センサシステム用半導体装置
【課題】小型軽量で電池交換不要なセンサシステム用半導体装置を提供する。
【解決手段】センサ(TD1,AS1,PD1,GS1)、A/D変換回路(AD1)、マイクロプロセッサ(CPU1)、メモリ(MEM1)、送信回路(RF1)、及び、電力発生装置(CM1)を備えたセンサチップ(SCHIP1)を構成する。センサ、A/D変換回路、マイクロプロセッサ、メモリ、及び、送信回路は、一方の基板面(SIDE1)上に形成し、また、電力発生装置は、前記基板面とは逆の基板面(SIDE2)上に形成する。
【解決手段】センサ(TD1,AS1,PD1,GS1)、A/D変換回路(AD1)、マイクロプロセッサ(CPU1)、メモリ(MEM1)、送信回路(RF1)、及び、電力発生装置(CM1)を備えたセンサチップ(SCHIP1)を構成する。センサ、A/D変換回路、マイクロプロセッサ、メモリ、及び、送信回路は、一方の基板面(SIDE1)上に形成し、また、電力発生装置は、前記基板面とは逆の基板面(SIDE2)上に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム用半導体装置に関し、特に、小型・軽量で電池交換不要なセンサシステム用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりにより、個人が手軽に体調その他をチェックできる健康管理機器(Personal Vital Assistant(以下、「PVA」という。))への注目が急速に高まりつつある。このPVAの基本的な機能は、従来からある高価な医療用測定機器と同じである。しかし、高価な医療用機器と違い、一般ユーザでも購入できる程度に安価で構成されることが望まれる。また、心臓病などの生活習慣病では、継続的に体温や脈拍や血圧など体調を把握することが重要である。このため、PVA機器では、ユーザがいつでも簡単に自分の体調を測定できるようにすることが必要である。具体的には、持ち運びができる程度に小型・軽量化する必要がある。このため、小型のボードに作成されたPVA機器が開発されている。
【0003】
例えば、特開2001−327472号公報(以下、「特許文献1」という。)、及び、特開2001−344352号公報(以下、「特許文献2」という。)では、GSR(Galvanic Skin Reflex:皮膚電気反射)、加速度、体温、脈拍センサ等のセンサを搭載したセンサボードと、Bluetooth等の小電力無線インタフェースにより、上記センサボードと通信を行ってセンサ情報を収集して、ユーザの体調等を分析するメインボードから構成されたPVA機器が紹介されている。センサボードには、センサの他に、CPU、メモリ、A/D変換器、小電力無線インタフェース、増幅器、及び、小型電池が搭載されており、上記センサの種類毎に専用のボードが用意されている。センサボード内でセンサからの情報(アナログ量)を適当なレベルにまで増幅した後に、A/D変換を行って、ディジタル量に変換した後、CPUにより適切な形式に加工された後に、小電力無線インタフェースチップ経由でメインモジュールに送信される。
【0004】
上記センサのうち、GSR電極により、電極経由で検知された皮膚の電気インピーダンスの変化具合が検知可能であり、ユーザの心理状態(怒っている等)が把握できる。また、脈拍センサからは、ユーザの脈拍を検知できる他に、血液中の酸素飽和度も測定可能である。さらに、血糖値等も推定することが可能であり、ユーザの健康状態が把握できる。また、脈拍の間隔からユーザの心理状態もある程度推定可能である。なお、脈拍センサは、赤外/赤色LEDと半導体フォトダイオードの組み合わせで構成される。一方、加速度センサは、3軸方向の加速度センサから構成され、ユーザの姿勢や動き等が推定できる。小電力無線インタフェース経由により、診断結果等を、小電力無線インタフェース内蔵の腕時計、ヘッドセット、携帯電話等に送信して、ユーザに通知することが可能である。
【0005】
一方、半導体プロセスの微細化に伴い、簡単なRF回路、低機能のCPU、及び、低容量のメモリ(不揮発メモリ等)を、数mm平方以下の半導体集積回路に集積したRFIDチップが、日経エレクトロニクス2002年2月25日号、pp.112〜pp.137(以下、「非特許文献1」という。)に開示されている。非特許文献1には、RFIDチップがチップ内の不揮発メモリに固有のIDを書き込み、そのIDをRFリーダ経由で外部に読み出して、バーコード等と同様に商品等の識別タグとして利用できる旨が開示されている。RFIDリーダーからIDを読み取る場合には、高周波をRFIDチップに照射し、RFIDチップに接続されたコイルとコンデンサから構成されたLC共振回路のQ値の変化を検出することにより、非接触で実現される。
RFIDチップには、単なるID以外に、商品についての情報等を不揮発メモリに書き込むことも可能である。例えば、特開2001−187611号公報(以下、「特許文献3」という。)には、食品(例えば、ビール樽等。)流通管理システムへの応用例が開示されている。特許文献3では、RFIDチップ、センサボード、及び、小型電池から構成されたセンサ付きIDタグをビール樽に埋め込んで、センサボードで読み取られたビール樽の温度を随時RFIDチップ内の不揮発メモリに書き込んで蓄積する。最終的に、ユーザに届けられた際に、ユーザ側でRFリーダにて流通時の温度情報を読み出す。このような構成により、不適切な温度条件で放置されていなかったか等の情報を電子的に記録し、その記録情報を読み出すことができる。
一方、特開2002−58648号公報(以下、「特許文献4」という。)には、RFIDチップを位置検出に応用した例が開示されている。この例では、マウス等の実験用小動物にRFIDチップを付ける。同時に、マウスの飼育箱を升目状の細かいエリアに区切り、エリア毎にRFIDリーダーを複数配置する。複数のRFIDリーダーのうち、どのRFIDリーダーで読み取られたかを記録することにより、マウスの動きを検出する。さらに、RFIDチップのID情報を活用することにより、個々のマウスを判別することが可能である。このような構成により、どのマウスがどのように活動しているのかを把握することができる。
【0006】
また、このような小型の半導体チップを体内に埋め込んで、ユーザの補助に役立てようという試みも提案されている。例えば、特開平5−293128号公報(以下、「特許文献5」という。)には、小型チップを発声器官に埋め込み、発声器官の振動を検知して、RFにて外部の擬似音声発生装置に送信して、ユーザの発声を代行するというアイデアが開示されている。上記チップを、咽頭、喉頭、気道、顔面、口腔、鼻腔等の複数箇所に埋め込み、チップ内の振動センサにより各部の振動を検知して、擬似音声発生装置にてユーザが発語したい音声を分析することが実現される。何らかの障害により、発声器官を損傷したユーザの補助に役立てることが可能となる。
【0007】
なお、IEEE Computer July 2000、pp.42〜48(以下、「非特許文献2」という。)には、床、壁、人体等は微小ながらも常に振動しており、通常、〜mW/cm3のエネルギー密度を有している旨が開示されている。
【0008】
IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATUION SYSTEMS、VOL.9、NO.1、FEBRUARY 2001、pp.64〜pp.75(以下、「非特許文献3」という。)には、電力回収回路の構成が開示されている。
【0009】
EDN Japan、2002.5号、pp.55〜pp.61(以下、「非特許文献4」という。)には、MEMSプロセスによって形成された高周波スイッチが開示されている。
【0010】
日経エレクトロニクス2002年3月11日号、pp.55〜pp.66(以下、「非特許文献5」という。)には、超広帯域無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)について開示されている。また、非特許文献5には、UWBにおけるデータ受信の際には、受信機のパルスジェネレータから供給されるパルス列と受信したパルス列との相関をとる相関器が必要となる旨が開示されている。
【0011】
IEEE Proc. Circuits Devices Syst.,Vol.148、No.6、 Decemeber 2001(以下、「非特許文献6」という。)には、電磁誘導を利用して発電を行う発電機が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2001−327472号公報
【特許文献2】特開2001−344352号公報
【特許文献3】特開2001−187611号公報
【特許文献4】特開2002−58648号公報
【特許文献5】特開平5−293128号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス2002年2月25日号、pp.112〜pp.137
【非特許文献2】IEEE Computer July 2000、pp.42〜48
【非特許文献3】IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATUION SYSTEMS、VOL.9、NO.1、FEBRUARY 2001、pp.64〜pp.75
【非特許文献4】EDN Japan、2002.5号、pp.55〜pp.61
【非特許文献5】日経エレクトロニクス2002年3月11日号、pp.55〜pp.66
【非特許文献6】IEEE Proc. Circuits Devices Syst.,Vol.148、No.6、 Decemeber 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び2に開示されているPVA機器は、汎用のCPUとセンサを組み合わせたボードでPVA機器を構成しているため、高価な医療機器を使わなくても手軽に健康管理ができるようになる。しかし、このようなPVA機器では、センサボードとメインボードそれぞれに電池が必要であり、ある程度以上の重量(〜数100グラム)になってしまう。また、複数の半導体集積回路その他の部品をボード上にアセンブルして構成するため、ある程度以上の大きさ(〜カードサイズ)が必要である。このため、長時間使用するには、ユーザの身体に与える負担が大きい。また、電池を電源としているため、電池交換の手間が必要である。さらに、各々のセンサボードとメインボード間は、小電力無線インタフェースにより無線接続されているが、センサとセンサボード間は通常のワイヤで接続されているため、使い勝手及び耐久性の面でやや問題がある。
【0014】
一方、非特許文献1に開示されているRFIDチップは、電池が不要であるとともに小型でもある。このため、マウス等の小動物から人間や食品等の商品に至るまで、数多くのものに装着可能である。しかし、従来の技術で説明したとおり、LC共振回路のQ値をコントロールすることによりRFIDリーダーに信号を送信するため、外部のインダクタLに、使用するRF信号の波長(=1/周波数)に応じた大きさのものが必要となる。また、独自の電源を持たないため、動作可能時は、RFIDリーダーでRF信号を照射された時のみである。このため、PVA機器に必要とされるように長時間に渡ってユーザの生体情報(体温、脈拍等)を検知する用途には適さない。
【0015】
また、特許文献3に開示されているビール樽向けRFIDタグは、長時間の使用を可能とするために、小型電池とともに使用されるものである。しかしこの結果、RFIDチップの大きさはボードサイズとなってしまい、RFIDチップの「小型軽量でどこにでもタグとしてつけられる」という特徴が犠牲にされている。
【0016】
特許文献4では、マウスの動きの検出にRFIDチップを利用しているが、升目毎に配置したRFIDリーダーから常時RF信号を送信し続ける必要がある。RFIDリーダーから送信されるRF信号は、数100mW程度であり、全体を合わせるとかなりの電力になり、低消費電力化を図るのは困難である。
【0017】
特許文献5には、小型の半導体チップを人体に埋め込んで発声器官の代用をさせようとするアイデアが開示されている。しかし、半導体チップを埋め込む際には人体の切除が必須となるため、ユーザへの身体的負担及び心理的負担は大きいものと考えられる。また、特許文献5には、埋め込む半導体チップの具体的な構成、特に、電池を埋め込まない場合に半導体チップの電源をどうするのかという点について、全く開示されていない。
【0018】
本発明の目的は、発電機等を内蔵し長時間動作可能で、無線信号により外部機器に検知データを送信できる、小型・軽量のセンサシステム用半導体装置を提供することである。
【0019】
さらに、本発明の他の目的は、上記センサシステム用半導体装置を用いた、小型の健康管理機器、動き検出装置、食品流通管理装置、及び、家電等の機器の制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の代表的なものは下記のとおりである。すなわち、計測の対象となる物理量を検知するセンサと、前記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路と、前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサと、前記センサにより得た情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサにより処理した信号を外部へ送信する送信回路と、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、及び、前記送信回路に、電力を供給するための電力発生装置とを有する半導体装置である。
【0021】
また、本発明の他の代表的なものは、温度センサ、加速度センサ、及び、赤色/赤外光センサを有するセンサと、前記センサからの信号を増幅してディジタル量に変換するA/D変換回路と、前記センサから情報を取り出して、該情報を加工するマイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサのプログラムコード、及び、前記センサからの前記情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサに制御され、外部との通信を行う送信回路と、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、及び、前記送信回路の各回路に、電源を供給するか否かを制御する電源制御回路と、力学振動による可変容量コンデンサの静電エネルギーの増加分を回収して電気エネルギーに変換する電力回収回路とを有し、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、前記送受信回路、及び、前記電源制御回路は、一つの半導体基板の上に形成されている半導体装置である。
【0022】
また、本発明のもう一つの代表的なものは、マイクロプロセッサと、情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサと外部との通信を行う送受信回路とが一つの半導体基板の上に形成されている半導体装置であって、前記半導体装置は、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、及び、前記送受信回路に電力を供給するための電力発生装置を有し、前記半導体装置は、第1外部から第1データを受信し、受信した該第1データを処理して第2データへ変換し、該第1外部とは異なる第2外部へ向けて、該第2データを送信する機能を有する半導体装置である。
【発明の効果】
【0023】
センサ、マイクロプロセッサ、メモリ、送信回路、及び、電力発生装置を備えた本発明の構成を採用することにより、長時間の継続使用が可能で、小型軽量なセンサシステム用半導体装置を提供することができる。
【0024】
また、このセンサシステム用半導体装置は小型軽量であり、電池交換にも煩わされないため、長時間の装着が要求される健康機器等に適して用いられる。
【0025】
また、電子ロボット玩具に自分の感情を伝えられる装置、操作者の意図を手振り等で家電機器等に伝達可能なリモコン装置、スポーツ競技の記録装置、または、食品の流通経路での温度状況を監視する記録装置等に応用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例につき、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図において、同一符号は同一または類似部分を示すものである。
(実施例1)
センサシステム用半導体装置すなわちセンサチップの構成の一実施例を図1(a)、(b)に示す。図1(a)には、センサチップの一方の主面を、また、図1(b)には、図1(a)とは逆の主面を示している。センサチップ(SCHIP1)は、第1の半導体集積回路(CHIP1)、第2の半導体集積回路(CHIP2)、発光ダイオード(LED)チップ(LED1)、コンデンサ(C1、C2、C3)、インダクタ(L1)、及び、これらを搭載するための基板(BO1)から構成される。このうち、基板(BO1)には、これらのチップ間を結線するための配線パターン、後述する高周波送受信回路で使用するアンテナ(ANT1〜4)パターン、及び、後述するセンサ回路(GS1)で使用する電極(GSR1〜4)パターン等が、銅あるいは金等の金属で描かれている。これらについては、通常、MCP(Multi Chip Package)チップとして用いられているのと同様のもので構成されている。
【0027】
センサチップの断面図を図2(a)、(b)に示す。図2に示されるように、第1の半導体集積回路(CHIP1)、及び、第2の半導体集積回路(CHIP2)は、本発明に特有な配置で基板(BO1)に搭載されている。すなわち、CHIP1、CHIP2は、基板上の同一面ではなく、それぞれ、第1の基版面(SIDE1)、及び、第2の基版面(SIDE2)に搭載されている。また、図2に示すように、これらの半導体集積回路チップ、コンデンサ、インダクタ、及び、基板は、防水樹脂(MO1)でモールドされており耐水性である。これらのモールドは、通常のMCPと同様のものが使用可能であるが、CHIP1の上面に、赤色/赤外光を透過する材質のモールド材により、本発明に特有な光学窓(PWIN1)を設置する点に特徴がある。より詳細には、この光学窓(PWIN1)は、基板MO1上に搭載されたLED1及びCHIP1上の専用の光学センサ上に設置される。これは、後述するように、LED1が発生する、赤色あるいは赤外光を外部に向けて照射し、CHIP1に設けられた専用の光学センサにより、反射光等を検知できるようにするためである。
【0028】
また、図2(a)に示すように、コンデンサ(C1、C2、C3)及び、インダクタ(L1)には、通常のMCPチップで使用されているものと同様のチップ形態のものが使用可能である。なお、コンデンサについては、図2(b)に示すように、基板を多層基板で形成して、そのうちのいくつかの層をペアで使用する、積層コンデンサ(C1A、C2A、C3A)で構成することも可能である。
【0029】
これらの半導体集積回路(CHIP1、CHIP2)を用いたセンサチップ(SCHIP1)を使用することにより、小型・軽量の携帯型健康管理機器を実現することができる。センサチップを健康管理機器へ応用した一例を図3に示す。この実施例では、センサチップは、ばんそうこう等のシール(BA1)により、ユーザ(US1)の皮膚等(SKIN1)に装着するように構成されている。センサチップのSIDE1面を、ユーザの皮膚等に接触させるように装着する。このように装着することで、後述する各種センサにより、ユーザの体調または健康状態を検知することが可能となる。なお、この実施例ではばんそうこう等のシールBA1により装着しているが、皮膚等に接触させることができれば、必ずしもこれに限られない。例えば、腕時計の裏側にセンサチップを装着することによっても、実現可能である。
