説明

ステアリングリム加飾装置及びステアリングリムの加飾方法

【課題】溝形加飾ピースを熱軟化させる際にリム部が受ける熱を抑制することが可能な防止することが可能なステアリングリム加飾装置及びステアリングリムの加飾方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のステアリングリム加飾装置10は、溝形加飾ピース300を、ステアリングホイール200のリム部202ではなく、加飾ピース保持蓋60にて保持する。ステアリングホイール200を保持したワーク収容器12の開口12Aを、溝形加飾ピース300を保持した加飾ピース保持蓋60によって閉塞して、溝形加飾ピース300を熱軟化させかつ溝形加飾ピース300内にリム部202の一部(上側円弧部202A及び下側円弧部202B)を挿入しかつワーク収容器12内を負圧状態にすると、ワーク収容器12の内外の圧力差により、溝形加飾ピース300がリム部202の一部に密着して加飾が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールのリム部を加飾するためのステアリングリム加飾装置及びステアリングリムの加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加飾装置として、リム部に沿って湾曲しかつU字溝形をなした溝形加飾ピースをリム部に保持させた状態で熱軟化させて、リム部の加飾を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−168121号公報(段落[0050]、[0051]、第4図〜第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の加飾装置では、溝形加飾ピースを加熱して熱軟化させる際にリム部も一緒に加熱されるため、リム部の変形や変質が起き易いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、溝形加飾ピースを熱軟化させる際にリム部が受ける熱を抑制することが可能な防止することが可能なステアリングリム加飾装置及びステアリングリムの加飾方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るステアリングリム加飾装置は、ステアリングホイールのリム部の一部を加飾するために、加飾シートから成形されてU字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した溝形加飾ピースを保持する加飾ピース保持蓋と、ステアリングホイールを保持しかつ加飾ピース保持蓋との間に閉塞されたワーク収容空間を形成するワーク保持器とを備えてなり、溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつワーク収容空間内を負圧状態にしてワーク収容空間の内外の圧力差により溝形加飾ピースをリム部の一部に密着させて加飾を行うステアリングリム加飾装置であって、加飾ピース保持蓋には、リム部を受容可能な略円形のリム受容口を有した蓋ベースと、リム受容口のうちリム部の加飾対象部に対応した部分で、リム受容口を蓋ベースの表裏の両方向に開放した溝形加飾ピース取付口と、蓋ベースのうちリムの受容方向の奥側に配置され、リム受容口のうちリム部の非加飾対象部に対応した部分で、リム受容口を覆って閉塞した開口閉塞壁と、開口閉塞壁のうち溝形加飾ピース取付口との境界部分に形成され、溝形加飾ピースと重ね合わせ可能なU字溝形状の1対又は複数対のU字待受壁と、溝形加飾ピースの1対の溝側壁における縁部全体を、溝形加飾ピース取付口の縁部全体との間で挟んで保持可能な1対の円弧状押え部材と、溝形加飾ピースにおける長手方向の両端部をU字待受壁との間で挟んで保持可能な1対のU字状押え部材とを有するところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のステアリングリム加飾装置において、溝形加飾ピースの1対の溝側壁を外側に折り曲げてなる鍔部を、溝形加飾ピース取付口の開口縁と、1対の円弧状押え部材との間で挟んで保持可能としたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のステアリングリム加飾装置において、ワーク保持器は、ステアリングホイールを収容して保持するワーク収容器であって、ワーク収容器の開口に対向配置された開口を有する補助容器を設けて、ワーク収容器の開口と補助容器の開口とを加飾ピース保持蓋を挟んで接合可能とし、溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつワーク収容器内を負圧状態としかつ補助容器内を加圧状態にしてワーク収容器の内外の圧力差により溝形加飾ピースをリム部の一部に密着させて加飾を行うところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載のステアリングリム加飾装置において、加飾ピース保持蓋をステアリングホイールの下側に配置し、ワーク保持器に設けられてステアリングホイールを加飾ピース保持蓋に上方から対向させた状態に保持可能なワーク保持部と、ステアリングホイールと共にワーク保持部を降下させてリム部の一部を溝形加飾ピース内に挿入するワーク保持移動機構とを備えたところに特徴を有する。
【0010】
