説明

トングレール接触状態測定装置およびトングレール摩耗量測定装置

【課題】レール分岐部分において、作業者の勘に頼らなくても高い精度でトングレールの先端を含めたこれの基本レールに対する接触状態でのレール頭面形状を効率的かつ連続的に測定できるトングレール接触状態測定装置およびトングレール摩耗量測定装置を提供することにある。
【解決手段】この発明は、ブリッジ部材の端部を第2のレールにクランプ固定するクランプ部材を設けることで第1のレールと第2のレールとの間のブリッジ構造で直線移動機構を第2のレールに支持しかつ第1のレールに対して固定状態で支持することができる。これによって、直線移動機構の移動台を移動させる二次元変位センサによって第1のレールとこれに接触するトングレールとの頭面形状についての測定信号をレール長さ方向に連続的に得ることができる。この測定信号によってトングレール摩耗量測定をも測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レール分岐部分において、作業者の勘に頼らなくても高い精度でトングレールの先端を含めたこれの基本レールに対する接触状態でのレール頭面形状を効率的かつ連続的に測定できるようなトングレール接触状態測定装置およびトングレール摩耗量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールの摩耗の度合いは、レールの踏面形状あるいは頭面形状を計測することで行われている。また、鉄道レールの踏面に凹凸があると騒音のもととなるので、この点からもレールの踏面形状あるいは頭面形状の計測が必要である。
レールの踏面等の測定は、現在のところ検測車あるいは牽引式の測定器などを用いて行われているが、分岐部分のレール(以下「分岐レール」とする)の箇所についてはトングレールが接触する関係で、高精度の測定が望めないことから個別に作業者すなわち人手によってレールに測定器を設置してトングレールを含めてのレール踏面等の測定を行なっていた。
このようなレールの踏面形状あるいは頭面形状については、各種の検測装置、検査装置、そして測定器が使用され、また開発されている。この種のレール頭面の計測技術としては、すでに各種のものが公知になっている。これらの中で機械的な構造で目盛り定規をレール頭面に当てて作業者が読取る方式のものが特許文献1に記載されている。
【0003】
また、レールの頭面の断面形状をそれぞれ個別のレーザ変位センサで測定して、その測定結果をコンピュータで合成処理するという測定装置が特許文献2に記載されている。
さらに、2本のレール間に橋渡しをして分岐レールの軌間を測定するように構成された測定ゲージ(測定器)が特許文献3に記載されている。
また、出願人は、作業者の勘に頼らなくても高精度でレールの頭面形状をある程度の長さに亙って効率的かつ連続的に測定することのできるレールの頭面形状測定装置および測定方法を出願しており、これが特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−163119号公報
【特許文献2】特開2003−207319号公報
【特許文献3】特開2009−14632号公報
【特許文献4】特開2009−276270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの測定の中で、特に分岐レールの重要な測定として、トングレールが基本レールに実質的に隙間がなく確実にある程度の長さに亙って接触しているか否か等の、トングレールの接触状態について測定する項目がある。さらに、この測定においては、測定値を所定の長さに亙ってプロッティングすることによってトングレールの摩耗状態も測定している。これは、基本レールとトングレールとの接触状態が悪いと脱線の危険性があるからである。
そのため、これらの測定を実行する場合には、基本レールとトングレールとが接触状態にある状態が50cm程度か、それ以上に亙っており、その場合のレールの頭面の断面形状の連続的な測定が必要である。しかし、このような測定は現在のところ作業者すなわち人手による測定が主流である。そのため測定精度に個人差が生じる共に測定自体に多大の時間と労力(手間)がかかるという問題がある。
トングレールと基本レールとの接触状態の測定という点から各特許文献に記載された技術内容を検討してみると、特許文献4のような携帯できる測定装置によって連続的な測定を行う以外は、分岐レール部分において基本レールとトングレールとが接触状態にある状態が50cm程度か、それ以上に亙っており、その場合に高い精度でレール頭面の断面形状を自動的に測定するという技術は難しいものであった。
