説明

シリンダライナ検査装置およびシリンダライナ検査方法

【課題】ピストン往復動燃焼エンジンのシリンダのシリンダカバーを取り外すことなく、シリンダの内径および表面状態を検査するようにして、当該シリンダライナの検査の時間を短縮する。
【解決手段】燃焼機関のシリンダライナ25の摺動面35を検査する方法および検査装置が提供され、検査装置は、検査工具、制御装置、電力供給と測定データおよび制御信号の伝達のための接続手段60を有する。検査工具は、ベアリングレール70を有し、このベアリングレール70には、ロータリテーブル80、シリンダライナ25の内径と摺動面35とを測定するためと、表面状態を目視検査するための工具90,96とが装架される。検査工具は、被検査シリンダライナ25の開口を通してシリンダライナ25に導入しうるサイズとする。本発明は、特にピストン往復動燃焼機関のシリンダライナ25の検査に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の序文に記載の燃焼機関のシリンダライナの摺動面を検査する装置に関し、さらに、本発明は、独立請求項11の序文に記載のシリンダライナの摺動面を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用あるいは発電用の定置式大型ディーゼルエンジンなどのピストン往復動燃焼機関の摺動面は、定期的に検査する必要がある。この検査を効果的に行うためには、シリンダライナのシリンダカバーを外してシリンダライナに適した検査工具を導入しなればならない。大型ディーゼルエンジンからシリンダカバーを外すのに数時間を要するので、シリンダライナの検査はかなりの時間がかかる。特に、コンテナ船舶などのピストン往復動燃焼機関のシリンダライナの摺動面の検査では、機関しいては船舶の検査のための休止期間が長くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、燃焼機関の休止期間を短縮しうる、燃焼機関のシリンダライナの摺動面を検査するための検査装置を提供することである。
【0004】
本発明の他の目的は、本発明による検査装置を用いて、燃焼機関のシリンダライナの摺動面を検査する方法に関する。
【0005】
本発明の検査装置に係る目的は、独立請求項1の特徴を有する検査装置により達成される。本発明のシリンダライナの摺動面を検査方法の目的は、独立請求項11の特徴事項を有る方法により達成される。
本願の従属請求項は、本発明の特に優位な実施例に係るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査装置は、燃焼機関のシリンダライナの摺動面の検査を行うためのものであり、この検査装置は、被検査シリンダライナ内に導入しうる検査工具、通常機関から離して配置される制御装置ならびに電力を供給し、かつ測定データや制御信号を伝達する接続手段を有する。検査工具自体は、ベアリングレールを有し、このベアリングレールにロータリテーブルおよびシリンダライナの直径と表面を測定し、かつ表面状態を目視検査するための複数の工具が設けられる。本発明の工具の要旨は、そのサイズにあり、すなわち、工具を被検査シリンダライナの開口を通してシリンダライナ内に導入できるサイズとなっている。
【0007】
シリンダライナの開口は、所定横断面の通路あるいは貫通孔、シリンダライナの円筒壁の貫通ボアとなる。本発明の好適実施例では、シリンダライナの開口は、被検査シリンダライナの吸気口であり、大型2サイクルディーゼルエンジンの場合は、開口は、好ましくは、掃気口となる。
【0008】
接続手段は、検査工具装置の冷却材供給手段を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検査装置は、被検査シリンダライナを有するシリンダのシリンダカバーを外す必要なく、摺動面が検査可能である。従って、検査工具は、シリンダライナの検査が必要な場合に、特に優位に使用でき、シリンダカバーを持ち上げる又は外すための時間が省略できる。このため、多大な労力を回避でき、検査時間がかなり短縮できる。
【0010】
測定および目視検査工具は、いずれも市販されている。そこで、検査工具は、簡単に生産でき、ソフトウェアを利用して簡便に使用可能である。市販の測定工具や検査工具は、かなりの精度があり、ライナの内部の検査を非常に短時間で精度よく行うことができる。
【0011】
本発明による検査工具は、長手方向掃気式の大型2サイクルディーゼルエンジンであるピストン往復動燃焼機関のシリンダのライナの摺動面の検査に適するものであり、この場合に、検査工具は、掃気開口から導入できるサイズのものとなる。
【0012】
