説明

ダイボンダのピックアップ方法およびダイボンダ

【課題】確実にダイを剥離できるダイボンダを提供すること,または前記ダイボンダを用い、信頼性の高いダイボンドまたはピックアップ方法を提供する。
【解決手段】ダイシングフィルム16に貼り付けられた複数のダイ(半導体チップ)4dのうち剥離対象のダイ4を突上げて前記ダイシングフィルムから剥離する際に、前記ダイの周辺部のうちの所定部における前記ダイシングフィルムを突上げて剥離起点51aを形成し、その後、前記所定部以外の部分の前記ダイシングフィルムを突上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイボンダのピックアップ方法およびダイボンダに係わり、特に信頼性の高いダイボンダのピックアップ方法および確実にダイを剥離できるダイボンダに関する。
【背景技術】
【0002】
ダイ(半導体チップ、以下、単にダイという)を配線基板やリードフレームなどの基板に搭載してパッケージを組み立てる工程の一部に、半導体ウェハ(以下、単にウェハという)からダイを分割する工程と、分割したダイを基板上に搭載するダイボンディング工程とがある。
【0003】
ボンディング工程の中には、ウェハから分割されたダイを剥離する剥離工程がある。剥離工程では、これらダイをピックアップ装置に保持されたダイシングフィルムから1個ずつ剥離し、コレットと呼ばれる吸着治具を使って基板上に搬送する。
剥離工程を実施する従来技術としては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載する技術がある。特許文献1では、ダイの4コーナに設けた第1の突上げピン群と、先端が第1の突上げピンより低く、ダイの中央部または周辺部に設けた第2の突上げピン群とをピンホルダーに装着し、ピンホルダーを上昇させることで剥離する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、ダイの中心部に行く程突上げ高さを高くできる3つのブロックを設け、最も外側の外側ブロックの4コーナに一体形成されダイのコーナ方向に突き出た突起を設け、3つのブロックを順次突上げていく技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−184836号公報
【特許文献2】特開2007− 42996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、半導体装置の高密度実装を推進する目的で、パッケージの薄型化が進められている。特に、メモリカードの配線基板上に複数枚のダイを三次元的に実装する積層パッケージが実用化されている。このような積層パッケージを組み立てるに際しては、パッケージ厚の増加を防ぐために、ダイの厚さを20μm以下まで薄くすることが要求される。
ダイが薄くなると、ダイシングフィルムの粘着力に比べてダイの剛性が極めて低くなる。そのため、特許文献1の第1、第2の高さの異なる多段突上げピン方式であっても、特許文献2の突起を有する多段ブロック方式であっても、ダイを一気に剥離している。
しかし、実際には、ダイの位置によってダイシングフィルムの張力は異なる。例えば、ウェハの中心部は張力が弱く、ウェハの周辺部は張力が強い。さらに、隣接されたダイがピックアップされた部分の近くは張力が弱く、隣接されたダイがまだピックアップされていない部分の近くは張力が強い。
従来、ピックアップ装置のウェハリングに固定されたダイシングフィルムの張力は、どこでも一定であるとしてピックアップされるようにしていた。このため、上述のようなウェハの位置やピックアップの状況によって、ピックアップが安定しない、従って、ピックアップミスが多かった。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、本発明の目的は、確実にダイを剥離できるピックアップ方法およびピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のダイボンダのピックアップ方法は、ダイシングフィルムに貼り付けられた複数のダイのうち剥離対象とするダイの前記ダイシングフィルム上の位置に対応する突上げ量の情報を有するマッピングテーブルを参照して、前記ダイの突上げ量を決定し、前記ダイをコレットで吸着し、前記ダイの前記ダイシングフィルムを前記決定された突上げ量で突上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するものである。
【0008】
