説明

ターボチャージャ付内燃機関

【課題】特に、ターボチャージャに供給される潤滑油より余剰のエネルギーを電気エネルギーとして回収することを可能とするターボチャージャ付内燃機関を提供する。
【解決手段】ターボチャージャ付内燃機関Eにおいて、潤滑油の循環方向におけるターボチャージャ11の下流側には油圧ポンプ/モータPMが設けられ、油圧ポンプ/モータPMにはモータ/発電機MGが接続されている。ターボチャージャ付内燃機関Eには、ターボチャージャ11のセンターハウジング23から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定し、判定結果が肯定判定の場合に油圧ポンプ/モータPMを油圧ポンプとして機能させるようにモータ/発電機MGを駆動させる制御を行う一方で、判定結果が否定判定の場合に油圧ポンプ/モータPMを油圧モータとして機能させてモータ/発電機MGに発電させる制御を行うコントロールユニット41が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャの軸受部を潤滑し、かつ軸受部潤滑後の潤滑油をクランクケース内に戻すように作動する油循環機構を備えたターボチャージャ付内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車においては、車両制御のために設けられる電子部品の量が増加し、それに伴い自動車における電気負荷が大きくなってきている。そして、電子部品への電力供給のために発電を行うオルタネータの発電負荷も大きくなるため、オルタネータを駆動させるエンジン(内燃機関)への負荷が大きくなり、結果として、燃費が悪化してしまっている。そこで、例えば、自動車内の油圧回路に発電機を設けて油圧エネルギーを電気エネルギーとして回収し、電気部品への電力供給を補助することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のポンプ装置は、原動機が駆動源の第1オイルポンプと、電動モータ又は発電機として機能するモータ/ジェネレータが駆動源の第2オイルポンプ/モータとを備える。さらに、ポンプ装置は、第1オイルポンプ及び第2オイルポンプ/モータの吐出油をオイル供給先に吐出する吐出口と、モータ/ジェネレータの駆動制御を行う制御手段とを備えている。
【0003】
特許文献1のポンプ装置は、オイル供給先への吐出油が不足している場合に第2オイルポンプ/モータでその不足分を補い、その吐出油に余剰がある場合に、余剰分で第2オイルポンプ/モータを駆動させて電気エネルギーの回収を行うようになっている。そして、自動車においては、回収された電気エネルギーをバッテリに貯蓄し、この貯蓄された電気エネルギーを電子部品に供給することにより、オルタネータの発電負荷を低減させることができる。
【特許文献1】特開2005−195102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンのオイルポンプより吐出されたオイルは、周知の如く、カムシャフト軸受等の各摺動部の潤滑、燃焼により高温となるピストン裏面の冷却、等様々な部位で利用される。そして、各部位にて必要となるオイルの量は、必ずしも一律に増減するものではない。例えば、カムシャフト軸受等の潤滑目的では、主にカムシャフトの回転数に対応した量のオイルが必要となるのに対し、ピストン冷却目的では、主に温度、すなわちエンジン負荷に応じた量のオイルが必要となる。このため、特許文献1における吐出油(オイル)の余剰の有無は、結局のところ、エンジンの各運転状態に応じ、最大公約数的に決めざるを得ず、部分的には吐出油(オイル)に余剰が生じていても、これを活用することは出来ない。
【0005】
また、クランクシャフト又はカムシャフトよりも高速で回転するターボチャージャの軸受部には、多量のオイルが供給されているが、ターボチャージャは、構造上、軸受部内圧(油圧)が過度に上昇すると、吸気又は排気通路側へのオイル噴出が生じるため、エネルギー回収の対象とされてこなかった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、特に、ターボチャージャに供給される潤滑油より余剰のエネルギーを電気エネルギーとして回収することを可能とするターボチャージャ付内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