今まで、長手方向掃気の大型2サイクルディーゼルエンジンであるピストン往復動燃焼機関のシリンダのライナの検査には、シリンダのシリンダカバーを持ち上げる又は外す必要があった。本発明による検査装置を使用することにより、掃気レシーバを開放し、開始空気弁あるいは排気弁を除去することのみ必要となる。
【0013】
本発明による検査工具は、小さなシリンダライナすなわち小さなボアのエンジンの検査に使用できるサイズを有するようにしても良い。
【0014】
検査装置は、シリンダライナの直径や表面を測定するものであり、シリンダライナの摺動面の表面状態を検査する目視検査工具として、カメラ特に自己照明式カメラを使用することもできる。
【0015】
本発明による検査装置は、ピストン往復動燃焼機関のシリンダライナの検査に特に適するものである。検査装置の好適な使用例として、長手方向掃気式の大型2サイクルディーゼルエンジンであるピストン往復動燃焼機関の、ピストンが内部の摺動面に沿って往復動しうるように配置されたシリンダのライナの摺動面の検査がある。
【0016】
検査工具のベアリングレールは、その中心にロータリテーブルを有する。このロータリテーブルは、好ましくは、例えば、ソレノイドなどの接続素子上に装架されるようにし、また接続素子は、ピストンの上面に取り外し可能に固定されるようにする。ロータリテーブルは、ベアリングレールを制御可能に回転運動させるアクチュエータを有する。アクチュエータは、接続素子とロータリテーブルとの間に配置されており、しかしてロータリテーブルは、ベアリングレールに固定されている。ロータリテーブルは、アクチュエータによりシリンダライナの長手方向軸線の周りで回動可能である。アクチュエータは、ステップモータであれば好ましいが、エンコーダあるいは少なくとも一つの位置センサおよび適当なコントローラにより回転運動が制御される別の旋回モータとしても良い。ステップモータを使用する場合、アクチュエータの制御可能の運動は、ステップモータ用のトリガーパルスにより制御でき、さらに付加的にエンコーダあるいは少なくとも一つの位置センサ及び相当のコントローラを用いてステップモータを制御することができる。
【0017】
ロータリテーブルは、接続素子上に回動可能に装着され、燃焼機関の表面領域、特に、ピストン往復動燃焼機関のピストンの上面との取り外し可能の接続がなされる。ピストンの上面とは、被検査シリンダライナを有する、ピストン往復動燃焼機関のシリンダの燃焼室に面した表面のことである。接続素子は、好ましくは、ソレノイドを有する電磁石とする。
【0018】
シリンダライナの直径や表面を測定する工具は、レーザ変位測定工具であり、特に、三角測定法により測定を行うレーザ変位工具である。このようなレーザ変位測定工具は、デジタル信号プロセッサが必要となる。このデジタル信号プロセッサは、制御装置の一部でも、別の単独のもので良く、あるいは、信号プロセッサを、ベアリングレールに直接装着しても良いし、レーザ変位測定工具に一体の部分でも良い。
【0019】
レーザ変位測定工具は、シリンダライナの長手方向軸線に垂直なシリンダライナの内径を測定するように設計配置される。よって、レーザ変位測定工具のレーザは、主として検査工具の長手方向軸線に整合させるようにすることが好ましい。これにより、主として検査工具の長手方向軸線方向でレーザ光線が放たれかつその反射光線を受けることになる。検査工具の長手方向軸線は、ベアリングレールの長手保方向軸線と平行に延びる。
【0020】
検査工具は、ベアリングレールの両端部に装着した少なくとも二つのレーザ変位測定工具を有する。これらのレーザ変位測定工具は、シリンダライナの長手方向軸線に垂直なシリンダライナの内径を測定するように配置される。これにより、ベアリングレールすなわち二つのレーザ変位測定工具をそれぞれシリンダライナの長手方向軸線に関して正確に集約配置する必要がなくなる。なぜなら、シリンダライナの摺動面とベアリングレールの対応する一端との距離が測定工具の両端部で測定され、信号プロセッサが連続的に位置の変動を修正するからである。
【0021】
好適実施例では、第3のレーザ変位測定工具がベアリングレールに設けられる。この追加の測定工具は、ベアリングレールとシリンダカバーとの間の距離をシリンダライナの長手方向軸線に平行に測定するように設計配置される。このレーザ変位測定工具は、デジタル信号プロセッサと組み合わせて三角測定法を用いて測定を行うことが好ましい。デジタル信号プロセッサは、制御装置の一部でも、単独のものでも良く、またベアリングレールに直接装着しても良いし、レーザ変位測定工具に一体に設けても良い。
【0022】
