説明

エレベーターのドア診断装置及びドア診断方法

【課題】ドアの開閉動作に異常が生じた場合に異常を早期に知ることができるエレベーターのドア診断装置及びドア診断方法の提供。
【解決手段】エレベーターに設けられ、開閉可能なドア10に発生した異常を検出する検出装置を備えたエレベーターのドア診断装置において、検出装置は、ドア10に設けられた第1のマーカー11、第2のマーカー13と、これらの第1のマーカー11、第2のマーカー13を含むドア10の画像を取得するカメラ3と、このカメラ3で取得した画像に基づいて第1のマーカー11、第2のマーカー13の位置を検出し、検出した第1のマーカー11、第2のマーカー13の位置に基づいてドア10に発生した動作の異常の有無を解析する画像解析装置5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターに設けられ、開閉可能なドアに発生した異常を検出する検出装置を備えたエレベーターのドア診断装置及びドア診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベーターは、シルに案内されて開閉するドアと、このドアに設けられ、ドアの閉扉動作において乗客がドアに挟まれたときに反転するドアセフティシューとを備えている。また、エレベーターは、ドアに発生した異常、例えばシルの溝にゴミが挟まってドアが開閉不能となったり、あるいは乗客が必要以上にドアセフティシューを作動させることによってドアの開閉動作に不具合が生じた場合に適切に対応するために、ドアに発生した異常を検出する検出装置を備えている。
【0003】
このようなドアに発生した異常を検出する検出装置を備えたエレベーターの従来技術の1つとして、エレベーターの乗かごにカメラを設け、ドアの異常時にカメラを作動し、乗かご内の映像を通信手段を介して監視センタへと送信するようにしたエレベーターのドア異常確認装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このエレベーターのドア異常確認装置は、ドアに異常が発生した場合に、監視センタの作業員が乗かご内に設けられたカメラで撮影された映像を確認することにより、ドアに発生した異常の原因を把握し、乗客に対して適切な指示をするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−241063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された従来技術のエレベーターのドア異常確認装置は、上述したようにドアに異常が発生した場合、例えばシルにゴミが挟まってドアが開閉不能となった場合や、乗客又は物がドアに挟まれ、必要以上にドアセフティシューを作動させることによってドアの開閉動作が繰り返し行われている場合には、作業員が乗かご内に設けられたカメラで撮影された映像から開閉不能となったドアの状況を確認できるので、ドアに発生した異常の原因を容易に特定することができる。しかし、ドアが開閉不能になっておらず、ドアの開閉動作に不具合が生じている場合、例えばドアの駆動に用いるチェーンの伸び、又はすべり等によってドアの開閉速度に遅延が生じている場合には、作業員が乗かご内に設けられたカメラで撮影された映像を確認しても、作業員はドアの開閉速度に変化が生じていることを容易に把握することができず、ドアに発生した開閉動作の異常が見過ごされ易くなっている。仮に、このようなドアに発生した開閉動作の異常が見過ごされ、ドアの開閉動作の不具合が進行した場合には、ドアが開閉不能となり、作業者がエレベーターを修理するまでエレベーターを使用することができなくなることが懸念されている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、ドアの開閉動作に異常が生じた場合に異常を早期に知ることができるエレベーターのドア診断装置及びドア診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のエレベーターのドア診断装置は、エレベーターに設けられ、開閉可能なドアに発生した異常を検出する検出装置を備えたエレベーターのドア診断装置において、前記検出装置は、前記ドアに設けられたマーカーと、このマーカーを含む前記ドアの画像を取得する画像取得装置と、この画像取得装置で取得した前記画像に基づいて前記マーカーの位置を検出し、検出した前記マーカーの位置に基づいて前記ドアに発生した動作の異常の有無を解析する画像解析装置とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、マーカーがドアに設けられており、ドアの開閉動作が行われると、マーカーはドアと一体となって動く。従って、検出装置は、画像取得装置によってマーカーを含むドアの画像を取得し、画像解析装置によって当該画像におけるマーカーの位置変化を分析することにより、ドアの開閉動作におけるドアの動作変化を容易に把握することができる。これにより、画像解析装置は、ドアの開閉動作中におけるドアの動作変化に異常が見られたかどうかを解析することにより、ドアの開閉動作に異常が生じた場合に異常を早期に知ることができる。
