説明

グリーンシートの溝加工装置および多数個取り配線基板の製造方法

【課題】グリーンシート積層体に分割溝をレーザで形成する際に発生するセラミック成分または金属成分からなる塵埃を極力外部へ排出できる溝加工装置、および該加工装置を用いた高歩留まりの多数個取り配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】主面3に導体層5が形成されたグリーンシート積層体2を載置する載置部13を有し、且つ平面視で該積層体2を縦横方向に沿って移動させるテーブル10と、該テーブル10の主面11の上方において、軸方向が該テーブル10の主面11に対して直交する垂直方向に沿って配置されたレーザ照射ヘッド20と、該ヘッド20の先端20a側の周囲に配置され、平面視の軸方向がテーブル20の移動方向と逆向きで、且つ側面視の軸方向とレーザ照射ヘッド20の軸方向との間が鋭角θ1であるガス吹き付けノズル26,28と、レーザ照射ヘッド20の周囲において、該ヘッド20を囲むように配置されたガス吸引口22と、を含む、グリーンシートの溝加工装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック配線基板の製造に用いるグリーンシートの溝加工装置、および該溝加工装置を用いた多数個取り配線基板の製造方法に関する。
尚、本明細書におけるグリーンシートは、表・裏面の少なくとも一方に導体層が形成された単層のグリーンシートや、複数層のグリーンシートを積層してなり、該グリーンシート間に導体層を有するグリーンシート積層体を含む。
【背景技術】
【0002】
セラミック配線基板を多数個取りにより製造する場合、従来は、表面と裏面との少なくとも一方に導体層を形成した複数のグリーンシートを積層・圧着してグリーンシート積層体を形成し、該積層体における個々の配線基板領域間の境界に沿って刃物(金型)を一定の深さで入れて分割溝を形成し、更に焼成した後、分割溝に沿って分割して個片化することで、複数のセラミック配線基板を製造していた。しかし、刃物を軟質のグリーンシート積層体に進入させた際に、その負荷により該刃物に隣接する配線基板領域の周辺部が変形する、という問題があった。
【0003】
前記刃物による製品領域の変形をなくし、セラミック配線基板の製造歩留まりを高めるため、表面に位置する複数の配線基板領域に導体層を印刷にて形成した複数層のグリーンシートを積層・圧着して積層体を形成し、該積層体をレーザ光により加熱溶融して、複数の配線基板領域ごとに切断した後、これらの配線基板を焼成するプロセスからなる電子回路基板の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記のようにレーザによってグリーンシートの積層体を切断する場合、該レーザが照射されたグリーンシートの部位では、セラミック成分あるいは導体層を構成する金属成分からなり、約数μm〜約10数μmの塵埃が発生する。該塵埃が切断後のセラミック配線基板における表面(第1主面)のパッドなどの表面に付着していると、金属成分の塵埃の場合は、不用意な短絡などを招き、セラミックの塵埃の場合は、パッドなどに追って施す金属メッキが部分的に被着しなくなる、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−53443号公報(第1〜11頁、図1〜20)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、背景技術において説明した問題点を解決し、グリーンシートに分割溝をレーザで形成する際に発生するセラミック成分もしくは金属成分からなる塵埃を極力外部へ排出できる溝加工装置、および該加工装置を用いた高歩留まりの多数個取り配線基板の製造方法を提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、グリーンシートの表面にレーザを照射して分割溝を形成すると同時に、該レーザの高温エネルギにより前記分割溝付近で発生するセラミック成分または金属成分の塵埃を、直ちに外部へ排出する、ことに着想して成されたものである。
