説明

コラーゲン産生増強剤とその製造方法並びに用途

コラーゲン産生増強剤とその用途を提供することを課題とし、L−アスコルビン酸類と脂肪酸類とを有効成分として含んでなるコラーゲン産生増強剤とその用途を確立することによりを前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なコラーゲン産生増強剤、より詳細には、L−アスコルビン酸及び/又はその類縁体(以下、特に断りがない限り、『L−アスコルビン酸類』と言う。)と、脂肪酸類とを有効成分として含んでなるコラーゲン産生増強剤とその製造方法並びに用途に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、特開2002−201883号公報に於いて、生体におけるコラーゲン産生増強剤として、有効成分としてL−アスコルビン酸類とローヤルゼリー類とを含んでなるコラーゲン産生増強剤を開示した。このコラーゲン産生増強剤は、L−アスコルビン酸類によるコラーゲン産生誘導能をローヤルゼリー類により増強するものである。
【0003】
しかしながら、前記コラーゲン産生増強剤が奏するコラーゲン産生増強作用は、L−アスコルビン酸類に対するローヤルゼリー類の配合割合を増加させると増大する傾向にあるが、高価なローヤルゼリー類を多用すればするほど、最終製品のコラーゲン産生増強剤が高価なものになるとの欠点があった。また、前記コラーゲン産生増強剤が奏するコラーゲン産生増強作用は、配合するローヤルゼリー類の由来、その調製方法により著しく変化し、その品質管理が難しいという欠点があった。
【0004】
斯かる状況下、L−アスコルビン酸類によるコラーゲン産生増強作用を確実かつ安定に増強し得る、工業的に安価に提供することのできるコラーゲン産生増強剤の確立が希求されていた。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、従来技術に鑑みて為された発明であり、L−アスコルビン酸類によるコラーゲン産生増強作用を確実かつ安定に増強する新規な手段とその用途を提供することにある。
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決することを目的として、生ローヤルゼリー類中に含まれ特定の成分が、L−アスコルビン酸類によるコラーゲン産生誘導能を増強するという前提の元、その成分が何であるのかを解明すべく鋭意研究を続けた。その結果、生ローヤルゼリー類中に存在する10−ヒドロキシ−2−デセン酸(以下、『10−HDA』と言う。)が、その一成分であることを突き止めた。この10−HDAとL−アスコルビン酸とを所定の割合で併用すると、L−アスコルビン酸類によるコラーゲン産生増強作用が確実かつ安定に増強されることを見出した。また、L−アスコルビン酸と同様、他のL−アスコルビン酸類と、10−HDA以外の他の脂肪酸類とをヒトを含む動物に適用した場合にも、所期の効果が奏されることを見出した。更に、本発明者等は、L−アスコルビン酸類と、脂肪酸類とを併用したとき、生体におけるTGF−β産生増強作用も奏されることを見出した。
【0007】
即ち、本発明者等は、L−アスコルビン酸類と脂肪酸類とを有効成分として含んでなるコラーゲン産生増強剤とその製造方法並びに用途を確立して本発明を完成したものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、AA2G(L−アスコルビン酸2−グルコシド)及び/又は10−HDA存在下又は非存在下でNHDF細胞を培養したときのコラーゲン産生量を示す図である。
【図2】図2は、AA2G(L−アスコルビン酸2−グルコシド)と各種濃度の10−HDA存在下でNHDF細胞を培養したときのコラーゲン産生量を示す図である。
【図3】図3は、AA2G(L−アスコルビン酸2−グルコシド)と10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10―HDA)、10−ヒドロキシデカン酸(10Hデカン酸)、デカン酸、2−デセン酸、又はセバシン酸存在下でNHDF細胞を培養したときのコラーゲン産生量を示す図である。
【図4】図4は、L−アスコルビン酸又はAA2G(L−アスコルビン酸2−グルコシド)と10−HDA存在下でNHDF細胞を培養したときのコラーゲン産生量を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のコラーゲン産生増強剤は、L−アスコルビン酸類と脂肪酸類とを有効成分として含んでなる、生体の皮膚におけるコラーゲン産生を確実かつ安定に増強することのできる組成物である。
【0010】
本発明で言うL−アスコルビン酸類とは、ヒトを含む動物に適用したとき、コラーゲン産生を誘導するL−アスコルビン酸とその塩類を始めとする類縁体全般を意味する。具体的には、L−アスコルビン酸の塩類としては、例えば、L−アスコルビン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、L−アスコルビン酸リン酸塩、L−アスコルビン酸硫酸塩などのL−アスコルビン酸の無機塩などを例示できる。L−アスコルビン酸の他の類縁体としては、L−アスコルビン酸の前駆体、L−アスコルビン酸2−グルコシド、L−アスコルビン酸2−グリコシドなどのL−アスコルビン酸の糖誘導体、L−アスコルビン酸2−グルコシドのアシル化誘導体、L−アスコルビン酸2−グリコシドのアシル化誘導体、及びDL−α−トコフェロール2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステル、L−アスコルビン酸2−リン酸などのL−アスコルビン酸の有機塩、無機塩及びエステルなどを例示できる。本発明においては、これらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。前記したL−アスコルビン酸類の内、L−アスコルビン酸2−グルコシドやL−アスコルビン酸2−グリコシドを始めとするL−アスコルビン酸の糖誘導体は、コラーゲン産生誘導能、安全性、安定性が優れていることから、本発明においては最も好適に用いることができる。
【0011】
本発明のコラーゲン産生増強剤をL−アスコルビン酸合成能を有する動物に適用する場合には、L−アスコルビン酸類として、又は、L−アスコルビン酸類と共に、L−アスコルビン酸の前駆体であるL−グロノ−γ−ラクトンを用いることもできる。
