説明

キャンバ制御装置

【課題】タイヤの偏摩耗が進むのを抑制することができ、タイヤの寿命を長くすることができるようにする。
【解決手段】車両のボディと、複数の車輪と、各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、タイヤが使用された区間におけるキャンバの累積変量を記録するための累積変量記録部と、累積変量記録部に記録されたキャンバの累積変量に対応させて、キャンバ可変機構によって前記所定の車輪に負のキャンバを付与するキャンバ付与処理手段とを有する。キャンバの累積変量に対応させてキャンバが付与されるので、タイヤの寿命を長くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンバ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、後方の車輪に負のキャンバ(ネガティブキャンバ)を付与することができるようにした車両が提供されている。
【0003】
この種の車両においては、車両を直進させて走行させるとき、すなわち、車両の直進走行時に、左後方及び右後方の各車輪のタイヤに、互いに対向する方向にキャンバスラストを発生させることができるので、車両の直進走行時の安定性(以下「走行安定性」という。)を高くすることができる。また、ステアリングホイールを操作して車両を旋回させるとき、すなわち、車両の旋回時に、車両に遠心力が発生するので、左後方及び右後方の各車輪のうちの外周側の車輪(外輪)の接地荷重が大きくなり、外周側の車輪のタイヤに発生するキャンバスラストが内周側の車輪(内輪)のタイヤに発生するキャンバスラストより大きくなる。したがって、車両に十分な求心力を発生させることができるので、車両の旋回時の安定性(以下「旋回安定性」という。)を高くすることができる。なお、前記接地荷重は、車輪におけるタイヤが路面を押圧する荷重である。
【0004】
ところが、一般に、車輪にキャンバが付与された状態で車両を低速で走行させると、タイヤに偏摩耗が発生してしまう。
【0005】
そこで、前記車両においては、車速を検出し、車両を高速で走行させている間だけ、後方の車輪に負のキャンバを付与することによって、タイヤに偏摩耗が発生するのを抑制するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−193781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の車両においては、負のキャンバが付与される頻度が高く、しかも、負のキャンバが付与される時間が長いので、タイヤの偏摩耗が進むのを抑制することができない。したがって、タイヤの寿命が短くなってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、タイヤの偏摩耗が進むのを抑制することができ、タイヤの寿命を長くすることができるキャンバ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明のキャンバ制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、該各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、タイヤが使用された区間におけるキャンバの累積変量を記録するための累積変量記録部と、該累積変量記録部に記録されたキャンバの累積変量に対応させて、前記キャンバ可変機構によって前記所定の車輪に負のキャンバを付与するキャンバ付与処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キャンバ制御装置においては、車両のボディと、該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、該各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、タイヤが使用された区間におけるキャンバの累積変量を記録するための累積変量記録部と、該累積変量記録部に記録されたキャンバの累積変量に対応させて、前記キャンバ可変機構によって前記所定の車輪に負のキャンバを付与するキャンバ付与処理手段とを有する。
【0011】
この場合、キャンバの累積変量に対応させてキャンバが付与されるので、タイヤの偏摩耗が所定量進むと、各車輪にキャンバが付与される頻度が低くなる。
【0012】
したがって、タイヤの偏摩耗が進むのが抑制されるので、タイヤの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における車両の概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における車輪の断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第1のメインフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第2のメインフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施の形態における操縦安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態におけるモード設定処理のサブルーチンを示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における接地荷重判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態におけるモード設定処理のサブルーチンを示す図である。
【図14】本発明の第5の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図2は本発明の第1の実施の形態における車両の概念図である。
【0016】
図において、11は車両の本体であるボディ、12は駆動源としてのエンジン、WLF、WRF、WLB、WRBは、前記ボディ11に対して回転自在に配設された左前方、右前方、左後方及び右後方の車輪である。なお、車輪WLF、WRFによって前輪が、車輪WLB、WRBによって後輪が構成される。
【0017】
前記車両は、後輪駆動方式の構造を有し、前記車輪WLB、WRBが駆動輪として機能する。そして、エンジン12と各車輪WLB、WRBとが第1の伝動軸としてのプロペラシャフト17、差動装置18及び第2の伝動軸としてのドライブシャフト46を介して連結され、エンジン12を駆動することによって発生させられた回転が車輪WLB、WRBに伝達される。なお、本実施の形態において、車両は後輪駆動方式の構造を有するようになっているが、前輪駆動方式の構造を有するようにしたり、四輪駆動方式の構造を有するようにしたりすることもできる。また、駆動源としてエンジン、発電機及びモータを配設してハイブリッド型車両を構成するようにしたり、駆動源としてモータを配設して電気自動車を構成するようにしたりすることもできる。
【0018】
また、13は車両の操舵を行うための操作部としての、かつ、操舵部材としてのステアリングホイール、14は車両を加速するための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル、15は車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダルである。
【0019】
そして、31、32は、それぞれ、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に配設され、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのキャンバ可変機構としてのアクチュエータである。なお、本実施の形態においては、ボディ11と各車輪WLB、WRBとの間に各アクチュエータ31、32が配設されるようになっているが、ボディ11と各車輪WLF、WRFとの間にアクチュエータを配設したり、ボディ11と各車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間にアクチュエータを配設したりすることができる。
【0020】
ところで、前記車輪WLF、WRF、WLB、WRBは、アルミニウム合金等によって形成された図示されないホイール、及び該ホイールの外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ36を備える。そして、該タイヤ36として、後述される損失正接を小さくすることにより、タイヤ36のトレッドの変形によって発生する転がり抵抗が小さくされた低転がり抵抗タイヤが使用される。本実施の形態においては、転がり抵抗を小さくするためにタイヤ36の幅が通常のタイヤより小さくされるが、トレッドの溝のパターンであるトレッドパターンを、転がり抵抗が小さくなるような形状にしたり、少なくともトレッドの部分の材料を、転がり抵抗が小さいものにしたりすることができる。
【0021】
なお、前記損失正接は、トレッドが変形する際のエネルギーの吸収の度合を表し、貯蔵剪(せん)断弾性率に対する損失剪断弾性率の比で表すことができる。損失正接が小さいほどトレッドによって吸収されるエネルギーが少なくなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が小さくなり、タイヤ36に発生する摩耗が少なくなる。これに対して、損失正接が大きいほどトレッドによって吸収されるエネルギーが多くなるので、タイヤ36に発生する転がり抵抗が大きくなり、タイヤ36に発生する摩耗が多くなる。
【0022】
また、前記構成の車両においては、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるので、燃費を良くすることができる。
【0023】
次に、各車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのアクチュエータ31、32について説明する。この場合、アクチュエータ31、32の構造は同じであるので、車輪WLB及びアクチュエータ31についてだけ説明する。