【0010】
また、本発明に係るエレベーターのドア診断装置は、前記発明において、前記画像解析装置は、前記ドアの開閉動作に異常が発生していない平常状態のときの前記ドアの開閉動作における単位時間当たりの前記マーカーの位置変化量と、前記ドアの開閉動作に異常が発生している異常状態のときの前記ドアの開閉動作における単位時間当たりの前記マーカーの位置変化量とを比較する比較手段と、この比較手段によって比較した各前記マーカーの位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合に前記ドアの開閉動作に異常が発生していると判定し、前記比較手段によって比較した各前記マーカーの位置変化量の差が所定の値以下である場合に前記ドアの開閉動作に異常が発生していないと判定する判定手段とを有することを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、ドアの開閉動作に異常が生じている場合、例えばドアの駆動に用いるチェーンの伸び、又はすべり等によってドアの開閉速度に遅延が生じている場合には、ドアの開閉動作における単位時間当たりのマーカーの位置変化量が、平常状態のときのドアの開閉動作における単位時間当たりのマーカーの位置変化量と比べて小さくなる。このように、ドアの開閉動作に異常が生じている場合には、画像解析装置の比較手段が、ドアの開閉動作における単位時間当たりのマーカーの位置変化量と、平常状態のときのドアの開閉動作における単位時間当たりのマーカーの位置変化量とを比較すると、単位時間当たりの各マーカーの位置変化量が異なる。
【0012】
従って、画像解析装置の判定手段は、比較手段によって比較した単位時間当たりの各マーカーの位置変化量の差の大きさに応じて、ドアの開閉動作に生じた異常の有無を判定することにより、すなわち各マーカーの位置変化量の差が予め設定された所定の値よりも大きい場合にドアの開閉動作に異常が発生していると判定し、比較手段によって比較した各前記マーカーの位置変化量の差が当該所定の値以下である場合にドアの開閉動作に異常が発生していないと判定することにより、ドアの開閉動作に生じた異常の有無を正確に検出することができる。これにより、検出装置の信頼性を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係るエレベーターのドア診断装置は、前記発明において、前記検出装置の前記マーカーは、前記ドアのうち正面に設けられた第1のマーカーと、前記ドアのうち側面に設けられた第2のマーカーとを含むことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、ドアの開閉動作においてドアが完全に開き、ドアのうち正面に設けられた第1のマーカーがドアの戸袋に隠れた場合であっても、第2のマーカーは、ドアのうち側面に設けられているので、ドアの戸袋に隠れることがない。そのため、ドアが完全に開いた場合でも画像取得装置は第2のマーカーを含む画像を取得することができる。また、ドアの開閉動作においてドアが完全に閉まり、ドアのうち側面に設けられた第2のマーカーが見えなくなった場合であっても、第1のマーカーはドアのうち正面に設けられているので、画像取得装置は第1のマーカーを含む画像を取得することができる。従って、画像取得装置は、ドアの開閉動作の開始から終了まで第1のマーカー及び第2のマーカーの少なくとも一方を含む画像を取得することができ、検出装置の精度を高めることができる。
【0015】
また、本発明に係るエレベーターのドア診断方法は、エレベーターに設けられ、開閉可能なドアに発生した異常を検出する検出装置を備え、この検出装置は、前記ドアに設けられたマーカーと、このマーカーを含む前記ドアの画像を取得する画像取得装置と、この画像取得装置で取得した前記画像に基づいて前記マーカーの位置を検出し、検出した前記マーカーの位置に基づいて前記ドアに発生した動作の異常の有無を解析する画像解析装置とを有するエレベーターのドア診断装置に用いるエレベーターのドア診断方法において、前記画像取得装置が前記マーカーを含む前記ドアの画像を取得した後に、前記画像解析装置がこの画像に基づいて前記ドアの開閉動作における前記マーカーの位置変化量を検出し、検出した前記マーカーの位置変化量に基づいて前記ドアに発生した動作の異常を検出することを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、ドアの開閉動作が行われると、マーカーはドアと一体となって動くので、検出装置は、画像取得装置によってマーカーを含むドアの画像を取得した後に、画像解析装置によって当該画像におけるマーカーの位置変化を分析することにより、ドアの開閉動作におけるドアの動作変化を容易に把握することができる。これにより、画像解析装置は、ドアの開閉動作中におけるドアの動作変化に異常が見られたかどうかを解析することにより、ドアの開閉動作に異常が生じた場合に異常を早期に知ることができる。
【0017】
