説明

タングステンスパッタリングターゲットおよびその製造方法

【課題】基板上に成膜したW膜の膜厚面内均一性を向上させることが可能であり、さらにはパーティクルの発生を減少させることが可能なWスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】Wスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶面(110)のピークの半値幅が0.35以下であることを特徴とする。また、本発明の高純度Wスパッタリングターゲットの製造方法は、高純度W粉末を加圧焼結後、得られた焼結体をターゲット形状に加工後、ロータリー研磨およびポリッシングの少なくとも1種の研磨を施し、さらにエッチングおよび逆スパッタリングの少なくとも1種の研磨を施すことにより仕上げ加工することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステン(W)スパッタリングターゲットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子に代表される電子部品においては、ゲート電極などの電極や配線の材料として、タングステン(W),モリブデン(Mo),タンタル(Ta),チタン(Ti),ジルコニウム(Zr)およびコバルト(Co)などの高純度金属や、これらの金属のシリサイド化合物が使用されている。
【0003】
近年、これら電子部品は急速に進捗しつつある。特に、DRAM、ロジック、フラッシュメモリー等に代表される半導体素子においては、高集積化・高信頼性・高機能化・高速化の要求に伴い、電極や配線を形成する際の微細加工技術の精度も益々高まっている。
【0004】
さらに、前述の要求を達成するために、配線や電極を形成する材料の低抵抗化が必須となる。
【0005】
これまでLSIに使用されてきた電極や配線の材料としては、例えばMoSixやWSixなどに代表されるシリサイド電極が使用されてきたが、より低抵抗な材料の検討が盛んに行われてきている。その中でWは低抵抗であり、耐熱性にも優れており今後の電極や配線の材料として注目され始めている。
【0006】
このようなWからなる電極や配線は、基板上にW薄膜を形成後、エッチングなどにより所定の配線形状に形成して得ることができる。このW薄膜を形成する方法としては、スパッタリング法とCVD法が代表的な成膜方法として挙げることができる。
【0007】
従来、電極や配線の形成方法はスパッタリング法が主であった。スパッタリング法は、一般にWスパッタリングターゲットによりArやKrに代表される希ガスを用いて、真空装置内でスパッタリングすることによってW膜が形成される。
【0008】
W膜に関してはブランケットWに代表されるCVD法を用いた技術でも成膜は可能である。しかしながら、スパッタリング法はCVD法に比べて、成膜速度も速く、下地膜に対するプラズマダメージも小さく、かつ取り扱いも簡単であると言った有利点があり、今後の電極形成方法としてもスパッタリング法が主として採用される可能性が高い。従来のWスパッタリングターゲットの例としては、例えば、特開平5−93267号公報(特許文献1)、特開平5−222525号公報(特許文献2)及び特開平7−76771号公報(特許文献3)に記載されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−93267号公報
【特許文献2】特開平5−222525号公報
【特許文献3】特開平7−76771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで現状、LSIで使用されているSiウェハーのサイズは、6インチから8インチへとシフトしてこの8インチサイズが主に使われているが、今後更に12インチ(Φ300mm)までスケールアップされると予測されている。8インチサイズのSiウェハーに対応するスパッタリングターゲットのサイズは、スパッタリング装置の種類にもよるが、一般にΦ300mm相当である。12インチクラスのウェハーには、おそらくΦ400mm以上のターゲットサイズが要求される。
【0011】
このようなウェハーサイズのスケールアップ化に伴って生じてくる問題として、まず大形のターゲットから形成された薄膜の膜厚の面内均一性の低下が挙げられる。特にLSIで使用する電極は、膜厚の差異によって比抵抗が変動し、その結果トランジスターの特性に影響を与える。言い換えれば、電極形成した薄膜の膜厚均一性が良好でないと、LSIの歩留まりを低下させLSIメーカーにとって大きなダメージを与えてしまう。
【0012】
スパッタにより形成される薄膜の膜厚の面内均一性は、スパッタリングする条件、具体的に言えば、投入電力値やガス圧力、ターゲット−基板間との距離などさまざまなパラメーターに影響を受ける。しかし、これらのパラメーターを制御しても、現状市販されているスパッタリング装置を用いて得られる膜厚の面内均一性は3%程度が限界である。
【0013】
また、他の問題としてスパッタリングターゲットから発生するパーティクル(ダスト)が挙げられる。これはスパッタリングによる成膜中あるいは成膜後に発生するパーティクルがウェハー上に形成した薄膜中あるいは薄膜上に残存すると、その残存した箇所で抵抗値が変化し製品とした場合には断線,短絡等の問題を生じたり、またパーティクルが残存した部分は凸状となっているため成膜後の後の工程(例えばChemical Mechanical Polishing(CMP)等)によってその部分が他の部分に比較し強く削られパーティクルが脱落するためパーティクルの形状に近似した凹部が発生し、やはり抵抗値が変化し製品とした場合には断線,短絡等の問題を生じてしまう。さらには、通常のエッチング条件では他の部分に比較し適切にエッチングされず、正確なパターニングができないという問題がある。
【0014】
このパーティクルの発生機構には、スパッタリング中にスパッタリングターゲット表面で異常放電が発生し、その際に発生する溶融粒子が飛散してウェハーに付着する場合や、スパッタターゲット外周部等に再付着した膜がスパッタリングによる熱サイクルによって剥離し、その剥離した再付着膜片がウェハーに付着するなど、いくつかの発生機構がある。
【0015】
上記、電極形成した薄膜の膜厚均一性が良好でないと、さらにはパーティクルの発生量が多いと、LSIの歩留りを低下させLSIメーカーにとって大きなダメージを与えてしまう。
【0016】
W膜においても上記スパッタリングターゲットから形成された薄膜の膜厚の面内均一性あるいはパーティクルの発生については同様であり、そのW膜を形成するスパッタリングターゲットとして、例えば特開平5−93267号公報に記載されたC:50ppm以下,O:30ppm以下,相対密度が97%以上であり、結晶粒径が一定方向につぶれた形状を有するスパッタリングターゲット、特開平5−222525号公報に記載されたW粉末を加圧して60%以上の相対密度を有する成形体を作製した後、該成形体を水素を含む雰囲気中で温度1400℃以上に加熱して相対密度90%以上の焼結体とし、更に焼結体を1400℃以上で熱間加工し99%以上の相対密度を得るスパッタリングターゲットの製造方法および特開平7−76771号公報に記載された相対密度99.5%以上,平均粒径が10μmを超え200μm以下であるスパッタリングターゲット等のWスパッタリングターゲットが公知であるが、これら従来のWスパッタリングターゲットを用いて、所定のスパッタリング条件で成膜を行っても、現状、W膜の膜厚面内均一性は3%程度が限界であり、さらにはパーティクルの低減は満足できるものではなかった。
【0017】
近年、LSIに要求される高集積化・高速化・高信頼性化に伴って、電極・配線材料への低抵抗化が要求されており、電極について言えばシリサイドから高純度金属へとシフトしていく。このようなLSIの電極部には、ウェハー面内での比抵抗の均一性、つまり膜厚均一性が重要なポイントとなる。現状の公知であるスパッタリングターゲットを用いて得られるW膜の面内均一性は3%程度であることから、更にウェハーサイズが大きくなるとますます膜厚の面内均一性は大きく悪化する傾向を示す。
【0018】
また、スパッタリングターゲットから発生するパーティクルの低減化も重要なポイントとなる。特に、異常放電で発生したと思われるパーティクルの大きさは粒径が1μm以上の物が多数を占めていることから、この1μm以上のパーティクルのさらなる低減が強く要求されていた。