請求項6の発明に係るステアリングリムの加飾方法は、ステアリングホイールのリム部の一部を加飾するために、U字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した溝形加飾ピースを加飾シートから成形し、ステアリングホイールをワーク収容器に収容し、加飾ピース保持蓋に円弧状開口部を形成しておいて、その円弧状開口部を溝形加飾ピースで閉塞すると共に、加飾ピース保持蓋によってワーク収容器の開口を閉塞し、溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつワーク収容器内を負圧状態にしてワーク収容器の内外の圧力差により溝形加飾ピースをリム部の一部に密着させて加飾を行うところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
請求項1のステアリングリム加飾装置によれば、ステアリングホイールを保持したワーク保持器と溝形加飾ピースを保持した加飾ピース保持蓋との間で閉塞されたワーク収容空間を形成して、そのワーク収容空間内にステアリングホイールを配置し、溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつワーク収容空間内を負圧状態にすると、ワーク収容空間の内外の圧力差により、溝形加飾ピースがリム部の一部に密着して加飾が行われる。
【0012】
詳細には、加飾ピース保持蓋には、U字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した溝形加飾ピースを保持するために溝形加飾ピース取付口が形成され、溝形加飾ピースは、その1対の溝側壁の縁部全体が、溝形加飾ピース取付口の開口縁と1対の円弧状押え部材との間に挟まれて保持されると共に、溝形加飾ピースの長手方向における両端部が、溝形加飾ピースと重ね合わせ可能なU字溝形状のU字待受壁とU字状押え部材との間で挟まれて保持される。これにより、溝形加飾ピース取付口が溝形加飾ピースによって閉塞され、さらに、溝形加飾ピースを保持した加飾ピース保持蓋とワーク保持器との間に閉塞されたワーク収容空間を形成することが可能になる。
【0013】
そして、本発明によれば、溝形加飾ピースを加飾ピース保持蓋にて保持するようにしたので、溝形加飾ピースを熱軟化させる際にステアリングホイールを溝形加飾ピースから離しておくことが可能となり、リム部が受ける熱を抑制することが可能になる。
【0014】
しかも、本発明によれば、溝形加飾ピースは、U字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した状態で加飾ピース保持蓋に保持されているので、溝形加飾ピースの内側にリム部を受容させた状態でワーク保持器内を負圧状態にすることで、リム部を輪切りにした場合の断面周方向の全周に溝形加飾ピースを巻き付けることができる。これにより、加飾後のステアリングホイールの外観を向上させることができる。
【0015】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、溝形加飾ピースにおける1対の溝側壁を外側に折り曲げてなる鍔部を溝形加飾ピース取付口と1対の円弧状押え部材との間に挟んで保持することで、溝形加飾ピース取付口からの溝形加飾ピースの抜け止めを図ることができる。
【0016】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、ワーク収容器の内外の圧力差を大きくすることができ、より強い圧力で溝形加飾ピースをリム部に密着させることができる。
【0017】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、ワーク保持移動機構は、溝形加飾ピースを熱軟化させるための加熱時にステアリングホイールを加飾ピース保持蓋の上方に待機させておき、熱軟化状態になったら加飾ピース保持蓋に向けてステアリングホイールを降下させて、溝形加飾ピースの内側にリム部を挿入するように動作させることができる。
【0018】
[請求項5の発明]
請求項5のステアリングリム加飾方法によれば、溝形加飾ピースを加飾ピース保持蓋にて保持するようにしたので、溝形加飾ピースを熱軟化させる際にステアリングホイールを溝形加飾ピースから離しておくことが可能となり、リム部が受ける熱を抑制することが可能になる。
【0019】
また、本発明によれば、溝形加飾ピースは、U字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した状態で加飾ピース保持蓋に保持されているので、溝形加飾ピースの内側にリム部を受容させた状態でワーク収容器内を負圧状態にすることで、リム部を輪切りにした場合の断面周方向の全周に溝形加飾ピースを巻き付けることができる。これにより、加飾後のステアリングホイールの外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【図2】可動ホルダの正面図
【図3】可動ホルダの(A)斜視図、(B)断面図
【図4】加飾ピース保持蓋の斜視図
【図5】加飾ピース保持蓋の平面図
【図6】加飾ピース保持蓋の(A)P−P線断面図、(B)Q−Q線断面図
【図7】蓋ベースの平面図
【図8】挟持枠の平面図
【図9】蓋ベースを上方から見た斜視図
【図10】溝形加飾ピースの(A)平面図、(B)斜視図
【図11】ステアリングホイール及び加飾シートをセットする前のステアリングホイール加飾装置の正断面図
【図12】(A)ステアリングホイール及び加飾シートをセットした状態の正断面図、(B)ステアリングホイールをワーク収容器内に収容した状態の正断面図
【図13】ステアリングホイール加飾装置の(A)減圧工程における正断面図、(B)加熱工程における正断面図
【図14】(A)加飾シートがドローダウンした状態のステアリングホイール加飾装置の正断面図、(B)加飾シートにリム部を受容させた状態のステアリングホイール加飾装置の正断面図
【図15】補助容器内を加圧状態にしたときのステアリングホイール加飾装置の正断面図