、内燃機関から排出される排気ガスのエネルギーを利用し、吸気の過給を行うターボチャージャを備え、さらに、オイルポンプによって潤滑油を前記ターボチャージャの軸受部に供給して該軸受部を潤滑し、かつ軸受部潤滑後の前記潤滑油をクランクケース内に戻すように作動する油循環機構を備えたターボチャージャ付内燃機関において、前記油循環機構での潤滑油の循環方向における前記ターボチャージャの下流側に、油圧ポンプ/モータを設けるとともに該油圧ポンプ/モータに接続されたモータ/発電機を設け、さらに、前記ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定し、判定結果が肯定判定の場合に前記油圧ポンプ/モータを油圧ポンプとして機能させるように前記モータ/発電機を駆動させる制御を行う一方で、判定結果が否定判定の場合に前記油圧ポンプ/モータを油圧モータとして機能させて前記モータ/発電機に発電させる制御を行う制御手段を設けたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、制御手段によりターボチャージャの軸受部から潤滑油が噴出する虞があると判定された場合には、制御手段はモータ/発電機を駆動させて油圧ポンプ/モータを油圧ポンプとして駆動させるようにした。このため、油圧ポンプ/モータの油圧ポンプとしての機能によりターボチャージャの軸受部内の潤滑油がクランクケース内へ強制的に排出される。その結果、ターボチャージャの軸受部内圧が低下し、軸受部から潤滑油が噴出することが防止される。一方、制御手段によりターボチャージャの軸受部から潤滑油が噴出する虞がないと判定された場合には、制御手段は油圧ポンプ/モータを油圧モータとして機能させ、モータ/発電機を発電機として機能させるようにした。このため、ターボチャージャの軸受部から排出される潤滑油(圧油)を利用してモータ/発電機により電気エネルギーを回収することができる。すなわち、ターボチャージャの軸受部における潤滑油の余剰の有無に関係無く、軸受部から必ず排出される潤滑油を活用して電気エネルギーを回収することができる。そして、回収された電気エネルギーを利用して電子部品に電力を供給することにより、オルタネータの発電負荷、ひいては内燃機関の負荷を低減させることができる。
【0009】
また、前記潤滑油の循環方向における前記油圧ポンプ/モータより上流側には、前記ターボチャージャの軸受部から排出された潤滑油の圧力を検出する油圧センサが設けられ、前記制御手段は前記油圧センサからの検出信号に基づき前記ターボチャージャの軸受部内圧を推定するとともに、推定された軸受部内圧と予め設定された閾値を比較して前記ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定するようにしてもよい。
【0010】
これによれば、ターボチャージャの軸受部内圧をより正確に検出することができ、軸受部内圧が高いときは、確実に軸受部内の潤滑油をクランクケース内へ強制的に排出させることができる。
【0011】
また、前記潤滑油の循環方向における前記油圧ポンプ/モータより上流側には、前記ターボチャージャの軸受部から排出された潤滑油の圧力を検出する油圧センサが設けられ、前記制御手段は、前記内燃機関の回転数及び燃料噴射量の情報を基に前記クランクケース内の圧力を推定するとともに、推定された圧力に基づいて閾値を決定し、前記油圧センサからの検出信号に基づき推定されるターボチャージャの軸受部内圧と前記閾値を比較して前記ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定するようにしてもよい。
【0012】
これによれば、クランクケース内の圧力は、内燃機関の稼働状況等によって変動する。そして、制御手段は内燃機関の回転数及び燃料噴射量の情報を基にクランクケース内の圧力を推定し、その圧力に応じて閾値を変更させる。このため、クランクケース内の圧力が変動しても、ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞がある場合には正確に油圧ポンプ/モータを油圧ポンプとして機能させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特に、ターボチャージャに供給される潤滑油より余剰のエネルギーを電気エネルギーとして回収することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
