説明

セラミック回路基板及び半導体発光モジュール

【課題】 ヒートショックに対する耐久性に優れ、接合強度が高く、微細な配線パターンが形成できるセラミック回路基板および半導体発光モジュールを提供する。
【解決手段】 セラミック回路基板10は、対向する第1面と第2面を有するセラミック基板12と、セラミック基板12の第1面に形成されたタングステン又はモリブデンを主成分とする配線導体14と、セラミック基板12の第2面に形成された銅層16を備え、銅層16は耐熱衝撃特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック回路基板及び半導体発光モジュールに関し、特に、例えば高出力の発光素子が搭載されるセラミック回路基板及び半導体発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック基板上に導電性層を設けたセラミック回路基板が広く使用されている。特に、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、アルミナとジルコニア等の化合物からなるセラミック焼結体からなるセラミック基板上に、銅、アルミニウム等の金属回路基板を設けたセラミック回路基板は、優れた電気絶縁性、放熱性および機械的強度を有していることから、例えばパワートランジスタ等の電子部品を実装したモジュール製品の実装基板として用いられている。
【0003】
セラミック基板と金属回路基板を接合する方法としていくつかの方法が知られている。セラミック基板と金属回路基板としての銅板の接合方法としては、例えば、セラミック基板と銅板を接触配置し、不活性雰囲気中にて1000℃程度の温度で加熱し、セラミック−銅板の接合基板を形成する方法が知られている。この接合法は酸素とセラミックとが共晶反応を起こし、セラミック基板と銅板とが直接接合される方法である。セラミック基板がアルミナのような酸化物系であれば容易に接合することができる。
【0004】
また、セラミック基板が非酸化物系の場合であっても、セラミック基板の表面に酸化膜等を設けることによりセラミック基板と銅板を接合することができる。
【0005】
また、他にも接合方法として、活性金属法が知られている。これはTi,Cu,Agなどの活性な金属の粉末に有機化合物等のバインダおよび溶媒を混合してなるペーストを、セラミック基板上にパターン印刷し、そのセラミック基板の上に銅回路板をパターンに沿って配置して、不活性雰囲気(Ar,N2ガス雰囲気等)または真空中で加熱接合する方法である。さらに、Mo−Mn法、硫化銅法、銅メタライズ法などが、セラミック基板と金属回路基板を接合する方法として知られている。
【0006】
セラミック回路基板の構造に関して、図1に示すように、セラミック回路基板1は、セラミック基板2と、セラミック基板2の両面に銅板またはアルミ板を直接接合法、活性金属接合法、ろう付け法の何れかを用いて接合して形成された金属回路基板3と、金属回路基板3上に融点が500〜780℃であるろう材から成るろう材層4を介して接合された金属端子5を備えている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−100848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常のLEDとして用いられる大きさにおいて、例えば、駆動電力1W以上でLEDを発光させた時に、セラミック基板の単体では、発生する熱を十分に放熱することができない。そのため、セラミック基板の下にヒートシンクのような放熱部が必要となる。放熱部とセラミック基板と接合または接触させて使用することで、LEDから発生する熱は効果的に放熱される。
【0008】
セラミック基板の下側に配置される放熱部として、銅やアルミニウム等の熱伝導率の高い部材が好ましく用いられる。これらの部材は低コストの金属部材であり、通常導電性も有している。
【0009】
セラミック基板はめっきパターンの引き回しなどによって、下側に放熱部だけでなく配線部を形成することができる。セラミック基板の下側に配線部を形成する場合、放熱部が銅やアルミニウムなどの金属部材であると、配線部が短絡するため直接回路を形成することができない。そのため絶縁膜を配線部と放熱部の間に挟んで配線部(回路層)を形成する必要がある。しかし、セラミック基板から放熱部までの熱経路の間に絶縁膜が存在すると、熱抵抗が上昇するため、好ましくない。