【0019】
これらの現象を回避しないとLSIの量産ラインでは歩留まりが大幅に低下してしまい多額な損失が発生してしまう。
【0020】
本発明は、このような課題に対処するためになされたもので、例えば8インチサイズ以上のような大形の基板上に成膜したW膜の膜厚面内均一性を向上させることが可能なWスパッタリングターゲットおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者等は、上記課題を解決するため、Wスパッタリングターゲットのターゲット表面の結晶方位、結晶面、膜厚均一性について種々検討した結果、ターゲット表面において(110)の半値幅を制御することで、従来達成することができなかった8インチサイズ以上のSiウェハー上に成膜したW膜の膜厚面内均一性を1%以下に低減することを可能にする知見を見出した。
【0022】
すなわち、本願第1の発明に係るスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)のピークの半値幅が0.35以下であることを特徴とする。本発明においては、このスパッタリングされる面の結晶面(110)の半値幅を前記値以下とすることにより、そのスパッタリングターゲットを用いて形成されたW膜の膜厚面内均一性を向上することが可能となる。
【0023】
上記第1の発明において、さらにその特定の結晶面(110)の半値幅に加えて、そのバラツキが30%以下であることが好ましい。このバラツキを前記値以下とすることにより、さらに形成されたW膜の膜厚面内均一性を向上することが可能となる。
【0024】
また、本発明者らは、ターゲット表面において特定の結晶方位比率を制御することで、従来達成することができなかった例えば8インチサイズ以上の大形のウェハー上に成膜したW膜の膜厚面内均一性を向上することおよびパーティクルの発生を低減することを可能にできるという知見を得た。
【0025】
従来の高純度Wスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングした場合、成膜条件に問わず、均一性を3%程度にすることが限界である。更に大口径化した場合、例えば12インチウェハーの場合では、5%程度まで増大してしまう。このような膜厚均一性を更に低減化を図るためには、Wスパッタリングターゲットから飛散している中性粒子やイオンの放出分布角度が重要となることを本発明者等は見出し、この放出分布角度について種々検討した結果、スパッタリングターゲット表面のX線回折により求められた結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)が膜厚均一性に対して有効に作用することを見出したのである。
【0026】
上記知見により、本発明の第2の発明であるWスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)が0.1〜6.5であることを特徴とするものである。
【0027】
すなわち、本発明においては上記第2の発明を採用することにより、そのWスパッタリングターゲットを用いて形成されたW膜の膜厚面内均一性を向上することが可能となる。
【0028】
さらに、Wスパッタリングターゲットを製造する際に塑性加工を行うと、Wには塑性加工によりすべりを発生する。このすべりは各結晶構造において特定のすべり面及びすべり方向が決まっている。すべりは、結晶学的には最も密に原子が存在している結晶面あるいはそれに近い面で発生する。すべりが発生すると結晶面にはすべり面あるいはすべり帯と呼ばれる断層状の段差が発生する。このすべり面(すべり帯)は、スパッタリングを進めていくと断層状に凹凸が形成される。この凹凸の起伏はスパッタリングを継続していくことによりさらに大きくなり、凹凸の起伏が大きくなると、その凸部において電荷が集中し、異常放電が発生することを本発明者らは見出し、このすべりについて種々検討した結果、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が異常放電に対して、さらにはパーティクルに対して有好に作用することを見出したのである。
【0029】
上記知見により、本発明の第3の発明であるWスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が0.17以下であることを特徴とするものである。
【0030】
すなわち、本発明においては上記第3の発明を採用することにより、そのWスパッタリングターゲットを用いて形成されたW膜のパーティクルの低減を図ることが可能となる。
【0031】
さらに、本発明の第4の発明であるWスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(110)/(200)が0.1〜6.5であり、かつ結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が0.17以下であることを特徴とするものである。
【0032】
すなわち、本発明においては上記第4の発明を採用することにより、そのWスパッタリングターゲットを用いて形成されたW膜の膜厚面内均一性を向上することさらにはパーティクルの低減を図る可能となる。
【0033】
さらに、本発明の別の発明である高純度Wスパッタリングターゲットの製造方法は、高純度W粉末を加圧焼結後、得られた焼結体をターゲット形状に加工後、ロータリー研磨およびポリッシングの少なくとも1種の研磨を施し、さらにエッチングおよび逆スパッタリングの少なくとも1種の研磨を施すことにより仕上げ加工することを特徴とする。1例として前記製造方法を採用することにより、本発明で規定する半値幅の値以下のスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【0034】
さらに本発明の製法において、加圧焼結は、ホットプレスにより加圧する際に、最高焼結温度まで昇温する段階において、昇温速度2〜5℃/minで昇温後、1450〜1700℃で1時間以上保持する中間焼結工程を有することが好ましい。1例としてこの中間焼結工程を採用することにより、本発明で規定する半値幅のバラツキの値以下のスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の高純度Wスパッタリングターゲットによれば、W膜の膜厚面内均一性を向上させることが可能となる。その結果、半導体装置の電極などに使用する際の信頼性を向上するとともに、その製造時の歩留りも向上させることが可能となる。
【0036】
さらに、本発明の高純度Wスパッタリングターゲットの製造方法は、優れた膜厚面内均一性を得ることが可能なWスパッタリングターゲットを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明のターゲットの半値幅及びそのバラツキを測定する際の試験片の採種箇所を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施するための形態について説明する。
【0039】
まず、本発明のWスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)のピークの半値幅が0.35以下である。
【0040】
上記したようなスパッタリングターゲットを使用することにより、膜厚均一性を改善することが可能となる。すなわち、例えば8インチ以上のSiウェハー上にWスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によりW膜を成膜する場合、形成されたW薄膜の膜厚均一性が向上し、ウェハー面内の比抵抗分布のバラツキを抑制することが可能となる。
【0041】
従来の高純度Wスパッタリングターゲットを用いてスパッタリングした場合、成膜条件に問わず、均一性を3%程度にすることが限界である。更に大口径化した場合、例えば12インチウェハーの場合では、5%程度まで増大してしまう。
【0042】
このような膜厚均一性を更に向上させるためには、Wスパッタリングターゲットから飛散している中性粒子やイオンの放出分布角度が重要となることを本発明者等は見出し、この点について種々検討した結果、スパッタリングターゲット表面のX線回折により求められた結晶面(110)のピークの半値幅が0.35以下であることが膜厚均一性に対して有効に作用することを見出したのである。
