説明

ナビゲーション装置

【課題】ディスプレイに表示される分岐点周辺の地図、あるいは車両前方映像に対して、どの地点まで到達すれば分岐点を視認可能となるのかを表す情報を提示することのできるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【解決手段】測位部101と、地図データ102と、入力部104と、表示部105と、制御部103を備え、制御部103は、自車位置判定部106、経路探索部107、分岐点抽出部108により抽出された経路案内情報をユーザに提供する地点(分岐点)の風景を、車両を運転するユーザが最初に視認可能となる地点を特定する視認可能地点特定部109と、表示部105に描画される地図情報に視認可能地点が存在するかどうかの判定を行う描画範囲判定部110と、地図重畳部111から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データや車両の前方を撮影したカメラ映像を利用して経路案内を行うナビゲーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、設定された目的地に対して現在の自車位置からの経路探索を行い、経路上に存在する分岐点に対して、蓄積された地図データを利用して経路案内を行うナビゲーション装置が広く実用化されている。また、HDDやDVDなど記録メディアの大容量化により、より詳細な地図データを記憶しておくことが可能となり、平面的な2次元地図だけでなく、車両を運転するユーザの視点から交差点などの分岐点を見たような立体的な3次元地図をディスプレイに表示して経路案内を行うことで、ユーザにとっては分岐点をどちらに走行すればよいかの判断が容易になってきている(例えば特許文献1参照)。このような3次元地図は、自車両が分岐点まで所定の距離(例えば300m)以内に近づいたときに表示され、ユーザは目の前に広がる分岐点周辺の風景と、ディスプレイに表示される3次元地図および経路案内情報を参照しつつ、自身の右左折するべき進路を特定することになる。
【0003】
一方、蓄積された地図データの代わりに、車両前方に設置されたカメラにより撮影された風景の実写映像を利用して、経路案内を行う技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術によれば、ユーザが実際に見ている風景と同一の映像が画面上に表示され、例えば分岐点が信号機の存在する交差点である場合に、映像中の信号機を画像認識により抽出し強調表示する。これにより、ユーザにとっては、分岐地点の特定がより分かりやすくなるところに特徴がある。
【特許文献1】特開2000−321089号公報
【特許文献2】特開平10−339646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらいずれの技術も、ナビゲーション装置においては、前述したように通常分岐点の案内・表示は自車両が分岐点まで300mなどの距離に近づいたときに開始される。ところが、この時点においては必ずしもユーザは、ナビゲーション装置により提示された分岐点の様子を、実風景の中で視認可能であるとは限らない。自車位置から分岐点までが直線道路であった場合でも、距離が遠ければ分岐点の視認は難しく、さらに、道路が曲がっていたり、坂道であったりした場合には物理的に視認が不可能であるということも多々ある。このような場合、どこまで走行すれば分岐点を視認でき、表示される分岐点の立体地図や前方映像の案内情報と、実際の風景の対応付けをとることができるのかが分からない。そのため自車両が分岐地点を視認できる地点に到達するまで、前方の風景と、表示された画面を頻繁に見比べなければならず、視線移動が多くなり、安全上好ましくない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ディスプレイに表示される分岐点周辺の地図、あるいは車両前方映像に対して、どの地点まで到達すれば分岐点を視認可能となるのかを表す情報を提示することのできるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置の第一の局面は、設定された目的地に至る経路案内を行うナビゲーション装置において、案内情報をユーザに提供する分岐点を抽出する分岐点抽出部と、分岐点を視認可能な地点を特定する視認可能地点特定部と、前記特定された視認可能地点を表すオブジェクトを案内情報と共に表示する表示部から構成される。
