説明

スリット式塗布方法、スリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法およびその装置

【課題】 塗布する膜厚をリアルタイムで制御する、スリット式塗布工程の膜厚監視方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 光学センサ110により、光学信号112a、112bの出射および受信を行い、塗布前における光学センサおよび基材間の距離を測定する。また、光学センサ110により、光学信号112a、112bの出射および受信を行い、塗布処理を行う間に光学センサと基材表面の塗膜106との距離を連続的に測定する。そして、光信号処理回路120により、塗布前および塗布処理中の光学信号112a、112bを比較して、塗膜の厚みを算出する。そして、塗膜の厚みに関する情報に基づいて、塗膜の厚みをリアルタイムで制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリット式塗布方法に関し、特にスリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の製造技術は、特に大型化の趨勢のために、元々、真空管表示装置の応用分野であったものが、現在、液晶表示装置によりほとんど取って代わられている。液晶表示装置の関連産業は、近年特に人気がある。
【0003】
液晶表示装置の製造工程において、リソグラフィ(lithography)は重要な工程の一つである。リソグラフィ工程は、フォトレジスト塗布、現像、露光などの工程により、液晶表示装置中の膜層にパターニングを施す。
【0004】
第4世代パネル以前のフォトレジスト塗布には、一般にスピンコーティング(spin coating)が採用されていた。第5世代パネルからは、パネルサイズが大型であるために、一般にスリット式塗布方法が採用されている。フォトレジスト層の厚みが均一であるかどうかは、塗布工程の後に行われる工程の良否に影響を与える。大型サイズのパネル上でのフォトレジスト層が均一な厚みとなるように制御することに関しては、液晶表示装置の関連製造メーカの技術能力が試されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスリット式塗布方法では、製造工程の際に、塗布後の膜厚または膜層が均一となっているかどうかを知ることができなかった。そして、製造工程後に検査を行わなければ、上述の膜厚または膜層が均一になっているかどうかが分からなかった。しかも、膜厚等が均一でない場合には、製造工程の途中にある製品に対して、工程を再度行ったり廃棄したりしなければならないことがあった。
【0006】
上述の問題を解決するために、液晶表示装置の関連製造メーカは、積極的に新しい方法を提供して、スリット式塗布方法に挑戦しなければならなかった。
【0007】
本発明の目的は、塗布処理によって形成される膜厚をリアルタイムで制御するスリット式塗布工程の膜厚監視方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、塗布処理で形成される塗膜の厚みをリアルタイムで制御して、塗布処理を行うスリット式塗布方法を提供する。光学センサにより、光学信号の出射および受信を行い、塗布前における基材表面および光学センサ間の距離を計測する。また、光学センサにより、光学信号の出射および受信を行い、塗布中における基材表面の塗膜および光学センサ間の距離を連続的に計測する。そして、光信号処理回路により、塗布前と塗布中の光学信号を比較して、塗膜の厚みを求める。また、塗膜の厚みに関する情報に基づいて、塗膜の厚みをリアルタイムで制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスリット式塗布工程、スリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法およびその装置は、光学センサにより膜厚をリアルタイムで測定して、膜厚およびその均一度をリアルタイムで制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0011】
スリット式塗布工程中に、塗布工程によって生成された膜厚または膜層が、均一かどうかが分からないという問題を解決するために、本発明は、スリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法およびその装置を提供する。この膜厚リアルタイム監視方法およびその装置は、塗布前および塗布後に、光学センサを利用して塗膜の膜厚を測定する。そして、塗膜の厚みに関する上方をノズル制御装置へフィードバックすることにより、塗膜の厚みをリアルタイムで制御する。
【0012】
図1は、本発明の実施例1であるスリット式塗布装置を示す模式図である。本実施例のスリット式塗布装置100は、大面積の塗膜106を基材104上に形成することができる。このスリット式塗布装置100は、二組の光学センサ110を用いることにより、塗布前および塗布後のそれぞれにおいて、基材104の表面と光学センサ110との距離や、基材104の表面に形成された塗膜106と光学センサ110との距離を測定する。