【0043】
一般に、Wを代表とする体心立方(BCC)構造が有する結晶面は、(110),(200),(211),(220),(310)等、数種類の結晶面がある。その中で、(110)はBCC構造の最稠密面であり、結晶格子の隙間が少なく、スパッタリング時にAr原子などの希ガスが結晶格子内に取込まれにくく、スパッタリング率が一番高いと考えられる。JCPDS(粉末回折標準共同委員会:Joint Committee on Powder Diffraction Standards)カードにおいても結晶面(110)はメインピーク値を示していることからも理解できる。
【0044】
スパッタリングターゲットの表面は、通常、旋盤加工やロータリー研磨やポリッシングといった機械研磨を施してスパッタリングターゲット表面状態を仕上げている。しかし、ターゲット表面には機械加工による内部歪が生じており、ターゲットは通常この状態で使用されている。(110)については、前述でも述べたように、一番スパッタリング率が高いため、この結晶面に含まれる内部歪が小さいほど安定的な放出分布角度を有している。本発明においては、この(110)の結晶面に含まれる内部歪を半値幅で表したのである。
【0045】
一般にマグネトロンスパッタ方式の場合、プラズマ発生にともなってスパッタリングターゲット表面の温度は、400℃以上になると言われている。このような場合、スパッタ表面の結晶面に内部歪が含まれているとスパッタ時の熱影響によって歪が開放される現象が生じるとともに僅かなスパッタ放出分布角度に差異が生じる。そこで、ターゲット表面のX線回折により求められた結晶面(110)のピークの半値幅が0.35以上となると、内部歪の開放が促進され、極端に放出分布角度が変化してしまい膜厚分布に悪影響を及ぼす結果となる。
【0046】
したがって、本発明は、内部歪が小さく、安定的な放出分布角度を得ることができるWスパッタリングターゲットとして、本発明の通りターゲット表面のX線回折により求められた結晶面(110)のピークの半値幅を0.35以下と規定したのである。この半値幅は、0.3以下が好ましく、さらに好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.15以下である。
【0047】
さらに、このスパッタリングターゲット表面の結晶面(110)の半値幅のバラツキは、30%以内であることが好ましい。
【0048】
これは、スパッタリングターゲットの表面において、半値幅が本発明範囲内であるとしても全体の結晶面(110)のバラツキが30%以上になると、前述した現象と同様に放出分布角度にムラが生じやすく、ウェハー上に形成される膜厚の均一性を低下させる要因となるためである。したがって、この半値幅のバラツキを30%以下に規定したのである。このバラツキは、20%以下が好ましく、さらに好ましくは15%以下である。
【0049】
また、本発明の第2の発明であるWスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)が0.1〜6.5である。
【0050】
本発明者らは、面内均一性について前記結晶面(110)と他の結晶面との関係を検討した結果、結晶面(200)との結晶方位比率が面内均一性に大きく影響を与えることを見出し、この結晶方位比率(110)/(200)を制御し、特定の範囲、すなわち0.1〜6.5にしたWスパッタリングターゲットとすることで、得られるW膜の面内均一性が向上することを見出し上記第2の発明を完成した。
【0051】
これは、一般にマグエントロンスパッタ方式の場合、Wスパッタリングターゲット使用初期においてターゲット表面形態はほとんど変化しないが、使用量が増すと磁場の強い部分だけが極端にある傾斜角度を持ちながら減少していき、いわゆる最大エロージョン部が形成されていく。
【0052】
この場合、スパッタ初期と使用量が増した状態ではスパッタ面の形状変化に伴いスパッタリング粒子の放出分布角度が大きく変化してしまう。そこで、結晶方位含有比率が上記範囲外であると、結晶方位によるスパッタ粒子の放出分布角度への影響に比較し、スパッタ面の形状変化に伴うスパッタ粒子の放出分布角度への影響が大きくなり、スパッタが進行するに従い形成されたW膜の面内均一性が低下してしまうため、その結晶方位比率(110)/(200)を0.1〜6.5とした。この結晶方位含有比率の好ましい範囲は1〜5であり、さらに好ましくは2〜4である。
【0053】
また、この結晶方位比率はWスパッタリングターゲット全体でバラツキがあまり大きいと放出分布角度にむらが生じ、形成されたW膜の膜厚の高低差が大きくなってしまうため、そのバラツキは50%以下であることが好ましい。このバラツキの好ましい範囲は30%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。
【0054】
次に、本発明の第3の発明であるWスパッタリングターゲットは、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が0.17以下であることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲットである。
【0055】
既述のように、一般に、Wスパッタリングターゲットのすべり面(すべり帯)には、スパッタリングを進めていくと断層状に凹凸が形成される。この凹凸の起伏はスパッタリングを継続していくことによりさらに大きくなり、凹凸の起伏が大きくなると、その凸部において電荷が集中し、異常放電が発生することを本発明者らは見出し、このすべりについて種々検討した結果、スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}を制御し、特定の範囲、すなわち0.17以下にしたWスパッタリングターゲットとすることで、得られるW膜のパーティクル量、特に1μm以下のパーティクル量を低減できることを見出した。
【0056】
これは、この結晶方位比率があまり大きいと、スパッタリングされて形成されるすべり面の凹凸部の凹凸の起伏が大きくなり、結果的に大きな凸部を形成してしまうため、電荷がより集中し異常放電が発生し易くなってしまい、パーティクル量が増加してしまうため、その結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}を0.17以下とした。この結晶方位比率の好ましい範囲は0.15以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。
【0057】
また、この結晶方位比率はWスパッタリングターゲット全体でバラツキがあまり大きいと放出分布角度にむらが生じ、形成されたW膜の膜厚の高低差が大きくなってしまうため、そのバラツキは30%以下であることが好ましい。このバラツキの好ましい範囲は15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0058】
ここで、本発明の結晶面の半値幅,結晶方位比率およびそれらのバラツキは、以下に示す方法により測定された値を示すものとする。
【0059】
すなわち、図1に示す様に、例えば円盤状のターゲットの中心部(位置1)と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線上の中心から外周部に向って90%の距離の位置(位置2〜9)及び中心から50%の距離の位置(位置10〜17)とから、それぞれ長さ15mm、幅15mm、の試験片を採取する。これら17点の試験片の結晶面および結晶方位をそれぞれ測定し、これらの平均値を本発明の結晶面および結晶方位比率とする。結晶面は、X線回折によって得られたピークから半値幅を算出する。この半値幅は、X線回折により得られたピークの1/2の高さの箇所の幅と、そのピーク高さとの比である。値はいずれも各箇所10回以上測定した値の平均値とする。また結晶方位は、X線回折によって得られたピーク強度値とする。X線回折装置としては、理学社製 X線回折装置(XRD)を使用した。測定条件は下記に示す。
【0060】
<測定条件>
X線:Cu,k−α1,50kV,100mA,縦型ゴニオメーター,発散スリット:1deg,散乱スリット:1deg,受光スリット:0.15mm,走査モード:連続,スキャンスピード:1°/min,スキャンステップ:0.01°,走査軸2θ/θ,測定角度:38°〜42°
