説明

エマルジョン組成物

【課題】エマルジョン粒子径の保存経時安定性を維持しつつ、ヘマトコッカス藻由来の色素を高い安定性で保存する、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有するエマルジョン組成物を提供する。
【解決手段】平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲であって、ヘマトコッカス藻由来の色素と2種以上の酸化防止剤を含有するエマルジョン組成物。および、平均粒子径が200nm以上であって、ヘマトコッカス藻由来の色素を0.1質量%以上含有し、2種以上の酸化防止剤を含有する高濃度エマルジョン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有するエマルジョン組成物に関し、更に詳細には、該エマルジョン組成物を含有する飲食物および化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘマトコッカス藻由来色素は、カロテノイド系色素であるアスタキサンチンもしくはそのエステルである。アスタキサンチンは自然界では動植物界に広く分布しており、主として養殖魚や養鶏の色揚げ剤として使用されている。アスタキチンサンは酸化防止効果、抗炎症効果(特許文献1)、皮膚老化防止効果(特許文献2)、美白効果(非特許文献1)を有することが知られている。
【0003】
従来より、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等における色素の安定性は産業上重要な問題である。食品、化粧品、医薬品等における色素は、一般に紫外線、酸素、酵素、熱、水分、光等の原因により分解される。色素の安定化方法として、様々な手段が現在までに試みられている。
【0004】
例えば、特許文献3には、酵素処理ルチン、水酸化抗防止剤、食塩、塩化カルシウム、ミョウバンの少なくとも一種を色素液に添加することにより色素を安定化させる方法が記載されているが、多量の添加が必要であり、着色などの弊害が生じる。また、特許文献4には、安定化剤として有機酸を用いるカロテノイド系色素の安定化方法が記載されているが、有機酸を用いる安定化では乳化安定性が悪くなる可能性がある。
【0005】
特許文献5には、β−カロチンおよびビタミンを含有するソリュビリゼートについて記載されている。また、特許文献6には、アスタキチンサン類と薬効剤を組み合わせた組成物について記載されている。しかしながら、これらの方法はヘマトコッカス藻由来色素の安定性を図る充分な手段ではなく、その開発が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特開平2−49091号公報
【特許文献2】特開平5−155736号公報
【特許文献3】特開平8−112076号公報
【特許文献4】特開平6−264055号公報
【特許文献5】特開平9−249554号公報
【特許文献6】特開平9−143063号公報
【特許文献7】特開平8−103288号公報(特許請求の範囲、段落[0001]〜[0008])
【特許文献8】特開平5−68585号公報(特許請求の範囲、段落[0001]〜[0005])
【特許文献9】特開平2−49091号公報
【非特許文献1】日本香粧品科学会第19回学術大会講演要旨集 1994年、P.66
【非特許文献2】Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465-466.
【非特許文献3】Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571-587.
【非特許文献4】Davies, B.H. : In “Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments”, T. W. Goodwin ed., 2nd ed., Academic Press, NY, 1976, p.38-165
【非特許文献5】Yamaguchi, K., Miki, W., Toriu, N., Kondo, Y., Murakami, M., Konosu, S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411-1415.
【非特許文献6】Renstrom, B., Liaaen-Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625-627.
【非特許文献7】Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3'R)-Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009-1011.
【非特許文献8】Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffa rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003-1007.