【0006】
特許文献4に記載のものは、高い精度でレールの頭面形状をある程度の長さに亙って効率的かつ連続的に測定することができるものであるが、レールの踏面と側面とでクランプ機構によって測定装置を固定している関係から基本レールとトングレールとが接触状態にある場合に測定装置を固定することは非常に難しく、測定装置が不安定になって測定精度が出ないという問題がある。
【0007】
この発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決するものであって、レール分岐部分において、作業者の勘に頼らなくても高い精度でトングレールの先端を含めたこれの基本レールに対する接触状態でのレール頭面形状を効率的かつ連続的に測定できるトングレール接触状態測定装置を提供することにある。
この発明の他の目的は、レール分岐部分において、作業者の勘に頼らなくても高い精度でトングレールの先端を含めたこれの基本レールに対する接触状態でのレール頭面形状を効率的かつ連続的に測定し、その測定信号に基づいてトングレール摩耗量を測定するトングレール摩耗量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のトングレール接触状態測定装置あるいはトングレール摩耗量測定装置の特徴は、トングレールが接触する第1のレールの上部において第1のレールに沿ってその移動台が移動可能にレール長さ方向の両端に設けられた脚を介して第1のレール上に載置される所定の長さの直線移動機構と、移動台に設けられ第1のレールの頭部とこれに接触するトングレールの頭部とに測定光を照射する二次元変位センサと、直線移動機構に一方の端部が固定され第1のレールに対して平行に設けられた第2のレールにクランプ部材を介して他方の端部がクランプされて軌道横断方向に橋渡されるブリッジ部材とを備えていて、
クランプ部材によって第2のレールにブリッジ部材をクランプすることで直線移動機構をブリッジ部材を介して第2のレールに支持するとともに第1のレールに対して固定状態にして移動台を移動させて二次元変位センサによって第1のレールとこれに接触するトングレールとの頭面形状についての測定信号をレール長さ方向に連続的に得るものである。
この発明にあっては、ブリッジ部材の端部を第2のレールにクランプ固定するクランプ部材を設けることで第1のレールと第2のレールとの間のブリッジ構造で直線移動機構を第2のレールに支持しかつ第1のレールに対して固定状態で支持することができる。これによって、直線移動機構の移動台を移動させて二次元変位センサによって第1のレールとこれに接触するトングレールとの頭面形状についての測定信号をレール長さ方向に連続的に得ることができる。
しかも、このような頭面形状の連続的測定によって得られる測定信号をデータとして画像処理することで、所定の長さに亙るトングレールと基本レールとの接触状態にあるレール頭面形状を連続的に頭部断面画像として採取することが可能になる。
この接触状態の連続的な頭部断面画像に基づいて、例えば、特定点をプロッティングしてその初期状態あるいは摩耗前の特定点のプロッティング特性比較することで、あるいは摩耗前の連続的な頭部断面画像等と現在の連続的な頭部断面画像とを比較することでトングレールの接触状態、さらにはトングレールの摩耗状態を測定することが可能になる。
その結果、基本レールとトングレールとが接触状態にある中での測定装置のレールへの固定が不安定になることはなく、作業者の勘に頼らなくても高い精度でトングレールの接触状態の測定あるいはトングレール摩耗量測定を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、レール分岐部分において、作業者の勘に頼らなくても高い精度でトングレールの先端を含めたこれの基本レールに対する接触状態でのレール頭面形状を効率的かつ連続的に測定することができる。また、その測定信号に基づいてトングレール摩耗量を測定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明のトングレール接触状態測定装置を適用した一実施例のトングレール接触状態測定装置の平面説明図である。
【図2】図1におけるトングレール接触状態測定装置の側面説明図である。