【0012】
本発明のコラーゲン産生増強剤に配合するL−アスコルビン酸類の配合量は、当該コラーゲン産生増強剤の形態、投与量、投与経路、投与頻度、投与期間により変動するものの、通常、全組成物質量当たり、L−アスコルビン酸類を、L−アスコルビン酸質量換算で、0.01質量%以上、好ましくは、0.1乃至99質量%、より好ましくは、1乃至99質量%、更に好ましくは、5乃至99質量%の範囲で用いる。本発明のコラーゲン産生増強剤に配合するL−アスコルビン酸類の量が前記下限を下回る場合には、所期の作用効果は期待できなくなる。また、本発明のコラーゲン産生増強剤に配合するL−アスコルビン酸類の量の上限は、過剰摂取による生体への好ましくない副作用、経済性などを勘案して決定すべきである。
【0013】
また、本発明で言う脂肪酸類とは、L−アスコルビン酸類と併用したとき、コラーゲン産生増強作用を発揮する脂肪酸とその類縁化合物全般を意味する。具体的には、C以上の直鎖又は分岐状飽和又は不飽和脂肪酸とそれらの類縁化合物、好適には、C10以上の直鎖又は分岐状飽和又は不飽和脂肪酸とそれらの類縁化合物、より好適には、C10〜C18直鎖又は分岐状飽和又は不飽和脂肪酸とそれらの類縁化合物を例示できる。前記脂肪酸類の内、本発明においては、10−HDA、10−ヒドロキシデカン酸、デカン酸、2−デセン酸、セバシン酸、及びそれらの類縁化合物が最も好適に用いられる。また、斯かる脂肪酸類は、L−アスコルビン酸類存在下、線維芽細胞によるトランスフォーミング・グロース・ファクター(以下、『TGF−β』と言う。)の産生をも増強する。TGF−β産生は、皮膚の表皮内に存在するケラチノサイトから産生されることが知られていることから、脂肪酸類はケラチノサイトによるTGF−β産生メカニズムに関与していることが示唆される。
【0014】
本発明で用いる脂肪酸類としては、所期の目的を損なわない限り、高純度品のみに限定されることなく、比較的低純度のものであってもよい。しかしながら、本発明においては、天然物から抽出されるか、化学合成して得られる脂肪酸類以外の不純物含量の少ない、純度50%以上、好ましくは、純度80%以上、より好ましくは、純度90%以上に精製された高純度脂肪酸類を用いるのが望ましい。具体的には、試薬として市販されている脂肪酸類を例示できる。また、生ローヤルゼリーなどの天然物から本発明で用いる脂肪酸類を調製する方法としては、生ローヤルゼリーを水などの水性溶媒に懸濁し、得られる懸濁液を静置又は遠心処理して上清と沈殿物とに分け、沈殿物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどから選ばれる1種又は2種以上のアルカリ剤を添加して溶解し、得られる溶液を塩酸、硝酸、硫酸、乳酸、及び塩化カルニチンなどから選ばれる1種又は2種以上の酸剤により中和し、及びこの溶液を膜分離、ゲル濾過などの手段により脂肪酸類又はそれを含む脂肪酸類を採取することができる。前記一連の操作は、通常、室温で実施可能であるが、必要に応じて、加温、冷却しつつ0〜70℃の範囲で実施する。斯かる脂肪酸類の分離方法は、生ローヤルゼリーからの脂肪酸類の簡便かつ効率的な分離方法として極めて有用である。
【0015】
本発明のコラーゲン産生増強剤は、以上述べたL−アスコルビン酸類と脂肪酸類とを有効成分として含んでなる組成物であって、脂肪酸類は、L−アスコルビン酸類によるコラーゲン産生誘導作用を効果的に増強することから、L−アスコルビン酸類と併用することにより、L−アスコルビン酸類単独ではコラーゲン産生誘導作用が認められない程度に少量のL−アスコルビン酸類を含むコラーゲン産生増強剤から、L−アスコルビン酸類単独では発揮できない程度に高レベルのコラーゲン産生増強作用を発揮するコラーゲン産生増強剤に至るまで、多種多様のコラーゲン産生増強剤として提供される。本発明のコラーゲン産生増強剤におけるL−アスコルビン酸類と脂肪酸類との好適な配合割合は、通常、L−アスコルビン酸類1質量部(但し、L−アスコルビン酸質量換算による。)に対して、脂肪酸類を0.0001質量部以上、好ましくは、0.01乃至1質量部、より好ましくは、0.1乃至1質量部の範囲で配合する。
【0016】
本発明のコラーゲン産生増強剤において、L−アスコルビン酸類に対して配合する脂肪酸類が前記下限を下回ると、所期の作用効果を期待できなくなる。また、L−アスコルビン酸類に対して配合する脂肪酸類に上限はないけれども、過剰投与が及ぼす生体への悪影響や経済性の観点から考慮して設定すべきである。また、有効成分としてのL−アスコルビン酸類と脂肪酸類の配合量は、本発明のコラーゲン産生増強剤の形態、投与量、投与頻度、投与期間、及び投与する生体、例えば、ヒトを含む動物の性別、年齢、体重、体調などを勘案して、通常、比較的低く設定するのがよい。
【0017】
尚、L−アスコルビン酸類と脂肪酸類との併用によるコラーゲン産生増強作用は、後述する実験2に示すヒト線維芽細胞を用いるコラーゲン産生量測定法により調べることができる。
【0018】
本発明のコラーゲン産生増強剤は、実質的に、有効成分としてのL−アスコルビン酸類と脂肪酸類からなる組成物、或いは、斯かる組成物に、必要に応じて、飲食品、健康食品、特別用途食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料、餌料、又はペットフード用の材料から選ばれる1種又は2種以上の他の成分を配合してなる組成物全般を意味する。前記他の成分としては、抗酸化剤、増粘剤、安定剤、賦形剤、増量剤、pH調整剤、増粘剤、酸味剤、エキス類、糖類、糖アルコール類、アミノ酸類、L−アスコルビン酸類以外のビタミン類(例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ビタミンP(ルチン、ナリンジン、ヘスペリジンなどを含む)、水、アルコール、澱粉質、蛋白質、線維質、脂質、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、防腐剤、乳化剤、及び界面活性剤、更には、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、及びアルロン酸の塩類などのグリコサミノグリカンなどを例示できる。
【0019】
