説明

ダイシング・ダイボンドフィルム

【課題】半導体ウェハが薄型の場合にもこれをダイシングする際の保持力を損なうことなく、ダイシングにより得られる半導体チップをそのダイボンドフィルムと共に剥離する際の剥離性に優れたダイシング・ダイボンドフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のダイシング・ダイボンドフィルムは、支持基材上に少なくとも粘着剤層が設けられたダイシングフィルムと、前記粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、前記粘着剤層の厚みが5〜80μmであり、前記ダイボンドフィルム側から少なくとも前記粘着剤層の一部までダイシングした後に、前記ダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの切断面近傍における剥離力の最大値が、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度10mm/minの条件下で0.7N/10mm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置の製造等に使用するダイシング・ダイボンドフィルム関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置の製造に於いて、リードフレームや電極部材への半導体チップの固着には、銀ペーストが用いられていた。かかる固着処理は、リードフレームのダイパッド等の上にペースト塗工した後、これに半導体チップを搭載してペースト層を硬化させて行っていた。
【0003】
回路パターン形成の半導体ウェハは、必要に応じて裏面研磨による厚さ調整後(バックグラインドエ程)、半導体チップにダイシングされ(ダイシングエ程)、この半導体チップを接着剤にてリードフレーム等の被着体に固着し(ダイアタッチ工程)、更にワイヤーボンディング工程が行われていた。ダイシング工程では、切断屑の除去のため、半導体ウェハを適度な液圧で洗浄するのが通常である。
【0004】
この処理工程に於いて、接着剤をリードフレームや形成チップに別途塗布する方法では、接着剤層の均一化が困難であり、また接着剤の塗布には特殊な装置や長い時間が必要となる。このため、下記特許文献1では、ダイシングエ程で半導体ウェハを接着保持するとともに、ダイアタッチ工程に必要なチップ固着用の接着剤層をも付与するダイシング・ダイボンドフィルムを提案している。
【0005】
このダイシング・ダイボンドフィルムは、支持基材上に接着剤層を剥離可能に設けてなるものであり、その接着剤層による保持下に半導体ウェハをダイシングしたのち、支持基材を延伸して形成チップを接着剤層とともに剥離し、これを個々に回収してその接着剤層を介してリードフレーム等の被着体に固着させるようにしたものである。
【0006】
ここで、ダイシング・ダイボンドフィルムは、半導体ウェハのダイシング時には、支持基材と接着剤層とが剥離しない様な強い粘着力を要求されるのに対し、ダイシング後には半導体チップが接着剤層と共に支持基材から容易に剥離できることが求められている。しかし、前記構成のダイシング・ダイボンドフィルムであると、接着剤層の粘着力を調整することが困難である。このため、支持基材と接着剤層との間に粘着剤層を設けることにより、粘着性と剥離性とのバランスが良好になる様に構成されたダイシング・ダイボンドフィルムが開示されている(下記特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、半導体ウェハの大型化(10mm×10mm角以上)や薄型化(厚さ15〜100μm程度)に伴い、従来のダイシング・ダイボンドフィルムでは、ダイシングの際に必要な高い接着性と、ピックアップの際に必要な剥離性を同時に満たすことが難しく、ダイシングテープからダイボンドフィルム付きの半導体チップを剥離することが困難になっている。その結果、ピックアップ不良やチップの変形による破損の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−57642号公報
【特許文献2】特開平2−248064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、半導体ウェハが薄型の場合にもこれをダイシングする際の保持力を損なうことなく、ダイシングにより得られる半導体チップをそのダイボンドフィルムと共に剥離する際の剥離性に優れたダイシング・ダイボンドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記の目的を達成する為に検討した結果、半導体ウェハのダイシングが粘着剤層の一部まで行われると、切断面において粘着剤層の一部がバリとなって粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着し、当該付着した粘着剤がダイボンドフィルム付きの半導体チップを粘着剤層から剥離する際に、これを阻害し、ピックアップを困難にすることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明に係るダイシング・ダイボンドフィルムは、支持基材上に少なくとも粘着剤層が設けられたダイシングフィルムと、前記粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、前記粘着剤層の厚みが5〜80μmであり、前記ダイボンドフィルム側から少なくとも前記粘着剤層の一部までダイシングした後に、前記ダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの切断面近傍における剥離力の最大値が、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度10mm/minの条件下で0.7N/10mm以下であることを特徴とする。
【0012】
前記構成のダイシング・ダイボンドフィルムは、例えば、半導体チップを基板等の被着体上固着するためのダイボンドフィルムを、ダイシング前に半導体ウェハに付設した状態で、半導体ウェハをダイシングに供するために用いられる。従来のダイシング・ダイボンドフィルムに於いては、ダイシングが粘着剤層の一部まで行われると、切断面において粘着剤層の一部がバリとなって粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着する場合があった。しかし、本発明に於いては、粘着剤層とダイボンドフィルムの間の接着性に関し、ダイシングフィルムをダイボンドフィルムから引き剥がしたときの、切断面の近傍における剥離力の最大値が、前記条件下で0.7N/10mm以下であるので、切断面において粘着剤層のバリが発生し、粘着剤が粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着するのを防止することができる。その結果、ピックアップ性の向上が可能になる。
【0013】
前記構成に於いては、前記粘着剤層の23℃に於ける貯蔵弾性率が1×10Pa〜5×10Paであることが好ましい。前記貯蔵弾性率が1×10Pa以上であると、ダイシングの際のチップ飛びの発生を防止すると共に、半導体チップのピックアップの際にもチップ飛び、及びずれの発生を低減することができる。更に、ダイシングブレードの磨耗量の増加を抑制し、チッピング発生率も低減させることができる。その一方、前記貯蔵弾性率が5×10Pa以下であると、ダイシングの際に粘着剤層の一部がバリとなって切断面における粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着しても、バリがダイシングラインから剥がれやすく、ピックアップ性の向上が図れる。
【0014】
また、前記構成に於いて、前記ダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの剥離力は、前記ダイシング前において、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度300mm/minの条件下で0.01N/20mm〜0.15N/20mmの範囲内であることが好ましい。ダイシング前のダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの剥離力を前記範囲内にすることで、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間の接着性が大きくなり過ぎるのを防止し、良好なピックアップ性の維持を可能にする。
【0015】
前記構成に於いて、前記粘着剤層は放射線硬化型粘着剤により形成されており、前記放射線硬化型粘着剤には、ベースポリマー100重量部に対し0重量部を超えて、50重量部以下の範囲内の光重合性化合物が添加されていることが好ましい。
【0016】
前記構成に於いて、前記粘着剤層は放射線硬化型粘着剤により形成されており、前記放射線硬化型粘着剤には、ベースポリマー100重量部に対し1重量部以上8重量部以下の範囲内の光重合開始剤が添加されていることが好ましい。
【0017】