【非特許文献9】「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL: http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、エマルジョン粒子径の保存経時安定性を維持しつつ、ヘマトコッカス藻由来の色素を高い安定性で保存する、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有するエマルジョン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲であって、ヘマトコッカス藻由来の色素と2種以上の酸化防止剤を含有するエマルジョン組成物においてエマルジョン粒子径の保存経時安定性、および該色素の保存安定性が向上することを見出した。
【0009】
さらに、本発明者らは、平均粒子径が200nm以上であって、ヘマトコッカス藻由来の色素を0.1質量%以上含有し、2種以上の酸化防止剤を含有する高濃度エマルジョンはエマルジョン粒子径の保存経時安定性、および該色素の保存安定性を有していることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は下記構成よりなる。
<1>平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲のエマルジョン組成物であって、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有する油状成分を含み、かつ、下記化合物群(a)〜(c)の少なくとも2群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
(a)アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩、あるいはエリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群
(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群
(c)ポリフェノール類からなる化合物群
<2>ヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が、0.001〜0.09質量%であることを特徴とする上記<1>記載のエマルジョン組成物。
<3>ヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が0.1質量%以上でかつ、平均粒子径が200nm以上の高濃度エマルジョンであって、下記化合物群(a)〜(c)の少なくとも2群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有することを特徴とするヘマトコッカス藻由来の色素を含有する高濃度エマルジョン。
(a) アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩、あるいはエリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群
(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群
(c)ポリフェノール類からなる化合物群
<4>エマルジョン組成物に含まれるヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が0.1質量%以上の高濃度エマルジョンを経由して調製されることを特徴とする上記<1>または<2>記載のエマルジョン組成物。
<5>高濃度エマルジョンが上記<3>記載の高濃度エマルジョンである上記<4>記載のエマルジョン組成物。
<6>ヘマトコッカス藻由来の色素を含有する油状成分に、化合物群(a)〜(c)より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、上記<1>、<2>、<4>および<5>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または上記<3>に記載の高濃度エマルジョン。
<7>化合物群(a)が、アスコルビン酸のグリコシル化誘導体およびリン酸塩含有誘導体、ならびにそのエステルから選択されることを特徴とする上記<1>、<2>および<4>〜<6>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または上記<3>に記載の高濃度エマルジョン。
<8>化合物群(b)が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノールおよびδ−トコトリエノールから選択されることを特徴とする上記<1>、<2>および<4>〜<6>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または上記<3>に記載の高濃度エマルジョン。
<9>化合物群(c)が、フラボノイド類、フェノール酸類、リグナン類、クルクミン類およびクマリン類から選択されることを特徴とする上記<1>、<2>および<4>〜<6>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または上記<3>に記載の高濃度エマルジョン。
<10>上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする食品組成物。
<11>上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
<12>上記<1>〜<9>のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする医薬品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、エマルジョン粒子径の保存経時安定性を維持しつつ、ヘマトコッカス藻由来の色素を高い安定性で保存することを可能とする、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有するエマルジョン組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<ヘマトコッカス藻由来色素>
