をSATで観察した。界面の剥離状態は一箇所でもクラック、剥離が生じたパッケージを不良とした。また、1000時サイクル後の接続性をテスターで確認した。
(4)耐湿性試験
封止樹脂を硬化した直後の接続率100%のパッケージを30℃、60%、72時間吸湿させたあと最大温度260℃の温度プロファイルのリフローに3回通過させ更に130℃、85%RHの環境で200時間処理した後の接続性をテスターで確認した。また、封止樹脂の外観クラック、界面の剥離状態をSATで観察した。一箇所でもクラック、剥離が生じたパッケージを不良とした。
【0022】
<実施例2>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)100重量部、(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)10重量部、(C)成分としてα,α,α'−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプルピルベンゼン(融点225℃)20重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、実施例1と同様にフリップチップパッケージを作製し,同様の信頼性試験を行った。
【0023】
<実施例3>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)75重量部、4,4'−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ25重量部の混合物を用い、
(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)10重量部、(C)成分として4,4',4"-エチリデン-トリスフェノール(融点245℃)20重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、実施例1と同様にフリップチップパッケージを作製し,同様の信頼性試験を行った。
【0024】
<実施例4>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)100重量部、(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)10重量部、(C)成分として4,4',4"-エチリデントリス[2-メチルフェノール],(融点188℃)20重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、実施例1と同様にフリップチップパッケージを作製し,同様の信頼性試験を行った。
【0025】
<比較例1>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)100重量部、(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)22重量部、(C)成分としてフェノールノホ゛ラック樹脂(軟化点80℃)8重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、実施例1と同様にフリップチップパッケージを作製し,同様の信頼性試験を行った。
【0026】
<比較例2>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)100重量部、(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)30重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、実施例1と同様にフリップチップパッケージを作製し,同様の信頼性試験を行った。
【0027】
<比較例3>
(A)成分としてビスフェノールF型エポキシ樹脂(当量165)100重量部、(B)成分として2,5−ジヒドロキシ安息香酸(融点202℃)20重量部、(C)成分の変わりに2官能フェノール化合物としてヒ゛フェノール(融点281℃)10重量部、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.5重量部を秤量し3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理をしてエポキシ樹脂組成物を得た。次に、実施例1と同様にフリップチップパッケージを作製し,同様の信頼性試験を行った。
【0028】
【表1】

【0029】
実施例1−3は何れも良好な接続性、信頼性を示した。実施例4は、初期接続性は良好であったが、リフロー+T/Cにおいてわずかに不良が発生した。硬化剤(B)より硬化剤(C)の方が融点が低いため、フラックス活性の無い硬化剤が先に反応したためはんだの接続が不完全でT/Cにおいて不良が起きたと推定される。
比較例1では硬化剤(C)として分子量分布を有するフェノールノホ゛ラック樹脂を添加したが、溶融粘度が上昇したため添加量が少量でも接続性が低下したと考えられる。比較例2では、第一の硬化剤だけの構成のため、接続性は良好であったが、長期耐湿性に問題があった。比較例3は、硬化剤(C)として2官能のフェノール化合物を用いたが、接続性は良好であったものの、耐熱性が劣るため耐リフロー+T/C性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、良好なはんだ接合性及び高信頼性を有する半導体封止用樹脂、半導体固定用樹脂、LEDなどの半導体を用いる表示素子などに用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液状であり、1分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂(A)、1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基と少なくとも1個の芳香族カルボキシル基を有する硬化剤(B)、及びフェノール性水酸基を1分子あたり3個以上有する硬化剤(C)を含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤(C)の融点が硬化剤(B)の融点より高いことを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、硬化剤(B)が5〜50重量部、硬化剤(C)が5〜30重量部である請求項1、2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を用いて作製された半導体装置。
【請求項5】
請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を用いて作製された表示素子。
【請求項6】
回路面にはんだ電極が形成された半導体チップと回路基板とを、請求項1〜3記載のエポキシ樹脂組成物を挟み込むように組み立て、その後にはんだの融点以上に加熱し、該電極と回路基板とを電気的に接合し、該樹脂を硬化させて製造する半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2006−2015(P2006−2015A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179086(P2004−179086)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】