説明

ナビゲーション装置

【課題】設定したルートに沿った走行を行えるように車線変更を支援する「ナビゲーション装置」を提供する。
【解決手段】誘導ルート510として分岐点501を直進する経路が設定されている場合(b)、分岐点501までの道程距離がDとなる位置で車線変更是非確認要求が発生すると、分岐点501の手前の全ての車線で誘導ルート510に従って分岐点501を直進できるので、「この先、車線変更しても大丈夫です」との音声メッセージをユーザに対して出力する。一方、誘導ルート510として、分岐点501で右方向に分岐する道路に進む経路が設定されている場合(c)、車線変更是非確認要求が発生すると、分岐点501の手前の左車線では誘導ルート510に従って分岐点501で右方向に分岐できないので、「この先Dm、次の分岐手前で、右車線です」との音声メッセージを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されるナビゲーション装置において車線変更を支援する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載されるナビゲーション装置において車線変更を支援する技術としては、目的地までのルート案内を行うナビゲーション装置において、手前に車線毎の進行方向別通行区分が設定されている分岐点に接近したときに、当該分岐点をルートに沿った方向に通過するために走行すべき車線を案内する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平07-129889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分岐点手前に進行方向別通行区分が設定されており、当該分岐点をルートに沿った方向に通過するため特定の車線で当該分岐点に進入しなければならない場合において、当該分岐点で当該方向に向かう車両が多いために当該車線に長い渋滞が生じている場合、当該車線の進行方向別通行区分が設定されている区間に近づいてからでは当該特定の車線に車線変更できなくなる場合がある。したがって、このような場合には、前記特許文献1の技術によって、分岐点に接近した時点で車線を案内しても、ユーザは、当該車線に進むことができず、結果、ルートに沿った走行を行うことができなくなる。
【0004】
そこで、本発明は、より確実に、設定したルートに沿った走行を行えるように、ユーザの車線変更を支援することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載されるナビゲーション装置を、現在位置を算出する現在位置算出手段と、目的地までの経路を探索して誘導経路として設定し、当該誘導経路を案内する経路案内手段と、車線変更支援手段とを含めて構成し、前記車線変更支援手段において、所定の契機で、道路を構成する各車線に設定されている進行方向別通行区分の情報を含む道路地図データに基づいて、前記誘導経路上の前記現在位置から進行方向側に所定距離内の分岐であって、当該分岐直前の区間に当該分岐を誘導経路外にのみ通過することができる進行方向別通行区分が設定されている車線が存在する分岐を、走行車線制限分岐として探索し、前記走行車線制限分岐が存在した場合に、存在した走行車線制限分岐のうちの現在位置最寄りの走行車線制限分岐までの前記現在位置からの距離と、前記誘導経路に沿って当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐を通過するために、当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐直前の区間において走行すべき車線とを案内するメッセージを出力するようにしたものである。
【0006】
このようなナビゲーション装置によれば、誘導経路に従って走行できなくなる車線が直前区間に存在する分岐が所定距離内に存在する場合に、ユーザが、予め当該車線と当該分岐までの距離を把握して、誘導経路に従って走行する上での車線変更の是非を判断することができるようになる。
【0007】