【0024】
図3は本発明の第1の実施の形態における車輪の断面図である。
【0025】
図において、WLBは車輪、21はホイール、31はアクチュエータ、36はタイヤである。
【0026】
前記アクチュエータ31は、ベース部材としての図示されないナックルに固定されたキャンバ制御用の駆動部としてのモータ41、前記ナックルに対して揺動自在に配設された可動部材としての可動プレート43、前記モータ41の回転運動を可動プレート43の揺動運動に変換する運動方向変換機構としてのクランク機構45、前記エンジン12(図2)の回転をホイール21に伝達する前記ドライブシャフト46等を備える。前記ホイール21は、可動プレート43に対して回転自在に支持され、ドライブシャフト46と連結される。
【0027】
また、前記クランク機構45は、前記モータ41の出力軸に取り付けられた第1の変換要素としてのウォームギヤ51、前記ナックルに対して回転自在に配設され、前記ウォームギヤ51と噛(し)合させられる第2の変換要素としてのウォームホイール52、及び該ウォームホイール52と可動プレート43とを連結する第3の変換要素としての、かつ、連結要素としてのアーム53を有する。該アーム53は、一端において、ウォームホイール52の回転軸から偏心させた位置で、第1の連結部を介してウォームホイール52と連結され、他端において、可動プレート43の上端で、第2の連結部を介して可動プレート43と連結される。この場合、前記可動プレート43によって第4の変換要素が構成される。
【0028】
前記ウォームギヤ51及びウォームホイール52によって、ウォームギヤ51及びウォームホイール52の各回転運動の軸心の向きが変換され、ウォームホイール52及びアーム53によってウォームホイール52の回転運動がアーム53の直進運動に変換され、アーム53及び可動プレート43によってアーム53の直進運動が可動プレート43の揺動運動に変換される。
【0029】
したがって、モータ41を駆動すると、ウォームギヤ51及びウォームホイール52が回転させられ、アーム53が進退させられ、可動プレート43が揺動させられる。その結果、可動プレート43が回動させられ、路面上の垂線に対して傾けられた角度と等しい角度のキャンバが車輪WLBに付与される。
【0030】
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
【0031】
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の制御ブロック図である。
【0032】
図において、16はコンピュータを構成する制御部、61は第1の記憶部としてのROM、62は第2の記憶部としてのRAM、63は車速を検出する車速検出部としての車速センサ、64は操作者である運転者による前記ステアリングホイール13(図2)の操作量を表す操舵量としてのステアリング角度を検出する操舵量検出部としての、かつ、ステアリング操作量検出部としてのステアリングセンサ、65は車両のヨーレートを検出するヨーレート検出部としてのヨーレートセンサ、66は横Gを検出する第1の加速度検出部としての横Gセンサ、67は前後Gを検出する第2の加速度検出部としての前後Gセンサ、68は各車輪WLB、WRBに付与されたキャンバを検出するキャンバ検出部としてのキャンバセンサ、69は車両の走行距離を検出する距離検出部としての距離センサ、71は運転者によるアクセルペダル14の操作量を表す踏込量(アクセル開度)を検出するアクセル操作量検出部としてのアクセルセンサ、72は運転者によるブレーキペダル15の操作量を表す踏込量(ブレーキストローク)を検出するブレーキ操作量検出部としてのブレーキセンサ、73は各車輪WLB、WRBの図示されないサスペンション装置のストロークを検出する懸架検出部としてのサスストロークセンサ、75は各車輪WLB、WRBに加わる荷重を検出する荷重検出部としての荷重センサ、76はタイヤ36の潰れ代、すなわち、タイヤ潰れ代を検出するタイヤ潰れ代検出部としてのタイヤ潰れ代センサ、70は表示部である。また、前記制御部16に時刻を取得するための計時処理部としての図示されないタイマが内蔵される。前記ボディ11、制御部16、アクチュエータ31、32、車輪WLB、WRB等によってキャンバ制御装置が構成される。
【0033】
なお、ステアリングセンサ64は、操舵量として、ステアリング角度に代えて、ステアリング角度の変化率を表すステアリング角速度、該ステアリング角速度の変化率を表すステアリング角加速度、車輪WLF、WRFの舵角、舵角の変化率を表す舵角速度、該舵角速度の変化率を表す舵角加速度等を検出することができ、アクセルセンサ71は、アクセルペダル14の踏込量に代えて、アクセルペダル14の操作量を表す踏込速度、踏込加速度等を検出することができ、ブレーキセンサ72は、ブレーキペダル15の踏込量に代えて、ブレーキペダル15の操作量を表す踏込速度、踏込加速度等を検出することができる。
【0034】
また、前記サスストロークセンサ73は、ハイトセンサ、磁気センサ等によって構成され、荷重センサ75は、サスペンション装置に配設されたロードセル(歪みセンサ)によって構成され、タイヤ潰れ代センサ76は、タイヤ36に配設されたロードセル(歪みセンサ)によって構成される。
【0035】
ところで、タイヤ36の転がり抵抗が小さい場合、タイヤ36の剛性が低下する。そこで、本実施の形態においては、タイヤ36の剛性が低下した場合でも、車両の走行安定性、及び車両の旋回安定性を高くすることができるように、所定のキャンバ付与条件が成立したかどうかが判断され、所定のキャンバ付与条件が成立したと判断された場合、前記各アクチュエータ31、32が作動させられ、各車輪WLB、WRBに所定の負のキャンバθが付与される。
【0036】
この場合、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させるのに伴ってタイヤ36に偏摩耗が発生し、偏摩耗が進むと、タイヤ36の寿命が短くなってしまう。
【0037】
そこで、本実施の形態においては、タイヤ36の偏摩耗の進行の度合を表す進み度合に対応させてキャンバ付与条件を設定するようにしている。
【0038】
次に、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、キャンバθの付与を解除したりするための制御部16の動作について説明する。
【0039】
図4は本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第1のメインフローチャート、図5は本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示す第2のメインフローチャート、図6は本発明の第1の実施の形態における操縦安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図8は本発明の第1の実施の形態におけるモード設定処理のサブルーチンを示す図、図9は本発明の第1の実施の形態における接地荷重判定処理のサブルーチンを示す図である。
【0040】
まず、制御部16の図示されない判定指標取得処理手段は、判定指標取得処理を行い、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与したり、キャンバθの付与を解除したりするために必要な判定指標、本実施の形態においては、車両の状態を表す車両状態、及び運転者による各操作部の操作の状態を表す操作状態を取得する(ステップS1、S2)。
【0041】
そのために、前記判定指標取得処理手段は、前記ヨーレートセンサ65、横Gセンサ66、前後Gセンサ67、キャンバセンサ68、サスストロークセンサ73、荷重センサ75、タイヤ潰れ代センサ76等の各センサのセンサ出力を読み込み、車両状態として、ヨーレート、横G、前後G、キャンバθ、サスストローク、荷重、タイヤ潰れ代等の情報を取得する。また、前記判定指標取得処理手段は、サスストロークに基づいてロール角を算出し、該ロール角を車両状態として取得する。なお、ロール角検出部としてロール角センサを配設し、該ロール角センサのセンサ出力を読み込むことによって、ロール角を取得することもできる。
【0042】
そして、前記判定指標取得処理手段は、ステアリングセンサ64、アクセルセンサ71、ブレーキセンサ72等の各センサのセンサ出力を読み込み、操作状態として、ステアリング角度、アクセルペダル14の踏込量、ブレーキペダル15の踏込量等を取得する。また、前記判定指標取得処理手段は、ステアリング角速度、ステアリング角加速度、車輪WLF、WRFの舵角、舵角速度、舵角加速度、アクセルペダル14の踏込速度、アクセルペダル14の踏込加速度、ブレーキペダル15の踏込速度、ブレーキペダル15の踏込加速度等を操作状態として取得する。
【0043】
次に、制御部16の図示されない第1のキャンバ要否判定処理手段としての操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、第1のキャンバ要否判定処理としての操縦安定キャンバ要否判定処理を行い、車両の旋回時に、旋回用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS3、S4)。そのために、前記操縦安定キャンバ要否判定処理手段は、ステアリング角度を読み込み、ステアリング角度が閾(しきい)値rth以上であるかどうかを判断し(ステップS3−1)、ステアリング角度が閾値rth以上であると判断された場合、前記旋回用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS3−2)。
【0044】
そして、旋回用のキャンバ付与条件が成立したと判断された場合、制御部16の図示されないキャンバ判定処理手段は、キャンバ判定処理を行い、キャンバθを読み込み、キャンバθが、
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
であるかどうかによって、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS5)。なお、値αは、車両ごとにあらかじめ設定された、定常状態におけるキャンバである。