上記本発明のダイボンダのピックアップ方法において、好ましくは、前記マッピングテーブルには、予め前記ダイシングフィルムの張力を測定し、該測定された張力に基づいた突上げ量が記録される。
【0009】
また、上記本発明のダイボンダのピックアップ方法において、前記マッピングテーブルには、予め前記ダイシングフィルムの張力に基づいた突上げ量が記録され、前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離する場合に当該ダイシングフィルムの張力を測定し、前記マッピングテーブルを参照し、前記測定された張力に応じた突上げ量を決定し、前記ダイの前記ダイシングフィルムを前記決定された突上げ量で突上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するステップ有する。
【0010】
さらに、上記本発明のダイボンダのピックアップ方法において、前記マッピングテーブルは、さらに、当該ダイが良品か不良品かを示す情報を含む。
【0011】
また本発明のダイボンダは、ウェハリングを保持するエキスパンドリングと、前記ウェハリングに保持され複数のダイが貼り付けられたダイシングフィルムを保持する保持手段と、ダイシングフィルムの張力を測定し、前記測定された張力に応じた突上げ量を前記ウェハリングのダイの位置と対応づけて予め記録したマッピングテーブルと、剥離対象のダイの位置を認識する位置認識手段と、前記マッピングテーブルを参照して、前記認識された位置に対応する突上げ量を読出し、前記ダイシングフィルムを当該読出された突上げ量で突上げて前記剥離対象のダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、前記剥離手段の前記突上げを駆動する駆動手段を有する突上げユニットとを有するものである。
【0012】
また本発明のダイボンダは、ウェハリングを保持するエキスパンドリングと、 前記ウェハリングに保持され複数のダイが貼り付けられたダイシングフィルムを保持する保持手段と、前記ダイシングフィルムを当該読出された突上げ量で突上げて剥離対象のダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、前記剥離手段の前記突上げを駆動する駆動手段を有する突上げユニットと、前記剥離手段の前記突上げ反力を測定するロードセルとを有し、前記剥離手段は、前記測定された反力に基づいて突上げ量を可変するものである。
【0013】
さらに上記本発明のダイボンダは、前記反力に応じた突上げ量を前記ウェハリングのダイの位置と対応づけて予め記録したマッピングテーブルを有し、前記剥離手段は、前記マッピングテーブルを参照して前記測定された反力に基づいた突上げ量を読み出し、前記ダイシングフィルムを当該読出された突上げ量で突上げて前記剥離対象のダイを前記ダイシングフィルムから剥離する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、確実にダイを剥離できるピックアップ方法およびダイボンダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態であるダイボンダを上から見た概念図である。
【図2】本発明の一実施形態であるピックアップ装置の外観斜視図を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態であるピックアップ装置の主要部を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である突上げユニットとボンドヘッドユニットのうちコレット部との構成を示した図、および、突上げユニットの突上げブロック部および剥離起点形成ピンが存在する部分を上部から見た図である。
【図5】本発明の実施形態におけるピックアップ動作の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施例のドームヘッド付近部とコレット部の動作を示した図である。
【図7】本発明の一実施例のダイのピックアップ動作時の突上げユニットの駆動動作を主体に示す図である。