また、前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載されるナビゲーション装置を、現在位置を算出する現在位置算出手段と、目的地までの経路を探索して誘導経路として設定し、当該誘導経路を案内する経路案内手段と、走行中の車線を識別する車線認識手段と、車線変更支援手段とを含めて構成し、前記車線変更支援手段において、所定の契機で、前記車線認識手段が識別した走行中の車線に基づいてユーザが意図している車線変更の車線変更先の車線を推定し、道路を構成する各車線に設定されている進行方向別通行区分の情報を含む道路地図データに基づいて、前記誘導経路上の前記現在位置から進行方向側に所定距離内の分岐であって、当該分岐直前の区間の前記推定した車線変更先の車線に当該分岐を誘導経路外にのみ通過することができる進行方向別通行区分が設定されている分岐を、走行車線制限分岐として探索し、前記走行車線制限分岐が存在した場合に、存在した走行車線制限分岐のうちの現在位置最寄りの走行車線制限分岐までの前記現在位置からの距離と、前記誘導経路に沿って当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐を通過するために、当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐直前の区間において走行すべき車線とを案内するメッセージを出力するようにしたものである。
【0008】
このようなナビゲーション装置によれば、直前区間において推定した車線変更先の車線が誘導経路に従って走行できなくなる車線となる分岐が、所定距離内に存在する場合に、ユーザが、予め当該車線と当該分岐までの距離を把握して、誘導経路に従って走行する上での車線変更の是非を判断することができるようになる。
【0009】
ここで、以上のナビゲーション装置は、前記車線変更支援手段において、前記走行車線制限分岐が存在しない場合に、車線変更を行っても支障がない旨を表すメッセージを出力するように構成することも好ましい。
【0010】
このようにすることにより、誘導経路に従って進行するために通行しなければならない車線が所定距離内に存在しない場合に、ユーザは安心して車線変更を行うことができるようになる。
【0011】
ここで、以上のナビゲーション装置において、前記所定の契機としては、たとえば、ユーザの所定操作入力の発生や、現在位置地点における渋滞の検出の発生としてもよい。
また、以上のナビゲーション装置に、当該ナビゲーション装置が搭載された自動車が行った車線変更の頻度を算定する車線変更頻度算定手段と、前記所定距離を、前記車線変更頻度算定手段が算定した頻度が大きいほど小さくなるように調整する調整手段とを備えることも好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、設定したルートに沿った走行を行えるように、ユーザの車線変更を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは、自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、ナビゲーション装置1と、車両前方を撮影するカメラ2と、スピーカ3と、操作部4と、表示装置5と、車両状態センサ6と、GPS受信機7と、渋滞情報などの交通情報を受信するVICS受信機8とを備えて構成される。ここで、車両状態センサ6は、角加速度センサや地磁気センサなどである方位センサや、車速パルスセンサなどである車速センサなどの、車両の各種状態を検出する各種センサである。
【0014】
そして、ナビゲーション装置1は、現在状態算出部11、ルート探索部12、地図を表す地図データを記憶したDVDドライブやHDDなどの記憶装置である地図データ記憶部13、メモリ14、カメラ2が撮影した画像に対して車線認識や他車認識などの各種画像認識処理を行う画像認識処理部15、合成音声を生成しスピーカ3から出力する音声生成部16、制御部17、案内画像生成部18、操作部4や表示装置5を用いたユーザとの間の入出力を制御するGUI制御部19とを有する。
【0015】
但し、以上のナビゲーション装置1は、ハードウエア的には、マイクロプロセッサや、メモリや、その他のグラフィックプロセッサやジオメトリックプロセッサ等の周辺デバイスを有するコンピュータであって良く、この場合、以上に示したナビゲーション装置各部は、マイクロプロセッサが予め用意されたプログラムを実行することにより具現化するプロセスとして実現されるものであって良い。また、この場合、このようなプログラムは、記録媒体や適当な通信路を介して、ナビゲーション装置1に提供されるものであって良い。
【0016】
次に、図2に、地図データ記憶部13に記憶される地図データの内容を示す。
図示するように、地図データは、地図データのバージョン等を記述した管理データ、各路線の路線名称などの各種情報を登録した路線データ、地図を表す基本地図データとを含んで構成される。
そして、基本地図データは、道路網を表す道路ユニットと、地図に含まれる道路以外の描画オブジェクト(地名や地形図形等)を表す描画ユニットとを有する。
ここで、道路ユニットは、ノードと、ノード間を連結するリンクの集合として道路網を定義しており、当該道路ユニットは、ノード毎に設けられたノードデータと、リンク毎に設けられたリンクデータとを有する。なお、同じ道路区間の上り、下り方向のそれぞれについて、各々リンクは設けられる。