【0013】
その測定方式によると、発光素子110aから光学信号(検出光)112aを出射し、基材104または塗膜106により反射された光学信号112bを、受光素子110bで受信(受光)する。光信号処理回路120は、二組の光学センサ110により測定された信号を利用して、光学センサ110から基材104までの距離と、光学センサ110から塗膜106までの距離とをそれぞれ計測して、この二つの距離の差により、塗膜106の厚みを求める。
【0014】
ノズル制御回路130は、光信号処理回路120で測定して得られた塗膜106の膜厚を利用し、工程パラメータをリアルタイムで調整したり変更したりすることにより、膜厚を制御する。上述した二組の光学センサ110は、光信号処理回路120にそれぞれ電気的に接続され、ノズル制御回路130は、光信号処理回路120およびスリット式塗布ノズル114のそれぞれに電気的に接続される。
【0015】
図2は、本実施例のスリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法を示すフローチャートである。
【0016】
ステップ300において、塗布する前に、一方の光学センサ110(一組の発光素子110aおよび受光素子110b)により、光学信号の出射と受信とを行い、光信号処理回路120により、光学センサ110から基材104までの距離を計測する。
【0017】
ステップ301において、塗布処理した後に、他方の光学センサ110(一組の発光素子110aおよび受光素子110b)により光学信号の出射および受信を行い、光信号処理回路120を介して、光学センサ110から塗膜106までの距離を計測する。ステップ302において、光信号処理回路120は、塗布前における光学センサ110から基材104までの距離と、塗布後における光学センサ110から塗膜106までの距離との差を比較して、塗膜106の膜厚を計算する。
【0018】
ステップ303において、ノズル制御回路130は、光信号処理回路120で得られた塗膜106の膜厚に関する情報を受信して、工程パラメータの調整または変更を行う。スリット式塗布工程の膜厚は、基材に対してフォトレジストを吐出するノズル114の移動速度、ノズル114と基材104との間隔dまたは、ノズル114の開口部114aから吐出されるフォトレジストの吐出量といった工程パラメータを変更することにより制御することができる。
【実施例2】
【0019】
図3は、本発明の実施例2である真空被覆装置を示す模式図である。この真空被覆装置は、真空チャンバ200の両側に、発光素子110aと受光素子110bとがそれぞれ設けられ、発光素子110aは、光学信号112aを出射し、受光素子110bは、薄膜204により反射された光学信号112bを受信する。
【0020】
光信号処理回路220は、発光素子110aおよび受光素子110bにより測定された信号を利用して、光学センサから薄膜204までの距離を計測し続ける。薄膜204の膜厚が所定の厚みに達すると、光学センサから薄膜204までの距離が所定値となる。そのため、工程制御回路230は、単純に時間を利用して薄膜204の膜厚を制御するのでなく、上述の所定値を利用したり膜厚を直接に計算したりして被覆工程の終点を決定する。
【0021】
上述の光信号処理回路220は、発光素子110aおよび受光素子110bのそれぞれに電気的に接続され、工程制御回路230は、光信号処理回路220および真空チャンバ200のそれぞれに電気的に接続される。
【0022】
被覆工程において、真空チャンバ200内の粒子が、発光素子110aおよび受光素子110b上に堆積されることを防ぐために、カバー部材206aおよびカバー部材206bを設けて、発光素子110aおよび受光素子110bを、その中に固定してもよい。
【0023】
図4は、本実施例の真空被覆工程の膜厚リアルタイム監視方法を示すフローチャートである。
【0024】
ステップ400において、発光素子110aは、光学信号112aを薄膜204へ向けて出射する。
【0025】
ステップ401において、受光素子110bは、薄膜204により反射された光学信号112bを受信する。ステップ404において、光信号処理回路220は、光学信号112aおよび光学信号112bを処理することにより、基材上に被覆された薄膜204の厚みを計測し続けるか、被覆された薄膜204の厚みと、光学センサから薄膜204までの距離との関係を定義する。
【0026】
ステップ406において、工程制御回路230は、光信号処理回路220からフィードバックされた薄膜204の膜厚に関する情報を受信し、薄膜204の膜厚が所定の厚みに達したときに、リアルタイムで工程を終了する。上述の方法は、例えば、各種の被覆装置(スパッタリング、蒸着、電気メッキ)および各種の塗膜装置(スプレー塗布、ローラ塗布、回転塗布、圧着塗布)など、各種の成膜装置に適用することができる。
【0027】