【0061】
なお、X線回折の半値幅を求める際のチャートは、10000cpsが11mm、走査角度の1°が23mmの長さのスケール(目盛)を基準とするチャートを用いるものとする。もし、この基準ではないチャートを用いる場合は、この基準に合わせてチャートを変更したもので半値幅を求める。
【0062】
さらに、ターゲット表面全体としての結晶面のバラツキは、上記した17点の試験片から求めた結晶面の最大値および最小値から、{(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて求めた値を示すものとする。
【0063】
また、上記各本発明のWスパッタリングターゲットは、その相対密度が99%以上であることが好ましい。
【0064】
これは、あまりその相対密度が低いと、パーティクル発生量が増加するため上記範囲とした。この相対密度は、好ましくは99.5%以上であり、さらに好ましくは99.7%以上である。
【0065】
なお、上記相対密度は常法のアルキメデス法で測定した値である。
【0066】
本発明のWスパッタリングターゲットは、通常の高純度金属材料よりなるスパッタリングターゲットと同程度の不純物量であれば含有しても差し支えない。ただし、あまり不純物含有量が多いと、例えばリーク電流が増大したり、比抵抗が高くなるなど特性の低下するおそれがある。
【0067】
従って、本発明のスパッタリングターゲットは、不純物元素としての鉄(Fe),ニッケル(Ni),クロム(Cr),銅(Cu),アルミニウム(Al),ナトリウム,(Na),カリウム(K),ウラン(U)およびトリウム(Th)の合計の含有量が100ppm以下である高純度Wで構成することが好ましい。
【0068】
言い換えると、Fe、Ni、Cr、Cu、Al、Na、K、U、Thの各含有量(質量%)の合計量を100%から引いた値[100−(Fe+Ni+Cr+Cu+Al+Na+K+U+Th)]が99.99%以上の高純度Wを用いることが好ましい。
【0069】
本発明のWスパッタリングターゲットは、CuやAl、もしくはそれらの合金からなるバッキングプレートと接合一体化して使用されることが好ましい。バッキングプレートとの接合には、拡散接合やろう付けなど従来公知の接合方法を適用することが可能である。
【0070】
本発明のWスパッタリングターゲットは、例えば以下のようにして製造することができる。
【0071】
例えば、まず第1の製法として、ホットプレスを使用した方法である。
【0072】
まず、高純度W粉末をボールミルなどで粉砕し、形骸粒子の少ない高純度W粉末を得る。この高純度W粉末を意図するターゲットサイズにあわせたカーボン型などに充填し、ホットプレスにより加圧焼結する。形骸粒子を多数含んだ高純度W粉末は、加圧焼結しても形骸粒子内部まで完全に焼結が進行しないため、なるべく形骸粒子が少ない粉末を使用する。
【0073】
上述した加圧焼結工程においては、最高焼結温度まで昇温する前に、例えば、1150℃〜1450℃の温度で最低1時間以上加熱する脱ガス処理を施すことが好ましい。これは、原料粉末に付着している吸着酸素や他の不純物元素を除去するためである。脱ガス処理の雰囲気は、真空中(1Pa以下)、もしくはH雰囲気中が好ましい。
【0074】
このような脱ガス処理を実施した後に、所定の中間焼結温度で、例えば、1Pa以下の真空雰囲気下で20MPa以上の圧力を加えつつ加熱して焼結させる。
【0075】
ここで中間焼結温度までに到達させる前に昇温速度2℃/min〜5℃/min、中間焼結温度1450℃〜1700℃の温度で1時間以上保持することが好ましい。
【0076】
このような中間焼結工程を実施することで、焼結体の温度均一性を向上させ、焼結体に含まれる空孔もしくはボイドを除去させることができる。さらに、この中間焼結工程で結晶面(110)の半値幅のバラツキを本発明で規定するバラツキの範囲内とすることが可能となる。
【0077】
そして、上記中間焼結工程を実施した後に、さらに最高焼結温度まで昇温し、最終の焼結を行う。最高焼結温度は、1900℃以上が好ましい。このような最高焼結温度の保持時間は、5時間以上とすることが好ましい。
【0078】
このような最終焼結工程を実施した後の冷却は、例えば加圧していた圧力を無くし、冷却速度10℃/min以上で冷却することが好ましい。また、更にこの加圧焼結された焼結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理してもよい。HIP処理温度は、1400℃〜1800℃、加圧力は、150MPa以上とすることが好ましい。このようなHIP処理を行うことにより、より緻密な焼結体を得ることが可能となる。
【0079】
なお、上記焼結体を真空中あるいは水素(H)雰囲気中で1000〜1300℃で、1時間以上熱処理することにより、半値幅が小さくなり、より好ましい半値幅を有するWスパッタターゲットが得られ易くなるため、この熱処理を行うことが好ましい。
【0080】
また、他の製法として、熱間静水圧プレス(CIP)処理後、HIP処理を施して、その後水素焼結を行い、得られた焼結体を熱間圧延もしくは熱間鍛造してもよい。
【0081】
また、他の製法として、HIP処理を行っても良い。
【0082】
上記HPあるいはHIP処理を行った後に、さらに水素焼結を施し、その後熱間鍛造、熱間圧延を行うことも可能である。
【0083】
また、他の製法として、WF/Hガスなどを用いたCVDによる製法でも構わない。スパッタリングやイオンプレーティング、溶射、蒸着でも製造することは可能である。
【0084】
このようにして得られたターゲット材料を機械加工し所定のターゲット形状に加工する。
【0085】
次に、得られたターゲット材料を以下の表面仕上げを施し、スパッタリングされる面の結晶面(110)の半値幅が本発明範囲内のターゲットを得る。
【0086】
まず、本発明においては、スパッタリングされる面を、ロータリー研磨およびポリッシングの少なくとも1種を行う。特に、ロータリー研磨を施して、その後ポリッシングを行うことが好ましい。この場合の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1μm以下であることが好ましい。
【0087】
そして、本発明においては上記研磨を施した後、さらに、ウェットエッチングやドライエッチングなどのエッチングあるいは逆スパッタ法等の表面処理を施す。この場合の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で0.5μm以下とすることが好ましい。ウェットエッチングに使用されるエッチング液としてはフェリシアン化カリウム(赤血カリ)等を使用することが可能である。また、ドライエッチングに使用されるエッチングガスとしてはCF/O混合ガス等を使用することが可能である。
【0088】
本発明は、上記研摩により仕上げ加工を施すことにより、機械加工によって結晶面に蓄積される内部歪を除去するとともに、本発明で規定する半値幅の範囲内とすることが可能となる。
【0089】
次に、結晶方位比率(110)/(200)を規定した第2の発明のWスパッタリングターゲットの製法として、ホットプレスを使用した方法を説明する。
【0090】
まず、高純度W粉末をアルゴン(Ar)雰囲気中あるいは水素雰囲気中で、例えば24時間以上ボールミルなどで粉砕し、形骸粒子の少ない高純度W粉末を得る。
【0091】
この高純度W粉末を意図するターゲットサイズに合わせたカーボン型などに充填し、ホットプレスにより加圧焼結する。形骸粒子を多数含んだ高純度W粉末は、加圧焼結しても形骸粒子内部まで完全に焼結が進行しないため、なるべく形骸粒子が少ない粉末を使用する。さらにこのW粉末の酸素量は2000ppm以下のものを用いることが好ましい。これは、あまり酸素量が多いと内部まで完全に焼結が進行せず、所定の密度を有する焼結体を得ることができないためである。
【0092】
上述した加圧焼結工程においては、最高焼結温度まで昇温する前に、例えば、1150℃〜1450℃の温度で最低1時間以上加熱する脱ガス処理を施すことが好ましい。これは、原料粉末に付着している吸着酸素や他の不純物元素を除去するためである。脱ガス処理の雰囲気は、真空中(1Pa以下)、もしくはH雰囲気中が好ましい。
【0093】
このような脱ガス処理を実施した後に、所定の中間焼結温度で、例えば、1Pa以下の真空雰囲気下で20MPa以上の圧力を加えつつ加熱して焼結させる中間焼結を行う。