検査工具は、さらにシリンダライナの摺動面の表面状態を検査する目視検査工具も含む。目視検査工具は、好ましくは、カメラであり、特にベアリングレールに装着された自己照明式のカメラである。目視検査工具は、シリンダライナの摺動面にベアリングレールの長手方向軸線に対して鋭角で指向されると効果的である。
【0023】
これらのレーザ変位工具、すなわち、シリンダライナの直径を測定するレーザ変位測定工具およびピストンの垂直位置すなわちベアリングレールとシリンダカバーの距離を測定するレーザ変位測定工具は、例えば、ホースから供給する空気や水など冷却材で冷却することが好ましい。目視検査工具やロータリテーブルのアクチュエータも空気や水などの冷却材で冷却しても良い。冷却材は、圧縮機、ポンプならびに冷却ユニットで供給しても良く、これらの装置は、全て被測定シリンダライナの外部に離して設けることができる。検査工具などの被冷却工具に冷却材を供給するには、少なくとも一つのホースが使用される。
【0024】
測定工具用の電力、特に、アクチュエータや接続素子(電磁石)を含めたレーザ変位測定工具や目視検査工具の電力は、シリンダライナの外側から電線ケーブルを介して供給される。検査装置は、さらに、測定工具およびアクチュエータと制御装置との間でやりとりする測定および制御信号を伝達する信号伝達手段も有する。これら伝達手段は、送信器及び受信機を含んでも良いし、あるいは単に電線ケーブルだけでも良い。
【0025】
好適実施例では、ベアリングレールは、複数の部品素子で構成され、すなわち中央駆動部品素子および二つの外部部品素子の3つを含む。部品素子の使用は、検査工具をシリンダライナ内に導入可能なスペースが通常限られているからである。部品素子は、摩擦により互いに対して取付可能とするか、あるいは係合結合部品を用いて閉鎖手段を形成する。
【0026】
シリンダカバーを持ち上げる又は外す必要性なく、燃焼機関のシリンダライナの摺動面を検査する、本発明による検査方法は、上述の検査装置を用いて行う。この方法は、ピストン往復動燃焼機関、特に長手方向掃気式の大型2サイクルディーゼルエンジンのシリンダライナの検査に特に適している。
【0027】
本発明の方法は、エンジンを停止する段階、被検査シリンダ内のピストンを下死点(BDC)付近まで下げる段階ならびに被検査シリンダライナを有するシリンダの吸気口の少なくとも一つを露出させる段階を順次行うものである。始動空気弁及び/又は排気弁は、除去しなければならず、引き続く段階で、電力供給とセンサの測定信号および制御信号の伝達のための接続素子、目視検査工具、ロータリテーブルのアクチュエータならびに冷却材供給手段を、露出した少なくとも一つの始動空気弁のボアあるいは排気弁ポートを通してシリンダライナに挿入し、そして露出した少なくとも一つの吸気口を通して取り出す。好ましくは、始動弁ボアおよび吸気口の一つのみを露出させることが好ましい。次いで、検査工具を接続手段と結合し、電線およびホースとともに露出した吸気口を通してシリンダライナ内に導入し、検査工具用のロータリテーブルが回動可能かつ取り外し可能に接続されているピストンの上側に配置する。次いで、ベアリングレールとシリンダカバーとの間の距離に関してのシリンダライナの長手方向軸線に係る位置で、シリンダライナの長手方向軸線の周りのベアリングレールの所定数の回転角度位置で、シリンダライナの長手方向軸線を横切るシリンダライナの直径を測定し、かつシリンダライナの表面状態を目視検査する。ピストンは、順次数段階で上始点(TDC)に向けて変位させ、各段階でシリンダライナの長手方向軸線の周りのベアリングレールの所定数の回転角度位置で、シリンダライナの直径の測定と、摺動面の表面状態の目視検査を繰り返す。
【0028】
本発明の別の実施例においては、吸気口一つのみが露出され、予め接続手段と結合された検査工具がこの露出された一つの吸気口を通してシリンダライナ内に導入される。
【0029】
シリンダライナの直径を測定するための、シリンダライナの長手方向軸線の周りのベアリングレールの周方向位置の数は、3から10であり、特には4から8である。周方向位置の数とは、ベアリングレールとシリンダカバーとの間の距離に関してのシリンダライナの長手方向軸線に係る一つの位置で、シリンダライナの長手方向軸線の周りのベアリングレールの回転角度位置の所定の数のことである。
【0030】
本発明の方法の好適実施例において、被測定シリンダライナの摺動面は、長手方向掃気式の大型2サイクルディーゼルエンでピストン往復動燃焼機関のシリンダの一つであり、このシリンダ内でピストンが摺動面に沿って往復動するように配置されている。
【0031】
