説明

ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラム

【課題】低品質デジタル放送から高品質デジタル放送への受信設定の切り替えが制限されるエリアに車両が位置している場合においても高品質デジタル放送を視聴させることができる、ナビゲーション装置を提供すること。
【解決手段】ナビゲーション装置1は、地図情報を格納する地図情報DB91と、車両から所定範囲内に存在する施設であって、高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を、地図情報を参照して特定する障害施設特定部81と、車両の走行速度を特定する走行速度特定部82と、障害施設の数と車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする視聴制御部83とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高品質デジタル放送と、この高品質デジタル放送よりも電波強度が低い場合でも視聴可能な低品質デジタル放送とを、電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴することができるナビゲーション装置が提案されている。また、近年では、これら高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とを頻繁に切り替えた場合には、デジタル放送の視聴がユーザにとって目障りなものになるため、このような頻繁な切り替えを防止することができるナビゲーション装置が提案されている。この装置では、車両が詳細な道路地図を表示できる領域(詳細地図表示エリア)を走行中であるときは、この詳細地図表示エリアを切り替え防止エリアとして、放送の品質よりも受信可能性を優先して低品質デジタル放送に固定して視聴させることにより、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とが頻繁に切り替わることを防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−352351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の装置は、車両が切り替え防止エリアを走行中であるときは一律に低品質デジタル放送に受信設定を固定していたので、切り替え防止エリア内において高品質デジタル放送を十分に視聴できる状況であったとしても、常に低品質デジタル放送に受信設定が固定されてしまい、受信環境を十分に活用できていなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低品質デジタル放送から高品質デジタル放送への受信設定の切り替えが制限されるエリアに車両が位置している場合においても、受信環境を十分に活用することが可能となる、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載のナビゲーション装置は、高品質デジタル放送と当該高品質デジタル放送よりも電波強度が低い場合でも視聴可能な低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能なナビゲーション装置であって、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合には高品質デジタル放送への切り替えを制限して低品質デジタル放送に固定した視聴を行うナビゲーション装置において、地図情報を格納する地図情報格納手段と、前記車両から所定範囲内に存在する施設であって、前記高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報を参照して特定する障害施設特定手段と、前記車両の走行速度を特定する走行速度特定手段と、前記障害施設特定手段にて特定された障害施設の数と、前記走行速度特定手段にて特定された前記車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定し、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、前記放送切り替え制限エリアに前記車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする視聴制御手段とを備える。
【0007】
また、請求項2に記載のナビゲーション装置は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記障害施設の数と前記車両の走行速度とを相互に関連付けて構成された切り替え制限解除条件情報であって、前記障害施設の数が増える程、当該障害施設の数に対応する速度閾値が低くなるように構成された切り替え制限解除条件情報を格納する切り替え制限解除条件情報格納手段を備え、前記視聴制御手段は、前記障害施設特定手段にて特定された障害施設の数に対応する速度閾値を前記切り替え制限解除条件情報格納手段から取得し、前記走行速度特定手段にて特定された前記車両の走行速度が、前記切り替え制限解除条件情報格納手段から取得した速度閾値以下であった場合に、前記切り替え制限解除条件が満たされていると判定する。
【0008】
また、請求項3に記載のナビゲーション装置は、請求項1又は2に記載のナビゲーション装置において、現在位置から目的地までの前記車両の走行経路を探索する走行経路探索手段と、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路の属性を取得する属性取得手段とを備え、前記障害施設特定手段は、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路から所定範囲内に存在する前記障害施設を特定し、前記走行速度特定手段は、前記属性取得手段にて取得された走行経路の属性に基づいて前記車両の走行速度を特定し、前記視聴制御手段は、前記障害施設特定手段にて特定された前記走行経路から所定範囲内に存在する前記障害施設の数と、前記走行速度特定手段にて特定された前記車両の走行速度とに基づいて、前記切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定する。
【0009】
また、請求項4に記載のナビゲーション装置は、請求項3に記載のナビゲーション装置において、前記属性取得手段は、前記走行経路の属性として、当該走行経路における渋滞の状況に関する渋滞属性を取得し、前記走行速度特定手段は、前記属性取得手段にて取得された渋滞属性に基づいて前記車両の走行速度を特定する。
【0010】
また、請求項5に記載のナビゲーション装置は、請求項3又は4に記載のナビゲーション装置において、前記属性取得手段は、前記走行経路の属性として、当該走行経路における道路の種別に関する道路種別属性を取得し、前記走行速度特定手段は、前記属性取得手段にて取得された道路種別属性に基づいて前記車両の走行速度を特定する。