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンは、ヘマトコッカス藻由来の色素を油状成分に含有することを特徴とする。ヘマトコッカス藻由来色素は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは異なることが知られている。アスタキサンチンおよび同エステル体はR.Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(非特許文献2)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(非特許文献3)。
【0013】
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(非特許文献4)。アスタキサンチンの化学構造は3,3’−dihydroxy−β,β−carotene-4,4’−dione (COH52、分子量596.82)であり、化学式は下記一般式(1)で示される。
一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
アスタキサンチンは、分子の両端 に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’−体、3S,3R’-体(meso−体)、3R,3R’−体の三種で、さらに分子中央の 共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0016】
前記3(3’)-位の水酸基は脂肪酸とエステル を形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(非特許文献5)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S’−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(非特許文献6)。また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(非特許文献7)で通常天然に見出される3S,3S’-体と反対の構造を持っている。脂肪酸とエステル形成していない フリー体で存在している(非特許文献8)。
【0017】
本発明に使用するヘマトコッカス藻色素の原料としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0018】
本発明に使用するヘマトコッカス藻の培養方法は、特許文献7等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0019】
本発明に使用するヘマトコッカス藻由来色素は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特許文献8等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。また、広く市販されているものを用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10 O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等が挙げられる。
【0020】
本発明におけるヘマトコッカス藻由来色素中の色素純分の含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。抽出液を使用する場合は、溶質の含有量が上記範囲内であれば、その抽出液濃度等は何ら限定されるものではない。なお、色素純分の含有量が50%を超えた濃度での使用を制限するものではない。
【0021】
なお、本発明におけるヘマトコッカス藻由来色素は、特許文献9記載の色素同様色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上含むものである。さらに詳細な説明は非特許文献9に記載されている。
【0022】
本発明のエマルジョン組成物におけるヘマトコッカス藻由来色素の含有量は、好ましくは0.001〜0.09質量%、より好ましくは0.01〜0.09質量%である。また、本発明における高濃度エマルジョンとは、ヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が0.1質量%以上のエマルジョン組成物を示し、高濃度エマルジョンにおけるヘマトコッカス藻由来の色素の含有量は、好ましくは0.1〜5.0質量%、より好ましくは0.2〜2.0質量%である。
【0023】
<酸化防止剤>
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンは、酸化防止剤として化合物群(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩、あるいはアスコルビン酸誘導体またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群、(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群、(c)ポリフェノール類からなる化合物群の少なくとも2群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有する。
【0024】
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンにおける酸化防止剤の組み合わせは、親水性の酸化防止剤と、油溶性の酸化防止剤の組み合わせることが好ましい。例えば、親水性の酸化防止剤としては化合物群(a)に属する化合物、油溶性の酸化防止剤としては化合物群(b)、(c)に属する化合物が挙げられる。
【0025】
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンにおける酸化防止剤の含有量は一般的には0.001〜5.0質量%であり、好ましくは0.01〜3.0質量%、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
【0026】
以下、化合物群(a)〜(c)の具体的な化合物例を挙げるが、本発明に使用できる化合物を制限するものではない。
【0027】
(a)アスコルビン酸またはエリソルビン酸またはその塩
アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩として、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸K、L−アスコルビン酸Ca、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L−アスコルビル等が挙げられる。これらのうち、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸Na、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビル酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L−アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、テトライソパルミチン酸L−アスコルビルが特に好ましい。
【0028】
エリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩として、エリソルビン酸、エリソルビン酸Na、エリソルビン酸K、エリソルビン酸Ca、エリソルビン酸リン酸エステル、エリソルビン酸硫酸エステル、エリソルビン酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸エリソルビル、等が挙げられる。これらのうち、エリソルビン酸、エリソルビン酸Naが特に好ましい。
【0029】
本発明に用いる化合物群(a)に属する酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、L−アスコルビン酸Na(武田薬品工業、扶桑化学、BASFジャパン、第一製薬ほか)、アスコルビン酸2−グルコシド(商品名 AA−2G:林原生物化学研究所)、L−アスコルビン酸燐酸Mg(商品名 アスコルビン酸PM「SDK」(昭和電工)、商品名 NIKKOL VC−PMG(日光ケミカルズ)、商品名 シーメート(武田薬品工業))、パルミチン酸アスコルビル(DSM ニュートリション ジャパン、金剛薬品、メルク、ほか)等が挙げられる。
【0030】
(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群
トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群として、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のトコフェロール及びその誘導体、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等が挙げられる。これらは、混合物の状態で使用する場合が多く、抽出トコフェロール、ミックストコフェロールなどと呼ばれる状態で使用できる。
【0031】
本発明に用いる化合物群(b)に属する酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、ミックストコフェノール(商品名 理研Eオイル800:理研ビタミン(株))、トコトリエノール(商品名 オリザトコトリエノール−90(オリザ油化))等が挙げられる。
【0032】
(c)ポリフェノール類からなる化合物群
ポリフェノール類からなる化合物群として、フラボノイド類(カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン類、クルクミン類、クマリン類などを挙げることができる。また、これらの化合物は、以下のような天然物由来の抽出物中に多く含まれるため、抽出物という状態で利用することができる。
【0033】
例えば、カンゾウ抽出物、キュウリ抽出物、ケイケットウ抽出物、ゲンチアナ(リンドウ)抽出物、ゲンノショウコ抽出物、コレステロール及びその誘導体、サンザシ抽出物、シャクヤク抽出物、イチョウ抽出物、コガネバナ(オウゴン)抽出物、ニンジン抽出物、マイカイカ(マイカイ、ハマナス)抽出物、サンペンズ(カワラケツメイ)抽出物、トルメンチラ抽出物、パセリ抽出物、ボタン(ボタンピ)抽出物、モッカ(ボケ)抽出物、メリッサ抽出物、ヤシャジツ(ヤシャ)抽出物、ユキノシタ抽出物、ローズマリー(マンネンロウ)抽出物、レタス抽出物、茶抽出物(烏龍茶、紅茶、緑茶等)、微生物醗酵代謝産物、羅漢果抽出物等が挙げられる(かっこ内は、植物の別名、生薬名等を記載した。)。これらのポリフェノール類のうち、特に好ましいものとしては、カテキン、ローズマリー抽出物、グルコシルルチン、エラグ酸、没食子酸を挙げることができる。
【0034】
本発明に用いる化合物群(c)に属する酸化防止剤は、一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、エラグ酸(和光純薬ほか)、ローズマリー抽出物(商品名 RM−21A、RM−21E:三菱化学フーズほか)、カテキン(商品名 サンカトールW−5、No.1:太陽化学、ほか)、没食子酸Na(商品名 サンカトール:太陽化学、ほか)、ルチン・グルコシルルチン・酵素分解ルチン(商品名 ルチンK−2、P−10:キリヤ化学、商品名 αGルチン:林原生物化学研究所、ほか)等が挙げられる。
【0035】
<界面活性剤>
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの調製に使用する界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の活性剤が用いられる。本発明のエマルジョン組成物における、界面活性剤の含有量は一般的には0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.02〜1.0質量%である。また、高濃度エマルジョンにおける、界面活性剤の含有量は一般的には0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.3〜10質量%である。
【0036】
前記アニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸セッケン;アルキルエーテルカルボン酸及びその塩;アミノ酸と脂肪酸の縮合等のカルボン酸塩;アルキルスルホン酸、アルケンスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、脂肪酸アミドのスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩とそのホルマリン縮合物のスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩;アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩等のリン酸塩;N−アシルアミノ酸系活性剤等が挙げられる。
