説明

ジョイント検査装置

【課題】タイヤ用プライ等の連続シートの幅方向においてジョイントの連続的な検査が可能であり、信頼性が高い検査を行うことができ、さらに大きなスペースを必要としないジョイント検査装置を提供する。
【解決手段】トップ反材料の端部同士が重ね合わされて接続されることによりジョイントが形成された前記トップ反材料の連続シートの搬送途中において前記ジョイントを検査するジョイント検査装置であって、前記連続シートを停止させた状態で、前記ジョイントに沿って前記連続シートの幅方向に移動させて前記ジョイントにおける連続シートの厚み方向の変位を測定する2次元形状計測センサが設けられており、前記の測定結果に基づいて前記ジョイントの検査を行うジョイント検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてタイヤの製造においてカーカスやベルト層等に用いられるタイヤ用プライ等トップ反材料の連続シートのジョイント検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造においてカーカスやベルト層等に用いられるタイヤ用プライ等トップ反材料の連続シート(以下、単に「連続シート」ともいう)は、一般的にトップ反材料の端部同士を重ね合わせて接続することにより連続したシートとされている。そして前記連続シートの接続箇所、即ちジョイントの良否を判断する検査装置として、例えば光学式変位センサを用いてジョイント代を測定する検査装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このようなジョイントの良否の判断をする検査装置の具体的な一例を図8に示す。図8では、連続シート82の幅方向の両端と中央の3箇所に連続シート82を上下から挟むように、連続シートに対して垂直をなす同一光軸上に上下一対の光学式変位センサ81を3セット並設している。
【0004】
そして、光学式変位センサ81あるいは連続シート82を連続シート82の長手方向に移動させることにより、ジョイント83が光学式変位センサ81を通過する。この際、前記3箇所において、光学式変位センサ81によりジョイント83の厚みの変位を測定し、上記3箇所の測定結果に基づいてジョイントの良否について評価を行う。測定結果の一例を、図9に示す。なお、図9では、横軸は連続シートの幅方向における測定位置を示しており、図8を90°回転させた形で示してある。
【0005】
図8に示すように、前記の方法においては、測定点数が、両端および中央の3箇所に限られている。一方、連続シートの幅は400〜800mmもあるため、図9に示すように左端、中央、右端の各測定点における測定値が最大許容値(MAX値)と最小許容値(MIN値)の間にあって「良」と判断されても、測定点間(右端と中央の間、左端と中央の間)はジョイントの良否の判定が保証され難く、測定点間にジョイント不良が存在しても検査で捉えることができない。
【0006】
そのため、検査で捉えることができなかった不良シートがタイヤの生産ラインに投入された場合、不良品タイヤの生産を招いてしまう。また、たとえ、シートの不良に気付いたとしても工程を止めることができないという問題があった。また、上下に複数のセンサを設置するためのスペースが必要になるという問題もあった。
【特許文献1】特開2007−315901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、タイヤ用プライ等の連続シートの幅方向においてジョイントの連続的な検査が可能であり、信頼性が高い検査を行うことができ、さらに大きなスペースを必要としないジョイント検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明に係るジョイント検査装置は、
トップ反材料の端部同士が重ね合わされて接続されることによりジョイントが形成された前記トップ反材料の連続シートの搬送途中において前記ジョイントを検査するジョイント検査装置であって、
前記連続シートを停止させた状態で、前記ジョイントに沿って前記連続シートの幅方向に移動させて前記ジョイントにおける連続シートの厚み方向の変位を測定する2次元形状計測センサが設けられており、
前記測定の結果に基づいて前記ジョイントの検査を行うことを特徴とする。
【0009】
また、前記のジョイント検査装置は、
前記ジョイントにおける連続シートの厚み方向の変位を、前記連続シートの幅方向に沿って連続的に測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、タイヤ用プライ等の連続シートの幅方向においてジョイントの連続的な検査が可能であり、信頼性が高い検査を行うことができ、さらに大きなスペースを必要としないジョイント検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をその最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0012】
1.ジョイント検査装置の構成
はじめに、本実施の形態に係るジョイント検査装置の構成について説明する。
図1は本実施の形態に係るジョイント検査装置の構成の概要を示すブロック図である。図1においてジョイント検査装置A1には、非接触式(レーザスキャン式)の2次元形状計測センサS1、材料検出センサS2を連続シートB1の幅方向に移動させる走行手段1が設けられている。
【0013】