まず、本実施形態にかかるターボチャージャ付内燃機関Eについて説明する。図1に示すように、ターボチャージャ付内燃機関Eのエンジン10にはターボチャージャ11が備えられるとともに、エンジン10のクランクケース12の下部には、エンジン10の各軸受部等及びターボチャージャ11へ供給される潤滑油を貯留するためのオイルパン13が設けられている。なお、本実施形態では、クランクケース12及びオイルパン13がエンジン10のシリンダブロックの下部に設けられている。オイルパン13内には、潤滑油を吸入するオイルストレーナ(図示せず)が配置されており、吸入された潤滑油はオイルポンプ30により、ターボチャージャ11及びエンジン10各部に圧送されるようになっている。このオイルポンプ30は、エンジン10によって駆動する駆動軸としてのクランクシャフト(図示せず)によって駆動する機械式のオイルポンプであり、クランクシャフトの回転数に略比例した流量を吐出する固定容量ポンプである。
【0015】
クランクケース12には、エンジン10のシリンダ(図示せず)とピストンリング(図示せず)との隙間からクランクケース12内へ漏出してくるブローバイガスを排出するためのブローバイガス排出口15が設けられている。また、エンジン10は、このブローバイガス排出口15と、エンジン10の吸気通路16とを連通して接続するブローバイガス還流通路17を備えており、排出したブローバイガスを還流させて、再度エンジン10へ送り込むことができるようになっている。
【0016】
ターボチャージャ11は、排気タービン(ターボ部)21と、排気タービン21に直結されて連動するコンプレッサホイール(コンプレッサ部)22と、排気タービン21とコンプレッサホイール22とを連結固定するとともに、軸受部としてのセンターハウジング23に回転可能に支持されたタービンシャフト24を備える。さらに、排気タービン21は、エンジン10の排気通路25の上流側に介装され、エンジン10から排出される排気ガスのエネルギーを利用してタービンシャフト24を回転させるようになっている。一方、コンプレッサホイール22は吸気通路16に介装されて、排気タービン21に連動して回転しエンジン10への吸気の過給を行うようになっている。
【0017】
また、センターハウジング23には潤滑油供給口26及び潤滑油排出口27が形成されている。潤滑油供給口26には、潤滑油供給通路35の一端が接続されるとともに、潤滑油供給通路35の他端には、オイルパン13内のオイルポンプ30が接続されている。また、潤滑油排出口27には潤滑油排出通路36の一端が接続されるとともに、潤滑油排出通路36の他端はクランクケース12に接続されている。
【0018】
そして、オイルパン13に貯留された潤滑油が、圧油としてオイルポンプ30によって潤滑油供給通路35及び潤滑油供給口26を介してターボチャージャ11へ供給されてターボチャージャ11(タービンシャフト24及びセンターハウジング23内の軸受部等)を潤滑するようになっている。ターボチャージャ11を潤滑した潤滑油は、潤滑油排出口27及び潤滑油排出通路36を重力に従いクランクケース12内へ戻され、クランク室20を通過してオイルパン13へ戻されるようになっている。すなわち、潤滑油は、潤滑油供給通路35及び潤滑油排出通路36を介してオイルパン13とターボチャージャ11との間を循環するようになっており、オイルポンプ30、潤滑油供給通路35、及び潤滑油排出通路36によって油循環機構が構成されている。なお、前述したブローバイガス還流通路17により、クランクケース12内には、吸気通路16の負圧が作用している。よって、通常の運転状態では、クランクケース12内の圧力が潤滑油の戻りに対し障害となることは無い。
【0019】