前記他の成分の内、抗酸化剤は、本発明のコラーゲン産生増強剤が含む有効成分の酸化分解を抑制する目的で配合される。具体例には、フラボノイド、ポリフェノールなどを例示できる。本発明のコラーゲン産生増強剤に配合する抗酸化剤の配合量は特に制限はないが、当該コラーゲン産生増強剤が経口摂取される形態のものである場合には、これらの抗酸化剤が食品分野で通常用いられる配合割合にしたがうか、それより低量で用いるのが望ましい。
【0020】
また、前記他の成分の内、糖類としては、グルコース、フラクトース、ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロース、ラクトスクロース、水飴などの糖類、α−、β−、及びγ−サイクロデキストリン、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する環状四糖などの糖類、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、還元水飴などの糖アルコール類、アスパルテーム、ステビア抽出物、スクラロース、アセスルファムK、サッカリンなどの高甘味度甘味料、プルラン、エルシナン、カラギーナン、キサンタンガム、グアガム、ジェランガム、タマリンドガムなどの多糖類・天然ガム類、カルボキシメチルセルロースなどの合成増粘剤などを例示できる。これら糖類は、本発明のコラーゲン産生増強剤の甘味付、呈味改善、固状化、安定化などの目的で有利に利用できる。
【0021】
また、前記他の成分の内、エキス類は、例えば、特開平10−203952号公報に開示されているブナ科ブナ属の木の芽からの抽出物など、コラーゲン産生増強作用を有する成分を含む、イチョウエキス、マツエキス、ササエキス、ウメエキス、パフィアエキス、シソエキス、藍エキス、牡蠣エキスなどのエキス類を例示できる。
【0022】
斯くして得られる本発明のコラーゲン産生増強剤の形態としては、液状、シラップ状、ペースト状、シート状、粉末状、顆粒状、固形状、ペレット状、カプセル状などの形態を例示できる。
【0023】
本発明のコラーゲン産生増強剤をヒトを含む動物に経口的、非経口的(例えば、経皮的)に適用する場合、有効成分が生体に吸収されて、真皮、臓器などに存在する線維芽細胞におけるコラーゲン産生を増強する。本発明のコラーゲン産生増強剤を連日又は隔日で生体に適用することにより、生体におけるコラーゲン産生を持続させ、健康な皮膚の状態を維持するために有効であることは勿論のこと、加齢に伴う皮膚の老化や、紫外線を始めとする外的要因により障害を受けた皮膚組織のコラーゲン産生能を高め、皮膚を正常な状態に戻すことができる。その結果、肌(皮膚)にはりと潤いが付与され、小ジワなどのシワを改善又は解消することができる。また、小ジワなどのシワの予防にも有用である。
【0024】
本発明のコラーゲン産生増強剤を経口的に適用する場合、対象とするヒトを含む動物(愛玩動物、家畜、家禽、魚類を含む)の種類、健康状態、年齢、性別/雌雄によって異なるものの、当該コラーゲン産生増強剤中に含まれるL−アスコルビン酸類の投与量(但し、L−アスコルビン酸質量換算による。)として、体重kg当たり、通常、0.1乃至500mg、好ましくは、1乃至500mg、より好ましくは、1乃至250mgの範囲とする。一方、本発明のコラーゲン産生増強剤中に含まれる脂肪酸類の投与量として、質重量で、L−アスコルビン酸類1質量部(但し、L−アスコルビン酸質量換算による。)に対して、脂肪酸類を0.0001質量部以上、好ましくは、0.01乃至1質量部、より好ましくは、0.1乃至1質量部の範囲で配合する。本発明のコラーゲン産生増強剤の投与頻度は、1乃至数回/日の割合で、作用効果の程度、生体の状態に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて適用する。
【0025】
また、本発明のコラーゲン産生増強剤を非経口的に投与する場合、対象とするヒトを含む動物(愛玩動物、家畜、家禽、魚類を含む)の種類、健康状態、年齢、性別/雌雄によって異なるものの、当該コラーゲン産生増強剤中に含まれるL−アスコルビン酸類の投与量(但し、L−アスコルビン酸質量換算による。)として、体重kg当たり、通常、0.1乃至500mg、好ましくは、1乃至500mg、より好ましくは、1乃至250mgの範囲とする。一方、本発明のコラーゲン産生増強剤中に含まれる脂肪酸類の投与量として、質重量で、L−アスコルビン酸類1質量部(但し、L−アスコルビン酸質量換算による。)に対して、脂肪酸類を0.0001質量部以上、好ましくは、0.01乃至1質量部、より好ましくは、0.1乃至1質量部の範囲で配合する。斯かる本発明のコラーゲン産生増強剤の投与頻度は、1乃至数回/日の割合で、作用効果の程度、生体の状態に応じて、連日又は1日以上の間隔をおいて適用する。
【0026】
本発明のコラーゲン産生増強剤を含有する組成物を製造するには、目的とするコラーゲン産生増強剤の用途に応じて、L−アスコルビン酸類及び脂肪酸類と、必要に応じて、既述した飲食品、健康食品、特別用途食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料、餌料、又はペットフード用の材料の1種又は2種以上の成分を適量配合し、常法により所望の形態に加工して各種形態の組成物とすることができる。L−アスコルビン酸類と脂肪酸類とを所定の割合で配合し得る限り、他の成分を配合する順序、時期に制限はない。本発明のコラーゲン産生増強剤として、固形状の形態のものを得る場合には、本発明のコラーゲン産生増強剤に配合する有効成分と他の適宜成分を配合したものを、減圧乾燥、真空乾燥、温風乾燥などの通常の乾燥方法を適用することができる。乾燥方法としては、例えば、本出願人が特開平6−170221号公報に開示している無水α,α−トレハロースを用いる場合には、加熱による乾燥工程を経ることなく固状のコラーゲン産生増強剤を容易に得ることができる。具体的には、無水α,α−トレハロースなどの無水糖質を、L−アスコルビン酸類と脂肪酸類の合計質量に対し等量以上を添加し、混合した後、通常、常温以下で静置乃至攪拌して、固形物とする方法を例示できる。この方法による場合には、加熱を必須としないことから、熱に対し不安定なL−アスコルビン酸類の熱失活を回避できる利点がある。無水糖質としては、前記無水α,α−トレハロースの他、無水α,β−トレハロース、無水グルコース、及び無水マルトースなどの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0027】
斯くして得られる固形状の本発明のコラーゲン産生増強剤は、必要に応じて、更に粉砕、造粒、打錠して、粉剤、顆粒剤、錠剤、ペレット剤とすることも随意である。