前記構成に於いて、前記ダイボンドフィルムは、少なくともエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル共重合体及びフィラーにより形成されており、前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル共重合体の合計重量をA重量部とし、フィラーの重量をB重量部としたときのB/(A+B)が、0.1以上であり、かつ、前記ダイボンドフィルムの熱硬化前の23℃に於ける貯蔵弾性率が5MPa以上であることが好ましい。従来のダイシング・ダイボンドフィルムを用いたダイシングにおいては、ダイシングブレードが切断時の摩擦で熱せられ、それがダイボンドフィルムに切り込むこと、切断面においてダイボンドフィルムの一部がバリとなって粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着する場合がある。しかし、前記構成であると、ダイボンドフィルムの一部がバリとなって付着するのを低減するので、ダイボンドフィルムのバリの発生に起因したピックアップ性の低下も防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダイボンドフィルム側から少なくとも前記粘着剤層の一部までダイシングした後に、前記ダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの切断面近傍における剥離力の最大値を、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度10mm/minの条件下で0.7N/10mm以下にするので、切断面において粘着剤層の一部がバリとなり粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着した場合にも、前記粘着剤層のバリに起因したピックアップ不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の一形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る他のダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。
【図3】前記ダイシング・ダイボンドフィルムにおいて、ダイボンドフィルムからダイシングフィルムを剥離したときの剥離距離と剥離力との関係を表すグラフである。
【図4】半導体ウェハをダイシングする際の様子を表す平面図である。
【図5】半導体ウェハをチップ状にダイシングする際の様子を示す断面模式図である。
【図6】前記ダイシング・ダイボンドフィルムに於けるダイボンドフィルムを介して半導体チップを実装した例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムの一例を示す断面模式図である。同図に示すように、ダイシング・ダイボンドフィルム10は、支持基材1上に粘着剤層2が設けられたダイシングフィルムと、前記粘着剤層2上に設けられたダイボンドフィルム3とを少なくとも備えた構成である。但し、本発明は、図2に示すように、半導体ウェハ貼り付け部分2aにのみダイボンドフィルム3’を形成した構成であってもよい。
【0021】
また本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム10に於いては、ダイボンドフィルム3側から少なくとも前記粘着剤層2の一部までダイシングした後に、ダイシングフィルムをダイボンドフィルム3から引き剥がしたときの切断面の近傍における剥離力の最大値が、0.7N/10mm以下であり、好ましくは0.5〜0.01N/10mm、より好ましくは0.2〜0.01N/10mmである。切断面における近傍とは、切断面から半導体チップの内側に向かってd(mm)の領域を意味する。また、切断面の近傍における剥離力の最大値は、例えば図3(a)及び図3(b)に示す様に、ダイシングフィルムをダイボンドフィルム3から引き剥がしたときのピーク値である。但し、切断面から半導体チップ5の内側に向かってd(mm)の領域内で複数のピーク値が現れる場合はその最大値を意味する。前記剥離力の最大値を0.7N/10mm以下にする具体的手段としては、例えば、粘着剤層2の23℃に於ける貯蔵弾性率を1×10Pa〜5×10Paの範囲内にすることで切断面での粘着剤層2とダイボンドフィルム3との剥離を容易にする方法が挙げられる(粘着剤層2の貯蔵弾性率の詳細については、後述する)。また、ダイボンドフィルム3中にフィラーを添加し、その添加量を適宜設定することでダイシングの際にダイボンドフィルム3からダイシング屑が発生するのを抑制する方法が挙げられる(フィラーの詳細については、後述する)。尚、前記d(mm)は、半導体チップ5のサイズにもよるが、例えば1mmに設定することができる。また、前記剥離力は、剥離角度180°、剥離点移動速度10mm/minの条件下での測定値である。更に、前記剥離力の範囲は、少なくとも半導体ウェハの貼り合わせ領域に対応する部分で満たしていればよい。
【0022】
また、前記切断面の近傍以外においては、ダイシングフィルムをダイボンドフィルム3から引き剥がしたときの剥離力が、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度300mm/minの条件下で0.01〜0.15N/20mmであることが好ましく、0.02〜0.1N/20mmであることがより好ましい。ダイシングフィルムをダイボンドフィルム3から引き剥がしたときの剥離力を前記範囲内にすることで、両者の間の接着性が大きくなり過ぎるのを防止し、ピックアップ性を一層向上させることができる。前記剥離力を0.01〜0.15N/20mmにする具体的手段としては、例えば、ダイボンドフィルム3の熱硬化前のガラス転移温度を0〜60℃の範囲内にする方法が挙げられる。尚、ダイボンドフィルム3のガラス転移温度は、ダイボンドフィルム3を厚さ200μm、幅10mm、長さ40mmの短冊状にカッターナイフで切り出し、粘弾性測定装置(Rheometic Scientific社製、形式:RSA−III)を用いて、−50℃〜300℃の温度域で周波数1.0Hz、歪み0.1%、昇温速度10℃/分の条件下で測定したときのTanδ(E”(損失弾性率)/E’(貯蔵弾性率))が極大値を示す温度である。
【0023】
前記支持基材1は、ダイシング・ダイボンドフィルム10の強度母体となるものである。支持基材1としては、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、これらの混合物等からなるプラスチックフィルムが挙げられる。
【0024】
また支持基材1の材料としては、前記樹脂の架橋体等のポリマーが挙げられる。前記プラスチックフィルムは、無延伸で用いてもよく、必要に応じて一軸又は二軸の延伸処理を施したものを用いてもよい。延伸処理等により熱収縮性を付与した樹脂シートによれば、ダイシング後にその支持基材1を熱収縮させることにより粘着剤層2とダイボンドフィルム3、3’との接着面積を低下させて、半導体チップの回収の容易化を図ることができる。
【0025】
支持基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性等を高めるため、慣用の表面処理を行ってもよい。その方法としては、例えばクロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理等が挙げられる。
【0026】
前記支持基材1は、同種又は異種のものを適宜に選択して使用することができる。また、必要に応じて数種をブレンドしたものを用いることができる。更に、支持基材1としては、帯電防止能を付与するため、前記のプラスチックフィルム上に金属、合金又はこれらの酸化物等からなる、厚さが30〜500Å程度の導電性物質の蒸着層を設けたフィルムを用いることもできる。更に、前記フィルム同士、又は他のフィルムとを貼り合わせたラミネート体等を用いることもできる。また、支持基材1は、単層又は前記材料を用いたフィルム等を2層以上に複層化した積層フィルムであってもよい。尚、粘着剤層2が放射線硬化型の場合にはX線、紫外線、電子線等の放射線を少なくとも一部透過するものを用いることが好ましい。
【0027】
支持基材1の厚さは、特に制限されず適宜に決定できるが、一般的には5〜200μm程度である。
【0028】
前記粘着剤層2は放射線硬化型粘着剤により形成されていてもよい。この場合、粘着剤層2はダイボンドフィルム3、3’が貼り合わされる前に硬化されていなくてもよいが、予め放射線照射により硬化されたものであることが好ましい。硬化されている部分は粘着剤層2の全領域である必要はなく、粘着剤層2のウェハ貼り付け部分3aに対応する部分2aが少なくとも硬化されていればよい(図1参照)。粘着剤層2がダイボンドフィルム3との貼り合わせ前に放射線照射により硬化されたものであると、固い状態でダイボンドフィルム3と貼り合わせるので、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との界面で過度に密着性が大きくなるのを抑制することができる。これにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との間の投錨効果を減少させ、剥離性の向上が図れる。
【0029】
また、図2に示すダイボンドフィルム3’の形状に合わせて放射線硬化型の粘着剤層2を予め硬化させてもよい。これにより、粘着剤層2とダイボンドフィルム3との界面で過度に密着性が大きくなるのを抑制することができる。その結果、ピックアップの際には粘着剤層2からダイボンドフィルム3’が容易に剥離する性質を備える。その一方、粘着剤層2の他の部分2bは放射線が照射されていないため未硬化であり、前記部分2aよりも粘着力が大きい。これにより、他の部分2bにダイシングリングを貼り付けた場合には、ダイシングリングを確実に接着固定することができる。
【0030】
前述の通り、図1に示すダイシング・ダイボンドフィルム10の粘着剤層2に於いて、未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されている前記部分2bはダイボンドフィルム3と粘着し、ダイシングする際の保持力を確保できる。この様に放射線硬化型粘着剤は、半導体チップを基板等の被着体に固着する為のダイボンドフィルム3を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。図2に示すダイシング・ダイボンドフィルム11の粘着剤層2に於いては、前記部分2bがダイシングリングを固定できる。ダイシングリングは、例えばステンレス製などの金属からなるものや樹脂製のものを使用できる。
【0031】
