グラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法
【課題】成膜時間を短縮し得るグラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板10上に炭素を含有する触媒金属層14を形成する工程と、炭素含有ガスを用いて触媒金属層上にグラフェン膜16を成長する工程とを有している。
【解決手段】基板10上に炭素を含有する触媒金属層14を形成する工程と、炭素含有ガスを用いて触媒金属層上にグラフェン膜16を成長する工程とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体装置等の部材として、グラフェンを用いることが検討されている。
【0003】
グラフェン(グラフェンシート)は、炭素原子が六角形の網の目のように並んだシート状の構造を有するものである。
【0004】
グラフェンは、化学的安定性に優れている一方、特異な物理的・電気的性質など種々の魅力的な特性を有しており、半導体装置の形成材料として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−143799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グラフェン膜を短い成膜時間で製造することは必ずしも容易ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、成膜時間を短縮し得るグラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層上にグラフェン膜を成長する工程とを有することを特徴とするグラフェン膜の製造方法が提供される。
【0009】
実施形態の他の観点によれば、基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層にグラフェン膜を成長する工程と、前記グラフェン膜に接続されたソース/ドレイン電極を形成する工程と、前記グラフェン膜上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示のグラフェン膜の製造方法によれば、炭素が予め導入された触媒金属層を用いてグラフェン膜を成長するため、グラフェン膜が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができ、グラフェン膜の成膜時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】グラフェンを形成する際の触媒金属として鉄を用い、グラフェンの原料ガスとしてアセチレンを用いた場合の反応を示す模式図である。
【図2】鉄触媒中の炭素濃度と炭素原子の溶解エンタルピーとの関係を示すグラフである。
【図3】グラフェン膜を成長させる際における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図4】第1実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。
【図5】グラフェン膜を成長させる工程における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図6】触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その1)である。
【図7】第2実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その2)である。
【図9】第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図10】第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図11】第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図12】第4実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図13】第4実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、グラフェンを形成する際の触媒金属として鉄(Fe)を用い、グラフェンの原料ガスとしてアセチレンを用いた場合の反応を示す模式図である。
【0013】
図示しない基板上には、シリコン酸化膜の絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12上には、鉄の触媒金属層14が形成されている。
【0014】
図1に示すように、アセチレン分子中の炭素原子は鉄触媒中に入り込むことができ、鉄触媒中に入り込んだ炭素原子は鉄触媒中を移動し得る。
【0015】
図2は、鉄触媒中の炭素濃度と炭素原子の溶解エンタルピーとの関係を示すグラフである。図2における横軸は、鉄触媒中の炭素濃度を示している。図2における縦軸は、炭素原子の溶解エンタルピーを示している。
【0016】
図2から分かるように、鉄触媒中の炭素濃度が約0.5%以下においては、炭素原子の溶解エンタルピーは負である。溶解エンタルピーが負の場合には、触媒中に吸収された方が、炭素原子はエネルギー的に安定である。このため、溶解エンタルピーが負となる範囲においては、炭素原子は鉄触媒中に吸収されやすい。単なる鉄を触媒として用いた場合には、グラフェン膜の成長工程の初期の段階においては、鉄触媒中の炭素濃度が極めて低いため、炭素原子が鉄触媒中に吸収されやすい。このため、鉄触媒中の炭素濃度がある程度の濃度に達するまでは、鉄触媒中に炭素原子が吸収されやすく、鉄触媒の表面にグラフェン膜が成長されにくい。
【0017】
図3は、グラフェン膜をCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により成長させる際における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【0018】
図3に示すように、成膜工程の初期の段階においてはグラフェン膜が殆ど成長せず、一定時間を経過した後に、グラフェン膜が成長し始める。膜を成長させる工程を開始してから実際に膜の成長が開始するまでの時間は、インキュベーション時間と称される。
【0019】
インキュベーション時間が長いと、短時間でグラフェン膜を成膜し得ない。また、インキュベーション時間が長いと、原料ガスを効率的に用い得ず、低コスト化を実現し得ない。
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態によるグラフェン膜の製造方法について図4乃至図6を用いて説明する。図4は、本実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。
【0021】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図4(a)参照)。基板10としては、例えばシリコン基板を用いる。絶縁膜12としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。シリコン酸化膜の絶縁膜12は、例えば熱酸化法により形成される。絶縁膜12の膜厚は、例えば350nm程度とする。
【0022】
次に、例えばスパッタリング法により、触媒金属層14を形成する(図4(b)参照)。ターゲットとしては、例えば鉄(Fe)のターゲットを用いる。触媒金属層14としては、例えば鉄層を形成する。触媒金属層14の厚さは、例えば100〜500nm程度とすることが好ましい。ここでは、触媒金属層14の厚さを200nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。