【0045】
各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていると判断された場合、制御部16は処理を終了し、キャンバθが付与されていないと判断された場合、制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段は、キャンバ制御処理を行う。すなわち、前記キャンバ制御処理手段のキャンバ付与処理手段は、キャンバ付与処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBにキャンバθ
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
を付与する(ステップS6)。
【0046】
このとき、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるのに伴って、車輪WLB、WRBのタイヤ36に互いに対向する方向にキャンバスラストが発生するが、車両を左方に向けて旋回させる場合は、車両に遠心力が発生するので、外周側の車輪WRB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WRBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WLB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。また、車両を右方に向けて旋回させる場合は、外周側の車輪WLB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WLBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WRB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。
【0047】
したがって、車両に十分な求心力を発生させることができるので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、旋回安定性を高くすることができる。
【0048】
これに対して、前記操縦安定キャンバ要否判定処理において、旋回用のキャンバ付与条件が成立しないと判断された場合、制御部16の図示されない第2のキャンバ要否判定処理手段としての直進安定キャンバ要否判定処理手段は、第2のキャンバ要否判定処理としての直進安定キャンバ要否判定処理を行い、車両の直進走行時に、直進走行用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断する(ステップS7、S8)。
【0049】
ところで、該直進走行用のキャンバ付与条件が成立すると、前述されたように、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるが、一律にキャンバθが付与されると、タイヤ36の偏摩耗が進み、タイヤ36の寿命が短くなってしまう。
【0050】
そこで、本実施の形態において、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に対応させて直進走行用のキャンバ付与条件を設定(変更)し、設定された直進走行用のキャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するようになっている。
【0051】
そのために、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のモード設定処理手段は、モード設定処理を行い、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードの設定を行う(ステップS7−1)。
【0052】
すなわち、モード設定処理手段のキャンバ付与累積変量算出処理手段は、キャンバ付与累積変量算出処理を行い、各車輪WLB、WRBに新しいタイヤ36が取り付けられたタイミングから現在に至るまでの時間を、タイヤ36が使用された区間であるタイヤ使用区間τとしたときに、タイヤ使用区間τ中に、キャンバθがどの程度の頻度で、かつ、各タイヤ36にどの程度の負荷を加えながら各車輪WLB、WRBに付与されたか、すなわち、タイヤ36の偏摩耗の進み度合を表すキャンバθの累積変量σを算出する(ステップS7−1−1)。
【0053】
本実施の形態において、累積変量σは、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されている間に車両が走行した距離をLiとし、キャンバθが付与されている間の車速の平均値を表す平均車速をvaとし、キャンバθが付与されている間の各車輪WLB、WRBの接地荷重の指標を表す接地荷重指標の平均値を表す平均接地荷重をρaとしたとき、少なくとも距離Liの関数f(Li)、本実施の形態においては、距離Li、平均速度va及び平均接地荷重ρaの関数f(Li,va,ρa)で表すことができる。前記距離Li、平均速度va及び平均接地荷重ρaによって、累積変量σを算出するための変数、すなわち、累積変数が構成される。なお、前記累積変量σは距離Liの累積値ΣLiで表したり、キャンバθが付与された回数で表したりすることもできる。
【0054】
そのために、前記キャンバ付与累積変量算出処理手段の算出指標取得処理手段は、算出指標取得処理を行い、前記距離Li、平均速度va及び平均接地荷重ρaを算出するための指標、すなわち、算出指標として、キャンバθ、車速、走行距離(総走行距離)及び接地荷重指標を取得する。なお、該接地荷重指標は、タイヤ潰れ代、サスストローク、前後G、ヨーレート、ロール角、荷重、ブレーキストローク、アクセル開度、ステアリング角度、ステアリング角速度、ステアリング角加速度等のうちの少なくとも一つから成る。
【0055】
続いて、前記キャンバ付与累積変量算出処理手段のキャンバ判定処理手段は、キャンバ判定処理を行い、キャンバθを読み込み、キャンバθが、
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
であるかどうかによって、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する。
【0056】
次に、前記キャンバ付与累積変量算出処理手段の累積変量算出実行処理手段は、累積変量算出実行処理を行い、キャンバθが付与されている間の各制御タイミングにおける時刻、車速、走行距離及び接地荷重指標を読み込み、キャンバθが付与されるたびに、前記時刻に基づいて、キャンバθが付与されている間に経過した時間、すなわち、経過時間を算出し、前記走行距離に基づいて距離Liを算出し、前記経過時間及び距離Liに基づいて平均車速vaを算出し、前記経過時間及び接地荷重指標に基づいて平均接地荷重ρaを算出する。続いて、前記累積変量算出実行処理手段は、前記距離Li、平均速度va及び平均接地荷重指標ρaに基づいて累積変量σを算出する。
【0057】
そして、前記RAM62(図1)に、累積変量σを記録するための累積変量記録部としての累積変量記録領域が設定され、制御部16の図示されない累積変量記録処理手段は、累積変量記録処理を行い、キャンバθの付与、及び付与の解除が行われるたびに、RAM62に累積変量σを記録(更新)し、新しいタイヤ36が取り付けられると、累積変量記録領域を初期化する。
【0058】
このようにして、累積変量σが算出され、RAM62に記録されると、前記モード設定処理手段の進み度合判定処理手段としての累積変量判定処理手段は、進み度合判定処理としての累積変量判定処理を行い、RAM62から累積変量σを読み出し、累積変量σが閾値σth以下であるかどうかによって、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっているかどうかを判断する(ステップS7−1−2)。
【0059】
そして、累積変量σが閾値σth以下であり、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっていると判断された場合、モード設定処理手段の通常モード設定処理手段は、通常モード設定処理を行い、キャンバ制御モードとして通常モードを設定する(ステップS7−1−3)。
【0060】
これに対して、累積変量σが閾値σthより大きく、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっていないと判断された場合、モード設定処理手段の通知処理手段は、通知処理を行い、表示部70に、偏摩耗の進み度合、及びタイヤ36のローテーション、交換等を促す旨を通知(表示)することによって所定の警告を行う(ステップS7−1−4)。
【0061】
続いて、前記モード設定処理手段の偏摩耗モード設定処理手段は、偏摩耗モード設定処理を行い、キャンバ制御モードとして偏摩耗モードを設定する(ステップS7−1−5)。
【0062】
そして、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のモード判定処理手段は、モード判定処理を行い、前記モード設定処理手段によって通常モードが設定されたかどうか(偏摩耗モードが設定されたかどうか)を判断し(ステップS7−2)、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のキャンバ付与条件設定処理手段は、キャンバ付与条件設定処理を行い、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、車両状態及び操作状態に基づいて、キャンバ制御モードごとにキャンバ付与条件を設定する。すなわち、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件を通常モード用のキャンバ付与条件として設定し、偏摩耗モードが設定された場合、前記通常モード用のキャンバ付与条件よりキャンバθを付与する頻度(割合)が低いか、又はキャンバθを付与しないキャンバ付与条件を偏摩耗モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0063】