油循環機構における潤滑油の循環方向(矢印Yに示す)において、ターボチャージャ11より下流側となる位置たる潤滑油排出通路36上には、この潤滑油排出通路36における潤滑油(圧油)の圧力を検出する油圧センサ40が設けられている。そして、油圧センサ40によりターボチャージャ11のセンターハウジング23からクランクケース12に戻る潤滑油の圧力を検出することにより、後述するコントロールユニット41によってターボチャージャ11における軸受部を構成するセンターハウジング23の内圧が推定されるようになっている。また、潤滑油排出通路36において、潤滑油の循環方向における油圧センサ40より下流側には、油圧ポンプ/モータPMが設けられている。また、油圧ポンプ/モータPMには、動力伝達軸Lを介してモータ/発電機MGが接続されている。モータ/発電機MGは、動力伝達軸Lに接続された回転軸(図示せず)が一方に回転すると電動モータとして機能し、回転軸が他方に回転させられると発電機として機能するものである。よって、油圧ポンプ/モータPMは、モータ/発電機MGを電動モータとして機能させることで油圧ポンプとして機能し、モータ/発電機MGは、油圧ポンプ/モータPMを油圧モータとして機能させることで発電機として機能するようになっている。
【0020】
ターボチャージャ付内燃機関Eは、モータ/発電機MGの駆動制御を行うことで油圧ポンプ/モータPMの駆動制御を行う制御手段としてのコントロールユニット41を備えている。コントロールユニット41は、CPU(中央処理制御装置)42、各種プログラムや各種情報等を予め記憶したメモリ43、入力インターフェース(図示せず)、出力インターフェース(図示せず)等を備えた電子制御ユニットである。油圧センサ40は、コントロールユニット41の入力側(入力インタフェイス)に電気的に接続されている。そして、コントロールユニット41のCPU42は、油圧センサ40から出力される検出信号に基づいて、軸受部内圧としてのセンターハウジング23の内圧を推定し、その推定されたセンターハウジング23の内圧に基づいてモータ/発電機MGの駆動制御を行う。
【0021】
メモリ43には、油圧センサ40からの検出信号とセンターハウジング23の内圧とを関連付けたマップが記憶されている。そして、このマップに基づいてCPU42はセンターハウジング23の内圧を推定する。また、メモリ43には、推定されたセンターハウジング23の内圧と比較される内圧の閾値Paが、情報として記憶されている。この閾値Paは、センターハウジング23から吸気通路16又は排気通路25へ潤滑油の噴出の虞があるときのセンターハウジング23の内圧の上限値より若干低い値に設定されている。
【0022】
モータ/発電機MGには、インバータ44を介してパッテリ45が接続されている。コントロールユニット41は、インバータ44を監視し、モータ/発電機MGに発生した交流電圧をインバータ44で直流電圧に変換させる。そして、モータ/発電機MGで発生した電気エネルギーはインバータ44を介してパッテリ45に回収されるようになっている。
【0023】
図2は、コントロールユニット41によって遂行されるターボチャージャ付内燃機関Eの駆動制御プログラムを表すフローチャートである。
さて、ターボチャージャ付内燃機関Eの稼働中において、コントロールユニット41は油圧センサ40からの検出信号に基づいて推定されるセンターハウジング23の内圧Pと、メモリ43に予め記憶された閾値Paとを比較し、センターハウジング23の内圧Pが閾値Paを超えたか否かを判定する(ステップS1)。この判定結果が肯定判定である場合、コントロールユニット41はモータ/発電機MGの回転軸を一方に回転させる制御を行い、モータ/発電機MGを電動モータとして機能させて油圧ポンプ/モータPMを油圧ポンプとして駆動させる(ステップS2)。
【0024】
すなわち、センターハウジング23の内圧Pが閾値Paを超えた場合は、センターハウジング23の内圧Pが高圧になり、センターハウジング23から吸気通路16又は排気通路25へ潤滑油が噴出する虞がある場合である。そして、このような場合に、油圧ポンプ/モータPMが油圧ポンプとして駆動することにより、潤滑油排出通路36を介してセンターハウジング23内の潤滑油がクランクケース12内へ強制的に排出される。
【0025】
一方、ステップS1の判定結果が否定判定である場合、コントロールユニット41はモータ/発電機MGの回転軸を回転させない制御を行い、油圧ポンプ/モータPMを油圧モータとして駆動させるとともにモータ/発電機MGの回転軸を他方に回転させることでモータ/発電機MGを発電機として機能させる(ステップS3)。すると、モータ/発電機MGで発電されるとともに、発生した電気エネルギーがインバータ44を介してパッテリ45に回収される。