【0023】
次に、例えばイオン注入法により、触媒金属層14に炭素を注入することにより、炭素を含有する触媒金属層14aを形成する(図4(c)参照)。加速エネルギーは、例えば20〜300keV程度とすることが好ましい。ここでは、加速エネルギーを100keV程度とする。炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、例えば0.5〜10%とすることが好ましい。更には、炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、例えば1〜2%とすることが好ましい。触媒金属層14aにおける炭素の含有率が小さ過ぎる場合には、グラフェン膜16(図4(d)参照)が成長し始めるまでのインキュベーション時間を十分に短縮し得ない。一方、触媒金属層14aにおける炭素の含有率が大き過ぎる場合には、鉄中に炭素が偏析してしまい、触媒金属層14a上に良質なグラフェン膜を成長し得ない虞がある。従って、炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含む触媒金属層14aが形成される。
【0024】
次に、例えば熱CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により、触媒金属層14a上にグラフェン膜16を成長する(図4(d)参照)。グラフェン膜16は、単層又は複数層のグラフェンから成る膜である。グラフェン膜16の厚さは、例えば6nm程度とする。原料ガスとしては、炭素を含むガスである炭素含有ガスを用いる。かかる炭素含有ガスとしては、例えばアセチレンガスを用いる。キャリアガスとしては、例えばアルゴンガス、水素ガス又はヘリウムガス等を用いる。成膜室内の圧力は、例えば1kPa程度とする。アセチレンガスの分圧比は、例えば0.001〜10%程度とする。なお、アセチレンガスの分圧比は、0.001〜10%程度に限定されるものではなく、成長させようとするグラフェン膜16の膜厚や成膜条件等に応じて適宜調整することが好ましい。基板温度は、例えば300〜800℃程度とする。なお、基板温度は300〜800℃に限定されるものではなく、絶縁膜12や触媒金属層14の材料や厚さ、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することが好ましい。触媒金属層14として鉄層を用い、原料ガスとしてアセチレンガスを用いる場合には、基板温度は、550〜700℃程度とすることが好ましく、600〜700℃程度とすることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態では、炭素原子が予め導入された触媒金属層14aを用いてグラフェン膜16を成長するため、炭素原子を含有しない触媒金属を用いてグラフェン膜を成長する場合と比較して、触媒金属層14a中に炭素原子が吸収されにくい。このため、本実施形態によれば、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができる。従って、本実施形態によれば、短時間でグラフェン膜16を成長することができる。
【0026】
図5は、グラフェン膜を成長させる工程における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【0027】
図5に示すように、本実施形態では、成膜工程の初期の段階からグラフェン膜16が成長し始める。
【0028】
なお、触媒金属層14a上のみならず、触媒金属層14aと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長する場合もあり得る。図6は、触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その1)である。図6(d)に示すように、触媒金属層14aと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長されてもよい。
【0029】
こうして、グラフェン膜16が製造される。
【0030】
このように、本実施形態によれば、炭素が予め導入された触媒金属層14aを用いてグラフェン膜16を成長するため、炭素原子を含有しない触媒金属を用いてグラフェン膜を成長する場合と比較して、触媒金属層14a中に炭素原子が吸収されにくい。このため、本実施形態によれば、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができ、短時間でグラフェン膜を製造することができる。また、本実施形態によれば、原料ガスの効率的な利用が可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態によるグラフェン膜の製造方法を図7及び図8を用いて説明する。図7は、本実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。図1乃至図6に示す第1実施形態によるグラフェン膜の製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0032】
本実施形態によるグラフェン膜の製造方法は、炭素を含有する触媒金属のターゲットを用いて、スパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成することに主な特徴がある。
【0033】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図7(a)参照)。
【0034】
次に、例えばスパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成する(図7(b)参照)。ターゲットとしては、例えば、炭素を含有する鉄のターゲットを用いる。触媒金属層14bの厚さは、例えば100〜500nm程度とすることが好ましい。ここでは、触媒金属層14bの厚さを200nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。炭素を含む触媒金属層14bにおける炭素の含有率は、上述したように、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含有する鉄層の触媒金属層14bが形成される。
【0035】
次に、例えば熱CVD法により、触媒金属層14b上にグラフェン膜16を成長する(図7(c)参照)。グラフェン膜16の成長方法は、図4(d)を用いて上述した第1実施形態によるグラフェン膜16の成長方法と同様であるため、説明を省略する。グラフェン膜16の厚さは、例えば2〜4nm程度とする。本実施形態においても、炭素が予め導入された触媒金属層14bを用いてグラフェン膜16を成長するため、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができ、短時間でグラフェン膜16を製造することができる。
【0036】
なお、触媒金属層14b上のみならず、触媒金属層14bと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長する場合もあり得る。図8は、触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その2)である。図8(d)に示すように、触媒金属層14bと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長してもよい。
【0037】