そのために、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて車速算出値、本実施の形態においては、平均車速vaxを算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度rayを算出する。
【0064】
また、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値vthi及び過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値rthiを、通常モードが設定された場合、それぞれvth1、rth1とし、偏摩耗モードが設定された場合、それぞれvth2、rth2とする(ステップS7−3、S7−4)。
【0065】
そして、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいことを、通常モード用のキャンバ付与条件として設定し、偏摩耗モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいことを、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0066】
なお、この場合、閾値vth1、vth2は、
vth1<vth2
になるように、閾値rth1、rth2は、
rth1>rth2
になるようにあらかじめ設定され、RAM62に記録される。また、閾値rth1は閾値rthより小さく設定される。前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、直進安定キャンバ要否判定処理を行うに当たり、RAM62を参照し、各閾値vth1、vth2、rth1、rth2を読み出す。
【0067】
このようにして、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードが設定され、キャンバ付与条件が設定されると、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のキャンバ付与条件成立判断処理手段は、キャンバ付与条件成立判断処理を行い、車速及びステアリング角度を読み込み、キャンバ制御モードに応じたキャンバ付与条件が成立しているかどうかを判断する。
【0068】
すなわち、通常モードが設定された場合、キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいかどうかを判断し(ステップS7−5)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合、通常モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−6)。
【0069】
また、偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいかどうかを判断し(ステップS7−5)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さい場合、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−6)。
【0070】
この場合、前記閾値vth2を十分に大きい値に設定することによって、偏摩耗モードが設定されても、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立せず、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されないようにすることができる。
【0071】
このようにして、直進走行用(通常モード用又は偏摩耗モード用)のキャンバ付与条件が成立すると、前記キャンバ判定処理手段は、キャンバθを読み込み、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS9)。各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていないと判断された場合、前記キャンバ付与処理手段は、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する(ステップS10)。
【0072】
このとき、各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与するのに伴って、車輪WLB、WRBのタイヤ36に互いに対向する方向にキャンバスラストが発生するので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、各車輪WLB、WRBに外力が加わった場合は、外力と逆方向のキャンバスラストが大きくなる。したがって、車両の復元力が大きくなり、走行安定性を高くすることができる。
【0073】
続いて、制御部16の図示されないキャンバ解除判定処理手段としての接地荷重判定処理手段は、キャンバ解除判定処理としての接地荷重判定処理を行い、キャンバ解除条件が成立したかどうかを判断する(ステップS11、S12)。そのために、前記接地荷重判定処理手段は、接地荷重指標として、タイヤ潰れ代、サスストローク、前後G、ヨーレート、ロール角、荷重、ブレーキストローク、アクセル開度、ステアリング角度、ステアリング角速度、ステアリング角加速度等を読み込み、各接地荷重指標が、それぞれの閾値以上であるかどうかを判断し(ステップS11−1〜S11−11)、各接地荷重指標のうちのいずれか一つ、本実施の形態においては、少なくともタイヤ潰れ代が閾値以上である場合に、接地荷重がタイヤ36に偏摩耗を発生させると判断し、キャンバ解除条件が成立したと判断する(ステップS11−12)。
【0074】
そして、前記接地荷重判定処理において、キャンバ解除条件が成立すると、前記キャンバ制御処理手段のキャンバ解除処理手段は、キャンバ解除処理を行い、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除する(ステップS13)。
【0075】
また、前記操縦安定キャンバ要否判定処理及び直進安定キャンバ要否判定処理において、キャンバ付与条件が成立しないと判断されると、前記キャンバ判定処理手段は、キャンバθを読み込み、現在、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されているかどうかを判断する(ステップS14)。
【0076】
そして、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されていると判断された場合、前記キャンバ解除処理手段は、制御部16に内蔵された前記タイマによる計時を開始し、所定の時間が経過すると(ステップS15)、アクチュエータ31、32を作動させて各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与を解除する(ステップS16)。
【0077】
このように、本実施の形態においては、通常モードにおいて過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合に各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるので、高速道路、幹線道路等の道路において車両を高速又は中速で走行させている間だけ、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与され、高速道路、幹線道路等以外の道路において車両を低速で走行させている場合、高速道路、幹線道路等の道路において渋滞が発生している場合等には、キャンバθは付与されない。また、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与された状態で車両を走行させている間にキャンバ解除条件が成立すると、各車輪WLB、WRBへのキャンバθの付与が解除される。したがって、キャンバθが付与される頻度を低くすることができ、しかも、キャンバθが付与される時間を短くすることができるので、タイヤ36に偏摩耗が進むのを抑制することができる。その結果、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0078】
また、車両を走行させている間、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与され続けることがないので、その分タイヤ36の転がり抵抗を小さくすることができる。したがって、燃費を良くすることができる。
【0079】
さらに、本実施の形態においては、キャンバθの累積変量σに基づいてキャンバ制御モードが切り換えられ、直進走行時に、累積変量σが閾値σth0以下である場合、車両の走行安定性からみて最適な通常モード用のキャンバ付与条件が成立したときに各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与され、累積変量σが閾値σth0より大きい場合、前記通常モード用のキャンバ付与条件よりキャンバθを付与する頻度が低いか、又はキャンバθを付与しない偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立したときに、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与される。
【0080】
したがって、タイヤの偏摩耗が所定量進むと、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与される頻度が低くなるか、又はキャンバθが付与されなくなるので、タイヤの偏摩耗が進むのが抑制され、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0081】
また、旋回時にはキャンバ制御モードが通常モードから偏摩耗モードに切り換えられることがないので、車両に十分な求心力を発生させることができ、旋回安定性を高くすることができる。
【0082】