前記粘着剤層2は、その23℃に於ける貯蔵弾性率が1×10〜5×10Paであり、好ましくは1×10〜1×10Paであり、より好ましくは1×10〜5×10Paである。前記貯蔵弾性率が1×10Pa以上であると、ダイシングの際のチップ飛びの発生を防止すると共に、半導体チップのピックアップの際にもチップ飛び、及びずれの発生を低減することができる。更に、ダイシングブレード13の磨耗量の増加を抑制し、チッピング発生率も低減させることができる。その一方、前記貯蔵弾性率が5×10Pa以下であると、ダイシングの際に粘着剤層2の一部がバリとなって切断面における粘着剤層2とダイボンドフィルム3の境界に付着しても、バリがダイシングラインから剥がれやすく、ピックアップ性の向上が図れる。尚、粘着剤層2の貯蔵弾性率の数値範囲が本発明の作用・効果を十分に奏するためのダイシング条件としては、例えばダイシング速度が5〜150mm/秒の範囲であり、かつダイシングブレード13の回転数が25000〜50000rpmの範囲内であることが好ましい。更に、粘着剤層2が後述の放射線硬化型粘着剤層であり、予め放射線の照射により完全硬化されている場合でも、前記貯蔵弾性率は1×10〜5×10Paを満たしていることが好ましい。尚、完全硬化とは、例えば、紫外線を積算光量100〜700mJ/cmで照射して硬化させた場合を意味する。
【0032】
前記粘着剤層2の厚さは5〜80μmであり、好ましくは5〜50μm、より好ましくは5〜30μmである。粘着剤層2の厚さを前記範囲内にすることにより、チップ切断面の欠け防止やダイボンドフィルム3の固定保持の両立性等を図ることができる。また、粘着剤層2の厚さを前記範囲内にし、かつ、粘着剤層2の23℃における貯蔵弾性率を1×10〜5×10Paにすることで、ダイシングの際の切り込み深さを粘着剤層2の範囲にとどめて、支持基材1にまで及ぶのを防止することができる。
【0033】
粘着剤層2を構成する粘着剤としては特に制限されないが、本発明に於いては放射線硬化型粘着剤が好適である。放射線硬化型粘着剤としては、炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを特に制限なく使用できる。
【0034】
放射線硬化型粘着剤としては、例えば、前記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等の一般的な感圧性接着剤に、放射線硬化性のモノマー成分や放射線硬化性のオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤を例示できる。前記感圧性接着剤としては、半導体ウェハ又はガラス等の汚染をきらう電子部品の超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0035】
前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー等が挙げられる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルをいい、本発明の(メタ)とは全て同様の意味である。
【0036】
前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。この様なモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下が好ましい。
【0037】
更に、前記アクリル系ポリマーは、架橋されるため、多官能性モノマー等も必要に応じて共重合用モノマー成分として含むことができる。この様な多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下が好ましい。
【0038】
前記アクリル系ポリマーの調製は、例えば1種又は2種以上の成分モノマーの混合物に溶液重合方式や乳化重合方式、塊状重合方式や懸濁重合方式等の適宜な方式を適用して行うことができる。粘着剤層は、ウェハの汚染防止等の点より低分子量物質の含有を抑制した組成が好ましく、かかる点より重量平均分子量が30万以上、特に40万〜300万のアクリル系ポリマーを主成分とするものが好ましいことから粘着剤は、内部架橋方式や外部架橋方式等による適宜な架橋タイプとすることもできる。
【0039】
また、粘着剤層2の架橋密度の制御のため、例えば多官能イソシアネート系化合物、多官能エポキシ系化合物、メラミン系化合物、金属塩系化合物、金属キレート系化合物、アミノ樹脂系化合物、又は過酸化物等の適宜な外部架橋剤を用いて架橋処理する方式や、炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子化合物を混合してエネルギー線の照射等により架橋処理する方式等の適亘な方式を採用することができる。外部架橋剤を使用する場合、その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、更には、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、前記ベースポリマー100重量部に対して、5重量部程度以下、更には0.1〜5重量部配合するのが好ましい。尚、粘着剤には、必要により、前記成分のほかに、各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0040】
配合する放射線硬化性のモノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマー成分は、1種又は2種以上併用できる。
【0041】
また、放射線硬化性のオリゴマー成分はウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等種々のオリゴマーがあげられ、その分子量が100〜30000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、前記粘着剤層の種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができる。一般的には、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば5〜500重量部、好ましくは70〜150重量部程度である。
【0042】
また、放射線硬化型粘着剤としては、前記添加型の放射線硬化型粘着剤の他に、ベースポリマーとして炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖又は主鎖中もしくは主鎖末端に有するものを用いた内在型の放射線硬化型粘着剤も挙げられる。内在型の放射線硬化型粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、又は多くを含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができるため好ましい。
【0043】
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。この様なベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0044】
前記アクリル系ポリマーへの炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、炭素−炭素二重結合はポリマー側鎖に導入するのが分子設計の上で容易である。例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法が挙げられる。
【0045】
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、前記炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物等を共重合したものが用いられる。
【0046】
前記内在型の放射線硬化型粘着剤は、前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマー(特にアクリル系ポリマー)を単独で使用することができるが、特性を悪化させない程度に前記放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分等の光重合性化合物を配合することもできる。当該光重合性化合物の配合量は、通常ベースポリマー100重量部に対して30重量部以下の範囲内であり、好ましくは0〜10重量部の範囲内である。但し、粘着剤層2の貯蔵弾性率を1×10Pa〜5×10Paの範囲内に調整することを目的とする場合は、ベースポリマー100重量部に対して0重量部を超えて、50重量部以下が好ましく、0重量部を超えて30重量部以下がより好ましい。当該数値範囲内であると、粘着剤層2が予め放射線照射により完全に硬化された状態であっても、貯蔵弾性率を前記範囲内に調整することができる。
【0047】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−メチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等のα−ケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば0.05〜20重量部程度である。但し、粘着剤層2の貯蔵弾性率を1×10Pa〜5×10Paの範囲内に調整することを目的とする場合は、ベースポリマー100重量部に対して1重量部以上8重量部以下が好ましく、1重量部以上5重量部以下がより好ましい。
【0048】
また、粘着剤層2の形成に用いる放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特開昭60−196956号公報に開示されている、不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物、エポキシ基を有するアルコキシシラン等の光重合性化合物と、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過酸化物、アミン、オニウム塩系化合物等の光重合開始剤とを含有するゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤等が挙げられる。前記の不飽和結合を2個以上有する付加重合性化合物としては、例えば、アクリル酸若しくはメタクリル酸の多価アルコール系エステル又はオリゴエステル、エポキシ系若しくはウレタン系化合物等が挙げられる。