走行手段1は、回転軸11、回転軸11に挿通されて2次元形状計測センサS1、材料検出センサS2と連結された走行部材13、ストッパ12、回転軸11を回転させるためのモータMで構成され、回転軸11が回転することにより、走行部材13に連結された2次元形状計測センサS1、材料検出センサS2が連続シートB1の幅方向に移動する。
【0014】
本ジョイント検査装置A1は、2次元形状計測センサS1、材料検出センサS2を連続シートB1の幅方向に、連続シートB1の外に設けられた2つのストッパ12の間を移動させながら、材料検出センサS2が連続シートB1を検出している間、2次元形状計測センサS1より連続シートB1に向けてレーザを照射し、連続シートB1の厚み方向の変位を測定する。
【0015】
2次元形状計測センサS1および材料検出センサS2の連続シートB1の幅方向への移動は、モータMの回転を調整することにより制御され、その移動量、即ち2次元形状計測センサS1、材料検出センサS2の幅方向の変位は、モータアンプ4を経由して制御部2に送られる。
【0016】
また、2次元形状計測センサS1によるジョイントの測定結果、材料検出センサS2による材料検出結果はそれぞれセンサアンプ3、6を経由して制御部2に送られる。そして、制御部2は、2次元形状計測センサS1によるジョイントの測定結果に基づきジョイントの良否を判定し、不良を検出した場合には、警告手段5が音、光等の警告信号を出力する。
【0017】
前記したように、本実施の形態に係るジョイント検査装置A1は、2次元形状計測センサS1を連続シートB1の幅方向に2つのストッパ12の間で移動させながら、連続シートの厚み方向の変位を測定している。このため、連続シートの全幅にわたって連続的にジョイントを検査することができ、ジョイント検査の信頼性を向上させることができる。
【0018】
なお、求められる精度等によっては、連続的にジョイントを検査する必要がない場合もある。その場合には、求められる精度等に応じて、精度が低下しない範囲で、適宜検査する間隔を定めることができる。
【0019】
また、2次元形状計測センサS1は、連続シートB1の幅方向に移動する際、ジョイント代を含んだ幅広い範囲において連続シートの厚み方向の変位を測定するため、ジョイント全体を効率よく測定することができる。
【0020】
そして、センサとして2次元形状計測センサS1を採用しているため、連続シートのジョイントの上下に一対のセンサを配置する必要がなく、ジョイントの上方からのみの検査でジョイントの厚み方向の変位を測定することができるため大きなスペースが不要となる。
【0021】
2.ジョイント検査方法
次に、前記のジョイント検査装置を用いたジョイント検査方法について説明する。
(イ)ジョイント検査装置が設けられた連続シート製造ライン
図2は前記のジョイント検査装置が設けられた連続シートの製造ラインの概要を示す斜視図である。図2に示すように、連続シートB1は横矢印で示される方向に搬送され、巻取り装置A4に至る途中には、順に、ジョイント装置A2、ジョイント通過検出装置A3、ジョイント検査装置A1が設けられている。なお、これらの装置は、図示しない制御手段により制御されている。
【0022】
このように、ジョイント検査装置A1は固定位置に配置されているため、確実な検査を行うためには、連続シートB1のジョイントB3を検査範囲内に確実に停止させる必要がある。そこで、ジョイント通過検出装置A3をジョイント検査装置A1の上流側に設けることにより、連続シートB1を確実に停止させるようになっている。
【0023】
具体的には、ジョイント通過検出装置A3が連続シートB1のジョイントB3を検出すると検出信号を出力し、検出されたジョイントB3がジョイント検査装置A1の検査範囲内に到達した時点で巻取り装置A4を停止させる。なお、通過検査を見逃した場合には、連続シートB1が例えば1500mmだけ移動した時点で停止させる(プレップ幅は例えば1500mm以下)。
【0024】
(ロ)ジョイントの厚み方向の変位の測定
図3はジョイント検査の開始前のジョイント検査装置を模式的に示す図である。図3においては、ジョイントB3が2次元形状計測センサS1が走行する真下に位置するように連続シートB1を停止させている。
【0025】
次に、モータMにより回転軸11を回転させることにより、走行部材13が回転軸11に沿って連続シートB1の幅方向に移動し、それと合わせて、走行部材13に連結された2次元形状計測センサS1および材料検出センサS2が移動する。そして、予め定められた測定箇所(図3では、1〜5の5箇所)で、2次元形状計測センサS1と材料検出センサS2から、下方(連続シートB1方向)にレーザが照射され、材料検出センサS2が下方に連続シートB1があることを確認している間、2次元形状計測センサS1がジョイントB3の厚み方向の変位を測定する。
【0026】
ここで、2次元形状計測センサS1によるジョイントB3の厚み方向の変位の測定に基づく厚み方向の変位量の算出方法につき、図4を用いて具体的に説明する。厚み方向の変位量ΔAは、連続シート底面から2次元形状計測センサS1(厳密にはセンサヘッド面)までの距離(変位基準値)Aと、ジョイントB3における連続シート上面から2次元形状計測センサS1までの距離A’との差、即ち、ΔA=A−A’として求められる。そして、ジョイント代Bは、各測定箇所における長さ方向でのΔAの変化より求められる。
【0027】
(ハ)ジョイントの良否の判定