本実施の形態においては、通常モード及び偏摩耗モードのいずれにおいても、各車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθは等しくなる。
【0083】
次に、通常モードと偏摩耗モードとで異なるキャンバを付与するようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0084】
図10は本発明の第2の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【0085】
この場合、前記モード設定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードの設定を行う(ステップS7−11)。
【0086】
そして、累積変量σが閾値σth以下であり、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっている場合、モード設定処理手段の通常モード設定処理手段は、通常モード設定処理を行い、キャンバ制御モードとして通常モードを設定する。また、累積変量σが閾値σthより大きく、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっていない場合、前記モード設定処理手段の偏摩耗モード設定処理手段は、偏摩耗モード設定処理を行い、キャンバ制御モードとして偏摩耗モードを設定する。
【0087】
続いて、直進安定キャンバ要否判定処理の前記モード判定処理手段は、前記モード設定処理手段によって通常モードが設定されたかどうか(又は偏摩耗モードが設定されたかどうか)を判断し(ステップS7−12)、通常モードが設定されてない場合(又は偏摩耗モードが設定された場合)、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のキャンバ変更処理手段は、キャンバ変更処理を行い、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθを変更し、小さくする(ステップS7−13)。
【0088】
続いて、前記直進安定キャンバ要否判定処理のキャンバ付与条件設定処理手段は、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、車両状態及び操作状態に基づいて、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件を設定する。
【0089】
そのために、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて車速算出値、本実施の形態においては、平均車速vaxを算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度rayを算出する。
【0090】
また、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するための過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値をvth1とし、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値をrth1とする。
【0091】
そして、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいことを、通常モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0092】
このようにして、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードが設定され、キャンバ付与条件が設定されると、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のキャンバ付与条件成立判断処理手段は、キャンバ付与条件成立判断処理を行い、車速及びステアリング角度を読み込み、前記キャンバ付与条件が成立しているかどうかを判断する。すなわち、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいかどうかを判断し(ステップS7−14)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合、キャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−15)。
【0093】
本実施の形態においては、タイヤ36の偏摩耗が所定量進むと偏摩耗モードが設定され、各車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθが小さくされるので、タイヤ36における路面との接地面積を大きくすることができる。したがって、タイヤ36の偏摩耗が進むのが抑制され、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0094】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0095】
図11は本発明の第3の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【0096】
この場合、前記モード設定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードの設定を行う(ステップS7−21)。
【0097】
そして、累積変量σが閾値σth以下であり、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっている場合、モード設定処理手段の通常モード設定処理手段は、通常モード設定処理を行い、キャンバ制御モードとして通常モードを設定する。また、累積変量σが閾値σthより大きく、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっていない場合、前記モード設定処理手段の偏摩耗モード設定処理手段は、偏摩耗モード設定処理を行い、キャンバ制御モードとして偏摩耗モードを設定する。
【0098】
そして、前記モード設定処理手段のキャンバ付与条件設定処理手段は、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方に基づいて、キャンバ制御モードごとにキャンバ付与条件を設定する。すなわち、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定されたかどうか(又は偏摩耗モードが設定されたかどうか)を判断し(ステップS7−22)、通常モードが設定された場合、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件を通常モード用のキャンバ付与条件として設定し、偏摩耗モードが設定された場合、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のキャンバ変更処理手段は、キャンバ変更処理を行い、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθを変更し、小さくする(ステップS7−23)。
【0099】
続いて、前記直進安定キャンバ要否判定処理のキャンバ付与条件設定処理手段は、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、車両状態及び操作状態に基づいて、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件を設定する。
【0100】
そのために、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて車速算出値、本実施の形態においては、平均車速vaxを算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度rayを算出する。
【0101】
また、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するための過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値vthi及び過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値rthiを、通常モードが設定された場合、それぞれvth1、rth1とし、偏摩耗モードが設定された場合、それぞれvth2、rth2とする(ステップS7−24、S7−25)。
【0102】
そして、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいことを、通常モード用のキャンバ付与条件として設定し、偏摩耗モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいことを、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0103】
なお、この場合、閾値vth1、vth2は、
vth1<vth2
になるように、閾値rth1、rth2は、
rth1>rth2
になるようにあらかじめ設定され、RAM62に記録される。また、閾値rth1は閾値rthより小さく設定される。前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、直進安定キャンバ要否判定処理を行うに当たり、RAM62を参照し、各閾値vth1、vth2、rth1、rth2を読み出す。
【0104】
このようにして、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードが設定され、キャンバ付与条件が設定されると、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段のキャンバ付与条件成立判断処理手段は、キャンバ付与条件成立判断処理を行い、車速及びステアリング角度を読み込み、キャンバ制御モードに応じたキャンバ付与条件が成立しているかどうかを判断する。
【0105】