大型2サイクルディーゼルエンジンを停止後、ターニングギア、すなわちクランクを起動させ、エンジン(クランク)を、被測定シリンダライナ内のピストンがBDC付近に至るまで回転させる。排気弁及び/又は始動空気弁は、手動で開放しなければならない。このシリンダの始動空気弁および排気弁は、取り外す必要がある。電磁石、ロータリテーブルのアクチュエータ、センサならびにカメラ用の電線および冷却材用ホースは、これらの接続手段のための懸架ワイヤも含めて、始動空気弁ボアを通して降下させることができる。これら接続素子の降下は、シリンダカバーの上方に配置した偏向プーリとバランサを用いて行う。掃気レシーバは、開放してシリンダライナの掃気口にアクセス可能にする必要がある。次いで、接続手段すなわち電線やホースなどの一端は、ピストンの上側に配置される。これらは、溶接ワイヤで捕捉することができ、吸気口の一つを通して引くことができる。次いで、電線は、検査工具に接続する必要がある。スペースに限りがあるので、検査工具のアーム、すなわち、ベアリングレールは、3つの部分に分割される。検査工具の第1部分素子は、掃気口を通してシリンダライナ内に持ちこまれる。単純なクリック装置を用いて検査工具の他の部分の素子は、接続され、完全にシリンダ内部に持ち持ち込まれる。電磁石が励起されると、検査工具を試行することができる。冷却材が、駆動装置(アクチュエータ)、カメラならびにセンサに供給される。
【0032】
クランク角センサとロータリテーブルのエンコーダとの間の接続は、接続箱とラップトップとを有する制御装置に対する接続手段を介して行われる。
【0033】
設定によりすべてが機能するのであれば、センサが耐摩耗リングに達するまでエンジン(クランク)を回転させ、次いで回転を逆の方向に切り替えなければならない。第3のレーザが排気弁に指向され、ピストンを適時に停止するための補助的な安全策を提供する。摺動面の検査及び測定が充分満足するものであれば、ピストンをBDCに戻して検査工具を取り出すことができる。
【0034】
レーザ変位測定工具のセンサとシリンダライナ面との距離は、典型的には15から20mmである。シリンダライナ内で検査工具を正確に中心にすえる必要がない。なぜなら、距離は、ベアリングレールの両端で測定するからであり、ソフトウェが連続的にこのような不整合を修正するからである。
【0035】
シリンダライナとピストンとの間のクリアランスにより、ピストンの中心点は、シリンダライナの中心点に比べて変位する。この中心点は、シリンダライナの長手方向軸線に垂直な横断面に関して画定される。これは、検査工具のアームの両側のセンサを用いている理由で、測定には影響しない。
【0036】
シリンダライナの長手方向軸線の周りのロータリテーブルの回転角度を制御する。エンコーダによりレーザ変位測定工具のレーザの水平方向の正確な位置を知ることができる。垂直方向では、クランク角度センサ及び/又は第3レーザ変位測定工具の上方に指向された第3のレーザを用いてピストンの垂直位置を測定するようにしても良い。ピストンの垂直位置は、検査工具がピストン上側に固定されているので検査工具のベアリングレールの位置と相関がある。
【0037】
シリンダライナ内の完全3Dスキャン、すなわち、シリンダライナの摺動面が相応のソフトウェアを用いてデジタル信号プロセッサの処理により表示可能である。
【0038】
本発明を、以下の添付図を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】掃気口を有するシリンダライナに導入された、燃焼機関のピストンの一部を図示する斜視図。
【図2】燃焼機関のピストンと、このピストンの上側に装着された本発明の検査工具を図示する概略縦断面図。
【図3】本発明による検査工具を図示する概略斜視図。
【図4】燃焼機関の一部を縦断面とし、検査手順の開始する位置で検査装置を鳥瞰した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0040】
図1は、ピストン40の上面45、すなわち、燃焼室に面するピストン40の上面領域、に装着された検査工具65(図2を参照)の概略的斜視図である。ピストン40は、複数のピストンリング42を示している。図1に図示のシリンダライナ25は、掃気式の大型2サイクルディーゼルエンジンのピストン往復動燃焼機関のシリンダの一つであり、特徴として複数の掃気口30を有する。図1に図示の検査工具65は、そのほとんどの部分を掃気口30の一つを通してシリンダライナ25内に挿入され、ピストン40の上面領域45に配置される。すなわち、電磁石のソレノイド84が、上面領域45に配置される検査工具65の取り外し可能な固定具として使用される。
【0041】