【図8】ウェハリング内のウェハの中心部と周辺部とのピックアップ時の張力の違いについて説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態におけるピックアップ動作の処理フローを示すフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例のウェハリング内のウェハの中心部と周辺部とのピックアップ時の張力の補正について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図8は、ウェハリング14内のウェハ81の中心部82と周辺部とのピックアップ時の張力の違いについて説明するための図である。図8(a)に示すように、ウェハ81に、ピックアップが開始されておらず、まだダイ(ウェハ81内の長方形で示す)がほとんど残っている場合においても、中心部82は、周辺部(ウェハリング14のエキスパンドリング15の近く)より、ダイシングフィルム16の張力が弱い。またさらに、図8(b)に示すように、半分程度しかダイが残っていない場合には、ダイが残っていない部分に近いほどダイシングフィルム16の張力が弱くなる。
その場合、ダイシングフィルム16の張力が強い場合には、図8(c)のように突上げ量Zは小さな突上げ量Z1で良い。しかし、ダイシングフィルム16の張力が弱い場合には、図8(d)のように突上げ量Zを大きな突上げ量Z2にする必要がある。
このように、ダイシングフィルム上に存在するダイの位置や量によって、張力が変化する。しかし、従来のピックアップ方式のように、ピックアップ高さ(突上げ量Z)を固定した(Z1=Z2)場合には、変化する張力に対応できず、突上げによる剥離にばらつきが発生する。このばらつきがピックアップの安定性に影響している。本発明では、ウェハ上での位置やダイ周辺の状況を考慮して突上げ量を補正する(Z1≠Z2)。この結果、ピックアップ時の張力を一定に保持し、突上げによる剥離のばらつきを抑えることで、ピックアップの安定性を向上させる。
【実施例1】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明のピックアップ方法およびピックアップ装置の一実施形態を使用するダイボンダ10を上から見た概念図である。ダイボンダ10は、大別してウェハ供給部1と、ワーク供給・搬送部2と、ダイボンディング部3とを有する。
ワーク供給・搬送部2はスタックローダ21と、フレームフィーダ22と、アンローダ23とを有する。スタックローダ21によりフレームフィーダ22に供給されたワーク(リードフレーム)は、フレームフィーダ22上の2箇所の処理位置を介してアンローダ23に搬送される。
ダイボンディング部3は、プリフォーム部31とボンディングヘッド部32とを有する。プリフォーム部31はフレームフィーダ22により搬送されてきたワークにダイ接着剤を塗布する。ボンディングヘッド部32は、ピックアップ装置12からダイをピックアップして上昇し、ダイを平行移動してフレームフィーダ22上のボンディングポイントまで移動させる。そして、ボンディングヘッド部32はダイを下降させダイ接着剤が塗布されたワーク上にボンディングする。
ウェハ供給部1は、ウェハカセットリフタ11とピックアップ装置12とを有する。ウェハカセットリフタ11は、ウェハリングが充填されたウェハカセット(図示せず)を有し,順次ウェハリングをピックアップ装置12に供給する。
なお、図1には図示していないが、ダイボンダ10は、さらに、ダイボンダ10およびピックアップ装置を統括制御する制御装置、駆動機構、認識処理部、およびモニタを備え、制御装置と他の機器とはインタフェースを介して通信している。また、制御装置は、CPU(Central Processing Unit)であり、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)を接続した構成を備える。
【0018】
次に、図2および図3を用いてピックアップ装置12の構成を説明する。
図2は、ピックアップ装置12の外観斜視図を示す図である。図3は、ピックアップ装置12の主要部を示す概略断面図である。図2、図3に示すように、ピックアップ装置12は、ウェハリング14を保持するエキスパンドリング15と、ウェハリング14に保持され複数のダイ(チップ)4が接着されたダイシングフィルム16を水平に位置決めする支持リング17と、支持リング17の内側に配置されダイ4を上方に突上げるための突上げユニット50とを有する。突上げユニット50は、図示しない駆動機構によって、上下方向に移動するようになっており、水平方向にはピックアップ装置12が移動するようになっている。
【0019】
ピックアップ装置12は、ダイ4の突上げ時に、ウェハリング14を保持しているエキスパンドリング15を下降させる。その結果、ウェハリング14に保持されているダイシングフィルム16が引き伸ばされダイ4の間隔が広がり、突上げユニット50によりダイ下方よりダイ4を突上げ、ダイ4のピックアップ性を向上させている。なお、ウェハおよびダイ4の薄型化に伴い接着剤は液状からフィルム状となり、ウェハとダイシングフィルム16との間にダイアタッチフィルム18と呼ばれるフィルム状の接着材料を貼り付けている。ダイアタッチフィルム18を有するウェハでは、ダイシングはウェハとダイアタッチフィルム18に対して行なわれる。従って、剥離工程では、ウェハとダイアタッチフィルム18をダイシングフィルム16から剥離する。