即ち、本発明によるグリーンシートの溝加工装置(請求項1)は、グリーンシートを載置する載置部を有し、且つ平面視で該グリーンシートを縦横方向に沿って移動させるテーブルと、該テーブルの主面の上方において、軸方向が該テーブルの主面に対して直交する垂直方向に沿って配置されたレーザ照射ヘッドと、該レーザ照射ヘッドの先端側の周囲に配置され、平面視の軸方向が上記テーブルの移動方向と逆向きで、且つ側面視の軸方向と上記レーザ照射ヘッドの軸方向との間が鋭角であるガス吹き付けノズルと、上記レーザ照射ヘッドの周囲において、該ヘッドを囲むように配置されたガス吸引口と、を含む、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、前記レーザ照射ヘッドから照射されたレーザが、テーブルと共に縦方向または横方向に沿って移動するグリーンシートの主面付近に達すると、該レーザの高温エネルギにより上記移動方向と逆方向に沿い且つグリーンシートの主面に沿って分割溝が形成される。しかも、上記レーザの照射によって生じるグリーンシートのセラミックあるいは前記導体層の金属からなる微少な塵埃は、前記ガス吹き付けノズルから吹き付けられたガスによって、レーザ照射ヘッドの周囲において該ヘッドを囲む該吸引口に搬送され、外部に排出される。その結果、レーザによる溝加工と同時に発生する塵埃を外部に確実に排出できるため、得られる多数個取り配線基板において、塵埃の残留によるパッド間での不用意な短絡、分割溝内に残ったり再進入したセラミック成分による焼成時の融着、あるいはメッキ被着不良などの不具合を低減できる。従って、信頼性の高い多数個取り配線基板を効率良く提供することが可能となる。
【0008】
尚、前記グリーンシートは、単層のグリーンシートのほか、複数のグリーンシートを積層したグリーンシート積層体をも含む。
また、前記グリーンシートの主面および裏面の少なくとも一方に形成された導体層は、パッド、配線層、封止用導体層などである。
更に、前記分割溝は、配線基板領域同士間の境界、および配線基板領域と耳部との境界に設定した切断予定面に沿って形成されるが、該境界には、前記導体層が形成された形態と、未焼成のグリーンシートが露出した形態とが含まれる。
また、前記グリーンシートは、矩形の金属枠の内側に張り付けられ、該金属枠と共に、前記テーブルの表面に減圧吸引により固定される。
更に、前記テーブルには、単層のグリーンシートあるいは複数のグリーンシートを積層・圧着したグリーンシート積層体を主面に吸着して固定するための複数の減圧孔が、前記通し孔と別に主面に形成されている。
また、前記レーザは、YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ、あるいはルビーレーザなどである。
更に、前記ガスは、空気のほか、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、あるいはこれらの混合ガスである。
【0009】
また、本発明には、前記ガス吹き付けノズルは、平面視において前記レーザ照射ヘッドに対し点対称となる位置に複数個が配置されている、グリーンシートの溝加工装置(請求項2)も含まれる。
これによれば、平面視でグリーンシートの主面において縦方向および横方向に沿った格子形状、あるいは平面視が多角形や円形などである任意の切断予定面に沿って、複数の分割溝をレーザ加工により連続して形成することが可能となる。
尚、前記点対称には、一対(2個)、4個、6個、あるいは8個の前記ノズルを点対称にして併設した形態が含まれる。
更に、本発明には、前記ガス吹き付けノズルは、平面視において前記レーザ照射ヘッドを中心とした際の離間角度が90度の位置に複数個が配置されている、グリーンシートの溝加工装置(請求項3)も含まれる。
これによれば、平面視でグリーンシートの主面において縦方向および横方向の切断予定面に沿って複数の分割溝を、レーザ加工により連続して形成することが可能となる。前記離間角度が90度である複数の形態には、一対(2個)、3個、あるいは4個の前記ノズルを併設した形態が含まれる。
【0010】
また、本発明には、前記テーブルの載置部は、前記グリーンシートを貫通する複数の貫通孔と個別に連通する複数の通し孔を備え、該複数の通し孔の裏面側には、上記貫通孔と該通し孔とに連通する吸引手段が配置されている、グリーンシートの溝加工装置(請求項4)も含まれる。
これによれば、前記レーザの照射によって生じる塵埃は、前記レーザ照射ヘッド周囲のガス吸引口から排出されるほかに、レーザにより形成された分割溝からグリーンシートの貫通孔およびテーブルの通し孔を経る経路によっても迅速に外部へ排出することが可能となる。従って、所定位置に分割溝を有し且つ塵埃の残留を著しく抑えた多数個取り配線基板を確実に提供することが可能となる。