【0010】
特に、近年のLEDの大出力化に伴い、LEDから発生する熱量も多くなってきている。熱経路における低熱抵抗化は重要な課題である。セラミック基板の上側のみリード端子または外部接続用配線回路を設け、上側で導通をすることで、セラミック基板から放熱部までの熱経路に絶縁膜が不要となる。その結果、熱伝導率の高い放熱部に直接熱を伝達でき、熱経路において低熱抵抗化を実現できる。
【0011】
一方で、図1に示される構造は、直接接合などによってセラミック基板2上に接合した金属回路基板3の上にろう材からなるろう材層を介しリード端子(金属端子)を一体に接合した端子付きのセラミック回路基板である。図1に示す、銅板のような金属回路基板を貼り付ける方法では、例えば、配線と配線の間隔が100μmのような微細な配線パターンを作成することができない。
【0012】
微細な配線パターンを解決する方法としては、セラミック基板上にめっきによって銅の配線導体を形成する方法や、銅ペーストによって銅の配線導体を形成することが知られている。これらの方法で形成された銅の配線導体は銅板に比べて密ではない。そのため、一般的な銀系ろう材によって、リード端子と銅の配線導体をろう付けしようとすると、銅と銀が固溶してしまう場合がある。そのため、銅がセラミック基板との界面で剥がれてしまい、再現よく接合することが難しくなる。
【0013】
また、銀ろう付けは還元雰囲気中で接合を行なう必要がある。このとき銅の配線導体とセラミック基板との接合部が還元雰囲気に曝されてしまう。接合部が還元雰囲気に曝さらされると接合部が脆くなるので、銅による配線とセラミック間において満足できる接合強度を得ることができなかった。
【0014】
また、銀ろう付けではなく、リード端子と配線導体をAuSnのような半田で接合する方法が知られている。近年のLEDのハイパワー化に伴い、配線導体と発光素子をAuSnで接合することも行なわれている。通常、リード端子と発光素子は別々に配線導体に接続される。そのため、リード端子と発光素子を同じ半田で実装した場合、発光素子を接合するときの実装温度によってリード端子の半田接合の部分が軟化や組織変化を起こし、接合強度の信頼性を低下させるこおそれがあった。
【0015】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ヒートショックに対する耐久性を向上させることである。本発明の他の目的は、接合強度を高めることである。本発明さらに別の目的は、微細な配線パターンを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明のセラミック回路基板は、対向する第1面と第2面を有するセラミック基板と、前記セラミック基板の第1面に形成されたタングステン又はモリブデンを主成分とし、リード端子が銀ろう材を介して接合される接続領域を備えた配線導体と、前記セラミック基板の第2面に形成された銅層又は銅合金層を有することを特徴とする。
【0017】
前記目的を達成するために、本発明のセラミック回路基板は、対向する第1面と第2面を有するセラミック基板と、前記セラミック基板の第1面と前記セラミック基板の内部又は側面を通じて前記セラミック基板の第2面に形成されたタングステン又はモリブデンを主成分とした配線導体と、前記セラミック基板の第2面に形成された銅層又は銅合金層を有し、前記セラミック基板の第2面に形成された配線導体においてリード端子が銀ろう材を介して接合される接続領域を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明のセラミック回路基板において、銅層又は銅合金層の厚さは50μm〜100μmであることが好ましい。
【0019】
本発明のセラミック回路基板は、前記発明において、前記配線導体上に形成されたニッケルからなる被覆層と、前記被覆層上に銀系ろう材からなる接合材によって接合されたリード端子をさらに有することができる。
【0020】
本発明のセラミック回路基板は、前記発明において、前記セラミック基板と前記銅層又は前記銅合金層とが、直接接合法、活性金属接合法、Mo−Mn法、硫化銅法又は銅メタライズ法いずれかの方法で接合することができる。
【0021】
本発明のセラミック回路基板は、前記発明において、前記セラミック基板の第2面の銅層又は銅合金層に熱的に結合する放熱板をさらに備えることができる。
【0022】