【0011】
また、請求項6に記載のナビゲーション装置は、請求項3から5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報は、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送の電波を送信する電波塔の位置情報を含み、前記障害施設特定手段は、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路と前記電波塔との相互間に位置する施設を前記障害施設として、前記地図情報格納手段にて格納された電波塔の位置情報を参照して特定し、前記視聴制御手段は、前記障害施設特定手段にて特定された前記走行経路と前記電波塔との相互間に位置する障害施設の数に基づいて、前記放送切り替え制限エリアを特定する。
【0012】
また、請求項7に記載のナビゲーション装置は、請求項6に記載のナビゲーション装置において、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報は、前記施設の高さ情報と前記電波塔の高さ情報を含み、前記障害施設特定手段は、前記地図情報格納手段にて格納された前記施設の高さ情報と前記電波塔の高さ情報とに基づいて、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路と前記電波塔を結ぶ直線上に存在する施設を、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路と前記電波塔との相互間に位置する障害施設として特定する。
【0013】
また、請求項8に記載のナビゲーション方法は、高品質デジタル放送と当該高品質デジタル放送よりも電波強度が低い場合でも視聴可能な低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能なナビゲーション方法であって、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合には高品質デジタル放送への切り替えを制限して低品質デジタル放送に固定した視聴を行うナビゲーション方法において、前記車両から所定範囲内に存在する施設であって、前記高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を、地図情報格納手段にて格納された地図情報を参照して特定する障害施設特定ステップと、前記車両の走行速度を特定する走行速度特定ステップと、前記障害施設特定ステップにて特定された障害施設の数と、前記走行速度特定ステップにて特定された前記車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定し、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、前記放送切り替え制限エリアに前記車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする視聴制御ステップと、を含む。
【0014】
また、請求項9に記載のナビゲーションプログラムは、請求項8に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載のナビゲーション装置、請求項8に記載のナビゲーション方法、又は請求項9に記載のナビゲーションプログラムによれば、車両から所定範囲内に存在する障害施設の数と、車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定し、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする。これにより、例えば障害施設の数と車両の走行速度との関係から電波強度の時間的な変動が少ないと考えられる場合には、その受信環境を十分に活用し、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても高品質デジタル放送を視聴させることができる。
【0016】
請求項2に記載のナビゲーション装置によれば、障害施設の数に対応する速度閾値が低くなるように構成された切り替え制限解除条件情報を格納する切替制限解除条件情報格納手段を備え、視聴制御手段は、障害施設の数に対応する速度閾値を切替制限解除条件情報格納手段から取得し、車両の走行速度が、切替制限解除条件情報格納手段から取得した速度閾値以下であった場合に、切り替え制限解除条件が満たされていると判定する。これにより、障害施設の数が少なく車両の位置によって電波強度が大きく異なりにくいエリアでは、車両の走行速度が相対的に高い場合でも電波強度の時間的な変動が少ないので放送の受信設定の切替制限を解除することができ、車両の走行状況に応じて異なる受信環境を十分に活用し、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても高品質デジタル放送を視聴させることができる。
【0017】
請求項3に記載のナビゲーション装置によれば、走行経路から所定範囲内に存在する障害施設の数と、走行経路の属性に基づいて特定された車両の走行速度とに基づいて、切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定するので、走行経路を探索した時点で、走行経路の各走行予定位置でのデジタル放送の受信設定を予め決定することが可能となり、走行経路を走行する際のデジタル放送の受信設定の制御を迅速に行うことができる。
【0018】
請求項4に記載のナビゲーション装置によれば、走行経路における渋滞の状況に関する渋滞属性に基づいて車両の走行速度を特定するので、走行経路における渋滞状況に対応する走行速度に応じて異なる受信環境を考慮して、走行経路の各走行予定位置でのデジタル放送の受信設定を予め決定することができる。
【0019】
請求項5に記載のナビゲーション装置によれば、走行経路における道路の種別に関する道路種別属性に基づいて車両の走行速度を特定するので、走行経路における道路種別に対応する走行速度に応じて異なる受信環境を考慮して、走行経路の各走行予定位置でのデジタル放送の受信設定を予め決定することができる。
【0020】
請求項6に記載のナビゲーション装置によれば、走行経路と電波塔との相互間に位置する施設を障害施設として、地図情報格納手段にて格納された電波塔の位置情報を参照して特定し、走行経路と電波塔との相互間に位置する障害施設の数に基づいて放送切り替え制限エリアを特定するので、走行経路における各走行予定位置、施設、及び電波塔の具体的な位置関係を反映して、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアを一層確実に特定することができる。