【0028】
本発明のコラーゲン産生増強剤を配合した飲食品、健康食品、特別用途食品としては、例えば、アイスクリーム、アイスキャンディー、シューアイス、シャーベットなどの氷菓、氷蜜などのシロップ、バタークリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペーストなどのスプレッド及びペースト、チョコレート、ゼリー、ムース、キャンディー、グミゼリー、キャラメル、チューインガム、プリン、ヨークシャー・プディング、シュークリーム、スポンジケーキ、カステラなどの洋菓子、ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓などの加工果実ないしは加工野菜、まんじゅう、ういろう、あん、羊羮、水羊羮、カステラ、飴玉、米菓(焼き菓子を含む)などの和菓子、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの調味料、合成酒、醸造酒、発泡酒、焼酎、果実酒、洋酒などの酒類、ジュース、ミネラル飲料、炭酸飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、スポーツ飲料、ドリンク剤、緑茶・紅茶・ウーロン茶などの茶飲料、コーヒー、ココアなどの清涼飲料、更には、ビタミン類、ミネラル類、蛋白質、薬用ニンジン、梅肉エキス、松エキス、笹エキス、イチョウエキス、きのこエキス、ローヤルゼリー、プロポリス、ハーブ、低カロリー食品、減塩食品、低脂肪食品、自然食品、有機食品、海洋深層水などを例示できる。
【0029】
また、本発明のコラーゲン産生増強剤を配合した化粧品又は医薬部外品としては、例えば、皮膚外用ローション、クリーム、ゼリー、ムース、デオドラント、乳液、固剤、粉末剤、練り歯磨き、口臭抑制剤、口中洗浄剤、石鹸、ハンドソープ、入浴剤、ボディーシャンプー、シャンプー、リンス、パック、フェイスマスク、アイマスク、及び香水などの礎化粧品、洗浄用化粧品、入浴用化粧品、パック、口腔化粧品、日焼け・日焼け止め化粧品、制汗剤、メークアップ化粧品、頭髪化粧品(発毛剤、育毛剤、養毛剤、整髪剤など)などを例示できる。
【0030】
また、本発明のコラーゲン産生増強剤を配合した医薬品としては、例えば、液剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、軟膏、ペレット剤、シート状剤、パップ剤、シップ剤などの皮膚外用剤、内服用剤などを例示できる。
【0031】
また、本発明のコラーゲン産生増強剤を配合した飼料、餌料、ペットフードとしては、例えば、公知の飼料、餌料、ペットフード用の材料と適宜配合して得られる飼料、餌料、ペットフードなどを例示できる。
【0032】
更に、本発明のコラーゲン産生増強剤は、台所用洗剤、スポンジたわし、ヘアバンド、リストバンドなどの雑貨類、ナプキンなどの生理用品、更には、ズボン、スカート、帽子、ソッスク、ストッキング、ハンカチ、タオル、バスタオル、手袋、包帯、コルセット、靴、スリッパなどに含浸、塗布、噴霧、付着などにより付与して用いることも可能である。
【0033】
前記各種組成物を製造するには、それら組成物が完成するまでの適宜時期に本発明のコラーゲン産生増強剤を配合すればよい。通常、L−アスコルビン酸類の熱失活を防ぐために、加熱工程を経由する場合には、その加熱工程後に添加するのが望ましい。
【0034】
前記各種組成物中における本発明のコラーゲン産生増強剤の配合量は、製品質量当たり、通常、0.001質量%以上、好ましくは、0.01乃至99質量%、より好ましくは、0.05乃至50質量%とする。
【0035】
本発明のコラーゲン産生増強剤又はこれを配合してなる各種組成物を生体に適用とすると、有効成分としてのL−アスコルビン酸類と脂肪酸類とが生体内の皮膚に存在する線維芽細胞に作用してコラーゲン産生を増強する。その結果、皮膚の強化、皮膚の生体防御能の増強、加齢に伴う皮膚の老化防止、紫外線を始めとする因子により障害を受けた皮膚の正常化が達成される。更に、本発明のコラーゲン産生増強剤を生体に適用すると、内臓や血管の組織を強化する効果も期待される。
【0036】
また、本発明のコラーゲン産生増強剤は、前記したとおり皮膚に有用な作用効果をもたらすものであることから、発毛・育毛・養毛作用を有する。したがって、本発明のコラーゲン産生増強剤を体毛・羽毛を有するイヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、鳥類などの愛玩動物、家畜・家禽に適用すると、それら動物の肌や表皮組織を活性化し、体毛・羽毛の発育毛を増進し、毛並みを改善する効果も期待できる。また、本発明のコラーゲン産生増強剤をヒトの頭皮などの皮膚に適用する場合には、発毛・育毛・養毛作用をも期待できる。更に、本発明のコラーゲン産生増強剤及び/又はそれを含有する組成物を皮膚を介して生体に直接導入する場合は、例えば、同じ出願人による国際公開第WO 01/60388号公報に開示されたイオン導入具を用いることによって、皮膚にその有効成分を効率的に導入することができる。
【0037】
以下、実験及び実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0038】
実験1
<ローヤルゼリー由来のコラーゲン産生増強成分の分離と同定>
室温下、ブラジル産生ローヤルゼリー1gを精製水10mlに懸濁し、3,000rpmで10分間遠心処理して、上清画分と沈殿画分とに分けた。前記沈殿画分に1N−NaOH水溶液を1ml添加し、固形物を溶解させ、次いで、1N−HCl水溶液で中和した後、精製水で全量を10mlとし、分画分子量5,000ダルトンのUF膜を用いて高分子画分と低分子画分とに分画した。各画分につき、後述するコラーゲン・アッセイ法(以下、『コラーゲン・アッセイ法』と言う。)を適用して、コラーゲン産生増強作用の有無を調べた。その結果、コラーゲン産生増強作用は、沈殿画分の低分子画分(以下、『画分A』と言う。)が最も高かった。そこで、画分A中に存在するコラーゲン産生増強成分の単離と同定を試みた。即ち、画分AをC18逆相高速液体クロマトグラフィー(以下、『HPLC』と言う。)(カラムサイズ:内径4.6×長さ250mm、充填剤:シリカゲルにオクタデシル基が結合したゲル(バイダック社製))を用いて複数の画分に分画し、コラーゲン・アッセイ法によりコラーゲン産生増強活性画分を特定し、回収した。溶出に際しては、溶出速度0.5ml/分で、0.05%(w/v)トリフルオロ酢酸水溶液を15分間、アセトニトリル20%(w/v)含有0.05%(w/v)トリフルオロ酢酸水溶液を5分間カラムに流し、更に、アセトニトリル濃度が20%(w/v)から80%(w/v)に直線的に上昇する0.05%(w/v)トリフルオロ酢酸水溶液を60分間カラムに流しつつ、波長210nmにて溶出画分の吸収ピークをモニターし、その吸収ピークが高い画分(画分B)を回収した。尚、波長210nmにてモニターした理由は、予備的実験により、画分Aに含まれるコラーゲン産生増強作用を有する成分の吸収波長であったことによる。更に、画分Bを再度、前記条件でC18逆相HPLCにて再クロマトしたところ、コラーゲン産生増強作用を示す成分(以下、『成分X』と言う。)は、43〜44分の位置に溶出した。この成分Xの吸収極大波長を調べたところ215nmであった。