【0049】
前記光重合性化合物、又は光重合開始剤の配合量は、それぞれベースポリマー100重量部あたり10〜500重量部、0.05〜20重量部が一般的である。尚、これらの配合成分のほかに、必要に応じて、エチレングリコールジグリシジルエーテル等の分子中にエポキシ基を1個又は2個以上有するエポキシ基官能性架橋剤を追加配合して、粘着剤の架橋効率を上げるようにしてもよい。
【0050】
前記放射線硬化型粘着剤を使用した粘着剤層2中には、必要に応じて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層2に含ませることによって、放射線照射された部分のみを着色することができる。即ち、ウェハ貼り付け部分3aに対応する粘着剤層2aを着色することができる。これにより、粘着剤層2に放射線が照射されたか否かが目視により直ちに判明することができ、ウェハ貼り付け部分3aを認識し易く、半導体ウェハの貼り合せが容易である。また光センサー等によって半導体素子を検出する際に、その検出精度が高まり、半導体素子のピックアップ時に誤動作が生ずることがない。
【0051】
放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色又は淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物である。かかる化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。具体的には3−[N−(p−トリルアミノ)]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−メチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−[N−(p−トリル)−N−エチルアミノ]−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、クリスタルバイオレットラクトン、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタノール、4,4’,4”−トリスジメチルアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0052】
これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土等の電子受容体があげられ、更に、色調を変化させる場合は種々の発色剤を組合せて用いることもできる。
【0053】
この様な放射線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒等に溶解された後に放射線硬化型粘着剤中に含ませてもよく、また微粉末状にして当該粘着剤層2中に含ませてもよい。この化合物の使用割合は、粘着剤層2中に0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量で用いられることが望ましい。該化合物の割合が10重量%を超えると、粘着剤層2に照射される放射線がこの化合物に吸収されすぎてしまうため、前記粘着剤層2aの硬化が不十分となり、粘着力が十分に低下しないことがある。その一方、化合物の割合が0.01重量%未満の量で用いられると放射線照射時に粘着シートが充分に着色しないことがあり、半導体素子のピックアップ時に誤動作が生じやすくなることがある。
【0054】
粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、支持基材1に放射線硬化型の粘着剤層2を形成した後、ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分に、部分的に放射線を照射し硬化させて、粘着剤層2aを形成する方法が挙げられる。部分的な放射線照射は、ウェハ貼り付け部分3a以外の部分3b等に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に放射線を照射し硬化させる方法等が挙げられる。放射線硬化型の粘着剤層2の形成は、セパレータ上に設けたものを支持基材1上に転写することにより行うことができる。部分的な放射線硬化はセパレータ上に設けた放射線硬化型の粘着剤層2に行うこともできる。
【0055】
また、粘着剤層2を放射線硬化型粘着剤により形成する場合には、支持基材1の少なくとも片面の、ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分以外の部分の全部又は一部が遮光されたものを用い、これに放射線硬化型の粘着剤層2を形成した後に放射線照射して、ウェハ貼り付け部分3aに対応する部分を硬化させ、粘着力を低下させた粘着剤層2aを形成することができる。遮光材料としては、支持フィルム上でフォトマスクになりえるものを印刷や蒸着等で作成することができる。かかる製造方法によれば、効率よく本発明のダイシング・ダイボンドフィルムを製造可能である。
【0056】
尚、放射線照射の際に、酸素による硬化阻害が起こる場合は、放射線硬化型の粘着剤層2の表面に対して酸素(空気)を遮断するのが望ましい。酸素を遮断する方法としては、例えば、前記粘着剤層2の表面をセパレータで被覆する方法や、窒素ガス雰囲気中で紫外線等の放射線の照射を行う方法等が挙げられる。
【0057】
前記粘着剤層2は、ダイボンドフィルム3との剥離性に関して、次の様な関係を有する様に構成されていてもよい。即ち、ダイボンドフィルム3のウェハ貼り付け部分3a(以下、ダイボンドフィルム3aと言うことがある)に対応する界面が、それ以外の部分3b(以下、ダイボンドフィルム3bと言うことがある)に対応する界面よりも、剥離性が大きいという関係がある。この関係を満たすため、粘着剤層2は、例えばウェハ貼り付け部分3a(後述する)に対応する部分2a(以下、粘着剤層2aと言うことがある)の粘着力<それ以外の部分の一部又は全部に対応する部分2b(以下、粘着剤層2bと言うことがある)の粘着力、となるように設計される。
【0058】
粘着剤層2を構成する粘着剤としては特に制限されないが、本実施の形態に於いては前述の放射線硬化型粘着剤が好適である。粘着剤層2aと粘着剤層2bとの粘着力に差異を付与し易いからである。放射線硬化型粘着剤は、紫外線等の放射線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができる。従って、ウェハ貼り付け部分3aに対応する粘着剤層2aを放射線照射し硬化させることにより、粘着力が著しく低下した領域を容易に形成できる。硬化し、粘着力が低下した粘着剤層2aには、ダイボンドフィルム3のウェハ貼り付け部分3aが位置するため、粘着剤層2aとウェハ貼り付け部分3aとの界面は、ピックアップ時に容易に剥離する性質を有する。
【0059】
一方、放射線が照射されない粘着剤層2bは未硬化の放射線硬化型粘着剤により形成されるので、十分な粘着力を有している。このため、粘着剤層2bはダイボンドフィルム3と確実に粘着しており、その結果、粘着剤層2全体としては、ダイシングの際にもダイボンドフィルム3を十分に固着できる保持力を確保できる。この様に放射線硬化型粘着剤により形成される粘着剤層2は、基板又は半導体チップに半導体チップ等を固着するためのダイボンドフィルム3を、接着・剥離のバランスよく支持することができる。
【0060】
尚、図1に示すダイシング・ダイボンドフィルム10に於いては、粘着剤層2bをダイボンドフィルム3から引き剥がしたときの剥離力が、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度300mm/minの条件下で0.02〜0.14N/20mmであることが好ましく、0.04〜0.08N/20mmであることがより好ましい。剥離力を前記範囲にすることで、ダイシングの際のチップ飛び等の発生を抑え、ウェハ加工に充分な保持力を発揮させることができる。
【0061】
前記ダイボンドフィルム3の熱硬化前の貯蔵弾性率(23℃)は5MPa以上であることが好ましく、10〜10000MPaであることがより好ましく、100〜5000MPaであることが特に好ましい。熱硬化前の貯蔵弾性率が5MPa以上であると、ダイシングの際にダイボンドフィルムの一部がバリとなって切断面における粘着剤層とダイボンドフィルムの境界に付着するのを低減し、当該ダイボンドフィルムのバリに起因したピックアップ性の低下を防止することができる。尚、前記貯蔵弾性率を10000MPa以下にすることで、ダイボンドフィルム3上にマウントされる半導体ウェハに対して濡れ性及び接着性を良好にすることができる。ここで、貯蔵弾性率の測定は、例えば、粘弾性スペクトロメータ(レオメトリックサイエンティック(株)製、RSA−II)を用いることにより可能である。即ち、サンプルサイズを長さ30mm(測定長さ)、幅10mm、厚さ0.5mmとし、測定試料をフィルム引っ張り測定用治具にセットし−50〜200℃の温度域での引張貯蔵弾性率及び損失弾性率を、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの測定条件下で測定し、25℃での貯蔵弾性率(E’)を読み取ることにより得られる。
【0062】
前記ダイボンドフィルム3は、例えば、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂により形成されたものが挙げられ、より具体的には、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びアクリル共重合体により形成されるものが挙げられる。
【0063】