【0007】
この構成により、ユーザはどの地点に到達すれば分岐点を視認することができるのかを把握でき、安心感を与えるとともに、度々画面を注視するのを防止できるため、安全運転に寄与することが可能である。
【0008】
第二の局面は、第一の局面のナビゲーション装置であって、表示部に表示される案内情報は、少なくとも地図画像を含み、
表示部に表示される地図画像の範囲内に、視認可能地点が含まれるかどうかを判定する描画範囲判定部をさらに有することを特徴とする。
【0009】
この構成により、自車の移動に伴い描画更新される地図画像に合わせて、適切なタイミングで視認可能地点を表すオブジェクトを案内情報と共に表示することが可能となる。
【0010】
第三の局面は、第一の局面のナビゲーション装置であって、表示部に表示される案内情報は、少なくともカメラにより撮影される実写映像を含み、表示部に表示される実写映像に、視認可能地点が撮影されているかどうかを判定する撮影範囲判定部をさらに有することを特徴とする。
【0011】
この構成により、ユーザは実際に見ている風景と、画面に表示される案内情報の対応付けが容易となり、画面で示された視認可能地点を実際の風景の中で特定するのに要する負荷を低減することが可能となる。
【0012】
第四の局面は、、第三の局面のナビゲーション装置であって、視認可能地点を表すオブジェクトを、座標変換処理により実写映像に重畳する映像重畳部をさらに有することを特徴とする。
【0013】
この構成により、実際の風景の中の車両座標系で表現される視認可能地点を表すオブジェクトを、表示部の画面座標系に投影できる。
【0014】
第五の局面は、第四の局面のナビゲーション装置であって、視認可能地点は道路上の地点、またはランドマークであり、映像重畳部は、地図データを参照して、道路、またはランドマークの形状モデルに基づきオブジェクト形状を作成することを特徴とする。
【0015】
この構成により、視認可能地点を表すオブジェクトをカメラにより撮影された実写映像に即した形状で表示することが可能となる。
【0016】
第六の局面は、第三の局面のナビゲーション装置であって、撮影範囲判定部は、さらに実写映像に分岐点が撮影されているかどうかを判定し、撮影されていない場合には、分岐点の方位を提示することを特徴とする。
【0017】
この構成により、視認可能地点を通過したにも関わらず分岐点が一時的に見えなくなるような場合にでも、分岐点が存在する方位を画面に表示したり、音声出力で提示したりすることで、ユーザに安心感を与えることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、地図データや車両の前方を撮影したカメラ映像を利用して経路案内を行うナビゲーション装置において、分岐点を視認可能な地点を特定する視認可能地点特定部を設けることにより、分岐点案内中であるが、未だ分岐点を視認できないような状況において、ユーザに視認可能地点を提示することで、無駄に画面を注視するのを防止するという効果を有するナビゲーション装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態のナビゲーション装置について、図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態のナビゲーション装置を図1に示す。
【0020】
第1の実施の形態におけるナビゲーション装置は、測位部101と、地図データ102と、入力部104と、表示部105と、制御部103により構成される。なお各図面において、本発明に直接関係しない構成については、これを省略している。
【0021】
次に、これら個別の構成について詳述する。
【0022】
測位部101は、GPS(Global Positioning System)に代表される測位センサやジャイロ、コンパスなど車両の緯度・経度情報や、方位情報を検出するセンサであり、例えば電波を受信しやすいように車両の屋根に取り付けられる。
【0023】
表示部105は、ナビゲーション装置による案内情報をユーザに提示する液晶ディスプレイやタッチパネルなどである。
【0024】
入力部104は、ユーザから目的地情報などの入力を受け付けるリモコンや音声認識、タッチパネルなどである。
【0025】
地図データ102は、道路(リンク)や交差点(ノード)に関するデータ、施設などのランドマーク情報等の地図情報が記憶される、例えば、HDDやDVDである。しかしながらこれに限らず、図示しない通信手段(例えば、携帯電話)によって地図データ102に格納する情報をセンター設備より都度ダウンロードする構成も可能である。