【0039】
本発明者等は、成分Xを同定するに際し、HPLC分析手法により、画分A中には脂肪酸が多く含まれていたこと、その脂肪酸の70%は10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10−HDA)であったことに着目し、成分Xの候補として10−HDAを挙げた。結論から述べると、この推定は正しかった。即ち、本発明者等は、成分Xと10−HDAの異同を明らかにする目的で、市販の高純度試薬10−HDA(アズウェル社製)を前記したと同じ条件でC18逆相HPLCにかけたところ、10−HDAは43.8分の位置に溶出した。この溶出位置は、成分Xのそれと一致した。又、10−HDAは215nmに吸収極大を有し、成分Xのそれと一致した。更に、成分Xと10−HDAとを薄層シリカゲルクロマトグニフィー(5×15cm)にかけてそれらの移動度を比較検討したところ、両者は完全に一致した。また、成分Xと10−HDAとの異同を調べるために、それらのコラーゲン産生増強作用について、コラーゲン・アッセイ法により調べたところ、10−HDAは、それ単独ではコラーゲン産生誘導作用を有さず、L−アスコルビン酸存在下、L−アスコルビン酸によるコラーゲン産生を増強する作用を示した。この結果は、成分Xの結果と一致した。
【0040】
更に、質量分析法(MS)により、成分Xと10−HDAのマススペクトルを測定し比較検討したところ、両者の分子イオンピーク(m/z)は185[M−H]で完全に一致した。
【0041】
以上の結果から、生ローヤルゼリーから精製し単離した成分Xは、10−HDAであると同定した。
【0042】
<コラーゲン・アッセイ法>
ヒト線維芽細胞であるNHDF細胞(倉敷紡績株式会社販売)を細胞濃度2.5×10個/穴となるように10%(v/v)ウシ胎児血清と適量のペニシリンを添加したダルベッコ変法イーグル培地(株式会社日水販売、以下、『DMEM培地』と既述する。)(pH7.1〜7.4)を含む96穴マイクロプレート(ベクトン・ディッキンソン社販売)に播種し、5%(v/v)CO条件下、37℃で24時間培養する。その後、培養上清を所定濃度のサンプル及び/又は50μMのL−アスコルビン酸2−グルコシド(商品名『AA2G』、純度98.0%以上、株式会社林原生物化学研究所製)とを添加したDMEM培地200μlで交換して5日間培養する。その後、前記マイクロプレートにおける各穴当たりの細胞によるコラーゲン産生量をサーコル・コラーゲン・アッセイ・キット(バイオカラー社製)にて定量する。
【0043】
実験2
<10−HDAによるコラーゲン産生増強作用>
実験1中に示すコラーゲン・アッセイ法により、10−HDAによるコラーゲン産生増強作用について調べた。即ち、コラーゲン・アッセイ法において、サンプルとして、10−HDAを150μg/ml及び/又は実験1で用いたと同じAA2G50μMを含むDMEM培地を用い、10−HDAによるコラーゲン産生増強作用を調べた。対照は、サンプル不含有のAA2G50μM含有又は不含有DMEM培地を用いる2つの系を設けた。その結果を図1に示す。
【0044】
図1から明らかなとおり、10−HDAは、AA2G非存在下ではコラーゲン産生増強作用を示さなかった。この結果は、10−HDA自体にコラーゲン産生増強作用はないと判断される。一方、10−HDAは、AA2G存在下で顕著なコラーゲン産生増強作用を示した。この結果から、10−HDAは、AA2Gと併用したときに、コラーゲン産生増強作用を発揮すると結論した。
【0045】
また、10−HDA濃度とコラーゲン産生増強作用との相関についても調べた。即ち、コラーゲン・アッセイ法において、サンプルとして、10−HDAを0乃至300μg/ml及びAA2G50μMを含むDMEM培地を用い、10−HDAによるコラーゲン産生増強作用を調べた。対照には、サンプル不含有のAA2G50μM含有DMEM培地を用いる系を設けた。その結果を図2に示す。
【0046】
図2から明らかなとおり、10−HDAは、AA2G存在下、濃度依存的なコラーゲン産生増強作用を示した。
【0047】
更に、脂肪酸類として、10−HDAに代えて10−ヒドロキシデカン酸(10Hデカン酸)、デカン酸、2−デセン酸、及びセバシン酸を用いた以外は前記同様にして、それらのコラーゲン産生増強作用を調べた。即ち、サンプルとして前記脂肪酸類のいずれかを0.02、0.06、0.17、0.5又は1.5mM含む、AA2G50μM含有DMEM培地を用いて、それらのコラーゲン産生増強作用を調べた。その結果を図3に示す。
【0048】
図3から明らかなとおり、試験した脂肪酸類のいずれも、L−アスコルビン酸と併用したとき、顕著なコラーゲン産生増強作用を発揮した。また、試験した脂肪酸類の内、10−HDAのコラーゲン産生増強作用は著しく高く、殊に、0.17mM以上の濃度でその作用は最大であった。又、コラーゲン産生増強作用は、10−HDAに次いで、10−ヒドロキシデカン酸、2−デセン酸、デカン酸、セバシン酸の順であって、それらの作用は略濃度依存的であることも判明した。
【0049】
実験3
<L−アスコルビン酸又はAA2G存在下でのコラーゲン産生増強作用に及ぼす10−HDAの影響>
L−アスコルビン酸又はAA2Gによるコラーゲン産生増強作用に及ぼす10−HDAの影響を調べることを目的として、下記の実験を行った。即ち、実験1中に示すコラーゲン・アッセイ法において、サンプルとして10−HDAを0、0.1、0.2又は0.5mg/ml含み、L−アスコルビン酸類として、L−アスコルビン酸又はAA2GをL−アスコルビン酸換算で50μM含有するDMEM培地、及びサンプルとして10−HDAを0、0.1、0.2又は0.5mg/ml含み、L−アスコルビン酸類不含有のDMEM培地を用いて、培養細胞におけるコラーゲン産生量を比較検討した。その結果を図4に示す。