前記エポキシ樹脂は、接着剤組成物として一般に用いられるものであれば特に限定はな無く、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオンレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型等の二官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ樹脂、又はヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型若しくはグリシジルアミン型等のエポキシ樹脂が用いられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのエポキシ樹脂のうち本発明においては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環等の芳香族環を有するエポキシ樹脂が特に好ましい。具体的には、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み、耐熱性等に優れるからである。尚、エポキシ樹脂は、半導体素子を腐食させるイオン性不純物等の含有が少ない。
【0064】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量が300〜1500の範囲内であることが好ましく、350〜1000の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量が300未満であると、熱硬化後のダイボンドフィルム3の機械的強度、耐熱性、耐湿性が低下する場合がある。その一方、1500より大きいと、熱硬化後のダイボンドフィルムが剛直になって脆弱になる場合がある。尚、本発明に於ける重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロトマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値を意味する。
【0065】
更に、前記フェノール樹脂は、前記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールビフェニル樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。これらのフェノール樹脂のうち、下記化学式で表されるビフェニル型フェノールノボラック樹脂や、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。半導体装置の接続信頼性を向上させることができるからである。
【0066】
【化1】

【0067】
尚、前記nは0〜10の自然数であることが好ましく、0〜5の自然数であることがより好ましい。前記数値範囲内にすることにより、ダイボンドフィルム3の流動性の確保が図れる。
【0068】
前記フェノール樹脂の重量平均分子量が300〜1500の範囲内であることが好ましく、350〜1000の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量が300未満であると、前記エポキシ樹脂の熱硬化が不十分となり十分な強靱性が得られない場合がある。その一方、重量平均分子量が1500より大きいと、高粘度となって、ダイボンドフィルムの作製時の作業性が低下する場合がある。
【0069】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、例えば、前記エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たりフェノール樹脂中の水酸基が0.5〜2.0当量になるように配合することが好適である。より好適なのは、0.8〜1.2当量である。即ち、両者の配合割合が前記範囲を外れると、十分な硬化反応が進まず、エポキシ樹脂硬化物の特性が劣化し易くなるからである。
【0070】
前記アクリル共重合体としては特に限定されないが、本発明においてはカルボキシル基含有アクリル共重合体、エポキシ基含有アクリル共重合体が好ましい。前記カルボキシル基含有アクリル共重合体に用いる官能基モノマーとしてはアクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。アクリル酸又はメタクリル酸の含有量は酸価が1〜4の範囲内となる様に調節される。その残部は、メチルアクリレート、メチルメタクリレートなどの炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、スチレン、又はアクリロニトリル等の混合物を用いることができる。これらの中でも、エチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。混合比率は、後述する前記アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)を考慮して調整することが好ましい。また、重合方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合法、隗状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来公知の方法を採用することができる。
【0071】
また、前記モノマー成分と共重合可能な他のモノマー成分としては特に限定されず、例えば、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分の使用量は、全モノマー成分に対し1〜20重量%の範囲内であることが好ましい。当該数値範囲内の他のモノマー成分を含有させることにより、凝集力、接着性などの改質が図れる。
【0072】
アクリル共重合体の重合方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合法、隗状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の従来公知の方法を採用することができる。
【0073】
前記アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)は、−30〜30℃であることが好ましく、−20〜15℃であることがより好ましい。ガラス転移点が−30℃以上にすることにより耐熱性が確保され得る。その一方、30℃以下にすることにより、表面状態が粗いウェハにおけるダイシング後のチップ飛びの防止効果が向上する。
【0074】
前記アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万〜100万であることが好ましく、35万〜90万であることがより好ましい。重量平均分子量を10万以上にすることにより、被着体表面に対する高温時の接着性に優れ、かつ、耐熱性も向上させることができる。その一方、重量平均分子量を100万以下にすることにより、容易に有機溶剤への溶解することができる。
【0075】
また、ダイボンドフィルム3にはフィラーが添加されていてもよい。前記フィラーとしては、無機フィラー又は有機フィラーが挙げられる。取り扱い性及び熱伝導性の向上、溶融粘度の調整、並びにチキソトロピック性の付与等の観点からは、無機フィラーが好ましい。
【0076】
前記無機フィラーとしては特に限定されず、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカ等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。熱伝導性の向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶質シリカ等が好ましい。また、ダイボンドフィルム3の接着性とのバランスの観点からは、シリカが好ましい。また、前記有機フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、シリコーン等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0077】
前記フィラーの平均粒径は、0.005〜10μmが好ましく、0.05〜1μmがより好ましい。フィラーの平均粒径が0.005μm以上であると、被着体に対する濡れ性を良好なものにし、接着性の低下を抑制することができる。その一方、前記平均粒径を10μm以下にすることにより、フィラーの添加によるダイボンドフィルム3に対する補強効果を高め、耐熱性の向上が図れる。尚、平均粒径が相互に異なるフィラー同士を組み合わせて使用してもよい。また、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(HORIBA製、装置名;LA−910)により求めた値である。
【0078】
前記フィラーの形状は特に限定されず、例えば球状、楕円体状のものを使用することができる。
【0079】
また、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル共重合体の合計重量をA重量部とし、フィラーの重量をB重量部とした場合に、比率B/(A+B)は0.1以上であることが好ましく、0.2〜0.8がより好ましく、0.2〜0.6が特に好ましい。フィラーの配合量をエポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル共重合体の合計重量に対し0.1以上にすることにより、ダイボンドフィルム3の23℃における貯蔵弾性率を5MPa以上に調整することが可能になる。
【0080】
また、ダイボンドフィルム3、3’には、必要に応じて他の添加剤を適宜に配合することができる。他の添加剤としては、例えば難燃剤、シランカップリング剤又はイオントラップ剤等が挙げられる。
【0081】
前記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0082】
前記シランカップリング剤としては、例えば、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0083】
前記イオントラップ剤としては、例えばハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0084】