このように、本実施形態では、炭素を含有する触媒金属のターゲットを用いて、スパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成する。本実施形態によっても、炭素が予め導入された触媒金属層14bを用いてグラフェン膜16を成長するため、インキュベーション時間を短縮することができ、短時間でグラフェン膜16を製造することができる。
【0038】
[第3実施形態]
第3実施形態による半導体装置の製造方法を図9乃至図11を用いて説明する。図9乃至図11は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図1乃至図8に示す第1又は第2実施形態によるグラフェン膜の製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0039】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図9(a)参照)。
【0040】
次に、例えばスパッタリング法により、触媒金属層14を形成する(図9(b)参照)。ターゲットとしては、例えば鉄のターゲットを用いる。触媒金属層14としては、例えば鉄層を形成する。触媒金属層14の厚さは、例えば100〜500nm程度とすることが好ましい。ここでは、触媒金属層14の厚さを200nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。
【0041】
次に、例えばイオン注入法により、触媒金属層14に炭素を注入することにより、炭素を含有する触媒金属層14aを形成する(図9(c)参照)。加速エネルギーは、例えば20〜300keV程度とすることが好ましい。ここでは、加速エネルギーを100keV程度とする。炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、上述したように、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含む鉄層の触媒金属層14aが形成される。
【0042】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、炭素を含有する触媒金属層14aをトランジスタのチャネルの形状にパターニングする(図9(d)参照)。ウエットエッチングにより触媒金属層14aをパターニングする場合には、エッチング液として、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。ドライエッチングにより触媒金属層14aをパターニングする場合には、例えば塩素系のガスを用いることができる。
【0043】
次に、例えば熱CVD法により、触媒金属層14a上にグラフェン膜16を成長する(図10(a)参照)。グラフェン膜16の成長方法は、図4(d)を用いて上述した第1実施形態によるグラフェン膜16の成長方法と同様であるため、説明を省略する。グラフェン膜16の厚さは、例えば1〜2nm程度とする。
【0044】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10〜20nmのTi(チタン)膜を形成する。
【0045】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10〜20nmのAu(金)膜を形成する。これにより、Ti膜とAu膜との積層膜が形成される。
【0046】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、積層膜をパターニングすることにより、積層膜のソース/ドレイン電極18a、18bを形成する(図10(b)参照)。ソース電極18aは、グラフェン膜16の一方の端部に接続される。ドレイン電極18bは、グラフェン膜16の他方の端部に接続される。
【0047】
次に、例えばウエットエッチングにより、触媒金属層14aをエッチング除去する(図10(c)参照)。エッチング液としては、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。触媒金属層14aがエッチング除去された箇所には、空洞20が生じる。これにより、浮いた状態のグラフェン膜16がソース/ドレイン電極18a、18bの間を架橋したような構造となる。
【0048】
次に、例えばALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)法により、グラフェン膜16を覆うように、例えば酸化ハフニウム(HfO2)膜のゲート絶縁膜22を形成する(図10(d)参照)。ゲート絶縁膜22の膜厚は、例えば2〜4nm程度とする。グラフェン膜16の下の空洞20内にも酸化ハフニウム膜の絶縁膜24が形成され、これによりグラフェン膜16が安定化される。
【0049】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、導電膜を形成する。導電膜としては、例えばTiN膜を形成する。導電膜の膜厚は、例えば15〜20nm程度とする。
【0050】
次に、フォトリソグラフィ技術により、導電膜をパターニングすることにより、導電膜のゲート電極26を形成する。
【0051】
こうして、グラフェン膜16をチャネル層として用いた本実施形態による半導体装置が製造される。
【0052】
このように、本実施形態によれば、炭素が予め導入された触媒金属層14aを用いてグラフェン膜16を成長するため、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができる。従って、本実施形態によれば、グラフェン膜16をチャネル層として用いた半導体装置を良好なスループットで製造することができる。
【0053】
[第4実施形態]
第4実施形態による半導体装置の製造方法を図12及び図13を用いて説明する。図12及び図13は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図1乃至図11に示す第1乃至第3実施形態によるグラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0054】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、炭素を含有するターゲットを用いて、スパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成することに主な特徴がある。
【0055】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図12(a)参照)。
【0056】
次に、例えばスパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成する(図12(b)参照)。ターゲットとしては、例えば、炭素を含有する鉄のターゲットを用いる。触媒金属層14bの厚さは、例えば20〜30nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。炭素を含む触媒金属層14bにおける炭素の含有率は、上述したように、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含有する鉄層の触媒金属層14bが形成される。
【0057】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、触媒金属層14bをチャネルの形状に加工する(図12(c)参照)。ウエットエッチングにより触媒金属層14bをパターニングする場合には、エッチング液として、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。ドライエッチングにより触媒金属層14bをパターニングする場合には、例えば塩素系のガスを用いることができる。