【0021】
請求項7に記載のナビゲーション装置によれば、地図情報格納手段にて格納された施設の高さ情報と電波塔の高さ情報とに基づいて、走行経路と電波塔を結ぶ直線上に存在する施設を、走行経路と電波塔との相互間に位置する障害施設として特定するので、走行経路における各走行予定位置について、電波塔から送信された電波を遮蔽する可能性のある障害施設を正確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態1に係るナビゲーション装置を例示するブロック図である。
【図2】切替制限解除条件テーブルに格納されている情報を例示した表である。
【図3】視聴制御処理のフローチャートである。
【図4】実施の形態2に係るナビゲーション装置を例示するブロック図である。
【図5】切替制限解除条件判定処理のフローチャートである。
【図6】放送切り替え制限エリア特定処理のフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係る視聴制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るナビゲーション装置、ナビゲーション方法、及びナビゲーションプログラムの各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、これらの各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この実施の形態1は、本発明のナビゲーション装置の基本形態である。なお、以下の説明ではナビゲーション装置が車両に搭載されている場合を例として説明する。
【0025】
(構成)
まず、実施の形態1に係るナビゲーション装置の構成を説明する。図1は、実施の形態1に係るナビゲーション装置を例示するブロック図である。このナビゲーション装置1は、車速センサ10、操作部20、現在位置検出処理部30、放送受信部40、通信部50、スピーカ60、ディスプレイ70、制御部80、及びデータ記録部90を備えている。
【0026】
(構成−車速センサ)
車速センサ10は、車軸の回転数に比例する車速パルス信号等を制御部80に出力するものであり、公知の車速センサを用いることができる。
【0027】
(構成−操作部)
操作部20は、ユーザによる操作入力を受け付ける操作手段である。この操作部20の具体的な構成は任意であり、例えば、ディスプレイ70の前面に設けたタッチパネル、押しボタン、リモートコントローラの如き遠隔操作手段、あるいは、音声入力を受け付けるマイクの如き音声認識手段を用いて操作部20を構成することができる。
【0028】
(構成−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部30は、ナビゲーション装置1が取り付けられた車両(以下、自車両)の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部30は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0029】
(構成−放送受信部)
放送受信部40は、デジタル放送を受信する受信手段である。この放送受信部40の具体的な構成は任意であり、デジタル放送を受信するアンテナ及びチューナーを有する装置として構成されているが、デジタル放送の放送信号を外部機器から受信するための受信用のインターフェースとして構成されてもよい。この「デジタル放送」は、高品質デジタル放送と、高品質デジタル放送よりも電波強度が低い場合であっても視聴可能な低品質デジタル放送とを含む。また、「デジタル放送」とは、地上デジタル放送やBSデジタル放送によるTV放送やラジオ放送等を含むが、これらに限定されず任意の放送形態による放送を含む。また、「デジタル放送」は、放送局から放送された放送(以下、「一次放送」)と、一次放送を中継や録画再生する機器から出力された放送(以下、「二次放送」)を含む。以下では、高品質デジタル放送が地上デジタルテレビジョン放送に含まれている12セグメントの信号による放送(以下、「12セグメント放送」)であり、低品質デジタル放送が1セグメントの信号による放送(以下、「1セグメント放送」)である場合を例として説明する。
【0030】
(構成−通信部)
通信部50は、外部の通信装置(例えば、既知のコンピュータ、移動体通信端末、あるいは、カー番組情報案内サービスを統括する統括センター)との間で、各種情報を通信するための通信手段であり、公知の無線通信装置を用いることができる。
【0031】
(構成−スピーカ)
スピーカ60は、制御部80の制御に基づいて各種の音声を出力する出力手段である。スピーカ60より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0032】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ70は、制御部80の制御に基づいて各種の画像を表示する表示手段である。なお、このディスプレイ70の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0033】
(構成−制御部)
制御部80は、ナビゲーション装置1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、実施の形態1に係るナビゲーションプログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介してナビゲーション装置1にインストールされることで、制御部80の各部を実質的に構成する。
【0034】
この制御部80は、機能概念的に、障害施設特定部81、走行速度特定部82、及び視聴制御部83を備えている。障害施設特定部81は、車両から所定範囲内に存在する施設であって高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を特定する障害施設特定手段である。走行速度特定部82は、車両の走行速度を特定する走行速度特定手段である。視聴制御部83は、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とを切り替えて視聴可能とする視聴制御手段である。これらの制御部80の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0035】
(構成−データ記録部)
データ記録部90は、ナビゲーション装置1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0036】
このデータ記録部90は、地図情報データベース91(以下、データベースを「DB」と称する)、及び切替制限解除条件テーブル92を備えている。
【0037】