検査工具65のベアリングレール70は、その中央部分でソレノイド84に装着されたロータリテーブル80を有する。ロータリテーブル80は、さらにベアリングレール70を回転運動が可能なように動作させるアクチュエータ82を有する。アクチュエータは、取り外し可能な固定具のソレノイドとロータリテーブル80との間に配置しても良いし、ロータリテーブル80とベアリングレール70との間に配置しても良い。アクチュエータ82は、好ましくは、ステップモータであるが、回転動作が少なくとも一つの位置センサ(図示せず)およびコントローラにより制御される旋回モータであっても良い。ステップモータの場合は、アクチュエータ82の回転運動は制御可能であり、すなわち、ステップモータ用のトリガパルスで制御可能であるが、少なくとも一つの位置センサと相応のコントローラとを用いて補助的に制御される。
【0042】
図1に図示の検査装置は、ベアリングレールの各外側端部に設けたレーザ変位測定工具90を有する。これらの工具は、好ましくは、デジタル信号プロセッサと組み合わせで3角測定法を利用して計測するように設計されている。デジタル信号プロセッサは、制御装置55の一部でも良いし、独立の装置でも良い。あるいは、信号プロセッサはベアリングレール70に直接装着しても、レーザ変位測定工具90の一体部分であっても良い。
【0043】
レーザ変位測定工具90は、シリンダライナ25の長手方向軸線に垂直なシリンダライナ25の内径dを測定するように設計配置されている。よって、レーザ変位測定工具90のレーザ91は、好ましくは、検査工具65の長手方向軸線qに主として整合するように配置される。結果、レーザ光は、放射されて反射され、反射光は、検査工具65の長手方向軸線qの方向で受け取られる。検査工具6長手方向軸線は、ベアリンクレール70の長手方向軸線と一致しているか、あるあは、これらの双方の軸線は、互いに平行である。
【0044】
シリンダ25の摺動面35の表面状態を目視検査するための検査工具は、ベアリグレール70の長手方向軸線qと例えば20度から50度の角度で摺動面の方に向けられるカメラ96である。目視査工具96は、さらに表示手段を有する。この表示手段は、制御装置55の一部であっても良いし、スクリーンを有する独立の装置でも良い。また目視検査装置は、電力供給とビデオ信号の伝達のために電気接続手段を有する。ビデオ信号の伝達は、ワイアレスの伝達手段(図示せず)により行うこともできる。電力供給は、その他の別の手段で行うようにしても良い。目視検査工具96は、動作時に通常冷却手段が必要である。図1にカメラを空冷するためのエアホース62を図示する。場合により、レーザ変位測定工具90、93もこのホース62により冷却する。目視検査工具およびレーザ変位測定工具の冷却は、送風機などの手段で行っても良い。
【0045】
図1に図示の検査工具65は、ヘアリングレール70の右手外側部分の外部上に配置された、レーザ94とセンサとを有するレーザ変位測定工具93を有する。レーザ変位測定工具93は、ベアリグレール70とシリンダカバー50との間の距離をシリンダライナの長手方向軸線に平行に測定するように設計配置されている(図4参照)。このレーザ変位測定工具93は、デジタル信号プロセッサと組み合わせで3角測定法を利用して測定を行う。デジタル信号プロセッサは、制御装置55の一部であっても良いし、単一の独立した装置でも良い。あるいは、デジタル信号プロセッサは、ベアリングレールに直接装着しても良いし、レーザ変位測定工具93と一体の部分でも良い。レーザ変位測定工具93は、冷却材、例えば、エアホース62を介して供給される空気により冷却しても良い。
【0046】
図1に図示のベアリングレール70は、3つの部品素子を有し、すなわち、ロータリテーブル80上に装着された中央駆動部品素子72および中央駆動部品素子72の両側に位置する2つの外側部品素子74を有する。外側部品素子74は、好ましくは取り外し可能の固定具により中央駆動部品素子72上に結合されている。
【0047】
中央駆動部品素子72は、平らな下側および台形の上側を有する。中央駆動部品素子72は、各側の外部に主として3角形の板状プレートを有する長手方向プレートで構成しても良い。
【0048】
外側部品素子74は、好ましくは、U字状のレールの形状を有する。外側部品素子74にU字状のレールを使用することにより、これらの部品に充分な強度を確保し、変位測定工具やカメラを側方に容易に固定することができる。
【0049】
図2は、燃焼機関のシリンダの縦断面を図示するものであり、本発明による検査工具65は、ピストン40の上側45に装着されている。図2に図示の主たる構成は、図1の図示の構成とほぼ同じであるが、検査工具65が、シリンダライナ内に完全に導入され、ベアリングレール70の中心がシリンダライナ25の長手方向軸線と整合されている。
【0050】
燃焼室に面するピストン40の上面領域45は、凹んでおり、上面45の中央部分は、ピストン40の境界領域より下方である。