【0058】
次に、例えば熱CVD法により、触媒金属層14b上にグラフェン膜16を成長する(図12(d)参照)。グラフェン膜16の成長方法は、図4(d)を用いて上述した第1実施形態によるグラフェン膜16の成長方法と同様であるため、説明を省略する。グラフェン膜16の厚さは、例えば1〜2nm程度とする。
【0059】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10nmのTi膜を形成する。
【0060】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10nmのAu膜を形成する。これにより、Ti膜とAu膜との積層膜が形成される。
【0061】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、積層膜をパターニングすることにより、積層膜のソース/ドレイン電極18a、18bを形成する。ソース電極18aは、グラフェン膜16の一方の端部に接続される。ドレイン電極18bは、グラフェン膜16の他方の端部に接続される。
【0062】
次に、例えばウエットエッチングにより、触媒金属層14bをエッチング除去する。エッチング液としては、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。これにより、浮いた状態のグラフェン膜16がソース/ドレイン電極18a、18bの間を架橋したような構造となる。
【0063】
次に、例えばALD法により、グラフェン膜16を覆うように例えば酸化ハフニウム膜のゲート絶縁膜22を形成する。ゲート絶縁膜22の膜厚は、例えば2〜4nm程度とする。グラフェン膜16の下の空洞20内にも酸化ハフニウム膜の絶縁膜24が形成され、グラフェン膜16が安定化される。
【0064】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、導電膜を形成する。導電膜としては、例えばTiN膜を形成する。導電膜の膜厚は、例えば15〜20nm程度とする。
【0065】
次に、フォトリソグラフィ技術により、導電膜をパターニングすることにより、導電膜のゲート電極26を形成する。
【0066】
こうして、グラフェン膜16をチャネル層として用いた本実施形態による半導体装置が製造される。
【0067】
このように、本実施形態によっても、炭素が予め導入された触媒金属層14bを用いてグラフェン膜16を成長するため、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができる。従って、本実施形態によっても、グラフェン膜16をチャネル層として用いた半導体装置を良好なスループットで製造することができる。
【0068】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、グラフェン膜16を形成する際の原料ガスとしてアセチレンガスを用いる場合を例に説明したが、グラフェン膜16を形成する際の原料ガスはアセチレンガスに限定されるものではない。炭素を含むガス(炭素含有ガス)をグラフェン膜16の原料ガスとして適宜用いることができる。例えば、エチレン(C2H4)ガス、メタンガス、エタンガス等の炭化水素ガスを、グラフェン膜16を形成する際の原料ガスとして用いてもよい。また、メタノール等のアルコールを、グラフェン16を形成する際の原料ガスとして用いてもよい。また、原料ガスに、微量の水や酸化系ガスを適宜添加してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、触媒金属層の材料として鉄を用いる場合を例に説明したが、触媒金属層の材料は鉄に限定されるものではない。例えばニッケルを触媒金属層の材料として用いることも可能である。
【0071】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0072】
(付記1)
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層上にグラフェン膜を成長する工程と
を有することを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0073】
(付記2)
付記1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0074】
(付記3)
付記1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、炭素を含有する触媒金属材料を前記基板上に堆積することにより、前記炭素を含有する触媒金属層を形成する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0075】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層は、炭素を含有する鉄層又は炭素を含有するニッケル層である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0076】
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層における炭素の含有率は、0.5〜10%である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0077】
(付記6)
付記5記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層における炭素の含有率は、1〜2%である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0078】
(付記7)
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層にグラフェン膜を成長する工程と、
前記グラフェン膜に接続されたソース/ドレイン電極を形成する工程と、
前記グラフェン膜上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0079】
(付記8)
付記7記載の半導体装置の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0080】
10…基板
12…絶縁膜
14…触媒金属層
14a、14b…炭素を含有する触媒金属層
16…グラフェン膜
18a…ソース電極
18b…ドレイン電極
20…空洞
22…ゲート絶縁膜
24…絶縁膜
26…ゲート電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体装置等の部材として、グラフェンを用いることが検討されている。
【0003】
グラフェン(グラフェンシート)は、炭素原子が六角形の網の目のように並んだシート状の構造を有するものである。
【0004】
グラフェンは、化学的安定性に優れている一方、特異な物理的・電気的性質など種々の魅力的な特性を有しており、半導体装置の形成材料として注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−143799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、グラフェン膜を短い成膜時間で製造することは必ずしも容易ではなかった。
【0007】