尚、グリーンシートの貫通孔は、例えば、縦横方向に沿った複数の分割溝が交差する位置に形成され、前記テーブルの通し孔も、平面視で上記貫通孔と重複する位置に配設されている。
加えて、本発明には、前記グリーンシートの主面あるいはグリーンシート間には、導体層が形成されている、グリーンシートの溝加工装置(請求項5)も含まれる。これによれば、グリーンシートの主面や内層に形成された導体層による塵埃を分割溝付近から確実に排除させることができる。
【0011】
一方、本発明による多数個取り配線基板の製造方法(請求項6)は、グリーンシートを、平面視で縦横方向に移動可能なテーブルの主面に固定する第1ステップと、前記テーブルを縦横方向の何れか一方に沿って移動させ、該テーブルと共に移動する上記グリーンシートの主面にレーザを照射することにより、上記グリーンシートの主面に沿った分割溝を形成すると共に、平面視で上記レーザの周囲から該レーザに向け且つ上記グリーンシートの移動方向と逆方向に沿ってガスを噴射する第2ステップと、を含む溝形成工程とを、備える、ことを特徴とする。
これによれば、テーブルと共に移動するグリーンシートの主面付近にレーザを照射することで、上記移動方向に沿った分割溝が形成されると同時に、形成された分割溝付近から発生するセラミックあるいは金属の塵埃を、上記移動方向と逆方向に沿って噴射されるガスによって分割溝の付近から外部へ排除することができる。従って、所定位置に分割溝を有し且つ塵埃の残留を著しく抑えた多数個取り配線基板を確実に製造することに貢献できる。
尚、グリーンシートのテーブル主面への固定方法は、減圧吸着式が推奨される。
また、分割溝の深さは、グリーンシートまたはグリーンシート積層体の厚みの60%以下、例えば約40%である。
【0012】
また、本発明には、前記テーブルの主面と裏面との間には、前記グリーンシートを貫通する複数の貫通孔と個別に連通する複数の通し孔が貫通しており、前記第2ステップの際に、上記貫通孔および通孔から当該テーブルの裏面側に、ガスを吸引し且つ外部に排出している、多数個取り配線基板の製造方法(請求項7)も含まれる。
これによれば、前記レーザの照射によって生じる塵埃を、前記ガスの噴射による排出に加え、形成された分割溝からグリーンシートの貫通孔とテーブルの通し孔とを経る経路によっても外部へ排出することができる。従って、レーザによって溝加工され且つ塵埃の残留を極力抑えた多数個取り配線基板を製造できる。
【0013】
更に、本発明には、前記第2ステップにおいて、前記テーブルを縦方向または横方向に沿って移動させ、且つ前記レーザを照射して、前記グリーンシートの主面に沿った分割溝を形成する際に、側面視で上記レーザの周囲から上記グリーンシートの移動方向と反対方向に沿い且つ、該レーザに対し斜め下向きにガスが噴射される、多数個取り配線基板の製造方法(請求項8)も含まれる。
これによれば、グリーンシートの主面に沿って形成された分割溝の内側に向かって前記ガスの一部が噴射されるため、レーザ照射により発生するセラミックあるいは金属の微少な塵埃を、該レーザ照射位置付近からテーブル上方の吸引口側またはグリーンシートの貫通孔およびテーブルの通し孔側に確実に移送できるので、外部へ容易に排出することができる。
加えて、本発明には、前記グリーンシートの主面あるいはグリーンシート間には、導体層が形成されている、多数個取り配線基板の製造方法(請求項9)も含まれる。これによれば、グリーンシートの主面や内層に形成された導体層による塵埃を分割溝付近から確実に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明によるグリーンシートの溝加工装置の概略を示す側面図。
【図2】上記グリーンシートの溝加工装置の概略を示す平面図。
【図3】上記溝加工装置のレーザ照射ヘッド付近を示す垂直断面図。
【図4】上記溝加工装置のレーザ照射ヘッド付近を示す底面図。
【図5】上記溝加工装置のレーザ照射ヘッド付近の異なる形態を示す底面図。
【図6】本発明による多数個取り配線基板の製造方法を示す概略図。
【図7】上記製造方法におけるレーザ照射位置付近を示す拡大断面図。
【図8】溝形成工程の前後におけるグリーンシート積層体を示す部分断面図。
【図9】溝形成工程中のグリーンシート積層体を示す平面図。