すなわち、通常モードが設定された場合、キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいかどうかを判断し(ステップS7−26)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合、通常モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−27)。
【0106】
また、偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいかどうかを判断し(ステップS7−26)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さい場合、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−27)。
【0107】
本実施の形態においては、キャンバθの累積変量σに基づいてキャンバ制御モードが切り換えられ、通常モードが設定された場合、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件が通常モード用のキャンバ付与条件として設定され、偏摩耗モードが設定された場合、前記通常モード用のキャンバ付与条件よりキャンバθを付与する頻度が低いか、又はキャンバθを付与しない偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立したときに、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与される。しかも、偏摩耗モードが設定された場合、各車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθが小さくされる。
【0108】
したがって、タイヤの偏摩耗が所定量進むと、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与される頻度が低くなるか、又はキャンバθが付与されなくなるとともに、タイヤ36における路面との接地面積が大きくされるので、タイヤ36の偏摩耗が進むのが抑制され、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0109】
次に、キャンバθの累積変量σに基づいて、タイヤ36の偏摩耗が進むのを段階的に抑制するようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。なお、第1〜第3の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0110】
図12は本発明の第4の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図、図13は本発明の第4の実施の形態におけるモード設定処理のサブルーチンを示す図である。
【0111】
この場合、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に対応させて直進走行用のキャンバ付与条件を段階的に設定(変更)するようになっている。
【0112】
そのために、前記モード設定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードの設定を行う(ステップS7−31)。
【0113】
すなわち、モード設定処理手段の前記キャンバ付与累積変量算出処理手段は、キャンバθの累積変量σを算出し(ステップS7−31−1)、前記累積変量記録処理手段は、キャンバθの付与、及び付与の解除が行われるたびに、RAM62に累積変量σを記録(更新)する。
【0114】
続いて、前記進み度合判定処理手段としての累積変量判定処理手段は、前記RAM62から累積変量σを読み出し、累積変量σが複数の閾値のうちの、第1の閾値σth1以下であるかどうかによって、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっているかどうかを判断する(ステップS7−31−2)。
【0115】
そして、累積変量σが前記第1の閾値σth1以下であり、タイヤ36の偏摩耗が前記基準範囲内に収まっていると判断された場合、前記通常モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして通常モードを設定する(ステップS7−31−3)。
【0116】
これに対して、累積変量σが第1の閾値σth1より大きく、タイヤ36の偏摩耗が前記基準範囲内に収まっていないと判断された場合、前記累積変量判定処理手段は、累積変量σが複数の閾値のうちの最も大きい閾値、本実施の形態においては、第2の閾値σth2以下であるかどうかによって、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された許容範囲内に収まっているかどうかを判断する(ステップS7−31−4)。なお、前記第1、第2の閾値σth1、σth2は、
σth1<σth2
とする。
【0117】
累積変量σが第2の閾値σth2以下であり、タイヤ36の偏摩耗が前記許容範囲内に収まっていると判断された場合、前記通知処理手段は、表示部70(図1)に、偏摩耗の進み度合、及びタイヤ36のローテーション、交換等を促す旨を通知(表示)することによって所定の警告を行う(ステップS7−31−5)。
【0118】
続いて、前記偏摩耗モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして第1の偏摩耗モードを設定する(ステップS7−31−6)。
【0119】
また、累積変量σが第2の閾値σth2より大きく、タイヤ36の偏摩耗が前記許容範囲内に収まっていないと判断された場合、前記通知処理手段は、表示部70に、偏摩耗の進み度合、及びタイヤ36のローテーション、交換等を促す旨を通知(表示)することによって所定の警告を行う(ステップS7−31−7)。
【0120】
続いて、前記偏摩耗モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして第2の偏摩耗モードを設定する(ステップS7−31−8)。
【0121】
次に、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記モード判定処理手段は、通常モードが設定されたかどうかを判断し、通常モードが設定されてない場合、第1の偏摩耗モードが設定されたかどうかを判断する(ステップS7−32、S7−33)。通常モード及び第1の偏摩耗モードのいずれも設定されてない場合、前記モード判定処理手段は第2の偏摩耗モードが設定されたと判断する。
【0122】
続いて、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて車速算出値、本実施の形態においては、平均車速vaxを算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度rayを算出する。
【0123】
そして、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するための過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値vthi及び過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値rthiを、それぞれvth1、rth1とし、第1の偏摩耗モードが設定された場合、それぞれvth2、rth2とする(ステップS7−34、S7−35)。
【0124】
また、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいことを、通常モード用のキャンバ付与条件として設定し、第1の偏摩耗モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいことを、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0125】
このようにして、キャンバ制御モードごとのキャンバ付与条件が設定されると、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、車速及びステアリング角度を読み込み、キャンバ制御モードに応じたキャンバ付与条件が成立しているかどうかを判断する。
【0126】
すなわち、通常モードが設定された場合、キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいかどうかを判断し(ステップS7−36)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合、通常モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−37)。
【0127】
また、第1の偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいかどうかを判断し(ステップS7−36)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さい場合、第1の偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−37)。
【0128】
そして、第2の偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、キャンバ付与条件が成立しないと判断する(ステップS7−38)。
【0129】
本実施の形態においては、キャンバθの累積変量σに基づいてキャンバ制御モードが切り換えられ、通常モードが設定された場合、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件が通常モード用のキャンバ付与条件として設定され、第1の偏摩耗モードが設定された場合、前記通常モード用のキャンバ付与条件よりキャンバθを付与する頻度が低くされ、第2の偏摩耗モードが設定された場合、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されない。したがって、タイヤ36の偏摩耗が進むのが抑制され、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0130】