【0030】
検知されたデータは、第1の半導体集積回路CHIP1上にある、マイクロプロセッサCPU1、及び、高周波送信回路RF1を経由して、無線(WL1)により外部の健康モニタ(MONITOR1)等に送信される。第1の半導体集積回路(CHIP1)は、マイクロプロセッサ(CPU1)、メモリ(MEM1)、外部との通信を行う高周波送受信回路(RF1)、基板(BO1)上に設けられたアンテナ(ANT1〜4)の送受信等を切り替える高周波スイッチ(RW1)、温度センサ(TD1)、加速度センサ(AS1)、赤外/赤色光センサ(PD1)、インピーダンスセンサ(GS1)等で構成されるセンサ回路、センサからの信号を増幅してディジタル量に変換するA/D変換回路(AD1)、基板上に搭載された発光ダイオード(LED1)を駆動するドライバ(LD1)、上記CPU1、MEM1、RF1、RW1、TD1、AS1、PD1、GS1への電源供給を制御する電源制御回路(PC1)、PC1のオン/オフを制御するタイマ回路(TM1)、及び、コンデンサC1に蓄積された電荷量を監視する電荷監視回路(CW1)から構成される。
【0031】
マイクロプロセッサCPU1は、メモリMEM1上に格納されたプログラム(PR1)に従って、チップ上の各回路の動作モードを設定して制御して、各センサを駆動して検知を行う。また、後述するように、検知されたデータを圧縮する、または、ID情報を付加する等の加工を行った後に、上記高周波送信回路RF1経由で、無線にて外部に送信する。さらに、RF1内蔵の受信回路により、外部からの指令、例えば、マイクロプロセッサCPU1における動作モードのパラメータの設定変更が可能である。また、プログラムPR1に適切なプログラムコードを付加することにより、任意の処理を追加することが可能である。
【0032】
メモリMEM1は、プログラムPR1の以外にも、例えば、センサからの取得データや、マイクロプロセッサCPU1における動作モードのパラメータ等の情報を保持する。メモリMEM1は、典型的には、低消費電力でデータ保持可能なSRAMや、電源供給オフ時でもメモリ内容が保持されるNOR型あるいはAND型等のフラッシュメモリ等で構成される。しかし、低消費電力でメモリ内容が保持できれば、他のタイプのメモリも使用可能である。
【0033】
第2の半導体集積回路(CHIP2)は、微弱な外部振動を電気エネルギーに変換する小型の発電チップである。非特許文献2に開示されているように、床、壁、人体等の外部振動エネルギーを利用すれば、0.1mW程度の発電が可能となる。以下、本発明の発電チップの動作を具体的に説明す場合の、電圧V(V0→V1)と静電エネルギる。
【0034】
発電チップCHIP2は、外部の振動により静電容量が変化する可変容量コンデンサ(CM1)、及び、電力回収回路(PC2)から構成される。電力回収回路PC2は、可変容量コンデンサCM1により外部振動の力学エネルギーから変換された電気エネルギーを回収して、基板上のコンデンサ(C3)を充電するように機能する。可変容量コンデンサCM1は、通常、MEMSプロセスによりシリコンチップ上に微細構造で構成される。具体的には、図1(b)に示すように、2つの固定電極(ST1、ST2)及び、可動電極(VT1)から構成される。このうち、可動電極(VT1)はアンカー(PN1〜4)以外のどこにも固定されておらず、CHIP2上に浮いている。このため、CHIP2がある加速度を持って振動等の運動をすると、これにより発生する慣性力により、2つの固定電極(ST1、ST2)間を振動する。この振動により、これらの電極間の距離が変わり、静電容量が変化する。
【0035】
図4に示すのは、可変容量コンデンサ(CM1)の電荷Qを一定のQ1にして、外部振動によりCM1の静電容量がC1→C2(C2<C1)と変化したー(E1→E2)の変化を示す図である。このように、外部振動により静電容量が変化する結果、蓄えられる静電エネルギーが増加する(ΔE=E2−E1)。そして、この静電エネルギーの増加分ΔEを回収することにより、小型発電機としての機能を発揮する。
【0036】
CHIP2に形成する電力回収回路の一実施例を図5に示す。この回路は、非特許文献3に開示されているものと同様の構成をしている。可変容量コンデンサCM1の他に、コンデンサC2、C3、インダクタL1、PMOSトランジスタTP1、NMOSトランジスタTN1、及び、これらのトランジスタのオン/オフのタイミングを制御するドライブ回路(PDR1)から構成される。ドライブ回路PDR1は、外部振動による可変容量CM1の静電容量の変化に応じて、図6に示すタイミング(T1〜T5)で、TN1及び、TP1のオン/オフを制御する。電力回収回路の動作は本発明の特徴部分ではないため、ここでは説明を省略する。発生した電力については、最終的には、コンデンサC3、ダイオードD3を経てVDD1ラインに供給され、第1の半導体集積回路CHIP1の電源制御回路PC1に接続されたコンデンサC1に充電される。なお、CM1に元となる電荷を供給するコンデンサC2には初期電荷を与える必要がある。この目的で、本発明のセンサチップにおいては、コンデンサC2の充電をアンテナ(ANT1〜4)及び、整流器(D2)を経由して、RFIDリーダー等により外部から誘導された高周波電力により非接触で充電を行う。
【0037】
可変容量コンデンサCM1は、半導体プロセスとコンパチブルなMEMSプロセスで作成可能である。このため、1つの半導体集積回路に混載することも可能である。しかし、図4に示されるように、取り出される電気エネルギーは、コンデンサCM1の静電容量(最大容量C2と最小容量C1の差)、及び、初期電荷Qの2つの値に依存する。すなわち、コンデンサCM1の静電容量が大きいほど、また、初期電荷Qが大きいほど、大きな電気エネルギーを取り出すことができる。このため、静電容量は大きいものの方が好適であり、通常、数100pF程度のものが必要とされる。静電容量を大きくするには、図1に示すCM1の面積を大きくするほかに、櫛状に形成された電極間の溝の深さを深くする必要がある。このため、1cm×1cm×0.5mm(深さ)程度のサイズのものが必要とされる。
【0038】
なお、この溝はエッチングにより形成されるが、通常の半導体集積回路では、0.5mmエッチングは必要とされない。しかし、発電効率の点から考えると、溝は深ければ深いほど、より好ましい。一方、半導体集積回路を作成する際のコストを考えると、コンデンサCM1の面積は小さければ小さいほうがより好ましい。また、エッチングで削る溝も、それほど深くないほうがより好ましい。
【0039】
この相反する問題を解決するため、本発明のセンサチップでは、図1に示すように、可変容量コンデンサCM1及び、発電制御回路と、それ以外の回路を別々の半導体集積回路で構成する。このような2チップ構成により、それぞれのチップに特化した専用プロセスにて作成することが可能となり、溝の深さも任意に形成できる。さらに、本発明に特有な構成として、これらのチップを、MCP構成で基板の裏表両面(SIDE1、SIDE2)に搭載する。このような構成により、可変容量コンデンサCM1の面積を、センサチップと同程度のサイズにまで大きくできるため、大容量のものが実現可能となる。さらに、図1に示すように、基板BO1の他のエリアに電力回収回路として必須となる、コンデンサ(C2、C3)、インダクタ(L1)、また、センサ回路で必要になるLEDチップ、GSR電極、さらに、高周波送受信回路で必要となるアンテナ等を、基板上に搭載するか、または、配線パターンとして形成できる。つまり、本発明に特有な図1の構成により、ほぼチップサイズの大きさ(〜1cm角以下)に、発電機、センサ、CPU、RFを集積したセンサシステムが実現可能となる。この結果、自律的なセンサシステムを実現することができる。
【0040】
以上のように、本発明のセンサチップにおいては、自律的に電源を得ることが可能である。しかし、従来の技術では、1cm角程度のサイズでは、発電電力は0.1mW程度に限られている。一方、CMOSプロセスで作成された半導体集積回路では、マイクロプロセッサ、メモリ(特にSRAM)は、クロック周波数を100KHz程度に下げることにより、消費電力を数10μWのオーダにまで押さえることが可能である。本実施例の場合、マイクロプロセッサが受け持つ一番重い処理は、データの圧縮、程度の作業であり、100KHz程度のクロック周波数でも十分処理可能である(例えば、クロック周波数100KHzならば、1秒間に10万サイクル命令を実行可能。1m秒間でも、100サイクル命令を実行可能である)。このため、上記発電チップにより電源を供給してプロセッサ、メモリその他を動作させることが可能である。
【0041】
しかし、高周波により無線で外部と通信を行うには、例えば、低消費電力と言われている、Bluetooth等の小電力無線インタフェースでも、1mW程度のRF出力が必要とされている。実際には、供給電力をRFに変換するRFパワー付加効率が50%程度であるので、数mW程度の電力が必要になるものと予想される。このため、従来から、より低消費電力な無線方式が提案されているが、1mW程度の供給電力が必要とされている。このように、RF部分が電力を最も必要としており、上記発電チップからの微小電力そのままでは、高周波により外部と通信を行うのは困難である。
【0042】
この問題を解決するために、本発明では、コンデンサC1、タイマTM1、スイッチトランジスタTP2、電荷監視回路CW1、及び、電源制御回路PC1から構成された低消費電力動作方式を用いる。すなわち、CHIP1の各回路には常時通電せず、その代わりにコンデンサC1に発電電力を蓄える。タイマTM1により設定された時間間隔が経過したと判断された場合、あるいは、電荷監視回路CW1が十分な電力が蓄えられたと判断した場合のみに、電源制御回路PC1内のスイッチトランジスタを導通させ、他の回路に電力を供給する。つまり、間欠的に検知動作あるいは外部との通信を行う。この超低消費電力動作方式をより具体的に示したのが、図7に示す動作フローチャートである。
【0043】
図7に示されるように、CPU1は常時スリープ状態P110にある。タイマTM1あるいは電荷監視回路CW1からの割り込みによりP120以降の動作状態に遷移する。動作状態においては、メモリMEM1に格納されたプログラムあるいは動作パラメータに従って以降の動作を決定する。例えば、動作パラメータがデータの検知ならば、データセンスルーチンP200を呼び出し、センサ駆動/サブルーチンP210、データ取り出し/加工(圧縮等)サブルーチンP220、データ書き込みサブルーチンP230を順次実行し、センサからデータを取得し、メモリにデータを書き込む。一方、動作パラメータがデータ送信の場合には、データ送信ルーチンP300を呼び出し、データ読み出しサブルーチンP310、識別子生成サブルーチンP320、パケット生成サブルーチンP330、圧縮/変調サブルーチンP340、パケット送信サブルーチンP350を順次実行し、データを送信する。
【0044】
検知データは、図8(a)に示すように、識別子(PS1)+データ(PD1)から構成されたパケット(SPAT1)形式で送信される。このように、送信データに識別子を付加することにより、例えば、本発明のセンサチップが、複数同時に使用された場合においても、外部機器、例えば、図3のMONITOR1側で、どのセンサチップから来たデータなのか判別が可能になる。識別子PS1には、例えば、半導体集積回路CHIP1の出荷時において、メモリMEM1の不揮発メモリ部分に書き込まれた固有のID等チップ固有の情報を使用できる。さらに、図8(b)に示されるように、識別子PS1の他にも、例えば、この情報がセンサチップのどのセンサからの情報なのかの識別情報(センサ種別、PS2)を付加することも可能である。
【0045】
また、動作モード設定ルーチンP120においては、この他にも、電荷監視回路CW1の充電状態を記録したレジスタCR1の読み出しや、あるいは、タイマTM1の時間間隔設定レジスタTR1の書き込みを行う。このようにすることにより、発電チップCHIP2の状況に合わせた動作設定が可能である。
【0046】
図9に示すのは、上記電源制御において使用する、本発明に特有な電源制御回路PC1、電荷監視回路CW1、及び、タイマTM1の構成である。この図に示すように、電源制御回路PC1は、制御論理回路PCC1、スイッチトランジスタTP2から構成される。電荷監視回路CW1あるいはタイマTM1からの信号EP1及び、EP2がローレベルの場合のみ、制御論理PCC1の出力がローレベルとなり、スイッチトランジスタTP2が導通状態となり、VDD2ラインに電源が供給される。その結果、VDD2から電源を供給されている、メモリMEM1、高周波送受信回路RF1、A/D変換回路AD1、センサその他の回路が起動する。
【0047】
電荷監視回路CW1は、典型的には、抵抗R1、R2、基準電圧発生回路VREF1、及び、電圧比較回路COMP1で構成される。電圧比較回路COMP1により、以下の式で与えられるしきい値電圧Vt1と比較し、VDD1>Vt1の場合に、出力EP1をローレベル(=GNDレベル)にプルダウンする。
【0048】
【数1】
【0049】
この基準電圧VR0の電圧値は、バスインタフェースVCNT1経由で、CPU1から変更することも可能である。なお、VREF1、COMP1については、常時給電されるため、例えば、抵抗R1、R2には、高抵抗(数10MΩ以上)等で設計すること等が必要である。これらについては、CMOSプロセスで形成されるのが一般的である。
【0050】
タイマTM1は、発振回路OSC1、プリセットカウンタCOUNT1、COUNT1のプリセット値を保持するレジスタREG1、電荷監視回路CW1が規定電圧になるまでのカウント値を保持するレジスタREG2、及び、CPU1とのバスインタフェースTIF1で構成される。プリセットカウンタCOUNT1は、レジスタREG1に設定されたプリセット値までカウントアップし、出力EP2のローレベルの信号を出力する。このレジスタREG1、REG2の内容は、バスインタフェースTIF1経由で、CPU1から書き込みあるいは読み出しが可能である。なお、これらのレジスタの値は、図7のルーチンP130において設定される。これらの各回路は本発明特有なものではないのでここでは詳細については説明を省略する。なお、このタイマ回路も常時通電されるため、低電力化が必要である。低電力化には、発振回路OSC1の発振周波数を低く押さえるのが好適である。例えば、32KHz程度に設定することにより、タイマTM1の消費電流を、1μA以下に抑えることができる。
【0051】
PC1、CW1、TM1により実現される本発明の超低消費電力動作方式を図10に示す。図10に示されるように、半導体集積回路CHIP1の大部分の回路は、通常は動作しておらず(SLP)、短い時間のみ間欠的に動作する(OPR)。このような間欠動作ににより、前述した電力の問題も解決可能である。例えば、コンデンサC1には、典型的には、1μF程度のものが使用可能であり、例えば、1Vで充電すれば1μクーロンすなわち、1mA程度の電流を1m秒程度、供給可能である。つまり、コンデンサC1の充電電圧を数V(通常3V程度)と設定した場合には、RFパワー付加効率を50%とした場合にも、1mW程度の送信電力で外部にデータを送信することも実現可能である。一方、発電チップの発電電力を0.1mW、コンデンサC1の静電容量を1μFとした場合に、充電をするには、以下の計算式に基づく時間がかかる。
【0052】
【数2】
【0053】
余裕を見て充電に100m秒かかってとしても、1秒間に10回以上、チップを駆動して
、検知あるいは高周波により無線でデータを送信することが可能である。本実施例のように、健康管理機器に使用する場合は、検知に要求される間隔は、最短でも、1秒間に10回も取れれば充分であると考えられる(例えば、比較的周期が短い脈拍でも1秒程度の周期である)。このため、本発明のように、0.1秒(=100m秒)間隔で間欠動作を行ったとしても、実用上何の支障も来たさない。さらに、図7の動作モード設定ルーチンP120で、例えば、10回に1回だけに絞る等の設定を行うことも可能である。最も電力が要求されるデータ送信の頻度を減らせば、コンデンサC1に蓄えられた電荷の消費が押さえられ、充電にかかる時間を短縮でき、検知の回数を増やすことも可能である。このように、本発明のセンサチップでは、本発明に特有な電源制御回路と、MEMSプロセスで作成された超小型発電機を組み合わせることにより、電池なしで自律的に動作することが可能である。
【0054】
図11に示すのは、より高い電源電圧が必要な場合に、本電源制御回路にて使用可能な昇圧レギュレータ(RG1)の構成例である。なお、このレギュレータは必ずしも必要なものではなく、例えば、発電チップの出力電圧を適切に設定すれば不要である。
【0055】
図12に示すのは、本発明のセンサチップにおける、第1の半導体集積回路上に作成される各種センサの構成である。以下、各センサの構成を説明する。図12(a)は、温度センサであり、ダイオードD4、定電流回路CS1、増幅器A1で構成される。増幅器A1によりダイオードD4の順方向電圧の温度による変動(A/D変換回路経由でマイクロプロセッサCPU1に読み込み、適温度係数:〜−2mV/℃)を測定し、後述する宜補正することにより、温度を測定する。これらの増幅器、定電流回路その他については、特に本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略する(以下でも同様)。本センサチップは非常に小型(典型的には、5mm角以下)であり、チップ自身の熱容量は、例えば、人体等と比べると無視できる値である。さらに、本センサチップは非常に低消費電力であるため、チップ自身の発熱は無視できる。このため、本センサチップを図3に示す形態で人体に接触させれば、本温度センサにより、正確に体温を測定することが可能である。なお、この図に示しているのは、温度センサの構成の一例であり、他の構成のセンサも使用可能である。
【0056】
一方、加速度センサは、図12(b)に示されるように、MEMSプロセスで作成された可変容量コンデンサCAS1〜CAS4、及び、差動増幅器A2から構成される。この可変容量コンデンサは、前述した発電チップCHIP2上に構成される発電用コンデンサCM1と、基本的には同じ構造である。図1のCM1と同様に、加速度により生じた慣性力により、可動電極と固定電極間の距離が変わることによりCAS1〜CAS4の静電容量が変化する。例えば、図12(b)で、紙面の上から下へ向かう方向で加速度が生じたとすると、可動電極VT2及び、VT3は、紙面上方へ移動する。このため、CAS1及び、CAS3の静電容量は増加し、CAS2及び、CAS4の静電容量は減少する。したがって、B1の電位は上昇するが、逆に、B2の電位は下降することになる。この結果、差動増幅器A2の出力電位は上昇し、加速度が加わったことが検出できる。
【0057】
このように、発電チップで使用する可変容量コンデンサCM1とは違い、本加速度センサでは容量の変化の相対値が重要であるので、大きな容量は必要とされない。このため、CPUその他の回路と同一の半導体集積回路上に集積することが可能である。なお、検出される電位差は、加えられた加速度に対して線形ではない。このため、場合によっては、後述するA/D変換回路経由でマイクロプロセッサCPU1に読み込んだ後に、CPU1でソフトウエア的に補正する必要がある。このような場合には、メモリMEM1に補正テーブルを格納しておくことが好適である。