【0094】
ここで、中間焼結時の所定の圧力に到達した段階で圧力を開放し、再度所定圧力まで加圧する工程を、少なくとも5回以上行うことが好ましい。この加圧−開放−加圧の工程は、この中間焼結工程での焼結段階での密度向上と、本発明の第2の発明で意図する結晶方位の配向性に制御することが可能となる。
【0095】
ここで中間焼結温度までに到達させる前に昇温速度2℃/min〜5℃/min、中間焼結温度1450℃〜1700℃の温度で1時間以上保持することが好ましい。このような中間焼結工程を実施することで、焼結体の温度均一性を向上させ、焼結体に含まれる空孔もしくはボイドを除去させることができる。さらに、この中間焼結工程で結晶方位比率(110)/(200)のバラツキを本発明で規定するバラツキの範囲内とすることが可能となる。
【0096】
そして、上記中間焼結工程を実施した後に、さらに最高焼結温度まで昇温し、最終の焼結を行う。最高焼結温度は、1900℃以上が好ましい。このような最高焼結温度の保持時間は、5時間以上とすることが好ましい。
【0097】
このような最高焼結工程を実施した後の冷却は、例えば加圧していた圧力を無くし、冷却速度10℃/min以上で冷却することが好ましい。また、更にこの加圧焼結された焼結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理してもよい。HIP処理温度は、1400℃〜1800℃、加圧力は、150MPa以上とすることが好ましい。このようなHIP処理を行うことにより、より緻密な焼結体を得ることが可能となる。
【0098】
なお、上記焼結体に対し、さらに熱間加工を施すか、あるいは水素(H)雰囲気中で2000℃以上で熱処理することにより、さらに結晶方位比率(110)/(200)が本発明で規定するバラツキの範囲内のWスパッタターゲットが得られ易くなるため、この熱間加工あるいは熱処理を行うことが好ましい。ここで、熱間加工とは、例えば熱間鍛造あるいは熱間圧延等の熱間加工であり、熱間加工条件は、H雰囲気中で1000〜1400℃で1時間保持した後、加工率30%以下で行うことが好ましい。
【0099】
また、他の製法として、熱間静水圧プレス(CIP)処理後、HIP処理を施して、その後水素焼結を行い、得られた焼結体を熱間圧延もしくは熱間鍛造してもよい。
【0100】
また、他の製法として、HIP処理を行っても良い。
【0101】
上記HPあるいはHIP処理を行った後に、さらに水素焼結を施し、その後熱間鍛造、熱間圧延を行うことも可能である。
【0102】
次に、結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}を規定した第3の発明のWスパッタリングターゲットの製法として、ホットプレスを使用した方法を説明する。
【0103】
まず、高純度W粉末をアルゴン(Ar)雰囲気中あるいは水素雰囲気中で、例えば24時間以上ボールミルなどで粉砕し、形骸粒子の少ない高純度W粉末を得る。
【0104】
この高純度W粉末を意図するターゲットザイズに合わせたカーボン型などに充填し、ホットプレスにより加圧焼結する。形骸粒子を多数含んだ高純度W粉末は、加圧焼結しても形骸粒子内部まで完全に焼結が進行しないため、なるべく少ない粉末を使用する。さらにこのW粉末の酸素量は2000ppm以下のものを用いることが好ましい。これは、あまり酸素量が多いと内部まで完全に焼結が進行せず、所定の密度を有する焼結体を得ることができないためである。
【0105】
上述した加圧焼結工程においては、最高焼結温度まで昇温する前に、例えば、1150℃〜1450℃の温度で最低1時間以上加熱する脱ガス処理を施すことが好ましい。これは、原料粉末に付着している吸着酸素や他の不純物元素を除去するためである。脱ガス処理の雰囲気は、真空中(1Pa以下)、もしくはH雰囲気中が好ましい。
【0106】
このような脱ガス処理を実施した後に、所定の中間焼結温度で、例えば、1Pa以下の真空雰囲気下で20MPa以下の圧力を加えつつ加熱して焼結させる中間焼結を行う。これは、あまりその加圧力が大きい場合には高密度のWスパッタリングターゲットが得られ難いためである。
【0107】
ここで、中間焼結時の所定の圧力に到達した段階で圧力を開放し、再度所定圧力まで加圧する工程を、少なくとも5回以上行うことが好ましい。この加圧−開放−加圧の工程は、この中間焼結工程での焼結段階での密度向上と、本発明の第2の発明で意図する結晶方位の配向性に制御することが可能となる。
【0108】
ここで中間焼結温度までに到達させる前に昇温速度2℃/min〜5℃/min、中間焼結温度1450℃〜1700℃の温度で1時間以上保持することが好ましい。
【0109】
このような中間焼結工程を実施することで、焼結体の温度均一性を向上させ、焼結体に含まれる空孔もしくはボイドを除去させることができる。
【0110】
そして、この中間焼結工程を実施した後に、焼結時の温度から続けて一旦800〜1000℃の温度まで低下させ、40MPa以上の圧力を1MPa/min(10ton/min)以上の加圧速度で急激に加圧し、さらに最高焼結温度まで昇温し、最終の焼結を行う。ここで、一旦低下させる温度は、あまり低すぎると焼結体がその後の急激な加圧で割れ等を生じ、逆に低下させる温度があまり高すぎると焼結体に含まれる歪の開放が顕著になり、所定の結晶方位比率を得ることが困難になるためである。また、前記急激な加圧は、中間焼結工程で焼結が進行した状態(例えば焼結密度95%以上)で急激に加圧することで、すべり効果を促進させて、所定の結晶方位比率を得るためである。
【0111】
この中間焼結工程後の最高焼結温度は、1900℃以上が好ましい。このような最高焼結温度の保持時間は、5時間以上とすることが好ましい。これは、あまり最高焼結温度が低いとあるいはあまり焼結時間が短いと所定の密度及び結晶方位比率を有する焼結体を得ることができにくいためである。
【0112】
このような最高焼結工程を実施した後の冷却は、例えば加圧していた圧力を無くし、冷却速度10℃/min以上で冷却することが好ましい。また、更にこの加圧焼結された焼結体を熱間静水圧プレス(HIP)処理してもよい。HIP処理温度は、1400℃〜1800℃、加圧力は、150MPa以上とすることが好ましい。このようなHIP処理を行うことにより、より緻密な焼結体を得ることが可能となる。
【0113】
次に、結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(110)/(200)が0.1〜6.5であり、かつ結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が0.17以下を規定した本発明の第4の発明であるWスパッタリングターゲットの製法は、上記製法を適宜選択することにより製造することが可能である。
【0114】
次に、得られたターゲット材料に表面仕上げを施し、表面仕上げされた本発明のWスパッタリングターゲットは、CuやAl、もしくはそれらの合金からなるバッキングプレートと接合一体化して使用されることが好ましい。バッキングプレートとの接合には、拡散接合やろう付けなど従来公知の接合方法を適用することが可能である。
【0115】
ろう付けは、公知のIn系やSn系等の接合材を使用して実施することが好ましい。また、拡散接合時の温度は、Alのバッキングプレートと接合する場合には600℃以下とすることが好ましい。これは、Alの融点が660℃であるためである。
【0116】
以上の製造方法により、本発明の高純度Wスパッタリングターゲットを得ることが可能となる。
【0117】
なお、上記の製法は本発明のWスパッタリングターゲットを得るための一例であり、本発明の範囲のWスパッタリングターゲットを得ることができる製法であれば、何らその製法に限定されるものではない。
【0118】
上記本発明のWスパッタリングターゲットは、半導体素子や液晶表示素子に代表される電子部品の電極および/または配線の形成に使用される。
【実施例】
【0119】
次に本発明の具体的な実施例について説明する。
【0120】
(実施例1)