本発明のセラミック回路基板は、前記発明において、前記放熱板と前記銅層又は前記銅合金層とが接合材で接合することができる。
【0023】
本発明のセラミック回路基板は、前記発明において、前記接合材を鉛フリー半田とすることができる。
【0024】
前記目的を達成するために、本発明の半導体発光モジュールは、上述のセラミック回路基板と、前記セラミック基板の第1面の配線導体に搭載された発光装置を備えている。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ヒートショックに対する耐久性に優れ、接合強度が高く、微細な配線パターンが形成できるセラミック回路基板および半導体発光モジュールを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。従って、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0027】
本発明の実施形態を図2に基づいて説明する。図2はセラミック回路基板上に半導体発光装置が搭載された半導体発光モジュールの断面図を示している。セラミック回路基板10は、セラミック基板12と、セラミック基板12の第1面に形成された配線導体14と、セラミック基板12の第1面と反対の第2面に形成された銅層16を備えている。
【0028】
セラミック基板2の第1面に形成される配線導体14はW(タングステン)又はMo(モリブデン)を主成分とする金属で形成される。配線導体14は所望のパターンとなるよう第1面上に形成され、全体として配線回路を構成する。配線導体14上に、ろう材26との濡れ性を確保するためNiめっきにより被覆層18が形成される。W又はMoの配線導体14は、印刷法により形成されるので、配線導体14間の間隔が75μm以下の微細な配線回路を実現できる。
【0029】
銅層16は、銅板のろう付け、直接貼り付け、銅めっき、銅ペーストの焼成などの方法によってセラミック基板12の第2面に形成される。
【0030】
放熱性のよいヒートシンク20が例えば鉛フリー半田等の接合材22で銅層16に接合される。銅層16は、セラミック回路基板10の放熱性、熱衝撃性を高めている。セラミック基板12の第2面に銅層16を形成することにより、銅層が延性を有するので熱膨張差を緩和することができ、放熱性、熱衝撃性が高められる。また、銅層は、銅箔の貼り付け等により密に形成するより、めっきやペースト等により粗に形成することが、熱衝撃性向上の観点からより好ましい。
【0031】
配線導体14はその一部がパッドとして使用される。コバールや合金(42アロイ)等からなるリード端子24がろう材26により配線導体14のリード端子用のパッドに接合される。リード端子24は、セラミック回路基板10における外部接続用の端子として設けられる。リード端子24は、銅や銅合金、鉄−ニッケル合金等の金属材料からなる。また、セラミック基板12とリード端子24の線膨張係数はできるだけ近い値であることが好ましい。リード端子24は第1面のWやMoからなる配線導体14に銀ろうなどのろう材26によりろう付けされる。
【0032】
発光装置28が配線導体14の発光装置用のパッドに、例えばAuSn接合やAuバンプを用いて接続される。この接合も放熱性を高める材料の選択が好ましい。発光装置28がセラミック基板12の配線導体14に接合され、半導体発光モジュール30が完成する。発光装置28は、LED素子のベアチップであっても良い。LED素子は、配線導体14にフリップチップにより接続されても良いし、ワイヤボンディングに接続されても良い。また、発光装置28は、LED素子がケースに収納されるパッケージタイプの発光装置でも良い。
【0033】
発光装置28は、求められる発光色に応じて蛍光体を備えることができる。例えば、白色光が求められる場合、青色発光のLED素子と、青色光に励起され黄色光を発光するYAG系あるいはシリケート系蛍光体を組み合わせて、各光を混色することで容易に白色光を得ることができる。
【0034】
本実施形態のセラミック回路基板においては、配線導体のリード端子をろう付けするパッド部の形成されている面と銅層の形成された面とが異なるため、銅層を還元雰囲気に晒さないでのろう付け工程を行ないやすいものとなっている。
【0035】