【0037】
前記カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアミノアルコール脂肪酸誘導体等のアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩、芳香族四級アンモニウム塩、ピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0038】
前記非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、アルカノールアミド、糖エーテル、糖アミド等が挙げられる。
【0039】
前記両性界面活性剤としては、ベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体、リン脂質系(レシチン)等が挙げられる。
【0040】
本発明に使用する界面活性剤は一般に市販されているものを適宜用いることができる。例えば、脂肪酸として、花王(株)製ルナック シリーズ、新日本理化(株)製の各種脂肪酸、日本精化(株)製の各種脂肪酸などを挙げることができる。アルキル硫酸塩・ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩として花王(株) エマール シリーズなどを挙げることができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩として花王(株) カオーアキポ シリーズなどを挙げることができる。
【0041】
グリセリン脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製 NIKKOL MGO、NIKKOL DGO、NIKKOL MGS、NIKKOL Fの各シリーズ、花王(株)製エキセル シリーズなどを挙げることができる。有機酸モノグリセリドとして、理研ビタミン(株)製ポエムG−002などを挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、理研ビタミン(株)製ポエムJシリーズ、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL Tetraglynシリーズ、Decaglynシリーズなどを挙げることができる。ソルビタン脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL SSシリーズ、SOシリーズなど、花王(株)製エマゾール シリーズなどを挙げることができる。ショ糖脂肪酸エステルとして、三菱化学フーズ(株)製 リュートーシュガーエステル シリーズなどを挙げることができる。プロピレングリコール脂肪酸エステルとして、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL PMS−SEなどを挙げることができる。レシチンとして、理研ビタミン(株)製レシオンシリーズや、レシマールELなどを挙げることができる。
【0042】
<エマルジョン組成物の調製法>
(調製方法)
本発明のエマルジョン組成物および、高濃度エマルジョンの調製方法は、公知のエマルジョン調製方法にて調製することができる。詳細については、「乳化・可溶化の技術」(辻 著、工業図書(株)発行)の65−66頁、92−105頁に記載されており、凝集法・分散法のいずれも好ましく用いられる。また、「食品用乳化剤 第2版」(日高 著、幸書房発行)の88−90頁記載のように、(1)自己乳化法、(2)セッケン生成法、(3)単純乳化法、(4)転送乳化法、(5)界面活性剤法乳化法と分類されるいずれの方法も好ましいが、特に、高濃度エマルジョンの調製には、単純乳化法または界面活性剤法乳化法が好ましく、界面活性剤法乳化法が特に好ましい。
【0043】
また、本発明のエマルジョン組成物は、上記いずれの方法で調製して構わないが、単純乳化法または界面活性剤法乳化法が好ましく、特に、高濃度エマルジョンを経由して調製される場合は、界面活性剤法乳化法が特に好ましい。
【0044】
本発明のエマルジョン組成物は、高濃度エマルジョンを経由して以下の工程で調製されることが好ましい。高濃度エマルジョンを経由して本発明のエマルジョン組成物を調製する場合は、界面活性剤法乳化法であれば、エマルジョン組成物となる溶液に高濃度エマルジョンを攪拌しながら添加するだけで、所望のエマルジョン組成物を調製することができる。その希釈倍率は、5〜1000倍が好ましく、10〜200倍がより好ましい。
【0045】
(添加薬品)
本発明のエマルジョン組成物は、上記したヘマトコッカス藻由来の色素、酸化防止剤、界面活性剤の他に、各種オイル、水溶性溶媒(グリセリン、1,3−ブタンジオールなどの多価アルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール類)、水溶性ポリマー(例えば、キサンタンガム、アラビアガム、カラヤガム、カラギーナン、アルギン酸Na、ゼラチン、ポリアクリル酸Na、カルボマー、カルボキシメチルセルロースNaなど)、香料、防腐剤等を含有することができる。また、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物、医薬部外品組成物に仕上げるために必要な原材料や添加剤は、公知のものを使用することができ、具体的には、「食品添加剤便覧2005年版」(食品と科学社発行)、「天然物便覧」(食品と科学社発行)、「香粧品原料便覧 第5版」(フレグランスジャーナル社発行)、「日本 化粧品成分表示名称事典 第2版」(薬事日報社発行)、「第十四改正 日本薬局方」などに記載のものを挙げることができる。
【0046】
本発明のエマルジョン組成物の粒子径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは5〜100nmである。本発明の高濃度エマルジョンの粒子径は200nm以上であることが好ましく、より好ましくは300〜10000nmである。
【0047】