【0050】
図4の結果から明らかなとおり、L−アスコルビン酸又はAA2G存在下、10−HDAは濃度依存的にコラーゲン産生増強作用を示した。また、10−HDAによるコラーゲン産生増強作用は、L−アスコルビン酸類として、AA2Gを用いた場合、L−アスコルビン酸を用いた場合と較べ約2倍高く、10−HDAとAA2Gとの併用が有用であることが判明した。
【0051】
尚、具体的なデータは示さないが、L−アスコルビン酸類として、L−アスコルビン酸の塩類、エステル類、エーテル類などのL−アスコルビン酸誘導体と較べ、L−アスコルビン酸の糖誘導体は、10−HDAを始めとする他の脂肪酸類と併用した場合、より高いコラーゲン産生増強作用を発揮する傾向にある。また、L−アスコルビン酸の糖誘導体の内、AA2Gは脂肪酸類と併用したとき、より顕著なコラーゲン産生増強作用を発揮する。
【0052】
実験4
<脂肪酸類がヒト線維芽細胞におけるTGF−β産生に与える影響>
ウシ胎児血清を10%(v/v)補足したDMEM培地を用いて、ヒト線維芽細胞であるNHDF細胞(倉敷紡績株式会社販売)を、複数の96穴マイクロプレート(ベクトン・ディッキンソン社販売)に細胞濃度2.5×10個/穴で播種し、5%(v/v)COインキュベータ中にて24時間培養した。その後、培養上清を除去した後、10−HDAを0、0.5、又は1.5mM、及びAA2Gを0.2μg/ml含む新鮮なDMEM培地をそれぞれ異なるマイクロプレートに添加して24時間培養した。その後、各マイクロプレートの各穴における培養上清中のTGF−β量を『TGF−β1 Eマックス イムノアッセイ・システム』(プロメガ社販売)により定量し統計処理した。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表1の結果から、10−HDAは、AA2G存在下、濃度依存的にヒト線維芽細胞におけるTGF−β産生を増強することが判明した。
【0055】
また、具体的なデータは示さないが、10−HDA以外の10−ヒドロキシデカン酸、デカン酸、2−デセン酸、及びセバシン酸などの脂肪酸類も10−HDA同様、TGF−β産生を増強する。
【0056】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。
【0057】
実施例1
<コラーゲン産生増強剤>
以下に示す各成分を所定の配合割合で均一に混合し、常法により打錠して、一錠当たり300mgの本発明のコラーゲン産生増強剤を調製した。本品は、ヒトを含む動物のコラーゲン産生増強剤として好適に用いることができる。また、本品は、TGF−β産生増強剤としての機能をも有している。
【0058】
<成分>
L−アスコルビン酸2−グルコシド 20質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
10−HDA 0.1質量部
プルラン 5質量部
精製水 5質量部
【0059】
実施例2
<コラーゲン産生増強剤>
以下に示す各成分を所定の配合割合で均一に混合し、プラスチック製プレート上に流延し、45℃で一夜乾燥して、一辺2cmの正方形に裁断し、厚さ0.5mmのフィルム状コラーゲン産生増強剤を得た。本品は、経口摂取するか、又は、予め水や化粧水などを塗布した皮膚部位に載置して用いる手法により日常的に用いることにより、皮膚のコラーゲン産生を効果的に増強し、小ジワを予防し、改善し、肌にはりと潤いを付与することができる。
【0060】
<成分>
L−アスコルビン酸2−グルコシド 1質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
10−HDA 0.01質量部
無水結晶マルトース 1質量部
(商品名『ファイントース』(登録商標)、株式会社林原商事販売)
スクラロース 0.01質量部
プルラン 10質量部
精製水 20質量部
【0061】
実施例3
<コラーゲン産生増強剤>
以下に示す各成分を所定の配合割合で均一に混合し、膜濾過して、200ml容ピストン式噴霧容器に充填して、本発明のコラーゲン産生増強剤を得た。本品は、その適量をヒト又は動物の皮膚に噴霧して使用することにより、ヒトを含む動物の皮膚に於けるコラーゲン産生を増強させ、発毛・育毛、毛並みの改善に著効を発揮する。また、本品は、TGF−β産生増強剤としての機能をも有している。
【0062】
<成分>
L−アスコルビン酸2−グルコシド 20質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
10−HDA 10質量部
精製水 100質量部
防腐剤 1質量部
【0063】
実施例4
<健康食品>
以下に示す各成分を所定の配合割合で均一に混合し、常法により常温で一晩減圧乾燥した後、粉砕機にて破砕して、本発明の粉末状コラーゲン産生増強剤として機能する健康食品を得た。本品は、ヒトを含む動物のコラーゲン産生増強剤として好適に用いることができる。また、本品は、TGF−β産生増強剤としての機能をも有している。
【0064】
<成分>
L−アスコルビン酸2−グルコシド 1質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
実験1で精製して得た成分X(10−HDA) 0.05質量部
2含水結晶トレハロース 2質量部
(商品名『トレハ』(登録商標)、株式会社林原商事販売)
【0065】
本品は、まろやかな甘味と適度な酸味を有し、長期保存安定性に優れたコラーゲン産生増強作用を有する健康食品として有用である。本品はそのまま、または、適量の水などの溶媒と共に、またはこれらの溶媒に溶解乃至分散させることにより容易に摂取することができることから、ヒトのみならず、愛玩動物や家畜などの動物のための経口摂取又は経管投与用組成物として、更には、魚、ウナギ、エビ、カニなどの養殖魚介類にも直接或いは餌料に混合するなどして用いることができる。
【0066】
実施例5
<健康食品>
以下に示す各成分を所定の配合割合で均一に混合した後、減圧乾燥して、水分含量5%の経口投与用粉末コラーゲン産生増強剤として機能する健康食品を得た。本品は、ヒトのみならず、家畜・家禽、ペット(昆虫も含む)、観賞魚用のコラーゲン産生増強剤として有利に用いることができる。また、本品は、TGF−β産生増強剤としての機能をも有している。
