説明

タンクの製造方法

【課題】タンクタンクの製造方法について、熱硬化性樹脂全体をより短時間で硬化することのできる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】流体を内部に貯蔵するためのタンクの製造方法であって、(a)当該タンクの内殻をなすタンク本体の内部に電解質溶液を封入する工程と、(b)熱硬化性樹脂を含浸した繊維である樹脂含浸繊維であって、導電性を有する樹脂含浸繊維をタンク本体に巻き付ける工程と、前記電解質溶液が封入され、前記導電性を有する樹脂含浸繊維が巻き付けられたタンク本体を誘導加熱により加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、を備えるタンクの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を内部に貯蔵するためのタンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンクを補強するために、タンク本体の表面に繊維層を形成する技術が知られている(例えば、特許文献1)。繊維層は、一般に、タンク本体の表面に熱硬化性樹脂を含浸した繊維(以下、「樹脂含浸繊維」ともいう。)を巻き付けた後、熱硬化性樹脂を加熱硬化することで形成される。
【0003】
従来、加熱硬化は、樹脂含浸繊維を巻き付けたタンク本体を加熱炉内に設置し、少なくとも熱硬化性樹脂が硬化する温度(単に「硬化温度」ともいう。)まで熱硬化性樹脂を加熱することで行われる。内側に位置する熱硬化性樹脂の加熱は、外側に位置する熱硬化性樹脂からの熱伝導によって行われる。この方法では、熱硬化性樹脂全体を熱硬化させるためには、長時間を要するといった問題が生じる。
【0004】
また、加熱硬化の方法として、誘電加熱により熱硬化性樹脂を硬化させる技術が知られている(例えば、特許文献2)。図4は、従来のタンクの誘導加熱について説明するための図である。図4(A)は、誘導加熱によるタンク50aの加熱を模式的に示した図である。図4(B)は、誘導加熱を行った際の繊維強化樹脂層の温度変化を示した図であり、各層の温度は熱電対により測定している。
【0005】
図4(A)に示すように、誘導加熱は、以下の手順で行われる。まず、タンク本体の外表面にフィラメント・ワインディング法(「FW法」ともいう。)により樹脂含浸繊維を所定の厚み(約50mm)となるように複数回巻き付けたタンク50aを用意する。次に、用意したタンク50aを誘導加熱装置70にセットし、交流電源72からコイル76に交流電流を流す。これにより、樹脂含浸繊維中に電流が流れ、ジュール熱が発生することで樹脂含浸繊維が加熱される。なお、誘導加熱されるタンク50aの内部には空気が充填されている。
【0006】
しかしながら、図4(B)からも分かるように、一般に、誘導加熱は、発生するジュール熱が被加熱物の表面に近いほど大きく、内部にいくにつれ指数関数的に小さくなる。よって、樹脂含浸繊維の外層の昇温速度が内層の昇温速度よりも早く、樹脂含浸繊維の積層方向に温度分布のばらつきが生じる。よって、誘導加熱を用いても熱硬化性樹脂全体を硬化させるのに長時間を要するという問題が生じる。このように、樹脂含浸繊維の積層方向に温度分布のばらつきが生じると、タンクの製造に長時間を要することになり、生産効率が低下するという問題が生じる。なお、このような問題は、タンク本体に樹脂含浸繊維を巻き付け、誘導加熱による熱加熱を行うことで製造されるタンクに共通する問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/070258号
【特許文献2】特開昭62−116129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、タンクの製造方法について、熱硬化性樹脂全体をより短時間で硬化させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]流体を内部に貯蔵するためのタンクの製造方法であって、(a)当該タンクの内殻をなすタンク本体の内部に電解質溶液を封入する工程と、(b)熱硬化性樹脂を含浸した繊維である樹脂含浸繊維であって、導電性を有する樹脂含浸繊維を前記タンク本体に巻き付ける工程と、(c)前記電解質溶液が封入され、前記導電性を有する樹脂含浸繊維が巻き付けられた前記タンク本体を誘導加熱により加熱し、前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、を備えるタンクの製造方法。