粒子径は、前述した調製方法における攪拌条件(せん断力・温度・圧力)や、添加剤の使用量、油相と水相比率、界面活性剤の使用量などの要因によって変動するが、本発明における粒子径の範囲内であれば、実用上問題ない。本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの粒子径は、粒度分布計等で計測することができる。
【0048】
本発明は、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有する油状成分中に、化合物群(a)〜(c)より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、エマルジョン組成物または高濃度エマルジョンを提供する。
【0049】
本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンは、食品組成物、化粧品組成物、医薬品組成物に含有させることができる。食品組成物の例として、清涼飲料水、炭酸飲料、錠剤、ソフトカプセル、魚肉練り製品、乳製品(飲料、アイスクリーム)、ゼリー、豆乳等が挙げられる。化粧品組成物の例として、化粧水、美容液、乳液、クリーム等が挙げられる。医薬品組成物の例として、シロップ、点眼薬、点鼻薬等が挙げられる。これら組成物における本発明のエマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの含有量はその目的により適宜調整することができる。
【実施例】
【0050】
実施例1:高濃度エマルジョンHDE−1〜7、および、エマルジョン組成物EM−1〜6、8、301の調製
【0051】
1−1:高濃度エマルジョンHDE−1の調製
高濃度エマルジョンHDE−1を下記に示す組成及び下記製法で調製した。下記成分(3)ミックストコフェロールは上記酸化防止剤の化合物群(b)に属する。
【0052】
<組成>
(成分) (質量%)
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率 20質量%) 5.0
(ASTOTS−S:武田紙器(株)製)
(2)オリーブオイル 0.2
(3)ミックストコフェロール 1.2
(理研Eオイル800:理研ビタミン(株)製)
(4)オレイン酸モノグリセリド 2.0
(エキセルO−95R:花王(株)製)
(5)グリセリン 47.39
(6)HO 40.0
(7)ショ糖ラウリン酸エステル 1.2
(リョートーシュガーエステルL−1695:三菱化学フーズ(株)製)
(8)ラウリン酸ポリグリセリル−10 3.0
(NIKKOL Decaglyn 1−L:日光ケミカルズ(株)製)
(9)防腐剤(メチルパラベン) 0.01
【0053】
<製法>
A.上記成分(1)〜(4)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保った。
B.上記成分(5)〜(8)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、加熱混合し、70℃に保った。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化した。乳化装置は、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて5分間攪拌し、Cを得た。
D.Cを冷却後上記成分(9)のエタノール溶液を加え、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、5000回転にて2分間攪拌し、均一に混合して高濃度エマルジョンHDE−1を得た。
【0054】
1−2:エマルジョン組成物EM−1の調製
1−1で得られた高濃度エマルジョンHDE−1を用いて、エマルジョン組成物EM−1を下記製法で調製した。ここで、下記成分(10)L−アスコルビン酸Naは上記酸化防止剤の化合物群(a)に属する。
【0055】
<組成>
(成分) (質量%)
(10)L−アスコルビン酸Na 0.5
(11)HO 98.5
(12)HDE−1 1.0
【0056】
<製法>
上記成分(10)に成分(11)を25℃にて加えて混合し、均一溶液にする。そこに、成分(12)を加え乳化して、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて4分間攪拌し、エマルジョン組成物EM−1を得た。
【0057】
1−3:エマルジョン組成物EM−301の調製
また、比較のためのエマルジョン組成物EM−301を下記組成および製法で調製した。
【0058】
<組成>
(成分) (質量%)
(10)L−アスコルビン酸Na 添加しなかった。
(11)HO 99.0
(12)HDE−1 1.0
【0059】
<製法>
上記成分(11)に、成分(12)を加え乳化して、エマルジョン組成物EM−301を得た。
【0060】
1−4:エマルジョン組成物EM−1、301の平均粒子径の測定および分光吸収測定
1−2および1−3の調製方法により得られたエマルジョン組成物EM−1およびEM301の平均粒子径を、粒度分布計(LB−550:堀場製作所製)で測定した(表1)。また、エマルジョン組成物EM−1の分光吸収測定(ND−1000:ナノドロップ社製)を行ったところ、可視域での極大波長はいずれも479nmであった。
【0061】
1−5:高濃度エマルジョンHDE−2〜6およびエマルジョン組成物EM−2〜6の調製
1−1において高濃度エマルジョンHDE−1の調製で使用した成分(7)ショ糖ラウリン酸エステルおよび成分(8)ラウリン酸ポリグリセリル−10の使用比率を変えることなく、使用量を10%ずつ減らし、かつ、乳化装置の攪拌条件において回転数を減少させて表1記載の粒子径が得られるように調節した以外は、1−1と同様の手順で、高濃度エマルジョンHDE−2〜6を調製した。
【0062】
すなわち、1−1における成分(7)および(8)の使用量を100%とした場合、HDE−2(90%)、HDE−3(80%)、HDE−4(70%)、HDE−5(60%)、HDE−6(50%)とし、トータル100質量%となるようにグリセリン量を調整してHDE−2〜6を調製した。また、乳化装置の回転数をHDE−2(14500回転)、HDE−3(14000回転)、HDE−4(13500回転)、HDE−5(13000回転)、HDE−6(12500回転)とした。
【0063】
さらに、得られたHDE−2〜6を用いて上記1−2と同様の条件によりエマルジョン組成物EM2〜6を調製した。さらに、得られたエマルジョン組成物EM−2〜6の平均粒子径を、粒度分布計(LB−550:堀場製作所製)で測定した(表1)。平均粒子径が200nm以上であったEM−5および6を比較例とした。