【図16】(A)ワーク収容器を補助容器から分離した状態のステアリングホイール加飾装置の正断面図、(B)可動ホルダをワーク収容器から露出させた状態のステアリングホイール加飾装置の正断面図
【図17】ホルダ本体をブラケットから離脱させた状態のステアリングホイール加飾装置の正断面図
【図18】変形例に係るワーク保持部の側断面図
【図19】変形例に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【図20】変形例に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【図21】変形例に係る加飾ピース保持蓋のうち溝形加飾ピースを保持した部分の拡大断面図
【図22】変形例に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【図23】変形例に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【図24】変形例に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【図25】変形例に係るステアリングリム加飾装置の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図17に基づいて説明する。
図1に示すように、ステアリングホイール200は公知な構造であって、図示しない車両のステアリングシャフトに連結するためのボス部201と、運転者が把持する円環状のリム部202との間を複数本のスポーク部203にて連結した構造をなしている。リム部202のうち、左右の円弧部を除いた上側円弧部202Aと下側円弧部202B(図7参照)とが、以下に説明するステアリングリム加飾装置10によって加飾される。
【0022】
図1に示すように、ステアリングリム加飾装置10は、上下方向で対向した1対の容器11,12を備えている。各容器11,12は、例えば直方体状の箱形構造をなしており、互いの対向面、即ち、上側に配置されたワーク収容器12(本発明の「ワーク保持器」に相当する)の下面中央部と、下側に配置された補助容器11の上面中央部とに、それぞれ開口11A,12Aが貫通形成されている。
【0023】
ワーク収容器12と補助容器11とは接離可能になっている。即ち、補助容器11は移動不能に固定されているのに対し、ワーク収容器12は図示しない容器駆動装置によって上下動可能となっている。
【0024】
図1に示すように、補助容器11の内側には、補助容器11の開口11Aに対向配置された溝形加飾ピース300を熱軟化状態にするためのヒータ13(具体的には、赤外線ヒータ)が備えられている。ヒータ13は補助容器11の底部で開口11Aと対向配置されている。
【0025】
ここで、溝形加飾ピース300は、公知な加飾シートをリム部202(正確には、上側円弧部202A及び下側円弧部202B)に対応させて三次元形状に成形したものである(図10参照)。加飾シートは、熱可塑性樹脂で構成され、リム部202の素地を隠蔽して木目調、金属調その他所定の意匠を付与するための意匠層と、意匠層をリム部202の素地に固着させるための接着剤層とを有する積層構造をなす。
【0026】
溝形加飾ピース300としては、リム部202の上側円弧部202Aを加飾するためのものと、下側円弧部202Bを加飾するためのものとの2種類が用意されており、それら2種類の溝形加飾ピース300,300が、ワーク収容器12と補助容器11との間に挟まれた共通の加飾ピース保持蓋60により保持可能となっている。なお、溝形加飾ピース300及び加飾ピース保持蓋60については後に詳説する。
【0027】
図1に示すように、補助容器11とワーク収容器12には真空ポンプ41が接続されている。真空ポンプ41は、補助容器11内及びワーク収容器12内の空気を吸引して負圧状態(真空状態)にする。また、補助容器11にはコンプレッサ42が接続されている。コンプレッサ42は、補助容器11内にガスを供給して加圧状態にする。
【0028】
ワーク収容器12の内部には、加飾ピース保持蓋60に上方から対向させた状態でステアリングホイール200を保持するための可動ホルダ20が備えられている。
【0029】
可動ホルダ20はロッド14Rの下端部に連結されている。図1に示すように、ロッド14Rはワーク収容器12の天井壁を貫通してワーク収容器12内で上下方向に延びており、ワーク収容器12の天井壁外面に固定された直動シリンダ14(例えば、油圧シリンダ)を駆動源として上下動する。これにより、ステアリングホイール200が可動ホルダ20と共にワーク収容器12内で上下動可能となっている。
【0030】
可動ホルダ20は、ロッド14Rの下端部に固定された昇降ブラケット21と、昇降ブラケット21に対して略水平方向にスライドさせることで着脱可能なホルダ本体30とから構成されている。なお、直動シリンダ14及びそのロッド14Rに連結された昇降ブラケット21は本発明の「ワーク保持移動機構」に相当する。
【0031】
ホルダ本体30は、略直方体形状をなした保持ベース31を備え(図3(A)参照)、その保持ベース31の下面にステアリングホイール200を固定するためのワーク保持部35(図2参照)を備えている。
【0032】
昇降ブラケット21は、図3(A)に示すように、ロッド14Rの下端部に連結された矩形板状の基盤23と、基盤23の下面に固定されたベース収容ボックス27とを備えている。ベース収容ボックス27は、ホルダ本体30の保持ベース31を収容可能な略直方体状のベース収容空間22を内側に有しており、そのベース収容空間22の水平方向を向いた一側面が開放して保持ベース31を挿抜可能な挿抜開口22Aとなっている。また、ベース収容ボックス27は、ベース収容空間22に収容された保持ベース31の下面を外部に臨ませる矩形状の下面開口22B(図3(A)参照)を有している。