適用例1の製造方法によれば、タンク本体の内部に電解質溶液を封入しているため、誘導加熱により、電解質溶液を加熱することができる。これにより、タンク本体の内部に電解質溶液を封入しない場合に比べ、熱硬化性樹脂全体を硬化温度まで短時間で加熱して硬化させることができる。
【0011】
[適用例2]適用例1に記載のタンクの製造方法であって、前記工程(a)で封入する前記電解質溶液は、前記工程(b)で巻き付ける前記樹脂含浸繊維よりも電気伝導率が高い、タンクの製造方法。
適用例2の製造方法によれば、電解質溶液をより高温に加熱することができるため、より短時間で熱硬化性樹脂全体を硬化させることができる。
【0012】
[適用例3]適用例1又は適用例2に記載のタンクの製造方法であって、前記工程(a)は、前記タンク本体内部の前記電解質溶液の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力となるように、前記電解質溶液を前記タンク本体の内部に封入する工程である、タンクの製造方法。
適用例3の製造方法によれば、誘導加熱によりタンク本体に巻き付けた樹脂含浸繊維が収縮し、タンク本体に対しタンク本体を押しつぶそうとする方向に外力を加える場合でも、タンク本体が変形する可能性を低減することができる。
【0013】
[適用例4]適用例3に記載のタンクの製造方法であって、前記工程(a)の後に、前記工程(b)を行う、タンクの製造方法。
適用例4の製造方法によれば、樹脂含浸繊維を巻き付ける際にタンク本体に対し、タンク本体を押しつぶそうとする外力が加わった場合でも、タンク本体が変形する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】誘導加熱前のタンクの製造方法を説明するための図である。
【図2】誘導加熱による加熱方法を説明するための図である。
【図3】誘導加熱時のタンクの加熱状態を説明するための図である。
【図4】従来のタンクの誘導加熱について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.実施例
B.変形例
【0016】
A.実施例:
図1は、誘導加熱前のタンクの製造方法を説明するための図である。まず、タンク本体であるタンク容器10(「ライナー10」ともいう。)を用意する。タンク容器10は、略円筒状のシリンダー部11と、その両端にそれぞれ設けられた凸曲面形状の2つのドーム部13とを有する中空容器である。
【0017】
タンク容器10は、ガスバリア性を有し、内部に貯蔵される水素ガス等の気体の外部への透過を抑制する。タンク容器10は、ナイロン系樹脂等の合成樹脂、鉄やステンレス鋼等の金属を用いて作製される。本実施例では、タンク容器10はナイロン系樹脂を用いて成形されている。
【0018】
タンク容器10の2つのドーム部13にはそれぞれ口金部12が取り付けられている。口金部12は、タンク容器10の内部と連通する貫通孔(図示せず)を有している。なお、タンク容器10は、2つの口金部12のうち1つのみを備える構成であっても良い。
【0019】
次に図1(B)に示すように、電解質注入装置20を用いて口金部12の貫通孔よりタンク容器10内部に電解質溶液を封入する。電解質溶液としては、例えば塩化カリウム水溶液、塩化ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等の種々の溶液を用いることができる。
【0020】
後述するように、誘導加熱により被加熱物中に電流が生じる。生じた電流値の2乗に被加熱物の抵抗値を乗じた値がジュール熱として発生し、該ジュール熱により被加熱物が加熱される。ここで、後述する導電性を有する樹脂含浸繊維よりも誘導加熱により昇温しやすい電解質溶液をタンク容器10内部に封入することが好ましい。これにより、タンク容器10内部からも樹脂含浸繊維をより一層加熱することができる。ここで、「昇温しやすい」とは、同一条件下の誘導加熱により前記電解質溶液と前記樹脂含浸繊維をそれぞれ加熱した場合、より早くにある温度から所定の温度まで上昇することをいう。