また、本実施形態のセラミック基板においては、リード端子をろう付けする側の配線導体にWまたはMoを使用しているため、配線導体、特にリード端子用のパッド領域に銅を使用していない。そのため、リード端子と配線導体との接続において、Niめっきのような一般的な被覆層を設けて高い接合強度を得ることができる。ここで、例えば、本実施形態のおけるWまたはMoの代わりに銅を用い、銅上にNiの被覆層を形成した場合には、リード端子の接続において十分な接合強度を得ることができない。このことは、銅がNiと300℃程度で合金を作ってしまうため、リード端子をろう付けする際の温度で銅とNiが固溶するためである。
【0036】
本発明の他の実施形態を図3に基づいて説明する。図3はセラミック回路基板10と半導体発光モジュール30の断面図を示している。上述の実施形態で説明した構成と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0037】
セラミック回路基板10は、セラミック基板12と、セラミック基板12の第2面に形成された銅層16、接合材22を介して銅層16に接合されるヒートシンク20を備えている。
【0038】
本実施形態におけるセラミック回路基板10では、配線導体14がセラミック基板12の第1面から側面を経由して第2面にも形成される。発光装置28は第1面の配線導体14に接合される。一方、リード端子24は、発光装置28の搭載面と反対の第2面の配線導体14のリード端子用のパッドにろう材26によりろう付け、接合される。
【0039】
発光装置28とリード端子24の接合面が異なるので、半導体発光モジュール30としての設計の自由度が向上する。一般的に、半導体発光モジュール30は他の部品又はモジュールと組み合わせて使用される。他の部品等の形状に合わせて半導体発光モジュール30のリード端子24の位置を変更できることが好ましい。
【0040】
銅層16は、第2面に形成される配線導体14と短絡しないよう離間して設けられる。銅層16に接合されるヒートシンク20は、配線導体14およびリード端子24に接触しないように段差20aを有している。銅層16とヒートシンク20の接合面積も小さくなる。放熱効果を大きくするため、ヒートシンク20はリード端子24と接触しない位置で横方向に広がり、全体として凸の形状を示す。
【0041】
この実施形態ではセラミック基板12の側面を経由して配線導体14が第1面から第2面に形成される例を示した。セラミック基板12にビアを形成し、そのビアに導電材料を充填し、第1面に形成された配線導体14と第2面に形成された配線導体14をセラミック基板の内部を経由して電気的に接続することもできる。
【0042】
次に、本発明に係るセラミック回路基板の製造方法について図4に基づいて説明する。
【0043】
図4(a)に示すように、窒化アルミニウムのセラミックグリーンシートの上面(第1面)にW(タングステン)ペーストが印刷され、配線回路となるパターンが形成される。リード端子用および発光装置搭載用のパッドが同時に形成される。セラミック基板を単層でなく積層基板とする場合には、セラミックグリーンシートにビアが形成され、ビア内にWペーストが充填される。
【0044】
Wペーストで配線回路が印刷されたセラミックグリーンシートが1000℃前後の高温で焼成される。焼成は還元雰囲気で行なわれる。焼成により、セラミックグリーンシートがセラミック基板12に、Wペーストが配線導体14となる。
【0045】
また、配線回路を形成する方法として、焼成されたセラミック基板に電解または無電解めっきにより配線回路となる配線導体を形成することもできる。
【0046】
図4(b)に示すように、セラミック基板12の下面(第2面)に、銅層16が形成される。銅層16の形成方法として、例えば、直接接合(ダイレクトボンディング)による方法がある。この形成方法は不活性雰囲気で接合する必要がある。(例えば特開昭61−236662)。接合温度はほぼ1000℃程度で、セラミックの焼成温度も低い温度が好ましい。
【0047】
また、Cuペーストをセラミック基板に塗布する方法で厚銅を形成しても良い。このCuペーストによる作成方法もまた不活性雰囲気、中性雰囲気(例えば窒素雰囲気)によって接合が行なわれる。接合温度は1000℃弱程度である、これによって、セラミック基板と銅層の界面で共晶反応によって酸化銅(CuOやCuOなど)が形成され、接合される。
【0048】
また、めっきによって銅層16を形成してもよい。銅は軟質鋼材であり、ヒートシンクなどの放熱部材と半田などで接合する場合に好ましい。
【0049】