【0051】
図2に図示の検査工具65のベアリングレール45は、U字状の横断面を有し、この横断面形状により、測定および検査工具90,93,96がU字状の外形側部の間に嵌めこめるようになっている。図1に示す実施例と対照的に、レーザ変位測定工具93は、ベアリングレール70の中央領域に位置する。すなわち、ベアリングレール70とシリンダカバー15との間の垂直距離を測定するための工具は、ベアリング70の中央駆動部品素子72上に装着される。レーザ変位測定工具93の配置を除き、検査工具のその他の全ての素子は、図1に示すものと同じである。アクチュエータ82は、ロータリテーブル80の一部となっている。
【0052】
図3は、本発明による検査工具65を概略的に図示する斜視図である。検査工具は、中央駆動部品素子72と2つの外側部品素子74とを有するベアリングレール70を含む。中央駆動部品素子72は、例えば、固定手段により互いに接合された3つの部品素子を含む。中央部品素子は、ロータリテーブル80に固定され、ロータリテーブル80は、その一部で電磁石84に回動可能に装着されている。ベアリングレール70のすべての部品素子は、U字状の輪郭を有する。中央駆動部品素子72の外側部品は、それぞれ棒状のプラグイン式素子78の構成となっており、このプラグイン式素子78は、U字状の輪郭自由端側に配置され、相応のU字状の輪郭の適切な平行側部の間で固定されている。
【0053】
中央駆動部品素子72の外側部品素子の一つは、目視検査工具を含む。好ましくは、この目視検査工具は、カメラである。中央駆動部品素子72の外側部品素子の他の一つは、垂直位置、すなわちシリンダカバー15に対するベアリングレール70の位置を測定するためのレーザ変位測定工具93を含む。このレーザ変位測定工具93は、レーザ94およびセンサを有し、これらは、主として垂直な光(ロータリテーブル80の回転軸線に平行な光)を放出しかつ受光するように設計されている。
【0054】
2つの外側部品素子74のそれぞれは、中央駆動品素子72を向いた内側でU字状輪郭の各平行側部に設けたプラグイン式スリット76の構成を有する。外側部品素子74のプラグイン式のスリット72に対向する側に、レーザ変位測定工具90がU字状輪郭の側部の間に装着される。レーザ変位測定工具90の各々は、レーザ91およびセンサを有し、これらは、主としてベアリングレール70の長手方向軸線qと整合する光(すなわち、ロータリテーブル80の回転軸線に垂直な光)を放出しかつ受光するように配置されている。
【0055】
図4は、燃焼機関10の一部を示す斜視図であり、本発明による検査装置50が検査手順の開始位置にある状態で概略的に図示されている。この燃焼機関は、シリンダライナ25の摺動面35に沿ってピストン40が往復動可能に設けられた、長手方向掃気式の大型2サイクルエンジンのピストン往復動燃焼機関10である。ピストン40は、複数のピストンリング42を有する構成である。
【0056】
シリンダライナは、下死点(BDC)付近に一連の円周方向に並んだ掃気口30を有する。検査工具65は、被検査シリンダ壁の掃気口30の一つを通してシリンダライナ25内に導入しうるサイズを有する。
【0057】
図4に示す検査工具65は、ピストン40の上側の表面領域45(ピストンの燃焼室に向いた表面領域)に取り外し可能に固定される。この検査工具65の結合は、電磁石84により行う。
【0058】
検査装置50は、検査工具65、制御装置55ならびにシリンダライナ25の内径を測定するための工具90、垂直位置測定工具93、目視検査工具96ならびにロータリテーブル80のアクチュエータ82を冷却するための冷却手段64,62、含んでいるが、この構成は場合による。検査装置は、さらに、電力供給および測定信号と制御信号を伝達するための電気配線ケーブル60を有する。電力供給は、ロータリテーブル80のアクチュエータ82、電磁石84、シリンダライナ25の内径dを測定するための工具95、目視検査工具96ならびに垂直位置測定工具93に電力を供給するために使用される。測定信号および制御信号を伝達する手段は、ロータリテーブル80のアクチュエータ82、シリンダライナ25の内径を測定する工具90、目視検査工具96ならびに垂直位置測定工具93との信号伝達に使用され、場合によって電磁石84の信号伝達にも使用される。
【0059】
電気配線ケーブル60およびエアホース62などの冷却手段は、シリンダの始動空気弁ボア20を通してシリンダライナ25内へ導入される。さらに、懸架ワイヤ61が、シリンダカバー15上方の偏向プーリ57及び/又はバランサ58を巡り、始動空気弁ボア20を通して導かれている。懸架ワイヤ61は、電気配線ケーブル60やエアホース62などの冷却供給手段をピストン40の上面45に降下させるために使用される。