また、本発明に係るエレベーターのドア診断方法は、前記発明において、前記エレベーターのドア診断装置に備えられる前記検出装置の前記マーカーは、前記ドアのうち正面に設けられた第1のマーカーと、前記ドアのうち側面に設けられた第2のマーカーとを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエレベーターのドア診断装置及びドア診断方法は、ドアの開閉動作が行われた場合には、マーカーはドアと一体となって動くので、画像取得装置によって得られたマーカーを含むドアの画像から、画像解析装置によってマーカーの位置変化を分析することにより、ドアの開閉動作におけるドアの動作変化を容易に把握することができる。従って、ドアの開閉動作に異常が生じた場合には、検出装置は、画像解析装置によってドアの開閉動作中におけるドアの動作変化から異常が生じたことを検出できるので、ドアの開閉動作の異常を早期に知ることができ、ドアの開閉動作に異常が生じた段階でドアの修理及び改善を速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るエレベーターのドア診断装置の一実施形態の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るエレベーターのドア診断装置によって診断されるドアの開扉動作の開始状態(t0=0)を示す図である。
【図3】本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図2に示す第1のマーカーの位置座標を表示する図である。
【図4】本実施形態によって診断されるドアの開扉動作が開始してからt1経過した時のドアの状態を示す図である。
【図5】本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図4に示す第1のマーカー及び第2のマーカーの位置座標を表示する図である。
【図6】本実施形態によって診断されるドアの開扉動作が開始してからt2経過した時のドアの状態(t1<t2)を示す図である。
【図7】本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図6に示す第1のマーカー及び第2のマーカーの位置座標を表示する図である。
【図8】本実施形態によって診断されるドアの開扉動作が完了した状態を示す図である。
【図9】本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図8に示す第2のマーカーの位置座標を表示する図である。
【図10】本実施形態によって診断されるドアの開扉動作における経過時間と、本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像における第1のマーカー及び第2のマーカーの位置座標との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るエレベーターのドア診断装置及びドア診断方法を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1に示すように、本発明に係るエレベーターのドア診断装置の一実施形態は、エレベーターの乗かご2に設けられ、開閉可能なドア10に発生した異常を検出する検出装置を備えている。なお、図示されていないが、本実施形態は、乗かご2内に設けられる押釦や表示器等の各種の機器を備えている。
【0022】
検出装置は、ドア10に設けられたマーカーと、このマーカーを含むドア10の画像を取得する画像取得装置、例えば乗かご2内に設けられたカメラ3とを備えている。また、検出装置は、カメラ3に接続され、カメラ3で取得した画像を記録して管理する画像管理装置4と、カメラ3で取得した画像に基づいてマーカーの位置を検出し、検出したマーカーの位置に基づいてドア10に発生した動作の異常の有無を解析する画像解析装置5とを備えている。図4、図6に示すように、検出装置のマーカーは、ドア10のうち正面に設けられた第1のマーカー11と、ドア10のうち側面に設けられた第2のマーカー13とを含んでいる。なお、カメラ3は、乗かご2内においてドア10に対向する壁面の上方、すなわち第1のマーカー11及び第2のマーカー13を撮影することが可能な位置に設けられている。また、第1のマーカー11及び第2のマーカー13は、発光素材、蓄光素材、又は高反射素材等の視認性の高い素材であり、画像解析装置5における解析において誤認識を防ぐことができる素材からそれぞれ成っている。
【0023】
また、本実施形態は、画像管理装置4及び画像解析装置5に接続され、押釦や表示器等の各種の機器を制御する機器制御装置1と、この機器制御装置1からの信号に基づいてエレベーターを制御するエレベーター制御装置6とを備えている。さらに、本実施形態は、エレベーター制御装置6に接続され、エレベーターの運行状況や各種の機器の状態を監視する監視装置7と、この監視装置7に通信網8を介して接続され、エレベーターの運行状況の信号、各種の機器の状態の信号、及びエレベーターの異常が検出されたときに送信される信号を受信する監視センター9とを備えている。
【0024】