高純度W粉末を用意し、この高純度W粉末をカーボン型内に充填してホットプレス装置にセットした。そして、1Pa以下の真空雰囲気中にて1250℃、保持時間3時間の脱ガス処理を実施した。次いで、前記脱ガス温度から1Pa以下の真空雰囲気中で30MPaの圧力を加えつつ、表1の中間焼結工程の欄に記載の昇温速度で昇温し、同欄に記載の温度および保持時間で中間焼結を行った。そして、前記中間焼結工程後、最高焼結温度1900℃で5時間保持し、それぞれのターゲット材料としてのW焼結体を作製した。焼結後の冷却は雰囲気をArで置換し、かつ10℃/minの冷却速度で実施した。
【0121】
このようにして作製したW焼結体を所望のターゲット寸法(直径Φ300×厚さ5mm)に機械加工した。ターゲット表面をロータリー研磨した後、表1に記載の仕上げ加工を施した。得られたスパッタリングターゲットを、Cu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た。
【0122】
ターゲット表面の結晶面は、X線回折装置(理学社製XRD)によって解析し、結晶面(110)のピークの半値幅およびそのバラツキを測定した。その結果を併せて表1に示す。
【0123】
表1中、No.14〜16のターゲットは、W焼結体を製造した後、真空中、1200℃で2時間熱処理を行った。
【0124】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0125】
このようにして作製した各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、スパッター方式:マグネトロンスパッター,背圧:1×10−5Pa、出力DC:2kW、Ar:0.5Pa、スパッタ時間:5minの条件下で、8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜した。得られたW膜の膜厚均一性を測定するために、基板の直径を端部から5mm間隔で測定した各々の箇所の膜厚を測定し、得られた値から、最大値、最小値を次式、膜厚均一性={(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて求めた値で算出した。これらの結果を併せて表1に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
表1から明らかなように本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶面(110)のピークの半値幅を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶面(110)のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、膜厚均一性が比較例に比し優れている。
【0128】
(実施例2)
高純度W粉末を用意し、この高純度W粉末をカーボン型内に充填してホットプレス装置にセットし、そして、表2の中間焼結工程の欄に記載の昇温速度で昇温し、同欄に記載の温度および保持時間で中間焼結を行った。そして、前記中間焼結工程後、1Pa以下の真空雰囲気中にて最高焼結温度1900℃で5時間、圧力:30MPaで保持してW焼結体を得た。その後、このW焼結体をHIPにより1800℃で5時間、圧力180MPaの条件のもとで処理して、ターゲット材料としてのW焼結体を作製した。
【0129】
このようにして作製したW焼結体を所望のターゲット寸法(直径Φ300×厚さ5mm)に機械加工し、ターゲット表面をロータリー研磨した後、表2に記載の仕上げ加工を施した。得られたスパッタリングターゲットをCu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た。
【0130】
得られたWスパッタリングターゲットを実施例1と同様の条件により半値幅およびそのバラツキを測定した。その結果を併せて表2に示す。
【0131】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0132】
このようにして作製した各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、実施例1と同様の条件により8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜後、得られたW膜の膜厚均一性を測定した。これらの結果を併せて表2に示す。
【0133】
【表2】

【0134】
表2から明らかなように本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶面(110)のピークの半値幅を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶面(110)のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、膜厚均一性が比較例に比し優れている。
【0135】
(実施例3)
高純度W粉末を用意し、この高純度W粉末をCIP焼結して引き続き1600℃で5時間、圧力150MPaの条件下でHIP処理を施し、密度96%の焼結体を得た。その後、水素雰囲気中で10時間保持した後、水素雰囲気2200℃で熱間圧延を施して、ターゲット材料としての焼結体を得た。
【0136】
このようにして作製したW焼結体を所望のターゲット寸法(直径Φ300×厚さ5mm)に機械加工し、ターゲット表面をロータリー研磨した後、表3に記載の仕上げ加工を施した。得られたスパッタリングターゲットをCu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た。
【0137】
得られたWスパッタリングターゲットを実施例1と同様の条件により半値幅およびそのバラツキを測定した。その結果を併せて表3に示す。
【0138】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0139】
このようにして作製した各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、実施例1と同様の条件により8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜後、得られたW膜の膜厚均一性を測定した。これらの結果を併せて表3に示す。
【0140】
【表3】

【0141】
表3から明らかなように本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶面(110)のピークの半値幅を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶面(110)のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、膜厚均一性が比較例に比し優れている。
【0142】
(実施例4)
CVD装置を用いて、原料ガス:WF、Hにより所定の条件下においてW焼結体を得た。
【0143】
このようにして作製したW焼結体を所望のターゲット寸法(直径Φ300×厚さ5mm)に機械加工し、ターゲット表面をロータリー研磨した後、表4に記載の仕上げ加工を施した。得られたスパッタリングターゲットをCu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た。
【0144】
得られたWスパッタリングターゲットを実施例1と同様の条件により半値幅およびそのバラツキを測定した。その結果を併せて表4に示す。
【0145】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0146】
このようにして作製した各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、実施例1と同様の条件により8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜後、得られたW膜の膜厚均一性を測定した。これらの結果を併せて表4に示す。
【0147】
【表4】

【0148】
表4から明らかなように本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶面(110)のピークの半値幅を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶面(110)のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、膜厚均一性が比較例に比し優れている。
