説明

コンプレッサロータの製造方法

少なくともチタンIMI834を用いたときに、ロータに改良特性を提供する、ガスタービンコンプレッサロータ装置とその方法を提供する。機械的作用は、少なくとも改善された低サイクル疲労寿命をロータに提供する鍛造を通して最適化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービンエンジンに用いる改良ブレード一体型コンプレッサロータ、特にIMI834チタンの使用に適したコンプレッサロータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンコンプレッサのブレード一体型ロータ(IBRs)や一体型インペラのような、単体のコンプレッサロータは、鍛造、熱処理、そして機械加工により製造されうる。高低サイクル疲労(LFC)寿命のように、優れた機械的特性を提供するために、素材には鍛造過程において一定の機械的金属加工が必要である。コンプレッサはまた、軽量かつ高温下で優れた機械的特性を維持しなければならず、運転中の回転速度は毎分30,000回転を超える。
【0003】
いったん融解物がブランクに鍛造されて熱処理され、その後ロータブレードが鍛造品から機械加工される。一方、米国特許第6,095,402号に開示されているように、ブレード全体を機械加工する代わりに、ハブブレードスタブをブランクから機械加工させる軸流ロータ設計もあり、その後分離組立て式エアフォイルをスタブに摩擦溶接する。
【0004】
ロータはまたシャフトに取り付けられなければならない。図2aと図2bを参照すると、インペラ取り付けの通常の方法は、インペラIをフランジ付きシャフトSにボルトBで機械的に固定するもの(図2a)か、もしくはインペラIと一体化したスタブシャフトSSを提供し、このスタブシャフトSSがシャフトSにねじ込まれ連結するもの(図2b)である。図示されていないその他の選択肢は、キー付きシャフトおよび摩擦嵌めである。図2aの機械的留め具は好ましくない重量付加となるため、航空機搭載用ガスタービンへの応用には図2aよりも図2bのアプローチのほうが通常好まれ、一方キー付きシャフトは応力を集中させ、またすべての設計は設計者に力学的問題を呈する。図2bの一体型シャフトインペラは鍛造過程でスタブシャフトSSを押出し成形することにより提供される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で簡単に記述するように、鍛造工程においては、冶金学的構造をランダム化し、鍛造品から脆弱な部分を分断、除去し、それによりLFC寿命のような優れた機械的特性を提供するべく、多くの変形を要する。機械的金属加工後、熱処理が施される。断面積が「基準断面」として知られる限界値を超える場合、適切に熱処理し鍛造品の中心を鍛造することは不可能であり、合金のこの領域の機械的特性を減少させる。インペラ断面の幾分台形状の形状により、この鍛造および熱処理上の問題が、必然的にディスクタイプロータよりもはるかにインペラ製造上の懸案となっている。また、インペラに押出しシャフト部を含ませることがこの部分の断面積を著しく増加させ、鍛造上の問題を悪化させている。
【0006】
先行技術の鍛造工程、および鍛造+押出し成形工程は多くのチタンコンプレッサロータ設計にうまく対応するが、IMI834(概ねTi−5.8Al,4Sn,3.5Zr,0.7Nb)もしくはタイメタル834(タイタニウムメタルズコーポレーションの登録商標)として知られる、比較的新しいチタン合金が先行技術に適切に対処されずにコンプレッサロータ製造分野に新しい問題を提示している。IMI834は航空機エンジン部品における、耐高温クリープ性や、高い抗張力および疲労強度、相対的な低密度といった、大いに望ましい特性を有すると知られているが、IMI834はまた幾つかの固有材料特性をもち、これにより、加工、特にガスタービンの一体型コンプレッサロータの提供への対応には特異的に困難な材料となっている。例えば、先行技術の製造技術はガスタービンインペラに劣悪なLCF寿命をもたらす。
【0007】
したがって、コンプレッサロータ、特にIMI834から改善されたLCF寿命を提供する、インペラの製造に関する問題を提示する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のねらいの一つは、高圧ガスタービンコンプレッサロータとしての用途に最適なIMI834インペラに、改良した特性と性能を提供することである。
【0009】
本発明の一実施例では、ガスタービンコンプレッサインペラを提供する方法を提供し、この方法が、背面を有するブランクを提供するようにIMI834チタンを鍛造するステップと、背面から延びる付け根部をブランクに鍛造するステップと、合金スタブシャフトを提供するステップと、スタブシャフトを付け根部に摩擦溶接して溶接アセンブリを提供するステップと、を備えてなる。
【0010】
別の一実施例では、本発明がガスタービンエンジンのインペラロータの製造方法を提供し、この方法が、IMI834合金からブランクを鍛造するステップと、合金部品を提供するステップと、部品をブランクに摩擦溶接し、溶接アセンブリを提供するステップと、少なくとも溶接部を緩和するように溶接アセンブリを熱処理するステップと、その後溶接部から溶接ばりを除去するステップと、を備えてなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は亜音速飛行での使用に提供されることが望ましいタイプのガスタービンエンジン10を示し、このガスタービンエンジン10は概ね、流体が順次流れるように、外気を推進させるファン12と、空気を圧縮する多段式圧縮機14と、圧縮空気を燃料と混合し、点火して高温燃焼ガスの環状の流れを発生する燃焼器16と、燃焼ガスからエネルギーを抽出するタービン18と、を備えてなる。図3を参照すると、先行技術のコンプレッサ14は、中心軸24の回りに回転するように適合されたインペラロータ20を備える。インペラ20は複数の放射状に延びるブレード26と、エンジンの高圧スプールに連結するようにねじ込まれた(図示せず)スタブシャフト28を備える。インペラ20は、押出しシャフト部28を含むブランクを鍛造し、その後熱処理し、さらにこの熱処理ブランクを、インペラとブレード26を提供するように機械加工することによりつくられる。