【図3】トングレール接触状態測定装置の直線移動機構の説明図である。
【図4】図4(a)は、トングレール接触状態測定装置による分岐レール部分の測定状態の説明図、図4(b)は、頭面形状連続測定ユニットのユニット制御装置についての説明図である。
【図5】二次元レーザ変位センサの測定光とレール頭面との関係の説明図である。
【図6】図6(a)は、その測定断面画像の説明図、図6(b)は、その合成断面画像の説明図、図6(c)は、その測定値プロッティング特性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、トングレール接触状態測定装置100は、頭面形状連続測定ユニット101、ブリッジフレーム102及びクランプ機構103から構成される。頭面形状連続測定ユニット101は、先端部の一部を点線で示すトングレール13と、トングレール13の先端側と接触する基本レール11との上部(図面の前面側)に設置されている。一方、基本レール12は、基本レール11と対をなし、基本レール11に平行となるように設けられている。
なお、図1では、図示する関係上から頭面形状連続測定ユニット101は、図4の頭面形状連続測定ユニット101に対してレール方向の長さについてその一部を省略して短くして示してある。
ブリッジフレーム102は、頭面形状連続測定ユニット101を基本レール12側との間で支持するものである。クランプ機構103は、ブリッジフレーム102の基本レール12側端部に設けられている。
ブリッジフレーム102を基本レール11側から基本レール12に橋渡して基本レール12側に配置してクランプ機構103によってブリッジフレーム102を基本レール12にクランプすることで、頭面形状連続測定ユニット101は、ブリッジフレーム102を介して基本レール11と基本レール12との間で固定された状態で基本レール11に固定支持されることとなる。
【0012】
ブリッジフレーム102は、断面正方形のボックスフレームで構成され、頭面形状連続測定ユニット101の筐体10の側壁10aに端部102aを介してねじ、溶接等によって固定されている。端部102aには固定のための尾羽型のリブ102bが側面両サイドに設けられている。
ブリッジフレーム102の他方の端部側に設けられたクランプ機構103は、図1、図2に示すように、基本レール12の頭部を狭持するローラ103a,103b,103cと、ブリッジフレーム102の端部に沿って移動可能に端部外周面に遊嵌された断面正方形のボックスフレーム104とを有している。
ブリッジフレーム102には、図1に示すように、基本レール12側の端部まで延びた長孔のクランプ位置調整孔102cが設けられている。一方、ボックスフレーム104には、ブリッジフレーム102の所定の位置に固定する摘付き固定ねじ104a,104bと、ローラ103a,103b(図2参照)がそれぞれ設けられたクランプ板105a,105b、そしてクランプ板105aの摘付き位置固定ねじ106とが設けられている。
【0013】
図1に示すクランプ位置調整孔102cは、ボックスフレーム104の端部から長手方向(軌道横断方向)に沿って形成された長孔である。これは、ボックスフレーム104の上面と底面とにそれぞれに対応するように上下に穿孔されている。
摘付き固定ねじ104a,104bと摘付き位置固定ねじ106のそれぞれの先端側は、クランプ位置調整孔102cの上側の孔の外周に対応するブリッジフレーム102のエッジ部分に係合して、それぞれにボックスフレーム104とクランプ板105aとを固定する。
クランプ板105a,105bは、ブリッジフレーム102の長孔のクランプ位置調整孔102cに沿って前後移動可能にボックスフレーム104に固定されている。クランプ板105a,105bは、クランプ位置調整孔102cの長孔を貫通してボックスフレーム104の裏面(図2の下側)から突出し、その先端部が基本レール12の頭部側面まで延びている。
図2に示すように、ローラ103aは、クランプ板105aに固定された軸を介して回転可能にクランプ板105aに装着され、基本レール12の頭部側面に当接される。ローラ103bは、クランプ板105bに固定された軸を介して回転可能にクランプ板105bに装着され、ローラ103aに対峙する形で基本レール12の反対側の頭部側面に当接される。ローラ103cは、ボックスフレーム104の裏面に固定された軸を介してこれに装着され、ボックスフレーム104の裏面に固定されて基本レール12の頭部踏面に回転可能に当接される。