【0026】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)潤滑油の循環方向におけるターボチャージャ11の下流側に油圧ポンプ/モータPMを設けるとともに、油圧ポンプ/モータPMに接続されたモータ/発電機MGを設けた。そして、コントロールユニット41により、センターハウジング23から吸気通路16又は排気通路25へ潤滑油の噴出の虞があると判定された場合には、モータ/発電機MGにより油圧ポンプ/モータPMを油圧ポンプとして駆動させるようにした。このため、油圧ポンプ/モータPMによりセンターハウジング23内の潤滑油がクランクケース12内へ強制的に排出されることとなり、センターハウジング23の内圧が低下し、センターハウジング23から潤滑油が噴出することが防止され、その結果として、潤滑油の無駄な浪費を無くすことができる。
【0027】
一方、コントロールユニット41により、センターハウジング23からの潤滑油の噴出の虞がないと判定された場合には、油圧ポンプ/モータPMを油圧モータとして駆動させ、モータ/発電機MGを発電機として機能させるようにした。そして、ターボチャージャ11からクランクケース12に戻る潤滑油を利用して電気エネルギーを回収することができる。すなわち、エンジン10の運転状態に関わらず、センターハウジング23内を潤滑するためにオイルポンプ30によってセンターハウジング23に必ず供給される潤滑油を活用して電気エネルギーを回収しており、潤滑油の余剰の有無に関係なく電気エネルギーを回収することができる。そして、回収された電気エネルギーを利用して電子部品に電力を供給することにより、オルタネータの発電負荷を低減させることができる。その結果として、オルタネータによる発電量が減少するため、エンジン10の仕事量が減少して、燃費及びエミッションが改善される。また、モータ/発電機MGによって発電を補助できるため、オルタネータによる発電量を減らすことができ、オルタネータを小型化及び軽量化することができる。
【0028】
(2)潤滑油の循環方向におけるターボチャージャ11の下流側に油圧ポンプ/モータPMを設けた。このため、この油圧ポンプ/モータPMの存在により、センターハウジング23の内圧が上昇しやすい状態になるが、油圧ポンプ/モータPMを油圧ポンプとして機能させる制御を行うことにより、油圧ポンプ/モータPMを設けてもセンターハウジング23から吸気通路16又は排気通路25への潤滑油の噴出を防止することができる。
【0029】
(3)センターハウジング23の内圧を、潤滑油排出通路36に設けた油圧センサ40で検出し、油圧センサ40からの検出信号に基づいてコントロールユニット41は油圧ポンプ/モータPMの制御を行う。このため、コントロールユニット41によりセンターハウジング23の内圧をより正確に推定することができ、センターハウジング23の内圧が高いときは、確実にセンターハウジング23内の潤滑油をクランクケース12内へ強制的に排出させることができる。
【0030】
(4)エンジン10においては、排出したブローバイガスを還流させて、再度エンジン10へ送り込むことができるとともに、クランクケース12内に吸気通路16の負圧が作用するようになっている。そして、ターボチャージャ11の下流に接続された潤滑油排出通路36はクランクケース12に接続されている。したがって、クランクケース12内の圧力とセンターハウジング23の内圧との圧力差を利用して、センターハウジング23に供給された潤滑油をクランクケース12内へ戻すことができ、その圧流を用いてモータ/発電機MGにより発電させることができる。
【0031】
(5)オイルポンプ30は、エンジン10のクランクシャフトの回転によって駆動される機械式の固定容量ポンプである。そして、オイルポンプ30は、クランクシャフトが回転しているときはターボチャージャ11のセンターハウジング23に潤滑油が供給され続け、センターハウジング23の内圧は変動しやすくなる。しかし、本実施形態のようにセンターハウジング23の内圧に応じて油圧ポンプ/モータPM及びモータ/発電機MGの駆動を制御するようにしたため、オイルポンプ30が機械式の固定容量ポンプであっても、センターハウジング23の内圧の上昇を抑えて潤滑油の噴出を防止することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図3及び図4にしたがって説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態では、既に説明した第1の実施形態と同一構成については、同一符号を付すなどして、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0033】