【0067】
<成分>
L−アスコルビン酸ナトリウム 1.5質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド 1.0質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
10−HDA 0.25質量部
糖転移ルチン 1.0質量部
(商品名『αGルチン』、株式会社林原商事販売)
無水結晶マルチトール 1.5質量部
トレハロース 0.2質量部
精製水 10.0質量部
【0068】
実施例6
<アイスクリーム>
生クリーム(油脂含量約46質量%)15質量部、脱脂粉乳3質量部、全乳45質量部、トレハロース10質量部、プルラン1質量部の混合物を加熱溶解し、65℃で30分間保持して殺菌した後、ホモゲナイザーで乳化分散させ、次いで、4℃まで急冷し、これに、実施例1で得たコラーゲン産生増強剤0.5質量部を加え、混合した後、100gずつ適宜容器に充填し、−20℃で凍結させてアイスクリームを得た。
【0069】
本品は、コラーゲン産生増強作用を有する、適度な甘味と上品な風味を有するアイスクリームであり、これを日常的に摂取することにより、皮膚に潤いを付与し、皮膚の老化を防止することができる。
【0070】
実施例7
<フルーツゼリー>
以下に示す成分の内、スクロース、トレハロース、ゼラチン及び水を適宜容器に入れ、95℃にて加熱溶解した後、ミカン果汁を加えて混合し、80℃で30分加熱殺菌し、更に、L−アスコルビン酸2−グルコシド(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)と、加熱処理ローヤルゼリーとを加えて冷却してフルーツゼリーを調製した。
【0071】
<成分>
スクロース 10.0質量部
含水結晶トレハロース 2.0質量部
ゼラチン 2.5質量部
ミカン果汁(L−アスコルビン酸含量3%) 32.0質量部
精製水 45.0質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド 1.0質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
10−ヒドロキシデカン酸 0.01質量部
10−HDA 0.01質量部
【0072】
本品は、コラーゲン産生増強作用を有する、適度な甘味となめらかなテクスチャーを有する、肌を健康な状態に維持し、肌の老化を防止し、美容と健康を維持・増進することのできるフルーツゼリーである。
【0073】
実施例8
<健康飲料>
以下に示す成分を所定の割合で適宜容器中にて均質に混合し、得られる混合物25質量部を精製水150質量部に均一に分散・溶解させ、200gずつ褐色ガラス瓶に入れ、65℃で30分間加熱殺菌して健康飲料を得た。
【0074】
<成分>
無水結晶マルトース 500質量部
L−アスコルビン酸2−グルコシド 30質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
L−アスコルビン酸ナトリウム 6質量部
10−HDA 2質量部
10−ヒドロキシデセン酸 1質量部
粉末卵黄 190質量部
脱脂粉乳 200質量部
塩化ナトリウム 4.4質量部
塩化カリウム 1.85質量部
硫酸マグネシウム 4質量部
チアミン 0.01質量部
ビタミンEアセテート 0.6質量部
ニコチン酸アミド 0.04質量部
糖転移ヘスペリジン 0.02質量部
(『αGヘスペリジンPS』、東洋精糖株式会社販売)
【0075】
本品は、コラーゲン産生増強作用を有する、美容・健康のための飲料として、また、経管投与用組成物としても有利に用いることができる。
【0076】
実施例9
<皮膚外用クリーム>
所定の配合量からなる下記に示す成分1に成分2を添加し、60℃で加熱攪拌しつつ混合し、室温まで冷却した後、所定の配合量からなる成分3を加えた後、水酸化カリウムでpH6.5に調製した後、ホモゲナイザーにて乳化・分散させてコラーゲン産生増強作用を有する皮膚外用クリームを製造した。
【0077】
<成分1>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2.0質量部
自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 5.0質量部
ベヘニン酸エイコサニル 1.0質量部
流動パラフィン 1.9質量部
トリオクタン酸トリメチロールプロパン 10.0質量部
【0078】
<成分2>
1,3−ブチレングリコール 5.0質量部
乳酸ナトリウム液 10.0質量部
高麗人参エキス 1.5質量部
パラオキシ安息香酸メチル 0.1質量部
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部
コンドロイチン硫酸 0.1質量部
甘草エキス 0.5質量部
精製水 62.4質量部
【0079】
<成分3>
L−アスコルビン酸2−グルコシド 2質量部
(商品名『AA2G』、株式会社林原生物化学研究所販売)
10−HDA 0.01質量部
セバシン酸 0.01質量部
【0080】
本品は、線維芽細胞によるTGF−β産生誘導を介して、皮膚におけるコラーゲン産生を増強し、皮膚のみずみずしさを保ち、肌にはりと潤いを付与し、肌のたるあすこるびん止効果、肌への保湿作用効果にも優れていることから、基礎化粧品としても有用である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のコラーゲン産生増強剤は、ヒトを含む動物に経口的又は非経口的に適用したとき、それら生体の皮膚におけるコラーゲン産生を確実かつ安定に増強する。即ち、本発明のコラーゲン産生増強剤をヒトを含む動物に適用することにより、皮膚の老化防止、体毛・羽毛の成長促進・維持、美容と健康の維持・増進に有用であるとの優れた作用効果が発揮される。
【0082】
本発明のコラーゲン産生増強剤は、有効成分としてのL−アスコルビン酸類及び脂肪酸類のいずれも、食品、化粧品又は医薬品などに副作用なく安全に配合可能な成分である。また、本発明のコラーゲン産生増強剤にあっては、これらの有効成分の所望量を正確に配合できることから、工業的に製造する場合、その品質管理が極めて容易である。また、本発明のコラーゲン産生増強剤は、高価なローヤルゼリー類を配合するものではないことから、従来のL−アスコルビン酸類とローヤルゼリー類からなるコラーゲン産生増強剤と較べ、安価に製造できる利点をも有している。