【0020】
図4(a)は、本発明の第1の実施形態である突上げユニット50とボンドヘッドユニット(図示せず)のうちコレット部40との構成を示した図である。図4(b)は、突上げユニットの後述する突上げブロック部および剥離起点形成ピンが存在する部分を上部から見た図である(後述の図6と図7および図6と図7の説明分を参照。)。
図4(a)に示すようにコレット部40は、コレット42と、コレット42を保持するコレットホルダ41と、それぞれに設けられダイ4を吸着するための吸引孔41v、42vとがある。
【0021】
一方、突上げユニット50は、大別して、突上げブロック部と、剥離起点形成ピン部と、突上げブロック部と剥離起点形成ピン部を駆動する駆動部と、それらを保持するドーム本体58とを有する。突上げブロック部は、ブロック本体59と、ブロック本体59に直結した内側ブロック54、1/2切替えバネ52bを介して内側ブロックの周囲に設けられ、ダイ4の外形より小さい外形を有する外側ブロック52とを有している。
剥離起点形成ピン部は、図4(b)に示すように、外側ブロック52の4つのコーナの外側、即ちダイの4隅にそれぞれ設けられた4本の剥離起点形成ピン51と、剥離起点形成ピン51を保持し、上下に移動可能なピン上下リンク55と、ピン駆動リンクの回転支点56aを支点に回転しピン上下リンク55を上下させるピン駆動リンク56とを有する。
【0022】
駆動部は、モータによって上下に移動する駆動軸57と、駆動軸57の上下に伴い上下移動する作動体53とを有する。作動体53が下降すると、左右のピン駆動リンク56が回転し、ピン上下リンク55が上昇し、剥離起点形成ピン51を突上げる。作動体53が上昇すると、ブロック本体を上昇させ、外側、内側ブロックを押し上げる。なお、ピン上下リンク55とピン駆動リンク56は、上述の説明によれば、作動体53の下降する動きを剥離起点形成ピン51の突上げ(上昇)の動きに変える反転部を構成する。
ドーム本体58の上部には、ダイ4を吸着し保持する多くの吸着孔58aを具備するドームヘッド58bを有する。図4(b)ではブロック部の周囲に一列のみ示しているが、ピックアップ対象でないダイ4dを安定し保持するために複数列設けている。また、図4(b)に示すように、内側ブロック54と外側ブック52との隙間54v、並びに外側ブロック52とドームヘッド58bとの隙間52vを吸引しダイシングフィルム16をブッロク部に側に保持している。
【0023】
次に、上述した構成よる突上げユニット50によるピックアップ動作を図5、図6および図7を用いて説明する。図5は、ピックアップ動作の処理フローを示すフローチャートである。図6は、本発明の一実施例におけるドームヘッド58b付近部とコレット部40の動作を示した図である。図7は、本発明の一実施例におけるダイ4のピックアップ動作時の突上げユニット50の駆動動作を主体に示した図である。図6、図7において、(a)〜(d)は、同時期の動作を示す。
【0024】
まず、ステップ501では、初期設定を行う。初期設定は、1枚のウェハをピックアップ装置にセットしたときに行う。例えば、初期設定では、ボンディングヘッド部32、ウェハリング14、エキスパンドリング15、支持リング17、および突上げユニット50を基準位置(上下方向を含む)に戻す。そして、ステップ501では、さらに、ウェハリングにセットされたウェハの各ダイについて、良品(OK)であるか不良品(NG)であるかの情報および当該ダイの中心位置座標、突上げ量Zの情報を有するマッピングテーブルを、外部記憶装置またはROMに読込む。なお、上述の初期設定値やマッピングテーブルは、ピックアップ装置を備えたダイボンダを統括制御する制御装置の記憶装置(例えば、RAM))に読込まれ、記録される。またROMも上記制御装置の記憶装置の1つである(図1参照。)。なお、マッピングテーブルに記録される突上げ量Zの情報は、予め、ダイシングフィルムの張力を測定し、該測定された張力に基づいた突上げ量を記録したものである。さらに、1枚のウェハ上のダイを順番にピックアップする毎に、次の剥離対象のダイをピックアップするときのダイシングフィルムの張力を測定して、張力が一定となるように、突上げ量を決定するようにしても良い。
さらに、図5の処理フローは、上記制御装置が、ダイボンダおよびピックアップ装置を制御して実行する。