第2の実施形態において、図3に示すように、ターボチャージャ付内燃機関Eのコントロールユニット41には、ターボチャージャ付内燃機関Eの制御を行うECU46が電気的に接続されている。コントロールユニット41にはECU46から、ターボチャージャ付内燃機関Eの回転数及び燃料噴射量に係る情報が送られるようになっている。コントロールユニット41のメモリ43には、ECU46からの情報とクランクケース12内の圧力とを関連付けたマップが記憶されている。そして、このマップに基づいてCPU42は、クランクケース12内の圧力(負圧)を推定する。また、メモリ43には、クランクケース12内の圧力と、センターハウジング23の内圧の閾値Paとを関連付けたマップが記憶されている。そして、このマップに基づいてCPU42は、センターハウジング23の内圧の閾値Paを決定する。すなわち、CPU42は、クランクケース12内の圧力の変動に合わせて、選択される閾値Paを変動させるようになっている。
【0034】
図4は、コントロールユニット41によって遂行されるターボチャージャ付内燃機関Eの駆動制御プログラムを表すフローチャートである。
さて、ターボチャージャ付内燃機関Eの稼働中において、コントロールユニット41は、ECU46から送られるターボチャージャ付内燃機関Eの回転数及び燃料噴射量に係る情報に基づいてクランクケース12内の圧力を推定するとともに、推定された圧力に合わせて閾値Paを算出する(ステップS11)。
【0035】
次に、コントロールユニット41は、油圧センサ40から得られる検出信号と、メモリ43に予め記憶された閾値Paとを比較し、センターハウジング23の内圧Pが閾値Paを超えたか否かを判定する(ステップS12)。この判定結果が肯定判定である場合、コントロールユニット41はモータ/発電機MGの回転軸を一方に回転させる制御を行い、モータ/発電機MGを電動モータとして機能させて油圧ポンプ/モータPMを油圧ポンプとして駆動させる(ステップS13)。
【0036】
すなわち、センターハウジング23の内圧Pが閾値Paを超えた場合は、センターハウジング23の内圧Pが高圧になり、センターハウジング23から吸気通路16又は排気通路25へ潤滑油が噴出する虞がある場合である。そして、このような場合に、油圧ポンプ/モータPMの油圧ポンプとしての機能により、潤滑油排出通路36を介してセンターハウジング23内の潤滑油がクランクケース12内へ強制的に戻される。
【0037】
一方、ステップS12の判定結果が否定判定である場合、コントロールユニット41はモータ/発電機MGの回転軸を回転させない制御を行い、油圧ポンプ/モータPMを油圧モータとして駆動させるとともにモータ/発電機MGの回転軸を他方に回転させることでモータ/発電機MGを発電機として機能させる(ステップS14)。すると、モータ/発電機MGで発電されるとともに、発生した電気エネルギーがインバータ44を介してパッテリ45に回収される。
【0038】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(6)クランクケース12内の圧力は、クランクシャフトの回転状況等によって変動する。そして、コントロールユニット41は、ECU46から送られる回転数及び燃料噴射量に基づいてクランクケース12内の圧力を推定し、その圧力に応じてセンターハウジング23の内圧の閾値Paを変更させる。よって、クランクケース12内の圧力が上昇し、センターハウジング23から吸気通路16又は排気通路25へ潤滑油の噴出の虞がより高まる場合であっても、確実に油圧ポンプ/モータPMを油圧ポンプとして機能させ、センターハウジング23からの潤滑油の噴出を防止することができる。
【0039】
(7)コントロールユニット41は、ターボチャージャ付内燃機関Eを制御するECU46からエンジン回転数及び燃料噴射量の情報を得る。このため、クランクケース12内の圧力を推定するために、新たに別のセンサを設ける必要がなくセンターハウジング23からの潤滑油の噴出を確実に防止することができる。
【0040】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第2の実施形態において、クランクケース12内の圧力は、エンジン10における吸気負圧から推定してもよい。
【0041】