【0012】
押出し成形スタブシャフト28における工程は、6%Al 4%Vのチタン合金、6%Al 2%Sn 4%Zr 2%Moのチタン合金、もしくは6%Al 2%Sn 4%Zr 6%Moのチタン合金のような、先行技術のチタン合金に概ね非常に満足のいく特性を提供する。しかしながら、上記で述べるように、非常に多くの望ましい機械的特性にもかかわらず、IMI834には、同様の押出し成形鍛造では脆弱領域が生じやすく、運転中、誘導内部応力に耐久できないという固有の特性が見つかっている。したがって、IMI834が先行技術の鍛造や、鍛造+押出し成形工程を通して達成する機械的特性は必要基準を満たさないため、IMI834は適当なインペラ20を作るために用いることはできない。したがって、インペラを提供するためにIMI834を用いる場合には、インペラ製造方法の改善が必要である。
【0013】
本発明により、IMI834のガスタービンエンジン用のインペラを確実かつ簡単に提供しうる新規の構成および方法を提供する。
【0014】
図4を参照すると、発明者により、先行技術に関する困難を克服するインペラの新規の構成が見出された。インペラアセンブリ22は、ブレード26と、付け根部30と、スタブシャフト28と、を有する。ブレード26と付け根部30を含むインペラアセンブリ22は、互いに一体化して、タイタニウムメタルズコーポレーションのタイメタル834合金(Ti−5.8Al−4Sn−3.5Zr−0.7Nb−0.5Mo−0.35Si−0.06C)のようなIMI834でつくられ、一方、スタブシャフト28は後にアセンブリ22と一体化するように別個に提供され、望ましくはIMI鍛造の一本の棒鋼として提供されるが、必要に応じてその他の適当な合金が用いられうる。
付け根部30およびスタブシャフト28は各々、接合面32,34を有する。端面32,34は同様の形状および表面積を有することが望ましい。
【0015】
インペラ22は概ね十分に熱処理された鍛造品の形で提供され、一方、付け根部30は鍛造品の一部として一体化して提供される。本発明の一実施例では、付け根部30の大きさは、自身とインペラ22の隣接部とに優れた機械的特性を提供するべく十分な加工量を達成するような大きさとなっている。以下で詳細を述べるように、付け根部30の押出しは望ましくは最小化されるか、さらに望ましくは完全に除去され、これにより受け入れがたい内部脆弱領域の発生を防ぐ。
【0016】
押出しは、例えば付け根部の直径に関して選択された直径を有するビレットから鍛造することにより最小化されることが望ましく、このビレット直径は付け根部の押出しを最小化する、もしくは防止するように選択される。概ねビレットが実質的に付け根部と同じ直径を有することが本目的を達成する一手段である。別のアプローチでは、付け根部の寸法、特に直径と高さが付け根部を形成する押出し部の存在を最小化する、さらに望ましくはなくすように選択される。概ね付け根部の直径と同じ、もしくは望ましくは直径よりも短い高さを持つ付け根部を提供することが本目的を達成する一手段である。付け根部の高さは、その周囲面と溶接部との間の溶接ばりを簡単に除去できるようにするために周囲面から十分な間隔を提供するように選ばれることが望ましい。好ましい実施例では、付け根部の高さは溶接ばりを除去する最小限の間隔を提供するために必要な高さを超えない。
【0017】
スタブシャフト28は十分に熱処理された棒鍛造の形で提供されることが望ましいが、その他のあらゆる製造方法が用いられうる。
【0018】
図5を参照すると、インペラ22とスタブシャフト28がイナーシャ溶接もしくはイナーシャ接合としても知られる、摩擦溶接により一体接合されている。電子ビーム溶接もしくはレーザ溶接のような他のタイプの溶接は好ましくなく、回避されることが望ましい。摩擦溶接のステップは本開示の新規の手段により提供されることが望ましい。
【0019】
先行技術の摩擦溶接は部品を一体化するように接合面を摩擦溶接することを含み、その後溶接周囲の鋳ばりが除去され、摩擦溶接の工程で生じた応力を緩和し、妥当な場合、機械的特性を向上するべく析出反応をもたらすように接合箇所が熱処理される。しかしながら、IMI834の摩擦溶接にこの通常の処置を応用すると、溶接ばりの除去の際に溶接部近くでクラッキングが起こりうる。
【0020】
したがって、本発明の別の実施例に従い、少なくとも二つの部品を結び付けるように接合面を摩擦溶接するステップを備えるIMI834の摩擦溶接方法が提供される。この例では、接合面32と34が溶接接合36を提供するように摩擦溶接されている。これらの部品が適切に接合された後、この接合アセンブリは溶接部36の応力を緩和するように熱処理される。当業者にとって理解されるように、適用される熱処理は、温度および継続時間が部品の大きさや特性と相関する、一般的な熱処理である。熱処理ステップの後、溶接ばりが適切な機械加工により除去され、最終的な機械加工と仕上げに送られる。溶接ばりの除去前に熱処理を施すことは溶接ばり除去の際のクラッキングを減少させるのに有益であることが発明者により見出されている。
【0021】