本発明の目的は、成膜時間を短縮し得るグラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層上にグラフェン膜を成長する工程とを有することを特徴とするグラフェン膜の製造方法が提供される。
【0009】
実施形態の他の観点によれば、基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層にグラフェン膜を成長する工程と、前記グラフェン膜に接続されたソース/ドレイン電極を形成する工程と、前記グラフェン膜上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
開示のグラフェン膜の製造方法によれば、炭素が予め導入された触媒金属層を用いてグラフェン膜を成長するため、グラフェン膜が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができ、グラフェン膜の成膜時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】グラフェンを形成する際の触媒金属として鉄を用い、グラフェンの原料ガスとしてアセチレンを用いた場合の反応を示す模式図である。
【図2】鉄触媒中の炭素濃度と炭素原子の溶解エンタルピーとの関係を示すグラフである。
【図3】グラフェン膜を成長させる際における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図4】第1実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。
【図5】グラフェン膜を成長させる工程における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【図6】触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その1)である。
【図7】第2実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。
【図8】触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その2)である。
【図9】第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図10】第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図11】第3実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図12】第4実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図13】第4実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、グラフェンを形成する際の触媒金属として鉄(Fe)を用い、グラフェンの原料ガスとしてアセチレンを用いた場合の反応を示す模式図である。
【0013】
図示しない基板上には、シリコン酸化膜の絶縁膜12が形成されている。絶縁膜12上には、鉄の触媒金属層14が形成されている。
【0014】
図1に示すように、アセチレン分子中の炭素原子は鉄触媒中に入り込むことができ、鉄触媒中に入り込んだ炭素原子は鉄触媒中を移動し得る。
【0015】
図2は、鉄触媒中の炭素濃度と炭素原子の溶解エンタルピーとの関係を示すグラフである。図2における横軸は、鉄触媒中の炭素濃度を示している。図2における縦軸は、炭素原子の溶解エンタルピーを示している。
【0016】
図2から分かるように、鉄触媒中の炭素濃度が約0.5%以下においては、炭素原子の溶解エンタルピーは負である。溶解エンタルピーが負の場合には、触媒中に吸収された方が、炭素原子はエネルギー的に安定である。このため、溶解エンタルピーが負となる範囲においては、炭素原子は鉄触媒中に吸収されやすい。単なる鉄を触媒として用いた場合には、グラフェン膜の成長工程の初期の段階においては、鉄触媒中の炭素濃度が極めて低いため、炭素原子が鉄触媒中に吸収されやすい。このため、鉄触媒中の炭素濃度がある程度の濃度に達するまでは、鉄触媒中に炭素原子が吸収されやすく、鉄触媒の表面にグラフェン膜が成長されにくい。
【0017】
図3は、グラフェン膜をCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により成長させる際における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【0018】
図3に示すように、成膜工程の初期の段階においてはグラフェン膜が殆ど成長せず、一定時間を経過した後に、グラフェン膜が成長し始める。膜を成長させる工程を開始してから実際に膜の成長が開始するまでの時間は、インキュベーション時間と称される。
【0019】
インキュベーション時間が長いと、短時間でグラフェン膜を成膜し得ない。また、インキュベーション時間が長いと、原料ガスを効率的に用い得ず、低コスト化を実現し得ない。
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態によるグラフェン膜の製造方法について図4乃至図6を用いて説明する。図4は、本実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。
【0021】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図4(a)参照)。基板10としては、例えばシリコン基板を用いる。絶縁膜12としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。シリコン酸化膜の絶縁膜12は、例えば熱酸化法により形成される。絶縁膜12の膜厚は、例えば350nm程度とする。
【0022】
次に、例えばスパッタリング法により、触媒金属層14を形成する(図4(b)参照)。ターゲットとしては、例えば鉄(Fe)のターゲットを用いる。触媒金属層14としては、例えば鉄層を形成する。触媒金属層14の厚さは、例えば100〜500nm程度とすることが好ましい。ここでは、触媒金属層14の厚さを200nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。
【0023】
次に、例えばイオン注入法により、触媒金属層14に炭素を注入することにより、炭素を含有する触媒金属層14aを形成する(図4(c)参照)。加速エネルギーは、例えば20〜300keV程度とすることが好ましい。ここでは、加速エネルギーを100keV程度とする。炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、例えば0.5〜10%とすることが好ましい。更には、炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、例えば1〜2%とすることが好ましい。触媒金属層14aにおける炭素の含有率が小さ過ぎる場合には、グラフェン膜16(図4(d)参照)が成長し始めるまでのインキュベーション時間を十分に短縮し得ない。一方、触媒金属層14aにおける炭素の含有率が大き過ぎる場合には、鉄中に炭素が偏析してしまい、触媒金属層14a上に良質なグラフェン膜を成長し得ない虞がある。従って、炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含む触媒金属層14aが形成される。
【0024】