【0064】
1−6:高濃度エマルジョンHDE−7の調製
高濃度エマルジョンHDE−7を下記に示す組成及び下記製法で調製した。ここで、ミックストコフェロールは化合物群(b)に、L−アスコルビン酸Naは上記酸化防止剤の化合物群(a)に属する。
【0065】
<組成>
(成分) (質量%)
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率 20質量%)5.0
(ASTOTS−S:武田紙器(株)製)
(2)オリーブオイル 1.2
(3)ミックストコフェロール 1.2
(理研Eオイル800:理研ビタミン(株)製)
(4)オレイン酸モノグリセリド 2.0
(エキセルO−95R:花王(株)製)
(5)グリセリン 46.29
(6)HO 40.0
(7)ショ糖ラウリン酸エステル 1.2
(リョートーシュガーエステルL−1695:三菱化学フーズ(株)製)
(8)ラウリン酸ポリグリセリル−10 3.0
(NIKKOL Decaglyn 1−L:日光ケミカルズ(株)製)
(9)L−アスコルビン酸Na 0.1
(10)防腐剤(メチルパラベン) 0.01
【0066】
<製法>
A.上記成分(1)〜(4)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、70℃に保った。
B.上記成分(5)〜(9)を、容器に秤量し、70℃の恒温槽にて攪拌しながら加熱混合し、よく混合したことを確認し、加熱混合し、70℃に保った。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化した。乳化装置は、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、15000回転にて5分間攪拌し、Cを得た。
D.Cを冷却後上記成分(10)のエタノール溶液を加え、ホモジナイザー(SMT社製)を使用し、5000回転にて2分間攪拌し、均一に混合して高濃度エマルジョンHDE−1を得た。
【0067】
1−7:エマルジョン組成物EM−8の調製
1−6で得られたHDE−7を用いて、上記1−2と同様の条件で下記組成のエマルジョン組成物EM−8を調製した。得られたEM−8の平均粒子径を、粒度分布計(LB−550:堀場製作所製)で測定した(表1)。
【0068】
実施例2:エマルジョン組成物EM1〜6、8、301および高濃度エマルジョンHDE1〜7の評価
表1に示すエマルジョン組成物 EM1〜6、8、301及び高濃度エマルジョンHDE−1〜7について、以下の評価を行った。
【0069】
2−1:粒子径の保存安定性の評価
試料を2つに分け、一方を100mlガラス瓶に隙間なく充填し、50℃にて3日間保存した。その後、エマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの平均粒子径を、粒度分布計(LB−550:堀場製作所製)で測定した。保存前の平均粒子径をD0、保存後の平均粒子径をD1とし、次式にて変化率を求めた。保存安定性が悪い場合変化率は0より大きい方に振れることになる。
式:変化率(%)=(D1−D0)/D0 *100
以下の基準で評点をつけ、その結果を表1に示した。
4:0%以下または20%以内
3:20%を超え、50%以内(実用的に許容)
2:50%を超え、100%以内
1:100%超え
【0070】
2−2:色素の保存安定性の評価
試料を2つに分け、一方を100mlガラス瓶に隙間なく充填し、50℃にて3日間保存した。その後、エマルジョン組成物および高濃度エマルジョンの分光吸収測定を、分光光度計(ND−1000:ナノドロップ社製)で行った。保存前の479nmでの吸光度をAb0、保存後の479nmでの吸光度をAb1とし、次式にて変化率を求めた。保存安定性が悪い場合変化率は0より大きい方に振れる。
式:変化率(%)=(Ab0−Ab1)/Ab0 *100
以下の基準で評点をつけ、その結果を表1に示した。
4:0%以下または10%以内
3:10%を超え、20%以内(実用的に許容)
2:20%を超え、50%以内
1:50%超え
【0071】
【表1】

【0072】
実施例3:高濃度エマルジョンHDE−11〜22およびエマルジョン組成物EM−11〜22の調製
【0073】
3−1:高濃度エマルジョンHDE−11〜22の調製
1−6と同様の製法で下記組成の高濃度エマルジョンHDE−11〜22を調製した。HDE−11〜22の詳細な組成を、表2に示す。HDE−11〜21はヘマトコッカス藻色素を含有しており、HDE−22はアスタキサンチン(和光純薬試薬)を含有している。
【0074】
<組成>
(成分)
(1)ヘマトコッカス藻色素(アスタキサンチン類含有率 20質量%)またはアスタキサンチン(和光純薬試薬)
(2)オリーブオイル
(3)表2の化合物1
(4)ラウリン酸モノグリセリド
(5)グリセリン
(6)H
(7)ショ糖ラウリン酸エステル
(8)ラウリン酸ポリグリセリル−10
(9)表2の化合物2
(10)防腐剤(メチルパラベン)
【0075】
【表2】

【0076】
3−2:エマルジョン組成物EM−11〜22の調製
3−1で得られた高濃度エマルジョンHDE−11〜22を用いて、1−2と同様の条件でEM−11〜22を各々調製した。
【0077】
3−3:エマルジョン組成物EM−11〜22の評価
実施例1および2と同様の試験方法によりエマルジョン組成物EM11〜22の評価を行った。表3に示すように、本発明の試料はいずれも良好な粒子径の保存安定性と、色素の保存安定性を示した。
【0078】
【表3】

【0079】
実施例4:飲料
下記の組成および製法で飲料を調製した。ただし、本発明のHDE−1は、防腐剤を含有しないものを用いた。
【0080】
<組成>
レモン果汁 50g
ブドウ糖果糖液糖 110g
はちみつ 45g
クエン酸 2g
本発明のHDE−1 10g
レモンエッセンス 0.3g
L−アスコルビン酸Na 5g
飲料水 777.7g
【0081】
<製法>
以上を混合し、90℃にて殺菌して、褐色ガラス瓶に充填し飲料に供した。その結果、得られた飲料は、保存後の色の変化や、色素の分離もなく良好であった
【0082】
実施例5:食品(菓子)
下記の組成および製法でゼリーを調製した。ただし、本発明のHDE−7は、防腐剤を含有しないものを用いた。
【0083】
<組成>
ブドウ糖果糖液糖 110g
ショ糖 40g