【0014】
クランプ板105a,105bは、クランプ位置調整孔102cに沿って前後移動可能なので、クランプ板105aの後退移動(図2の左側に移動)することによってローラ103aはローラ103bに対してその間隔が大きく拡がる。このようにローラ103aとローラ103bとの間隔がレールの頭部側面より広くなった状態で基本レール12の頭部側面にローラ103aとローラ103bとを当ててクランプ板105aの位置をさらにレールの頭部側面側に前進(図2の右側に移動)させて摘付き位置固定ねじ106で固定することで基本レール12の頭部側面をローラ103aとローラ103bとによってチャックすることができ、ボックスフレーム104にクランプ機構103を固定することができる。
すなわち、クランプ機構103は、ローラ103a〜ローラ103cによって上方向及び左右方向の3方向から基本レール12に対して載置されて固定される。さらに、クランプ機構103のボックスフレーム104がブリッジフレーム102に摘付き固定ねじ104a,104bで固定されることで、頭面形状連続測定ユニット101の位置を基本レール11と基本レール12との間でブリッジフレーム102が固定支持することができる。
なお、ローラ103a〜103cをクランプ機構103に設けることで、ブリッジフレーム102は、頭面形状連続測定ユニット101とともに基本レール11と基本レール12上を車両走行方向に移動可能になっている。
【0015】
この頭面形状連続測定ユニット101は、図2に示すように、直線移動機構1を内部に有している。直線移動機構1は、図3に示すように、基本レール11に沿った長手方向両側の端部に設けられた脚フレーム3,4を有し、脚フレーム3,4によってレールの長さ方向における両端を支持された移動台7を備え、その移動台7を移動させるボールスクリュウ機構になっている。
図2,図3に示すように、直線移動機構1は、その直線移動機構本体2が基本レール11の上面と所定の距離をもって、基本レール11の上面に沿って所定の長さL、例えば、L=1000mmで橋渡され、基本レール11に対向するように下向きに俯せた形で設けられている。その結果、図示するように直線移動機構1の移動台2a(図3参照)は下側(基本レール11の上面に対向した方向)に向かう形状となる。なお、図3では内部構造の説明の都合上で、ボ−ルスクリュウ機構を省略して筐体10を取外してその内部構造が示してある。
直線移動機構本体2は、ボールスクリュウ2b(図2参照)を回転可能に脚フレーム3,4間に有する。脚フレーム3,4は、この直線移動機構本体2の両端に垂下して直線移動機構本体2に固定されたチャネルフレームであり、これらの基本レール11側にガイドローラ3a,3b,4a,4bがそれぞれ設けられている。
【0016】
ローラ3a,4aは、脚フレーム3,4のチャネルフレームの足部分内側に軸5,6を介してそれぞれ内装され、それぞれ基本レール11の上面11aに当接されている。また、チャネルフレームの足部分側面には頭部内側側面11bに当接されるガイドローラ3b,4bがそれぞれ軸(図示せず)を介して回転可能に脚フレーム3,4の側面に取付られている。
ローラ3a,4aが基本レール11の上面11aに接して転がり、ガイドローラ3b,4bは、レールの頭部内側側面11bに接して転がることで、直線移動機構本体2を基本レール11に沿って移動可能にこれらがガイドする。
直線移動機構1は、この前後に設けられた脚フレーム3,4を介して基本レール11の頭面に載置される。ガイドローラ3b,4bの支持軸は、図3では図示していないが、L字軸であって、その端部が脚フレーム3,4の側壁面に固定されてこれらのガイドローラをそれぞれに支持する。
なお、ガイドローラ3b側は、トングレール13の内側側面に接触している。トングレール13の先端側の幅(厚さ)はさほど大きくないので、そのままでも問題はないが、その支持軸を脚フレーム3の側壁面に対して多少の進退移動ができるようにばね支持にするとよい。
これらガイドローラによって基本レール11の頭部に直線移動機構1が支持され、かつ直線移動機構1の測定センサを支持する移動枠7がコントローラ9(図2参照)の制御によって基本レール11に沿って移動する。
また、ブリッジフレーム102が基本レール12にクランプ機構103によって固定支持されることで、頭面形状連続測定ユニット101は、ブリッジフレーム102を介して基本レール12に固定状態にされている。