上述した実施例1、2から分かるように、本発明のスリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法およびその装置は、光学センサによりリアルタイムで膜厚を測定するとともに、膜厚およびその均一度をリアルタイムで制御することができる。
【0028】
本発明では好適な実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術に熟知するものなら誰でも、本発明の主旨と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1であるスリット式塗布装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施例1であるスリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2である真空被覆装置を示す模式図である。
【図4】本発明の実施例2である真空被覆工程の膜厚リアルタイム監視方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
100 スリット式塗布装置、102 基台、104 基材、106 塗膜、110 光学センサ、110a 発光素子、110b 受光素子、112a、112b 光学信号、114 スリット式塗布ノズル、114a 開口部、d ノズルと基材との間隔、120、220 光信号処理回路、130 ノズル制御回路、200 真空チャンバ、202 基材、204 薄膜、206a、206b カバー部材、230 工程制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学センサにより、光学信号の出射および受信を行って、基材に対する塗布処理を行う前に前記光学センサから前記基材表面までの距離を計測する第1のステップと、
前記光学センサにより、前記光学信号の出射および受信を行って、前記塗布処理を行う際に前記光学センサから前記基材表面に形成された塗膜までの距離を連続的に計測する第2のステップと、
前記光学センサから前記基材表面までの距離と、前記光学センサから前記基材上の前記塗膜までの距離とを比較して、前記塗膜の厚みを算出する第3のステップと、
前記第3のステップで算出された前記塗膜の厚みに関する情報に基づいて、前記塗膜の厚みをリアルタイムで制御する第4のステップとを含むことを特徴とするスリット式塗布方法。
【請求項2】
信号処理装置により、前記光学センサから前記基材表面までの距離と、前記光学センサから前記基材上の前記塗膜までの距離とを比較することを特徴とする請求項1に記載のスリット式塗布方法。
【請求項3】
工程制御装置により、前記塗膜の厚みをリアルタイムで制御することを特徴とする請求項1に記載のスリット式塗布方法。
【請求項4】
前記塗膜の厚みは、被塗布物を吐出するノズルの移動速度、前記ノズルと基板との間隔または被塗布物の吐出量を示す工程パラメータを変更することにより制御されることを特徴とする請求項3に記載のスリット式塗布方法。
【請求項5】
前記被塗布物がフォトレジストであることを特徴とする請求項4に記載のスリット式塗布方法。
【請求項6】
光学センサにより、光学信号の出射および受信を行って、基材に対する塗布処理を行う前に前記光学センサから前記基材表面までの距離を計測する第1のステップと、
前記光学センサにより、前記光学信号の出射および受信を行って、前記塗布処理を行う際に前記光学センサから前記基材表面に形成された塗膜までの距離を連続的に計測する第2のステップと、
前記光学センサから前記基材表面までの距離と、前記光学センサから前記基材表面の前記塗膜までの距離とを比較して、前記塗膜の厚みを算出する第3のステップとを含むことを特徴とするスリット式塗布工程の膜厚リアルタイム監視方法。
【請求項7】
基材が搭載される基台と、
該基台の上方に設けられ、前記基台上の前記基材に対して被塗布物を吐出するスリット式塗布ノズルと、
前記基台上の前記基材の方向に光学信号を出射する発光素子と、前記基材側で反射した前記光学信号を受信する受光素子とを有し、前記スリット式塗布ノズルの両側にそれぞれ設けられた第1および第2の光学センサと、
前記第1および第2の光学センサに電気的に接続され、前記各光学センサにより測定された前記光学信号を用いて前記基材上に形成された塗膜の厚みを連続的に計測する信号処理回路と、
該信号処理回路に電気的に接続され、前記信号処理回路で得られた前記塗膜の厚みデータに基づいて、前記塗膜の厚みをリアルタイムで制御するノズル制御ユニットとを有することを特徴とするスリット式塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−181566(P2006−181566A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37204(P2005−37204)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(504150380)アライド マテリアル テクノロジー コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】