画像解析装置5は、ドア10の開閉動作に異常が発生していない平常状態のときのドア10の開閉動作における単位時間当たりのマーカー、例えば第1のマーカー11の位置変化量と、ドア10の開閉動作に異常が発生している異常状態のときのドア10の開閉動作における単位時間当たりの第1のマーカー11の位置変化量とを比較する第1の比較手段と、この第1の比較手段によって比較した各第1のマーカー11の位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合にドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、第1の比較手段によって比較した各第1のマーカー11の位置変化量の差が所定の値以下である場合にドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定する第1の判定手段とを内部に有している。
【0025】
また、画像解析装置5は、ドア10の開閉動作に異常が発生していない平常状態のときのドア10の開閉動作における単位時間当たりのマーカー、例えば第2のマーカー13の位置変化量と、ドア10の開閉動作に異常が発生している異常状態のときのドア10の開閉動作における単位時間当たりの第2のマーカー13の位置変化量とを比較する第2の比較手段と、この第2の比較手段によって比較した各第2のマーカー13の位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合にドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、第2の比較手段によって比較した各第2のマーカー13の位置変化量の差が所定の値以下である場合にドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定する第2の判定手段とを内部に有している。なお、画像解析装置5は、第1の判定手段及び第2の判定手段の少なくとも一方がドア10の開閉動作に異常が発生していると判定した場合、カメラ3で撮影された乗かご2内の画像を確認して乗かご2内に乗客がいるかどうかを検出する乗客検出手段を内部に有している。
【0026】
このように構成した本実施形態に係るドア診断装置にあっては例えば以下のようにしてドアの診断が行われる。
【0027】
図2は本実施形態に係るエレベーターのドア診断装置によって診断されるドアの開扉動作の開始状態(t0=0)を示す図、図3は本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図2に示す第1のマーカーの位置座標を表示する図、図4は本実施形態によって診断されるドアの開扉動作が開始してからt1経過した時のドアの状態を示す図、図5は本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図4に示す第1のマーカー及び第2のマーカーの位置座標を表示する図、図6は本実施形態によって診断されるドアの開扉動作が開始してからt2経過した時のドアの状態(t1<t2)を示す図、図7は本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図6に示す第1のマーカー及び第2のマーカーの位置座標を表示する図、図8は本実施形態によって診断されるドアの開扉動作が完了した状態を示す図、図9は本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像において図8に示す第2のマーカーの位置座標を表示する図、図10は本実施形態によって診断されるドアの開扉動作における経過時間と、本実施形態に備えられる画像解析装置によって解析される画像における第1のマーカー及び第2のマーカーの位置座標との関係を表す図である。
【0028】
本発明に係るエレベーターのドア診断装置に用いるエレベーターのドア診断方法の一実施形態は、カメラ3が第1のマーカー11、第2のマーカー13を含むドア10の画像を取得した後に、画像解析装置4がこの画像に基づいてドア10の開閉動作における第1のマーカー11、第2のマーカー13の位置変化量を検出し、検出した第1のマーカー11、第2のマーカー13の位置変化量に基づいてドア10に発生した動作の異常を検出する。
【0029】
具体的に本実施形態では、乗かご2のドア10の開閉動作、例えば開扉動作が行われると、乗かご2のドア10の開扉動作の開始時(t0=0)には、図2に示すように乗かご2のドア10は完全に閉まった状態となっている。そのため、第1のマーカー11は、ドア10の表面に現れており、カメラ3が設置された位置から見える状態となっている。一方、第2のマーカー13は、ドア10が閉じられていることにより、カメラ3が設置された位置から見えない状態となっている。このとき、カメラ3で取得され、画像解析装置5によって解析される画像における第1のマーカー11の位置座標は、図3に示すように(x01,y01)となっている。
【0030】
ドア10の開扉動作の開始時(t0=0)からt1経過時には、図4に示すようにドア10は少し開いた状態となり、第1のマーカー11はカメラ3が設置された位置から見える状態となっている。また、第2のマーカー13は、ドア10が開いたことにより、カメラ3が設置された位置から見える状態となっている。このとき、カメラ3で取得され、画像解析装置5によって解析される画像における第1のマーカー11の位置座標及び第2のマーカー13の位置座標は、図5に示すようにそれぞれ(x02,y02)、(x12,y12)である。
