説明

テープ貼付装置

【課題】脆弱な構造物が搭載されたウェハへのテープ貼り付け時の負荷を低減し、ウェハの破損や損傷を防ぐ。
【解決手段】テープ貼付装置1は、チャンバ6に形成された気密空間5を第1及び第2の気密空間7、8に仕切り、上面にウェハ9が載置されるゴムシート10と、ゴムシート10の上方でテープ11を保持するテープフレーム12と、第1及び第2の気密空間7、8に対する気体の供給及び吸引により加圧及び減圧を切り替える給排気機構3とを備え、第1及び第2の気密空間7、8を減圧した後、第2の気密空間8の加圧によりゴムシート10を膨張させてウェハ9をテープ11に貼り付け、第1の気密空間7を加圧してゴムシート10を収縮させる。給排気機構3は、第1の気密空間7の減圧時に、吸引する気体の流量を制御する第1の流量制御弁27と、第1の気密空間7の加圧時に、供給する気体の流量を制御する第2の流量制御弁28とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハへのダイシング用テープの貼り付け等に用いるテープ貼付装置に関し、特に、脆弱な構造を有する貼付対象物にテープを貼り付けるのに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程で半導体ウェハにダイシング用テープを貼り付ける際には、例えば、図17に示すように、基台41上にウェハ42を載置し、表面にゴムが貼着されたローラー44や、円筒状のブロック等でテープ43を上方から押圧して貼り付けていた。しかし、この方法は、大気中での作業となるため、ウェハ42とテープ43との間に空気が混入しやすく、その状態でダイシング(チップ分割)を行うと、チップに割れや欠けが生じるという問題があった。
【0003】
そこで、真空環境下でテープを貼り付ける貼付装置が提案され、例えば、特許文献1には、図18に示すように、内部に気密空間51を有するチャンバ52と、気密空間51を第1及び第2の気密空間53、54に仕切り、上面にウェハ55が載置されるゴムシート56と、ゴムシート56の上方でテープ57を保持するフレーム台58と、第1及び第2の気密空間53、54の気圧状態を真空/大気状態に切り替える第1及び第2の空気流路59、60とを備えたテープ貼付装置50が記載されている。
【0004】
テープ貼付装置50では、第1及び第2の気密空間53、54を真空状態とした後、第2の気密空間54のみを大気圧に切り替え、第1及び第2の気密空間53、54の間で差圧を生じさせる。これにより、ゴムシート56を膨張させてウェハ55を押し上げ、テープ57の接着面(裏側)にウェハ55を当接させる。このテープ貼付装置50によれば、真空環境下でテープ57とウェハ55とを貼り合わせることができ、両者の間に空気が混入するのを防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4143488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電子機器の小型化等に伴い、回路の微細化が進んだ超薄型の半導体チップが普及しており、当然、その元となるウェハにおいても急速な薄型化が進んでいる。こうした薄型のウェハは、元々の強度が低いのに加え、反りが生じやすいため、上下からの押圧や衝撃に対して極めて弱く、テープの貼り付け時に割れや欠けが生じる虞があるという問題があった。そのため、ウェハとテープとの間への空気の混入を防止することに加えて、テープの貼り付け時に加わるウェハへの負荷を低減することができる貼付装置が要望されている。
【0007】
また、最近では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の脆弱な構造物が搭載されたウェハ(以下、「MEMSウェハ」とする)が普及している。MEMSウェハとしては、例えば、図19(a)に示すように、ウェハ9に形成された凹部を覆うようにして薄膜31Aが取り付けられることにより、ウェハ9の内部に気密空間32Aが形成されたものが存在する。また、このようなMEMSウェハとしては、薄膜31Aやウェハ9の一部に貫通孔が形成され、気密空間32Aと外部の空間との間で空気の移動が可能なものも存在する。さらに、例えば、図20(a)に示すように、ウェハ9に形成された貫通部の一方の開口部を覆うようにして薄膜31Bを取り付けたものが存在する。
【0008】
ここで、特許文献1に記載されたテープ貼付装置50を用いて、図19(a)及び図20(a)に示すMEMSウェハにテープ57を貼り付ける場合には、以下に示すような問題があった。
【0009】
テープ貼付装置50では、まず、MEMSウェハにゴムシート56上にMEMSウェハを載置し、第1の気密空間53内の空気を吸引して減圧するが、図19(a)に示すMEMSウェハで、薄膜31A又はウェハ9の一部に貫通孔が形成されたMEMSウェハや、図20(a)に示すMEMSウェハを用いる場合、第1の気密空間53内の空気を急速に吸引すると、第1の気密空間53から流出する空気の速度が非常に速くなる。そのため、第1の気密空間53内の空気の移動により、薄膜31A及び31Bが振動して破損する虞がある。
【0010】
また、テープ貼付装置50では、第1の気密空間53内の空気を吸引することにより真空状態とするが、薄膜31A又はウェハ9の一部に貫通孔が形成されていないMEMSウェハを用いる場合、第1の気密空間53内の空気を吸引することにより、MEMSウェハに形成された気密空間32Aと第1の気密空間53との間に差圧が生じる。そのため、図19(b)に示すように、気密空間32A内の空気が膨張して薄膜31Aに対して気密空間32A側から圧力が印加され、薄膜31Aが第1の気密空間53側に押し上げられる。そして、薄膜31Aに対する気密空間32A側からの圧力が限界に達すると、薄膜31Aが破損する虞がある。
【0011】