【0017】
このときのクランプ機構103によるブリッジフレーム102の基本レール12へのクランプ方法は、例えば、ガイドローラ3bを基本レール11の頭部側面へ当接し、ガイドローラ4bを基本レール11に接触したトングレール13の側面へ当接して、レール内側から外側へ頭面形状連続測定ユニット101を押しつけ、次にボックスフレーム104の位置をスライドさせてブリッジフレーム102を基本レール12の頭部に載せてクランプ板105bの位置を調整して摘付き固定ねじ104a,104bでボックスフレーム104の位置を固定して、次にクランプ板105aの位置を調整して基本レール12の頭部側面を狭持して摘付き位置固定ねじ106でその位置を固定することになる。
なお、この実施例の場合のクランプ方法は、軌道横断方向において基本レール11の頭部側面と基本レール12の頭部側面との間でクランプ板105aとガイドローラ3b,4bとによってこれらがそれぞれの内軌側のレール頭部の側面に係合することで実質的になされるので、クランプ板105bは補助的なクランプの役割しかしていない。
この実施例では、クランプ板105bが設けてあるので、逆に、ガイドローラ3b,4bがなくても頭面形状連続測定ユニット101の基本レール11への固定は可能である。後述する図5で説明するように、この発明は、基本レール11とこれに接触したトングレール13との頭部断面形状を得る測定信号が得られればよいので、頭面形状連続測定ユニット101を基本レール11に沿ってその頭部に載置しかつ固定的に支持できればよい。
【0018】
測定センサを支持する移動枠7は、直線移動機構1の移動台2aに取付けられている。移動枠7は、図2及び図3に示すように、レール横断方向において移動台2aを上底7dとした断面倒立台形をしており、倒立台形の下底7aが直線移動機構1の上面に対応して直線移動機構1の直線移動機構本体2がこの倒立台形を貫通している。
倒立台形の両斜辺7b,7cに沿ってそれぞれ二次元レーザ変位センサ8a,8bが取付けられている。その取付角度は、図5に示すように、測定光Lsの走査の中心軸位置(測定中心軸)が垂直方向に対して約25°で、相互に対称になるように傾いている。これによって、二次元レーザ変位センサ8a,8bは、基本レール11の頭面(上面11a+頭部側面11b)に対して断面V字型に配置され、測定光Ls(図5参照)が基本レール11とこれに接触するトングレール13の頭面とに照射される。
二次元レーザ変位センサ8a,8bは、三角測量式のレーザビームセンサであって、基本レール11の頭面をレール横断方向に走査することによってZ方向(高さ方向)における所定の基準位置から高さを計測する。
図2に示されるように、断面倒立台形の移動枠7は、上底7dの内側が移動台2aに固定され、これらが一体化されている。また、直線移動機構本体2は、移動台2aの移動をガイドするリニアガイドレールの埋め込まれたガイドフレームを下側に有していて、移動台2aがガイドフレームのV溝に両側から嵌合して移動台2aがスライド可能に支持されている。なお、移動枠7の上部には、筐体10の天板の裏面に前記したコントロールユニット9が設けられている。
【0019】
図4(a)は、トングレール接触状態測定装置による分岐レール部分の測定状態の説明図である。図4(a)の平面図に示すように、基本レール11の頭面にクランパテーブル107が固定され、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯型のデータ処理装置108がクランパテーブル107上に載置されている。なお、データ処理装置108の電源装置109もクランパテーブル107上に載置されている。
図4(b)は、図4(a)の断面図であり、クランパテーブル107としては、図1,図2で示すクランプ機構103の上部にテーブルを取付けたものであって、図4(b)に示す、ローラ103a〜103cと同様に上方向と左右方向の3方向からクランプ用の3個のローラ107a〜107cがクランパテーブル107のクランプ機構107dには設けられている。これらローラ107a〜107cを移動ガイドとして基本レール11上において頭面形状連続測定ユニット101に隣接した所定の位置にクランプ機構107dによってクランパテーブル107をクランプ固定するものである。テーブル107以外はクランプ機構103で説明しているのでクランプ機構についての説明は省略する。テーブル107は、ノート型パーソナルコンピュータとその電源とが載るサイズのものである。