地図情報DB91は、地図情報を格納する格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、例えばリンクデータ(リンク番号、接続ノード番号、道路座標、道路種別、車線数、走行規制等)、ノードデータ(ノード番号、座標)、地物データ(信号機、道路標識、ガードレール、建物等)、地形データ、地図をディスプレイ70に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。また、「地図情報」には、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアを特定するための情報、及び高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある施設(以下、「障害施設」)を特定するための情報が含まれている。ここで「放送切り替え制限エリア」とは、例えば12セグメント放送の電波強度が低くなる可能性があるエリアであり、1セグメント放送と12セグメント放送との間で受信設定が頻繁に切り替わることを防止するために受信設定が1セグメント放送に固定される(放送の受信設定の切り替えが制限される)エリアのことをいう。放送切り替え制限エリアを特定するための情報や障害施設を特定するための情報の具体的な内容は任意で、例えば放送切り替え制限エリアを特定するための情報としては、放送切り替え制限エリアの範囲を示す位置情報を用いる。また、障害施設を特定するための情報としては、障害施設となる建物の位置を示す位置情報を用いる。なお、放送切り替え制限エリアの決定方法は任意で、例えば一定の面積に存在する所定以上の高さの建物の数が閾値以上となるエリアを放送切り替え制限エリアとする。また、障害施設の決定方法は任意で、例えば所定以上の高さや幅を有する建物を障害施設とする。なお、地図情報には、デジタル放送の電波塔の位置情報が含まれている。
【0038】
切替制限解除条件テーブル92は、切り替え制限解除条件情報を格納する切り替え制限解除条件情報格納手段である。図2は、切替制限解除条件テーブル92に格納されている情報を例示した表である。図2に示すように、切替制限解除条件テーブル92には、項目「障害施設の数」及び「速度閾値」に対応する情報が相互に関連付けられて格納されている。項目「障害施設の数」に対応して格納される情報は、車両から所定範囲内に存在する障害施設の数を特定するための情報であって、図2では障害施設の数の範囲を示す情報(例えば「10未満」等)が格納されている。項目「速度閾値」に対応して格納される情報は、車両の走行速度を特定するための情報であって、図2では放送切り替え制限エリアにおいて放送の受信設定の切替制限を解除する速度の上限を示す情報(例えば「30km/h」等)が格納されている。図2の切替制限解除条件テーブル92によれば、例えば放送切り替え制限エリアにおいて車両から所定範囲内に存在する障害施設の数が10未満の場合においては、車両の走行速度が30km/h以下となった場合に放送の受信設定の切替制限を解除することとなる。同様に、車両から所定範囲内に存在する障害施設の数が10以上20未満の場合においては、車両の走行速度が20km/h以下となった場合に放送の受信設定の切替制限を解除し、車両から所定範囲内に存在する障害施設の数が20以上30未満の場合においては、車両の走行速度が10km/h以下となった場合に放送の受信設定の切替制限を解除することとなる。このように、障害施設の数が増える程、障害施設の数に対応する速度閾値が低くなるように切り替え制限解除情報が構成されている。すなわち、障害施設の数が多く車両の位置によって電波強度が大きく異なりやすいエリアでは、車両の走行速度が相対的に低く電波強度の時間的な変動が少ない場合にのみ放送の受信設定の切替制限を解除する。一方、障害施設の数が少なく車両の位置によって電波強度が大きく異なりにくいエリアでは、車両の走行速度が相対的に高い場合でも電波強度の時間的な変動が少ないので放送の受信設定の切替制限を解除する。このように、障害施設の数と車両の走行速度とに応じて放送の受信設定の切り替え制限解除条件を定めることにより、車両の走行状況に応じて異なる受信環境を十分に活用し、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても12セグメント放送を視聴させることができる。
【0039】
(処理)
次に、このように構成されたナビゲーション装置1によって実行される視聴制御処理について説明する。なお、特記しない制御に関しては、ナビゲーション装置1の制御部80が行うこととする。図3は視聴制御処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この視聴制御処理は、放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を制御するための処理であり、例えばナビゲーション装置1への電源投入後に所定周期で繰り返し起動される。
【0040】
図3に示すように、視聴制御処理が起動されると、視聴制御部83は現在位置検出処理部30を介して車両の現在位置を特定する(SA1)。
【0041】
次に、視聴制御部83は、地図情報DB91に格納されている地図情報を参照し、SA1で特定した車両の現在位置が放送切り替え制限エリア内か否かを判定する(SA2)。
【0042】
その結果、車両の現在位置が放送切り替え制限エリア内であった場合(SA2、Yes)、障害施設特定部81は、車両から所定範囲内に存在する施設であって、高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を、地図情報DB91にて格納された地図情報を参照して特定する(SA3)。「所定範囲」の具体的な内容は任意で、例えば車両の現在位置を中心とする所定半径の範囲や、デジタル放送の電波塔と車両の現在位置との間の範囲を「所定範囲」とする。
【0043】
続いて、走行速度特定部82は、車速センサ10からの入力に基づき、車両の走行速度を特定する(SA4)。次に、視聴制御部83は、SA3で障害施設特定部81にて特定された障害施設の数と、SA4で走行速度特定部82にて特定された車両の走行速度とに基づいて、切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定する(SA5)。具体的には、視聴制御部83は、障害施設特定部81にて特定された障害施設の数に対応する速度閾値を切替制限解除条件テーブル92から取得し、走行速度特定部82にて特定された車両の走行速度が、当該切替制限解除条件テーブル92から取得した速度閾値以下であった場合には、切り替え制限解除条件が満たされていると判定し、当該切替制限解除条件テーブル92から取得した速度閾値以下でなかった場合には、切り替え制限解除条件が満たされていないと判定する。例えば、障害施設特定部81にて特定された障害施設の数が15である場合、図2の切替制限解除条件テーブル92によれば速度閾値は20km/hである。従って、走行速度特定部82にて特定された車両の走行速度が20km/h以下であった場合には切り替え制限解除条件が満たされていると判定し、走行速度が20kmより高かった場合には切り替え制限解除条件が満たされていないと判定する。