さらに、図20(a)に示すMEMSウェハにテープ57を取り付ける場合には、真空状態とされた第1の気密空間53内でウェハ9の貫通部の他方の開口部を覆うようにしてテープ57が取り付けられる。これにより、MEMSウェハの貫通部は、薄膜31B及びテープ57により覆われるため、内部が真空状態である気密空間32Bが形成される。
【0012】
このような状態で、第1の気密空間53内に空気を供給して大気圧まで加圧すると、気密空間32Bと第1の気密空間53との間に差圧が生じる。そのため、図20(b)に示すように、薄膜31Aに対して第1の気密空間53側から圧力が印加され、薄膜31Bが気密空間32B側に収縮する。そして、薄膜31Bに対する第1の気密空間53側からの圧力が限界に達すると、薄膜31Bが破損する虞がある。
【0013】
このように、特許文献1に記載のテープ貼付装置50を用いてMEMSウェハに対してテープ57を貼り付ける場合には、テープ57の貼付工程の前後で第1の気密空間53に対して気圧状態を切り替える際に、MEMSウェハに搭載された脆弱な構造物の破損を招く虞があるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、脆弱な構造物が搭載された貼付対象物にテープを貼り付ける際に、貼付対象物に対する負荷を低減し、貼付対象物の破損や損傷を防止することが可能なテープ貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明は、内部に気密空間を有する容器と、前記気密空間を、上方に位置する第1の気密空間と下方に位置する第2の気密空間とに仕切り、該第1の気密空間側にテープ貼付対象物が載置される弾性シートと、前記第1の気密空間内でテープを保持し、該テープを前記弾性シートに載置されたテープ貼付対象物から所定の距離を隔てて位置させるテープ保持部材と、前記第1及び第2の気密空間に対する気体の供給及び吸引により加圧及び減圧を切り替える気圧切替手段とを備え、前記第1及び第2の気密空間を減圧して真空状態とした後、前記第2の気密空間を加圧して前記弾性シートを膨張させ、前記テープ貼付対象物を押し上げて前記テープに貼り付け、前記第1の気密空間を加圧して前記弾性シートを収縮させるテープ貼付装置であって、前記気圧切替手段は、該第1の気密空間の気体を吸引する際の該気体の流量を制御する第1の流量制御手段と、該第1の気密空間に気体を供給する際の該気体の流量を制御する第2の流量制御手段とを有し、前記第1の気密空間を減圧する際に、前記第1の流量制御手段により流量を制御した状態で前記第1の気密空間の前記気体を吸引し、前記第1の気密空間を加圧する際に、前記第2の流量制御手段により流量を制御した状態で前記第1の気密空間に対して前記気体を供給することを特徴とする。
【0016】
そして、本発明によれば、貼付対象物へのテープ貼り付けに先立ち、第1の気密空間を減圧する際に流量を制御した状態で第1の気密空間の気体を吸引するとともに、貼付対象物へのテープ貼り付けの後、第1の気密空間を加圧する際に流量を制御した状態で第1の気密空間に対して気体を供給するため、気体の移動によって貼付対象物に搭載された脆弱な構造物の破損や損傷を防止することができる。
【0017】
上記テープ貼付装置において、前記第1の気密空間の真空度を検出する真空度検出手段を備え、検出された前記第1の気密空間の真空度が所定の真空度となるまで、前記第1の気密空間を減圧することができる。
【0018】
上記テープ貼付装置において、前記テープ貼付対象物は、第1の内部気密空間が形成され、前記所定の真空度は、前記第1の気密空間の減圧により生じる、前記第1の内部気密空間と前記第1の気密空間との間の差圧により、前記テープ貼付対象物を破損させない真空度とすることができる。これにより、第1の気密空間の減圧時における貼付対象物に搭載された脆弱な構造物の破損や損傷を防止することができる。
【0019】
上記テープ貼付装置において、前記テープ貼付対象物は、前記テープの貼付により第2の内部気密空間が形成され、前記所定の真空度は、前記第1の気密空間の加圧により生じる、前記第2の内部気密空間と前記第1の気密空間との間の差圧により、前記テープ貼付対象物を破損させない真空度とすることができる。これにより、第1の気密空間の加圧時における貼付対象物に搭載された脆弱な構造物の破損や損傷を防止することができる。
【0020】
上記テープ貼付装置において、前記テープ貼付対象物の押し上げに際し、前記第2の気密空間の加圧量を制御して前記弾性シートの膨張速度を低速から高速に向けて段階的に変化させながら、前記テープ貼付対象物を前記テープに貼り付けることができる。これにより、貼付対象物への負荷を最小限に抑えた状態でテープを貼り付けることができる。このため、低剛性の貼付対象物であっても、貼付対象物の破損や損傷を防止しつつ、テープを貼り付けることができる。
【0021】
上記テープ貼付装置において、前記テープ貼付対象物と前記テープの当接面積が所定量に達するまで、破損しない押し付け圧で該テープ貼付対象物を前記テープに押し付け可能な第1の速度によって前記弾性シートを膨張させ、その後、該弾性シートの膨張速度を前記第1の速度よりも速い第2の速度に切り替え、前記テープ貼付対象物の貼付面の全体を前記テープに当接させることができる。これにより、貼付対象物に過大な負荷をかけることなく、貼付対象物とテープとの貼着領域を拡大させることができる。
【0022】
上記テープ貼付装置において、前記第1の速度で弾性シートを膨張させるのに先立ち、該第1の速度よりも遅い第3の速度で前記弾性シートを膨張させ、前記テープ貼付対象物の中心部を前記テープに当接させることができる。これにより、貼付対象物の姿勢や位置を不動に保ったまま、貼付対象物とテープとを確実に接触させることができる。
【0023】