【0026】
図2に、地図データ102に記憶されている地図情報の中で、本実施の形態に関連する情報を抜粋したデータを示す。地図データ102には、図2(A)ノードデータ、図2(B)補完ノードデータ、図2(C)リンクデータが含まれる。図2(A)ノードデータは、交差点や合流地点など、幾方向かに道路が分岐する地点であり、ノードごとに緯度・経度などの位置情報、該ノードに接続する、後述するリンクの数およびリンクのIDにより構成されている。図2(B)補完ノードデータは、後述するリンク上に存在し、リンクが直線状でない場合など、その形状を表現するための曲折点を表すものであり、緯度・経度などの位置情報、自身が存在するリンクIDにより構成されている。図2(C)リンクデータはノードとノードを結ぶ道路を表すものであり、リンクの端点である始点ノード、終点ノード、リンクの長さ(単位はメートルやキロメートルなど)、リンクの幅(単位はメートルなど)、一般道路、高速道路などの道路種別、前述した補完ノードの数、およびそのIDにより構成されている。
【0027】
このような地図データにより形成される道路と分岐点のネットワークは図3のように幾何学的に表現することができる。すなわち、地図データ102に記憶されているノード、および補完ノードの座標情報から、各ノード、補完ノード間のリンクのリンク角、およびリンクの長さを求めることができる。ちなみに、図の例で距離D1,D2,D3の和は地図データ102に記憶されているリンクL6のリンク長となる。なお、リンクが直線的な道路の場合は、補完ノードは無くても良い。
【0028】
制御部103は、ナビゲーション装置全体の動作を制御するCPUやMPUであり、図1に示すように自車位置判定部106、経路探索部107、分岐点抽出部108、視認可能地点特定部109、描画範囲判定部110、地図重畳部111により構成される。以下、制御部103の各構成について詳述する。
【0029】
自車位置判定部106は、測位部101の各種センサ、および車速などの車両情報を基にマップマッチングを行い、自車位置および自車の進行する方位を判定する。
【0030】
経路探索部107は、自車位置判定部106により判定される自車位置と、入力部104から入力された目的地に関する情報に基づいて、地図データ102を参照して目的地までの経路を探索する。経路探索のアルゴリズムはダイクストラ法に代表される手法に従う。
【0031】
分岐点抽出部108は、経路探索部107により探索された経路上のノードの中で、右左折など車両が進路を変更する地点、すなわちナビゲーション装置が経路案内情報をユーザに提供する地点を抽出する。
【0032】
視認可能地点特定部109は、分岐点抽出部108により抽出されたノードそれぞれについて、そのノードに対応する実際の分岐点の風景を、車両を運転するユーザが最初に視認可能となる地点を特定する。
【0033】
まず、ある地点に対して、ユーザがその風景を視認可能であるかどうかを判定する方法について図4、図5を用いて説明する。車両を運転するユーザの視野範囲は、通常視野角θ、距離dを用いて図4のように模式的に表現できる。視野角θは、例えば30度程度の角度であり、距離dは例えば100mから150m程度の長さであるがこの限りではない。このような視野範囲の考え方に基づき、図5に示すように、北を0度としたリンクの傾きであるリンク角θのリンク上を、その方向に従って走行していると想定する自車位置を基点として、(θ−θ/2)度から(θ+θ/2)度、距離dの三角形で表現される領域にノードが存在すれば、その基点位置においてノードに対応する分岐点を視認可能であると判定する。このような判定は、図3に示したようなノード、リンクのネットワークの幾何学的モデルに基づいて行うことが可能である。なおユーザの視野範囲は図4、図5で示したような三角形に限らず、扇型やその他任意の形状であってもよい。
【0034】