【0025】
次に、ステップS502では、認識カメラ(図示しない)でピックアップ装置の取り出すべきダイ4を撮像し、認識処理装置(図示しない)で当該ダイ4の位置を認識する。
そして、ステップS503では、マッピングテーブルを参照して、認識した位置に対応するダイ4の情報から、当該ダイ4が良品か不良品かを判定する。不良品であれば、ステップS502に戻り次のダイの位置を認識する。また、良品であれば、ステップS504に進む。
ステップS504では、さらに、ダイ4に対応するダイ4の情報から突上げ量Zを読出し、読みだされた値を当該ダイ4の突上げ量として決定する。
【0026】
次に、ステップS505では、図6(a)に示すように、剥離起点形成ピン51、外側ブロック52、内側ブロック54がドームヘッド58bの表面と同一平面を形成するようにし、ドームヘッド58bの吸着孔58aと、ブロック間の隙間52v、54vとによってダイシングフィルム16を吸着する。
次に、ステップS506では、コレット部40を下降させ、ピックアップするダイ4の上に位置決めし、吸引孔41v、42vによってダイ4を吸着する。
ステップS505およびS506により、図6(a)に示す状態になり、このとき、駆動動作は、図7(a)に示すように、作動体53は剥離起点形成ピン51やブロック52、54を動作させないニュートラル状態である。
このような状態で、ステップS507では、コレット42の鍔42tから漏れがないかを空気流量を検出し、リークが正常な範囲であれば、ステップS508に進み、リークが正常な範囲でなければ、ステップS515に進む。
ステップS515では、タイマを延長しステップS507に戻る。このように、ステップS507とステップS515では、リークが正常な範囲に収まるまで吸引を続ける。
【0027】
次に、ステップS508では、外側ブロック52の4コーナに設けた剥離起点形成ピン51のみを数十μmから数百μm上昇させる。
この結果、図6(b)に示すように、剥離起点形成ピン51の周辺においてダイシングフィルム16が盛り上がった突上げ部分が形成され、ダイシングフィルム16とダイアタッチフィルム18の間に微小な空間、即ち、剥離起点51aができる。この空間によりアンカー効果、即ちダイ4にかかるストレスが大幅に低減し、次のステップにおける剥離動作を確実にできる。
図7(b)は、このときの駆動動作を示した図である。作動体53は下降し、56aを支点にピン上下リンク56が回転し、ピン上下リンク55を上昇させ、剥離起点形成ピン51を突上げる。
剥離起点形成ピン51は上述したように微小な区間を形成できればよいので、突上げピンは、例えば、径が700μm以下で先端が丸い形状でもフラット形状でもよい。
【0028】
次に、ステップS509では、ステップS507と同様に、コレット42の鍔42tから漏れがないかを空気流量を検出し、リークが正常な範囲であれば、ステップS510に進み、リークが正常な範囲でなければ、ステップS516に進む。
ステップS516では、タイマを延長しステップS509に戻る。このように、ステップS509とステップS516では、リークが正常な範囲に収まるまで吸引を続ける。
【0029】
ステップS510では、作動体53を上昇させ、剥離起点形成ピン51の位置を元の位置に戻す。剥離起点形成ピン51は次のステップ以降のダイ4の剥離動作には寄与しない。
次に、ステップS511では、外側ブロック52および内側ブッロク54のダイ4の剥離動作にはいる。そのために、図7(c)に示すように、作動体53を更に上昇させ、外側ブロック52および内側ブッロク54による剥離動作を実施する。
このときのドームヘッド58a付近部とコレット部40の状態は図6(c)となる。このときも、ステップS512では、ステップS507およびステップS509と同様に、コレットリークの検出処理を行う。即ち、ステップS512では、コレット42の鍔42tから漏れがないかを空気流量を検出し、リークが正常な範囲であれば、ステップS513に進み、リークが正常な範囲でなければ、ステップS517に進む。
ステップS517では、タイマを延長しステップS512に戻る。このように、リークが正常な範囲に収まるまで吸引を続ける。
【0030】
次に、ステップS513では、図7(c)の状態から図7(d)に示すように、更に作動体53を上昇させる。この結果、1/2切替えバネ52bの作用によって内側ブッロク54のみが上昇し、図6(d)の状態になる。この状態では、ダイシングフィルム16とダイ4との接触面積はコレットの上昇により剥離できる面積となり、コレット42の上昇にダイ4を剥離する。