【図10】図9中のy−y線の矢視に沿ったグリーンシート積層体の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明によるグリーンシートの溝加工装置1の概略を示す側面図、図2は、その平面図である。
グリーンシートの溝加工装置1は、図1,図2に示すように、グリーンシート積層体2を主面(表面)11内の載置部13に載置して支持し、且つ縦−横( Y−X)方向に沿って移動するテーブル2と、該テーブル2の主面11の上方に配置され、軸方向が主面11と直交する垂直(Z)方向に沿ったレーザ照射ヘッド20と、を備えている。
前記グリーンシート積層体2は、少なくとも主面に導体層が形成された複数のグリーンシート(図示せず)を積層して圧着したもので、主面3と裏面(9)とを有し、図2に示すように、縦横に配列された複数の配線基板領域4からなる製品領域(載置部13)と、その周囲に位置する耳部6とからなる。製品領域とこれに隣接する耳部6との主面3には、W、Mo、Cu、またはAg粉末を含む未焼成でベタ状の導体層5が形成されている。また、配線基板領域4,4間および配線基板領域4と耳部6との境界に沿って、図2中の破線で示す仮想の切断予定面7が設定されている。縦横の切断予定面7,7が交差する位置には、主面3と裏面(9)との間を貫通する断面円形の貫通孔8が形成されている。
尚、前記グリーンシート積層体2は、アルミナなどの高温焼成セラミック、あるいは低温焼成セラミックの一種であるガラス−セラミックからなるものである。
【0016】
テーブル10は、図1,図2に示すように、平面視が長方形(矩形)の主面11および裏面12を有し、主面11の内側には、複数の減圧孔15と複数の通し孔14とが開口する前記載置部13が位置している。該テーブル10は、図1に示すように、該テーブル10の底面から垂下したボールナット16にネジ結合しつつ貫通するボールネジ軸17xの回転によって,横(X−X)方向に沿って移動可能とされている。上記ネジ軸17xは、一対の軸受18に支持され、且つ一端に連結されたサーボモータ(駆動源)smによって回転される。また、図2において、テーブル10の下側の側面とから水平方向に延出した前記同様のボールネジ軸17yの一端にも、別のサーボモータsm(図示せず)が連結され、その回転操作によって、該テーブル10を縦(Y−Y)方向に沿って移動可能としている。
前記ボールナット16やボールネジ軸17x,17yなどは、垂直方向にて異なる位置に配設されている。また、ボールナットやボールネジ軸に替えて、2組の流体圧シリンダや、ラックとこれに噛み合うピニオンギアを適用しても良い。
尚、複数の減圧孔15は、図示しない真空ポンプに連通しており、該減圧孔15を負圧化することで、前記グリーンシート積層体2を主面11に吸着(固定)している。また、複数の通し孔14は、図1に示すように、テーブル10の主面11に固定されグリーンシート積層体2の前記貫通孔8と個別に連通している。
【0017】
レーザ照射ヘッド20は、図1〜図3に示すように、全体がほぼ円柱形を呈し、先端20a側の中心部から軸方向に沿ってレーザLが照射される。該ヘッド20の周囲には、下向きに開口するガス吸引口22を内側に形成すべく、円筒形の外筒体21が配置され、該外筒体21は、水平なパイプ24を介して図示しないスタンドなどに片持ち姿勢で支持されている。ガス吸引口22は、排気口25を介してパイプ24の中空部(排気路)と連通している。尚、前記レーザLは、例えば、YVO4レーザである。
外筒体21の先端側には、前記横(X)方向に沿って一対のガス吹き付けノズル26,28が斜め下向きで且つ点対称に取り付けられている。図3に示すように、側面視において、ガス吹き付けノズル26,28は、それらの軸方向と前記レーザ照射ヘッド20の軸方向との間が鋭角θ1(例えば、40〜60度)である。また、該ノズル26,28は、図4に示すように、底面視において、上記ヘッド20を中心に点対称となるように角度θ2(180度)で対向している。
【0018】
前記ガス吹き付けノズル26,28の軸方向(向き)の一方は、平面視においてテーブル10の移動方向と常に逆向きで使用される。また、該ノズル26,28の上側の基端には、ガスを供給するためのホース(図示せず)が接続している。
また、図5の底面図中の太い矢印で示すように、左側のガス吹き付けノズル28を、外筒体21の円周方向に沿った旋回機構によって、90度旋回可能とすることで、隣接する右側のガス吹き付けノズル26との離間角度θ3を90度とした形態としても良い。かかる形態とした場合、前記テーブル10と共にグリーンシート積層体2を横方向Xと縦方向Yとの交互に移動する場合に好適となる。勿論、右側のガス吹き付けノズル26も、上記同様に旋回可能としても良い。