【0033】
より詳細には、ベース収容ボックス27は、基盤23より一回り小さい矩形状の天井壁29と、その天井壁29の縁部から垂下しかつ挿抜開口22Aと対向した待受当接壁24と、天井壁23の縁部から垂下しかつスライド方向と直交した方向で対向した1対のスライド係合壁28,28とを備え、待受当接壁24と1対のスライド係合壁28,28とが、下方から見て「コ」の字状に接合している。また、スライド係合壁28,28の下端部には、ホルダ本体30のスライド方向(ベース収容空間22に対する保持ベース31の挿抜方向)と平行に延びた支持レール25,25が一体に設けられている。そして、これら天井壁29、待ち受け当接壁24及びスライド係合壁28,28で囲まれた空間が上記ベース収容空間22になっている。
【0034】
基盤23は、ワーク収容器12の開口12Aより大きくなっており、昇降ブラケット21を直動ストロークの下端位置まで降下させた場合に、開口12Aの開口縁に係止可能となっている(図11参照)。一方、ベース収容ボックス27は、ワーク収容器12の開口12Aより小さくなっており、昇降ブラケット21を下端位置まで降下させた場合に、ベース収容ボックス27が開口12A通過してワーク収容器12の外部に突出するようになっている(図11参照)。
【0035】
ベース収容ボックス27のうち、挿抜開口22A側の端部には、ベース係止部26が設けられている。ベース係止部26は、三角形の板状又は柱状をなし、ホルダ本体30のスライド方向と直交する水平軸回りに回動可能に軸支されている。また、図示しない付勢手段(例えば、バネ)によりベース係止部26の一角部がベース収容空間22の内側に突出した係止位置(図2に示す状態)になるように付勢されている。保持ベース31をベース収容空間22に挿入すると、ベース係止部26は保持ベース31に押されて、係止位置から図2における反時計回り方向に回動する。そして、保持ベース31が待受当接壁24に当接してベース収容空間22に収容されると、ベース係止部26が係止位置に復帰して保持ベース31の縁部に係止する(図1参照)。これらベース係止部26と待受当接壁24とでホルダ本体30がスライド係合方向の所定位置に固定される。
【0036】
図3(A)に示すように、1対の支持レール25,25は、ベース収容ボックス27の下面開口22Bを間に挟んだ両側部でホルダ本体30のスライド方向に延びている。また、図3(B)に示すように、各支持レール25,25はその長手方向と直交した断面がL字形状をなしている。即ち、スライド係合壁28の下端縁からベース収容空間22側に張り出した張出壁25Xと、張出壁25Xの先端から垂直に起立した垂直壁25Yとを有している。
【0037】
ホルダ本体30の保持ベース31のうち、昇降ブラケット21に対するスライド方向と平行な1対の係合側面31A,31Aには、複数対のローラ33,33が備えられている。また、図3(B)に示すように、両係合側面31A,31Aのうちローラ33の回転軸より若干下方には、スライド方向に延びたレール係合溝34,34が陥没形成されている。そして、1対のレール係合溝34,34に各支持レール25,25(垂直壁25Y,25Y)がスライド係合すると共に、各ローラ33,33が各支持レール25,25(張出壁25X,25X)の上面を走行可能となっている。
【0038】
図2に示すように、保持ベース31の下面には、ステアリングホイール200を保持するためのワーク保持部35が設けられている。具体的には、ステアリングホイール200のうちボス部201には、車両のステアリングシャフト(図示せず)に固定するためのボルト挿通孔201Aが貫通形成されており、そのボルト挿通孔201Aに挿通された固定ボルト36が、保持ベース31の下面に陥没形成された螺旋孔31Bに螺合している。そして、固定ボルト36のヘッド部と保持ベース31の下面との間にボス部201が挟まれて、ステアリングホイール200が移動不能に固定されている。
【0039】
さて、上記したように溝形加飾ピース300は、リム部202の上側円弧部202A又は下側円弧部202Bに対応した三次元形状に成形されている。即ち、図10(B)に示すように、溝形加飾ピース300は、U字溝形状をなしかつその溝開口304が、同図(A)に示すように上側円弧部202A又は下側円弧部202Bに沿った円弧状を(換言すれば、溝形加飾ピース300における1対の溝側壁302,302が同心の円弧状)をなすように全体が湾曲している。また、1対の溝側壁302,302における縁部全体が外側に折り曲げられて1対の鍔部303,303が形成されている。この溝形加飾ピース300を保持するために、加飾ピース保持蓋60は以下のような構成となっている。
【0040】
図5に示すように、加飾ピース保持蓋60は、1つの蓋ベース50とその下面に宛がわれる2つの押え枠61,62とから構成されている。2つの押え枠61,62のうちの一方は、図4に示すように蓋ベース50との間で上側円弧部202A用の溝形加飾ピース300を保持するための押え枠61であり、他方は蓋ベース50との間で下側円弧部202B用の溝形加飾ピース300を保持するための押え枠62である。なお、図4では、各部品が、実際の使用時とは上下を逆転させて図示してある。
【0041】
蓋ベース50は、補助容器11及びワーク収容器12の各開口11A,12Aよりも大きな矩形板状をなし、ステアリングホイール200のリム部202を受容可能な略円形のリム受容口51を有している(図9参照)。リム受容口51は蓋ベース50の上面に開放しており、そのリム受容口51のうち、上側円弧部202Aに対応した部分は、蓋ベース50を表裏両面に開放しかつ円弧状をなした第1の溝形加飾ピース取付口51Aとなっている。また、リム受容口51のうち、下側円弧部202Bに対応した部分は、蓋ベース50を上下両面に開放しかつ円弧状をなした第2の溝形加飾ピース取付口51Bになっている。なお、第1及び第2の溝形加飾ピース取付口51A,51Bは本発明の「円弧状開口部」に相当する。