他のチタン合金とは異なり、IMI834は押し出し成形されるべきではなく、これは材料の冶金学上の構造に悪影響を及ぼす可能性があるためであり、運転中に作り出される応力に対し不利に方向づけられた脆弱領域を生み出すことが分かっている。また押出し成形シャフトの存在により、鍛造工程の途中、鍛造の中心における変形量の最大化が困難となっている。更に、本アプローチは鍛造における加工量が不十分なことによりもたらされる問題を回避する。したがって、本解決策は先行技術のこれらの欠点を鍛造過程の加工量を最適化し、望ましくは押出し部が現れないことを保証することにより回避する。
【0022】
本発明の上記の実施例の修正および改良が当業者にとって考案されうる。例えば、本発明は遠心式高圧インペラを適用する必要はなく、いわゆる「ブリスク」を含む、あらゆる一体型ブレード付きロータを適用しうる。スタブシャフトはあらゆる適切な素材のあらゆる適切な様式により提供されうる。IMI834について述べたが、本発明はIMI834と同様の特性を示す他の素材についても応用しうる。付け根部の幅について言及するために「直径」という言葉を用いたが、付け根部は必ずしも円形断面を持つように鍛造される必要はないということを理解されたい。当業者により他の修正が上記の教義を踏まえて考案されうる。したがって、前記の記述は限定的ではなく実例を意図するものである。
したがって、本発明の範囲は唯一付記の特許請求の範囲内に含まれることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ガスタービンエンジンの断面図。
【図2a】先行技術のコンプレッサロータを示す斜視図。
【図2b】先行技術のコンプレッサロータを示す斜視図。
【図3】先行技術のインペラの縦断面図。
【図4】本発明の一実施例におけるブレード一体型遠心式コンプレッサロータの縦断面図。
【図5】本発明の一実施例におけるブレード一体型遠心式コンプレッサロータの縦断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.IMI834チタンを鍛造して背面を有するブランクを提供するステップと、
b.前記ブランクに前記背面から延びる付け根部を鍛造するステップと、
c.合金スタブシャフトを提供するステップと、
d.前記スタブシャフトを前記付け根部に摩擦溶接し溶接アセンブリを提供するステップと、
を備えてなるガスタービンコンプレッサインペラの製造方法。
【請求項2】
前記鍛造ステップに用いるビレットを提供するステップをさらに備えるとともに、前記ビレットが実質的に前記付け根部の直径と同様の直径を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記付け根部が背面から付け根部端面まで計測される高さを有し、この高さが付け根部の押出し成形部分を最小化しつつ本体部分における機械的作用を最適化するように選ばれ、これにより前記本体に改善された機械的特性を提供することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記付け根部が直径と高さを有するとともに、この高さが前記背面から付け根部端面まで計測され、かつ前記直径以下であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記付け根部が、前記背面から付け根部端面まで計測される付け根部高さを有するとともに、前記製造方法は、前記付け根部高さと前記背面との間に、溶接ばりを除去するステップの実行に適切な間隔を提供するために必要な、間隔幅を決定するステップをさらに備え、前記付け根部が、実質的に前記間隔幅と等しい付け根部高さを有するように鍛造されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記溶接アセンブリを熱処理するステップと、その後この溶接部分をばり取りするステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記合金がIMI834であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
a.IMI834チタン合金からブランクを鍛造するステップと、
b.合金部品を提供するステップと、
c.前記部品を前記ブランクに摩擦溶接して溶接アセンブリを提供するステップと、
d.前記溶接アセンブリを少なくとも溶接部分を緩和するように熱処理するステップと、
e.前記溶接部分から溶接ばりを除去するステップと、
を備えてなるガスタービンエンジンのインペラロータ製造方法。
【請求項9】
前記鍛造ステップが、前記付け根部を前記ブランクに鍛造するステップを有するとともに、前記部品が前記付け根部に摩擦溶接されることを特徴とする請求項8に記載のインペラロータ製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−513780(P2007−513780A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544181(P2006−544181)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001013
【国際公開番号】WO2005/056982
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(592228505)プラット アンド ホイットニー カナダ コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】Pratt & Whitney Canada Corp.
【Fターム(参考)】