尚、一つのレーザ照射ヘッド20の周囲において、ガス吹き付けノズルの総数を3個とし底面視でほぼT字形の位置に配置したり、総数を4個とし底面視でほぼ十字形の位置に配置したり、総数を6個とし底面視で正六角形における稜線ごとの位置に配置したり、あるいは、総数を8個とし且つ底面視で互いに隣接する角度を45度とした配置としても良い。
但し、本発明において用いるガス吹き付けノズルは、1個であっても良い。
【0019】
以下において、前記溝加工装置1を用いた多数個取り配線基板の製造方法について説明する。
先ず、図6に示すように、テーブル10の主面11における載置部13上に複数の減圧孔15を負圧状態として、主面3を上側としてグリーンシート積層体2を吸引・固定した(第1ステップ)。この際、該グリーンシート積層体2の各貫通孔8は、テーブル10の通し孔14に個別に連通し、各通し孔14は、テーブル10の裏面12側で図示しない真空ポンプに連通していた。
次に、図6中の白抜きの矢印で示すように、テーブル10と共にグリーンシート積層体2を、横(X)方向で且つ図示で右向きに移動させた。この際、予め、前記レーザ照射ヘッド20の中心部は、グリーンシート積層体2における何れかの横(X)方向に沿った前記切断予定面7の右端付近の上方に配置されていた。
【0020】
図6に示すように、テーブル10と共にグリーンシート積層体2を横(X)方向で且つ図示で右向きに移動させると、レーザ照射ヘッド20の先端20aから照射されたレーザ(YVO4レーザ)Lがグリーンシート積層体2の横(X)方向の切断予定面7に沿って走査された。その結果、図6〜図8に示すように、グリーンシート積層体2の横(X)方向における切断予定面7に沿って、断面ほぼV字形の分割溝30が直線状に形成された(第2ステップ)。尚、前記分割溝30の断面には、U字形状も含まれる。
同時に、図6,図7に示すように、平面視でテーブル10およびグリーンシート積層体2の移動方向と逆向きのガス吹き付けノズル26からエア(ガス)a1が、上記レーザLの照射された位置付近に向かって吹き付けられ、該エアa1の一部は、形成された直後の分割溝30の内側にも進入した。
【0021】
その結果、前記レーザLの照射を受けて、導体層5やグリーンシート積層体2のグリーンシートから発生した金属やセラミックの塵埃d1は、吹き付けられた前記エアa1の圧力によって吹き上げられ、図6,図7に示すように、前記エアa1の一部であるエア(ガス)a2と共にガス吸引口22から排気口25を経て、パイプ24の中空部(排気路)から外部に連続して排出された。
一方、レーザLの照射によってグリーンシート積層体2の主面3に沿って形成された断面V字形状の分割溝30の底部側には、前記貫通孔8の上部が露出して連通した。その結果、図7に示すように、前記金属やセラミックからなる一部の塵埃d2は、前記エアa1の一部であるエア(ガス)a3と共に、分割溝30の底部から貫通孔8、およびテーブル10の通し孔14を経て外部に排出された。
【0022】
前記第2ステップによって、グリーンシート積層体2の主面3における横(X)方向の切断予定面7に沿って、分割溝30を主面3の右端側から左端側に向かって形成した。次に、テーブル10と共にグリーンシート積層体2を縦(Y)方向に一つの配線基板領域4分だけ移動し、隣接する横(X)方向の切断予定面7の左端側から左端側に沿って、前記同様にレーザLを照射しつつ、ガス吹き付けノズル28からエアa1を噴射して、分割溝30を形成し且つ塵埃d1,d2を外部へ排出した。
以上のグリーンシート積層体2のレーザL照射を受ける横(X)方向の移動、および縦(Y)方向の交互の移動と、横(X)方向に沿った移動時ごとのガス吹き付けノズル26,28の交互の使用とを行った。その結果、図9に示すように、グリーンシート積層体2の主面3の横(X)方向で且つ複数の切断予定面7に沿って複数の分割溝30が平行に形成された。
【0023】
次に、前記図5で示したように、一方のガス吹き付けノズル28の向きを、テーブル10およびグリーンシート積層体2の縦(Y)方向と平行となるように、平面視で90度旋回させた。尚、併せて他方のガス吹き付けノズル26向きも、テーブル10およびグリーンシート積層体2の縦(Y)方向と平行となるよう同様に旋回させる機構を、前記溝加工装置1に追加しても良い。
