説明

ゴム剥げ検出方法及びその装置

【課題】 ワイヤ1本レベルのゴム剥げであっても精度よく検出することのできる方法とゴム剥げ検出装置を提供する。
【解決手段】 搬送されるインシュレーション部材1の斜め方向から、投光器と受光器とが一体となったレーザセンサ11A,11Bの投光器により、上記インシュレーション部材1にレーザ光11a,11bを照射するとともに、エアシリンダ14により上記レーザセンサ11A,11Bを支持する支持台12を上記インシュレーション部材1の幅方向に移動させながら、上記インシュレーション部材1からの反射光11c,11dを上記レーザセンサ11A,11Bの受光器で検出し、この検出された反射光11c,11dから上記インシュレーション部材1のゴム剥げを検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本のワイヤをゴムで被覆して成るインシュレーション部材のゴム剥げを検出する方法とそのに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤに使用される、スチールコードなどのワイヤの両面に薄いゴム層を被覆して成るインシュレーション部材は、例えば、図3に示すような、カレンダー装置20を用いて製造される。具体的には、シート処理したワイヤ2を、カレンダーロール21間を通過させるとともに、上記カレンダーロール21に図示しないゴム材料を供給することにより、上記ワイヤ2の両面にゴム3がコーティングされた帯状のインシュレーション部材1を得ることができる。なお、この方法では、カレンダーロール21の圧延荷重により、ワイヤ2へのゴム3の被覆と、ゴム3との接着とを同時に行うことができる。
上記インシュレーション部材1は、その後、ゴム剥げ(ワイヤ露出)検査を経て、切断工程等の後工程に送られ、プライ、ベルトなどに加工される。
【0003】
図4は、ゴム剥げ検出方法の一例を示す図で、インシュレーション部材1のワイヤ2の軸と垂直をなす上方に投光器と受光器とが一体となったレーザセンサ50(例えば、特許文献1参照)を設置して上記インシュレーション部材1表面にレーザー光51を照射し、上記インシュレーション部材1表面で反射された反射光52を受光してその強度を測定する。インシュレーション部材1にゴム剥げ部(ワイヤ2の露出部分)Xがあった場合には、上記反射光の強度はゴム3のみで反射された場合に比較して大きくなるので、上記反射光の反射光量差からインシュレーション部材1のゴム剥げを検出することができる。
【特許文献1】特開平10−58543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、レーザセンサ50がワイヤ2の軸と垂直をなす上方に設置されているため、ゴム剥げ部Xに照射されるレーザ光の照射面積が少ない。そのため、レーザ光51がゴム剥げ部Xで反射されてもゴム3のみの場合の反射光52との光量差が小さいことから、10mm幅以上の大きなゴム剥げでないと検出することができないといった問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、ワイヤ1本レベルのゴム剥げであっても精度よく検出することのできる方法とゴム剥げ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、インシュレーション部材のゴム剥げは、スポット的にできるのではなく、図4に模式的に示すように、流れの方向であるワイヤの延長方向に連続的に生じることに注目し、レーザ光をワイヤの延長方向に対して斜め方向から照射することにより、露出したワイヤからの反射光量が大きくなることを見出し、本発明に到ったものである。
すなわち、本発明の請求項1に記載の発明は、複数本のワイヤをゴムで被覆して成るインシュレーション部材の表面にレーザ光を照射し、その反射光量から上記インシュレーション部材のゴム剥げを検出する方法であって、上記レーザ光を、搬送されるインシュレーション部材表面に対して斜め方向から照射するようにしたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のゴム剥げ検出方法において、上記レーザ光を、上記インシュレーション部材の幅方向に走査するようにしたものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のゴム剥げ検出方法において、上記レーザ光を、搬送されるインシュレーション部材の斜め上方と斜め下方とから照射するようにしたものである。