クランプ板105a,105bに対応するクランプ板がクランプ機構107dに設けられているが、図1及び図2のものでは上部に突出しているので、テーブル107においてはその頭部が邪魔にならないように、上部が起立、伏臥ができるように頭部を蝶番結合等にしてある。携帯型のデータ処理装置108は、頭面形状連続測定ユニット101にUSBケーブル110等を介して頭面形状連続測定ユニット101の筐体10の天板の裏面に設けられたコントロールユニット9(図2参照)に接続される。これによって、データ処理装置108は、基本レール11とトングレール13の頭面形状の測定データを頭面形状連続測定ユニット101から取得することができる。なお、データ処理装置108は、MPUとメモリ、そしてHDD等から構成される。メモリには、二値化処理プログラム、輪郭スムージング処理プログラム、レール頭面画像合成処理プログラム、頭面形状測定制御プログラム、そしてトングレール13の測定点までの距離算出プログラム等が設けられている。測定点までの距離算出プログラムを除いて、これら各プログラムの動作については、すでに公知となっている特許文献4(特開2009−276270号)の公報に詳細に説明されているので、その説明は省略する。
【0020】
図5は、頭面形状連続測定ユニット101における二次元レーザ変位センサ8a,8bの測定光Lsと基本レール11の頭面との関係の説明図であって、二次元レーザ変位センサ8a,8bの測定光Lsは、基本レール11の頭面に対して断面V字型に配置になるように図2及び図3に示すように、移動枠7の傾斜面に取付けられている。その測定光Lsは、基本レール11とこれに接触しているトングレール13の頭面13aに対して図5に示すように傾斜して照射される関係にある。
基本レール11の中央に立てた垂線14に対して二次元レーザ変位センサ8a,8bの測定光Lsの中心線14a,14bがそれぞれ約25°の角度に設定されている。これによって、基本レール11の上面11aの両側角部11c,11dを測定中心としてトングレール13の頭面13aを含めて測定光Lsが基本レール11の両側からそれぞれに基本レール11の頭面(上面11aと頭部側面11b)とトングレール13の頭面13aとに照射されてこれらを走査する。これによって、基本レール11のレール頭面の画像のデータとこれに接触するトングレール13の画像のデータとを生成する測定信号を連続的に二次元レーザ変位センサ8a,8bからそれぞれ取得することができる。
【0021】
図4のデータ処理装置108は、二次元レーザ変位センサ8a,8bから得られた測定データ(二次元変位データ)に対して二値化処理、輪郭スムージング処理を施して、図6(a)に示す2枚の画像15a,15bを垂直方向から搭載角度θ=25°傾斜したレール頭面の二値化測定画像として取得する。そして、データ処理装置108のMPUはレール頭面画像合成処理プログラムを実行して、2枚の画像データにおける基本レール11の上面11aの画像成分が水平となるように、25°時計方向と反時計方向にそれぞれ回転させる。さらに、基本レール11の上面11aの画像成分の垂直方向の座標位置を一致させてこれら2枚の画像を合成する。その結果として図6(b)に示すような、レール頭面とこれに接触するトングレール13の頭面の断面画像に対応する合成画像15を取得することができる。
ここで、測定点までの距離算出プログラムがコールされて、データ処理装置108のMPUによって実行される。測定点までの距離算出プログラムがMPUによって実行されると、MPUは、この合成画像15上において、トングレール13が接触する基本レール11の頭部側面とは反対側(図面左端)となる基本レール11の頭部側面16の画面上のX座標位置を算出する。なお、合成画像15は、左上が原点(0,0)である。左右方向がX軸、上下方向がY軸である。頭部側面16のX座標位置(X1)を基準として、トングレール13が接触する基本レール11の頭部側面とは反対側のトングレール13の頭部側面の所定の測定点SのX座標(X2)を検出して、測定点Sまでの距離L=X2−X1を測定値としてデータ処理装置108が算出する。
【0022】