【0031】
ドア10の開扉動作の開始時(t0=0)からt2(t1<t2)経過時には、図6に示すように、ドア10は図4に示すドア10の状態よりも少し開いた状態となり、第1のマーカー11は、ドア10の開扉動作の開始時からt1経過時の状態と同様にカメラ3が設置された位置から見える状態となっている。また、第2のマーカー13は、ドア10の開扉動作の開始時からt1経過時のときの状態と同様にカメラ3が設置された位置から見える状態となっている。このとき、カメラ3で取得され、画像解析装置5によって解析される画像における第1のマーカー11の位置座標及び第2のマーカー13の位置座標は、図7に示すようにそれぞれ(x03,y03)、(x13,y13)である。
【0032】
ドア10の開扉動作が完了したときには、図8に示すように、ドア10が完全に開いた状態となり、第1のマーカー11は、ドア10の戸袋に入って隠れるので、カメラ3が設置された位置から見えない状態となっている。また、第2のマーカー13は、ドア10の開始時からt2経過時のときの状態と同様にカメラ3が設置された位置から見える状態となっている。このとき、カメラ3で取得され、画像解析装置5によって解析される画像における第2のマーカー13の位置座標は、図9に示すように(x14,y14)である。
【0033】
本実施形態では、画像解析装置5は、図10に示すようにカメラ3によって取得したドア10の開閉動作の時間経過毎に第1のマーカー11の位置座標及び第2のマーカー13の位置座標を記録した表を作成する。具体的には、画像解析装置5は、機器制御装置1からドア10の開扉動作の開始の信号を受信した時点を起点(t0=0)とし、画像管理装置4に記録される上述の図3、図5、図7、図9に示す画像を単位時間毎に静止画として切り出す。そして、画像解析装置5は、静止画とした単位時間毎の第1のマーカー11及び第2のマーカー13の位置座標(x0n,y0n)、(x1n,y1n)(n=0,1,2・・・)をそれぞれ記録し、第1のマーカー11及び第2のマーカー13の時間的推移を示すテーブルを作成する。
【0034】
画像解析装置5は、ドア10の開扉動作が行われる度に同様のテーブルを作成する。次に、画像解析装置5の第1の比較手段は、ドア10の開扉動作が行われる度に作成された各テーブルにおける第1のマーカー11の位置変化量と、予め作成されたドア10の開扉動作に異常が発生していない平常状態のときのテーブルにおける第1のマーカー11の位置変化量とを比較する。その後、画像解析装置5の第1の判定手段が、第1の比較手段によって比較した各第1のマーカー11の位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合にドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、第1の比較手段によって比較した各第1のマーカーの位置変化量の差が所定の値以下である場合にドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定する。
【0035】
同様に、画像解析装置5の第2の比較手段は、ドア10の開扉動作が行われる度に作成された各テーブルにおける第2のマーカー13の位置変化量と、予め作成されたドア10の開閉動作に異常が発生していない平常状態のときのテーブルにおける第2のマーカー13の位置変化量とを比較する。その後、画像解析装置5の第2の判定手段が、第2の比較手段によって比較した各第2のマーカー13の位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合にドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、第2の比較手段によって比較した各第2のマーカーの位置変化量の差が所定の値以下である場合にドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定する。
【0036】
このとき、画像解析装置5の乗客検出手段は、第1の判定手段及び第2の判定手段の少なくとも一方がドア10の開閉動作に異常が発生していると判定した場合、カメラ3で撮影された乗かご2内の画像から乗客を検出しなければ、ドア10の開閉動作の異常が乗客によるものではないと判断することができる。この場合、画像解析装置5は、ドア10の開閉動作に異常が発生していることを示す信号を機器制御装置1に送信する。
【0037】
一方、画像解析装置5の乗客検出手段は、第1の判定手段及び第2の判定手段の少なくとも一方がドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、カメラ3で撮影された乗かご2内の画像から乗客を検出した場合には、ドア10の開閉動作に異常が発生していることを示す信号を機器制御装置1に送信することを中止する。また、第1の判定手段及び第2の判定手段の双方がドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定した場合には、画像解析装置5は、ドア10の開閉動作に異常が発生していないことを示す信号を機器制御装置1に送信する。