【0042】
図4及び図9に示すように、蓋ベース50の中央部には、上面を扁平容器状に陥没させることで下面側に突出したマスキングケース53が膨出している。マスキングケース53は、リム受容口51のうち、リム部202の非加飾対象部に対応した部分、即ち、リム部202における左右の円弧部に対応した部分でリム受容口51を閉塞している(図7参照)。そして、リム部202の左右の円弧部と同じく非加飾対象部であるスポーク部203及びボス部201が、リム部202の左右の円弧部と共にマスキングケース53内に収容可能となっている(図7参照)。なお、マスキングケース53は、本発明の「開口閉塞壁」に相当する。
【0043】
図9に示すように、マスキングケース53の囲壁のうち各溝形加飾ピース取付口51A,51Bとの境界部分には、蓋ベース50の上面に開放したU字形の側部開口53A,53Aが形成されている。また側部開口53Aの開口縁からは、マスキングケース53の外側に向かってU字溝形状のU字待受壁54,54が突出している(図4参照)。換言すれば、各U字待受壁54,54は、各溝形加飾ピース取付口51A,51Bの長手方向の両端位置において蓋ベース50の下面からU字溝状に膨出している。
【0044】
図8に示すように、押え枠61は、リム部202の上側円弧部202Aに沿って円弧状に延びた帯板材で構成され、その幅方向の中央部に第1の溝形加飾ピース取付口51Aと同一形状のスリット61Aが貫通形成されている。スリット61Aを挟んだ両側は同心円状に延びた1対の円弧状押え部材61B,61Bになっており、これら円弧状押え部材61B,61Bと、第1溝形加飾ピース取付口51Aの開口縁との間で、溝形加飾ピース300(上側円弧部202A用)における1対の鍔部303,303を挟んで保持可能となっている(図6(A)参照)。
【0045】
また、図4に示すように、押え枠61の長手方向における両端位置には、押え枠61の下面からU字状に膨出しかつ1対の円弧状押え部材61B,61Bの間を連絡した1対のU字状押え部材61C,61Cが設けられている。これら1対のU字状押え部材61C,61Cと、蓋ベース50に設けられたU字待受壁54,54との間で、溝形加飾ピース300(上側円弧部202A用)の長手方向の両端部を挟んで保持可能となっている(図6(B)参照)。
【0046】
同様に、押え枠62は、図8に示すように、リム部202の下側円弧部202Bに沿って円弧状に延びた帯板材で構成され、その幅方向の中央部に第2の溝形加飾ピース取付口51Bと同一形状のスリット62Aが貫通形成されている。スリット62Aを挟んだ両側は、同心円状に延びた1対の円弧状押え部材62B,62Bになっており、これら1対の円弧状押え部材62B,62Bと、第2の溝形加飾ピース取付口51Bの開口縁との間で、溝形加飾ピース300(下側円弧部202B用)における1対の鍔部303,303を挟んで保持可能となっている(図6(A)参照)。
【0047】
また、図4に示すように、押え枠62の長手方向における両端位置には、押え枠62の下面からU字状に膨出しかつ、1対の円弧状押え部材62B,62Bの間を連絡した1対のU字状押え部材62C,62Cが設けられている。これら1対のU字状押え部材62C,62Cと、蓋ベース50に設けられたU字待受壁54,54との間で、溝形加飾ピース300(下側円弧部202B用)の長手方向の両端部を挟んで保持可能となっている。
【0048】
次にステアリングリム加飾装置10によるリム部202の加飾方法について、図11〜図17を参照しつつ説明する。
【0049】
まずは、ステアリングホイール200をホルダ本体30に取り付けると共に、溝形加飾ピース300,300を加飾ピース保持蓋60に取り付ける。ステアリングホイール200は、ボス部201を貫通させた固定ボルト36を、保持ベース31の螺子孔31Bに螺合することで固定される。この際、ホルダ本体30をワーク収容器12内から取り出した状態でステアリングホイール200を取り付けることができるから、作業性に優れる。
【0050】
溝形加飾ピース300は、加飾シートから、予め上側円弧部202A用のものと、下側円弧部202B用のものとを予備成形しておき、それら2種類の溝形加飾ピース300を加飾ピース保持蓋60に保持させる。即ち、蓋ベース50と押え枠61,62との間に、各溝形加飾ピース300の長手方向の両端部と1対の鍔部303,303とを挟んで保持させる。
【0051】
次に、ホルダ本体30を昇降ブラケット21に取り付ける。具体的には、図4に示すように、補助容器11とワーク収容器12とを離間状態にすると共に、昇降ブラケット21を下端位置で停止させる。すると、ベース収容ボックス27がワーク収容器12の外部に突出して、挿抜開口22Aからホルダ本体30を挿入可能な状態になる。
【0052】
この状態で、図11から図12(A)への変化に示すように、ホルダ本体30を水平方向にスライド移動させて、ベース収容ボックス27内にホルダ本体30(保持ベース31)を挿入する。
【0053】
このとき、図3(B)に示すように、保持ベース31のレール係合溝34,34に支持レール25,25がスライド係合すると共に、ローラ33が支持レール25,25の上を走行する。そして、保持ベース31が待受当接壁24が突き当たると、待受当接壁24とは反対側でベース係止部26が保持ベース31に係止して、ホルダ本体30が昇降ブラケット21に対して固定される。これにより、ステアリングホイール200がリム部202を下方に向けた状態で可動ホルダ20に保持される。
【0054】