上記テープ貼付装置において、前記第1及び第2の気密空間を真空状態とした後、該第1の気密空間の真空状態を維持したまま該第2の気密空間を閉塞することで、前記第3の速度で前記弾性シートを膨張させることができる。
【0024】
上記テープ貼付装置において、前記第2の速度で弾性シートを膨張させる際に、前記テープ貼付対象物と前記テープが当接した状態で、これらを押し上げ、前記気密空間の天井面に押し当てることができる。これにより、貼付対象物の反りを矯正すると共に、貼付対象物とテープとの密着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、脆弱な構造物が搭載された貼付対象物にテープを貼り付ける際に、貼付対象物に対する負荷を低減し、貼付対象物の破損や損傷を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかるテープ貼付装置の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】図1の第2の給排気管の開口部を示す拡大図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】図1のスペーサを示す拡大図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のC−C線断面図である。
【図4】図1のゴムシート及び押さえリングを示す拡大図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のB−B線における押さえリングの断面図である。
【図5】図1のテープ貼付装置を用いたテープ貼付方法の手順を示すメインフローチャートである。
【図6】テープを貼り付ける際の工程図であり、真空引き工程を示す図である。
【図7】テープを貼り付ける際の工程図であり、窒素注入工程を示す図である。
【図8】真空引き工程時の窒素注入手順を示すサブフローチャートである。
【図9】テープを貼り付ける際の工程図であり、低速貼付工程を示す図である。
【図10】テープを貼り付ける際の工程図であり、中速貼付工程を示す図である。
【図11】テープを貼り付ける際の工程図であり、高速貼付工程を示す図である。
【図12】テープを貼り付ける際の工程図であり、安定化工程を示す図である。
【図13】テープを貼り付ける際の工程図であり、ゴム収縮工程を示す図である。
【図14】テープを貼り付ける際の工程図であり、ゴム平坦化工程を示す図である。
【図15】図4のスペーサの作用効果を説明するための略線図であり、(a)はスペーサを設けない場合、(b)はスペーサを設けた場合の図である。
【図16】第1及び第2の気密空間の圧力状態の遷移を示す略線図である。
【図17】従来のテープ貼付方法の一例を示す略線図である。
【図18】従来のテープ貼付方法の他の例を示す略線図である。
【図19】MEMSウェハの一例を示す略線図である。
【図20】MEMSウェハの他の例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明にかかるテープ貼付装置の一実施の形態を示し、このテープ貼付装置1は、大別して、装置本体2と、装置本体2に空気(クリーンエア)及び窒素を供給したり、装置本体2から空気等を吸引する給排気機構3と、空気等の給排タイミングを制御する制御部4とで構成される。
【0029】
装置本体2は、貼付操作を行うための装置であり、例えば円筒状に形成される。この装置本体2は、内部に気密空間5を有するチャンバ(容器)6と、気密空間5を第1の気密空間7と第2の気密空間8とに仕切り、上面に円板状のウェハ9が載置されるゴムシート10と、ゴムシート10の上方でテープ11を保持するテープフレーム12と、第1の気密空間7に窒素を供給したり、第1の気密空間7から空気を吸引するための第1の給排気管13と、第2の気密空間8に空気を供給したり、第2の気密空間8から空気を吸引するための第2の給排気管14と、気密空間5の真空度を検出する真空度センサ15等を備える。
【0030】
チャンバ6は、2つ割りに形成された上側チャンバ(上蓋)6a及び下側チャンバ(基台)6bから構成され、上側チャンバ6aの内側には、上方に向けて窪む凹部が形成される。上側及び下側チャンバ6a、6bの間には、気密空間5の気密性を確保するためのシールリング16が配置される。
【0031】
下側チャンバ6bの内部には、上述の第1及び第2の給排気管13、14が敷設され、これらの管のうち、第2の給排気管14の開口部には、図2に示すように、多数の小孔が穿設されたメッシュ蓋14aが付設される。これは、第2の給排気管14への後述するゴムシート10の吸い込みを防止しながら、空気吸引時の有効断面積(第2の給排気管14の径)を拡大させるためである。
【0032】
また、下側チャンバ6bの上面には、図1に示すように、所定の高さを有する複数のスペーサ17が形成され、これらスペーサ17は、図3に示すように、第2の給排気管14の開口部を中心とした十字状に配置される。
【0033】
さらに、下側チャンバ6bの上面には、図1に示すように、伸縮自在なゴムシート10が設置される。ゴムシート10は、例えば、クロロプレンゴムやエチレンプロピレンゴム等の気体遮断性に優れた弾性体によって形成することが好ましい。尚、ゴムシート10の損傷を防止するため、スペーサ17も、ゴムシート10と同様の材料によって形成することが好ましい。
【0034】
ゴムシート10の周縁部上には、図4に示すように、上面視円環状の押さえリング18が設置され、押さえリング18が下側チャンバ6bにねじ止めされることによって、ゴムシート10が固定される。押さえリング18には、複数の溝19が形成され、これらの溝19によって、押さえリング18の内側空間7aと外側空間7bとが連通される。尚、溝19は、後述するテープフレーム12に形成してもよいし、押さえリング18及びテープフレーム12の双方に形成してもよい。