次に、例えば熱CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により、触媒金属層14a上にグラフェン膜16を成長する(図4(d)参照)。グラフェン膜16は、単層又は複数層のグラフェンから成る膜である。グラフェン膜16の厚さは、例えば6nm程度とする。原料ガスとしては、炭素を含むガスである炭素含有ガスを用いる。かかる炭素含有ガスとしては、例えばアセチレンガスを用いる。キャリアガスとしては、例えばアルゴンガス、水素ガス又はヘリウムガス等を用いる。成膜室内の圧力は、例えば1kPa程度とする。アセチレンガスの分圧比は、例えば0.001〜10%程度とする。なお、アセチレンガスの分圧比は、0.001〜10%程度に限定されるものではなく、成長させようとするグラフェン膜16の膜厚や成膜条件等に応じて適宜調整することが好ましい。基板温度は、例えば300〜800℃程度とする。なお、基板温度は300〜800℃に限定されるものではなく、絶縁膜12や触媒金属層14の材料や厚さ、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することが好ましい。触媒金属層14として鉄層を用い、原料ガスとしてアセチレンガスを用いる場合には、基板温度は、550〜700℃程度とすることが好ましく、600〜700℃程度とすることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態では、炭素原子が予め導入された触媒金属層14aを用いてグラフェン膜16を成長するため、炭素原子を含有しない触媒金属を用いてグラフェン膜を成長する場合と比較して、触媒金属層14a中に炭素原子が吸収されにくい。このため、本実施形態によれば、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができる。従って、本実施形態によれば、短時間でグラフェン膜16を成長することができる。
【0026】
図5は、グラフェン膜を成長させる工程における経過時間とグラフェン膜の膜厚との関係を示すグラフである。
【0027】
図5に示すように、本実施形態では、成膜工程の初期の段階からグラフェン膜16が成長し始める。
【0028】
なお、触媒金属層14a上のみならず、触媒金属層14aと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長する場合もあり得る。図6は、触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その1)である。図6(d)に示すように、触媒金属層14aと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長されてもよい。
【0029】
こうして、グラフェン膜16が製造される。
【0030】
このように、本実施形態によれば、炭素が予め導入された触媒金属層14aを用いてグラフェン膜16を成長するため、炭素原子を含有しない触媒金属を用いてグラフェン膜を成長する場合と比較して、触媒金属層14a中に炭素原子が吸収されにくい。このため、本実施形態によれば、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができ、短時間でグラフェン膜を製造することができる。また、本実施形態によれば、原料ガスの効率的な利用が可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
第2実施形態によるグラフェン膜の製造方法を図7及び図8を用いて説明する。図7は、本実施形態によるグラフェン膜の製造方法を示す工程断面図である。図1乃至図6に示す第1実施形態によるグラフェン膜の製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0032】
本実施形態によるグラフェン膜の製造方法は、炭素を含有する触媒金属のターゲットを用いて、スパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成することに主な特徴がある。
【0033】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図7(a)参照)。
【0034】
次に、例えばスパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成する(図7(b)参照)。ターゲットとしては、例えば、炭素を含有する鉄のターゲットを用いる。触媒金属層14bの厚さは、例えば100〜500nm程度とすることが好ましい。ここでは、触媒金属層14bの厚さを200nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。炭素を含む触媒金属層14bにおける炭素の含有率は、上述したように、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含有する鉄層の触媒金属層14bが形成される。
【0035】
次に、例えば熱CVD法により、触媒金属層14b上にグラフェン膜16を成長する(図7(c)参照)。グラフェン膜16の成長方法は、図4(d)を用いて上述した第1実施形態によるグラフェン膜16の成長方法と同様であるため、説明を省略する。グラフェン膜16の厚さは、例えば2〜4nm程度とする。本実施形態においても、炭素が予め導入された触媒金属層14bを用いてグラフェン膜16を成長するため、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができ、短時間でグラフェン膜16を製造することができる。
【0036】
なお、触媒金属層14b上のみならず、触媒金属層14bと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長する場合もあり得る。図8は、触媒金属層と絶縁膜との界面にもグラフェン膜が成長する場合を示す工程断面図(その2)である。図8(d)に示すように、触媒金属層14bと絶縁膜12との界面にもグラフェン膜16が成長してもよい。
【0037】
このように、本実施形態では、炭素を含有する触媒金属のターゲットを用いて、スパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成する。本実施形態によっても、炭素が予め導入された触媒金属層14bを用いてグラフェン膜16を成長するため、インキュベーション時間を短縮することができ、短時間でグラフェン膜16を製造することができる。
【0038】
[第3実施形態]
第3実施形態による半導体装置の製造方法を図9乃至図11を用いて説明する。図9乃至図11は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図1乃至図8に示す第1又は第2実施形態によるグラフェン膜の製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0039】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図9(a)参照)。
【0040】
次に、例えばスパッタリング法により、触媒金属層14を形成する(図9(b)参照)。ターゲットとしては、例えば鉄のターゲットを用いる。触媒金属層14としては、例えば鉄層を形成する。触媒金属層14の厚さは、例えば100〜500nm程度とすることが好ましい。ここでは、触媒金属層14の厚さを200nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。
【0041】