【0149】
次に結晶方位比率を規定した本発明の具体的な実施例について説明する。
【0150】
(実施例5)
高純度W粉末を用意し、この高純度W粉末をカーボン型内に充填してホットプレス装置にセットした。そして、1Pa以下の真空雰囲気中にて表5に示す熱処理温度で保持時間3時間の脱ガス処理を実施した。次いで、前記脱ガス温度から1Pa以下の真空雰囲気中で、表5に示す加圧回数で常圧から30MPaの圧力までの加圧,減圧を繰り返した後、昇温速度2℃/minで表5に示す中間焼結温度まで昇温後、2時間保持した。
【0151】
中間焼結後、1900℃まで昇温後、5時間保持の最終焼結を行った。焼結後の冷却は、雰囲気をArに置換し、表5に示す冷却速度で常温まで冷却し、W焼結体を得た。得られた焼結体の1部は、表5に示すように、さらにHIP処理(180MPa,1800℃),1600℃での熱間鍛造(加工率20%,15%)及び1600℃での水素アニールを行った。
【0152】
上記各製法で得られた各W焼結体に対し、所望のターゲット寸法(直径300mm,厚さ5mm)に機械加工を施した後、ターゲット表面を常法にて研摩しスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを、Cu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た(試料101〜118)。
【0153】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0154】
【表5】

【0155】
得られたWスパッタリングターゲットの相対密度を測定した。その結果を表6に示す。また、ターゲット表面の結晶面は、X線回折装置(理学社製XRD)によって解析し、結晶面結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)およびそのバラツキを測定した。その結果を表6に示す。
【0156】
さらに各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、スパッター方式:マグネトロンスパッター,背圧:1×10−5Pa、出力DC:2kW、Ar:0.5Pa、スパッタ時間:5minの条件下で、8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜した。得られたW膜の膜厚均一性を測定するために、基板の直径を端部から5mm間隔で測定した各々の箇所の膜厚を測定し、得られた値から、最大値、最小値を次式、膜厚均一性={(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて求めた値で算出した。この結果を併せて表6に示す。
【0157】
【表6】

【0158】
表6から明らかなように本発明のWスパッタリングターゲットは高密度であり、本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶方位比率(110)/(200)を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶方位比率のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、膜厚均一性が本発明範囲外のWスパッタリングターゲットに比較し優れている。
【0159】
(実施例6)
高純度W粉末を用意し、この高純度W粉末をAr雰囲気中にて表7に示す粉砕時間でボールミルで粉砕した。得られたW粉末をカーボン型内に充填してホットプレス装置にセットした。そして、1Pa以下の真空雰囲気中にて表7に示す熱処理温度及び保持時間の脱ガス処理を実施した。次いで、前記脱ガス温度から第1加圧として1Pa以下の真空雰囲気中で、10MPaに加圧し、昇温速度2℃/minで表7に示す中間焼結温度まで昇温後、2時間保持した。中間焼結後、得られたW焼結体を一旦表7に示す冷却温度まで冷却した。一旦冷却されたW焼結体を冷却温度から第2加圧として表7に示す圧力に加圧で昇温速度2℃/minで表7に示す最終焼結焼結温度まで昇温後、表7に示す保持時間で保持し、最終焼結を行った。焼結後の冷却は、雰囲気をArに置換し、表7に示す冷却速度で常温まで冷却し、W焼結体を得た。
【0160】
上記各製法で得られた各W焼結体に対し、所望のターゲット寸法(直径300mm,厚さ5mm)に機械加工を施した後、ターゲット表面を常法にて研摩しスパッタリングターゲットを得た。得られたスパッタリングターゲットを、Cu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た(試料119〜137)。
【0161】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0162】
【表7】

【0163】
得られたWスパッタリングターゲットの相対密度を測定した。その結果を表8に示す。ターゲット表面の結晶面は、X線回折装置(理学社製XRD)によって解析し、(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}およびそのバラツキを測定した。その結果を表8に示す。
【0164】
さらに各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、スパッター方式:マグネトロンスパッター,背圧:1×10−5Pa、出力DC:2kW、Ar:0.5Pa、スパッタ時間:5minの条件下で、8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜した。得られたW膜中の1μm以上のパーティクルをパーティクルカウンター装置(WN−3)にて測定した。測定結果は、300枚のウェハーを測定した平均値とした。その結果を併せて表8に示す。
【0165】
【表8】

【0166】
表8から明らかなように本発明のWスパッタリングターゲットは高密度であり、本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶方位比率のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、1μm以上のパーティクルの発生を低減しており、本発明範囲外のWスパッタリングターゲットに比較し優れている。
【0167】
上記実施例においては、結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)及びを結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}を個々に説明したが、双方を満足する結晶方位比率を有するWスパッタリングターゲットであれば膜厚均一性向上及びパーティクル低減の双方の効果を得ることができる。
【0168】
このように、本実施例のWスパッタリングターゲットは、大型の基板上に成膜したW膜の膜厚面内均一性を向上することが可能であり、またパーティクルの発生を更に減少させることが可能である。
【0169】
(実施例7)
高純度W粉末を用意し、この高純度W粉末をAr雰囲気中にて表9に示す粉砕時間でボールミルで粉砕した。得られたW粉末をカーボン型内に充填してホットプレス装置にセットした。そして、1Pa以下の真空雰囲気中にて表9に示す熱処理温度及び保持時間で脱ガス処理を実施した。次いで表9に示す加圧回数で常圧から30MPaの圧力までの加圧,減圧を繰り返した後、次いで、前記脱ガス温度から第1加圧として1Pa以下の真空雰囲気中で、10MPaに加圧し、昇温速度2℃/minで表9に示す中間焼結温度まで昇温後、2時間保持した。中間焼結後、得られたW焼結体を一旦表9に示す冷却温度まで冷却した。一旦冷却されたW焼結体を冷却温度から第2加圧として表9に示す圧力に加圧で昇温速度2℃/minで表9に示す最終焼結焼結温度まで昇温後、表9に示す保持時間で保持し、最終焼結を行った。焼結後の冷却は、雰囲気をArに置換し、表9に示す冷却速度で常温まで冷却し、W焼結体を得た。
【0170】
上記各製法で得られた各W焼結体に対し、所望のターゲット寸法(直径300mm,厚さ5mm)に機械加工を施した。ターゲット表面をロータリー研磨した後、表9に記載の仕上げ加工を施した。得られたスパッタリングターゲットを、Cu製バッキングプレートにIn系ろう材によりろう付け接合することによって、数種類のWスパッタリングターゲットを得た(試料201〜210)。