図5、図6は、上記の方法による測定結果の一例を示したものであり、測定箇所を5箇所とした場合の例である。図5では、横軸は連続シートの幅方向の変位、即ち測定位置を示し、縦軸は連続シートの長手方向の位置を示している。そして、測定値として各測定箇所での連続シートの長手方向に対するジョイントの厚み方向の変位が示されており、各測定箇所におけるジョイントの厚みとジョイント代を知ることができる。
【0028】
そして、図6は、図5に示された測定結果よりジョイントの厚み(ΔA)を取り出してプロットしたものであり、各測定値が所定の最大許容値(MAX値)と最小許容値(MIN値)の間にあるか否かにより、ジョイントの良否を判定する。
【0029】
図6では、ジョイントの厚みを指標としてジョイントの良否を判定しているが、ジョイント代を指標としてジョイントの良否を判定することもでき、ジョイントの厚みおよびジョイント代の双方を指標とすることにより、より正確にジョイントの良否をより判定することができる。
【0030】
ジョイント代を指標としてジョイントの良否を判定する一例を図7に示す。図7は、図5に示された5箇所の測定結果と同じ様に連続シート上の9箇所で測定されたジョイント代を、連続シートの幅方向の変位(測定位置)を横軸にしてプロットしたものであり、各測定値が所定の最大許容値(MAX値)と最小許容値(MIN値)の間にあるか否かにより、ジョイントの良否を判定する。
【0031】
なお、図7では前記の通り、測定箇所を9箇所にしているが、測定箇所を増やすことにより、よりきめ細かい測定が可能となるため、より信頼性の高い判定を行うことができ、求められる精度等により測定箇所の数は適宜増減することができる。
【0032】
良否を判定する基準は、すべての測定値が最大許容値と最小許容値の間であればジョイントの状況が「良」と判断し、1箇所でも許容範囲外(図6では第4の箇所)であれば「不良」と判断する。具体的には、制御部2において測定値と許容範囲とを比較して過不足量を演算し、過不足がある場合には不良と判定する。許容値はトップ反材料B2の材質等により適宜変更することができる。
【0033】
以上のように、タイヤ用プライ等の連続シートのジョイントの検査において、本発明に係るジョイント検査装置を用いて検査を行うことにより、連続シートの幅方向においてジョイントの連続的な検査が可能であり、信頼性の高い検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置の構成の概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置を用いた連続シートの製造ラインの概要を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置によるジョイント検査直前の様子を模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置によるジョイント検査の様子を模式的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置によるジョイント検査の結果を模式的に示す図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置によるジョイントの厚みの測定結果に基づきジョイントの良否を判定する方法を説明する説明図である。
【図7】図7は本発明の実施の形態に係るジョイント検査装置によるジョイント代の測定結果に基づきジョイントの良否を判定する方法を説明する説明図である。
【図8】従来のジョイント検査装置によるジョイント検査の概要を示す図である。
【図9】従来のジョイント検査装置によるジョイント代の測定結果に基づきジョイントの良否を判定する方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 走行手段
2 制御部
3、6 センサアンプ
4 モータアンプ
5 警告手段
11 回転軸
12 ストッパー
13 走行部材
81 光学式変位センサ
A1 ジョイント検査装置
A2 ジョイント装置
A3 ジョイント通過検出装置
A4 巻取り装置
B1、82 連続シート
B2 トップ反材料
B3、83 ジョイント
M モータ
S1 2次元形状計測センサ
S2 材料検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップ反材料の端部同士が重ね合わされて接続されることによりジョイントが形成された前記トップ反材料の連続シートの搬送途中において前記ジョイントを検査するジョイント検査装置であって、
前記連続シートを停止させた状態で、前記ジョイントに沿って前記連続シートの幅方向に移動させて前記ジョイントにおける連続シートの厚み方向の変位を測定する2次元形状計測センサが設けられており、
前記測定の結果に基づいて前記ジョイントの検査を行うことを特徴とするジョイント検査装置。
【請求項2】
前記ジョイントにおける連続シートの厚み方向の変位を、前記連続シートの幅方向に沿って連続的に測定することを特徴とする請求項1に記載のジョイント検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−112827(P2010−112827A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285521(P2008−285521)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】