【0035】
押さえリング18の上面には、図1に示すように、上面視円環状のテープフレーム12が載置される。テープフレーム12の上面には、UV(UltraViolet:紫外線)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の接着剤が裏面に塗布されたテープ11が貼り付けられる。テープ11は、一定の張りが与えられた状態で貼着され、これにより、テープ11の歪みや皺が防止される。
【0036】
尚、テープ11の取り付けは、テープフレーム12の上面への貼り付けに限らず、2枚のフレームによってテープ11を表裏から挟み込むようにしてもよく、テープ11に歪みや皺を生じさせないものであれば如何なる態様でもよい。
【0037】
ウェハ9は、例えば、脆弱な構造物が搭載されたMEMSウェハであり、図19(a)に示すように、エッチング等により凹部が形成され、この凹部を覆うようにして薄膜31Aが取り付けられることにより、内部に気密空間32Aが形成される。尚、薄膜31Aやウェハ9の一部に貫通孔が形成され、気密空間32Aと外部の空間との間で気体の移動が可能となるようにしてもよい。
【0038】
また、ウェハ9としては、例えば、図20(a)に示すように、ウェハ9にエッチング等により貫通部が形成され、この貫通部の一方の開口部を覆うようにして薄膜31Bを取り付けたものを用いることもできる。図19(a)及び図20(a)に示すウェハ9では、薄膜31A及び31Bが取り付けられた面に対向する面がテープ11を貼り付けるためのテープ貼付面となる。
【0039】
給排気機構3は、窒素を供給する窒素供給源21と、空気を供給する空気供給源22と、空気や窒素を吸引する真空ポンプ23と、窒素供給源21及び真空ポンプ23と第1の給排気管13との間に設置される第1の電磁弁24と、空気供給源22及び真空ポンプ23と第2の給排気管14との間に設置される第2の電磁弁25と、第2の電磁弁25と空気供給源22の間に設置される第3の電磁弁26と、第1の電磁弁24と真空ポンプ23との間に設置される第1の流量制御弁27と、第1の電磁弁24と窒素供給源21との間に設置される第2の流量制御弁28と、第2の電磁弁25と第3の電磁弁26との間に設置される第3の流量制御弁29とから構成される。
【0040】
第1の電磁弁24は、第1の給排気管13を第1の流量制御弁27(真空ポンプ23)又は第2の流量制御弁28(窒素供給源21)に選択的に接続するために備えられ、第2の電磁弁25は、第2の給排気管14を第3の電磁弁26又は真空ポンプ23に選択的に接続するために備えられる。また、第3の電磁弁26は、第2の給排気管14を第3の流量制御弁29又は空気供給源22に選択的に接続するために備えられる。
【0041】
第1の流量制御弁27は、真空ポンプ23に吸引される空気等の流量を制御するために備えられ、第2の流量制御弁28は、窒素供給源21から供給される窒素の流量を制御するために備えられる。また、第3の流量制御弁29は、空気供給源22から供給される空気の流量を制御するために備えられる。
【0042】
第1及び第2の流量制御弁27、28により制御される空気等の流量は、設定により変化させることができ、このテープ貼付装置1を用いたテープ貼付を行う際に予め設定される。第1及び第2の流量制御弁27、28によって吸引又は供給される空気等の流量を制御することにより、第1の気密空間7の減圧/加圧速度を変化させることができる。
【0043】
第1及び第2の流量制御弁27、28に設定される流量は、テープ11を貼り付けるウェハ9の状態に応じて設定することができる。例えば、ウェハ9として図19又は図20に示すような、脆弱な構造物(薄膜31A又は31B)が搭載されたMEMSウェハを用いる場合には、空気等の供給/吸引により生じる圧力により、脆弱な構造物を破損させない程度の流量に設定される。尚、破損しない圧力は、脆弱な構造物の厚さや形状等に基づく耐圧によって異なるため、実運転時の流量は、使用するウェハ9の状態に応じて適宜定める。
【0044】
制御部4は、真空度センサ15の出力や内蔵するタイマ4aの出力に応じて第1〜第3の電磁弁24〜26の動作を制御し、装置本体2の第1及び第2の気密空間7、8の加圧/減圧を制御するために備えられる。
【0045】
次に、上記構成を有するテープ貼付装置1を用いた貼付方法について、図1〜図14を参照しながら、以下に示す工程の順序に従って説明する。尚、ここでは、テープ11の接着剤にUV硬化性樹脂を用いた場合を例にとって説明する。
(1)初期状態
(2)真空引き工程
(3)低速貼付工程
(4)中速貼付工程
(5)高速貼付工程
(6)安定化工程
(7)ゴム収縮工程
(8)ゴム平坦化工程
【0046】
(1)初期状態
先ず、図1において、第2の電磁弁25を真空ポンプ23側に開いて第2の気密空間(ゴムシート10の下方に位置する気密空間)8を減圧雰囲気化し、その状態で、上側チャンバ6aを開き、ウェハ9をゴムシート10の上面中央に、テープ貼付面が上面側に位置するように載置する。次いで、テープ11の裏面(接着面)をテープフレーム12の上面に貼り付けるとともに、テープ11を貼り付けたテープフレーム12を押さえリング18上に載置する。
【0047】
(2)真空引き工程
上側チャンバ6aを閉じた後、図6に示すように、第1の電磁弁24を真空ポンプ23側に開き、第1の給排気管13を第1の流量制御弁27を介して真空ポンプ23に接続する。これにより、第1の流量制御弁27によって流量を制御した状態で、第1の気密空間(ゴムシート10の上方に位置する気密空間)7から空気を吸引し、減圧雰囲気化する(図5のステップS1)。
【0048】