【0031】
ステップS514では、ピックアップ装置にセットした1枚のウェハについて、全てのダイについて、上記ステップS502〜S513を終了したか否かを判定する。否であればステップS502に戻り、全て終了した場合には、図5のフローを終了する。
【0032】
以上説明したように、上述の図1〜図7の実施形態によれば、ダイ4の四隅(コーナ)に相当する位置に剥離起点形成ピン51を設け、剥離処理の当初に剥離起点形成ピン51を上昇させ、剥離の起点となる空間を形成することでダイ4にかかるストレスを低減でき、ダイ4が割れることなくその以降による剥離処理が確実に行なうことができる。
‥この結果、ピックアップミスを低減でき、信頼性の高いダイボンダまたはピックアップ方法を提供できる。
【実施例2】
【0033】
図9と図10によって、本発明の実施例2について説明する。なお、図1〜図4、および図6、図7については、実施例2でも使用する。図9は、本発明の実施形態におけるピックアップ動作の処理フローを示すフローチャートである。また図10は、本発明の一実施例のウェハリング内のウェハの中心部と周辺部とのピックアップ時の張力の補正について説明するための図である。
本発明の実施例2は、突上げ時の荷重(反力)を測定して、突上げ時の荷重が一定となるように、突上げ量を可変するものである。
【0034】
図10において、上下機構1002(図4(a)作動体53および駆動軸57)参照。)がブロック本体(図4(a)参照)を上に押上げることで、突上げが行われ、ロードセル1001は、ダイシングフィルム16からの反力(荷重)を測定する。測定された荷重は、図示しない制御装置の制御部に送信される。制御部は、測定された荷重を予め定められた所定の値に制御するため、上下機構1002を制御する。
【0035】
図9は、実施例2におけるピックアップ動作の処理フローを示すフローチャートである。
図9は、図5のフローチャートと下記の点で相違し、他は同一である。同一の処理については、図5で説明したので、省略する。なお、図9の処理フローもまた、制御装置が、ダイボンダおよびピックアップ装置を制御して実行する。
即ち、図9において、ステップS901で実行する初期設定は、1枚のウェハをピックアップ装置にセットしたときに行う。例えば、初期設定では、ボンディングヘッド部32、ウェハリング14、エキスパンドリング15、支持リング17、および突上げユニット50を基準位置(上下方向を含む)に戻すところは図5と同一である。そして、ステップ901では、その他、ウェハリングにセットされたウェハの各ダイについて、良品(OK)であるか不良品(NG)であるかの情報および当該ダイの中心位置座標、および、測定された荷重に対応する突上げ量Z’の情報を有するマッピングテーブルを、外部記憶装置またはROM読込む。なお、上述の初期設定値やマッピングテーブルは、ピックアップ装置を備えたダイボンダを統括制御する制御装置(後述する)の記憶装置(例えば、RAM)に読込まれ、記録される。またROMも上記制御装置の記憶装置の1つである。
【0036】
また、図9において、ステップS504の処理はなく、ステップS503で当該ダイが良品であれば、ステップS505を実行する。
また、ステップS511の替りのステップS911では、ステージ/コレット上昇の処理では、突上げ量が測定される荷重に対応して可変される。
【0037】
この結果、実施例2によれば、事前のマッピング時の張力の測定が不要になる。
【0038】
以上のように本発明の実施形態について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0039】
1:ウェハ供給部、 2:ワーク供給・搬送部、 3:ダイボンディング部、 4、4d:ダイ(半導体チップ)、 10:ダイボンダ、 11:ウェハカセットリフタ、 12:ピックアップ装置、14:ウェハリング、 15:エキスパンドリング、 16:ダイシングフィルム、 17:支持リング、 18:ダイアタッチフィルム、 21:スタックローダ、 22:フレームフィーダ、 23:アンローダ、 31:プリフォーム部、 32:ボンディングヘッド部、 40:コレット部、 41:コレットホルダ、 41v:コレットホルダにおける吸着孔、 42:コレット、 42v:コレットにおける吸着孔、 42t:コレットの鍔、 50:突上げユニット、 51:剥離起点形成ピン、 51a:剥離起点、 52:外側ブロック、 52b:1/2切替えバネ、 52v:外側ブロックとドームヘッドとの隙間、 53:作動体、 54:内側ブロック、 54v:内側ブロックと外側ブックとの隙間、 55:ピン上下リンク、 