【0058】
本加速度センサを使用することにより、例えば、ユーザがどのような動作(座っている、歩いている、走っている)を行っているのかを把握することが可能となる。また、90度で直交する方向(XY方向)に2個使用することにより、二次元の加速度がわかり、ユーザがどちらの方向に向かおうとしているかというような情報が把握できる。さらに、例えば、ユーザの心拍測定等、単純に振動の有無を捉えるセンサとしても利用することが可能となる。
【0059】
図12(c)に示すのは、インピーダンスセンサの構成例である。定電流源CS2、増幅器A3により、本半導体集積回路の外部に設けられた電極GSR1、GSR2間の電圧降下を測定する。定電流源GS2に設定されている電流値で測定された電圧降下を除算することにより、この2つの電極間の電気インピーダンスを測定する。本インピーダンスセンサにより、例えば、ユーザの皮膚SKIN1の電気インピーダンスを測定することができる。マイクロプロセッサCPU1によるデータ処理を併用することにより、Galvanic Skin Reflexが求められ、ユーザの感情状態(怒っている、喜んでいる、悲しんでいる等)、または、ユーザのストレス状態を把握することが可能である。
【0060】
さらに、図12(d)に示すのは、脈拍センサの構成である。本脈拍センサは、フォトダイオードD5、負荷抵抗R4、及び、増幅器A4から構成される光学センサPD1、及び、光学センサPD1の光源となる基板上に搭載された赤色/赤外LED(LED1)、及び、バスインタフェースLIF1とLED1のドライブトランジスタTN3から構成されたドライブ回路LD1から構成される。本脈拍センサでは、測定時にのみ、バスBU1経由でマイクロプロセッサCPU1からの制御信号に基づいて、トランジスタTN3を導通させて、LED1を発光させ、ユーザの皮膚SKIN1に赤色光あるいは赤外光を照射する。照射光(LR1)の反射光/散乱光(LR2)その他をフォトダイオードD5にて受信する。増幅器A4で増幅後、A/D変換回路経由で、マイクロプロセッサCPU1で受信光の強度を測定して、血流量に応じた赤色光/赤外光の減衰量の推移(=脈拍)を測定する。なお、通常のLEDでは、十分な強度の赤外光あるいは赤色光を得るためには、少なくとも1mA程度のドライブ電流が必要である。このため、高周波送受信回路を駆動する場合と同様に、本脈拍センサもコンデンサC1に蓄積した電荷により間欠的に動作させる、本発明に特有な超低消費電力動作方式は必須である。
【0061】
本脈拍センサの測定原理は、赤色光あるいは赤外光を、血液中のヘモグロビンが吸収するため、その吸収量(=光の減衰量)を測定すれば、どの程度の血液が皮膚中に流れているのかがわかるという原理に基づいている。また、ヘモグロビンの光吸収特性は、酸素を吸着している場合とそうでない場合に、吸収特性が変化することが知られており、赤外光と赤色光の2通りについてそれぞれの吸収値を測定すれば、簡単な数式により、血液中の酸素飽和度が推定できることが広く知られている。この酸素飽和度を活用すれば、血糖値その他が推定可能である。
【0062】
本発明のセンサチップにおいても、LEDを赤色あるいは赤外光の2系統用意して、時分割にて測定することにより、この酸素飽和度を測定することが可能である。また、脈拍間隔は、ユーザが緊張状態にある、または、リラックス状態にある等の感情状態と深い相関関係がある。本センサチップに搭載のマイクロプロセッサCPU1を活用することにより、単にユーザの脈拍のみではなく、ユーザの健康状態や、感情等についての情報を把握することが可能となる。
【0063】
以上のセンサの出力はアナログ値であるため、CPUに取り込んで、RF経由で無線で外部機器に送信するためには、ディジタル値に変換する必要がある。このアナログ値からディジタル値への変換は、それぞれのセンサの出力に、A/D変換器を接続すれば実現されるが、チップ面積や消費電力の点で、複数のA/D変換回路を設置するのは好ましくない。このため、図13に示すA/D変換回路にて、一括してディジタル値への変換を行うほうがより好ましい。
【0064】
図13に示すように、A/D変換回路(AD1)は、バスインタフェース回路ADIF1、A/D変換回路本体であるADC1、及び、SW1〜SW3で構成される入力切替スイッチASW、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1、これらの回路の動作パラメータを設定するA/D変換制御回路ADCONT1から構成される。本発明に特有な入力切替スイッチASW、及び、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1は、バスBU1経由でCPU1から送信される制御コマンドに応じて、制御回路ADCONT1にて動作パラメータを設定する。
【0065】
例えば、温度を測定する場合には、測定に先立ち、CPU1により、入力切替スイッチASWがI1を選択(SW1:D1、SW3:D1)し、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1の設定ゲインが温度センサに相応しいゲインになるように、バスBU1経由で、ADCONT1内の制御レジスタを設定する。このように設定することにより、温度センサの出力STをPGA1経由でA/D変換器に取り込んでディジタル値に変換し、バスインタフェースADIF1経由でCPUに取り込む。同様に、他のセンサの出力を読み込みたい場合には、ADCONT1内の制御レジスタに、目的のセンサに合わせたゲイン設定及び、入力切替スイッチ設定を書き込んで、ADC1を駆動する。このような構成により、チップサイズの増加を抑え、さらに、消費電力の増加を抑えることが可能である。
【0066】
なお、入力切替スイッチを構成するSW1〜3には、アナログ信号をロスなく通過させるスイッチが必要であり、例えば、図14に示す、PMOSトランジスタ及び、NMOSトランジスタから構成されたパストランジスタタイプのスイッチが使用可能である。また、本センサチップでは、検知すべき情報が人体の生体情報に限られているので、A/D変換回路ADC1には、低速なタイプのもので十分である。
【0067】
図15は、本発明のセンサチップにおいて、外部機器に検知した情報を送信するために使用する高周波送受信回路RF1、及び、RF1とアンテナ等との接続関係を切り替える高周波スイッチRW1の構成例を示した図である。高周波送受信回路RF1は、バスインタフェースRFIF1、送信に使用する変調回路MOD1、送信アンプPSA1、及び、受信に使用する復調回路DMOD1、受信アンプPRA1、及び、これらの回路の動作パラメータをCPU1によりバスインタフェースRFIF1により設定された制御レジスタの内容に応じて制御する制御回路RFCONT1から構成される。これらの各回路は特に本発明に特有なものではないので、ここでは詳細は説明しないが、データ送信時には、CPU1がRFCONT1内の制御レジスタを送信モードに設定し、バスインタフェース経由で変調器MOD1に送信データを送る。MOD1は送られてきたデータを元に発振回路VCO1で生成された搬送波を変調する。変調方式には、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の様々な方式が存在するが、本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略する。以上のようにして、変調された搬送波は、RFCONT1にてゲインコントロールされた送信アンプPSA1により増幅され、高周波切替スイッチRW1に送られる。
【0068】
高周波スイッチRW1は、非特許文献4に開示されているように、通常、PINダイオードの半導体素子やCM1及びCASと同様に、半導体チップ表面にMEMSプロセスによって作成された微細接点等により構成される。コントロール端子RC1からの制御信号により、PINダイオードあるいはMEMS微細接点のバイアス電圧を制御して、RF信号の行き先を切り替える。具体的には、送信時には、CPU1経由で設定されたRFCONT1内部の設定レジスタの内容に従って、RC1端子経由で、RS1とRS3間が導通するように設定される。同様に、受信時には、RS3とRS2間を導通状態に設定して、復調回路DMOD1により、アンテナからの高周波信号を復調する。復調された信号は、バスインタフェースRFIF1経由でCPU1が読み取ることが可能である。以上の受信機能を、メモリMEM1内に格納される動作パラメータの設定に使用することもできる。例えば、センサチップの検知の起動間隔や、各センサの動作パラメータ(増幅器のゲイン等)を変更可能である。
【0069】
RW1は、データ送信時あるいはデータ受信時以外の場合においては、RS3とRS4が導通状態に設定される。このため、アンテナから受信した高周波電力は、整流器D2を通して発電チップに元となる電荷を供給するコンデンサC2、及び、整流器D1を通じて本センサチップの間欠動作を実現するコンデンサC1に蓄えられる。このように、本発明のセンサチップでは、外部からアンテナ経由で電力を供給することも可能である。
【0070】
前述したように、RF送信には比較的大きな電力が必要である。このため、通常は、データの検知だけを実行し、メモリにデータを蓄えておき、例えば、1日に一回だけ、外部の健康管理機器(MONITOR1等)に送信するという方式により電力消費を抑えることも可能である。
【0071】
また、非特許文献5に開示されているような、超広帯域無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)を用いることにより、さらなる低消費電力化も可能である。UWBでは、前述したPSKやASK等とは異なり、高周波パルス信号そのものを変調してデータを送受信する。例えば、送信したいデータが“1”の時はパルスを送出し、“0”の時は、パルスを100ps遅らせて送出する等により、パルス列を送信データにて変調する。このため、図16の高周波送受信回路RF2に示されるように、パルスを発生するパルスジェネレータPGEN1と、そのパルスを送出するかどうかをコントロールする変調器MOD2のみで構成可能である。すなわち、図15で示したPSKやQAM等の狭帯域の通信方式では必須であった送信アンプが不要となり、高周波送受信回路の回路規模を小さく抑えることが可能である。この結果、チップの製造コストを抑えられると同時に、チップの低消費電力化が実現できる。
【0072】
さらに、UWBでは、比較的短い通信距離しか要求されない場合、RF送信電力を抑えることが可能である。このようなセンサチップでは、例えば、腕に貼り付けたセンサチップから、胸ポケットに入れた携帯型健康機器にデータを送信できれば十分である(例えば、通信距離は数10cm程度で十分である。)。このため、RF送信電力を、例えば、数10μWに設定することも可能である。このように、UWBは本発明のセンサチップにより望ましい無線通信方式である。
【0073】
なお、UWBでは、データ受信の際に、相関器(図16のCOR1)が必要となる。この相関器は、通常、受信チップ内のパルスジェネレータから供給されるパルス列と、受信されたパルス列の相関をとる。具体的には、例えば、パルス列が100ps遅れた位置にあるかを検出して、データを再生する働きをする回路である。この相関器には、一般には、複数のA/D変換器が必要となり、複雑かつ規模の大きい回路が必要となる。このため、UWBの持つ「送信機が簡単に構成可能」という利点を十分生かすことができない可能性もある。
【0074】
そこで、ハイブリット構成の高周波送受信回路RF3を図17に示す。この構成では、送信だけを図16で説明したUWB通信方式で行う(パルスジェネレータPGEN1、変調器MOD2)。一方、受信は、図15で説明したPSKやQAM等の狭帯域の通信方式で行う(受信アンプPRA3、発振器VCO1、復調器DMO3)。このようなハイブリット構成により、UWBの受信には必須であった複雑な相関器が不要になり、回路規模が小さく、かつ、消費電力(〜RF送信電力)を抑えることができる。このように、図17に示すハイブリット構成の高周波送受信回路RF3は、本発明の目的に好適な構成の送受信回路である。
【0075】
以上のセンサチップを用いて健康管理機器を構成したものを図3に示す。この図において、健康モニタMONITOR1は、通常、高周波送受信回路(RF10)、変復調回路(MOD10、DMOD10)、プロセッサ(CPU10)、メモリ(MEM10)、表示装置(DISP10)から構成される(図18)。これらの各回路については、本発明に特有なものではないのでここでは詳細な説明は省略する。
【0076】
MONITOR1の動作フローチャートを図19に示す。データ読み取りルーチン(P400)及び、データ受信ルーチン(P410〜413)により、RF10にて、無線接続WL1経由でセンサチップからの信号を受信し、DMOD10にて復調してセンスデータ(SD1)を取り出す。
【0077】
以上のようにして復調されたセンスデータのデータ構造を図20に示す。図20に示すように、センスデータSD1は、チップID(CID)、センサID(SID)、データ(DATA)の組で構成され、どのチップのどのセンサからのデータなのかを判別できるように構成されている。以下、体調診断ルーチン(P420)にて、体調を診断し、結果表示ルーチン(P430)にて、診断結果をDISP10上に表示する。なお、図3及び、図19に示すように、体調診断ルーチンP420においては、無線接続WL2にて、携帯電話網あるいはインターネット等の広域ネットワーク網(WAN1)上に接続された健康情報データベースサーバ(DSV1、DB1)に接続して、体調情報を照会して、より正確な診断結果を得ることも可能である。
【0078】
また、図21に示すように、センサチップの送受信手順を簡素化することも可能である。例えば、図21(a)は、データを検知したらメモリに蓄積せずにそのまま送信する例である。図21(b)は、チップID等の識別子データを加えずに、そのまま送信する例である。送受信手続きを簡素化することにより、例えば、メモリ容量を小さくでき、CPUの機能を削ってチップ面積及び電力を減らすことが可能である。このため、用途によっては、このような構成を取ることもできる。
【0079】
以上のように、本発明のセンサチップを使用することにより、電池不要な小型かつ軽量のメンテナンスフリーな健康管理機器が実現できる。本発明のセンサチップを用いれば、ユーザが長時間装着することが可能となり、継続的にデータを取得できる健康管理機器が実現できる。また、本発明のセンサチップでは、チップ内にすべてのセンサを内蔵し、検知データは、無線にて外部に送信される。このため、センサと本体を接続するワイヤ等は全く必要がない。このため、非常に使い勝手がよく、ユーザは全く無負荷で本発明のセンサチップをつけて、各自の生体データを長時間継続的に取り続けることが可能である。また、半導体集積回路で作成することにより、大量生産が可能となる。このため、非常に安価な価格で製造することが可能となる。
(実施例2)
実施例1では、MCP構成により、本発明のセンサチップを構成する例を説明した。一方、MEMSプロセスは半導体プロセス互換であるため、MEMS可変容量コンデンサを、センサ、マイクロプロセッサ等の他の回路とともに、1チップ上に集積することが可能である。MEMS可変容量コンデンサをセンサ、マイクロプロセッサ等の他の回路と混載して形成したセンサチップを図22に示す。このような構成にしてもセンサチップの小型化を図ることができる。しかし、MEMS可変容量コンデンサに要求される面積は比較的大きい。このため、図22に示すような構成を採ると、大きなMEMS可変容量コンデンサを用いる場合には、センサチップの十分な小型化が図りにくい。
【0080】
そこで、小型化を図る上でより望ましい態様を図23(a)〜(c)に示す。これらの図において、各回路PC1、PC2、CPU1は、実施例1で説明したものと同様の構成である。このセンサチップでは、MEMS可変容量コンデンサをチップの裏面(SIDE2)に形成する。すなわち、チップの表面(SIDE1)にセンサ、マイクロプロセッサ等の回路を形成し、チップの裏面(SIDE2)にMEMS可変容量コンデンサを形成するという、分離型構造によりセンサチップを形成するものである。このような構造を採用することにより、半導体回路とMEMS可変容量コンデンサを同じ面に形成するセンサチップ(図22)と比較して、チップ面積をより小さくすることができる。
【0081】
また、チップの裏面にMEMS可変容量コンデンサを形成するという上記方法ではなく、MEMS可変容量コンデンサを他のチップ上にあらかじめ形成しておき、そのMEMS可変容量コンデンサが形成されているチップと、センサ、マイクロプロセッサ等が形成されているチップとの裏面同士を貼り合わせることにより、上記方法によるものと同程度まで面積を小さくしたセンサチップを実現することもできる。
【0082】
さらに、図には示さないが、センサ、マイクロプロセッサ等を集積したチップの表面(SIDE1)の上をパッシベーション膜で覆い、その上に、MEMS可変容量コンデンサを形成することによっても、面積をより小さくしたセンサチップを実現することが可能となる。
(実施例3)
実施例1では、図1に示すように、本発明のセンサチップに特有なMCP構成で、MEMS可変容量を使用した小型発電機、センサ、マイクロプロセッサ、メモリ、高周波回路、電源制御回路等を集積することにより、小型・軽量の健康管理機器を実現できることを示した。一方、これ以外にも、同程度のサイズで、0.1mW程度の電力を供給可能な発電機または電池が存在する。
【0083】
例えば、電磁誘導を利用する発電機を用いた実施例を図24(a)、(b)に示す。図24(a)はチップ断面を、また、図24(b)は、チップ裏面を表している。この発電機は、非特許文献6に開示されているものと同様の構成である。基板BO2のSIDE2面に、中空の領域(=キャビティ)CA1を形成する。キャビティCA1内に、永久磁石MA1、及び、MA1を基板BO2に吊すスプリング等の支持材ST1を装備する。さらに、基板BO2のSIDE2面上に配線パターンによりスパイラルタイプのインダクタSL1を形成する。外部振動により支持材ST1で保持された永久磁石MA1が慣性運動を行い、この慣性運動による磁束の変化を電磁誘導の原理により、インダクタSL1により電気エネルギーに変換される。実施例1で説明した本発明の超低消費電力制御方式を併用することにより、実施例1と同様の小型センサチップを実現することができる。
【0084】
太陽電池BA3を使用してセンサチップを構成した実施例を図24(c)、(d)に示す。図24(c)はチップ断面を、また、図24(d)はチップ裏面を表している。基板BO3のSIDE2面に太陽電池を搭載する。この図に示すように、太陽電池BA3は、モールドMO3を露出させる必要がある。もしくは、CHIP1の上部に形成された光学窓PWIN1と同様の素材により、BA3上に光学窓を形成する必要がある。照射される光の強さにより変動するが、太陽電池自体は、0.05〜1mW/cm2程度の発電能力を有する。使用時には、ある程度の光を照射する必要がある。このため、図24(c)に示すように、太陽電池BA3は人体に接触されるSIDE1面とは逆のSIDE2面に配置されることがより望ましい。
【0085】