かかる状態で、平面視で、レーザ照射ヘッド20に対し、テーブル10およびグリーンシート積層体2の縦(Y)方向を移動させ、主面3の該縦(Y)方向の切断予定面7ごとに沿って、前記第2ステップによるレーザLの照射、ガス吹き付けノズル26,28交互からのエアa1の吹き付け、およびエアa2,a3による塵埃d1,d2を行った。その結果、グリーンシート積層体2の主面3の縦(Y)方向で且つ複数の切断予定面7に沿って複数の分割溝30が平行に形成され、前記横(X)方向の分割溝30と併せて平面視が格子形状の分割溝30が形成された。
【0024】
更に、テーブル10の主面11から一旦グリーンシート積層体2を取り外して反転した後、再度前記ステップ1を行って、裏面9を上向きにして積層体2を固定した(第1ステップ)。そして、グリーンシート積層体2の該裏面9に対しても、縦(Y)方向および横(X)方向に沿って、レーザLの照射と前記ノズル26,28によるエアa1の吹き付けとからなる前記第2ステップを順次施した。
その結果、図10に示すように、主面2および裏面9に平面視が格子形状に分割溝30が形成されたグリーンシート積層体2が得られた。尚、主面2と裏面9との間で対向する一対の分割溝30,30の間には、図示しないメッキ用接続配線が配線基板領域4,4間および製品領域(4)と耳部6との間を接続すべく配置されている。また、分割溝30は、主面2または裏面9にのみ形成しても良い。
そして、上記グリーンシート積層体2を、所定温度で焼成した後、メッキ液槽に浸漬し、前記導体層5などの表面に電解Niメッキおよび電解Auメッキによるメッキ膜を被着して、多数個取り配線基板を得ることができた。
【0025】
以上のような多数個取り配線基板によれば、テーブル10と共に移動するグリーンシート積層体2の主面3付近にレーザLを照射することで、前記移動方向に沿った分割溝30が形成されると同時に、形成された分割溝30付近から発生するセラミックあるいは金属の塵埃d1を、上記移動方向と逆方向に沿って噴射されるエアa1によって分割溝30の付近から排除することができた。しかも、前記レーザLの照射によって生じる塵埃d2を、形成された直後の分割溝30からグリーンシート積層体2の貫通孔8とテーブル10の通し孔14とを経る経路によっても外部へ排出することができた。従って、所定位置に分割溝30を有し且つ塵埃d1,d2の残留を著しく抑えた信頼性の高い多数個取り配線基板を効率良く確実に製造することができた。
【0026】
本発明は、以上において説明した形態に限定されるものではない。
例えば、前記溝加工装置1および多数個取り配線基板の製造方法には、単層のグリーンシートを用いても良い。
また、前記溝加工装置1は、一つのテーブルの上方に2個以上のレーザ照射ヘッドを併設し、該ヘッドごとに単数または複数のガス吹き付けノズルを前記のように取り付け、複数の上記ヘッドが平行に稼働する形態としても良い。
更に、前記配線基板領域4および製品領域は、平面視で長方形を呈する形態としても良く、且つ配線基板領域4ごとの主面3側にキャビティ(凹部)が形成されていても良い。
また、前記テーブル10およびグリーンシート積層体2の移動は、図5に示したレーザ照射ヘッド20を用い、個々の配線基板領域4ごとを囲む切断予定面7に沿って、縦方向(Y)と横方向(X)との移動を交互に連続して行っても良い。
更に、前記テーブル10を縦横方向に移動させる手段には、例えば、エアシリンダなどの流体圧シリンダや、チェーンとこれに噛み合うスプロケットの組み合わせを用いても良い。
加えて、前記グリーンシート積層体2などの主面3および裏面9における切断予定面9は、前記導体層5が形成されていない未焼成のグリーンシート面であっても良いし、焼成後のセラミック面でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によるグリーンシートの溝加工装置によれば、グリーンシート積層体に分割溝をレーザで形成する際に発生するセラミック成分などの塵埃を極力外部へ排出して、信頼性の高い配線基板を併有する多数個取り配線基板を効率良く製造することに貢献できる。
【符号の説明】
【0028】
1……………溝加工装置
2……………グリーンシート積層体(グリーンシート)
3,11……主面
5……………導体層
8……………貫通孔
9,12……裏面
10…………テーブル
13…………載置部
14…………通し孔
20…………レーザ照射ヘッド
20a………上記ベッドの先端