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、複数本のワイヤをゴムで被覆して成るインシュレーション部材のゴム剥げを検出する装置であって、上記インシュレーション部材の表面に斜め方向からレーザ光を照射するレーザ照射手段と、上記照射されたレーザ光の反射光を検出する反射光検出手段と、上記検出されたレーザ光の反射光量から上記インシュレーション部材のゴム剥げを検出する手段と、上記レーザセンサを上記インシュレーション部材の幅方向に移動させる手段とを備え、インシュレーション部材を搬送しながら、上記インシュレーション部材のゴム剥げを検出するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インシュレーション部材の表面にレーザ光を照射し、その反射光量から上記インシュレーション部材のゴム剥げを検出する際に、上記レーザ光を搬送されるインシュレーション部材表面に対して斜め方向からレーザ光を照射するようにしたので、レーザ反射光量を大きくでき、ゴム剥げ(ワイヤ露出)を精度良く検出することができる。
また、レーザ光をインシュレーション部材の幅方向に走査するようにしたので、例えば、40mm幅のインシュレーション部材のような幅広の部材であっても、ゴム剥げを精度良く検出することができる。
更に、上記レーザ光を、インシュレーション部材の斜め上方と斜め下方とから照射して表裏を同時に測定できるようにしたので、検出効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係るゴム剥げ検出装置10の概略構成を示す図で、本例では、図示しない搬送手段により紙面と垂直方向に搬送される、ワイヤ2の両面にゴム層3を被覆して成る幅が約40mmのインシュレーション部材1のゴム剥げを検出する。
同図において、11A,11Bは断面がコの字型の支持体12の水平片12a,12bにそれぞれ取付けられ、上記インシュレーション部材1の表面に斜め上方及び下方からレーザ光11a,11bを照射する投光器と上記照射されたレーザ光(入射光)11a,11bの反射光11c,11dを検出する受光器とが一体となったレーザセンサ、13は上記レーザセンサ11A,11Bの各受光器で検出された上記反射光11c,11dの反射光量から上記インシュレーション部材1のゴム剥げを検出するゴム剥げ検出手段、14は架台15上に設置され、上記レーザセンサ11A,11Bを上記インシュレーション部材1の幅方向に移動させるための移動手段であるエアシリンダで、このエアシリンダ14のシリンダロッド14jが上記支持体12の垂直片12cに連結されている。
なお、上記レーザセンサ11A,11Bの取付け角度θ(レーザ光11a,11bのインシュレーション部材10への入射角)としては、上記入射角θが30°よりも小さいと反射光量が十分でなく、また、上記入射角θが60°を超えると、反射光の検出が困難となるので、θ=30°〜60°とすることが好ましく、θ=45°とすれば特に好ましい。
【0011】
次に、ゴム剥げの検出方法について説明する。
まず、搬送されるインシュレーション部材1の側部に架台15を設置し、支持体12に取付けられたレーザセンサ11A,11Bのほぼ中間部をインシュレーション部材1が通過するように、上記架台15上にエアシリンダ14を設置する。そして、インシュレーション部材1を搬送させながら、上記エアシリンダ14を駆動して、上記支持台12を上記インシュレーション部材1の幅方向に往復運動させる。これにより、図2(a)に示すように、上記レーザセンサ11a(または、レーザセンサ11b)の投光器からレーザ光11a(または、レーザ光11b)を、インシュレーション部材1の搬送速度とシリンダロッド14jの移動速度とによって決まる角度で、上記インシュレーション部材1上を幅方向に往復させながら走査することができる。
上記インシュレーション部材1の表面で反射されたレーザ光(反射光11c,11d)は、それぞれ上記レーザセンサ11A,11Bの各受光器で検出され、ゴム剥げ検出手段13において、ゴム2からの反射光量に相当する所定の閾値と比較される。上記ゴム剥げ検出手段13は、上記反射光量が上記閾値を超えた場合にはゴム剥げがあると判定する。
本例では、上記レーザ光11a(または、レーザ光11b)は、図2(b)に示すように、上記インシュレーション部材1の表面に対して斜め方向から照射されるので、レーザ光11a(レーザ光11b)が照射されるゴム剥げ部Xの長さ長くなる。したがって、上記ゴム剥げ部Xからの反射光11c(または、反射光11d)の光量を大きくでき、ワイヤ1本レベルの幅の狭いゴム剥げ(ワイヤ露出)であってもこれを精度良く検出することができる。
また、図2(a)に示すように、ゴム剥げ部Xは上記インシュレーション部材1の搬送方向に連続しているので、レーザ光11a(レーザ光11b)をインシュレーション部材1の幅方向に往復させても、ゴム剥げ部Xを確実に検出することができる。
【0012】