ここで、ウェハ9として図19に示すMEMSウェハを用いた場合には、この真空引き工程により、ウェハ9に形成された気密空間32Aと第1の気密空間7との間に差圧が生じるため、脆弱な構造物である薄膜31Aに対して負荷がかかり、薄膜31Aを破損させる虞がある。そこで、本実施の形態では、真空度センサ15により第1の気密空間7の真空度を検出し、検出した真空度が予め設定された所定の真空度を超えないように、第1の気密空間7を減圧させる。
【0049】
予め設定される真空度は、ウェハ9として図19又は図20に示すMEMSウェハを用いる場合に、上述した真空引き工程や後述するゴム収縮及び平坦化工程において、MEMSウェハに形成される気密空間32A又は32Bと、第1の気密空間7との間の真空度の違いによって生じる差圧により、脆弱な構造物(薄膜31A又は31B)を破損させない程度の真空度とされる。尚、破損しない真空度は、脆弱な構造物の厚さや形状等によって異なるため、実運転時の真空度は、使用するウェハ9の状態に応じて適宜定める。
【0050】
このとき、図7に示すように、第1の電磁弁24を断続的に第2の流量制御弁28側に開き、第1の気密空間7に第2の流量制御弁28を介して流量を制御した状態で窒素を注入する。このように、第1及び第2の流量制御弁27、28により第1の気密空間7に対して吸引/供給される空気等の流量を制御するのは、上述の背景技術の項で説明したように、第1の気密空間7内の空気等の急速な移動により、ウェハ9に搭載された脆弱な構造物の破損を防止するためである。
【0051】
また、第1の気密空間7に窒素を注入するのは、第1の気密空間7の酸素濃度を低下させ、酸素濃度が低い環境下で貼付作業を進めるためのものである。UV硬化性樹脂は、嫌気性が強く、酸素濃度が高い環境下で貼り合わせると、硬化作用が低下するため、後の工程で紫外線を照射した際に、未硬化のUV硬化性樹脂が残存するようになる。その場合、ダイシング後のウェハ9(チップ)をテープ11から剥がす際に、チップが剥がれ難くなるため、上記のように、第1の気密空間7に窒素を注入して酸素濃度を低下させ、UV硬化性樹脂の硬化作用の低下を防止する。
【0052】
窒素注入の作業は、図8に示すように行うことができ、具体的には、第1の気密空間7から空気を吸引した状態で第1の気密空間7の真空度が第1の設定真空度に達したら、第1の給排気管13を窒素供給源21に接続し、第1の気密空間7に窒素を注入する(ステップS11〜S13)。そして、第1の気密空間7の真空度が第2の設定真空度に達するまで窒素を注入し続け、第2の設定真空度に達した時点で窒素の注入回数が設定回数に達したか否かを判別する(ステップS14〜S15)。判別の結果、設定回数に達していれば、改めて真空引きを行って窒素を吸引し(ステップS16)、第1の気密空間7の残留酸素濃度を1%以下とした状態で同空間7を減圧雰囲気化する。ここで、第1の設定真空度、第2の設定真空度は、上述した所定の真空度を超えない範囲で任意に設定することができる。また、設定回数についても任意に設定することができる。
【0053】
尚、窒素注入の工程は、上記の通り、UV硬化性樹脂の特性に配慮したものであるため、UV硬化樹脂以外の接着剤を用いる場合には省略することができる。
【0054】
(3)低速貼付工程
次いで、図9に示すように、第1の気密空間7の真空圧を保持した状態で、第2の電磁弁25を閉じて第2の給排気管14を閉塞し、第2の気密空間8を密閉する。この際、第2の気密空間8では、自然リークが発生して若干の空気が流れ込むため、第1及び第2の気密空間7、8の間に僅かな差圧が発生する。
【0055】
その結果、ゴムシート10が緩やかに膨らみ、ゴムシート10上のウェハ9をゆっくりと押し上げる。こうした低速での押し上げにより、ウェハ9をテープ11の接着面に当接させ(図5のステップS2)、ウェハ9の中心が最初にテープ11と接触するようにする。
【0056】
すなわち、ウェハ9をゴムシート10のような不安定な土台に載置させる場合、高速で押し上げると、ウェハ9の姿勢が乱れて傾いたり、ウェハ9がゴムシート10上で滑って位置が変位し易くなるが、ゆっくりと押し上げることによって、ウェハ9の姿勢や位置を不動に保ったまま、ウェハ9をテープ11と接触させることができ、確実にウェハ9の中心から貼り付けを行うことが可能になる。
【0057】
(4)中速貼付工程
次に、図10に示すように、第2の電磁弁25を空気供給源22側に開くとともに、第3の電磁弁26を第3の流量制御弁29側に開き、流量を制御した状態で空気を第2の給排気管14に供給する。これにより、第2の気密空間8を加圧雰囲気とし、第1及び第2の気密空間7、8の間の差圧を大きくして、ゴムシート10の膨張速度を低速から中速に変化させる(図5のステップS3)。
【0058】
この中速貼付は、後述の高速貼付と比較すると、ゴムシート10の膨張速度が遅く、ウェハ9の押し上げ圧が低いものであり、本工程では、テープ11へのウェハ9の押し付けを低圧で行うことで、ウェハ9に過大な負荷を掛けずに、テープ11とウェハ9の貼着領域を拡げていく。
【0059】
ウェハ9がテープ11に当接した部分では、テープ11がウェハ9に貼り付いてウェハ9を補強するため、ウェハ9の割れや欠けが抑制されるようになる。本工程は、ウェハ9への負荷を最小限に抑えながら、上記のような補強される領域を拡げるためのものであり、ウェハ9とともにテープ11及びテープフレーム12を押し上げ、例えば、ウェハ9の上面の5割〜7割程度をテープ11に当接させる。
【0060】
尚、中速貼付時のゴムシート10の膨張速度(膨張圧)は、ウェハ9を破損させない押し付け圧でテープ11に押し付け可能な速度(膨張圧)に設定される。但し、破損しない押し付け圧は、ウェハ9の厚さや形状(反りの具合)等によって異なるため、実運転時の速度は、使用するウェハ9の状態に応じて適宜定める。
【0061】
(5)高速貼付工程