温度差で発電可能なゼーベック素子BA4を使用した実施例を図24(e)、(f)に示す。図24(e)はチップ断面を、また、図24(f)はチップ裏面を表している。ゼーベック素子は、半導体の一種であるN型BiTe及びP型BiTeから構成されるPN接合からなり、PN接合に温度差を与えると、起電力(〜20mV)が発生するという物理現象を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。図24(e)に示すように、本実施例のセンサチップSCHIP5では、ゼーベック素子による発電機BA4は、基板BO4のSIDE2面に配置されている。このゼーベック素子の両端は、良好な熱伝導特性を有するヒートスプレッタHT1、HT2を介して、基板BO4あるいは外気と熱的に結合され、これらの温度差により発電を行う。このため図24(e)のように、ヒートスプレッタHT1、HT2間は、断熱材INS1により熱的に絶縁状態にする必要がある。実使用時には、図3に示すように、HT1側には人体の体温、HT2側には外気温という状態で使用され、ユーザの体温と外気温の差を利用して発電を行う。
【0086】
小型のボタン電池BA5を使用した実施例を図24(g)、(h)に示す。図24(g)はチップ断面を、また、図24(h)はチップ裏面を表している。図24(a)〜(f)に示す実施例とは異なり、発電機構を持たないため永遠に使用することはできない。しかし、ボタン電池は、時計で使われる小型のものでも20mAH程度の容量(LR41)があるため、本発明の低消費電力制御方式と併用すれば、電池交換せずに数年間使用することができる。
【0087】
以上の実施例のとおり、本発明のセンサチップは、種々の発電機または電池により構成することが可能である。また、これらの異なるタイプの発電機または電池を組み合わせて使用することもできる。
【0088】
例えば、図1のMEMS可変容量型の発電機と、図24(g)、(h)のボタン電池を組み合わせて使用して、検知動作はMEMS可変容量型の発電機からの電力で行い、無線により検知データを外部機器に送信する場合にはボタン電池を補助的な電源として利用するというような、ハイブリット構成にすることも可能である。このようなハイブリット構成のセンサチップを用いれば、到達可能距離を伸ばすことや、送信時間を拡大する、ということがより容易に実現できる。
(実施例4)
以上の実施例では、センサチップに内蔵する微小電力RF送信回路によりセンサデータを直接、外部機器(例えば、図3の健康管理モニタ)に送信する例を説明した。しかし、実施例1でも説明したように、送信できるRF電力が限られている。このため、外部機器との無線接続距離は、通常、1〜2mとされている。さらに、実施例3で説明したようなボタン電池とのハイブリット構成を採用した場合にも、電池寿命を考慮すると、送信電力をむやみに増加させることもできない。この問題を解決する目的で使用するのが、本実施例で説明する小型無線中継チップである。
【0089】
小型無線中継チップの一実施例を図25に示す。小型無線中継チップRCHIP1は、例えば、部屋RM1の床または壁などに設置され、実施例1〜3で説明したようなセンサチップ(SCHIP1〜3)が送信するパケットデータ(PD10〜PD13)を受信し、1つにまとめた後に外部機器MA10に再度送信(=中継)する。この無線中継チップを使用して、順次、データを中継して行くことにより、データの到達距離を拡大することができる。
【0090】
小型無線中継チップのメインチップが配置された面(SIDE1)の構成を図26に示す。この図では示していないが、チップ面と逆のSIDE2面には、通常、図1(b)に示すものと同様のMEMS可変容量型発電機チップ、または、図24(a)〜(d)の発電機または電池が、MCP構成で1チップ上に集積されている。この他にも、アンテナ、コンデンサその他を集積してもよく、特に電源等を必要とせずに、このチップ単体で動作することが可能である。
【0091】
図26のように、本実施例の特徴部分であるCHIP5は、マイクロプロセッサCPU1、メモリMEM1、高周波送受信回路RF1、電荷監視回路CW1、タイマTM1、及び、電源制御回路PC1から構成される。これらの各回路の構成は、通常、実施例1で説明したセンサチップのメインチップCHIP1のものと同様のものである。
【0092】
小型無線中継チップの動作フローチャートを図27に示す。実施例1で示したセンサチップと同様の低消費電力動作方式により、通常はスリープ状態P110にあり、タイマTM1、及び、電荷監視回路CW1からの起動信号により、間欠的に立ち上がり、データ受信P410、データ送信を行う。なお、図25の動作フローチャートにおいては、データ受信P410を、データ送信P120よりもより高い頻度で起動させる必要がある。これは、あらかじめ余裕を持ってデータ受信をすることにより、センサチップSCHIP1〜3からのデータの取りこぼしを回避するためである。しかし、このように、データ受信P410の起動頻度を密にしたとしても、受信動作は送信動作よりも低消費電力であるので、問題にならない。
【0093】
また、図27のP320ルーチンにおいて、センサチップからのセンサデータに、本無線中継チップの固有のID(RID20)を付加することも可能である。次の実施例5で説明するとおり、この中継チップIDを受信側で取り出すことにより、どの経路を経由して、データが受信されたのかを認識することが可能になる。
(実施例5)
次に、本発明のセンサチップまたは無線中継チップを用いた応用例について、図28に従って説明する。
【0094】
図28(a)は、家電、ゲーム機、ロボット型玩具等の機器(EM50)の制御に、本発明のセンサチップを応用した例である。この図に示されるように、ユーザUS50は、本発明のセンサチップSCHIP50、51を、例えば、図3に示す形態で体に装着して機器EM50を使用する。機器EM50は、本発明のセンサチップSCHIP50、51から無線接続WL50経由で制御信号を受信するRF50、及び、受信された制御信号に従って、EM50の動作や動作パラメータを設定する、マイクロプロセッサCPU50、メモリMEM50、表示装置DISP50、データベースDB50、及び、携帯電話網またはインターネット等の広域ネットワーク網に接続するネットワークインタフェースNI50、さらに、機器EM50の移動などに使用されるモーターMO50から構成される。機器EM50には、典型的には、電子ロボット玩具等が想定され、例えば、本発明のセンサチップSCHIP50、51で検知されたユーザの情報に応じて、動作を変えることにより、あたかも、ユーザの意図を汲み取って動作しているかのような、高品位の動作が実現できる。
【0095】
具体的には、本発明のセンサチップ内の脈拍センサあるいはインピーダンスセンサから取得された脈拍情報、GSR情報を元に、CPU50にて、ユーザの感情あるいは心理状態を推定する。ユーザが悲しんでいると判断した場合には、モーター50を起動してなぐさめる等の動作を行う。また、ユーザが緊張状態にあると判断した場合には、緊張を和らげる鳴声をスピーカSP50から発声させる等の行動を行う。この他にも、センサチップ内の加速度センサにより検知されたユーザの手振り等の動き情報により、例えば、ユーザの意図する方向を向く等の動作をさせることが可能である。さらに、この手振り等の情報を、家電機器へのボタン入力の代りとして利用することも可能である。このように、本センサチップの応用範囲を非常に広い。
【0096】
なお、ここで説明したのは代表的な一実施例であり、ユーザの生体情報により家電機器の制御するような応用例、例えば、ユーザの体温に応じてエアコンの冷房設定を変えるといった用途等にも、本発明のセンサチップは応用可能である。
【0097】
センサチップ及び無線中継チップを、サッカー等のスポーツ競技の記録に応用した一実施例を図28(b)に示す。この実施例では、サッカー選手US60は、足などに本発明のセンサチップ(SCHIP60、SCHIP61)を装着している。SCHIP60、61において検知された情報は、サッカー競技場PI60内に規則的に設置された、本発明の無線中継チップRCHIP60〜64により受信され、実施例4で説明したとおり、無線中継チップのIDを付加されて、最終的には、基地局BSTA60において受信される。基地局BSTA60は、無線中継チップRCHIP60〜64から、無線接続WL60経由でセンスデータを受信するRF60、センスデータを解析して、選手の動きまたは脈拍等の健康状態を解析する、マイクロプロセッサCPU60、メモリMEM60、データベースDB60、及び、携帯電話網、インターネット、または、専用ネットワーク網等の広域ネットワークWAN60に接続するための、ネットワークインタフェースNI60から構成される。基地局BSTA60では、パケットデータの解析を行い、無線中継チップにおいて付加された中継チップのIDからセンサチップの発信場所を特定し、各選手が現在競技場のどの地点にいるかをリアルタイムで解析する。同時に、検知された脈拍等の生体情報から各選手の疲労度が推定でき、例えば、選手交代等の判断に使用することも可能である。さらに、広域ネットワークWAN60経由で、解析された情報を転送することにより、WANに接続された、例えば、BS60等のテレビ放送局でテレビ放送等に活用することが可能である。
【0098】
なお、ここで説明したのはサッカー競技だけであるが、その他のスポーツ競技にも使用可能であることは言うまでもない。このように、本発明のセンサチップ及び、無線中継チップを活用することにより、スポーツ競技において、各選手の位置をリアルタイムでモニタすることが可能となる。なお、従来から、RFIDチップを使用してマウス等の実験動物の動きを検出する装置は提案されている。しかし、サッカー競技場のような広いエリアで使用するには、高価なRFIDリーダーが大量に必要になる。また、莫大な電力を消費するという問題がある。これに対して、本発明のセンサチップ/無線中継チップは非常に低消費電力で実現可能である。このように、本発明のセンサチップ/無線中継チップを使用することにより、実用的なスポーツ競技記録装置を提供することができる。
【0099】
食品流通管理向けに、本発明のセンサチップを使用した一実施例を図28(c)に示す。この図に示されるように、食品FOOD70に本発明のセンサチップを付加する。食品FOOD70は、典型的には、ワインあるいはビール等が想定される。この図に示されるように、本発明のセンサチップは、ワインビンまたはビールビン等に添付され、実施例1で説明したように、ある一定期間でセンサを起動して、内蔵温度センサにより温度を継続的に測定し、メモリMEM70上に蓄積する。最終的に、消費者の手元に渡った段階にて、リーダーREADER70にて、メモリに蓄積された情報を読み取る。READER70は、センサチップから無線接続WL70にて、検知データを読み取るRF70、及び、読み取られたデータを解析して表示するマイクロプロセッサCPU70、メモリMEM70、表示装置DISP70から構成される。このREADER70には、ネットワーク装置NI70を内蔵することも可能であり、NI70経由で、携帯電話網またはインターネット等の広帯域ネットワーク網WAN70を経由して、データ管理サーバSV70内のデータベースDB70にアクセスすることが可能である。すなわち、受信されたセンサチップのチップIDを、サーバSV70内のデータベースDB70に照会することにより、ユーザの手元にてFOOD70の生産者情報等を得ることができる。
【0100】
なお、従来から、RFIDと電池を備えた装置を使用すれば、ビール樽の流通管理その他が実現可能である。しかし、本発明のセンサチップと違い、ワインビンまたはビールビンに添付可能な程度にサイズを小さくすることは困難であった。さらに、電池により動作電源を賄うため、電池が切れた場合にはデータが取得できない恐れがあり、その結果、データを収集できる期間も限られている。このため、飲食店等で業務用に使用されるビール樽等の、比較的短期間で回収されるものにしか使用することができなかった。これに対して、本発明のセンサチップを使用すれば、ワインビンなどの比較的小さいものにも添付可能であり、また、長期間センス可能であるため、業務用ビール樽以外にも様々な用途に応用可能である。
【0101】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施例では、送受信回路を有するセンサチップについて具体的に説明したが、無線による受信の必要がないセンサチップである場合には、送受信回路のうち送信回路を備えていればよい。したがって、このようなセンサチップにおいては、受信回路を省略することができる。
【0102】
また、上記実施例では、センサとして、温度センサTD1、加速度センサAS1、赤外/赤色光センサPD1、及び、インピーダンスセンサGS1を備えたセンサチップについて具体的に説明したが、必ずしも、これらのセンサを全て備えている必要はない。目的に応じて、上記各センサの一部のみを備えているもの、または、上記各センサ以外のセンサを利用するものであってもよい。
【0103】
また、上記実施例では、センサチップを主に人間に利用することを前提として説明したが、必ずしも人間を対象とするだけでなく、犬、猫等その他の動植物を対象とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のセンサチップの望ましい一実施形態を示す図。
【図2】図1に示すセンサチップの断面図。
【図3】実施例1で説明する、本発明のセンサチップを用いた健康管理機器。
【図4】本発明のセンサチップにおける可変容量コンデンサの静電容量が外部振動により変化した場合の電圧変化と静電エネルギーの増加分を示す図。
【図5】図4に示す静電エネルギーの増加分を回収して電力に変える電力回収回路の構成図。
【図6】図5に示す電力回収回路の動作を説明する図。
【図7】本発明のセンサチップの動作概要を示す図。
【図8】本発明のセンサチップから外部機器に送信されるデータ形式を示す図。
【図9】本発明のセンサチップの一部をなす、電源制御回路、タイマ回路、電荷監視回路の構成図。
【図10】図9に示す電源制御回路により実現される低消費電力動作方式を示す図。
【図11】図9に示す電源制御回路のレギュレータRG1の構成図。
【図12】本発明のセンサチップの一部をなす、温度センサ、加速度センサ、インピーダンスセンサ、脈拍センサの構成を示す図。
【図13】本発明のセンサチップの一部をなす選択機能付きA/D変換回路の構成図。
【図14】図13に示す選択機能付きA/D変換回路で用いるマルチプレクサの構成図。
【図15】本発明のセンサチップの一部をなす高周波送受信回路、高周波切替スイッチの構成図。
【図16】本発明のセンサチップの一部をなす高周波送受信回路の第2の構成図。
【図17】本発明のセンサチップの一部をなす高周波送受信回路の第3の構成図。
【図18】図3の健康管理機器で使用する、携帯型健康モニタの構成の一例を示す図。
【図19】図18に示す携帯型健康モニタにおける処理の流れの概要を示す図。
【図20】本発明のセンサチップが外部機器に送信するパケットデータの一例を示す図。
【図21】本発明のセンサチップの検知データ送信方法についての別の例を示す図。
【図22】実施例2で説明する、コンデンサ、インダクタ、LED以外を1つの半導体集積回路にて構成したセンサチップの一例を示す図。
【図23】実施例2で説明する、コンデンサ、インダクタ、LED以外を1つの半導体集積回路にて構成したセンサチップついての別の一例を示す図。
【図24】実施例3で説明する、センサチップの一部をなす電力発生器の構成例を示す図。
【図25】実施例4で説明する、無線中継チップによる検知データの中継の概念を示す図。
【図26】実施例4で説明する、無線中継チップの構成例を示す図。
【図27】図26に示す無線中継チップの動作例の概要を示す図。
【図28】実施例5で説明する、本発明のセンサチップ及び無線中継チップの応用例を示す図。
【符号の説明】
【0105】
SCHIP1,SCHIP2,SCHIP3,SCHIP4,SCHIP5,SCHIP6,SCHIP10,SCHIP11,SCHIP12,SCHIP50,SCHIP51,SCHIP60,SCHIP61,SCHIP62,SCHIP63,SCHIP64,SCHP70…センサチップ、
CHIP1,CHIP2,CHIP3,CHIP4…半導体集積回路、
CM1…可変容量コンデンサ、
CPU1…マイクロプロセッサ、
AD1…A/D変換回路、
MEM1…メモリ、
PC1…電源供給回路、
RF1,RF2,RF3…高周波送受信回路、
TD1…温度センサ、
AS1…加速度センサ、
PD1…赤外/赤色光センサ、
MA1…永久磁石、
BA3…太陽電池、
BA4…ゼーベック素子、
BA5…ボタン電池、
RCHIP1,RCHIP60,RCHIP61,RCHIP62,RCHIP63,RCHIP64…無線中継チップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシステム用半導体装置に関し、特に、小型・軽量で電池交換不要なセンサシステム用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりにより、個人が手軽に体調その他をチェックできる健康管理機器(Personal Vital Assistant(以下、「PVA」という。))への注目が急速に高まりつつある。このPVAの基本的な機能は、従来からある高価な医療用測定機器と同じである。しかし、高価な医療用機器と違い、一般ユーザでも購入できる程度に安価で構成されることが望まれる。また、心臓病などの生活習慣病では、継続的に体温や脈拍や血圧など体調を把握することが重要である。このため、PVA機器では、ユーザがいつでも簡単に自分の体調を測定できるようにすることが必要である。具体的には、持ち運びができる程度に小型・軽量化する必要がある。このため、小型のボードに作成されたPVA機器が開発されている。
【0003】
例えば、特開2001−327472号公報(以下、「特許文献1」という。)、及び、特開2001−344352号公報(以下、「特許文献2」という。)では、GSR(Galvanic Skin Reflex:皮膚電気反射)、加速度、体温、脈拍センサ等のセンサを搭載したセンサボードと、Bluetooth等の小電力無線インタフェースにより、上記センサボードと通信を行ってセンサ情報を収集して、ユーザの体調等を分析するメインボードから構成されたPVA機器が紹介されている。センサボードには、センサの他に、CPU、メモリ、A/D変換器、小電力無線インタフェース、増幅器、及び、小型電池が搭載されており、上記センサの種類毎に専用のボードが用意されている。センサボード内でセンサからの情報(アナログ量)を適当なレベルにまで増幅した後に、A/D変換を行って、ディジタル量に変換した後、CPUにより適切な形式に加工された後に、小電力無線インタフェースチップ経由でメインモジュールに送信される。
【0004】
上記センサのうち、GSR電極により、電極経由で検知された皮膚の電気インピーダンスの変化具合が検知可能であり、ユーザの心理状態(怒っている等)が把握できる。また、脈拍センサからは、ユーザの脈拍を検知できる他に、血液中の酸素飽和度も測定可能である。さらに、血糖値等も推定することが可能であり、ユーザの健康状態が把握できる。また、脈拍の間隔からユーザの心理状態もある程度推定可能である。なお、脈拍センサは、赤外/赤色LEDと半導体フォトダイオードの組み合わせで構成される。一方、加速度センサは、3軸方向の加速度センサから構成され、ユーザの姿勢や動き等が推定できる。小電力無線インタフェース経由により、診断結果等を、小電力無線インタフェース内蔵の腕時計、ヘッドセット、携帯電話等に送信して、ユーザに通知することが可能である。
【0005】