前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂の熱硬化促進触媒としては特に限定されず、例えば、トリフェニルフォスフィン骨格、アミン骨格、トリフェニルボラン骨格、トリハロゲンボラン骨格等の何れかからなる塩が好ましい。
【0085】
尚、ダイシングフィルムをダイボンドフィルム3から引き剥がしたときの切断面近傍における剥離力の最大値を低減させるという観点からは、例えば、フィラー含有量が30重量%以上で形成されるダイボンドフィルム3であることが好ましい。前記フィラー含有量が30重量%以上により形成されるダイボンドフィルム3であると、ダイシングによる切断面においてダイボンドフィルム3の一部がバリとなって粘着剤層2とダイボンドフィルム3の境界に付着するのを低減させることができる。
【0086】
ダイボンドフィルム3の厚さ(積層体の場合は、総厚)は特に限定されないが、例えば、5〜100μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
【0087】
尚、ダイボンドフィルム3、3’は、例えば接着剤層の単層のみからなる構成とすることができる。また、ガラス転移温度の異なる熱可塑性樹脂、熱硬化温度の異なる熱硬化性樹脂を適宜に組み合わせて、2層以上の多層構造にしてもよい。尚、半導体ウェハのダイシング工程では切削水を使用することから、ダイボンドフィルムが吸湿して、常態以上の含水率になる場合がある。この様な高含水率のまま、基板等に接着させると、アフターキュアの段階で接着界面に水蒸気が溜まり、浮きが発生する場合がある。従って、ダイボンドフィルムとしては、透湿性の高いコア材料を接着剤層で挟んだ構成とすることにより、アフターキュアの段階では、水蒸気がフィルムを通じて拡散して、かかる問題を回避することが可能となる。かかる観点から、ダイボンドフィルムはコア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造にしてもよい。
【0088】
前記コア材料としては、フィルム(例えばポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等)、ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板、ミラーシリコンウェハ、シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。
【0089】
また、ダイボンドフィルム3、3’は、セパレータにより保護されていることが好ましい(図示せず)。セパレータは、実用に供するまでダイボンドフィルムを保護する保護材としての機能を有している。また、セパレータは、更に、ダイシングフィルムにダイボンドフィルム3、3’を転写する際の支持基材として用いることができる。セパレータはダイボンドフィルム3、3’上に半導体ウェハを貼着する際に剥がされる。セパレータとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンや、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙等も使用可能である。
【0090】
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施の形態に係るダイシング・ダイボンドフィルム10を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0091】
先ず、ダイシング・ダイボンドフィルム10に於けるダイボンドフィルム3のウェハ貼り付け部分3a上に半導体ウェハ4を圧着し、これを接着保持させて固定する(貼り付け工程)。本工程は、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行う。マウントの際の貼り付け温度は特に限定されず、例えば20〜80℃の範囲内であることが好ましい。
【0092】
次に、図4に示すように、半導体ウェハ4のダイシングを行う。このとき、ダイボンドフィルム3におけるウェハ貼り付け部分3a以外の部分3b上には、ダイシングリング9が貼り付けられている。このダイシングにより、半導体ウェハ4を所定のサイズに切断して個片化し、半導体チップ5を製造する。ダイシングは、例えば半導体ウェハ4の回路面側から行われる。このとき、ダイシング・ダイボンドフィルム10に対するダイシング刃(ダイシングブレード)13の切り込みは、ダイボンドフィルム3が完全に切断され、かつ、少なくとも粘着剤層2の一部にまで切断が行われる(図5参照)。但し、粘着剤層2を完全に切断して支持基材1まで切り込みが到達するのは、糸状屑が発生する場合があるので好ましくない。
【0093】
ダイシング工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウェハ4は、ダイシング・ダイボンドフィルム10により接着固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウェハ4の破損も抑制できる。
【0094】
ダイシング・ダイボンドフィルム10に接着固定された半導体チップを剥離する為に、半導体チップ5のピックアップを行う。ピックアップの方法としては特に限定されず、例えば、個々の半導体チップ5をダイシング・ダイボンドフィルム10側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。
【0095】
ここでピックアップは、粘着剤層2が放射線硬化型であり、かつ、未硬化である場合には、当該粘着剤層2に対し放射線を照射した後に行うことが好ましい。また、粘着剤層2が放射線硬化型であり、かつ、予め完全硬化されたものである場合は、放射線を照射することなくピックアップが行われる。いずれの場合においても、粘着剤層2のダイボンドフィルム3に対する粘着力は低下されているので、半導体チップ5の剥離を容易に行うことができる。その結果、半導体チップ5を損傷させることなくピックアップが可能となる。放射線照射の際の照射強度、照射時間等の条件は特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
【0096】
次に、ダイシングにより形成された半導体チップ5を、ダイボンドフィルム3aを介して被着体6にダイボンドする。ダイボンドは圧着により行われる。ダイボンドの条件としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。具体的には、例えば、ダイボンド温度80〜160℃、ボンディング圧力5N〜15N、ボンディング時間1〜10秒の範囲内で行うことができる。
【0097】
前記被着体6としては、リードフレーム、TABフィルム、基板又は別途作製した半導体チップ等が挙げられる。被着体6は、例えば、容易に変形されるような変形型被着体であってもよく、変形することが困難である非変形型被着体(半導体ウェハ等)であってもよい。前記基板としては、従来公知のものを使用することができる。また、前記リードフレームとしては、Cuリードフレーム、42Alloyリードフレーム等の金属リードフレームやガラスエポキシ、BT(ビスマレイミド−トリアジン)、ポリイミド等からなる有機基板を使用することができる。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、半導体素子をマウントし、半導体素子と電気的に接続して使用可能な回路基板も含まれる。
【0098】
続いて、ダイボンドフィルム3aを加熱処理することによりこれを熱硬化させ、半導体チップ5と被着体6とを接着させる。加熱処理条件としては、温度80〜180℃の範囲内であり、かつ、加熱時間0.1〜24時間、好ましくは0.1〜4時間、より好ましくは0.1〜1時間の範囲内であることが好ましい。
【0099】
次に、被着体6の端子部(インナーリード)の先端と半導体チップ5上の電極パッド(図示しない)とをボンディングワイヤー7で電気的に接続するワイヤーボンディング工程を行う。前記ボンディングワイヤー7としては、例えば金線、アルミニウム線又は銅線等が用いられる。ワイヤーボンディングを行う際の温度は、80〜250℃、好ましくは80〜220℃の範囲内で行われる。また、その加熱時間は数秒〜数分間行われる。結線は、前記温度範囲内となる様に加熱された状態で、超音波による振動エネルギーと印加加圧による圧着エネルギーの併用により行われる。
【0100】
ここで、熱硬化後のダイボンドフィルム3aは、175℃において0.01MPa以上の剪断接着力を有していることが好ましく、0.01〜5MPaがより好ましい。熱硬化後の175℃における剪断接着力を0.01MPa以上にすることにより、ワイヤーボンディング工程の際の超音波振動や加熱に起因して、ダイボンドフィルム3aと半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形が生じるのを防止できる。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体チップ5が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0101】
尚、ワイヤーボンディング工程は、加熱処理によりダイボンドフィルム3aを熱硬化させることなく行ってもよい。この場合、ダイボンドフィルム3aの25℃における剪断接着力は、被着体6に対し0.2MPa以上であることが好ましく、0.2〜10MPaであることがより好ましい。前記剪断接着力を0.2MPa以上にすることにより、ダイボンドフィルム3aを熱硬化させることなくワイヤーボンディング工程を行っても、当該工程に於ける超音波振動や加熱により、ダイボンドフィルム3aと半導体チップ5又は被着体6との接着面でずり変形を生じることがない。即ち、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体素子が動くことがなく、これにより、ワイヤーボンディングの成功率が低下するのを防止する。