【0038】
このようにしてドア10の開閉動作に異常が発生していることを示す信号が機器制御装置1へ送信された場合には、機器制御装置1からエレベーター制御装置6、監視装置7、及び監視センター9へ当該信号が送信され、機器制御装置1とエレベーター制御装置6は、それぞれ各種の機器及びエレベーターを制御する。一方、監視センター9がドア10の開閉動作に異常が発生していることを示す信号を受信すると、作業員がドア10の開閉動作に異常が発生しているエレベーターの建物へ出向き、異常が発生しているドア10の修理・改善を行う。
【0039】
このように構成したドア診断装置の一実施形態及びドア診断方法の一実施形態によれば、ドア10の開閉動作が行われると、第1のマーカー11及び第2のマーカー13はドア10と一体となって動くので、検出装置は、カメラ3によって第1のマーカー11及び第2のマーカー13を含むドア10の画像を取得し、画像解析装置5によって当該画像における第1のマーカー11及び第2のマーカー13の位置変化を分析することにより、ドア10の開閉動作におけるドア10の動作変化を容易に把握することができる。これにより、画像解析装置5は、ドア10の開閉動作中におけるドア10の動作変化に異常が見られたかどうかを解析することにより、ドア10の開閉動作に異常が生じた場合に異常を早期に知ることができ、ドア10の開閉動作に異常が生じた段階でドア10の修理及び改善を速やかに行うことができる。
【0040】
また、本発明に係るエレベーターのドア診断装置の一実施形態は、上述したようにドア10の開扉動作が行われる度に、画像解析装置5は、単位時間当たりの第1のマーカー11及び第2のマーカー13の時間的推移を示すテーブルを作成する。そして、第1の比較手段が、作成された各テーブルにおける第1のマーカー11の位置変化量と、予め作成されたドア10の開扉動作に異常が発生していない平常状態のときのテーブルにおける第1のマーカー11の位置変化量とを比較する。同様に、第2の比較手段が、作成された各テーブルにおける第2のマーカー13の位置変化量と、予め作成されたドア10の開扉動作に異常が発生していない平常状態のときのテーブルにおける第2のマーカー13の位置変化量とを比較する。ここで、ドア10の開閉動作に異常が生じている場合には、第1の比較手段によって比較した各第1のマーカー11の位置変化量が異なると共に、第2の比較手段によって比較した各第2のマーカー13の位置変化量が異なる。すなわち、ドア10の開閉動作に異常が生じている場合には、各第1のマーカー11の位置変化量に差が生じると共に、各第2のマーカー13の位置変化量に差が生じる。
【0041】
そのため、画像解析装置5の第1の判定手段が、第1の比較手段によって比較した各第1のマーカー11の位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合にドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、第1の比較手段によって比較した各第1のマーカーの位置変化量の差が所定の値以下である場合にドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定し、あるいは画像解析装置5の第2の判定手段が、第2の比較手段によって比較した各第2のマーカー13の位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合にドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、第2の比較手段によって比較した各第2のマーカー13の位置変化量の差が所定の値以下である場合にドア10の開閉動作に異常が発生していないと判定することにより、ドア10の開閉動作に生じた異常の有無を正確に検出することができる。これにより、検出装置の信頼性を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態は、検出装置のマーカーは、ドア10のうち正面に設けられた第1のマーカー11と、ドア10のうち側面に設けられた第2のマーカー13とを含むことにより、図8に示すようにドア10の開扉動作においてドア10が完全に開き、ドア10のうち正面に設けられた第1のマーカー11がドア10の戸袋に隠れた場合であっても、第2のマーカー13は、ドア10の戸袋に隠れることがない。そのため、ドア10が完全に開いた場合でもカメラ3は第2のマーカー13を含む画像を取得することができる。
【0043】
また、図2に示すようにドア10の開扉動作の開始時(t0=0)において、ドア10のうち側面に設けられた第2のマーカー13が見えない場合であっても、第1のマーカー11はドア10のうち正面に設けられているので、カメラ3は第1のマーカー11を含む画像を取得することができる。従って、カメラ3は、ドア10の開扉動作の開始から終了まで第1のマーカー11及び第2のマーカー13の少なくとも一方を含む画像を取得することができ、検出装置の精度を高めることができる。