一方、半導体プロセスの微細化に伴い、簡単なRF回路、低機能のCPU、及び、低容量のメモリ(不揮発メモリ等)を、数mm平方以下の半導体集積回路に集積したRFIDチップが、日経エレクトロニクス2002年2月25日号、pp.112〜pp.137(以下、「非特許文献1」という。)に開示されている。非特許文献1には、RFIDチップがチップ内の不揮発メモリに固有のIDを書き込み、そのIDをRFリーダ経由で外部に読み出して、バーコード等と同様に商品等の識別タグとして利用できる旨が開示されている。RFIDリーダーからIDを読み取る場合には、高周波をRFIDチップに照射し、RFIDチップに接続されたコイルとコンデンサから構成されたLC共振回路のQ値の変化を検出することにより、非接触で実現される。
RFIDチップには、単なるID以外に、商品についての情報等を不揮発メモリに書き込むことも可能である。例えば、特開2001−187611号公報(以下、「特許文献3」という。)には、食品(例えば、ビール樽等。)流通管理システムへの応用例が開示されている。特許文献3では、RFIDチップ、センサボード、及び、小型電池から構成されたセンサ付きIDタグをビール樽に埋め込んで、センサボードで読み取られたビール樽の温度を随時RFIDチップ内の不揮発メモリに書き込んで蓄積する。最終的に、ユーザに届けられた際に、ユーザ側でRFリーダにて流通時の温度情報を読み出す。このような構成により、不適切な温度条件で放置されていなかったか等の情報を電子的に記録し、その記録情報を読み出すことができる。
一方、特開2002−58648号公報(以下、「特許文献4」という。)には、RFIDチップを位置検出に応用した例が開示されている。この例では、マウス等の実験用小動物にRFIDチップを付ける。同時に、マウスの飼育箱を升目状の細かいエリアに区切り、エリア毎にRFIDリーダーを複数配置する。複数のRFIDリーダーのうち、どのRFIDリーダーで読み取られたかを記録することにより、マウスの動きを検出する。さらに、RFIDチップのID情報を活用することにより、個々のマウスを判別することが可能である。このような構成により、どのマウスがどのように活動しているのかを把握することができる。
【0006】
また、このような小型の半導体チップを体内に埋め込んで、ユーザの補助に役立てようという試みも提案されている。例えば、特開平5−293128号公報(以下、「特許文献5」という。)には、小型チップを発声器官に埋め込み、発声器官の振動を検知して、RFにて外部の擬似音声発生装置に送信して、ユーザの発声を代行するというアイデアが開示されている。上記チップを、咽頭、喉頭、気道、顔面、口腔、鼻腔等の複数箇所に埋め込み、チップ内の振動センサにより各部の振動を検知して、擬似音声発生装置にてユーザが発語したい音声を分析することが実現される。何らかの障害により、発声器官を損傷したユーザの補助に役立てることが可能となる。
【0007】
なお、IEEE Computer July 2000、pp.42〜48(以下、「非特許文献2」という。)には、床、壁、人体等は微小ながらも常に振動しており、通常、〜mW/cm3のエネルギー密度を有している旨が開示されている。
【0008】
IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATUION SYSTEMS、VOL.9、NO.1、FEBRUARY 2001、pp.64〜pp.75(以下、「非特許文献3」という。)には、電力回収回路の構成が開示されている。
【0009】
EDN Japan、2002.5号、pp.55〜pp.61(以下、「非特許文献4」という。)には、MEMSプロセスによって形成された高周波スイッチが開示されている。
【0010】
日経エレクトロニクス2002年3月11日号、pp.55〜pp.66(以下、「非特許文献5」という。)には、超広帯域無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)について開示されている。また、非特許文献5には、UWBにおけるデータ受信の際には、受信機のパルスジェネレータから供給されるパルス列と受信したパルス列との相関をとる相関器が必要となる旨が開示されている。
【0011】
IEEE Proc. Circuits Devices Syst.,Vol.148、No.6、 Decemeber 2001(以下、「非特許文献6」という。)には、電磁誘導を利用して発電を行う発電機が開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開2001−327472号公報
【特許文献2】特開2001−344352号公報
【特許文献3】特開2001−187611号公報
【特許文献4】特開2002−58648号公報
【特許文献5】特開平5−293128号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス2002年2月25日号、pp.112〜pp.137
【非特許文献2】IEEE Computer July 2000、pp.42〜48
【非特許文献3】IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATUION SYSTEMS、VOL.9、NO.1、FEBRUARY 2001、pp.64〜pp.75
【非特許文献4】EDN Japan、2002.5号、pp.55〜pp.61
【非特許文献5】日経エレクトロニクス2002年3月11日号、pp.55〜pp.66
【非特許文献6】IEEE Proc. Circuits Devices Syst.,Vol.148、No.6、 Decemeber 2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1及び2に開示されているPVA機器は、汎用のCPUとセンサを組み合わせたボードでPVA機器を構成しているため、高価な医療機器を使わなくても手軽に健康管理ができるようになる。しかし、このようなPVA機器では、センサボードとメインボードそれぞれに電池が必要であり、ある程度以上の重量(〜数100グラム)になってしまう。また、複数の半導体集積回路その他の部品をボード上にアセンブルして構成するため、ある程度以上の大きさ(〜カードサイズ)が必要である。このため、長時間使用するには、ユーザの身体に与える負担が大きい。また、電池を電源としているため、電池交換の手間が必要である。さらに、各々のセンサボードとメインボード間は、小電力無線インタフェースにより無線接続されているが、センサとセンサボード間は通常のワイヤで接続されているため、使い勝手及び耐久性の面でやや問題がある。
【0014】
一方、非特許文献1に開示されているRFIDチップは、電池が不要であるとともに小型でもある。このため、マウス等の小動物から人間や食品等の商品に至るまで、数多くのものに装着可能である。しかし、従来の技術で説明したとおり、LC共振回路のQ値をコントロールすることによりRFIDリーダーに信号を送信するため、外部のインダクタLに、使用するRF信号の波長(=1/周波数)に応じた大きさのものが必要となる。また、独自の電源を持たないため、動作可能時は、RFIDリーダーでRF信号を照射された時のみである。このため、PVA機器に必要とされるように長時間に渡ってユーザの生体情報(体温、脈拍等)を検知する用途には適さない。
【0015】
また、特許文献3に開示されているビール樽向けRFIDタグは、長時間の使用を可能とするために、小型電池とともに使用されるものである。しかしこの結果、RFIDチップの大きさはボードサイズとなってしまい、RFIDチップの「小型軽量でどこにでもタグとしてつけられる」という特徴が犠牲にされている。
【0016】
特許文献4では、マウスの動きの検出にRFIDチップを利用しているが、升目毎に配置したRFIDリーダーから常時RF信号を送信し続ける必要がある。RFIDリーダーから送信されるRF信号は、数100mW程度であり、全体を合わせるとかなりの電力になり、低消費電力化を図るのは困難である。
【0017】
特許文献5には、小型の半導体チップを人体に埋め込んで発声器官の代用をさせようとするアイデアが開示されている。しかし、半導体チップを埋め込む際には人体の切除が必須となるため、ユーザへの身体的負担及び心理的負担は大きいものと考えられる。また、特許文献5には、埋め込む半導体チップの具体的な構成、特に、電池を埋め込まない場合に半導体チップの電源をどうするのかという点について、全く開示されていない。
【0018】
本発明の目的は、発電機等を内蔵し長時間動作可能で、無線信号により外部機器に検知データを送信できる、小型・軽量のセンサシステム用半導体装置を提供することである。
【0019】
さらに、本発明の他の目的は、上記センサシステム用半導体装置を用いた、小型の健康管理機器、動き検出装置、食品流通管理装置、及び、家電等の機器の制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の代表的なものは下記のとおりである。すなわち、計測の対象となる物理量を検知するセンサと、前記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路と、前記ディジタル信号を処理するマイクロプロセッサと、前記センサにより得た情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサにより処理した信号を外部へ送信する送信回路と、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、及び、前記送信回路に、電力を供給するための電力発生装置とを有する半導体装置である。
【0021】
また、本発明の他の代表的なものは、温度センサ、加速度センサ、及び、赤色/赤外光センサを有するセンサと、前記センサからの信号を増幅してディジタル量に変換するA/D変換回路と、前記センサから情報を取り出して、該情報を加工するマイクロプロセッサと、前記マイクロプロセッサのプログラムコード、及び、前記センサからの前記情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサに制御され、外部との通信を行う送信回路と、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、及び、前記送信回路の各回路に、電源を供給するか否かを制御する電源制御回路と、力学振動による可変容量コンデンサの静電エネルギーの増加分を回収して電気エネルギーに変換する電力回収回路とを有し、前記センサ、前記A/D変換回路、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、前記送受信回路、及び、前記電源制御回路は、一つの半導体基板の上に形成されている半導体装置である。
【0022】
また、本発明のもう一つの代表的なものは、マイクロプロセッサと、情報を格納するメモリと、前記マイクロプロセッサと外部との通信を行う送受信回路とが一つの半導体基板の上に形成されている半導体装置であって、前記半導体装置は、前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、及び、前記送受信回路に電力を供給するための電力発生装置を有し、前記半導体装置は、第1外部から第1データを受信し、受信した該第1データを処理して第2データへ変換し、該第1外部とは異なる第2外部へ向けて、該第2データを送信する機能を有する半導体装置である。
【発明の効果】
【0023】
センサ、マイクロプロセッサ、メモリ、送信回路、及び、電力発生装置を備えた本発明の構成を採用することにより、長時間の継続使用が可能で、小型軽量なセンサシステム用半導体装置を提供することができる。
【0024】
また、このセンサシステム用半導体装置は小型軽量であり、電池交換にも煩わされないため、長時間の装着が要求される健康機器等に適して用いられる。
【0025】
また、電子ロボット玩具に自分の感情を伝えられる装置、操作者の意図を手振り等で家電機器等に伝達可能なリモコン装置、スポーツ競技の記録装置、または、食品の流通経路での温度状況を監視する記録装置等に応用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施例につき、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図において、同一符号は同一または類似部分を示すものである。
(実施例1)
センサシステム用半導体装置すなわちセンサチップの構成の一実施例を図1(a)、(b)に示す。図1(a)には、センサチップの一方の主面を、また、図1(b)には、図1(a)とは逆の主面を示している。センサチップ(SCHIP1)は、第1の半導体集積回路(CHIP1)、第2の半導体集積回路(CHIP2)、発光ダイオード(LED)チップ(LED1)、コンデンサ(C1、C2、C3)、インダクタ(L1)、及び、これらを搭載するための基板(BO1)から構成される。このうち、基板(BO1)には、これらのチップ間を結線するための配線パターン、後述する高周波送受信回路で使用するアンテナ(ANT1〜4)パターン、及び、後述するセンサ回路(GS1)で使用する電極(GSR1〜4)パターン等が、銅あるいは金等の金属で描かれている。これらについては、通常、MCP(Multi Chip Package)チップとして用いられているのと同様のもので構成されている。
【0027】
センサチップの断面図を図2(a)、(b)に示す。図2に示されるように、第1の半導体集積回路(CHIP1)、及び、第2の半導体集積回路(CHIP2)は、本発明に特有な配置で基板(BO1)に搭載されている。すなわち、CHIP1、CHIP2は、基板上の同一面ではなく、それぞれ、第1の基版面(SIDE1)、及び、第2の基版面(SIDE2)に搭載されている。また、図2に示すように、これらの半導体集積回路チップ、コンデンサ、インダクタ、及び、基板は、防水樹脂(MO1)でモールドされており耐水性である。これらのモールドは、通常のMCPと同様のものが使用可能であるが、CHIP1の上面に、赤色/赤外光を透過する材質のモールド材により、本発明に特有な光学窓(PWIN1)を設置する点に特徴がある。より詳細には、この光学窓(PWIN1)は、基板MO1上に搭載されたLED1及びCHIP1上の専用の光学センサ上に設置される。これは、後述するように、LED1が発生する、赤色あるいは赤外光を外部に向けて照射し、CHIP1に設けられた専用の光学センサにより、反射光等を検知できるようにするためである。
【0028】
また、図2(a)に示すように、コンデンサ(C1、C2、C3)及び、インダクタ(L1)には、通常のMCPチップで使用されているものと同様のチップ形態のものが使用可能である。なお、コンデンサについては、図2(b)に示すように、基板を多層基板で形成して、そのうちのいくつかの層をペアで使用する、積層コンデンサ(C1A、C2A、C3A)で構成することも可能である。
【0029】
これらの半導体集積回路(CHIP1、CHIP2)を用いたセンサチップ(SCHIP1)を使用することにより、小型・軽量の携帯型健康管理機器を実現することができる。センサチップを健康管理機器へ応用した一例を図3に示す。この実施例では、センサチップは、ばんそうこう等のシール(BA1)により、ユーザ(US1)の皮膚等(SKIN1)に装着するように構成されている。センサチップのSIDE1面を、ユーザの皮膚等に接触させるように装着する。このように装着することで、後述する各種センサにより、ユーザの体調または健康状態を検知することが可能となる。なお、この実施例ではばんそうこう等のシールBA1により装着しているが、皮膚等に接触させることができれば、必ずしもこれに限られない。例えば、腕時計の裏側にセンサチップを装着することによっても、実現可能である。
【0030】
検知されたデータは、第1の半導体集積回路CHIP1上にある、マイクロプロセッサCPU1、及び、高周波送信回路RF1を経由して、無線(WL1)により外部の健康モニタ(MONITOR1)等に送信される。第1の半導体集積回路(CHIP1)は、マイクロプロセッサ(CPU1)、メモリ(MEM1)、外部との通信を行う高周波送受信回路(RF1)、基板(BO1)上に設けられたアンテナ(ANT1〜4)の送受信等を切り替える高周波スイッチ(RW1)、温度センサ(TD1)、加速度センサ(AS1)、赤外/赤色光センサ(PD1)、インピーダンスセンサ(GS1)等で構成されるセンサ回路、センサからの信号を増幅してディジタル量に変換するA/D変換回路(AD1)、基板上に搭載された発光ダイオード(LED1)を駆動するドライバ(LD1)、上記CPU1、MEM1、RF1、RW1、TD1、AS1、PD1、GS1への電源供給を制御する電源制御回路(PC1)、PC1のオン/オフを制御するタイマ回路(TM1)、及び、コンデンサC1に蓄積された電荷量を監視する電荷監視回路(CW1)から構成される。
【0031】
マイクロプロセッサCPU1は、メモリMEM1上に格納されたプログラム(PR1)に従って、チップ上の各回路の動作モードを設定して制御して、各センサを駆動して検知を行う。また、後述するように、検知されたデータを圧縮する、または、ID情報を付加する等の加工を行った後に、上記高周波送信回路RF1経由で、無線にて外部に送信する。さらに、RF1内蔵の受信回路により、外部からの指令、例えば、マイクロプロセッサCPU1における動作モードのパラメータの設定変更が可能である。また、プログラムPR1に適切なプログラムコードを付加することにより、任意の処理を追加することが可能である。
【0032】
メモリMEM1は、プログラムPR1の以外にも、例えば、センサからの取得データや、マイクロプロセッサCPU1における動作モードのパラメータ等の情報を保持する。メモリMEM1は、典型的には、低消費電力でデータ保持可能なSRAMや、電源供給オフ時でもメモリ内容が保持されるNOR型あるいはAND型等のフラッシュメモリ等で構成される。しかし、低消費電力でメモリ内容が保持できれば、他のタイプのメモリも使用可能である。
【0033】
第2の半導体集積回路(CHIP2)は、微弱な外部振動を電気エネルギーに変換する小型の発電チップである。非特許文献2に開示されているように、床、壁、人体等の外部振動エネルギーを利用すれば、0.1mW程度の発電が可能となる。以下、本発明の発電チップの動作を具体的に説明す場合の、電圧V(V0→V1)と静電エネルギる。
【0034】
発電チップCHIP2は、外部の振動により静電容量が変化する可変容量コンデンサ(CM1)、及び、電力回収回路(PC2)から構成される。電力回収回路PC2は、可変容量コンデンサCM1により外部振動の力学エネルギーから変換された電気エネルギーを回収して、基板上のコンデンサ(C3)を充電するように機能する。可変容量コンデンサCM1は、通常、MEMSプロセスによりシリコンチップ上に微細構造で構成される。具体的には、図1(b)に示すように、2つの固定電極(ST1、ST2)及び、可動電極(VT1)から構成される。このうち、可動電極(VT1)はアンカー(PN1〜4)以外のどこにも固定されておらず、CHIP2上に浮いている。このため、CHIP2がある加速度を持って振動等の運動をすると、これにより発生する慣性力により、2つの固定電極(ST1、ST2)間を振動する。この振動により、これらの電極間の距離が変わり、静電容量が変化する。
【0035】
図4に示すのは、可変容量コンデンサ(CM1)の電荷Qを一定のQ1にして、外部振動によりCM1の静電容量がC1→C2(C2<C1)と変化したー(E1→E2)の変化を示す図である。このように、外部振動により静電容量が変化する結果、蓄えられる静電エネルギーが増加する(ΔE=E2−E1)。そして、この静電エネルギーの増加分ΔEを回収することにより、小型発電機としての機能を発揮する。
【0036】