【0102】
また、未硬化のダイボンドフィルム3aは、ワイヤーボンディング工程を行っても完全に熱硬化することはない。更に、ダイボンドフィルム3aの剪断接着力は、80〜250℃の温度範囲内であっても、0.2MPa以上であることが必要である。当該温度範囲内で剪断接着力が0.2MPa未満であると、ワイヤーボンディングの際の超音波振動により半導体チップ5が動き、ワイヤーボンディングを行うことができず、歩留まりが低下するからである。
【0103】
続いて、封止樹脂8により半導体チップ5を封止する封止工程を行う(図6参照)。本工程は、被着体6に搭載された半導体チップ5やボンディングワイヤー7を保護する為に行われる。本工程は、封止用の樹脂を金型で成型することにより行う。封止樹脂8としては、例えばエポキシ系の樹脂を使用する。樹脂封止の際の加熱温度は、通常175℃で60〜90秒間行われるが、本発明はこれに限定されず、例えば165〜185℃で、数分間キュアすることができる。これにより、封止樹脂を硬化させると共に、ダイボンドフィルム3aが熱硬化されていない場合は当該ダイボンドフィルム3aも熱硬化させる。即ち、本発明に於いては、後述する後硬化工程が行われない場合に於いても、本工程に於いてダイボンドフィルム3aを熱硬化させて接着させることが可能であり、製造工程数の減少及び半導体装置の製造期間の短縮に寄与することができる。
【0104】
前記後硬化工程に於いては、前記封止工程で硬化不足の封止樹脂8を完全に硬化させる。封止工程に於いてダイボンドフィルム3aが熱硬化されない場合でも、本工程に於いて封止樹脂8の硬化と共にダイボンドフィルム3aを熱硬化させて接着固定が可能になる。本工程に於ける加熱温度は、封止樹脂の種類により異なるが、例えば165〜185℃の範囲内であり、加熱時間は0.5〜8時間程度であることが好ましい。これにより、本実施の形態に係る半導体装置が製造される。
【実施例】
【0105】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
厚さが100μmのポリエチレンフィルムからなる支持基材上に、紫外線硬化可能なアクリル系粘着剤の溶液を塗布、乾燥して、厚さが20μmの粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層に於ける、ウェハ貼り付け部分に対応する部分にのみ紫外線を500mJ/cm照射して、支持基材とウェハ貼り付け部分が紫外線硬化された粘着剤層とからなるダイシングフィルムを得た。尚、紫外線の照射条件については、後述する。
【0107】
前記紫外線硬化可能なアクリル系粘着剤の溶液は、次の通りにして調製した。即ち、先ずエチルヘキシルアクリレート100重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート16重量部からなる配合組成物をトルエン溶液中で共重合させて、重量平均分子量50万のアクリル系ポリマーを得た。
【0108】
次に、このアクリル系ポリマー100重量部に、20重量部の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させ、ポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合を導入した。更に、このポリマー100重量部に対し、多官能イソシアネート系架橋剤2重量部、アセトフェノン系光重合開始剤7重量部を配合し、これらを有機溶剤としてのトルエンに均一に溶解させた。これにより、濃度20重量%のアクリル系粘着剤の溶液を作成した。
【0109】
また、ダイボンドフィルムは、次の通りにして作製した。即ち、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1001)32重量部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)34重量部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、テイサンレジン SG−708−6)100重量部、平均粒径500nmの球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)110重量部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%となるように調整し、接着剤組成物を調製した。
【0110】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した。その後、120℃で3分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの熱硬化型のダイボンドフィルムを作製した。更に、ダイボンドフィルムを前述のアクリル系粘着剤からなる粘着フィルムの粘着剤層上に転写して、本実施例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを得た。
【0111】
(実施例2)
本実施例に於いては、実施例1のアクリル系粘着剤の溶液において、更に光重合性化合物としてのジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートを50重量部添加したものを用いてダイシングフィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0112】
(実施例3)
本実施例に於いては、以下の通りにして作製したアクリル系粘着剤の溶液を用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして本実施例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを得た。
【0113】
即ち、先ずエチルアクリレート50重量部、ブチルアクリレート50重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート16重量部からなる配合組成物をトルエン溶液中で共重合させて、重量平均分子量50万のアクリル系ポリマーを得た。
【0114】
次に、このアクリル系ポリマー100重量部に、20重量部の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを付加反応させ、ポリマー分子内側鎖に炭素−炭素二重結合を導入した。更に、このポリマー100重量部に対し、多官能イソシアネート系架橋剤1重量部、アセトフェノン系光重合開始剤3重量部を配合し、これらを有機溶剤としてのトルエンに均一に溶解させた。これにより、濃度20重量%の溶液を作成した。更に、このアクリル系粘着剤の溶液に光重合性化合物としてのジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート25重量部を添加し、本実施例に係るアクリル系粘着剤の溶液を得た。
【0115】
(実施例4)
本実施例に於いては、光重合性化合物としてのジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートの配合量を100重量部に変更したこと以外は、前記実施例3と同様にして、本実施例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0116】
(実施例5)
本実施例に於いては、多官能イソシアネート系架橋剤の配合量を1重量部に変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、本実施例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0117】
(比較例1)
本比較例に於いては、多官能イソシアネート系架橋剤の配合量を8重量部にし、アセトフェノン系光重合開始剤を7重量部に変更したこと以外は、前記実施例3と同様にして、本比較例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0118】
(比較例2)
本比較例に於いては、ダイボンドフィルムとして以下の方法で作製したものを用いたこと以外は、前記実施例4と同様にして本比較例に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
【0119】
即ち、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1001)32重量部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)34重量部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、テイサンレジン SG−708−6)100重量部、平均粒径500nmの球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)9重量部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%となるように調整し、接着剤組成物を調製した。
【0120】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した。その後、120℃で3分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの熱硬化型のダイボンドフィルムを作製した。
【0121】
(比較例3)
本比較例に於いては、ダイボンドフィルムとして以下の方法で作製したものを用いたこと以外は、前記実施例4と同様にして本比較例3に係るダイシング・ダイボンドフィルムを作製した。
即ち、エポキシ樹脂(JER(株)製、エピコート1001)8重量部、フェノール樹脂(三井化学(株)製、ミレックスXLC−4L)9重量部、アクリル酸エチル−メチルメタクリレートを主成分とするアクリル共重合体としてのアクリル酸エステル系ポリマー(ナガセケムテックス(株)製、テイサンレジン SG−708−6)100重量部、平均粒径500nmの球状シリカ(アドマテックス(株)製、SO−25R)73重量部をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度23.6重量%となるように調整し、接着剤組成物を調製した。