【0044】
その結果、切り替え制限解除条件が満たされていないと判定した場合(SA5、No)、視聴制御部83は、放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定の12セグメント放送への切り替えを制限し、1セグメント放送に固定した視聴が行われるようにする(SA6)。すなわち、切り替え制限解除条件が満たされず、障害施設により電波が遮蔽されることにより電波強度が大きく変動する可能性が高い場合には電波強度の大小に関わらず1セグメント放送から12セグメント放送への受信設定の切り替えを行わないので、1セグメント放送と12セグメント放送が頻繁に切り替わることを防止できる。その後、制御部80は視聴制御処理を終了する。
【0045】
一方、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合(SA5、Yes)、視聴制御部83は、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても、12セグメント放送と1セグメント放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする。すなわち、視聴制御部83は放送受信部40にて受信可能なデジタル放送の電波強度を検出し(SA7)、検出した電波強度が所定強度以上か否かを判定する(SA8)。ここで「所定強度」とは、例えば12セグメント放送を視聴可能な電波強度である。また、SA2において車両の現在位置が放送切り替え制限エリア内ではないと判定した場合にも(SA2、No)、12セグメント放送と1セグメント放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えることとしても受信設定が頻繁に切り替わることはないものとし、視聴制御部83は放送受信部40にて受信可能なデジタル放送の電波強度を検出し(SA7)、検出した電波強度が所定強度以上か否かを判定する(SA8)。
【0046】
その結果、電波強度が所定強度以上の場合(SA8、Yes)、視聴制御部83は放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を12セグメント放送に設定し、12セグメント放送を視聴可能とする(SA9)。一方、電波強度が所定強度未満の場合(SA8、No)、12セグメント放送の視聴はできないことから、視聴制御部83は放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を1セグメント放送に設定し、1セグメント放送を視聴可能とする(SA10)。このように、12セグメント放送と1セグメント放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とすることにより、受信環境を十分に活用し、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても12セグメント放送を視聴させることができる。SA9又はSA10の処理の後、制御部80は視聴制御処理を終了する。
【0047】
(効果)
このように実施の形態1によれば、車両から所定範囲内に存在する障害施設の数と、車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定し、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする。これにより、例えば障害施設の数と車両の走行速度との関係から電波強度の時間的な変動が少ないと考えられる場合には、その受信環境を十分に活用し、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても高品質デジタル放送を視聴させることができる。
【0048】
特に、障害施設の数に対応する速度閾値が低くなるように構成された切り替え制限解除条件情報を格納する切替制限解除条件テーブル92を備え、視聴制御部83は、障害施設の数に対応する速度閾値を切替制限解除条件テーブル92から取得し、車両の走行速度が、切替制限解除条件テーブル92から取得した速度閾値以下であった場合に、切り替え制限解除条件が満たされていると判定する。これにより、障害施設の数が少なく車両の位置によって電波強度が大きく異なりにくいエリアでは、車両の走行速度が相対的に高い場合でも電波強度の時間的な変動が少ないので放送の受信設定の切替制限を解除することができ、車両の走行状況に応じて異なる受信環境を十分に活用し、放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合においても12セグメント放送を視聴させることができる。
【0049】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この実施の形態2は、走行経路における仮想的な走行予定位置を設定した上で、この各走行予定位置から所定範囲内に存在する障害施設の数と車両の走行速度とに基づいて、切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定する形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0050】
(構成−制御部)
まず、実施の形態2に係る運転支援システムの構成について説明する。図4は、実施の形態2に係るナビゲーション装置1を例示するブロック図である。図4に示すように、実施の形態2に係る制御部80は、障害施設特定部81、走行速度特定部82、及び視聴制御部83に加えて、走行経路探索部84、及び属性取得部85を備えている。走行経路探索部84は、現在位置から目的地までの車両の走行経路を探索する走行経路探索手段である。属性取得部85は、走行経路探索部84にて探索された走行経路の属性を取得する属性取得手段である。これらの制御部80の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0051】
(構成−データ記録部)
本実施の形態2に係る地図情報DB91に格納されている地図情報は、実施の形態1と同様の情報に加えて、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送の電波を送信する電波塔の位置情報、電波塔の高さ情報、及び施設の高さ情報を含んでいる。これらの情報の具体的な内容は任意で、電波塔の位置情報としては、例えば電波塔の位置を特定するための座標等を用いる。また、電波塔の高さ情報や施設の高さ情報としては、例えば電波塔や施設の海抜を用いる。