CHIP2に形成する電力回収回路の一実施例を図5に示す。この回路は、非特許文献3に開示されているものと同様の構成をしている。可変容量コンデンサCM1の他に、コンデンサC2、C3、インダクタL1、PMOSトランジスタTP1、NMOSトランジスタTN1、及び、これらのトランジスタのオン/オフのタイミングを制御するドライブ回路(PDR1)から構成される。ドライブ回路PDR1は、外部振動による可変容量CM1の静電容量の変化に応じて、図6に示すタイミング(T1〜T5)で、TN1及び、TP1のオン/オフを制御する。電力回収回路の動作は本発明の特徴部分ではないため、ここでは説明を省略する。発生した電力については、最終的には、コンデンサC3、ダイオードD3を経てVDD1ラインに供給され、第1の半導体集積回路CHIP1の電源制御回路PC1に接続されたコンデンサC1に充電される。なお、CM1に元となる電荷を供給するコンデンサC2には初期電荷を与える必要がある。この目的で、本発明のセンサチップにおいては、コンデンサC2の充電をアンテナ(ANT1〜4)及び、整流器(D2)を経由して、RFIDリーダー等により外部から誘導された高周波電力により非接触で充電を行う。
【0037】
可変容量コンデンサCM1は、半導体プロセスとコンパチブルなMEMSプロセスで作成可能である。このため、1つの半導体集積回路に混載することも可能である。しかし、図4に示されるように、取り出される電気エネルギーは、コンデンサCM1の静電容量(最大容量C2と最小容量C1の差)、及び、初期電荷Qの2つの値に依存する。すなわち、コンデンサCM1の静電容量が大きいほど、また、初期電荷Qが大きいほど、大きな電気エネルギーを取り出すことができる。このため、静電容量は大きいものの方が好適であり、通常、数100pF程度のものが必要とされる。静電容量を大きくするには、図1に示すCM1の面積を大きくするほかに、櫛状に形成された電極間の溝の深さを深くする必要がある。このため、1cm×1cm×0.5mm(深さ)程度のサイズのものが必要とされる。
【0038】
なお、この溝はエッチングにより形成されるが、通常の半導体集積回路では、0.5mmエッチングは必要とされない。しかし、発電効率の点から考えると、溝は深ければ深いほど、より好ましい。一方、半導体集積回路を作成する際のコストを考えると、コンデンサCM1の面積は小さければ小さいほうがより好ましい。また、エッチングで削る溝も、それほど深くないほうがより好ましい。
【0039】
この相反する問題を解決するため、本発明のセンサチップでは、図1に示すように、可変容量コンデンサCM1及び、発電制御回路と、それ以外の回路を別々の半導体集積回路で構成する。このような2チップ構成により、それぞれのチップに特化した専用プロセスにて作成することが可能となり、溝の深さも任意に形成できる。さらに、本発明に特有な構成として、これらのチップを、MCP構成で基板の裏表両面(SIDE1、SIDE2)に搭載する。このような構成により、可変容量コンデンサCM1の面積を、センサチップと同程度のサイズにまで大きくできるため、大容量のものが実現可能となる。さらに、図1に示すように、基板BO1の他のエリアに電力回収回路として必須となる、コンデンサ(C2、C3)、インダクタ(L1)、また、センサ回路で必要になるLEDチップ、GSR電極、さらに、高周波送受信回路で必要となるアンテナ等を、基板上に搭載するか、または、配線パターンとして形成できる。つまり、本発明に特有な図1の構成により、ほぼチップサイズの大きさ(〜1cm角以下)に、発電機、センサ、CPU、RFを集積したセンサシステムが実現可能となる。この結果、自律的なセンサシステムを実現することができる。
【0040】
以上のように、本発明のセンサチップにおいては、自律的に電源を得ることが可能である。しかし、従来の技術では、1cm角程度のサイズでは、発電電力は0.1mW程度に限られている。一方、CMOSプロセスで作成された半導体集積回路では、マイクロプロセッサ、メモリ(特にSRAM)は、クロック周波数を100KHz程度に下げることにより、消費電力を数10μWのオーダにまで押さえることが可能である。本実施例の場合、マイクロプロセッサが受け持つ一番重い処理は、データの圧縮、程度の作業であり、100KHz程度のクロック周波数でも十分処理可能である(例えば、クロック周波数100KHzならば、1秒間に10万サイクル命令を実行可能。1m秒間でも、100サイクル命令を実行可能である)。このため、上記発電チップにより電源を供給してプロセッサ、メモリその他を動作させることが可能である。
【0041】
しかし、高周波により無線で外部と通信を行うには、例えば、低消費電力と言われている、Bluetooth等の小電力無線インタフェースでも、1mW程度のRF出力が必要とされている。実際には、供給電力をRFに変換するRFパワー付加効率が50%程度であるので、数mW程度の電力が必要になるものと予想される。このため、従来から、より低消費電力な無線方式が提案されているが、1mW程度の供給電力が必要とされている。このように、RF部分が電力を最も必要としており、上記発電チップからの微小電力そのままでは、高周波により外部と通信を行うのは困難である。
【0042】
この問題を解決するために、本発明では、コンデンサC1、タイマTM1、スイッチトランジスタTP2、電荷監視回路CW1、及び、電源制御回路PC1から構成された低消費電力動作方式を用いる。すなわち、CHIP1の各回路には常時通電せず、その代わりにコンデンサC1に発電電力を蓄える。タイマTM1により設定された時間間隔が経過したと判断された場合、あるいは、電荷監視回路CW1が十分な電力が蓄えられたと判断した場合のみに、電源制御回路PC1内のスイッチトランジスタを導通させ、他の回路に電力を供給する。つまり、間欠的に検知動作あるいは外部との通信を行う。この超低消費電力動作方式をより具体的に示したのが、図7に示す動作フローチャートである。
【0043】
図7に示されるように、CPU1は常時スリープ状態P110にある。タイマTM1あるいは電荷監視回路CW1からの割り込みによりP120以降の動作状態に遷移する。動作状態においては、メモリMEM1に格納されたプログラムあるいは動作パラメータに従って以降の動作を決定する。例えば、動作パラメータがデータの検知ならば、データセンスルーチンP200を呼び出し、センサ駆動/サブルーチンP210、データ取り出し/加工(圧縮等)サブルーチンP220、データ書き込みサブルーチンP230を順次実行し、センサからデータを取得し、メモリにデータを書き込む。一方、動作パラメータがデータ送信の場合には、データ送信ルーチンP300を呼び出し、データ読み出しサブルーチンP310、識別子生成サブルーチンP320、パケット生成サブルーチンP330、圧縮/変調サブルーチンP340、パケット送信サブルーチンP350を順次実行し、データを送信する。
【0044】
検知データは、図8(a)に示すように、識別子(PS1)+データ(PD1)から構成されたパケット(SPAT1)形式で送信される。このように、送信データに識別子を付加することにより、例えば、本発明のセンサチップが、複数同時に使用された場合においても、外部機器、例えば、図3のMONITOR1側で、どのセンサチップから来たデータなのか判別が可能になる。識別子PS1には、例えば、半導体集積回路CHIP1の出荷時において、メモリMEM1の不揮発メモリ部分に書き込まれた固有のID等チップ固有の情報を使用できる。さらに、図8(b)に示されるように、識別子PS1の他にも、例えば、この情報がセンサチップのどのセンサからの情報なのかの識別情報(センサ種別、PS2)を付加することも可能である。
【0045】
また、動作モード設定ルーチンP120においては、この他にも、電荷監視回路CW1の充電状態を記録したレジスタCR1の読み出しや、あるいは、タイマTM1の時間間隔設定レジスタTR1の書き込みを行う。このようにすることにより、発電チップCHIP2の状況に合わせた動作設定が可能である。
【0046】
図9に示すのは、上記電源制御において使用する、本発明に特有な電源制御回路PC1、電荷監視回路CW1、及び、タイマTM1の構成である。この図に示すように、電源制御回路PC1は、制御論理回路PCC1、スイッチトランジスタTP2から構成される。電荷監視回路CW1あるいはタイマTM1からの信号EP1及び、EP2がローレベルの場合のみ、制御論理PCC1の出力がローレベルとなり、スイッチトランジスタTP2が導通状態となり、VDD2ラインに電源が供給される。その結果、VDD2から電源を供給されている、メモリMEM1、高周波送受信回路RF1、A/D変換回路AD1、センサその他の回路が起動する。
【0047】
電荷監視回路CW1は、典型的には、抵抗R1、R2、基準電圧発生回路VREF1、及び、電圧比較回路COMP1で構成される。電圧比較回路COMP1により、以下の式で与えられるしきい値電圧Vt1と比較し、VDD1>Vt1の場合に、出力EP1をローレベル(=GNDレベル)にプルダウンする。
【0048】
【数1】
【0049】
この基準電圧VR0の電圧値は、バスインタフェースVCNT1経由で、CPU1から変更することも可能である。なお、VREF1、COMP1については、常時給電されるため、例えば、抵抗R1、R2には、高抵抗(数10MΩ以上)等で設計すること等が必要である。これらについては、CMOSプロセスで形成されるのが一般的である。
【0050】
タイマTM1は、発振回路OSC1、プリセットカウンタCOUNT1、COUNT1のプリセット値を保持するレジスタREG1、電荷監視回路CW1が規定電圧になるまでのカウント値を保持するレジスタREG2、及び、CPU1とのバスインタフェースTIF1で構成される。プリセットカウンタCOUNT1は、レジスタREG1に設定されたプリセット値までカウントアップし、出力EP2のローレベルの信号を出力する。このレジスタREG1、REG2の内容は、バスインタフェースTIF1経由で、CPU1から書き込みあるいは読み出しが可能である。なお、これらのレジスタの値は、図7のルーチンP130において設定される。これらの各回路は本発明特有なものではないのでここでは詳細については説明を省略する。なお、このタイマ回路も常時通電されるため、低電力化が必要である。低電力化には、発振回路OSC1の発振周波数を低く押さえるのが好適である。例えば、32KHz程度に設定することにより、タイマTM1の消費電流を、1μA以下に抑えることができる。
【0051】
PC1、CW1、TM1により実現される本発明の超低消費電力動作方式を図10に示す。図10に示されるように、半導体集積回路CHIP1の大部分の回路は、通常は動作しておらず(SLP)、短い時間のみ間欠的に動作する(OPR)。このような間欠動作ににより、前述した電力の問題も解決可能である。例えば、コンデンサC1には、典型的には、1μF程度のものが使用可能であり、例えば、1Vで充電すれば1μクーロンすなわち、1mA程度の電流を1m秒程度、供給可能である。つまり、コンデンサC1の充電電圧を数V(通常3V程度)と設定した場合には、RFパワー付加効率を50%とした場合にも、1mW程度の送信電力で外部にデータを送信することも実現可能である。一方、発電チップの発電電力を0.1mW、コンデンサC1の静電容量を1μFとした場合に、充電をするには、以下の計算式に基づく時間がかかる。
【0052】
【数2】
【0053】
余裕を見て充電に100m秒かかってとしても、1秒間に10回以上、チップを駆動して
、検知あるいは高周波により無線でデータを送信することが可能である。本実施例のように、健康管理機器に使用する場合は、検知に要求される間隔は、最短でも、1秒間に10回も取れれば充分であると考えられる(例えば、比較的周期が短い脈拍でも1秒程度の周期である)。このため、本発明のように、0.1秒(=100m秒)間隔で間欠動作を行ったとしても、実用上何の支障も来たさない。さらに、図7の動作モード設定ルーチンP120で、例えば、10回に1回だけに絞る等の設定を行うことも可能である。最も電力が要求されるデータ送信の頻度を減らせば、コンデンサC1に蓄えられた電荷の消費が押さえられ、充電にかかる時間を短縮でき、検知の回数を増やすことも可能である。このように、本発明のセンサチップでは、本発明に特有な電源制御回路と、MEMSプロセスで作成された超小型発電機を組み合わせることにより、電池なしで自律的に動作することが可能である。
【0054】
図11に示すのは、より高い電源電圧が必要な場合に、本電源制御回路にて使用可能な昇圧レギュレータ(RG1)の構成例である。なお、このレギュレータは必ずしも必要なものではなく、例えば、発電チップの出力電圧を適切に設定すれば不要である。
【0055】
図12に示すのは、本発明のセンサチップにおける、第1の半導体集積回路上に作成される各種センサの構成である。以下、各センサの構成を説明する。図12(a)は、温度センサであり、ダイオードD4、定電流回路CS1、増幅器A1で構成される。増幅器A1によりダイオードD4の順方向電圧の温度による変動(A/D変換回路経由でマイクロプロセッサCPU1に読み込み、適温度係数:〜−2mV/℃)を測定し、後述する宜補正することにより、温度を測定する。これらの増幅器、定電流回路その他については、特に本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略する(以下でも同様)。本センサチップは非常に小型(典型的には、5mm角以下)であり、チップ自身の熱容量は、例えば、人体等と比べると無視できる値である。さらに、本センサチップは非常に低消費電力であるため、チップ自身の発熱は無視できる。このため、本センサチップを図3に示す形態で人体に接触させれば、本温度センサにより、正確に体温を測定することが可能である。なお、この図に示しているのは、温度センサの構成の一例であり、他の構成のセンサも使用可能である。
【0056】
一方、加速度センサは、図12(b)に示されるように、MEMSプロセスで作成された可変容量コンデンサCAS1〜CAS4、及び、差動増幅器A2から構成される。この可変容量コンデンサは、前述した発電チップCHIP2上に構成される発電用コンデンサCM1と、基本的には同じ構造である。図1のCM1と同様に、加速度により生じた慣性力により、可動電極と固定電極間の距離が変わることによりCAS1〜CAS4の静電容量が変化する。例えば、図12(b)で、紙面の上から下へ向かう方向で加速度が生じたとすると、可動電極VT2及び、VT3は、紙面上方へ移動する。このため、CAS1及び、CAS3の静電容量は増加し、CAS2及び、CAS4の静電容量は減少する。したがって、B1の電位は上昇するが、逆に、B2の電位は下降することになる。この結果、差動増幅器A2の出力電位は上昇し、加速度が加わったことが検出できる。
【0057】
このように、発電チップで使用する可変容量コンデンサCM1とは違い、本加速度センサでは容量の変化の相対値が重要であるので、大きな容量は必要とされない。このため、CPUその他の回路と同一の半導体集積回路上に集積することが可能である。なお、検出される電位差は、加えられた加速度に対して線形ではない。このため、場合によっては、後述するA/D変換回路経由でマイクロプロセッサCPU1に読み込んだ後に、CPU1でソフトウエア的に補正する必要がある。このような場合には、メモリMEM1に補正テーブルを格納しておくことが好適である。
【0058】
本加速度センサを使用することにより、例えば、ユーザがどのような動作(座っている、歩いている、走っている)を行っているのかを把握することが可能となる。また、90度で直交する方向(XY方向)に2個使用することにより、二次元の加速度がわかり、ユーザがどちらの方向に向かおうとしているかというような情報が把握できる。さらに、例えば、ユーザの心拍測定等、単純に振動の有無を捉えるセンサとしても利用することが可能となる。
【0059】
図12(c)に示すのは、インピーダンスセンサの構成例である。定電流源CS2、増幅器A3により、本半導体集積回路の外部に設けられた電極GSR1、GSR2間の電圧降下を測定する。定電流源GS2に設定されている電流値で測定された電圧降下を除算することにより、この2つの電極間の電気インピーダンスを測定する。本インピーダンスセンサにより、例えば、ユーザの皮膚SKIN1の電気インピーダンスを測定することができる。マイクロプロセッサCPU1によるデータ処理を併用することにより、Galvanic Skin Reflexが求められ、ユーザの感情状態(怒っている、喜んでいる、悲しんでいる等)、または、ユーザのストレス状態を把握することが可能である。
【0060】
さらに、図12(d)に示すのは、脈拍センサの構成である。本脈拍センサは、フォトダイオードD5、負荷抵抗R4、及び、増幅器A4から構成される光学センサPD1、及び、光学センサPD1の光源となる基板上に搭載された赤色/赤外LED(LED1)、及び、バスインタフェースLIF1とLED1のドライブトランジスタTN3から構成されたドライブ回路LD1から構成される。本脈拍センサでは、測定時にのみ、バスBU1経由でマイクロプロセッサCPU1からの制御信号に基づいて、トランジスタTN3を導通させて、LED1を発光させ、ユーザの皮膚SKIN1に赤色光あるいは赤外光を照射する。照射光(LR1)の反射光/散乱光(LR2)その他をフォトダイオードD5にて受信する。増幅器A4で増幅後、A/D変換回路経由で、マイクロプロセッサCPU1で受信光の強度を測定して、血流量に応じた赤色光/赤外光の減衰量の推移(=脈拍)を測定する。なお、通常のLEDでは、十分な強度の赤外光あるいは赤色光を得るためには、少なくとも1mA程度のドライブ電流が必要である。このため、高周波送受信回路を駆動する場合と同様に、本脈拍センサもコンデンサC1に蓄積した電荷により間欠的に動作させる、本発明に特有な超低消費電力動作方式は必須である。
【0061】
本脈拍センサの測定原理は、赤色光あるいは赤外光を、血液中のヘモグロビンが吸収するため、その吸収量(=光の減衰量)を測定すれば、どの程度の血液が皮膚中に流れているのかがわかるという原理に基づいている。また、ヘモグロビンの光吸収特性は、酸素を吸着している場合とそうでない場合に、吸収特性が変化することが知られており、赤外光と赤色光の2通りについてそれぞれの吸収値を測定すれば、簡単な数式により、血液中の酸素飽和度が推定できることが広く知られている。この酸素飽和度を活用すれば、血糖値その他が推定可能である。
【0062】
本発明のセンサチップにおいても、LEDを赤色あるいは赤外光の2系統用意して、時分割にて測定することにより、この酸素飽和度を測定することが可能である。また、脈拍間隔は、ユーザが緊張状態にある、または、リラックス状態にある等の感情状態と深い相関関係がある。本センサチップに搭載のマイクロプロセッサCPU1を活用することにより、単にユーザの脈拍のみではなく、ユーザの健康状態や、感情等についての情報を把握することが可能となる。
【0063】
以上のセンサの出力はアナログ値であるため、CPUに取り込んで、RF経由で無線で外部機器に送信するためには、ディジタル値に変換する必要がある。このアナログ値からディジタル値への変換は、それぞれのセンサの出力に、A/D変換器を接続すれば実現されるが、チップ面積や消費電力の点で、複数のA/D変換回路を設置するのは好ましくない。このため、図13に示すA/D変換回路にて、一括してディジタル値への変換を行うほうがより好ましい。
【0064】
図13に示すように、A/D変換回路(AD1)は、バスインタフェース回路ADIF1、A/D変換回路本体であるADC1、及び、SW1〜SW3で構成される入力切替スイッチASW、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1、これらの回路の動作パラメータを設定するA/D変換制御回路ADCONT1から構成される。本発明に特有な入力切替スイッチASW、及び、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1は、バスBU1経由でCPU1から送信される制御コマンドに応じて、制御回路ADCONT1にて動作パラメータを設定する。