また、図12(A)に示すように、補助容器11の上面に加飾ピース保持蓋60をセットする。即ち、加飾ピース保持蓋60にて保持された溝形加飾ピース300の溝開口304が上方(ステアリングホイール200)を向くように(補助容器11側に膨出するように)して、加飾ピース保持蓋60の外縁部を補助容器11の上面に載せる。これにより、補助容器11の開口11Aが閉塞される。
【0055】
ステアリングホイール200及び加飾ピース保持蓋60のセットが完了すると、図12(B)に示すように直動シリンダ14によって可動ホルダ20が吊り上げられ、ステアリングホイール200がワーク収容器12内に収容される。
【0056】
次いで、図13(A)に示すようにワーク収容器12全体が降下して、ワーク収容器12の開口縁と補助容器11の開口縁との間に、加飾ピース保持蓋60の外縁部が挟持される。即ち、補助容器11とワーク収容器12とが溝形加飾ピース300,300を保持した加飾ピース保持蓋60を挟んで接合すると共に、補助容器11とワーク収容器12との内部空間が加飾ピース保持蓋60によって隔絶される。この時点で、ステアリングホイール200は加飾ピース保持蓋60の上方に離して対向配置されかつ、リム部202の上側円弧部202Aと下側円弧部202Bとが、それぞれ対応する溝形加飾ピース300,300の溝開口304,304と対向配置される。なお、加飾ピース保持蓋60が開口12Aを閉塞した状態におけるワーク収容器12の内部空間が、本発明の「ワーク収容空間」に相当する。
【0057】
次いで減圧工程に移行する。即ち、補助容器11及びワーク収容器12内の空気を真空ポンプ41によって排気し、補助容器11内及びワーク収容器12内を共に負圧状態にする。減圧工程中、溝形加飾ピース300はU字溝形状を維持する。
【0058】
減圧工程に次いで加熱工程に移行する。即ち、図13(B)に示すようにヒータ13がオンし、成形適正温度になるまで溝形加飾ピース300を下方から加熱する。また、成形適正温度に達するまでの間に溝形加飾ピース300は熱軟化する。
【0059】
熱軟化が進むと、図13(B)から図14(A)への変化に示すように溝形加飾ピース300が若干ドローダウンする。即ち、溝形加飾ピース300が自重により補助容器11側に垂れ下がる。
【0060】
溝形加飾ピース300が成形適正温度に達したら成形工程に移行する。即ち、図14(B)に示すように、まず、ステアリングホイール200を溝形加飾ピース300に向けて降下させる。すると、リム部202のうち上側円弧部202A及び下側円弧部202Bのみが、蓋ベース50の溝形加飾ピース取付口51A,51B及び、押え枠61,62のスリット61A,62Aを通過して、それぞれ対応する溝形加飾ピース300,300の内側に受容される。このとき、ステアリングホイール200の上側円弧部202A及び下側円弧部202B以外の部分(非加飾対象部)は、マスキングケース53内に受容される。
【0061】
次いで、図15に示すように、ワーク収容器12を負圧状態に維持したまま補助容器11内にコンプレッサ42から圧縮空気を供給して、補助容器11内を大気圧を超える加圧状態にする。すると、補助容器11内とワーク収容器12内との圧力差により、溝形加飾ピース300がリム部202の上側円弧部202A及び下側円弧部202Bに押し付けられて密着する。
【0062】
ここで、仮に、加飾シートをU字溝形状の溝形加飾ピース300に予備成形せずに、シート状のまま加飾を行った場合、リム部202の輪切り断面(図2に示す断面)における周方向の全周に加飾シートを巻き付けることが困難であり、加飾シートが行き渡らなかった部分でリム部202の素地がライン状に露出して外観が見劣りするという問題が起こり得る。これに対し、本実施形態のように、加飾シートをU字溝形状の溝形加飾ピース300に予備成形して、その溝形加飾ピース300の内側にリム部202を受容させて加飾を行うようにすれば、図15に示すようにリム部202の輪切り断面における周方向の全周に溝形加飾ピース300を巻き付けることができ、加飾後の外観を向上させることができる。
【0063】
以上で成形工程が完了すると、図16(A)に示すようにヒータ13がオフすると共にワーク収容器12と補助容器11とが共に大気開放され、その後、ワーク収容器12全体が上昇して補助容器11とワーク収容器12とが離間状態になる。このとき、溝形加飾ピース300はステアリングホイール200のリム部200に貼り付いているので、加飾ピース保持蓋60は、ワーク収容器12と共に上方に持ち上げられる。
【0064】
次いで、図16(B)に示すように可動ホルダ20を下端位置まで降下させて、ベース収容ボックス27をワーク収容器12の開口12Aから下方に突出させ、挿抜開口22Aからホルダ本体30抜き取り可能な状態にする。この状態で、図17に示すように、ホルダ本体30を水平方向にスライドさせて昇降ブラケット21(ベース収容空間22)から抜き取る。そして、図示しないが、ホルダ本体30からステアリングホイール200を取り外すと共に、ステアリングホイール200と加飾ピース保持蓋60とを分離し、さらにトリミングを行う。
【0065】
このように、本実施形態によれば、ステアリングホイール200を保持したワーク収容器12の開口12Aを、溝形加飾ピース300を保持した加飾ピース保持蓋60によって閉塞して、溝形加飾ピース300を熱軟化させかつ溝形加飾ピース300内にリム部202の一部(上側円弧部202A及び下側円弧部202B)を挿入しかつワーク収容器12内を負圧状態にすると、ワーク収容器12の内外の圧力差により、溝形加飾ピース300がリム部202の一部に密着して加飾が行われる。そして、本実施形態では、溝形加飾ピース300を、ステアリングホイール200のリム部202ではなく、加飾ピース保持蓋60にて保持するようにしたので、溝形加飾ピース300を熱軟化させる際にステアリングホイール200を溝形加飾ピース300から離しておくことが可能となり、リム部202が受ける熱を抑制することができる。