【0052】
(処理)
次に、この実施の形態2に係るナビゲーション装置1によって実行される処理について説明する。実施の形態2に係るナビゲーション装置1は、視聴制御処理に加えて切替制限解除条件判定処理を実行する。
【0053】
(処理−切替制限解除条件判定処理)
図5は切替制限解除条件判定処理のフローチャートである。この切替制限解除条件判定処理は、探索された走行経路において切り替え制限解除条件が満たされているか否かを予め判定する処理であり、例えば操作部20を介して走行経路を探索すべき旨の指示入力が行われた場合に起動される。
【0054】
図5に示すように、切替制限解除条件判定処理が起動されると、走行経路探索部84は現在位置から目的地までの車両の走行経路を探索する(SB1)。ここで、現在位置は例えば現在位置検出処理部30を介して特定され、目的地は操作部20を介した入力に基づき特定される。また、走行経路の探索には例えばダイクストラ法等の公知の方法を用いることができる。
【0055】
次に、視聴制御部83はサブルーチンとして放送切り替え制限エリア特定処理を実行し、放送切り替え制限エリアを特定する(SB2)。
【0056】
(処理−放送切り替え制限エリア特定処理)
ここで、放送切り替え制限エリア特定処理について説明する。図6は、放送切り替え制限エリア特定処理のフローチャートである。放送切り替え制限エリア特定処理が開始されると、障害施設特定部81は、図5のSB1で走行経路探索部84にて探索された走行経路と電波塔との相互間に位置する施設を、地図情報DB91にて格納された電波塔の位置情報を参照して特定し、当該特定した施設を障害施設に設定する(SC1)。具体的には、障害施設特定部81は、地図情報DB91にて格納された施設の高さ情報と電波塔の高さ情報とに基づいて、走行経路探索部84にて探索された走行経路と電波塔を結ぶ直線上に存在する施設を、走行経路と電波塔との相互間に位置する障害施設として特定する。走行経路と電波塔を結ぶ直線上に存在する施設の具体的な特定方法は任意で、例えば電波塔の位置(標高を含む)を電波塔の位置情報及び高さ情報に基づいて特定するとともに、施設の位置(標高を含む)を施設の位置情報及び高さ情報に基づいて特定する。そして、走行経路における仮想的な走行予定位置を設定した上で、この各走行予定位置(標高を含む)と電波塔の位置とを結ぶ直線上に存在する施設を障害施設として特定する。これにより、走行経路における各走行予定位置について、電波塔から送信された電波を遮蔽する可能性のある障害施設を正確に特定することができる。
【0057】
続いて、視聴制御部83は、障害施設特定部81にて特定された走行経路と電波塔との相互間に位置する障害施設の数に基づいて、放送切り替え制限エリアを特定する(SC2)。例えば視聴制御部83は、走行経路における各走行予定位置と電波塔とを結ぶ直線上に存在する障害施設の数が所定数以上である場合に、その走行予定位置が放送切り替え制限エリアに含まれるものとする。SC2の処理の後、制御部80は切替制限解除判定処理に戻る。
【0058】
図5に戻り、SB2で放送切り替え制限エリア特定処理を実行した後、属性取得部85は、特定された放送切り替え制限エリアにおける、走行経路探索部84にて探索された走行経路の属性を取得する(SB3)。属性取得部85は、走行経路の属性として、当該走行経路における渋滞の状況に関する渋滞属性、及び/又は走行経路における道路の種別に関する道路種別属性を取得する。これらの属性の取得方法は任意で、例えば属性取得部85は、光ビーコンや電波ビーコン、あるいはFM多重放送やデジタル放送等から通信部50を介して渋滞情報を取得し、この渋滞情報に基づいて走行経路における渋滞属性を取得する。渋滞属性の具体的な内容は任意で、例えば渋滞の始点及び終点や渋滞の程度、渋滞区間の通過所要時間等を取得する。また、属性取得部85は、例えば地図情報DB91に格納されている地図情報に基づき、走行経路における道路種別属性を取得する。道路種別属性の具体的な内容は任意で、例えば高速道路や一般道路等の道路の種別を取得する。
【0059】
次に、走行速度特定部82は、属性取得部85にて取得された走行経路の属性に基づいて、放送切り替え制限エリアにおける車両の走行速度を特定する(SB4)。すなわち走行速度特定部82は、属性取得部85にて取得された渋滞属性及び/又は道路種別属性に基づいて車両の走行速度を特定する。例えば走行速度特定部82は、属性取得部85にて取得された渋滞属性に基づき、放送切り替え制限エリア内の走行経路の各走行予定位置における渋滞の程度を特定し、その渋滞の程度に対応する速度(例えば渋滞の程度が「渋滞」であれば5km/h、「混雑」であれば15km/h、「順調」であれば40km/h等)を車両の走行速度として特定する。また走行速度特定部82は、属性取得部85にて取得された道路種別属性に基づき、例えば放送切り替え制限エリア内の走行経路の各走行予定位置における制限速度を特定し、その制限速度を車両の走行速度として特定する。あるいは、渋滞属性と道路種別属性とに基づき、放送切り替え制限エリア内の走行経路の各走行予定位置における道路種別と渋滞の程度に対応する速度を車両の走行速度として特定してもよい(例えば道路種別が「一般道路」で渋滞の程度が「混雑」であれば15km/h、道路種別が「高速道路」で渋滞の程度が「混雑」であれば50km/h等)。
【0060】
次に、視聴制御部83は、図6のSC1で障害施設特定部81にて特定された障害施設の数と、SB4で走行速度特定部82にて特定された車両の走行速度とに基づいて、切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定する(SB5)。視聴制御部83は、放送切り替え制限エリアにおける走行経路の各走行予定位置について障害施設特定部81にて特定された障害施設の数に対応する速度閾値を図2の切替制限解除条件テーブル92から取得し、その走行予定位置における車両の走行速度が、切替制限解除条件テーブル92から取得した速度閾値以下であった場合に、切り替え制限解除条件が満たされていると判定する。
【0061】
その結果、放送切り替え制限エリアにおける走行経路の各走行予定位置について、切り替え制限解除条件が満たされていないと判定した場合(SB5、No)、視聴制御部83は、その走行予定位置での放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を、12セグメント放送への切り替えを制限して1セグメント放送に固定した視聴が行われる設定とする(SB6)。
【0062】