【0021】
また、電気伝導率のより高い電解質溶液を封入しても良い。例えば、樹脂含浸繊維よりも電気伝導率の高い電解質溶液をタンク容器10内部に封入しても良い。これにより、誘導加熱によって封入した電解質溶液をより短時間で高温まで加熱することができる。よって、樹脂含浸樹脂よりも電気伝導率の低い電解質溶液をタンク容器10内部に封入する場合に比べ、誘導加熱によって樹脂含浸繊維全体をより短時間で硬化することができる。例えば、電解質溶液の電気伝導率を高くするには、電解質溶液の溶質濃度を高くすれば良い。
【0022】
また、タンク容器10の外表面上に巻き付けられた導電性を有する樹脂含浸繊維の層の厚さが大きいほど、封入する電解質溶液の溶質濃度を高くすることが好ましい。これにより、厚みがより大きい繊維強化樹脂層を有するタンクを製造する場合でも、誘導加熱時の熱硬化性樹脂の温度分布のばらつきを低減し、より短時間でタンクを製造することができる。
【0023】
図1(B)において、タンク容器10の内部の電解質溶液の圧力が、大気圧よりも高い所定の圧力となるように電解質溶液は封入される。所定の圧力は、大気圧よりも高い値であって、タンク容器10が内圧により破損しない程度の圧力を上限値とする。タンク容器の形状や材質によるが、例えば0.5MPa〜0.8Mpa程度の内圧となるように電解質溶液をタンク容器10内部に封入する。
【0024】
タンク容器10内部に電解質溶液を封入した後に、図1(C)に示すように、タンク容器10を回転駆動装置110に装着する。そして、シリンダー部11の中心軸CXを中心としてタンク容器10を回転させる。そして、FW法を用いてタンク容器10に導電性を有する樹脂含浸繊維30を巻き付ける。すなわち、樹脂含浸繊維30が巻かれたリール120を中心軸CXに沿って往復動させつつ、タンク容器10の外表面に樹脂含浸繊維30を巻き付ける。これにより、タンク容器10上には、樹脂含浸繊維30が複数層巻き付けられた硬化前の第1種の繊維強化樹脂層31が形成される。巻き付け方法としては、フープ巻きやヘリカル巻き等の方法を用いることができる。
【0025】
ここで、樹脂含浸繊維30に用いる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。本実施例では、エポキシ樹脂を用いている。また、樹脂含浸繊維30に用いる繊維としては、金属繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、アルミナ繊維等の無機繊維、アラミド繊維等の合成有機繊維、又は、綿等の天然有機繊維の各種繊維が挙げられる。本実施例では導電性を有するカーボン繊維を用いている。なお、導電性を有しない繊維を用いる場合は、熱硬化性樹脂や繊維に鉄粉等の磁性粉末を混合する。
【0026】
次に、図1(D)に示すように、第1種の繊維強化樹脂層31上にガラス繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂含浸繊維40を巻き付ける。これにより、樹脂含浸繊維40が複数層巻き付けられた硬化前の第2種の繊維強化樹脂層41が形成される。なお、樹脂含浸繊維40に用いる熱硬化性樹脂は、樹脂含浸繊維30と同様の熱硬化性樹脂が挙げられる。本実施例では、エポキシ樹脂を用いている。第2種の繊維強化樹脂層41を形成することで、タンクの製造後において繊維強化樹脂層31が外部から損傷を受ける可能性を低減し、タンクの強度低下を抑制することができる。
【0027】
上記図1(A)〜(D)に示す工程を行うことで、図1(E)に示すように熱硬化性樹脂が硬化する前のタンク50が完成する。
【0028】
図2は、誘導加熱による加熱方法を説明するための図である。図2に示す2つの図のうち左に位置する図は、硬化前のタンク50をコイル76中に挿入した図である。また、図2の2つの図のうち右に位置する図は、タンク50及びコイル76の部分断面図である。
【0029】
図2に示すように、硬化前のタンク50を誘導加熱装置70にセットする。具体的には、交流電源42に接続されたコイル76中に硬化前のタンク50をセットする。セットされたタンク50の内部には、大気圧よりも高い所定の圧力の電解質溶液24が充填されている。また、タンク容器10には、タンク容器10に近い順に、第1種の繊維強化樹脂層31、第2種の繊維強化樹脂層41が積層されている。