【0066】
また、リム部200の非加飾対象部位とボス部201及びスポーク部203は、マスキングケース53内に収容されているのでより熱を受け難くなる。これらにより、熱によるリム部202の変形や変質を防止することが可能になる。
【0067】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0068】
(1)上記実施形態では、ステアリングホイール200を固定ボルト36にて固定する構成であったが、ステアリングホイール200のボス部201を貫通して保持ベース31に形成されたピン挿入孔31Cに挿入され、挿入方向と直交する方向でピン挿入孔31Cの内面と凹凸係合するピン37で固定する構成にしてもよい。具体的には、図18に示すように、ピン37は、先端部から側方に出没可能な1対の係止突起37A,37Aを備えかつ基端部から軸方向に出没可能なノック部37Bを備えている。ノック部37B及び1対の係止突起37A,37Aは、常には突出状態であり、ノック部37Bを押圧して没入させると、1対の係止突起37A,37Aも没入するようになっている。また、保持ベース31には、ピン37の先端部が挿入可能なピン挿入孔31Cが形成されると共に、ピン挿入孔31Cの内部で側方に突出した係止突起37A,37Aが凹凸係合可能な係止孔部21D,31Dが形成されている。このような構成にすると、固定ボルト36に比べて迅速に着脱することが可能になる。
【0069】
(2)上記実施形態では、ワーク収容器12の下方に補助容器11を配置していたが、図19に示すように、ワーク収容器12と補助容器11の配置を上下逆転させかつ溝形加飾ピース300をその溝開口304が下方を向いた状態で加飾ピース保持蓋60に保持させて、加飾ピース保持蓋60に下方からステアリングホイール200が対向するようにしてもよい。
【0070】
(3)上記実施形態では、補助容器11を備えていたが、例えば、図20に示すように補助容器11を無くした構成にしてもよい。このような構成にした場合、以下の方法によりリム部202の加飾を行うことができる。即ち、溝形加飾ピース300を保持した加飾ピース保持蓋60にてステアリングホイール200を収容保持したワーク収容器12の開口12Aを閉塞する。次に、ステアリングホイール200を加飾ピース保持蓋60の上方(又は下方)に離して配置しかつワーク収容器12内を大気圧状態としたまま溝形加飾ピース300,300を加熱して熱軟化させる。次いで、ステアリングホイール200を加飾ピース保持蓋60に向けて接近(降下又は上昇)させて、リム部202を溝形加飾ピース300内に受容させ、その後、ワーク収容器12内を負圧状態にする。すると、ワーク収容器12の内外の圧力差により溝形加飾ピース300がリム部202に密着する。
【0071】
(4)上記実施形態では、溝形加飾ピース300における1対の溝側壁302,302の縁部を外側に折り曲げた1対の鍔部303,303を溝形加飾ピース取付口51A(51B)の開口縁と1対の円弧状押え部材61B,61B(62B,62B)との間で挟んで保持するように構成していたが、図21(A)に示すように、溝形加飾ピース取付口51A(51B)の開口縁を溝形加飾ピース300の底側に折り曲げると共に、1対の円弧状押え部材61B,61B(62B,62B)の内側縁を溝形加飾ピース300の底側に折り曲げて、それら折り曲げた部分で1対の溝側壁302,302の縁部を挟んで保持するようにしてもよい。
【0072】
または、図21(B)に示すように、溝形加飾ピース取付口51A(51B)の開口縁を溝形加飾ピース300の溝開口304側に折り曲げると共に、1対の円弧状押え部材61B,61B(62B,62B)の内側縁を溝形加飾ピース300の溝開口304側に折り曲げて、それら折り曲げた部分で、1対の溝側壁302,302の縁部を外側に折り返した部分を挟んで保持するようにしてもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では、本発明に係る「ワーク保持器」として、ステアリングホイール200を収容して保持するワーク収容器12を備えていたが、図22に示すように、ステアリングホイール200を収容せずに保持するワーク保持器19の開口19Aを加飾ピース保持蓋60にて閉塞することで、それらワーク保持器19と加飾ピース保持蓋60との間にステアリングホイール200を収容しかつ閉塞されたワーク収容空間が形成されるような構成にしてもよい。この場合、例えば、加飾ピース保持蓋60における蓋ベース50の外縁部からワーク保持器19に向かって囲壁55を突出させて、その囲壁55の先端とワーク保持器19の開口縁とが接合するように構成する。
【0074】
(6)上記実施形態では、押え枠61,62と補助容器11とを別部品で構成していたが、図23に示すように、押え枠61,62(円弧状押え部材及びU字状押え部材)と補助容器11とを一体構造にしてもよい。
【0075】
(7)図24に示すように、押え枠61(62)における1対の円弧状押え部材61B,61B(62B,62B)のうち、スリット61A(62A)よりも円弧の中心側に配置された一方の円弧状押え部材61B(62B)を蓋ベース50との間で挟むことで、溝形加飾ピース300における鍔部303をより強固に挟持するための押圧部18を補助容器11の底部から開口11Aに向けて起立させてもよい。
【0076】
(8)上記実施形態では、溝形加飾ピース300を熱軟化させてから、リム部200を溝形加飾ピース300内に挿入していたが、熱によりリム部200が変形又は変質する虞がない場合には、溝形加飾ピース300内にリム部200を挿入した状態で、溝形加飾ピース300を加熱して熱軟化させてもよい。