次に、例えばイオン注入法により、触媒金属層14に炭素を注入することにより、炭素を含有する触媒金属層14aを形成する(図9(c)参照)。加速エネルギーは、例えば20〜300keV程度とすることが好ましい。ここでは、加速エネルギーを100keV程度とする。炭素を含む触媒金属層14aにおける炭素の含有率は、上述したように、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含む鉄層の触媒金属層14aが形成される。
【0042】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、炭素を含有する触媒金属層14aをトランジスタのチャネルの形状にパターニングする(図9(d)参照)。ウエットエッチングにより触媒金属層14aをパターニングする場合には、エッチング液として、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。ドライエッチングにより触媒金属層14aをパターニングする場合には、例えば塩素系のガスを用いることができる。
【0043】
次に、例えば熱CVD法により、触媒金属層14a上にグラフェン膜16を成長する(図10(a)参照)。グラフェン膜16の成長方法は、図4(d)を用いて上述した第1実施形態によるグラフェン膜16の成長方法と同様であるため、説明を省略する。グラフェン膜16の厚さは、例えば1〜2nm程度とする。
【0044】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10〜20nmのTi(チタン)膜を形成する。
【0045】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10〜20nmのAu(金)膜を形成する。これにより、Ti膜とAu膜との積層膜が形成される。
【0046】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、積層膜をパターニングすることにより、積層膜のソース/ドレイン電極18a、18bを形成する(図10(b)参照)。ソース電極18aは、グラフェン膜16の一方の端部に接続される。ドレイン電極18bは、グラフェン膜16の他方の端部に接続される。
【0047】
次に、例えばウエットエッチングにより、触媒金属層14aをエッチング除去する(図10(c)参照)。エッチング液としては、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。触媒金属層14aがエッチング除去された箇所には、空洞20が生じる。これにより、浮いた状態のグラフェン膜16がソース/ドレイン電極18a、18bの間を架橋したような構造となる。
【0048】
次に、例えばALD(Atomic Layer Deposition、原子層堆積)法により、グラフェン膜16を覆うように、例えば酸化ハフニウム(HfO2)膜のゲート絶縁膜22を形成する(図10(d)参照)。ゲート絶縁膜22の膜厚は、例えば2〜4nm程度とする。グラフェン膜16の下の空洞20内にも酸化ハフニウム膜の絶縁膜24が形成され、これによりグラフェン膜16が安定化される。
【0049】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、導電膜を形成する。導電膜としては、例えばTiN膜を形成する。導電膜の膜厚は、例えば15〜20nm程度とする。
【0050】
次に、フォトリソグラフィ技術により、導電膜をパターニングすることにより、導電膜のゲート電極26を形成する。
【0051】
こうして、グラフェン膜16をチャネル層として用いた本実施形態による半導体装置が製造される。
【0052】
このように、本実施形態によれば、炭素が予め導入された触媒金属層14aを用いてグラフェン膜16を成長するため、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができる。従って、本実施形態によれば、グラフェン膜16をチャネル層として用いた半導体装置を良好なスループットで製造することができる。
【0053】
[第4実施形態]
第4実施形態による半導体装置の製造方法を図12及び図13を用いて説明する。図12及び図13は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。図1乃至図11に示す第1乃至第3実施形態によるグラフェン膜の製造方法及び半導体装置の製造方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
【0054】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、炭素を含有するターゲットを用いて、スパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成することに主な特徴がある。
【0055】
まず、表面に絶縁膜12が形成された基板10を用意する(図12(a)参照)。
【0056】
次に、例えばスパッタリング法により、炭素を含有する触媒金属層14bを形成する(図12(b)参照)。ターゲットとしては、例えば、炭素を含有する鉄のターゲットを用いる。触媒金属層14bの厚さは、例えば20〜30nm程度とする。スパッタリングの際の印加電力は、例えば100W程度とする。成膜速度は、例えば0.1nm/秒程度とする。基板温度は、例えば250〜300℃程度とする。炭素を含む触媒金属層14bにおける炭素の含有率は、上述したように、0.5〜10%とすることが好ましく、更には、1〜2%とすることがより好ましい。こうして、炭素を含有する鉄層の触媒金属層14bが形成される。
【0057】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、触媒金属層14bをチャネルの形状に加工する(図12(c)参照)。ウエットエッチングにより触媒金属層14bをパターニングする場合には、エッチング液として、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。ドライエッチングにより触媒金属層14bをパターニングする場合には、例えば塩素系のガスを用いることができる。
【0058】
次に、例えば熱CVD法により、触媒金属層14b上にグラフェン膜16を成長する(図12(d)参照)。グラフェン膜16の成長方法は、図4(d)を用いて上述した第1実施形態によるグラフェン膜16の成長方法と同様であるため、説明を省略する。グラフェン膜16の厚さは、例えば1〜2nm程度とする。
【0059】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10nmのTi膜を形成する。
【0060】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、例えば膜厚10nmのAu膜を形成する。これにより、Ti膜とAu膜との積層膜が形成される。
【0061】
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、積層膜をパターニングすることにより、積層膜のソース/ドレイン電極18a、18bを形成する。ソース電極18aは、グラフェン膜16の一方の端部に接続される。ドレイン電極18bは、グラフェン膜16の他方の端部に接続される。
【0062】
次に、例えばウエットエッチングにより、触媒金属層14bをエッチング除去する。エッチング液としては、例えばFeCl3や塩酸等を用いることができる。これにより、浮いた状態のグラフェン膜16がソース/ドレイン電極18a、18bの間を架橋したような構造となる。
【0063】