【0030】
図3は、誘導加熱時のタンクの加熱状態を説明するための図である。図3(A)〜(C)は、図2と同様に、タンク50及びコイル76の部分断面図を示している。また、図3(A)には、理解の容易のために、誘導加熱時に発生する磁界が破線により概念的に図示されており、破線が太いほど磁束密度が大きいことを表している。また、図3(B)及び(C)には、部分断面図と共に第1種の繊維強化樹脂層31、タンク容器10、及び、電解質溶液24の温度分布を模式的に示す図が描かれている。図3(B)は誘導加熱を開始した直後の状態を示し、図3(C)は誘導加熱を開始してから所定の時間が経過した状態を示している。
【0031】
図3(A)に示すように、交流電源72(図2)からコイル76に交流電流を流すと、磁場60が発生する。これにより、導電性の第1種の繊維強化樹脂層31及び電解質溶液24には電流が流れる。
【0032】
図3(B)に示すように、導電性の第1種の繊維強化樹脂層31及び電解質溶液24には電流が流れることでジュール熱が発生し、第1種の繊維強化樹脂層31及び電解質溶液24が加熱される。誘導加熱を開始した直後においては、第1種の繊維強化樹脂層31においては、最外層から最内層に向かうにしたがって指数関数的に温度が低くなっている。また、電解質溶液24は、第1種の繊維強化樹脂層31の最内層(タンク容器10の外表面に接する部分)よりも高い温度にまで加熱されている。
【0033】
図3(C)に示すように、誘導加熱開始から時間が経過するにしたがい、電解質溶液24から第1種の繊維強化樹脂層31に熱が伝達し、第1種の繊維強化樹脂層31の温度分布のばらつきが低減される。なお、導電性を有さない第2種の繊維強化樹脂層41は第1種の繊維強化樹脂層31からの熱伝達により加熱される。第1種及び第2種の繊維強化樹脂層全体が硬化した後に、電解質溶液24をタンク容器10から排出することで、タンク50が完成する。
【0034】
完成したタンク50は、常圧よりも高い(高圧)流体を貯蔵するために用いることができる。例えば、高圧の水素ガスや高圧の天然ガス等の高圧のガスを貯蔵するためのガスタンクとして用いることができる。また、これらのガスタンクを車両、船舶、航空機などの各種移動体に搭載して燃料ガス源として用いることもできる。さらには、これらのガスタンクを定置型ガスタンクとして用いることもできる。
【0035】
以上のように、タンク容器10の内部に電解質溶液24を封入した状態で誘導加熱を行うことから、電解質溶液24を封入しない場合に比べ、タンク容器10の内部を高温にすることができる。これにより、電解質溶液24を封入しない状態で誘導加熱を行う場合に比べ、短時間でタンク容器10に巻き付けた樹脂含浸繊維中の熱硬化性樹脂全体を硬化温度にまで加熱することができる。よって、タンク50の生産効率を向上させることができる。
【0036】
熱硬化性樹脂が硬化すると、一般に、タンク容器10に巻き付けた樹脂含浸繊維が収縮し、タンク容器10に対しタンク容器を押しつぶそうとする方向に外力を加える。本実施例では、電解質溶液24を封入し、タンク容器10の内圧を大気圧よりも高い所定の圧力にした状態で誘導加熱を行っている。これにより、樹脂含浸繊維の収縮によりタンク容器10が変形する可能性を低減することができる。よって、完成したタンク50の不具合(例えば、タンク50が所望とする強度よりも低い等)の発生を低減することができる。
【0037】
また、本実施例では、FW法による繊維の巻き付けを行う前に、タンク容器10に電解質溶液24を封入し、タンク容器10の内圧を大気圧よりも高い所定の圧力としている(図1(B))。これにより、FW法により樹脂含浸樹脂繊維をタンク容器10に巻き付ける際に、タンク容器10を押しつぶそうとする方向に外力が加わった場合でも、誘導加熱に利用する電解質溶液24を用いてタンク容器10が変形する可能性を低減することができる。これにより、完成したタンク50の不具合(例えば、タンク50が所望とする強度より低い等)の発生をより低減することができる。
【0038】
B.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0039】
B−1.第1変形例:
上記実施例では、電解質溶液24のタンク容器10への封入は、樹脂含浸繊維をタンク容器10に巻き付ける前に行ったが(図1(B))、電解質溶液24の封入のタイミングはこれに限定されるものではなく、誘導加熱を行う前であれば任意のタイミングで行うことができる。また、上記実施例では、タンク容器10内部の電解質溶液24が大気圧よりも高い所定の圧力なるように、電解質溶液24がタンク容器10内部に封入されていたが、これに限定されるものではなく、タンク容器10内部に封入される電解質溶液24の圧力(すなわち、タンク容器10の内圧)は任意の値で良い。タンク50の誘導加熱時にタンク容器10の内部に電解質溶液24が封入されていれば、電解質溶液24が加熱される。よって、本変形例においても、上記実施例と同様に、タンク容器10の内部に電解質溶液24が封入されていない場合(例えば、タンク容器10内部が空気の場合)に比べて、タンク容器10に巻き付けた樹脂含浸繊維中の熱硬化性樹脂全体を短時間で硬化温度まで加熱することができる。
【0040】
さらには、タンク容器10の内部全体に電解質溶液24が封入されている必要はなく、少なくともタンク容器10の内部容積の一部を電解質溶液24が占めるように電解質溶液24を封入しても良い。このようにしても、上記実施例と同様に、タンク容器10の内部に電解質溶液24が封入されていない場合(例えば、タンク容器10内部が空気の場合)に比べて、タンク容器10に巻き付けた樹脂含浸繊維中の熱硬化性樹脂全体をより短時間で硬化温度まで加熱することができる。
【0041】
B−2.第2変形例:
上記実施例では、導電性を有する第1種の繊維強化樹脂層31の外表面に、ガラス繊維を用いた第2種の繊維強化樹脂層41を形成したが(図1(D))、第2種の繊維強化樹脂層41を形成しなくても良い。タンク容器10上に形成される層が導電性を有する繊維強化樹脂層のみであれば、誘導加熱による熱硬化性樹脂の硬化をより短時間に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
10…タンク容器
11…シリンダー部
12…口金部
13…ドーム部
20…電解質注入装置
24…電解質溶液
30…樹脂含浸繊維
31…繊維強化樹脂層
40…樹脂含浸繊維
41…繊維強化樹脂層
42…交流電源
50…タンク
50a…タンク
60…磁場
70…誘導加熱装置
72…交流電源
76…コイル
110…回転駆動装置
120…リール
CX…中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を内部に貯蔵するためのタンクの製造方法であって、
(a)当該タンクの内殻をなすタンク本体の内部に電解質溶液を封入する工程と、
(b)熱硬化性樹脂を含浸した繊維である樹脂含浸繊維であって、導電性を有する樹脂含浸繊維を前記タンク本体に巻き付ける工程と、
(c)前記電解質溶液が封入され、前記導電性を有する樹脂含浸繊維が巻き付けられた前記タンク本体を誘導加熱により加熱し、前記熱硬化性樹脂を硬化させる工程と、を備えるタンクの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のタンクの製造方法であって、
前記工程(a)で封入する前記電解質溶液は、前記工程(b)で巻き付ける前記樹脂含浸繊維よりも電気伝導率が高い、タンクの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のタンクの製造方法であって、
前記工程(a)は、前記タンク本体内部の前記電解質溶液の圧力が大気圧よりも高い所定の圧力となるように、前記電解質溶液を前記タンク本体の内部に封入する工程である、タンクの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のタンクの製造方法であって、
前記工程(a)の後に、前記工程(b)を行う、タンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−255581(P2011−255581A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131666(P2010−131666)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】