56:ピン駆動リンク、 56a:ピン駆動リンクの回転支点、 57:駆動軸、 58:ドーム本体、 58a:ドームヘッドにおける吸着孔、 58b:ドームヘッド、 59:ブロック本体、 60:突上げピン、 61:ピンベース、 71:タイミング制御プレート、 72:圧縮バネ、 73:ピン駆動リンク、 74:保持プレート、 1001:ロードセル、 1002:上下機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングフィルムに貼り付けられた複数のダイのうち剥離対象とするダイの前記ダイシングフィルム上の位置に対応する突上げ量の情報を有するマッピングテーブルを参照して、前記ダイの突上げ量を決定し、
前記ダイをコレットで吸着し、
前記ダイの前記ダイシングフィルムを前記決定された突上げ量で突上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離することを特徴とするダイボンダのピックアップ方法。
【請求項2】
請求項1記載のダイボンダのピックアップ方法において、前記マッピングテーブルには、予め前記ダイシングフィルムの張力を測定し、該測定された張力に基づいた突上げ量が記録されることを特徴とするダイボンダのピックアップ方法。
【請求項3】
請求項1記載のダイボンダのピックアップ方法において、前記マッピングテーブルには、予め前記ダイシングフィルムの張力に基づいた突上げ量が記録され、前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離する場合に当該ダイシングフィルムの張力を測定し、前記マッピングテーブルを参照し、前記測定された張力に応じた突上げ量を決定し、前記ダイの前記ダイシングフィルムを前記決定された突上げ量で突上げて前記ダイを前記ダイシングフィルムから剥離するステップ有することを特徴とするダイボンダのピックアップ方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のダイボンダのピックアップ方法において、前記マッピングテーブルは、さらに、当該ダイが良品か不良品かを示す情報を含むことを特徴とするダイボンダのピックアップ方法。
【請求項5】
ウェハリングを保持するエキスパンドリングと、
前記ウェハリングに保持され複数のダイが貼り付けられたダイシングフィルムを保持する保持手段と、
ダイシングフィルムの張力を測定し、前記測定された張力に応じた突上げ量を前記ウェハリングのダイの位置と対応づけて予め記録したマッピングテーブルと、
剥離対象のダイの位置を認識する位置認識手段と、
前記マッピングテーブルを参照して、前記認識された位置に対応する突上げ量を読出し、前記ダイシングフィルムを当該読出された突上げ量で突上げて前記剥離対象のダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、
前記剥離手段の前記突上げを駆動する駆動手段を有する突上げユニットと、を有することを特徴とするダイボンダ。
【請求項6】
ウェハリングを保持するエキスパンドリングと、
前記ウェハリングに保持され複数のダイが貼り付けられたダイシングフィルムを保持する保持手段と、
前記ダイシングフィルムを当該読出された突上げ量で突上げて剥離対象のダイを前記ダイシングフィルムから剥離する剥離手段と、
前記剥離手段の前記突上げを駆動する駆動手段を有する突上げユニットと、
前記剥離手段の前記突上げ反力を測定するロードセルとを有し、
前記剥離手段は、前記測定された反力に基づいて突上げ量を可変することを特徴とするダイボンダ。
【請求項7】
請求項6記載のピックアップ装置において、前記反力に応じた突上げ量を前記ウェハリングのダイの位置と対応づけて予め記録したマッピングテーブルを有し、
前記剥離手段は、前記マッピングテーブルを参照して前記測定された反力に基づいた突上げ量を読み出し、前記ダイシングフィルムを当該読出された突上げ量で突上げて前記剥離対象のダイを前記ダイシングフィルムから剥離することを特徴とするダイボンダ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−199456(P2012−199456A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63532(P2011−63532)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(300022504)株式会社日立ハイテクインスツルメンツ (607)
【Fターム(参考)】