【0065】
例えば、温度を測定する場合には、測定に先立ち、CPU1により、入力切替スイッチASWがI1を選択(SW1:D1、SW3:D1)し、プログラマブルゲインコントロール増幅器PGA1の設定ゲインが温度センサに相応しいゲインになるように、バスBU1経由で、ADCONT1内の制御レジスタを設定する。このように設定することにより、温度センサの出力STをPGA1経由でA/D変換器に取り込んでディジタル値に変換し、バスインタフェースADIF1経由でCPUに取り込む。同様に、他のセンサの出力を読み込みたい場合には、ADCONT1内の制御レジスタに、目的のセンサに合わせたゲイン設定及び、入力切替スイッチ設定を書き込んで、ADC1を駆動する。このような構成により、チップサイズの増加を抑え、さらに、消費電力の増加を抑えることが可能である。
【0066】
なお、入力切替スイッチを構成するSW1〜3には、アナログ信号をロスなく通過させるスイッチが必要であり、例えば、図14に示す、PMOSトランジスタ及び、NMOSトランジスタから構成されたパストランジスタタイプのスイッチが使用可能である。また、本センサチップでは、検知すべき情報が人体の生体情報に限られているので、A/D変換回路ADC1には、低速なタイプのもので十分である。
【0067】
図15は、本発明のセンサチップにおいて、外部機器に検知した情報を送信するために使用する高周波送受信回路RF1、及び、RF1とアンテナ等との接続関係を切り替える高周波スイッチRW1の構成例を示した図である。高周波送受信回路RF1は、バスインタフェースRFIF1、送信に使用する変調回路MOD1、送信アンプPSA1、及び、受信に使用する復調回路DMOD1、受信アンプPRA1、及び、これらの回路の動作パラメータをCPU1によりバスインタフェースRFIF1により設定された制御レジスタの内容に応じて制御する制御回路RFCONT1から構成される。これらの各回路は特に本発明に特有なものではないので、ここでは詳細は説明しないが、データ送信時には、CPU1がRFCONT1内の制御レジスタを送信モードに設定し、バスインタフェース経由で変調器MOD1に送信データを送る。MOD1は送られてきたデータを元に発振回路VCO1で生成された搬送波を変調する。変調方式には、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の様々な方式が存在するが、本発明に特有なものではないので、ここでは詳細な説明は省略する。以上のようにして、変調された搬送波は、RFCONT1にてゲインコントロールされた送信アンプPSA1により増幅され、高周波切替スイッチRW1に送られる。
【0068】
高周波スイッチRW1は、非特許文献4に開示されているように、通常、PINダイオードの半導体素子やCM1及びCASと同様に、半導体チップ表面にMEMSプロセスによって作成された微細接点等により構成される。コントロール端子RC1からの制御信号により、PINダイオードあるいはMEMS微細接点のバイアス電圧を制御して、RF信号の行き先を切り替える。具体的には、送信時には、CPU1経由で設定されたRFCONT1内部の設定レジスタの内容に従って、RC1端子経由で、RS1とRS3間が導通するように設定される。同様に、受信時には、RS3とRS2間を導通状態に設定して、復調回路DMOD1により、アンテナからの高周波信号を復調する。復調された信号は、バスインタフェースRFIF1経由でCPU1が読み取ることが可能である。以上の受信機能を、メモリMEM1内に格納される動作パラメータの設定に使用することもできる。例えば、センサチップの検知の起動間隔や、各センサの動作パラメータ(増幅器のゲイン等)を変更可能である。
【0069】
RW1は、データ送信時あるいはデータ受信時以外の場合においては、RS3とRS4が導通状態に設定される。このため、アンテナから受信した高周波電力は、整流器D2を通して発電チップに元となる電荷を供給するコンデンサC2、及び、整流器D1を通じて本センサチップの間欠動作を実現するコンデンサC1に蓄えられる。このように、本発明のセンサチップでは、外部からアンテナ経由で電力を供給することも可能である。
【0070】
前述したように、RF送信には比較的大きな電力が必要である。このため、通常は、データの検知だけを実行し、メモリにデータを蓄えておき、例えば、1日に一回だけ、外部の健康管理機器(MONITOR1等)に送信するという方式により電力消費を抑えることも可能である。
【0071】
また、非特許文献5に開示されているような、超広帯域無線通信方式であるUWB(Ultra Wide Band)を用いることにより、さらなる低消費電力化も可能である。UWBでは、前述したPSKやASK等とは異なり、高周波パルス信号そのものを変調してデータを送受信する。例えば、送信したいデータが“1”の時はパルスを送出し、“0”の時は、パルスを100ps遅らせて送出する等により、パルス列を送信データにて変調する。このため、図16の高周波送受信回路RF2に示されるように、パルスを発生するパルスジェネレータPGEN1と、そのパルスを送出するかどうかをコントロールする変調器MOD2のみで構成可能である。すなわち、図15で示したPSKやQAM等の狭帯域の通信方式では必須であった送信アンプが不要となり、高周波送受信回路の回路規模を小さく抑えることが可能である。この結果、チップの製造コストを抑えられると同時に、チップの低消費電力化が実現できる。
【0072】
さらに、UWBでは、比較的短い通信距離しか要求されない場合、RF送信電力を抑えることが可能である。このようなセンサチップでは、例えば、腕に貼り付けたセンサチップから、胸ポケットに入れた携帯型健康機器にデータを送信できれば十分である(例えば、通信距離は数10cm程度で十分である。)。このため、RF送信電力を、例えば、数10μWに設定することも可能である。このように、UWBは本発明のセンサチップにより望ましい無線通信方式である。
【0073】
なお、UWBでは、データ受信の際に、相関器(図16のCOR1)が必要となる。この相関器は、通常、受信チップ内のパルスジェネレータから供給されるパルス列と、受信されたパルス列の相関をとる。具体的には、例えば、パルス列が100ps遅れた位置にあるかを検出して、データを再生する働きをする回路である。この相関器には、一般には、複数のA/D変換器が必要となり、複雑かつ規模の大きい回路が必要となる。このため、UWBの持つ「送信機が簡単に構成可能」という利点を十分生かすことができない可能性もある。
【0074】
そこで、ハイブリット構成の高周波送受信回路RF3を図17に示す。この構成では、送信だけを図16で説明したUWB通信方式で行う(パルスジェネレータPGEN1、変調器MOD2)。一方、受信は、図15で説明したPSKやQAM等の狭帯域の通信方式で行う(受信アンプPRA3、発振器VCO1、復調器DMO3)。このようなハイブリット構成により、UWBの受信には必須であった複雑な相関器が不要になり、回路規模が小さく、かつ、消費電力(〜RF送信電力)を抑えることができる。このように、図17に示すハイブリット構成の高周波送受信回路RF3は、本発明の目的に好適な構成の送受信回路である。
【0075】
以上のセンサチップを用いて健康管理機器を構成したものを図3に示す。この図において、健康モニタMONITOR1は、通常、高周波送受信回路(RF10)、変復調回路(MOD10、DMOD10)、プロセッサ(CPU10)、メモリ(MEM10)、表示装置(DISP10)から構成される(図18)。これらの各回路については、本発明に特有なものではないのでここでは詳細な説明は省略する。
【0076】
MONITOR1の動作フローチャートを図19に示す。データ読み取りルーチン(P400)及び、データ受信ルーチン(P410〜413)により、RF10にて、無線接続WL1経由でセンサチップからの信号を受信し、DMOD10にて復調してセンスデータ(SD1)を取り出す。
【0077】
以上のようにして復調されたセンスデータのデータ構造を図20に示す。図20に示すように、センスデータSD1は、チップID(CID)、センサID(SID)、データ(DATA)の組で構成され、どのチップのどのセンサからのデータなのかを判別できるように構成されている。以下、体調診断ルーチン(P420)にて、体調を診断し、結果表示ルーチン(P430)にて、診断結果をDISP10上に表示する。なお、図3及び、図19に示すように、体調診断ルーチンP420においては、無線接続WL2にて、携帯電話網あるいはインターネット等の広域ネットワーク網(WAN1)上に接続された健康情報データベースサーバ(DSV1、DB1)に接続して、体調情報を照会して、より正確な診断結果を得ることも可能である。
【0078】
また、図21に示すように、センサチップの送受信手順を簡素化することも可能である。例えば、図21(a)は、データを検知したらメモリに蓄積せずにそのまま送信する例である。図21(b)は、チップID等の識別子データを加えずに、そのまま送信する例である。送受信手続きを簡素化することにより、例えば、メモリ容量を小さくでき、CPUの機能を削ってチップ面積及び電力を減らすことが可能である。このため、用途によっては、このような構成を取ることもできる。
【0079】
以上のように、本発明のセンサチップを使用することにより、電池不要な小型かつ軽量のメンテナンスフリーな健康管理機器が実現できる。本発明のセンサチップを用いれば、ユーザが長時間装着することが可能となり、継続的にデータを取得できる健康管理機器が実現できる。また、本発明のセンサチップでは、チップ内にすべてのセンサを内蔵し、検知データは、無線にて外部に送信される。このため、センサと本体を接続するワイヤ等は全く必要がない。このため、非常に使い勝手がよく、ユーザは全く無負荷で本発明のセンサチップをつけて、各自の生体データを長時間継続的に取り続けることが可能である。また、半導体集積回路で作成することにより、大量生産が可能となる。このため、非常に安価な価格で製造することが可能となる。
(実施例2)
実施例1では、MCP構成により、本発明のセンサチップを構成する例を説明した。一方、MEMSプロセスは半導体プロセス互換であるため、MEMS可変容量コンデンサを、センサ、マイクロプロセッサ等の他の回路とともに、1チップ上に集積することが可能である。MEMS可変容量コンデンサをセンサ、マイクロプロセッサ等の他の回路と混載して形成したセンサチップを図22に示す。このような構成にしてもセンサチップの小型化を図ることができる。しかし、MEMS可変容量コンデンサに要求される面積は比較的大きい。このため、図22に示すような構成を採ると、大きなMEMS可変容量コンデンサを用いる場合には、センサチップの十分な小型化が図りにくい。
【0080】
そこで、小型化を図る上でより望ましい態様を図23(a)〜(c)に示す。これらの図において、各回路PC1、PC2、CPU1は、実施例1で説明したものと同様の構成である。このセンサチップでは、MEMS可変容量コンデンサをチップの裏面(SIDE2)に形成する。すなわち、チップの表面(SIDE1)にセンサ、マイクロプロセッサ等の回路を形成し、チップの裏面(SIDE2)にMEMS可変容量コンデンサを形成するという、分離型構造によりセンサチップを形成するものである。このような構造を採用することにより、半導体回路とMEMS可変容量コンデンサを同じ面に形成するセンサチップ(図22)と比較して、チップ面積をより小さくすることができる。
【0081】
また、チップの裏面にMEMS可変容量コンデンサを形成するという上記方法ではなく、MEMS可変容量コンデンサを他のチップ上にあらかじめ形成しておき、そのMEMS可変容量コンデンサが形成されているチップと、センサ、マイクロプロセッサ等が形成されているチップとの裏面同士を貼り合わせることにより、上記方法によるものと同程度まで面積を小さくしたセンサチップを実現することもできる。
【0082】
さらに、図には示さないが、センサ、マイクロプロセッサ等を集積したチップの表面(SIDE1)の上をパッシベーション膜で覆い、その上に、MEMS可変容量コンデンサを形成することによっても、面積をより小さくしたセンサチップを実現することが可能となる。
(実施例3)
実施例1では、図1に示すように、本発明のセンサチップに特有なMCP構成で、MEMS可変容量を使用した小型発電機、センサ、マイクロプロセッサ、メモリ、高周波回路、電源制御回路等を集積することにより、小型・軽量の健康管理機器を実現できることを示した。一方、これ以外にも、同程度のサイズで、0.1mW程度の電力を供給可能な発電機または電池が存在する。
【0083】
例えば、電磁誘導を利用する発電機を用いた実施例を図24(a)、(b)に示す。図24(a)はチップ断面を、また、図24(b)は、チップ裏面を表している。この発電機は、非特許文献6に開示されているものと同様の構成である。基板BO2のSIDE2面に、中空の領域(=キャビティ)CA1を形成する。キャビティCA1内に、永久磁石MA1、及び、MA1を基板BO2に吊すスプリング等の支持材ST1を装備する。さらに、基板BO2のSIDE2面上に配線パターンによりスパイラルタイプのインダクタSL1を形成する。外部振動により支持材ST1で保持された永久磁石MA1が慣性運動を行い、この慣性運動による磁束の変化を電磁誘導の原理により、インダクタSL1により電気エネルギーに変換される。実施例1で説明した本発明の超低消費電力制御方式を併用することにより、実施例1と同様の小型センサチップを実現することができる。
【0084】
太陽電池BA3を使用してセンサチップを構成した実施例を図24(c)、(d)に示す。図24(c)はチップ断面を、また、図24(d)はチップ裏面を表している。基板BO3のSIDE2面に太陽電池を搭載する。この図に示すように、太陽電池BA3は、モールドMO3を露出させる必要がある。もしくは、CHIP1の上部に形成された光学窓PWIN1と同様の素材により、BA3上に光学窓を形成する必要がある。照射される光の強さにより変動するが、太陽電池自体は、0.05〜1mW/cm2程度の発電能力を有する。使用時には、ある程度の光を照射する必要がある。このため、図24(c)に示すように、太陽電池BA3は人体に接触されるSIDE1面とは逆のSIDE2面に配置されることがより望ましい。
【0085】
温度差で発電可能なゼーベック素子BA4を使用した実施例を図24(e)、(f)に示す。図24(e)はチップ断面を、また、図24(f)はチップ裏面を表している。ゼーベック素子は、半導体の一種であるN型BiTe及びP型BiTeから構成されるPN接合からなり、PN接合に温度差を与えると、起電力(〜20mV)が発生するという物理現象を利用して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。図24(e)に示すように、本実施例のセンサチップSCHIP5では、ゼーベック素子による発電機BA4は、基板BO4のSIDE2面に配置されている。このゼーベック素子の両端は、良好な熱伝導特性を有するヒートスプレッタHT1、HT2を介して、基板BO4あるいは外気と熱的に結合され、これらの温度差により発電を行う。このため図24(e)のように、ヒートスプレッタHT1、HT2間は、断熱材INS1により熱的に絶縁状態にする必要がある。実使用時には、図3に示すように、HT1側には人体の体温、HT2側には外気温という状態で使用され、ユーザの体温と外気温の差を利用して発電を行う。
【0086】
小型のボタン電池BA5を使用した実施例を図24(g)、(h)に示す。図24(g)はチップ断面を、また、図24(h)はチップ裏面を表している。図24(a)〜(f)に示す実施例とは異なり、発電機構を持たないため永遠に使用することはできない。しかし、ボタン電池は、時計で使われる小型のものでも20mAH程度の容量(LR41)があるため、本発明の低消費電力制御方式と併用すれば、電池交換せずに数年間使用することができる。
【0087】
以上の実施例のとおり、本発明のセンサチップは、種々の発電機または電池により構成することが可能である。また、これらの異なるタイプの発電機または電池を組み合わせて使用することもできる。
【0088】
例えば、図1のMEMS可変容量型の発電機と、図24(g)、(h)のボタン電池を組み合わせて使用して、検知動作はMEMS可変容量型の発電機からの電力で行い、無線により検知データを外部機器に送信する場合にはボタン電池を補助的な電源として利用するというような、ハイブリット構成にすることも可能である。このようなハイブリット構成のセンサチップを用いれば、到達可能距離を伸ばすことや、送信時間を拡大する、ということがより容易に実現できる。
(実施例4)
以上の実施例では、センサチップに内蔵する微小電力RF送信回路によりセンサデータを直接、外部機器(例えば、図3の健康管理モニタ)に送信する例を説明した。しかし、実施例1でも説明したように、送信できるRF電力が限られている。このため、外部機器との無線接続距離は、通常、1〜2mとされている。さらに、実施例3で説明したようなボタン電池とのハイブリット構成を採用した場合にも、電池寿命を考慮すると、送信電力をむやみに増加させることもできない。この問題を解決する目的で使用するのが、本実施例で説明する小型無線中継チップである。
【0089】
小型無線中継チップの一実施例を図25に示す。小型無線中継チップRCHIP1は、例えば、部屋RM1の床または壁などに設置され、実施例1〜3で説明したようなセンサチップ(SCHIP1〜3)が送信するパケットデータ(PD10〜PD13)を受信し、1つにまとめた後に外部機器MA10に再度送信(=中継)する。この無線中継チップを使用して、順次、データを中継して行くことにより、データの到達距離を拡大することができる。
【0090】
小型無線中継チップのメインチップが配置された面(SIDE1)の構成を図26に示す。この図では示していないが、チップ面と逆のSIDE2面には、通常、図1(b)に示すものと同様のMEMS可変容量型発電機チップ、または、図24(a)〜(d)の発電機または電池が、MCP構成で1チップ上に集積されている。この他にも、アンテナ、コンデンサその他を集積してもよく、特に電源等を必要とせずに、このチップ単体で動作することが可能である。
【0091】
図26のように、本実施例の特徴部分であるCHIP5は、マイクロプロセッサCPU1、メモリMEM1、高周波送受信回路RF1、電荷監視回路CW1、タイマTM1、及び、電源制御回路PC1から構成される。これらの各回路の構成は、通常、実施例1で説明したセンサチップのメインチップCHIP1のものと同様のものである。
【0092】
小型無線中継チップの動作フローチャートを図27に示す。実施例1で示したセンサチップと同様の低消費電力動作方式により、通常はスリープ状態P110にあり、タイマTM1、及び、電荷監視回路CW1からの起動信号により、間欠的に立ち上がり、データ受信P410、データ送信を行う。なお、図25の動作フローチャートにおいては、データ受信P410を、データ送信P120よりもより高い頻度で起動させる必要がある。これは、あらかじめ余裕を持ってデータ受信をすることにより、センサチップSCHIP1〜3からのデータの取りこぼしを回避するためである。しかし、このように、データ受信P410の起動頻度を密にしたとしても、受信動作は送信動作よりも低消費電力であるので、問題にならない。