貼着領域がウェハ上面の5割〜7割程度に達し、ウェハ9の割れや欠けの危険性が低くなった段階で、図11に示すように、第3の電磁弁26を第2の電磁弁25側に開き、第1及び第2の気密空間7、8の間の差圧をさらに大きくする。これにより、ゴムシート10の膨張速度を中速から高速に変化させ(図5のステップS4)、テープ11へのウェハ9の押し付け圧を増加させる。この高速貼付により、ウェハ9の上面全体をテープ11に貼り付ける。
【0062】
また、高速貼付に際しては、テープ11及びウェハ9を上側チャンバ6aの天井面に押し当て、ウェハ9の反りを矯正するとともに、ウェハ9とテープ11の密着性を高める。このとき、テープ11がウェハ9の上面を保護する保護部材として機能するため、ウェハ9の表面が損傷することはない。
【0063】
このように、テープ貼付装置1では、ウェハ9をテープ11に貼り付ける際に、ゴムシート10の膨張速度を低速から高速へ段階的に切り替えながら貼り付けるため、ウェハ9への負荷を最小限に抑えた状態で貼り付けることができる。これにより、低剛性のウェハ9であっても、ウェハ9の破損や損傷を防止しつつ、テープ11を貼り付けることができる。
【0064】
また、テープ貼付装置1では、低速貼付を行い、ウェハ9の中心を最初にテープ11と接触させるため、以後の中速貼付及び高速貼付において、ウェハ9の中心から外周に向けて順番に貼着していくことができる。そのため、ウェハ9とテープ11の間に空気が存在した場合でも、空気を外側に逃がしながらウェハ9をテープ11に貼り付けていくことができ、両者の間に空気が混入するのを防止することができる。
【0065】
尚、上記の低速貼付、中速貼付及び高速貼付の切り替えは、自動制御により行うことができ、例えば、制御部4に内蔵するタイマ4aを利用し、時間経過に応じて切り替えるように構成することができる。
【0066】
(6)安定化工程
次に、図12に示すように、第1及び第2の電磁弁24、25を閉じて第1及び第2の給排気管13、14を閉塞し、第1及び第2の気密空間7、8を密閉する。こうして、ウェハ9をテープ11に押し付けた状態を所定の時間に亘って維持し、テープ11とウェハ9の接着を安定させる(図5のステップS5)。
【0067】
(7)ゴム収縮工程
次いで、図13に示すように、第2の電磁弁25を閉じたままで、第1の電磁弁24を第2の流量制御弁28側に開き、第1の気密空間7に第2の流量制御弁28を介して流量を制御した状態で窒素を供給する。これにより、低速でゴムシート10を収縮させ、テープ11、ウェハ9及びテープフレーム12を緩やかに下降させる(図5のステップS6)。このように、第2の流量制御弁28により第1の気密空間7に供給される窒素の流量を制御するのは、第1の気密空間7内の窒素の急速な移動により、ウェハ9に搭載された脆弱な構造物の破損を防止するためである。
【0068】
そして、テープフレーム12が押さえリング18に当接した後も、低速でのゴムシート10の収縮を継続して、ゴムシート10をウェハ9の下面から緩やかに剥離する。これにより、ゴムシート10の剥離時に、ウェハ9に大きな引っ張り荷重が加わるのを防止する。
【0069】
(8)ゴム平坦化工程
次に、図14に示すように、第2の電磁弁25を真空ポンプ23側に開き、第2の気密空間8から空気を吸引する。これにより、高速でゴムシート10を収縮させ、平坦化させる(図5のステップS7)。最後に、上側チャンバ6aを開いて、ウェハ9が貼り付いた状態のテープ11をテープフレーム12とともに取り出し、作業が完了する。
【0070】
尚、ウェハ9として図20に示すMEMSウェハを用いた場合、図13及び図14に示すゴム収縮及び平坦化工程では、一連のテープ貼付工程(図9〜図12)でウェハ9にテープ11が貼り付けられることによって形成される気密空間32Bと、第1の気密空間7との間の真空度の違いにより差圧が生じるため、脆弱な構造物である薄膜31Bに対して負荷がかかり、薄膜31Bを破損させる虞がある。
【0071】
しかしながら、本実施の形態では、真空引き工程(図6)で第1の気密空間7を減圧する際に、第1の気密空間7の真空度が脆弱な構造物を破損させない程度の真空度となるようにするため、脆弱な構造物を破損させることなく第1の気密空間を加圧することができる。
【0072】
ここで、テープ貼付装置1では、図3に示すように、第2の給排気管14の開口部を中心として十字状に配置された複数のスペーサ17を下側チャンバ6bの上面に形成するため、第2の気密空間8を減圧雰囲気とする際に、空気が残留するのを防止することができる。
【0073】
すなわち、スペーサ17を設けない場合には、図15(a)に示すように、第2の給排気管14を通じて空気を吸引する際に、ゴムシート10が第2の給排気管14に吸い込まれ、第2の給排気管14の開口部が閉塞される。その結果、第2の気密空間8から空気を吸引できなくなり、空気が残存するようになる。
【0074】
こうした状態が、例えば、図5のステップS1の真空引き時に発生すると、第2の気密空間8が第1の気密空間7に対して正圧となり、ゴムシート10を完全に平坦化できなくなる。また、その状態で図5のステップS2の低速貼付工程に移行すると、第2の気密空間8が第1の気密空間7に対して正圧となっていることから、第2の気密空間8の空気吸引を解除した途端、ゴムシート10が比較的に速い速度で膨張し始め、意図するよりも高速でウェハ9が押し上げられるようになる。このことは、図5のステップS3の中速貼付工程に移行した際にも同様に生じ、テープ11へのウェハ9の押し付け圧を適切に制御できなくなる。
【0075】
これに対し、スペーサ17を設けた場合には、図15(b)に示すように、第2の給排気管14を通じて空気を吸引しても、ゴムシート10がスペーサ17に当接し、第2の給排気管14への吸い込みが妨げられる。このとき、第2の気密空間8内の空気は、図3の矢印Dに示すように、隣り合うスペーサ17の合間から第2の給排気管14に流入するため、スペーサ17によって第2の気密空間8からの空気吸引が妨げられることもない。