【0122】
この接着剤組成物溶液を、シリコーン離型処理した厚さが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型処理フィルム(剥離ライナー)上に塗布した。その後、120℃で3分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの熱硬化型のダイボンドフィルムを作製した。
【0123】
(粘着剤層の厚さの測定)
各実施例及び比較例で形成した粘着剤層の厚さは、それぞれ1/1000ダイヤルゲージで20点測定し、それらの平均値を厚さとした。
【0124】
(ダイシングフィルムの貯蔵弾性率の測定)
各実施例及び比較例で作製したダイシングフィルムから、長さ30mm(測定長さ)、幅10mm、厚さ0.5mmの短冊状にカッターナイフで切り出し、粘弾性スペクトロメータ(商品名;RSAII、レオメトリックサイエンティフィック(株)製)を用いて、−50〜200℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10℃/minとした。23℃における貯蔵弾性率の値を下記表1に示す。
【0125】
(ダイボンドフィルムの貯蔵弾性率の測定)
各実施例及び比較例で作製したダイボンドフィルムから、長さ30mm(測定長さ)、幅20mm、厚さ0.5mmの短冊状にカッターナイフで切り出し、粘弾性スペクトロメータ(商品名;RSAII、レオメトリックサイエンティフィック(株)製)を用いて、−50〜200℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10℃/minとした。23℃における貯蔵弾性率の値を下記表1に示す。
【0126】
(ダイシング後の剥離力)
各実施例及び比較例で得られたダイシング・ダイボンドフィルムを、半導体ウェハに60±3℃でマウントした。半導体ウェハとしては、サイズが8インチであり、厚さが75μmになるまで裏面研削したものを用いた。研削条件及び貼り合わせ条件は下記の通りである。
【0127】
<ウェハ研削条件>
研削装置:ディスコ社製、DFG−8560
半導体ウェハ:8インチ径(厚さ0.75mmから75μmに裏面研削)
【0128】
<貼り合わせ条件>
貼り付け装置:日東精機製、MA−3000II
貼り付け速度計:10mm/min
貼り付け圧力:0.15MPa
貼り付け時のステージ温度:60±3℃
【0129】
次に、半導体ウェハをダイシングし半導体チップを形成した。ダイシングは10mm角のチップサイズとなる様にダイシングを行った。ダイシング条件は下記の通りである。
【0130】
<ダイシング条件>
ダイシング装置:ディスコ社製、DFD−651
ダイシングブレード:ディスコ社製、27HEDD
ダイシングリング:2−8−1(ディスコ社製)
ダイシング速度:30mm/sec
ダイシング深さ:85μm(チャックテーブルからの距離)
ダイシングブレード回転数:40,000rpm
カット方式:ダウンカット
ウェハチップサイズ:10.0mm角
【0131】
ダイシング後、半導体チップが5つ以上連続して形成されている任意の一列を、ダイシング・ダイボンドフィルムと共に切り出した。切り出したときのダイシング・ダイボンドフィルムのテープ幅は10mmとなる様にした。また、ダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間にはボイドが生じない様にした。次に、両面粘着テープを介して、列状の半導体チップをSUS板に固定した。
【0132】
その後、ダイボンドフィルムからダイシングフィルムを剥離角度が180°となる様に引き剥がし、切断面から1mmの領域における剥離力F1(N/10mm)の最大ピーク値を測定した。結果を下記表1に示す。
【0133】
(剥離力)
各実施例及び比較例で得られたダイシング・ダイボンドフィルムを、20mmテープ幅で短冊状に切断し、温度23±3℃(室温)、剥離角度180°、剥離点移動速度300mm/secの条件下で、ダイボンドフィルムからダイシングフィルムを引き剥がし、このときの剥離力F2(N/10mm)を測定した。結果を下記表1に示す。
【0134】
(ピックアップ)
各実施例及び比較例のそれぞれダイシング・ダイボンドフィルムを用いて、以下の要領で、実際に半導体ウェハのダイシングを行った後にピックアップを行い、各ダイシング・ダイボンドフィルムの性能を評価した。
【0135】
即ち、各実施例及び比較例で得られたダイシング・ダイボンドフィルムを、半導体ウェハに60±3℃でマウントした。半導体ウェハとしては、サイズが8インチであり、厚さが75μmになるまで裏面研削したものを用いた。次に、半導体ウェハをダイシングし50個の半導体チップを形成した。ダイシングは10mm角のチップサイズとなる様に、ダイシング深さ85μmまで切断して行った。尚、裏面研削のウェハ研削条件、半導体ウェハのマウントの貼り合わせ条件、半導体ウェハのダイシング条件は前記と同様にした。
【0136】
次に、各ダイシング・ダイボンドフィルムを引き伸ばして、各チップ間を所定の間隔とするエキスパンド工程を行った。エキスパンド条件は下記の通りである。更に、各ダイシング・ダイボンドフィルムの基材側からニードルによる突き上げ方式で半導体チップをピックアップしピックアップ性の評価を行った。具体的には、後述の条件で10個の半導体チップを連続してピックアップし、ピックアップができなかった半導体チップの個数をカウントし、成功率を算出した。結果を下記表1に示す。
【0137】
<エキスパンド条件>
ダイボンダー:新川(株)製、装置名:SPA−300
内リングに対する外リングの引落し量:3mm
【0138】
<ピックアップ条件>
ダイボンド装置:新川(株)製、装置名:SPA−300
ニードル本数:9本
ニードル突き上げ量:0.50mm
ニードル突き上げ速度:5mm/秒
吸着保持時間:1秒
【0139】
(結果)
下記表1から明らかな通り、実施例1〜5の様に、ダイシング後の切断面近傍におけるダイシングフィルムとダイボンドフィルムの間の剥離力F1が0.7N/10mm以下の範囲内であると、ピックアップ性が良好であるのに対し、比較例1〜3の様に、剥離力F1が0.7N/10mmを超えると、ピックアップ性が低下することが確認された。
【0140】
【表1】

【符号の説明】
【0141】
1 支持基材
2 粘着剤層
3、3’ ダイボンドフィルム
4 半導体ウェハ
5 半導体チップ
6 被着体
8 封止樹脂
10、11 ダイシング・ダイボンドフィルム
13 ダイシングブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材上に少なくとも粘着剤層が設けられたダイシングフィルムと、前記粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムであって、
前記粘着剤層の厚みが5〜80μmであり、
前記ダイボンドフィルム側から少なくとも前記粘着剤層の一部までダイシングした後に、前記ダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの切断面近傍における剥離力の最大値が、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度10mm/minの条件下で0.7N/10mm以下であるダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の23℃に於ける貯蔵弾性率が1×10Pa〜5×10Paである請求項1に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項3】
前記ダイシングフィルムを前記ダイボンドフィルムから引き剥がしたときの剥離力は、前記ダイシング前において、温度23℃、剥離角度180°、剥離点移動速度300mm/minの条件下で0.01N/20mm〜0.15N/20mmの範囲内である請求項1又は2に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層は放射線硬化型粘着剤により形成されており、前記放射線硬化型粘着剤には、ベースポリマー100重量部に対し0重量部を超えて、50重量部以下の範囲内の光重合性化合物が添加されている請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は放射線硬化型粘着剤により形成されており、前記放射線硬化型粘着剤には、ベースポリマー100重量部に対し1重量部以上8重量部以下の範囲内の光重合開始剤が添加されている請求項1〜3の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。
【請求項6】
前記ダイボンドフィルムは、少なくともエポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル共重合体及びフィラーにより形成されており、
前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びアクリル共重合体の合計重量をA重量部とし、フィラーの重量をB重量部としたときのB/(A+B)が、0.1以上であり、
かつ、前記ダイボンドフィルムの熱硬化前の23℃に於ける貯蔵弾性率が5MPa以上である請求項1〜5の何れか1項に記載のダイシング・ダイボンドフィルム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−187571(P2011−187571A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49595(P2010−49595)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】