22…………ガス吸引口
26,28…ガス吹き付けノズル
30…………分割溝
L……………レーザ
a1〜a3…空気(ガス)
θ1…………鋭角
θ3…………離間角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に導体層が形成されたグリーンシートを載置する載置部を有し、且つ平面視で該グリーンシートを縦横方向に沿って移動させるテーブルと、
上記テーブルの主面の上方において、軸方向が該テーブルの主面に対して直交する垂直方向に沿って配置されたレーザ照射ヘッドと、
上記レーザ照射ヘッドの先端側の周囲に配置され、平面視の軸方向が上記テーブルの移動方向と逆向きで、且つ側面視の軸方向と上記レーザ照射ヘッドの軸方向との間が鋭角であるガス吹き付けノズルと、
上記レーザ照射ヘッドの周囲において、該ヘッドを囲むように配置されたガス吸引口と、を含む、
ことを特徴とするグリーンシートの溝加工装置。
【請求項2】
前記ガス吹き付けノズルは、平面視において前記レーザ照射ヘッドに対し点対称となる位置に複数個が配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のグリーンシートの溝加工装置。
【請求項3】
前記ガス吹き付けノズルは、平面視において前記レーザ照射ヘッドを中心とした際の離間角度が90度の位置に複数個が配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のグリーンシートの溝加工装置。
【請求項4】
前記テーブルの載置部は、前記グリーンシートを貫通する複数の貫通孔と個別に連通する複数の通し孔を備え、該複数の通し孔の裏面側には、上記貫通孔と該通し孔とに連通する吸引手段が配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のグリーンシートの溝加工装置。
【請求項5】
前記グリーンシートの主面あるいはグリーンシート間には、導体層が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のグリーンシートの溝加工装置。
【請求項6】
グリーンシートを平面視で縦横方向に移動可能なテーブルの主面に固定する第1ステップと、
上記テーブルを縦横方向の何れか一方に沿って移動させ、該テーブルと共に移動する上記グリーンシートの主面にレーザを照射することにより、上記グリーンシートの主面に沿った分割溝を形成すると共に、平面視で上記レーザの周囲から該レーザに向け且つ上記グリーンシートの移動方向と逆方向に沿ってガスを噴射する第2ステップと、を含む溝形成工程とを、備える、
ことを特徴とする多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記テーブルの主面と裏面との間には、前記グリーンシートを貫通する複数の貫通孔と個別に連通する複数の通し孔が貫通しており、前記第2ステップの際に、上記貫通孔および通孔から当該テーブルの裏面側に、ガスを吸引し且つ外部に排出している、
ことを特徴とする請求項6に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記第2ステップにおいて、前記テーブルを縦方向または横方向に沿って移動させ、且つ前記レーザを照射して、前記グリーンシートの主面に沿った分割溝を形成する際に、側面視で上記レーザの周囲から上記グリーンシートの移動方向と反対方向に沿い且つ、該レーザに対し斜め下向きにガスが噴射される、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の多数個取り配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記グリーンシートの主面あるいはグリーンシート間には、導体層が形成されている、
ことを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の多数個取り配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−81647(P2012−81647A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229495(P2010−229495)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】