冷凍イチゴ果実(スライス) 40g
カラギーナン 10g
クエン酸Na 2g
クエン酸 1.8g
本発明のHDE−7 8g
レモンエッセンス 0.3g
L−アスコルビン酸Na 1g
飲料水 786.9g
【0084】
<方法>
1.水にブドウ糖果糖液糖を溶解し、ショ糖・カラギーナンを添加してよく溶解させる。
2.残りの材料を添加して、混合しよく溶解させる。
3.得られた液を95℃にて加熱溶解し、アルミカップに入れて冷却した。
以上の手順にて、食品(菓子)に供した。その結果、得られた食品(菓子)は、保存後の色の変化や、色素の分離もなく良好であった
【0085】
実施例6:化粧品
下記の組成および製法で化粧品を調製した。
【0086】
<組成>
(1)1,3−ブチレングリコール 125g
(2)エタノール 125g
(3)HO 1500g
(4)ヒアルロン酸原液 0.25g
(5)スクワラン 125g
(6)ワセリン 50g
(7)ミツロウ 12.5g
(8)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 20g
(9)ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル30g
(10)本発明のHDE−7 2.5g
(11)防腐剤(メチルパラベン) 5g
(12)キサンタンガムの2%水溶液 500g
【0087】
<製法>
1.前記成分(1)〜(4)を混合し、70℃に保温する。
2.前記成分(5)〜(11)を70℃にて加熱溶解し、よく混合する。
3.2.で調製した液を1.の液に添加して、70℃にて均一に乳化した。
4.乳化後30℃に冷却し、前記成分(12)を加えて乳液を得た。
以上の手順にて、化粧品に供した。その結果、得られた化粧品は、保存後の色の変化や、色素の分離もなく良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1nm以上200nm未満の範囲のエマルジョン組成物であって、ヘマトコッカス藻由来の色素を含有する油状成分を含み、かつ、下記化合物群(a)〜(c)の少なくとも2群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
(a)アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩、あるいはエリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群
(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群
(c)ポリフェノール類からなる化合物群
【請求項2】
ヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が、0.001〜0.09質量%であることを特徴とする請求項1記載のエマルジョン組成物。
【請求項3】
ヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が0.1質量%以上でかつ、平均粒子径が200nm以上の高濃度エマルジョンであって、下記化合物群(a)〜(c)の少なくとも2群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含有することを特徴とするヘマトコッカス藻由来の色素を含有する高濃度エマルジョン。
(a)アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはその塩、あるいはエリソルビン酸またはエリソルビン酸誘導体またはその塩からなる化合物群
(b)トコフェロールまたはその誘導体からなる化合物群
(c)ポリフェノール類からなる化合物群
【請求項4】
エマルジョン組成物に含まれるヘマトコッカス藻由来の色素の含有量が0.1質量%以上の高濃度エマルジョンを経由して調製されることを特徴とする請求項1または2記載のエマルジョン組成物。
【請求項5】
高濃度エマルジョンが請求項3に記載の高濃度エマルジョンである請求項4記載のエマルジョン組成物。
【請求項6】
ヘマトコッカス藻由来の色素を含有する油状成分に、化合物群(a)〜(c)より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、請求項1、2、4および5のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物、または請求項3に記載の高濃度エマルジョン。
【請求項7】
化合物群(a)が、アスコルビン酸のグリコシル化誘導体およびリン酸塩含有誘導体、並びにそのエステルから選択されることを特徴とする、請求項1、2および4〜6のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または請求項3に記載の高濃度エマルジョン。
【請求項8】
化合物群(b)が、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノールおよびδ−トコトリエノールから選択されることを特徴とする、請求項1、2および4〜6のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または請求項3に記載の高濃度エマルジョン。
【請求項9】
化合物群(c)が、フラボノイド類、フェノール酸類、リグナン類、クルクミン類およびクマリン類から選択されることを特徴とする、請求項1、2および4〜6のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物または請求項3に記載の高濃度エマルジョン。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする食品組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする化粧品組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のエマルジョン組成物を含有することを特徴とする医薬品組成物。

【公開番号】特開2007−270073(P2007−270073A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100554(P2006−100554)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】