ここで、この所定の測定点Sは、例えば、基本レールの頭頂面から約14mm下側の点である。これは、基本レールの頭頂面のY座標(Y1)を決定して、そこから約14mm下側のY座標(Y2)を得て、そのY座標(Y2)におけるトングレール13の頭部側面上のX座標値を得ることで行われる。このようにして、測定距離Lを多数基本レール11にレール長さ方向に沿って多数算出して、MPUが多数の測定点をプロッティングすると、図6(c)の曲線Gに示すようなトングレール13の幅(基本レールを取り除いたもの)を示すなだらかに上昇する波形が得られる。
この波形Gをトングレール13を設置したときの初期状態で測定したときのトングレール13の幅を示す、同じ測定点Sの点線で示すグラフHと比較することで、トングレール13の基本レール11に対する接触状態を知ることができる。また、先端から所定の位置、例えば、約50mmでのトングレール13の摩耗量Mを測定することもできる。なお、トングレール13の接触状態あるいは摩耗量測定は、特許文献4(特開2009−276270号)の公報にその詳細が説明されているように、図6(b)に示すような、レール頭面とこれに接触するトングレール13の頭面の断面画像を車両走行方向に沿って多数得て、立体画像を形成して、トングレール13を設置したときの初期状態で測定したときのトングレール13の立体画像と比較することでも得ることができる。
【0023】
上述の実施例に示したクランプ機構は、一例であって、この発明は、基本レールの頭部側面を狭持するクランプに限定されるものではない。また、上述の実施例では、二次元レーザ変位センサを使用しているが、この発明は、2つの二次元変位センサを設けることに限定されない。さらに、これは、例えば、赤色LED等を使用した二次元変位センサ一般であってもよいことはもちろんである。さらに、上述の実施例では移動枠の移動をボールスクリュウ送り機構によって行っているが、この発明の移動枠の移動あるいは直線移動機構本体2の移動は、ボールスクリュウ送り機構に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0024】
1…直線移動機構、
2…直線移動機構本体、
2a…移動台、
2b…スクリュウ、
3,4…脚フレーム、
3a,4a…ローラ、
3b,4b…ガイドローラ、
5,6…支持軸、
7…移動枠、
7d…上底、
8,8a,8b…二次元レーザ変位センサ、
9…コントローラ、
10…頭面形状連続測定ユニットの筐体、
10a…側壁、
11,12…基本レール、
13…トングレール、
14…垂線、
15…合成画像、
16…レール頭部側面、
100…トングレール接触状態測定装置、
101…頭面形状連続測定ユニット、
102…ブリッジフレーム、
102c…クランプ位置調整孔、
103…クランプ機構、
103a,103b,103c…ローラ、
104…ボックスフレーム、
104a,104b…摘付き固定ねじ、
105a,105b…クランプ板105a,105b、
107…クランパテーブル、
107a〜107c…ローラ、
107d…クランプ機構、
106…摘付き位置固定ねじ、
108…データ処理装置、
109…電源装置、
110…USBケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トングレールが接触する第1のレールの上部において前記第1のレールに沿ってその移動台が移動可能にレール長さ方向の両端に設けられた脚を介して前記第1のレール上に載置される所定の長さの直線移動機構と、
前記移動台に設けられ前記第1のレールの頭部とこれに接触する前記トングレールの頭部とに測定光を照射する二次元変位センサと、
前記直線移動機構に一方の端部が固定され前記第1のレールに対して平行に設けられた前記第2のレールにクランプ部材を介して他方の端部がクランプされて軌道横断方向に橋渡されるブリッジ部材とを備え、
前記クランプ部材によって前記第2のレールに前記ブリッジ部材をクランプすることで前記直線移動機構を前記ブリッジ部材を介して前記第2のレールに支持するとともに前記第1のレールに対して固定状態にして前記移動台を移動させて前記二次元変位センサによって前記第1のレールとこれに接触する前記トングレールとの頭面形状についての測定信号を前記レール長さ方向に連続的に得るトングレール接触状態測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトングレール接触状態測定装置において、前記測定信号を受けて前記第1のレールとこれに接触する前記トングレールとの頭面形状についての画像データを生成するデータ処理装置を有し、前記画像データに基づいて前記トングレールが接触する前記第1のレールの頭部側面