このような判定方法を用いて、分岐点抽出部108により抽出される各分岐点に対して、それぞれを視認可能な地点がどこであるのかを特定する処理について、図6(A)、(B)を参照して説明する。まず図6(A)に示すように、判定のための基点を、分岐点に対する案内開始地点(分岐点からリンク上の長さで所定の距離だけ手前となる地点)に置き、分岐点が視野範囲に入るかどうかの判定を行う。このとき、道路が直線で、案内開始地点と分岐点の距離が視野範囲の距離d以下であるような場合には、案内開始地点において分岐点の視認が可能と判定する。案内開始地点において分岐点が視野範囲内に存在しない場合には、図6(B)に示すようにリンクに沿って基点を分岐点方向にシフトさせ、各シフトさせた地点において順次分岐点が視認可能であるかどうかの判定を行う。そして最初に視認可能となった地点を、その分岐点に対する視認可能地点として特定する。以上のような特定処理を経路上のすべての分岐点に対して実施する。なお特定処理は、自車両が対象となる分岐点に接近する以前、遅くとも、自車両が案内開始地点に到達するより前にあらかじめ行われるのが好ましい。
【0035】
描画範囲判定部110は、自車両が走行している状況において、次の分岐点に視認可能地点が存在する場合に、自車位置が該分岐点に対する案内開始地点を過ぎた後、表示部105に描画される地図情報に視認可能地点が存在するかどうかの判定を行う。この判定方法について図7(A)、(B)に示す模式図を用いて説明する。通常地図情報は、図7(A)に矩形で示した、自車位置に対応する地図描画範囲の地図情報が表示部105に描画される。そしてこの矩形範囲は、図7(B)に示すように自車位置の移動とともに移動する。自車位置判定部106により、図7(A)に示すように、自車位置が案内開始地点を走行していると判定されると、視認可能地点が表示部105に描画する矩形範囲に存在するかどうかの判定を行う。存在しない場合には、自車位置の移動に伴って順次更新される描画範囲に対して、視認可能地点が存在するかどうかの判定を行う。
【0036】
地図重畳部111は、描画範囲判定部110により視認可能地点が描画範囲に存在すると判定されると、表示部105に描画する地図情報に対して視認可能地点を表すオブジェクトを重畳して、表示部105に表示する。表示される画面の例を図8に示す。図のように、分岐点に対する案内情報として表示される2次元地図、3次元交差点拡大図に対して、網掛けで示したようなオブジェクトが重畳されている。また、分岐点までの距離情報だけでなく、視認可能地点までの距離情報も表示してもよい。なお、図8の例では、画面に2次元地図と3次元交差点拡大図が表示される例について示したが、本発明が適用されるのはこれに限らず、子画面に交差点拡大図が表示される態様でもよく、どのような地図の表示態様であってもよい。また視認可能地点を表すオブジェクトは図のような網掛け表示に限定されるものではなく、看板を表示する等、ユーザにより識別可能な態様であればよい。
【0037】
次にこのように構成されるナビゲーション装置の処理の流れについて、図9、10のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
まず、経路探索部107から視認可能地点特定部109までの、視認可能地点を特定する処理の流れを図9を用いて説明する。入力部104により目的地に関する情報が入力され、自車位置判定部106により判定された自車位置情報に基づき、経路探索部107により経路探索がなされると(ステップS1001でYes)、分岐点抽出部108において、探索された経路上に存在する分岐点を1つ抽出する(ステップS1002)。視認可能地点特定部109では、抽出された分岐点に関して、案内開始地点において分岐点の視認が可能かどうかの判定がなされる。分岐点の視認が可能であるなら(ステップS1003でYes)、ステップS1002に戻り、分岐点抽出部108により次の分岐点の抽出がなされる。分岐点の視認ができない場合(ステップS1003でNo)、視認可能地点特定部109では案内開始地点から分岐点方向に向けて、視野範囲を順次進めていく(ステップS1004)。そして分岐点を視認可能な地点が存在すると(ステップS1005でYes)、その地点を視認可能地点として特定する(ステップS1006)。そして、他に分岐点が存在すればステップS1002に戻って処理が継続し、存在しなければ処理を終了する。
【0039】
次に、描画範囲判定部110から地図重畳部111までの、視認可能地点の描画を判定する処理の流れを図10を用いて説明する。
【0040】