【0060】
電力供給と信号伝達のためのケーブル60は、片側で制御装置55に接続され、他方の側で検査工具65に接続される。独立の冷却装置、例えば、圧縮機と冷却ユニットが、エアホース62などの冷却ライン62を介して検査工具65に対して冷却材を送達及び吐出させる。
【0061】
制御装置55は、ディスプレイユニットおよび、測定値や目視検査画像を記録するための記憶装置を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査工具(65)、制御装置(55)ならびに電力の供給と測定データおよび制御信号の伝達を行う接続手段(60)を有する燃焼機関(10)のシリンダライナ(25)の摺動面(35)を検査する検査装置(50)において、
前記検査工具(65)は、ベアリングレール(70)、該ベアリングレール(70)に装着された、ロータリテーブル(80)ならびに前記シリンダライナ(25)の内径(D)と摺動面(35)とを測定するためと表面状態を目視検査するための工具(90,96)を有し、前記検査工具(65)は、被検査シリンダライナ(25)の開口(30)を通して前記シリンダライナ(25)内に導入しうるサイズを有することを特徴とする、検査装置(50)。
【請求項2】
前記ロータリテーブル(80)は、前記シリンダライナ(25)の長手方向軸線(I)の周りでアクチュエータ(82)、特に、エンコーダを備えたステップモータにより駆動可能であり、前記長手方向軸線(I)の周りの前記ロータリテーブル(80)の回転位置は、前記エンコーダあるいは位置センサにより制御可能である、請求項1に記載の検査装置(50)。
【請求項3】
前記ロータリテーブルは、接続素子、特に、電磁石上に回動可能に装着され、前記燃焼機関(10)の表面領域(40)、特に、前記シリンダライナ(25)の燃焼室に面するピストン(40)の上面と取り外し可能な接続がなされる、請求項2に記載の検査装置(50)。
【請求項4】
前記シリンダライナ(25)の内径(d)と前記摺動面(35)を測定する工具(90)は、レーザ変位測定工具(90)、特に、三角測定法により測定を行うレーザ変位測定工具である、請求項1から4のいずれか一項に記載の検査装置(50)。
【請求項5】
二つのレーザ変位測定工具(90)が、前記ベアリングレール(70)にその両端部で装着され、該レーザ変位測定工具(90)は、前記シリンダライナ(25)の長手方向軸線に垂直な該シリンダライナ(25)の内径(d)を測定するように設けられている、請求項4に記載の検査装置(50)。
【請求項6】
前記検査工具(60)は、前記ベアリングレール(70)上に装着された別のレーザ変位測定工具(93)を含み、該別のレーザ変位測定工具(93)は、該ベアリングレール(70)とシリンダカバー(15)との間の前記シリンダライナ(25)の長手方向軸線に平行な距離を測定するように設計配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置(50)。
【請求項7】
前記検査工具(65)は、前記ベアリングレール(70)上に装着された、前記シリンダライナ(25)の摺動面(35)の表面状態を目視検査するためのカメラ(96)を含み、該目視検査手段(96)が該ベアリングレール(70)の長手方向軸線(q)に対して鋭角で、前記摺動面(35)に指向されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の検査装置(50)。
【請求項8】
前記ベアリングレール(70)は、複数の部品素子(72,74)、特に3つの部品素子、すなわち、中央駆動部品素子(72)および2つの外側分素子(74)で構成され、これら部品素子(72、74)は、摩擦手段で互いに装着可能であり,あるいは係合結合部品(76、78)を用いた閉鎖手段を形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載の検査装置(50)。
【請求項9】
前記検査装置(50)は、さらに、電子制御装置(55)、センサ(90,93)、前記目視検査工具(96)ならびに前記ロータリテーブル(80)のアクチュエータのための電力供給および測定値および制御信号の伝達のための電気的接続手段(60)、ならびに別の供給手段(62)、特に、該目視検査工具(96)、該センサ(90,93)ならびに該ロータリテーブル(80)のアクチュエータを冷却するためのエアホースを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の検査装置(50)。
【請求項10】