一方、放送切り替え制限エリアにおける走行経路の各走行予定位置について、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合(SB5、Yes)、視聴制御部83は、その走行予定位置での放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を、その走行予定位置が放送切り替え制限エリアに位置している場合においても、12セグメント放送と1セグメント放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替える設定とする(SB7)。なお、SB6又はSB7で行われた設定は、SB2で特定された放送切り替え制限エリア内の走行経路における各走行予定位置と対応づけて例えばデータ記録部90やRAM(図示省略)等に記録される。
【0063】
SB6又はSB7の処理の後、視聴制御部83は、SB2で特定された全ての放送切り替え制限エリアについて、当該放送切り替え制限エリアにおける走行経路の各走行予定位置でのデジタル放送の受信設定が行われたか否かを判定する(SB8)。その結果、全ての放送切り替え制限エリアについてデジタル放送の受信設定が行われていない場合(SB8、No)、デジタル放送の受信設定が行われていない放送切り替え制限エリアについてSB3からSB7の処理を実行する。一方、全ての放送切り替え制限エリアについてデジタル放送の受信設定が行われた場合(SB8、Yes)、制御部80は切替制限解除条件判定処理を終了する。
【0064】
(処理−視聴制御処理)
次に、実施の形態2に係る視聴制御処理について説明する。図7は、実施の形態2に係る視聴制御処理のフローチャートである。なお、SD1からSD2は図3のSA1からSA2と、SD4からSD8は図3のSA6からSA10と同じであるので、説明を省略する。
【0065】
SD2において、車両の現在位置が放送切り替え制限エリア内であった場合(SD2、Yes)、視聴制御部83は、車両の現在位置での放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定が、12セグメント放送への切り替えを制限して1セグメント放送に固定した視聴が行われる設定であるか否かを判定する(SD3)。
【0066】
その結果、1セグメント放送に固定した視聴が行われる設定であった場合(SD3、Yes)、視聴制御部83は、放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定の12セグメント放送への切り替えを制限して1セグメント放送に固定した視聴が行われるようにする(SD4)。
【0067】
一方、1セグメント放送に固定した視聴が行われる設定ではなかった場合(その位置が放送切り替え制限エリア内である場合においても、12セグメント放送と1セグメント放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替える設定であった場合)(SD3、No)、視聴制御部83は放送受信部40にて受信可能なデジタル放送の電波強度を検出する(SD5)。
【0068】
(効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1における基本的な効果に加えて、走行経路から所定範囲内に存在する障害施設の数と、走行経路の属性に基づいて特定された車両の走行速度とに基づいて、切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定するので、走行経路を探索した時点で、走行経路の各走行予定位置での放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を予め決定することが可能となり、走行経路を走行する際の放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定の制御を迅速に行うことができる。
【0069】
特に、走行経路における渋滞の状況に関する渋滞属性に基づいて車両の走行速度を特定するので、走行経路における渋滞状況に対応する走行速度に応じて異なる受信環境を考慮して、走行経路の各走行予定位置での放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を予め決定することができる。
【0070】
また、走行経路における道路の種別に関する道路種別属性に基づいて車両の走行速度を特定するので、走行経路における道路種別に対応する走行速度に応じて異なる受信環境を考慮して、走行経路の各走行予定位置での放送受信部40におけるデジタル放送の受信設定を予め決定することができる。
【0071】
また、走行経路と電波塔との相互間に位置する施設を障害施設として、地図情報DB91にて格納された電波塔の位置情報を参照して特定し、走行経路と電波塔との相互間に位置する障害施設の数に基づいて放送切り替え制限エリアを特定するので、走行経路における各走行予定位置、施設、及び電波塔の具体的な位置関係を反映して、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアを一層確実に特定することができる。
【0072】
特に、地図情報DB91にて格納された施設の高さ情報と電波塔の高さ情報とに基づいて、走行経路と電波塔を結ぶ直線上に存在する施設を、走行経路と電波塔との相互間に位置する障害施設として特定するので、走行経路における各走行予定位置について、電波塔から送信された電波を遮蔽する可能性のある障害施設を正確に特定することができる。
【0073】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0074】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0075】
(障害施設について)
障害施設を特定する方法としては、上述した方法以外の方法を採用することもでき、例えば、車両と電波塔の間に位置していない施設であっても、所定の電波強度以上の電波を発信することによって電波障害を招く可能性があるような施設がある場合には、当該施設を予め地図情報に障害施設として設定しておき、当該地図情報を参照することで障害施設を特定してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ナビゲーション装置
10 車速センサ
20 操作部
30 現在位置検出処理部
40 放送受信部
50 通信部
60 スピーカ
70 ディスプレイ
80 制御部
81 障害施設特定部
82 走行速度特定部
83 視聴制御部
84 走行経路探索部
85 属性取得部
90 データ記録部
91 地図情報DB
92 切替制限解除条件テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高品質デジタル放送と当該高品質デジタル放送よりも電波強度が低い場合でも視聴可能な低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能なナビゲーション装置であって、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合には高品質デジタル放送への切り替えを制限して低品質デジタル放送に固定した視聴を行うナビゲーション装置において、