自車位置判定部106により、自車両が分岐点に対する案内開始地点に到達したと判定されると(ステップS2001でYes)、描画範囲判定部110は、該分岐点に視認可能地点特定部109により特定された視認可能地点が存在するかどうかの判定を行う。存在しない場合は(ステップS2002でNo)、自車両が次の分岐点の案内開始地点に到達するまで待機状態となる。存在する場合は(ステップS2002でYes)、自車両の位置を基点とした地図の描画範囲に視認可能地点が存在するかどうかの判定を行い、存在しなければ(ステップS2003でNo)、視認可能地点が描画範囲内に存在する位置に自車両が到達するまで判定を繰り返す。存在すれば(ステップS2003でYes)、地図重畳部111において、地図データから読み出した地図と、視認可能地点を表すオブジェクトを重畳し、表示部105に対して表示を行う(ステップS2004)。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態におけるナビゲーション装置によれば、ユーザが実際に見る風景を模式的に表現した地図上に、分岐点を視認可能な地点を特徴付けて表示する。これにより案内情報が表示された画面を見るユーザは、自車位置が視認可能地点に到達するまでは分岐点が視認できないことが容易に分かり、自車の移動に伴い、自車位置のマークが視認可能地点に到達するまでは画面を注視することなく、運転に集中することができ、無駄に画面を見る手間を省くことが可能となる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態のナビゲーション装置を図11に示す。
【0042】
図中、第1の実施の形態と同一の構成については同一番号を付与し、詳細な説明は省く。第2の実施の形態におけるナビゲーション装置は、測位部101と、地図データ102と、カメラ1101と、入力部104と、表示部105と、制御部103により構成される。
【0043】
次に、これら個別の構成について詳述する。
【0044】
カメラ1101は、CCDやCMOS等の撮像装置であり、車両の前方を撮影する。カメラ1101により撮影される映像を特徴付けるパラメータとして、車両に対する設置位置、水平面に対する設置角度、視野角、焦点距離(f値)などがある。
【0045】
制御部103は、経路探索部107、分岐点抽出部108、視認可能地点特定部109、撮影範囲判定部1102、映像重畳部1103により構成され、撮影範囲判定部1102、映像重畳部1103以外の構成については第1の実施の形態と同一の機能を有するため説明を省略する。
【0046】
撮影範囲判定部1102は、視認可能地点特定部109により視認可能地点を有すると判定された分岐点に向けて走行する車両において、自車が存在するリンク上の位置と測位部101により測位される自車両の絶対方位の値を用いて、カメラ1101により撮影された映像のうち表示部105の表示範囲に該視認可能地点が含まれるかどうかを判定する。
【0047】
判定方法について、図12を用いて説明する。撮影範囲判定部1102では、自車位置判定部106により判定される、自車が存在するリンク上の位置と、測位部101により測位される、自車両が走行する絶対方位(あるいはリンク角に対する角度の差分でもよい)を取得する。そして、その位置、方位におけるカメラ1101の撮影範囲を特定する。撮影範囲は、カメラパラメータの視野角θ’の領域が理論上無限遠まで延びるが、現実的には図13に示すように適当な距離d’(例えば、200mや300m)だけ離れたところで打ち切ってもよい。撮影範囲が特定されると、撮影範囲判定部1102は、撮影範囲内に視認可能地点が存在するかどうかを判定し、存在する場合は後述する車両座標系における視認可能地点の位置を幾何学的に算出する。図12に示すように、カメラ1101の撮影範囲は、カメラの撮影範囲を示す図13の視野角θ’と距離d‘を用いて、自車位置を基点に北を0度とすると、(θ−θ’/2)度から(θ+θ’/2)度、距離d’の三角形で表現される。よって、視認可能地点が存在するかどうかの判定は、第1の実施の形態と同様、地図データ102、および自車両の位置、方位に関する情報に基づき幾何学的に行うことが可能である。なお、第1の実施の形態と同様、撮影範囲は三角形に限定されるものではない。
【0048】
また第1の実施の形態では、自車両はリンク方向に走行していると仮定した。これは表示部105に地図が表示される場合、自車位置判定部106により自車があるリンク上に存在すると判定されると、自車位置の時系列情報から、自車はそのリンクに沿っていずれかの方向を向いて走行していると捉え、対応する方向の地図が表示されるためである。本実施の形態のようにカメラ映像を表示する場合、表示される映像はリンク方向に限定される訳ではなく自車の向きに応じて忠実に前方の風景を映し出す。そのため後述するように実写映像中にオブジェクトを重畳する場合、オブジェクトを重畳したい実際の風景中の位置(具体的には視認可能地点の位置)が、カメラ映像中のどの位置に相当するのかを正確に把握した上で、座標変換を行う必要がある。そのため、本実施の形態では自車両の絶対方位を取得する必要がある。