【0044】
なお、本実施形態は、乗かご2のドア10の開閉動作のうち開扉動作が行われる場合について説明したが、開扉動作だけでなく閉扉動作が行われる場合についても同様に適用することができる。この場合、画像解析装置5は、乗かご2のドア10の開扉動作及び閉扉動作の双方において、ドア10の開閉動作に生じた異常の有無を検出するので、検出装置の精度をより高めることができる。
【0045】
また、本実施形態は、画像解析装置5の乗客検出手段は、第1の判定手段及び第2の判定手段の少なくとも一方がドア10の開閉動作に異常が発生していると判定し、カメラ3で撮影された乗かご2内の画像から乗客を検出したときに、ドア10の開閉動作に異常が発生していることを示す信号を機器制御装置1に送信することを中止した場合について説明したが、画像解析装置5の乗客検出手段が、カメラ3で撮影された乗かご2内の画像から乗客を検出したか否かに拘らず、画像解析装置5は、第1の判定手段及び第2の判定手段の少なくとも一方がドア10の開閉動作に異常が発生していると判定したときに、ドア10の開閉動作に異常が発生していることを示す信号を機器制御装置1に送信してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 機器制御装置
2 乗かご
3 カメラ(画像取得装置)
4 画像管理装置
5 画像解析装置
6 エレベーター制御装置
7 監視装置
8 通信網
9 監視センター
10 ドア
11 第1のマーカー
13 第2のマーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターに設けられ、開閉可能なドアに発生した異常を検出する検出装置を備えたエレベーターのドア診断装置において、
前記検出装置は、前記ドアに設けられたマーカーと、このマーカーを含む前記ドアの画像を取得する画像取得装置と、この画像取得装置で取得した前記画像に基づいて前記マーカーの位置を検出し、検出した前記マーカーの位置に基づいて前記ドアに発生した動作の異常の有無を解析する画像解析装置とを備えたことを特徴とするエレベーターのドア診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターのドア診断装置において、
前記画像解析装置は、前記ドアの開閉動作に異常が発生していない平常状態のときの前記ドアの開閉動作における単位時間当たりの前記マーカーの位置変化量と、前記ドアの開閉動作に異常が発生している異常状態のときの前記ドアの開閉動作における単位時間当たりの前記マーカーの位置変化量とを比較する比較手段と、この比較手段によって比較した各前記マーカーの位置変化量の差が所定の値よりも大きい場合に前記ドアの開閉動作に異常が発生していると判定し、前記比較手段によって比較した各前記マーカーの位置変化量の差が所定の値以下である場合に前記ドアの開閉動作に異常が発生していないと判定する判定手段とを有することを特徴とするエレベーターのドア診断装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレベーターのドア診断装置において、
前記検出装置の前記マーカーは、前記ドアのうち正面に設けられた第1のマーカーと、前記ドアのうち側面に設けられた第2のマーカーとを含むことを特徴とするエレベーターのドア診断装置。
【請求項4】
エレベーターに設けられ、開閉可能なドアに発生した異常を検出する検出装置を備え、この検出装置は、前記ドアに設けられたマーカーと、このマーカーを含む前記ドアの画像を取得する画像取得装置と、この画像取得装置で取得した前記画像に基づいて前記マーカーの位置を検出し、検出した前記マーカーの位置に基づいて前記ドアに発生した動作の異常の有無を解析する画像解析装置とを有するエレベーターのドア診断装置に用いるエレベーターのドア診断方法において、
前記画像取得装置が前記マーカーを含む前記ドアの画像を取得した後に、前記画像解析装置がこの画像に基づいて前記ドアの開閉動作における前記マーカーの位置変化量を検出し、検出した前記マーカーの位置変化量に基づいて前記ドアに発生した動作の異常を検出することを特徴とするエレベーターのドア診断方法。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベーターのドア診断方法において、
前記エレベーターのドア診断装置に備えられる前記検出装置の前記マーカーは、前記ドアのうち正面に設けられた第1のマーカーと、前記ドアのうち側面に設けられた第2のマーカーとを含むことを特徴とするエレベーターのドア診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−241044(P2011−241044A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114550(P2010−114550)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】