【0076】
このように、スペーサ17を設けることで、図5のステップS1の真空引き時に第2の気密空間8に空気が残留するのを防止することができ、以後のステップS2、S3の工程において、ウェハ9の押し上げ速度や、テープ11へのウェハ9の押し付け圧を適切に制御することができる。
【0077】
尚、スペーサ17の高さは、特に限定されるものでなく、第2の気密空間8からの空気吸引圧やゴムシート10の材質に応じて適宜定めることができる。また、スペーサ17の配置形状は、十字状に限定されるものでなく、例えば、第2の給排気管14の開口部を中心とした放射状等の他の形状とすることもでき、さらには、特に規則性を持たせることなく、第2の給排気管14の開口部の周辺に複数のスペーサ17を離散的に配置するようにしてもよい。
【0078】
図16は、図1、図6、及び図9〜図14に示す各工程における第1及び第2の気密空間7、8の圧力状態の遷移を示す。尚、図16においては、本実施の形態によるテープ貼付装置1における圧力状態の遷移の様子がより明確となるように、参考例として、第1及び第2の流量制御弁27、28を用いない場合における圧力状態の遷移の様子を併せて例示した。
【0079】
まず、図1に示す初期状態においては、ゴムシート10上にウェハ9を載置する際に上側チャンバ6aを開くため、第1の気密空間7の圧力は、大気圧と同等の圧力となる。また、第2の気密空間8の圧力は、真空ポンプ23による空気の吸引によって減圧されるため、所定の圧力となる。
【0080】
次に、図6に示す真空引き工程においては、第1の気密空間7の空気が第1の流量制御弁27によって流量が制御された状態で真空ポンプ23によって吸引されるため、第1の気密空間7は、参考例における減圧速度と比較して緩やかな速度で減圧される。
【0081】
次に、図9〜図12に示す低速貼付工程〜安定化工程において、第1の気密空間7は、空間内の空気等が真空引き工程における流量で継続して吸引されるため、引き続き、真空引き工程における減圧速度で緩やかに減圧される。
【0082】
ここで、第1の気密空間7に対する減圧は、第1の気密空間7の真空度がウェハ9に搭載される脆弱な構造物の耐圧等に応じて設定された所定の真空度を超えないように行われる。このときの第1の気密空間7の圧力は、大気圧に限りなく近い値(例えば、50000〜100000Pa)となる。
【0083】
また、第2の気密空間8は、低速貼付工程における自然リークによる空気の供給と、中速及び高速貼付工程における空気供給源22からの空気の供給とにより加圧され、大気圧と同程度の圧力となる。
【0084】
次に、図13及び図14に示すゴム収縮工程及びゴム平坦化工程において、第1の気密空間7には、第2の流量制御弁28を介して流量が制御された状態で窒素が供給されるため、参考例における加圧速度と比較して緩やかな速度で加圧される。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、ウェハ9にテープ11を貼り付ける前の真空引き工程において、第1の流量制御弁27によって流量を制御した状態で第1の気密空間7の空気を吸引し、第1の気密空間7を緩やかに減圧させるため、第1の気密空間7内の空気の移動によるウェハ9に搭載された脆弱な構造物の破損を防止することが可能になる。
【0086】
また、本実施の形態によれば、ウェハ9にテープ11を貼り付けた後のゴム収縮及び平坦化工程において、第2の流量制御弁28によって流量を制御した状態で第1の気密空間7に窒素を供給し、第1の気密空間7を緩やかに加圧させるため、第1の気密空間7内の空気の移動によるウェハ9に搭載された脆弱な構造物の破損を防止することが可能になる。
【0087】
さらに、本実施の形態によれば、第1の気密空間7の減圧を予め設定された所定の真空度となるまで行うため、真空引き工程で第1の気密空間7を減圧した際に、ウェハ9に予め形成された気密空間32Aと第1の気密空間7との間の真空度の違いによって生じる差圧による、ウェハ9に搭載された脆弱な構造物の破損を防止することが可能になると共に、ゴム収縮及び平坦化工程で第1の気密空間7を加圧した際に、テープ貼付工程でウェハ9に形成される気密空間32Bと、第1の気密空間7との間の真空度の違いによって生じる差圧による、ウェハ9に搭載された脆弱な構造物の破損を防止することが可能になる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0089】
例えば、上記実施の形態においては、本発明にかかるテープ貼付装置を半導体ウェハへのダイシング用テープの貼り付けに適用した場合を例示したが、本発明は、例えば、ガラス板に保護用テープを貼り付ける場合等、低剛性の貼付対象物に対してテープを貼り付ける場合であれば、実施形態で例示した場合以外にも広く適用することが可能である。
【0090】
また、上記実施の形態においては、低速貼付、中速貼付及び高速貼付の三段階の速度切り替えでウェハ9をテープ11に貼り付けるが、十分な厚みを有するウェハ9の場合や、ゴムシート10の材質が滑り難いものである場合には、低速貼付を省略し、中速貼付から操作を始めるようにしてもよい。
【0091】
さらに、上記実施の形態においては、低速貼付に際し、第2の気密空間8側の自然リークを利用してゴムシート10をゆっくり膨張させるが、必ずしも自然リークを利用する必要はなく、中速貼付時よりも少量の空気を第2の気密空間8に供給することで、ゴムシート10の膨張速度を低速化してもよい。
【0092】
また、上記実施の形態においては、第1及び第2の気密空間7、8に気体を供給する供給源として窒素供給源21及び空気供給源22を備えるが、第1及び第2の気密空間7、8に供給する気体は、第1及び第2の気密空間7、8の加圧及び減圧を行い得るものであれば足り、窒素、空気以外の気体であってもよい。
【0093】