【0049】
次に、映像重畳部1103の処理について述べる。映像重畳部1103は、撮影範囲判定部1102により、映像中に視認可能地点が映っていると判定されると、視認可能地点を表すオブジェクトを映像に対して重畳し、表示部105に出力する。
【0050】
ここでまず、座標系について説明する。オブジェクトの重畳表示を行うために、図14に示すような図14(A)車両座標系、図14(B)カメラ座標系、図14(C)画面座標系の3つの座標系を定義する。図14(A)車両座標系は、車両前方の中心を原点として、進行方向をXa軸、車両右方をYa軸、車両下方をZa軸とした座標系である。図14(B)カメラ座標系は、カメラ光軸中心を原点として、撮影方向をZb軸、車両左方をYb軸、車両下方をXb軸とした座標系である。図14(C)画面座標系は、表示部105における座標系であり、進行方向に対して車両の下方をXc軸、車両の右方をYc軸とした座標系である。なお、いずれの座標系においても軸同士は互いに直交するものとする。
【0051】
撮影範囲判定部1102により視認可能地点が映っていると判定された場合に、合わせて算出される車両座標系における位置情報は、最終的にユーザに対して表示部105に表示される画面座標系へと座標変換処理される。ここでその手順を示す。まず第一ステップで、車両座標系からカメラ座標系への変換処理を行う。この処理はカメラパラメータとして車両に対する設置位置、水平面に対する設置角度を用い、座標系の平行移動、および回転移動により座標を変換する。次のステップで、カメラ座標系から画面座標系への変換処理を行う。この処理はカメラパラメータとして焦点距離(f値)を用い、投影変換により座標を変換する。これらの処理により、実際の風景の中の車両座標系で表現される視認可能地点を表すオブジェクトを、表示部105の画面座標系に投影できる。そしてカメラ1101により取得される車両前方映像と重ねることで、車両前方映像に撮影されている視認可能地点の位置にオブジェクトが重畳表示されることになる。なお、重畳するオブジェクトの形状については任意のものを考えることができる。例えば視認可能地点を表すオブジェクトを道路上に重畳する場合、地図データ102を参照して道路の形状(方向や幅などを含む)をモデル化し、その形状に沿うようなオブジェクト形状を作成することができる。
【0052】
以上の処理により、表示部105に重畳表示された画面の一例を図15に示す。図では画面を2つに分割し、片方に2次元地図を、もう片方に実写映像を表示し、それぞれに対して視認可能地点を表すオブジェクトを重畳表示している。実写映像中のオブジェクトは、道路形状のモデルに基づき、道路形状に沿うように作成されている。また、実写映像には進むべき進路を示す案内情報も合わせて重畳表示されている。これは前述したオブジェクト重畳技術を利用して同様に行うことができる。
【0053】
なお画面分割はこれに限られるものではなく、実写映像のみが表示されるのでもよいし、実写映像と3次元地図で構成されてもよい。また、オブジェクトは必ずしも路面上に重畳される必要はなく、例えば視認可能地点付近にランドマークが存在する場合にはそのランドマークに対して所定の形状のオブジェクトを重畳表示してもよい。このとき、地図データ102にランドマークの形状データが記憶されていればその形状のオブジェクトを重畳表示することもできる。
【0054】
次にこのように構成されるナビゲーション装置において、視認可能地点を表すオブジェクトを重畳表示する処理を図16のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
自車位置判定部106により、自車位置が分岐点に対する案内開始地点に到達したと判定されると(ステップS3001でYes)、撮影範囲判定部1102は、該分岐点に視認可能地点特定部109により特定された視認可能地点が存在するかどうかの判定を行う。存在しない場合は(ステップS3002でNo)、自車両が次の分岐点の案内開始地点に到達するまで待機状態となる。存在する場合は(ステップS3002でYes)、自車両の位置を基点としたカメラ1101による撮影範囲に視認可能地点が存在するかどうかの判定を行い、存在しなければ(ステップS3003でNo)、視認可能地点が撮影範囲内に存在する位置に自車両が到達するまで判定を繰り返す。