【0083】
したがって、本発明のコラーゲン産生増強剤は、自体、コラーゲン産生増強剤として利用できると共に、食品、健康食品、特別用途食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、及び飼料・餌料・ペットフード用の材料から選ばれる1種又は2種以上の材料と配合して、各種食品、健康食品、特別用途食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、及び飼料・餌料・ペットフードなどの各種形態の組成物にして利用することもできる。
【0084】
また、本願明細書に開示した生ローヤルゼリーから脂肪酸類を分離する方法によれば、本発明のコラーゲン産生増強剤において、有効成分として用いることのできる脂肪酸類を工業的に容易かつ安価に調製することができる。
【0085】
本発明は斯くも顕著な作用効果を奏する発明であって、斯界に貢献すること誠に多大な意義ある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−アスコルビン酸及び/又はその類縁体と脂肪酸類とを有効成分として含んでなるコラーゲン産生増強剤。
【請求項2】
全組成物質量当たり、L−アスコルビン酸及び/又はその類縁体を、L−アスコルビン酸質量換算で、0.01質量%以上含むことを特徴とする請求の範囲第1項記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項3】
L−アスコルビン酸及び/又はその類縁体1質量部(但し、L−アスコルビン酸質量換算による。)に対して、脂肪酸類を0.0001質量部以上含んでなる請求の範囲第1項又は第2項記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項4】
脂肪酸類が、ローヤルゼリー由来のものである請求の範囲第1項、第2項又は第3項記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項5】
脂肪酸類が、10−ヒドロキシ−2−デセン酸、10−ヒドロキシデカン酸、デカン酸、2−デセン酸、及びセバシン酸から選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項6】
飲食品、特別用途食品、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料、餌料、及びペットフード用の材料から選ばれる1種又は2種以上の他の成分を更に含んでなる、請求の範囲第1項乃至第5項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項7】
他の成分が、抗酸化剤、増粘剤、安定剤、賦形剤、増量剤、pH調整剤、増粘剤、酸味剤、エキス類、糖類、グリコサミノグリカン、糖アルコール類、アミノ酸類、L−アスコルビン酸及びその類縁体以外のビタミン類、水、アルコール、澱粉質、蛋白質、線維質、脂質、ミネラル、着香料、着色料、甘味料、調味料、香辛料、防腐剤、乳化剤、及び界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の成分である請求の範囲第6項記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項8】
L−アスコルビン酸の類縁体が、L−アスコルビン酸の塩類、L−アスコルビン酸2−グリコシド、及びL−アスコルビン酸2−グルコシドから選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第1項乃至第7項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項9】
L−アスコルビン酸2−グリコシドが、少なくとも、L−アスコルビン酸2−グルコシドを含有していることを特徴とする請求の範囲第8項記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項10】
グリコサミノグリカンが、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸、及びアルロン酸の塩類から選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第7項記載のコラーゲン産生増強剤。
【請求項11】
請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤を含んでなる飲食品、健康食品又は特別用途食品。
【請求項12】
請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤を含んでなる化粧品。
【請求項13】
請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤を含んでなる医薬品又は医薬部外品。
【請求項14】
請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤を含んでなる飼料、餌料又はペットフード。
【請求項15】
L−アスコルビン酸及び/又はその類縁体と脂肪酸類とを配合する工程を経由することを特徴とする、請求の範囲第1項乃至第10項のいずれかに記載のコラーゲン産生増強剤の製造方法。
【請求項16】
生ローヤルゼリーを溶媒に懸濁する工程、得られる懸濁液を遠心分離及び/又は濾過して上清画分と沈殿画分とに分ける工程、得られる沈殿画分をアルカリ剤により溶解する工程、得られる溶液を酸剤により中和する工程、及び中和して得られる溶液を膜分離して脂肪酸類を採取する工程を含んでなる、生ローヤルゼリーから脂肪酸類を分離する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/034938
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514562(P2005−514562)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014591
【国際出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】