【0171】
【表9】

【0172】
得られたWスパッタリングターゲットの相対密度を測定した。
【0173】
また、ターゲット表面の結晶面は、X線回折装置(理学社製XRD)によって解析し、結晶面(110)のピークの半値幅およびそのバラツキを測定した。その結果を併せて表10に示す。
【0174】
また、結晶面結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)およびそのバラツキを測定した。その結果も表10に示す。
【0175】
さらに、(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}およびそのバラツキを測定した。その結果も表10に示す。
【0176】
なお、各ターゲットの不純物量(Fe,Ni,Cr,Cu,Al,Na,K,U,Thの合計量)は10ppm以下であった。
【0177】
さらに各Wスパッタリングターゲットをそれぞれ用いて、スパッター方式:マグネトロンスパッター,背圧:1×10−5Pa、出力DC:2kW、Ar:0.5Pa、スパッタ時間:5minの条件下で、8インチのSiウェハー基板上にW膜を成膜した。得られたW膜の膜厚均一性を測定するために、基板の直径を端部から5mm間隔で測定した各々の箇所の膜厚を測定し、得られた値から、最大値、最小値を次式、膜厚均一性={(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100の式に基づいて求めた値で算出した。これらの結果を併せて表10に示す。さらに得られたW膜中に混入した粒径1μm以上のパーティクルをパーティクルカウンター装置(WN−3)にて測定した。測定結果は、300枚のウェハーを測定した平均値とした。その結果も併せて表10に示す。
【0178】
【表10】

【0179】
表10から明らかなように本発明のWスパッタリングターゲットは高密度であり、本発明範囲内のスパッタリングされる面のX線回折により得られた結晶面(110)のピークの半値幅を有するWスパッタリングターゲット、その結晶面(110)のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲット、結晶方位比率(110)/(200)を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶方位比率のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲット、結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}を有するWスパッタリングターゲット、さらには、その結晶方位比率のバラツキが本発明範囲内のWスパッタリングターゲットは、膜厚均一性が優れており、かつ粒径が1μm以上のパーティクルの発生を低減している。
【0180】
以上の説明から明らかなように、本発明の高純度WスパッタリングターゲットはW膜の膜厚面内均一性を向上させることが可能となる。その結果、半導体装置の電極などに使用する際の信頼性を向上するとともに、その製造時の歩留りも向上させることが可能となる。
【0181】
さらに、本発明の高純度Wスパッタリングターゲットの製造方法は、優れた膜厚面内均一性を得ることが可能なWスパッタリングターゲットを得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0182】
1〜17 試験片採種箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(110)/(200)が0.1〜6.5であり、かつ結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が0.17以下であることを特徴とするタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)のバラツキが50%以下であり、かつ結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}のバラツキが30%以下であることを特徴とする請求項1記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)のピークの半値幅が0.35以下であることを特徴とする請求項1記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110)及び(200)の結晶方位比率(110)/(200)が0.1〜6.5であり、前記結晶方位比率(110)/(200)のバラツキが50%以下であることを特徴とする請求項1記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記スパッタリングされる面のX線回折により求められた結晶面(110),(200),(211),(220)及び(310)の結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}が0.17以下であり、前記結晶方位比率(211)/{(110)+(200)+(211)+(220)+(310)}のバラツキが30%以下であることを特徴とする請求項1記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項6】
相対密度が99%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項7】
スパッタリングターゲットは、半導体素子の電極および/または配線の形成に使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項8】
スパッタリングターゲットは、バッキングプレートと接合一体化されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項9】
スパッタリングターゲットは、ロータリー研磨およびポリッシングの少なくとも1種の研磨を施され、さらにエッチングおよび逆スパッタリングの少なくとも1種の研磨を施されることにより仕上げ加工されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項10】
スパッタリングターゲットは、バッキングプレートと拡散接合またはろう付けにより接合一体化されていることを特徴とする請求項8記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項11】
スパッタリングターゲットは、不純物としての鉄,ニッケル,クロム,銅,アルミニウム,ナトリウム,カリウム,ウランおよびトリウムの合計の含有量が100ppm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のタングステンスパッタリングターゲット。
【請求項12】
高純度タングステン粉末を加圧焼結後、得られた焼結体をターゲット形状に加工後、ロータリー研磨およびポリッシングの少なくとも1種の研磨を施し、さらにエッチングおよび逆スパッタリングの少なくとも1種の研磨を施すことにより仕上げ加工することを特徴とするタングステンスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項13】
加圧焼結は、ホットプレスにより加圧する際に、最高焼結温度まで昇温する段階において、昇温速度2〜5℃/minで昇温後、1450〜1700℃で1時間以上保持する中間焼結工程を有することを特徴とする請求項12記載のタングステンスパッタリングターゲットの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−92451(P2012−92451A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277560(P2011−277560)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2001−264741(P2001−264741)の分割
【原出願日】平成13年8月31日(2001.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】