存在すれば(ステップS3003でYes)、映像重畳部1103において、視認可能地点を表すオブジェクトの座標変換処理を行い(ステップS3004)、カメラ1101から取り込まれた実写映像に対して重畳処理を行い(ステップS3005)、表示部105に対して表示を行う。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態におけるナビゲーション装置によれば、ユーザが実際に見る風景の実写映像に対してオブジェクトを重畳し、分岐点を視認可能な地点を特徴付けて表示する。これにより画面を見るユーザは、自車位置が視認可能地点に到達するまでは分岐点が視認できないことが容易に分かり、自車の移動に伴い、自車位置のマークが視認可能地点に到達するまでは画面を注視することなく、運転に集中することができ、無駄に画面を見る手間を省くことが可能となる。また、実写映像中に重畳することで、第1の実施の形態のように実風景を模式化した地図を用いる場合に比べて、より実際の風景との対応付けが容易となり、画面で示された視認可能地点を実際の風景の中で特定するのに要する負荷を下げることが可能となる。
【0057】
なお、撮影範囲判定部1102は、視認可能地点が撮影範囲に入ったかどうかを判定するだけでなく、同様の判定方法により分岐点が撮影範囲に入っているかどうかの判定、および入っていない場合は撮影範囲に対する分岐点の方向の判定を行ってもよい。これにより次のような機能を実現できる。すなわち、視認可能地点に到達しても、車両方位がリンク方位とずれている場合(車線変更時など車両が必ずしもリンク方位を向いていない場合)には分岐点が撮影範囲からはずれることがある。このような場合、撮影範囲判定部1102の判定に従い、分岐点が撮影されていないのであれば、分岐点が撮影範囲に入るために移動すべき(ハンドルを操作するべき)車両の方向を提示することで、ユーザにとっては有益な情報となる。
【0058】
また、第1、第2の実施の形態では、道路が曲折している場合の視認可能地点の特定方法について述べたが、道路が坂道である場合にも適用することができる。具体的には図17に示すような断面形状をもつ道路において、地図データ102の情報に、水平面に対する道路の傾斜角度に関する情報が記憶されている場合、視野範囲の垂直方向の視野角を考慮することで、水平方向に関して記載した本実施の形態と同様、幾何学的に視野範囲内かどうかの判定が可能となる。もちろん、視野範囲に限らずカメラ1101の撮影範囲に対しても適用可能であることは言うまでもない。なお、道路の傾斜角度は、リンクの情報として保持されていてもよいし、リンクの端点であるノード、あるいはリンク上の補完ノードに高度情報が保持されていれば、その情報から算出することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、経路案内情報(分岐方向の表示や、分岐点までの距離、視認可能地点までの距離など)が表示部105に表示される場合のみを示したが、ナビゲーション装置が音声出力部を備える場合には、表示される案内情報と連動した音声情報を提示可能であることは言うまでもない。
【0060】
また、案内開始地点において分岐点が視認可能となるときは、必ずしも地図、あるいは実写映像中に視認可能地点を表すオブジェクトを重畳する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明は、分岐点を視認可能な地点を特定する視認可能地点特定部を設けることにより、分岐点案内中であるが、未だ分岐点を視認できないような状況において、ユーザに視認可能地点を提示することで、無駄に画面を注視するのを防止するという効果を有し、地図データや車両の前方を撮影したカメラ映像を利用して経路案内を行うナビゲーション装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるナビゲーション装置のブロック図
【図2】(A)地図データに記憶されているノードデータの一例を示す図(B)地図データに記憶されている補完ノードデータの一例を示す図(C)地図データに記憶されているリンクデータの一例を示す図
【図3】地図データに記憶されているノード、補完ノード、リンクにより形成される道路と分岐点のネットワークの一例を示す図
【図4】運転者の視野範囲の一例を示す図
【図5】視認可能な地点の判定方法を説明する図
【図6】(A)案内開始地点における視認可能地点特定部による特定処理を説明する図(B)リンクに沿って基点を分岐点方向にシフトする様子を示した図