地図情報を格納する地図情報格納手段と、
前記車両から所定範囲内に存在する施設であって、前記高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を、前記地図情報格納手段にて格納された地図情報を参照して特定する障害施設特定手段と、
前記車両の走行速度を特定する走行速度特定手段と、
前記障害施設特定手段にて特定された障害施設の数と、前記走行速度特定手段にて特定された前記車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定し、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、前記放送切り替え制限エリアに前記車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする視聴制御手段と、
を備えるナビゲーション装置。
【請求項2】
前記障害施設の数と前記車両の走行速度とを相互に関連付けて構成された切り替え制限解除条件情報であって、前記障害施設の数が増える程、当該障害施設の数に対応する速度閾値が低くなるように構成された切り替え制限解除条件情報を格納する切り替え制限解除条件情報格納手段を備え、
前記視聴制御手段は、前記障害施設特定手段にて特定された障害施設の数に対応する速度閾値を前記切り替え制限解除条件情報格納手段から取得し、前記走行速度特定手段にて特定された前記車両の走行速度が、前記切り替え制限解除条件情報格納手段から取得した速度閾値以下であった場合に、前記切り替え制限解除条件が満たされていると判定する、
請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
現在位置から目的地までの前記車両の走行経路を探索する走行経路探索手段と、
前記走行経路探索手段にて探索された走行経路の属性を取得する属性取得手段とを備え、
前記障害施設特定手段は、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路から所定範囲内に存在する前記障害施設を特定し、
前記走行速度特定手段は、前記属性取得手段にて取得された走行経路の属性に基づいて前記車両の走行速度を特定し、
前記視聴制御手段は、前記障害施設特定手段にて特定された前記走行経路から所定範囲内に存在する前記障害施設の数と、前記走行速度特定手段にて特定された前記車両の走行速度とに基づいて、前記切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定する、
請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記属性取得手段は、前記走行経路の属性として、当該走行経路における渋滞の状況に関する渋滞属性を取得し、
前記走行速度特定手段は、前記属性取得手段にて取得された渋滞属性に基づいて前記車両の走行速度を特定する、
請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記属性取得手段は、前記走行経路の属性として、当該走行経路における道路の種別に関する道路種別属性を取得し、
前記走行速度特定手段は、前記属性取得手段にて取得された道路種別属性に基づいて前記車両の走行速度を特定する、
請求項3又は4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記地図情報格納手段にて格納された地図情報は、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送の電波を送信する電波塔の位置情報を含み、
前記障害施設特定手段は、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路と前記電波塔との相互間に位置する施設を前記障害施設として、前記地図情報格納手段にて格納された電波塔の位置情報を参照して特定し、
前記視聴制御手段は、前記障害施設特定手段にて特定された前記走行経路と前記電波塔との相互間に位置する障害施設の数に基づいて、前記放送切り替え制限エリアを特定する、
請求項3から5のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記地図情報格納手段にて格納された地図情報は、前記施設の高さ情報と前記電波塔の高さ情報を含み、
前記障害施設特定手段は、前記地図情報格納手段にて格納された前記施設の高さ情報と前記電波塔の高さ情報とに基づいて、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路と前記電波塔を結ぶ直線上に存在する施設を、前記走行経路探索手段にて探索された走行経路と前記電波塔との相互間に位置する障害施設として特定する、
請求項6に記載のナビゲーション装置。
【請求項8】
高品質デジタル放送と当該高品質デジタル放送よりも電波強度が低い場合でも視聴可能な低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能なナビゲーション方法であって、高品質デジタル放送の電波強度が低くなる可能性がある放送切り替え制限エリアに車両が位置している場合には高品質デジタル放送への切り替えを制限して低品質デジタル放送に固定した視聴を行うナビゲーション方法において、
前記車両から所定範囲内に存在する施設であって、前記高品質デジタル放送の電波を遮蔽する可能性がある障害施設を、地図情報格納手段にて格納された地図情報を参照して特定する障害施設特定ステップと、
前記車両の走行速度を特定する走行速度特定ステップと、
前記障害施設特定ステップにて特定された障害施設の数と、前記走行速度特定ステップにて特定された前記車両の走行速度とに基づいて、所定の切り替え制限解除条件が満たされているか否かを判定し、切り替え制限解除条件が満たされていると判定した場合には、前記放送切り替え制限エリアに前記車両が位置している場合においても、高品質デジタル放送と低品質デジタル放送とをこれら各放送の電波強度に基づいて自動的に切り替えて視聴可能とする視聴制御ステップと、
を含むナビゲーション方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法をコンピュータに実行させるナビゲーションプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−211614(P2011−211614A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79027(P2010−79027)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】