次に、図4(c)に示すように、作製されたセラミック基板12の上面のWからなる配線導体14にろう材との濡れ性を確保するために、Niをめっきして配線導体14上にNiの被覆層18を形成し、W/Ni層とすることが好ましい。
【0050】
次に、図4(d)に示すように、リード端子24が、第2面に銅層16が形成されたセラミック基板12の第1面に上面のW/Niの2層からなる配線導体14のリード端子用のパッドにAg系ろう材26にて、ろう付けされる。ろう付け時の温度は800℃程度の温度である。これはセラミック基板12に銅層16が形成されるときの温度よりも低い温度である。
【0051】
一般的に、ろう付けは還元雰囲気で接合が行なわれる。しかし、還元雰囲気中にそのままセラミック基板12を配置すると、セラミック基板12と銅層16の接合面に問題が生じる場合がある。
【0052】
その理由は、セラミック基板12と銅層16が共晶反応によって酸化銅で接合されているため、還元雰囲気に曝されるとセラミック基板12と銅層16の界面にある酸化銅が還元反応によって脆くなってしまうためである。特に、Cuペーストにより形成した銅層16は粗な領域もあるため、界面において酸化銅がより還元反応を起こしやすく、完全に剥離する部分もあった。
【0053】
そこで、これを防止するため、リード端子24をろう付けする間、銅層16が形成されたセラミック基板12の第2面を還元雰囲気に曝さないよう保護する。第2面を還元雰囲気に曝されないよう保護することで、第2面に銅層16を形成するすることができる。例えば、第2面に銅層16を覆うカバー32を設けることで還元雰囲気に曝されないようにすることができる。リード端子24をろう付けする側は還元雰囲気に曝されてしまうため、還元雰囲気に影響を受けない配線導体14を設ける必要がある。本発明おいて第1面に形成されるW又はMoを主成分とする配線導体14はこの条件を満足する。
【0054】
次に、図4(e)に示すように、リード端子24や銅層16をNiやAuなどのめっきをし被覆層(不図示)を形成することが好ましい。被覆層により酸化腐食を防止することができる。発光装置28がAuSnなどの薄膜や半田を用いて300℃程度でセラミック基板12上の配線導体14に接合される。発光装置28がベアの発光素子であり同一面に電極を有する場合、フリップチップにてそのまま配線導体14に接合しても良い。また、その発光素子が上面と下面の両面に電極を持つ場合は、配線導体14と対向しない上面電極はAuワイヤなどの導電性ワイヤで配線導体14と接合される。発光素子は蛍光体を含んだ透明樹脂などで封止しても良い。リード端子24は放熱部の上に形成された回路基板などと半田等で接合させることによって、LEDに駆動電流を給電させることができる。
【0055】
発光装置28を配線導体14に接合した後、ヒートシンク20が、鉛フリー半田(例えば、SnAgCu、SnCuNiGe又はSnAgAl)等の接合材22で銅層16に接合される。半導体発光モジュール30が完成する。
【0056】
本発明の図2に基づいて説明した実施形態の構成を有する半導体発光モジュールと、比較例として作成した第2面に銅層の代わりにW又はMoからなる金属層を備える半導体発光モジュールに熱衝撃試験を行なった。
【0057】
比較例の半導体発光モジュールにおいて、第2面に銅層の代わりに形成したW又はMoからなる金属層に接合材(例えば、SnCuNiGe又はSnAgCu)を介して接合されたヒートシンクを備えている。
【0058】
その結果、ヒートショック(−40℃と120℃を交互に15分)を1000回繰り返した場合、本発明に係る半導体発光モジュールでは接合材として用いたSnCuNiGeにクラックは見られなかった。一方で、比較例として作成したW又はMoからなる金属層を備える半導体発光モジュールにおいては接合材として用いたSnCuNiGeにクラックが発生しているのが見られた。
【0059】
接合材をSnAgCuに変更して、同じ条件で行なっても本発明に係る半導体発光モジュールの接合材にクラックは発生しなかった。
【0060】
クラックの発生が接合材によるものでなく、セラミック基板の第2面に形成される金属層の違いであることが理解できる。
【0061】
以上のように、セラミック基板の第1面の配線導体をW/NiやW/Ni/Au層とし、第2面を銅層とすることで、銀系ろう付けによるリード端子の接合性を確保し、放熱、熱衝撃に対して好ましい軟質金属を形成させることができる。リード端子付きセラミック基板として好ましいものを提供することができる。