さらに、上記実施の形態においては、半導体ウェハの一般形状に合わせて、装置本体2、ゴムシート10及びテープフレーム12が、各々、円筒状、円状及び円環状に形成されるが、装置本体2等の形状は、これらに限られるものではなく、例えば、矩形状等の他の形状を採ることもできる。
【0094】
また、上記実施の形態においては、第1及び第2の気密空間7、8のいずれでも、気体を供給する供給口と吸引する吸引口とを共有化しているが、これらは別個に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 テープ貼付装置
2 装置本体
3 給排気機構
4 制御部
4a タイマ
5 気密空間
6 チャンバ
6a 上側チャンバ
6b 下側チャンバ
7 第1の気密空間
7a 内側空間
7b 外側空間
8 第2の気密空間
9 ウェハ
10 ゴムシート
11 テープ
12 テープフレーム
13 第1の給排気管
14 第2の給排気管
14a メッシュ蓋
15 真空度センサ
16 シールリング
17 スペーサ
18 押さえリング
19 溝
21 窒素供給源
22 空気供給源
23 真空ポンプ
24 第1の電磁弁
25 第2の電磁弁
26 第3の電磁弁
27 第1の流量制御弁
28 第2の流量制御弁
29 第3の流量制御弁
31(31A、31B) 薄膜
32(32A、32B) 気密空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に気密空間を有する容器と、前記気密空間を、上方に位置する第1の気密空間と下方に位置する第2の気密空間とに仕切り、該第1の気密空間側にテープ貼付対象物が載置される弾性シートと、前記第1の気密空間内でテープを保持し、該テープを前記弾性シートに載置されたテープ貼付対象物から所定の距離を隔てて位置させるテープ保持部材と、前記第1及び第2の気密空間に対する気体の供給及び吸引により加圧及び減圧を切り替える気圧切替手段とを備え、
前記第1及び第2の気密空間を減圧して真空状態とした後、前記第2の気密空間を加圧して前記弾性シートを膨張させ、前記テープ貼付対象物を押し上げて前記テープに貼り付け、前記第1の気密空間を加圧して前記弾性シートを収縮させるテープ貼付装置であって、
前記気圧切替手段は、
該第1の気密空間の気体を吸引する際の該気体の流量を制御する第1の流量制御手段と、
該第1の気密空間に気体を供給する際の該気体の流量を制御する第2の流量制御手段とを有し、
前記第1の気密空間を減圧する際に、前記第1の流量制御手段により流量を制御した状態で前記第1の気密空間の前記気体を吸引し、
前記第1の気密空間を加圧する際に、前記第2の流量制御手段により流量を制御した状態で前記第1の気密空間に対して前記気体を供給することを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
前記第1の気密空間の真空度を検出する真空度検出手段を備え、
検出された前記第1の気密空間の真空度が所定の真空度となるまで、前記第1の気密空間を減圧することを特徴とする請求項1に記載のテープ貼付装置。
【請求項3】
前記テープ貼付対象物は、第1の内部気密空間が形成され、
前記所定の真空度は、前記第1の気密空間の減圧により生じる、前記第1の内部気密空間と前記第1の気密空間との間の差圧により、前記テープ貼付対象物を破損させない真空度とすることを特徴とする請求項2に記載のテープ貼付装置。
【請求項4】
前記テープ貼付対象物は、前記テープの貼付により第2の内部気密空間が形成され、
前記所定の真空度は、前記第1の気密空間の加圧により生じる、前記第2の内部気密空間と前記第1の気密空間との間の差圧により、前記テープ貼付対象物を破損させない真空度とすることを特徴とする請求項2に記載のテープ貼付装置。
【請求項5】
前記テープ貼付対象物の押し上げに際し、前記第2の気密空間の加圧量を制御して前記弾性シートの膨張速度を低速から高速に向けて段階的に変化させながら、前記テープ貼付対象物を前記テープに貼り付けることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のテープ貼付装置。
【請求項6】
前記テープ貼付対象物と前記テープの当接面積が所定量に達するまで、破損しない押し付け圧で該テープ貼付対象物を前記テープに押し付け可能な第1の速度によって前記弾性シートを膨張させ、その後、該弾性シートの膨張速度を前記第1の速度よりも速い第2の速度に切り替え、前記テープ貼付対象物の貼付面の全体を前記テープに当接させることを特徴とする請求項5に記載のテープ貼付装置。
【請求項7】
前記第1の速度で弾性シートを膨張させるのに先立ち、該第1の速度よりも遅い第3の速度で前記弾性シートを膨張させ、前記テープ貼付対象物の中心部を前記テープに当接させることを特徴とする請求項6に記載のテープ貼付装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の気密空間を真空状態とした後、該第1の気密空間の真空状態を維持したまま該第2の気密空間を閉塞することで、前記第3の速度で前記弾性シートを膨張させることを特徴とする請求項7に記載のテープ貼付装置。
【請求項9】
前記第2の速度で弾性シートを膨張させる際に、前記テープ貼付対象物と前記テープが当接した状態で、これらを押し上げ、前記気密空間の天井面に押し当てることを特徴とする請求項6、7又は8に記載のテープ貼付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−16571(P2013−16571A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147018(P2011−147018)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】