また、キャンバθの累積変量σに基づいて、タイヤ36の偏摩耗が進むのが段階的に抑制されるので、タイヤ36の寿命を確実に長くすることができる。
【0131】
なお、本実施の形態において、モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして通常モード及び第1、第2の偏摩耗モードを設定するようになっているが、通常モード及び三つ以上の偏摩耗モード、例えば、第1〜第3の偏摩耗モードを設定することができる。その場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値vthi及び過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値rthiが、通常モードが設定された場合は、それぞれvth1、rth1とされ、第1の偏摩耗モードが設定された場合は、それぞれvth2、rth2とされ、第2の偏摩耗モードが設定された場合は、それぞれvth3、rth3とされる。
【0132】
なお、この場合、閾値vth1〜vth3は、
vth1<vth2<vth3
になるように、閾値rth1〜rth3は、
rth1>rth2>rth3
になるようにあらかじめ設定される。
【0133】
次に、各キャンバ制御モードで車輪WLB、WRBに異なるキャンバを付与するようにした本発明の第5の実施の形態について説明する。なお、第1〜第4の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0134】
図14は本発明の第5の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【0135】
この場合、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に対応させて車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθを段階的に設定(変更)するようになっている。
【0136】
そのために、前記モード設定処理手段は、前記第4の実施の形態と同様に、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードの設定を行う(ステップS7−41)。
【0137】
そして、累積変量σが複数の閾値のうちの、第1の閾値σth1以下であり、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された基準範囲内に収まっている場合、モード設定処理手段の前記通常モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして通常モードを設定する。また、累積変量σが前記第1の閾値σth1より大きく、かつ、複数の閾値のうちの最も大きい閾値、本実施の形態においては、第2の閾値σth2以下であり、タイヤ36の偏摩耗があらかじめ設定された許容範囲内に収まっている場合、前記モード設定処理手段の前記偏摩耗モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして第1の偏摩耗モードを設定する。そして、前記第2の累積変量σが閾値σth2より大きく、タイヤ36の偏摩耗が前記許容範囲内に収まっていない場合、前記偏摩耗モード設定処理手段は、キャンバ制御モードとして第2の偏摩耗モードを設定する。
【0138】
次に、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記モード判定処理手段は、通常モードが設定されたかどうかを判断し、通常モードが設定されてない場合、第1の偏摩耗モードが設定されたかどうかを判断する(ステップS7−42、S7−43)。通常モード及び第1の偏摩耗モードのいずれも設定されてない場合、前記モード判定処理手段は第2の偏摩耗モードが設定されたと判断する。
【0139】
そして、第1の偏摩耗モードが設定された場合、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記キャンバ変更処理手段は、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθを変更し、小さくする(ステップS7−44)。
【0140】
続いて、前記直進安定キャンバ要否判定処理の前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車両状態及び操作状態のうちの少なくとも一方、本実施の形態においては、車両状態及び操作状態に基づいて、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件を設定する。
【0141】
そのために、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて車速算出値、本実施の形態においては、平均車速vaxを算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度rayを算出する。
【0142】
また、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するための過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値をvth1とし、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値をrth1とする。
【0143】
そして、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいことを、通常モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0144】
このようにして、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードが設定され、キャンバ付与条件が設定されると、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、車速及びステアリング角度を読み込み、前記キャンバ付与条件が成立しているかどうかを判断する。すなわち、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいかどうかを判断し(ステップS7−45)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合、キャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−46)。
【0145】
また、前記モード判定処理において、第2の偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、キャンバ付与条件が成立しないと判断する(ステップS7−47)。
【0146】
本実施の形態においては、キャンバθの累積変量σに基づいてキャンバ制御モードが切り換えられ、通常モードが設定された場合、車両の走行安定性からみて最適なキャンバθが付与され、第1の偏摩耗モードが設定された場合、各車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθが小さくされ、第2の偏摩耗モードが設定された場合、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されない。したがって、タイヤ36の偏摩耗が進むのが抑制され、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0147】
また、キャンバθの累積変量σに基づいて、タイヤ36の偏摩耗が進むのが段階的に抑制されるので、タイヤ36の寿命を確実に長くすることができる。
【0148】
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。なお、第1〜第5の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0149】
図15は本発明の第6の実施の形態における直進安定キャンバ要否判定処理のサブルーチンを示す図である。
【0150】
この場合、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段は、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に対応させて車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθ、及び直進走行用のキャンバ付与条件を段階的に設定(変更)するようになっている。
【0151】
そのために、前記モード設定処理手段は、前記第4の実施の形態と同様に、タイヤ36の偏摩耗の進み度合に基づいてキャンバ制御モードの設定を行う(ステップS7−51)。
【0152】
次に、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記モード判定処理手段は、通常モードが設定されたかどうかを判断し、通常モードが設定されてない場合に、第1の偏摩耗モードが設定されたかどうかを判断する(ステップS7−52、S7−53)。また、通常モード及び第1の偏摩耗モードのいずれも設定されてない場合に、前記モード判定処理手段は第2の偏摩耗モードが設定されたと判断する。
【0153】
そして、第1の偏摩耗モードが設定された場合に、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記キャンバ変更処理手段は、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバθを変更し、小さくする(ステップS7−54)。
【0154】