【図7】(A)案内開始地点における描画範囲判定部による表示判定処理を説明する図(B)地図描画範囲が自車位置の移動と共に遷移する様子を示した図
【図8】本発明の第1の実施の形態において表示部に表示される画面の一例を示す図
【図9】本発明の第1の実施の形態における視認可能地点特定処理の動作を説明するフローチャート
【図10】本発明の第1の実施の形態における視認可能地点描画処理の動作を説明するフローチャート
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるナビゲーション装置のブロック図
【図12】撮影範囲判定部による判定処理を説明する図
【図13】カメラの撮影範囲の一例を示す図
【図14】(A)車両座標系を示す図(B)カメラ座標系を示す図(C)画面座標系を示す図
【図15】本発明の第2の実施の形態において表示部に表示される画面の一例を示す図
【図16】本発明の第2の実施の形態における視認可能地点描画処理の動作を説明するフローチャート
【図17】垂直方向の視野範囲における視認可能地点特定処理を説明する図
【符号の説明】
【0063】
101 測位部
102 地図データ
103 制御部
104 入力部
105 表示部
106 自車位置判定部
107 経路探索部
108 分岐点抽出部
109 視認可能地点特定部
110 描画範囲判定部
111 地図重畳部
1101 カメラ
1102 撮影範囲判定部
1103 映像重畳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された目的地に至る経路案内を行うナビゲーション装置において、
案内情報をユーザに提供する分岐点を抽出する分岐点抽出部と、
前記分岐点を視認可能な地点を特定する視認可能地点特定部と、
前記特定された視認可能地点を表すオブジェクトを案内情報と共に表示する表示部と、
を有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーション装置であって、
前記表示部に表示される案内情報は、少なくとも地図画像を含み、
前記表示部に表示される地図画像の範囲内に、前記視認可能地点が含まれるかどうかを判定する描画範囲判定部をさらに有する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1記載のナビゲーション装置であって、
前記表示部に表示される案内情報は、少なくともカメラにより撮影される実写映像を含み、
前記表示部に表示される前記実写映像の表示範囲に、前記視認可能地点が含まれるかどうかを判定する撮影範囲判定部をさらに有する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3記載のナビゲーション装置であって、
前記視認可能地点を表すオブジェクトを、座標変換処理により実写映像に重畳する映像重畳部をさらに有する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項4記載のナビゲーション装置であって、
前記視認可能地点は道路上の地点、またはランドマークであり、
前記映像重畳部は、地図データを参照して、道路、またはランドマークの形状モデルに基づきオブジェクト形状を作成する、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項3記載のナビゲーション装置であって、
前記撮影範囲判定部は、さらに実写映像に分岐点が撮影されているかどうかを判定し、撮影されていない場合には、分岐点の方位を提示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
設定された目的地に至る経路案内を行うナビゲーション方法であって、
案内情報をユーザに提供する分岐点を抽出する分岐点抽出ステップと、
前記分岐点を視認可能な地点を特定する視認可能地点特定ステップと、
前記特定された視認可能地点を表すオブジェクトを案内情報と共に表示する表示ステップと、
を有することを特徴とするナビゲーション方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2007−206014(P2007−206014A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28070(P2006−28070)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】