【0093】
また、図27のP320ルーチンにおいて、センサチップからのセンサデータに、本無線中継チップの固有のID(RID20)を付加することも可能である。次の実施例5で説明するとおり、この中継チップIDを受信側で取り出すことにより、どの経路を経由して、データが受信されたのかを認識することが可能になる。
(実施例5)
次に、本発明のセンサチップまたは無線中継チップを用いた応用例について、図28に従って説明する。
【0094】
図28(a)は、家電、ゲーム機、ロボット型玩具等の機器(EM50)の制御に、本発明のセンサチップを応用した例である。この図に示されるように、ユーザUS50は、本発明のセンサチップSCHIP50、51を、例えば、図3に示す形態で体に装着して機器EM50を使用する。機器EM50は、本発明のセンサチップSCHIP50、51から無線接続WL50経由で制御信号を受信するRF50、及び、受信された制御信号に従って、EM50の動作や動作パラメータを設定する、マイクロプロセッサCPU50、メモリMEM50、表示装置DISP50、データベースDB50、及び、携帯電話網またはインターネット等の広域ネットワーク網に接続するネットワークインタフェースNI50、さらに、機器EM50の移動などに使用されるモーターMO50から構成される。機器EM50には、典型的には、電子ロボット玩具等が想定され、例えば、本発明のセンサチップSCHIP50、51で検知されたユーザの情報に応じて、動作を変えることにより、あたかも、ユーザの意図を汲み取って動作しているかのような、高品位の動作が実現できる。
【0095】
具体的には、本発明のセンサチップ内の脈拍センサあるいはインピーダンスセンサから取得された脈拍情報、GSR情報を元に、CPU50にて、ユーザの感情あるいは心理状態を推定する。ユーザが悲しんでいると判断した場合には、モーター50を起動してなぐさめる等の動作を行う。また、ユーザが緊張状態にあると判断した場合には、緊張を和らげる鳴声をスピーカSP50から発声させる等の行動を行う。この他にも、センサチップ内の加速度センサにより検知されたユーザの手振り等の動き情報により、例えば、ユーザの意図する方向を向く等の動作をさせることが可能である。さらに、この手振り等の情報を、家電機器へのボタン入力の代りとして利用することも可能である。このように、本センサチップの応用範囲を非常に広い。
【0096】
なお、ここで説明したのは代表的な一実施例であり、ユーザの生体情報により家電機器の制御するような応用例、例えば、ユーザの体温に応じてエアコンの冷房設定を変えるといった用途等にも、本発明のセンサチップは応用可能である。
【0097】
センサチップ及び無線中継チップを、サッカー等のスポーツ競技の記録に応用した一実施例を図28(b)に示す。この実施例では、サッカー選手US60は、足などに本発明のセンサチップ(SCHIP60、SCHIP61)を装着している。SCHIP60、61において検知された情報は、サッカー競技場PI60内に規則的に設置された、本発明の無線中継チップRCHIP60〜64により受信され、実施例4で説明したとおり、無線中継チップのIDを付加されて、最終的には、基地局BSTA60において受信される。基地局BSTA60は、無線中継チップRCHIP60〜64から、無線接続WL60経由でセンスデータを受信するRF60、センスデータを解析して、選手の動きまたは脈拍等の健康状態を解析する、マイクロプロセッサCPU60、メモリMEM60、データベースDB60、及び、携帯電話網、インターネット、または、専用ネットワーク網等の広域ネットワークWAN60に接続するための、ネットワークインタフェースNI60から構成される。基地局BSTA60では、パケットデータの解析を行い、無線中継チップにおいて付加された中継チップのIDからセンサチップの発信場所を特定し、各選手が現在競技場のどの地点にいるかをリアルタイムで解析する。同時に、検知された脈拍等の生体情報から各選手の疲労度が推定でき、例えば、選手交代等の判断に使用することも可能である。さらに、広域ネットワークWAN60経由で、解析された情報を転送することにより、WANに接続された、例えば、BS60等のテレビ放送局でテレビ放送等に活用することが可能である。
【0098】
なお、ここで説明したのはサッカー競技だけであるが、その他のスポーツ競技にも使用可能であることは言うまでもない。このように、本発明のセンサチップ及び、無線中継チップを活用することにより、スポーツ競技において、各選手の位置をリアルタイムでモニタすることが可能となる。なお、従来から、RFIDチップを使用してマウス等の実験動物の動きを検出する装置は提案されている。しかし、サッカー競技場のような広いエリアで使用するには、高価なRFIDリーダーが大量に必要になる。また、莫大な電力を消費するという問題がある。これに対して、本発明のセンサチップ/無線中継チップは非常に低消費電力で実現可能である。このように、本発明のセンサチップ/無線中継チップを使用することにより、実用的なスポーツ競技記録装置を提供することができる。
【0099】
食品流通管理向けに、本発明のセンサチップを使用した一実施例を図28(c)に示す。この図に示されるように、食品FOOD70に本発明のセンサチップを付加する。食品FOOD70は、典型的には、ワインあるいはビール等が想定される。この図に示されるように、本発明のセンサチップは、ワインビンまたはビールビン等に添付され、実施例1で説明したように、ある一定期間でセンサを起動して、内蔵温度センサにより温度を継続的に測定し、メモリMEM70上に蓄積する。最終的に、消費者の手元に渡った段階にて、リーダーREADER70にて、メモリに蓄積された情報を読み取る。READER70は、センサチップから無線接続WL70にて、検知データを読み取るRF70、及び、読み取られたデータを解析して表示するマイクロプロセッサCPU70、メモリMEM70、表示装置DISP70から構成される。このREADER70には、ネットワーク装置NI70を内蔵することも可能であり、NI70経由で、携帯電話網またはインターネット等の広帯域ネットワーク網WAN70を経由して、データ管理サーバSV70内のデータベースDB70にアクセスすることが可能である。すなわち、受信されたセンサチップのチップIDを、サーバSV70内のデータベースDB70に照会することにより、ユーザの手元にてFOOD70の生産者情報等を得ることができる。
【0100】
なお、従来から、RFIDと電池を備えた装置を使用すれば、ビール樽の流通管理その他が実現可能である。しかし、本発明のセンサチップと違い、ワインビンまたはビールビンに添付可能な程度にサイズを小さくすることは困難であった。さらに、電池により動作電源を賄うため、電池が切れた場合にはデータが取得できない恐れがあり、その結果、データを収集できる期間も限られている。このため、飲食店等で業務用に使用されるビール樽等の、比較的短期間で回収されるものにしか使用することができなかった。これに対して、本発明のセンサチップを使用すれば、ワインビンなどの比較的小さいものにも添付可能であり、また、長期間センス可能であるため、業務用ビール樽以外にも様々な用途に応用可能である。
【0101】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施例では、送受信回路を有するセンサチップについて具体的に説明したが、無線による受信の必要がないセンサチップである場合には、送受信回路のうち送信回路を備えていればよい。したがって、このようなセンサチップにおいては、受信回路を省略することができる。
【0102】
また、上記実施例では、センサとして、温度センサTD1、加速度センサAS1、赤外/赤色光センサPD1、及び、インピーダンスセンサGS1を備えたセンサチップについて具体的に説明したが、必ずしも、これらのセンサを全て備えている必要はない。目的に応じて、上記各センサの一部のみを備えているもの、または、上記各センサ以外のセンサを利用するものであってもよい。
【0103】
また、上記実施例では、センサチップを主に人間に利用することを前提として説明したが、必ずしも人間を対象とするだけでなく、犬、猫等その他の動植物を対象とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のセンサチップの望ましい一実施形態を示す図。
【図2】図1に示すセンサチップの断面図。
【図3】実施例1で説明する、本発明のセンサチップを用いた健康管理機器。
【図4】本発明のセンサチップにおける可変容量コンデンサの静電容量が外部振動により変化した場合の電圧変化と静電エネルギーの増加分を示す図。
【図5】図4に示す静電エネルギーの増加分を回収して電力に変える電力回収回路の構成図。
【図6】図5に示す電力回収回路の動作を説明する図。
【図7】本発明のセンサチップの動作概要を示す図。
【図8】本発明のセンサチップから外部機器に送信されるデータ形式を示す図。
【図9】本発明のセンサチップの一部をなす、電源制御回路、タイマ回路、電荷監視回路の構成図。
【図10】図9に示す電源制御回路により実現される低消費電力動作方式を示す図。
【図11】図9に示す電源制御回路のレギュレータRG1の構成図。
【図12】本発明のセンサチップの一部をなす、温度センサ、加速度センサ、インピーダンスセンサ、脈拍センサの構成を示す図。
【図13】本発明のセンサチップの一部をなす選択機能付きA/D変換回路の構成図。
【図14】図13に示す選択機能付きA/D変換回路で用いるマルチプレクサの構成図。
【図15】本発明のセンサチップの一部をなす高周波送受信回路、高周波切替スイッチの構成図。
【図16】本発明のセンサチップの一部をなす高周波送受信回路の第2の構成図。
【図17】本発明のセンサチップの一部をなす高周波送受信回路の第3の構成図。
【図18】図3の健康管理機器で使用する、携帯型健康モニタの構成の一例を示す図。
【図19】図18に示す携帯型健康モニタにおける処理の流れの概要を示す図。
【図20】本発明のセンサチップが外部機器に送信するパケットデータの一例を示す図。
【図21】本発明のセンサチップの検知データ送信方法についての別の例を示す図。
【図22】実施例2で説明する、コンデンサ、インダクタ、LED以外を1つの半導体集積回路にて構成したセンサチップの一例を示す図。
【図23】実施例2で説明する、コンデンサ、インダクタ、LED以外を1つの半導体集積回路にて構成したセンサチップついての別の一例を示す図。
【図24】実施例3で説明する、センサチップの一部をなす電力発生器の構成例を示す図。
【図25】実施例4で説明する、無線中継チップによる検知データの中継の概念を示す図。
【図26】実施例4で説明する、無線中継チップの構成例を示す図。
【図27】図26に示す無線中継チップの動作例の概要を示す図。
【図28】実施例5で説明する、本発明のセンサチップ及び無線中継チップの応用例を示す図。
【符号の説明】
【0105】
SCHIP1,SCHIP2,SCHIP3,SCHIP4,SCHIP5,SCHIP6,SCHIP10,SCHIP11,SCHIP12,SCHIP50,SCHIP51,SCHIP60,SCHIP61,SCHIP62,SCHIP63,SCHIP64,SCHP70…センサチップ、
CHIP1,CHIP2,CHIP3,CHIP4…半導体集積回路、
CM1…可変容量コンデンサ、
CPU1…マイクロプロセッサ、
AD1…A/D変換回路、
MEM1…メモリ、
PC1…電源供給回路、
RF1,RF2,RF3…高周波送受信回路、
TD1…温度センサ、
AS1…加速度センサ、
PD1…赤外/赤色光センサ、
MA1…永久磁石、
BA3…太陽電池、
BA4…ゼーベック素子、
BA5…ボタン電池、
RCHIP1,RCHIP60,RCHIP61,RCHIP62,RCHIP63,RCHIP64…無線中継チップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、
上記センサにより検知したデータを処理するマイクロプロセッサと、
上記処理されたデータを外部へ無線送信する送信回路と、
上記センサ、上記マイクロプロセッサ、上記送信回路に電力を供給するための電力発生装置と、
上記電力発生装置からの電力の供給を制御する電源制御回路と、を有し
上記電源制御回路は、上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に間欠的に電力を供給し、
上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路は上記電力の供給を受けて動作する半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
上記センサにより検知したデータを格納するメモリをさらに有し、
上記送信回路は、上記メモリに格納されたデータをまとめて無線送信する半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
タイマをさらに有し、
上記電源制御回路は、上記タイマにより設定された時間間隔で上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に電力を供給する半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の半導体装置において、
上記電力発生装置からの電力を蓄電するコンデンサをさらに有し、
上記電源制御回路は、上記コンデンサに蓄電された電力を上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に供給する半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記栽の半導体装置において、
上記コンデンサに蓄電された電力を監視する電荷監視回路をさらに有し、
上記電荷監視回路が上記コンデンサに十分な電力が蓄電されたと判断した場合に、上記電源制御回路は上記コンデンサに蓄電された電力を上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に供給する半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の半導体装置において、
上記センサは、加速度センサである半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の半導体装置において、
上記センサは、赤色光または赤外光を透過する物質で覆われている光学センサである半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の半導体装置において、
上記電力発生装置は、ボタン電池である半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の半導体装置において、
上記電力発生装置は、光エネルギーを利用して発電するものである半導体装置。
【請求項10】
請求項3乃至7の何れかに記載の半導体装置において、
上記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路をさらに有し、
上記センサ、上記マイクロプロセッサ、上記送信回路、上記メモリ、及び上記A/D変換回路は、一つの半導体基板の上に形成されている半導体装置。
【請求項1】
センサと、
上記センサにより検知したデータを処理するマイクロプロセッサと、
上記処理されたデータを外部へ無線送信する送信回路と、
上記センサ、上記マイクロプロセッサ、上記送信回路に電力を供給するための電力発生装置と、
上記電力発生装置からの電力の供給を制御する電源制御回路と、を有し
上記電源制御回路は、上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に間欠的に電力を供給し、
上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路は上記電力の供給を受けて動作する半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
上記センサにより検知したデータを格納するメモリをさらに有し、
上記送信回路は、上記メモリに格納されたデータをまとめて無線送信する半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
タイマをさらに有し、
上記電源制御回路は、上記タイマにより設定された時間間隔で上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に電力を供給する半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の半導体装置において、
上記電力発生装置からの電力を蓄電するコンデンサをさらに有し、
上記電源制御回路は、上記コンデンサに蓄電された電力を上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に供給する半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記栽の半導体装置において、
上記コンデンサに蓄電された電力を監視する電荷監視回路をさらに有し、
上記電荷監視回路が上記コンデンサに十分な電力が蓄電されたと判断した場合に、上記電源制御回路は上記コンデンサに蓄電された電力を上記センサ、上記マイクロプロセッサ、及び上記送信回路に供給する半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の半導体装置において、
上記センサは、加速度センサである半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れかに記載の半導体装置において、
上記センサは、赤色光または赤外光を透過する物質で覆われている光学センサである半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の半導体装置において、
上記電力発生装置は、ボタン電池である半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の半導体装置において、
上記電力発生装置は、光エネルギーを利用して発電するものである半導体装置。
【請求項10】
請求項3乃至7の何れかに記載の半導体装置において、
上記センサにより検知した信号を増幅してディジタル信号に変換するA/D変換回路をさらに有し、
上記センサ、上記マイクロプロセッサ、上記送信回路、上記メモリ、及び上記A/D変換回路は、一つの半導体基板の上に形成されている半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2008−173462(P2008−173462A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316817(P2007−316817)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【分割の表示】特願2002−185450(P2002−185450)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【分割の表示】特願2002−185450(P2002−185450)の分割
【原出願日】平成14年6月26日(2002.6.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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