次に、例えばALD法により、グラフェン膜16を覆うように例えば酸化ハフニウム膜のゲート絶縁膜22を形成する。ゲート絶縁膜22の膜厚は、例えば2〜4nm程度とする。グラフェン膜16の下の空洞20内にも酸化ハフニウム膜の絶縁膜24が形成され、グラフェン膜16が安定化される。
【0064】
次に、全面に、例えばスパッタリング法により、導電膜を形成する。導電膜としては、例えばTiN膜を形成する。導電膜の膜厚は、例えば15〜20nm程度とする。
【0065】
次に、フォトリソグラフィ技術により、導電膜をパターニングすることにより、導電膜のゲート電極26を形成する。
【0066】
こうして、グラフェン膜16をチャネル層として用いた本実施形態による半導体装置が製造される。
【0067】
このように、本実施形態によっても、炭素が予め導入された触媒金属層14bを用いてグラフェン膜16を成長するため、グラフェン膜16が成長し始めるまでのインキュベーション時間を短縮することができる。従って、本実施形態によっても、グラフェン膜16をチャネル層として用いた半導体装置を良好なスループットで製造することができる。
【0068】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態では、グラフェン膜16を形成する際の原料ガスとしてアセチレンガスを用いる場合を例に説明したが、グラフェン膜16を形成する際の原料ガスはアセチレンガスに限定されるものではない。炭素を含むガス(炭素含有ガス)をグラフェン膜16の原料ガスとして適宜用いることができる。例えば、エチレン(C2H4)ガス、メタンガス、エタンガス等の炭化水素ガスを、グラフェン膜16を形成する際の原料ガスとして用いてもよい。また、メタノール等のアルコールを、グラフェン16を形成する際の原料ガスとして用いてもよい。また、原料ガスに、微量の水や酸化系ガスを適宜添加してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、触媒金属層の材料として鉄を用いる場合を例に説明したが、触媒金属層の材料は鉄に限定されるものではない。例えばニッケルを触媒金属層の材料として用いることも可能である。
【0071】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0072】
(付記1)
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層上にグラフェン膜を成長する工程と
を有することを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0073】
(付記2)
付記1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0074】
(付記3)
付記1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、炭素を含有する触媒金属材料を前記基板上に堆積することにより、前記炭素を含有する触媒金属層を形成する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0075】
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層は、炭素を含有する鉄層又は炭素を含有するニッケル層である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0076】
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層における炭素の含有率は、0.5〜10%である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0077】
(付記6)
付記5記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層における炭素の含有率は、1〜2%である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【0078】
(付記7)
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層にグラフェン膜を成長する工程と、
前記グラフェン膜に接続されたソース/ドレイン電極を形成する工程と、
前記グラフェン膜上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0079】
(付記8)
付記7記載の半導体装置の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0080】
10…基板
12…絶縁膜
14…触媒金属層
14a、14b…炭素を含有する触媒金属層
16…グラフェン膜
18a…ソース電極
18b…ドレイン電極
20…空洞
22…ゲート絶縁膜
24…絶縁膜
26…ゲート電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層上にグラフェン膜を成長する工程と
を有することを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、炭素を含有する触媒金属材料を前記基板上に堆積することにより、前記炭素を含有する触媒金属層を形成する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層における炭素の含有率は、0.5〜10%である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項5】
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層にグラフェン膜を成長する工程と、
前記グラフェン膜に接続されたソース/ドレイン電極を形成する工程と、
前記グラフェン膜上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層上にグラフェン膜を成長する工程と
を有することを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、炭素を含有する触媒金属材料を前記基板上に堆積することにより、前記炭素を含有する触媒金属層を形成する
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のグラフェン膜の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層における炭素の含有率は、0.5〜10%である
ことを特徴とするグラフェン膜の製造方法。
【請求項5】
基板上に炭素を含有する触媒金属層を形成する工程と、
炭素含有ガスを用いて前記触媒金属層にグラフェン膜を成長する工程と、
前記グラフェン膜に接続されたソース/ドレイン電極を形成する工程と、
前記グラフェン膜上にゲート絶縁膜を介してゲート電極を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記炭素を含有する触媒金属層を形成する工程は、前記基板上に触媒金属層を形成する工程と、前記触媒金属層内に炭素原子を注入する工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−201735(P2011−201735A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71637(P2010−71637)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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