【0062】
次に、本発明の他の実施形態を図5に基づいて説明する。セラミック基板12は第1面に導体配線(不図示)を備えており、導体配線にはリード端子24と銀ろう材により接合される接続領域がセラミック基板12の両端部に形成されている。複数のセラミック基板12が、図5に示すように、接続領域を有しない辺同士が対向するように略直線状に配列される。複数のリード端子24をタイバー部42で連結したリードフレーム40が、複数のセラミック基板12の接続領域に対し、一括で銀ろう材により接合される。このようにリードフレームタイプとすることにより、作業性、生産性を向上させることができる。
【0063】
セラミック基板の上面と下面の金属の種類を変えることによってリード端子の接合強度を高める。また、下面に銅層を配置することによって、熱衝撃に対する信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来のセラミック回路基板を示す断面図。
【図2】本発明に係る実施形態を示す断面図。
【図3】本発明に係る他の実施形態を示す断面図。
【図4】本発明に係る半導体モジュールの製造方法を説明するフロー図
【図5】本発明に係る別の他の実施形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0065】
10…セラミック回路基板、12…セラミック基板、14…配線導体、16…銅層、18…被覆層、20…ヒートシンク、22…接合材、24…リード端子、26…ろう材、28…発光装置、30…半導体発光モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1面と第2面を有するセラミック基板と、
前記セラミック基板の第1面に形成されたタングステン又はモリブデンを主成分とし、リード端子が銀ろう材を介して接合される接続領域を備えた配線導体と、
前記セラミック基板の第2面に形成された銅層又は銅合金層を有することを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項2】
対向する第1面と第2面を有するセラミック基板と、
前記セラミック基板の第1面と前記セラミック基板の内部又は側面を通じて前記セラミック基板の第2面に形成されたタングステン又はモリブデンを主成分とした配線導体と、
前記セラミック基板の第2面に形成された銅層又は銅合金層を有し、
前記セラミック基板の第2面に形成された配線導体においてリード端子が銀ろう材を介して接合される接続領域を備えていることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項3】
前記配線導体上に形成されたニッケルからなる被覆層と、前記被覆層上に銀系ろう材からなる接合材によって接合されたリード端子をさらに有することを特徴とする請求項1又は2記載のセラミック回路基板。
【請求項4】
前記セラミック基板と前記銅層又は前記銅合金層とが、直接接合法、活性金属接合法、Mo−Mn法、硫化銅法又は銅メタライズ法いずれかの方法で接合されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1記載のセラミック回路基板。
【請求項5】
前記セラミック基板の第2面の銅層又は銅合金層に熱的に結合する放熱板をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1記載の記載のセラミック回路基板。
【請求項6】
前記放熱板と前記銅層又は前記銅合金層とが接合材で接合していることを特徴とする請求項5記載のセラミック回路基板。
【請求項7】
前記接合材が鉛フリー半田であることを特徴とする請求項6記載のセラミック回路基板。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1記載のセラミック回路基板と、前記セラミック基板の第1面の配線導体に搭載された発光装置を備える半導体発光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−147210(P2009−147210A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324728(P2007−324728)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】