シリンダ内で摺動面(35)に沿ってピストン(40)が往復動可能に設けられた掃気式の大型2サイクルディーゼルエンジンの、ピストン往復動内燃機関(10)のシリンダライナ(25)の摺動面(35)を検査するために、請求項1から9のいずれか一項に記載の検査装置(50)の使用において、前記検査工具(65)が、被検査シリンダライナ(35)の掃気ポート(30)を通してシリンダライナ(25)内に導入可能なサイズを有している、検査装置(50)の使用。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の検査装置(50)を使用して内燃機関(10)のシリンダライナ(25)の摺動面(35)を検査する検査方法において、前記機関(10)の停止後被検査シリンダ(25)内のピストン(40)を下死点(BDC)付近に向けて移動させ、該シリンダライナ(25)の吸気口(30)の少なくとも一つ、始動空気弁ボア(20)ならびに排気口を露出させ、センサ(90,93)、目視検査工具(96)ならびにロータリテーブル(80)のアクチュエータ(82)のための電力供給と測定値および制御信号の伝達のために電気配線ケーブル(60)と冷却材供給手段(62)とを前記少なくとも一つの露出した吸気口(30)、始動空気弁ボア(20)及び/又は排気口を通して前記シリンダライナ(25)内に導入し、前記検査工具(65)を次いで前記ピストン(40)の上側(45)上に配置し、前記検査工具(65)のロータリテーブル(80)を次いで前記ピストン上側(45)に回動可能にかつ取り外し可能に結合し、ベアリングレール(70)とシリンダカバー(15)との間の距離に関する該シリンダライナ(25)の長手方向軸線に係る一位置で、該シリンダライナ(25)の長手方向軸線の周りの所定数の角度位置で、前記シリンダライナ(25)の長手方向軸線を横断する該シリンダライナ(25)の直径(d)を測定し、表面状態を目視検査し、前記ピストン(4)を上死点(TDC)に向けて段階的に移動させ、各段階で、該シリンダライナ(25)の長手方向軸線(I)の周りの前記ベアリングレール(70)の所定数の回転角度で前記シリンダライナ(25)の直径(d)を測定し、摺動面(35)の表面状態を目視検査することを特徴とする、内燃機関(10)のシリンダライナ(25)の摺動面(35)を検査する方法。
【請求項12】
前記シリンダライナ(25)の直径(d)を測定するための、該シリンダライナ(25)の長手方向軸線(I)の周りの前記ベアリングレール(70)の円周方向位置の数は、3から10であり、特に、4から8である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記被検査シリンダライナ(25)の摺動面(35)は、ピストン往復動燃焼機関のシリンダの一つである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記被検査シリンダライナ(25)の摺動面(35)は、シリンダ内で摺動面(35)に沿ってピストン(40)が往復動可能に設けられた掃気式の大型2サイクルディーゼルエンジンの、ピストン往復動内燃機関(10)のシリンダの一つであり、始動空気弁を取り外すか開放して前記始動弁ボア(20)を露出させ、センサ(90,93)、目視検査工具(96)ならびにロータリテーブル(80)のアクチュエータ(82)のための電力供給と測定値および制御信号の伝達のために電気配線ケーブル(60)と別の供給手段(62)とを該露出した始動空気弁ボア(20)を通して該シリンダライナ(25)内に導入し、前記検査工具(65)は、掃気口(30)を通して該シリンダライナ内に導入する、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
レーザ変位測定工具(93)が、前記ベアリングレール(70)と前記シリンダカバー(15)との間の前記シリンダライナ(25)の長手方向軸線(I)に平行な距離を測定するために用いられ、特に検査手順の停止前の、前記ピストン(40)の最上位置を制御する、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−285984(P2010−285984A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108006(P2010−108006)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(501082602)ヴェルトジィレ シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト (46)
【Fターム(参考)】