このように、本最良の形態によれば、搬送されるインシュレーション部材1の斜め方向から、投光器と受光器とが一体となったレーザセンサ11A,11Bの投光器により、上記インシュレーション部材1にレーザ光11a,11bを照射するとともに、エアシリンダ14により上記レーザセンサ11A,11Bを支持する支持台12を上記インシュレーション部材1の幅方向に移動させながら、上記インシュレーション部材1からの反射光11c,11dを上記レーザセンサ11A,11Bの受光器で検出し、この検出された反射光11c,11dから上記インシュレーション部材1のゴム剥げを検出するようにしたので、露出されたワイヤ11に照射されるレーザ光11a,11bの照射面積が増加してゴム剥げ部Xからの反射光量差を大きくすることができる。したがって、ゴム剥げの検出精度を大幅に向上させることができる。
また、レーザ光11a,11bをインシュレーション部材1の幅方向に往復させるようにしたので、幅広の部材であっても、ゴム剥げを確実に検出することができる。
【0013】
なお、上記最良の形態では、インシュレーション部材1の表面と裏面のゴム剥げを同時に検出したが、これに限るものではなく、インシュレーション部材1の搬送方法などによっては、片方ずつ行ってもよい。
また、上記例では、レーザセンサ11A,11Bを幅方向に連続的に往復させながら走査することにより、インシュレーション部材1の全表面を検査した例を示したが、上記レーザセンサ11A,11Bを幅方向に断続的に移動させたり、レーザセンサ11A,11Bを移動させず、代わりに、上記ゴム剥げ検出装置10を複数台設置したりすることにより、更に短いゴム剥げを検出することが可能となる。
【実施例】
【0014】
径が0.8mmのワイヤ20本をゴムで被覆した幅40mmのインシュレーション部材を搬送しながら、上記インシュレーション部材の上方及び下方から、レーザ光を照射して上記インシュレーション部材のワイヤ剥げを検出した。なお、レーザセンサの取付け角度は45°とし、シリンダーストロークを75mmとした。
その結果、ワイヤ1本レベルの幅の狭いゴム剥げを100%検出することができた。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明によれば、幅広なインシュレーション部材でも、ゴム剥げを精度良く検出することができるので、インシュレーション部材ゴム剥げ検査を精度よく、かつ、効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の最良の形態に係るゴム剥げ検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】本最良の形態に係るゴム剥げ検出方法を示す示す図である。
【図3】インシュレーション部材の作製方法の一例を示す図である。
【図4】従来のゴム剥げ検出方法を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 インシュレーション部材、2 ワイヤ、3 ゴム、
10 ゴム剥げ検出装置、11A,11B レーザセンサ、11a,11b レーザ光、11c,11d 反射光、12 支持体、13 ゴム剥げ検出手段、
14 エアシリンダ、15 架台、
X ゴム剥げ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のワイヤをゴムで被覆して成るインシュレーション部材の表面にレーザ光を照射し、その反射光量から上記インシュレーション部材のゴム剥げを検出する方法であって、上記レーザ光を、搬送されるインシュレーション部材表面に対して斜め方向から照射するようにしたことを特徴とするゴム剥げ検出方法。
【請求項2】
上記レーザ光を、上記インシュレーション部材の幅方向に走査するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のゴム剥げ検出方法。
【請求項3】
上記レーザ光を、搬送されるインシュレーション部材の斜め上方と斜め下方とから照射するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム剥げ検出方法。
【請求項4】
複数本のワイヤをゴムで被覆して成るインシュレーション部材の表面に斜め方向からレーザ光を照射するレーザ照射手段と、上記照射されたレーザ光の反射光を検出する反射光検出手段と、上記検出されたレーザ光の反射光量から上記インシュレーション部材のゴム剥げを検出する手段と、上記レーザセンサを上記インシュレーション部材の幅方向に移動させる手段とを備えたことを特徴とするゴム剥げ検出装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−329908(P2006−329908A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156690(P2005−156690)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】