とは反対側の前記第1のレールの頭部側面を基準としてここから前記トングレールの頭部側面の所定の点までの距離を前記データ処理装置によって算出することを特徴とするトングレール接触状態測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のトングレール接触状態測定装置において、前記トングレールの頭部側面の所定の点までの距離を連続的に多数算出して初期状態で測定したときの前記トングレールの前記所定の点までの同様に測定される距離とを比較することで前記トングレールの接触状態を検出しあるいは摩耗量を算出することを特徴とするトングレール接触状態測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のトングレール接触状態測定装置において、前記移動台に固定されたセンサ支持部材を有し、前記二次元変位センサは、前記センサ支持部材に取付けられ前記第1のレールの頭面の両側角部を測定中心としてそれぞれに前記第1のレールの頭面および前記トングレールの頭面に亙ってレール横断方向に測定光を照射する第1および第2の二次元変位センサからなり、前記クランプ部材は、前記軌道横断方向において位置調整可能に設けられていることを特徴とするトングレール接触状態測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のトングレール接触状態測定装置において、前記直線移動機構の脚には前記第1のレールの内軌側の頭部側面に当接される第1の当接部材を有し、前記クランプ部材は、前記第2のレールの内軌側の頭部側面に当接される第2の当接部材を有し、これら第1および第2の当接部材によって、前記第1のレールの内軌側の頭部側面と前記第2のレールの内軌側の頭部側面とにおいて前記ブリッジ部材がクランプされることを特徴とするトングレール接触状態測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のトングレール接触状態測定装置において、前記第1および第2の当接部材は、ローラとして設けられ、前記直線移動機構が前記第1のレールに沿って移動可能であることを特徴とするトングレール接触状態測定装置。
【請求項7】
トングレールが接触する第1のレールの上部において前記第1のレールに沿ってその移動台が移動可能にレール長さ方向の両端に設けられた脚を介して前記第1のレール上に載置される所定の長さの直線移動機構と、
前記移動台に設けられ前記第1のレールの頭部とこれに接触する前記トングレールの頭部とに測定光を照射する二次元変位センサと、
前記直線移動機構に一方の端部が固定され前記第1のレールに対して平行に設けられた前記第2のレールにクランプ部材を介して他方の端部がクランプされて軌道横断方向に橋渡されるブリッジ部材と、
データ処理装置とを備え、
前記クランプ部材によって前記第2のレールに前記ブリッジ部材をクランプすることで前記直線移動機構を前記ブリッジ部材を介して前記第2のレールに支持するとともに前記第1のレールに対して固定状態にして前記移動台を移動させて前記二次元変位センサによって前記第1のレールとこれに接触する前記トングレールとの頭面形状についての測定信号を前記レール長さ方向に連続的に生成し、前記データ処理装置は、生成された前記測定信号を受けて前記第1のレールとこれに接触する前記トングレールとの頭面形状についての画像データを生成してこの画像データに基づいて前記トングレールの摩耗量を算出するトングレール摩耗量測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のトングレール摩耗量測定装置において、前記データ処理装置は、前記画像データに基づいて前記トングレールが接触する前記第1のレールの頭部側面とは反対側の前記第1のレールの頭部側面を基準としてここから前記トングレールの頭部側面の所定の点までの距離を算出して前記トングレールの摩耗量を算出することを特徴とするトングレール摩耗量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−73100(P2012−73100A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217863(P2010−217863)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】