【0077】
(9)上記実施形態では、プレート形のヒータ13を加飾ピース保持蓋60と平行に配置して溝形加飾ピース300を真下から加熱する構成であったが、溝形加飾ピース300をより均一に加熱するために、ヒータ13を溝形加飾ピース300のU字溝形状に対応した配置又は形状にしてもよい。例えば、図25に示すように、1対のプレート形のヒータ13をV字形に配置して溝形加飾ピース300を斜め下方から加熱するように構成してもよい。また、図示しないが、プレート形のヒータ13を曲げ加工して円弧溝形にしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 ステアリングリム加飾装置
11 補助容器
12 ワーク収容器(ワーク保持器)
14 直動シリンダ
19 ワーク保持器
21 昇降ブラケット
35 ワーク保持部
50 蓋ベース
51 リム受容口
51A,51B 溝形加飾ピース取付口(円弧状開口部)
53 マスキングケース(開口閉塞壁)
54 U字待受壁
60 加飾ピース保持蓋
61B,62B 円弧状押え部材
61C,62C U字状押え部材
200 ステアリングホイール
202 リム部
300 溝形加飾ピース
302 溝側壁
303 鍔部
304 溝開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールのリム部の一部を加飾するために、加飾シートから成形されてU字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した溝形加飾ピースを保持する加飾ピース保持蓋と、
前記ステアリングホイールを保持しかつ前記加飾ピース保持蓋との間に閉塞されたワーク収容空間を形成するワーク保持器とを備えてなり、
前記溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつ前記ワーク収容空間内を負圧状態にして前記ワーク収容空間の内外の圧力差により前記溝形加飾ピースを前記リム部の一部に密着させて加飾を行うステアリングリム加飾装置であって、
前記加飾ピース保持蓋には、
前記リム部を受容可能な略円形のリム受容口を有した蓋ベースと、
前記リム受容口のうち前記リム部の加飾対象部に対応した部分で、前記リム受容口を前記蓋ベースの表裏の両方向に開放した溝形加飾ピース取付口と、
前記蓋ベースのうち前記リムの受容方向の奥側に配置され、前記リム受容口のうち前記リム部の非加飾対象部に対応した部分で、前記リム受容口を覆って閉塞した開口閉塞壁と、
前記開口閉塞壁のうち前記溝形加飾ピース取付口との境界部分に形成され、前記溝形加飾ピースと重ね合わせ可能なU字溝形状の1対又は複数対のU字待受壁と、
前記溝形加飾ピースの1対の溝側壁における縁部全体を、前記溝形加飾ピース取付口の縁部全体との間で挟んで保持可能な1対の円弧状押え部材と、
前記溝形加飾ピースにおける長手方向の両端部を前記U字待受壁との間で挟んで保持可能な1対のU字状押え部材とを有することを特徴とするステアリングリム加飾装置。
【請求項2】
前記溝形加飾ピースの1対の溝側壁を外側に折り曲げてなる鍔部を、前記溝形加飾ピース取付口の開口縁と、前記1対の円弧状押え部材との間で挟んで保持可能としたことを特徴とする請求項1に記載のステアリングリム加飾装置。
【請求項3】
前記ワーク保持器は、前記ステアリングホイールを収容して保持するワーク収容器であって、前記ワーク収容器の開口に対向配置された開口を有する補助容器を設けて、前記ワーク収容器の開口と前記補助容器の開口とを前記加飾ピース保持蓋を挟んで接合可能とし、
前記溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつ前記ワーク収容器内を負圧状態としかつ前記補助容器内を加圧状態にして前記ワーク収容器の内外の圧力差により前記溝形加飾ピースを前記リム部の一部に密着させて加飾を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングリム加飾装置。
【請求項4】
前記加飾ピース保持蓋を前記ステアリングホイールの下側に配置し、
前記ワーク保持器に設けられて前記ステアリングホイールを前記加飾ピース保持蓋に上方から対向させた状態に保持可能なワーク保持部と、
前記ステアリングホイールと共に前記ワーク保持部を降下させて前記リム部の一部を前記溝形加飾ピース内に挿入するワーク保持移動機構とを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のステアリングリム加飾装置。
【請求項5】
ステアリングホイールのリム部の一部を加飾するために、U字溝形状をなしかつその溝開口が円弧状をなすように全体が湾曲した溝形加飾ピースを加飾シートから成形し、
前記ステアリングホイールをワーク収容器に収容し、
加飾ピース保持蓋に円弧状開口部を形成しておいて、その円弧状開口部を溝形加飾ピースで閉塞すると共に、前記加飾ピース保持蓋によって前記ワーク収容器の開口を閉塞し、
前記溝形加飾ピースを熱軟化状態としかつ前記ワーク収容器内を負圧状態にして前記ワーク収容器の内外の圧力差により前記溝形加飾ピースを前記リム部の一部に密着させて加飾を行うステアリングリムの加飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−126395(P2011−126395A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285996(P2009−285996)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】