○ 自動車以外に、産業車両(例えば、フォークリフト)や農機に搭載されるターボチャージャ付内燃機関に本発明を採用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0042】
(1)前記オイルポンプは、前記内燃機関の駆動軸によって駆動する機械式のオイルポンプである請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のターボチャージャ付内燃機関。
【0043】
(2)前記内燃機関の回転数及び燃料噴射量に関する情報は、内燃機関のECUから得る請求項3に記載のターボチャージャ付内燃機関。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態のターボチャージャ付内燃機関を示す模式図。
【図2】第1の実施形態におけるターボチャージャ付内燃機関の駆動制御プログラムを表すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態のターボチャージャ付内燃機関を示す模式図。
【図4】第2の実施形態におけるターボチャージャ付内燃機関の駆動制御プログラムを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
E…ターボチャージャ付内燃機関、MG…モータ/発電機、PM…油圧ポンプ/モータ、10…内燃機関としてのエンジン、11…ターボチャージャ、12…クランクケース、23…軸受部を構成するセンターハウジング、30…油循環機構を構成するオイルポンプ、35…油循環機構を構成する潤滑油供給通路、36…油循環機構を構成する潤滑油排出通路、40…油圧センサ、41…制御手段としてのコントロールユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスのエネルギーを利用し、吸気の過給を行うターボチャージャを備え、
さらに、オイルポンプによって潤滑油を前記ターボチャージャの軸受部に供給して該軸受部を潤滑し、かつ軸受部潤滑後の前記潤滑油をクランクケース内に戻すように作動する油循環機構を備えたターボチャージャ付内燃機関において、
前記油循環機構での潤滑油の循環方向における前記ターボチャージャの下流側に、油圧ポンプ/モータを設けるとともに該油圧ポンプ/モータに接続されたモータ/発電機を設け、
さらに、前記ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定し、判定結果が肯定判定の場合に前記油圧ポンプ/モータを油圧ポンプとして機能させるように前記モータ/発電機を駆動させる制御を行う一方で、判定結果が否定判定の場合に前記油圧ポンプ/モータを油圧モータとして機能させて前記モータ/発電機に発電させる制御を行う制御手段を設けたことを特徴とするターボチャージャ付内燃機関。
【請求項2】
前記潤滑油の循環方向における前記油圧ポンプ/モータより上流側には、前記ターボチャージャの軸受部から排出された潤滑油の圧力を検出する油圧センサが設けられ、前記制御手段は前記油圧センサからの検出信号に基づき前記ターボチャージャの軸受部内圧を推定するとともに、推定された軸受部内圧と予め設定された閾値を比較して前記ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定する請求項1に記載のターボチャージャ付内燃機関。
【請求項3】
前記潤滑油の循環方向における前記油圧ポンプ/モータより上流側には、前記ターボチャージャの軸受部から排出された潤滑油の圧力を検出する油圧センサが設けられ、前記制御手段は、前記内燃機関の回転数及び燃料噴射量の情報を基に前記クランクケース内の圧力を推定するとともに、推定された圧力に基づいて閾値を決定し、前記油圧センサからの検出信号に基づき推定されるターボチャージャの軸受部内圧と前記閾値を比較して前記ターボチャージャの軸受部から潤滑油の噴出の虞があるか否かを判定する請求項2に記載のターボチャージャ付内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281194(P2009−281194A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132263(P2008−132263)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】