続いて、前記直進安定キャンバ要否判定処理手段の前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車速を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去X〔秒〕間の車速に基づいて車速算出値、本実施の形態においては、平均車速vaxを算出するとともに、ステアリング角度を読み込む直前の所定の時間、本実施の形態においては、過去Y〔秒〕間のステアリング角度に基づいて操舵量算出値、本実施の形態においては、平均ステアリング角度rayを算出する。
【0155】
そして、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するための過去X〔秒〕間の平均車速vaxの閾値vthi及び過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayの閾値rthiを、それぞれvth1、rth1とし、第1の偏摩耗モードが設定された場合、それぞれvth2、rth2とする(ステップS7−55、S7−56)。
【0156】
また、前記キャンバ付与条件設定処理手段は、通常モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいことを、通常モード用のキャンバ付与条件として設定し、第1の偏摩耗モードが設定された場合、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいことを、偏摩耗モード用のキャンバ付与条件として設定する。
【0157】
このようにして、キャンバ制御モードごとのキャンバ付与条件が設定されると、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、車速及びステアリング角度を読み込み、各キャンバ制御モードに応じたキャンバ付与条件が成立しているかどうかを判断する。
【0158】
すなわち、通常モードが設定された場合、キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さいかどうかを判断し(ステップS7−57)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth1以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth1より小さい場合、通常モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−58)。
【0159】
また、第1の偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さいかどうかを判断し(ステップS7−57)、過去X〔秒〕間の平均車速vaxが閾値vth2以上であり、かつ、過去Y〔秒〕間の平均ステアリング角度rayが閾値rth2より小さい場合、第1の偏摩耗モード用のキャンバ付与条件が成立したと判断する(ステップS7−58)。
【0160】
そして、第2の偏摩耗モードが設定された場合、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、キャンバ付与条件が成立しないと判断する(ステップS7−59)。
【0161】
本実施の形態においては、キャンバθの累積変量σに基づいてキャンバ制御モードが切り換えられ、通常モードが設定された場合、車両の走行安定性からみて最適なキャンバ付与条件が通常モード用のキャンバ付与条件として設定され、第1の偏摩耗モードが設定された場合、キャンバθが小さくされるとともに、前記通常モード用のキャンバ付与条件より各車輪WLB、WRBにキャンバθを付与する頻度が低くされ、第2の偏摩耗モードが設定された場合、各車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されない。したがって、タイヤ36の偏摩耗が進むのが抑制され、タイヤ36の寿命を長くすることができる。
【0162】
また、キャンバθの累積変量σに基づいて、タイヤ36の偏摩耗が進むのが段階的に抑制されるので、タイヤ36の寿命を確実に長くすることができる。
【0163】
なお、前記第4、第5の実施の形態においては、二つの第1、第2の閾値σth1、σth2に基づいてキャンバ制御モードが切り換えられるようになっているが、三つ以上の閾値に基づいてキャンバ制御モードが切り換えられるようにすることもできる。
【0164】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0165】
11 ボディ
16 制御部
31、32 アクチュエータ
36 タイヤ
WLF、WRF、WLB、WRB 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディと、
該ボディに対して回転自在に配設された複数の車輪と、
該各車輪のうちの所定の車輪に配設され、車輪にキャンバを付与するためのキャンバ可変機構と、
タイヤが使用された区間におけるキャンバの累積変量を記録するための累積変量記録部と、
該累積変量記録部に記録されたキャンバの累積変量に対応させて、前記キャンバ可変機構によって前記所定の車輪に負のキャンバを付与するキャンバ付与処理手段とを有することを特徴とするキャンバ制御装置。
【請求項2】
前記キャンバの累積変量に対応させてキャンバ付与条件を設定するキャンバ付与条件設定処理手段と、
該キャンバ付与条件設定処理手段によって設定された前記キャンバ付与条件が成立したかどうかを判断するキャンバ付与条件成立判断処理手段とを有するとともに、
前記キャンバ付与処理手段は、前記キャンバ付与条件成立判断処理手段によって、キャンバ付与条件が成立したと判断された場合に、前記所定の車輪に負のキャンバを付与する請求項1に記載のキャンバ制御装置。
【請求項3】
前記キャンバ付与条件設定処理手段は、車両の状態及び運転者による操作部の操作の状態のうちの少なくとも一方に基づいてキャンバ付与条件を設定する請求項2に記載のキャンバ制御装置。
【請求項4】
前記キャンバ付与条件設定処理手段は、前記キャンバの累積変量が閾値より大きいかどうかを判断し、キャンバの累積変量が閾値より大きいと判断された場合に、キャンバ付与条件を、キャンバが付与される頻度が低いキャンバ付与条件に変更する請求項2又は3に記載のキャンバ制御装置。
【請求項5】
前記キャンバの累積変量の閾値は複数設定され、
前記キャンバ付与条件設定処理手段は、前記キャンバの累積変量が各閾値のうちの最も大きい閾値より大きいかどうかを判断し、キャンバの累積変量が各閾値のうちの最も大きい閾値より大きいと判断された場合に、キャンバ付与条件が成立しないと判断し、前記キャンバの累積変量が各閾値のうちの最も大きい閾値以外の閾値より大きいと判断された場合に、キャンバ付与条件を、キャンバが付与される頻度が低いキャンバ付与条件に変更する請求項2又は3に記載のキャンバ制御装置。
【請求項6】
車速を検出する車速検出部と、
操舵量を検出する操舵量検出部とを有するとともに、
前記キャンバ付与条件成立判断処理手段は、所定の時間における車速に基づいて算出された車速算出値が閾値以上であり、かつ、所定の時間における操舵量に基づいて算出された操舵量算出値が閾値より小さい場合に、キャンバ付与条件が成立したと判断する請求項2又は4に記載のキャンバ制御装置。
【請求項7】
前記キャンバ付与条件設定処理手段は、前記キャンバの累積変量が閾値より大きいかどうかを判断し、キャンバの累積変量が閾値より大きいと判断された場合に、前記車速算出値の閾値を大きくする請求項6に記載のキャンバ制御装置。
【請求項8】
前記キャンバ付与条件設定処理手段は、前記キャンバの累積変量が閾値より大きいかどうかを判断し、キャンバの累積変量が閾値より大きいと判断された場合に、前記操舵量算出値の閾値を小さくする請求項6に記載のキャンバ制御装置。
【請求項9】
前記タイヤが使用された区間は、各車輪に新しいタイヤが取り付けられたタイミングから現在に至るまでの時間である請求項1に記載のキャンバ制御装置。
【請求項10】
前記キャンバ付与条件は、直進走行用のキャンバ付与条件である請求項2〜9のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項11】
前記キャンバの累積変量に対応させてキャンバを変更するキャンバ変更処理手段を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項12】
前記キャンバの累積変量は、車輪にキャンバが付与されている間に車両が走行した距離の累積値で表される請求項1〜11のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項13】
前記キャンバの累積変量は、車輪にキャンバが付与されている間に車両が走行した距離、車輪にキャンバが付与されている間の平均速度、及び車輪にキャンバが付与されている間の平均接地荷重を変数とする関数で表される請求項1〜11のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項14】
前記キャンバ付与条件設定処理手段は、前記キャンバの累積変量に基づいて設定されたキャンバ制御モードに対応させてキャンバ付与条件を設定する請求項2〜13のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項15】
前記キャンバ変更処理手段は、前記キャンバの累積変量に基づいて設定されたキャンバ制御モードに対応させてキャンバを変更する請求項2〜13のいずれか1項に記載のキャンバ制御装置。
【請求項16】
前記キャンバの累積変量が閾値より大きい場合、表示部において偏摩耗の進み度合についての通知を行う通知処理手段を有する請求項1、2、4又は11に記載のキャンバ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−116335(P2011−116335A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124704(P2010−124704)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】