【0017】
また、各ノードデータには、対応するノードの識別子となるノード番号、対応するノードの各種属性を表すノード属性、対応するノードの位置を表すノード座標、ノード接続情報を含み、ノード接続情報には、対応するノードに接続するリンクのリンク番号と、対応するノードに一本のリンクを介して接続する他のノードのノード番号とが登録される。
【0018】
また、各リンクデータには、対応するリンクの識別子となるリンク番号、対応するリンク各種属性を表すリンク属性、対応するリンクの端点となる二つノードのノード番号を表す端点ノード番号、リンクの端点となる各ノードに接続する他のリンクを表すリンク接続情報、車線情報が登録される。
【0019】
そして、車線情報には、対応するリンク上に存在する車線の数を表す車線数と、各車線の進行方向別通行区分の設定の有無及び設定されている進行方向別通行区分の内容を表す進行方向別通行区分情報とが登録されている。
さて、このような構成において、ナビゲーション装置1の現在状態算出部11は、以下の処理を繰り返し行う。
すなわち、現在状態算出部11は、車両状態センサ6やGPS受信機7の出力から推定される現在位置と進行方向である仮現在位置と仮現在進行方向に対して、地図データ記憶部13から読み出した地図データが示す前回決定した現在位置の周辺のリンクとのマップマッチング処理を施して、仮現在位置や仮現在進行方向に最も整合するリンク上の位置と当該リンクの方向を現在位置、現在進行方向として算定する。そして、算定した現在位置と現在進行方向を表す現在位置情報をメモリ14にセットする。
【0020】
また、制御部17は、ユーザから操作部4、GUI制御部19を介して目的地の設定を受付け、これをメモリ14にセットする。そして、目的地までの誘導ルートをルート探索部12に探索させる。ルート探索部12は、必要地理的範囲の地図データを地図データ記憶部13から読み出し、メモリ14に設定されている現在位置情報が示す現在位置から目的地までの最小コストの経路を、距離最小、時間最小などの所定のコストモデルに基づいて探索し、探索した経路を誘導ルートとし、誘導ルートの経路データを誘導ルートデータとして、メモリ14にセットする。
【0021】
また、制御部17は、メモリ14にセットされた現在位置情報が示す現在位置が目的地近傍となったならば、目的地到着と判定し、メモリ14にセットされている目的地と誘導ルートをクリアする処理を行う。
また、案内画像生成部18は、制御部17の制御に従って、地図データの描画ユニットが示す地図表示範囲内の描画オブジェクト(地名や地形図形等)と、地図データの道路ユニットのリンクデータが示す地図表示範囲内のリンクを描画して、地図画像を生成する。また、案内画像生成部18は、描画した地図画像上に、メモリ14にセットされている現在位置情報が示す現在位置や、メモリ14にセットされた誘導ルートデータが示す誘導ルートや、メモリ14にセットされた目的地を表す図形を描画し、案内画像としてGUI制御部19を介して表示装置5に表示する処理を繰り返し行う。
【0022】
そして、制御部17は、さらに図3に示す車線変更支援処理を行う。
図示するように、この処理では、現在、誘導ルートが設定されているかどうかを調べ(ステップ302)、設定されていなければ誘導ルートが設定されるのを待つ。一方、誘導ルートが設定されていれば、ユーザの操作部4の所定の操作によって発生する車線変更是非確認要求が発生しているかどうかを調べ(ステップ304)、発生していなければステップ302の処理に戻る。
【0023】
一方、車線変更是非確認要求が発生していれば、メモリ14に設定されている現在位置情報と誘導ルートデータと地図データとを参照して、誘導ルート上の現在位置より進行方向側の現在位置より所定道程距離L(たとえば、Lは1Km)以内の区間内に、交差点などの分岐点であって、当該分岐点の直前の道路区間に、誘導ルートに沿った方向に当該分岐点を通過できない進行方向専用の進行方向別通過区分が設定されている車線が存在する分岐点が存在するかどうかを調べる(ステップ306)。なお、各道路区間の、各車線の進行方向別通過区分の設定状況は、地図データのリンクデータの車線情報より求めることができる。
【0024】
そして、そのような分岐点が存在せず探索が失敗した場合には(ステップ308)、たとえば、「この先、車線変更しても大丈夫です」といったような車線変更を行っても支障がない旨を示す音声メッセージを音声生成部16にスピーカ3から出力させ(ステップ318)、ステップ302からの処理に戻る。
【0025】
一方、そのような分岐点が存在し探索が成功した場合には(ステップ308)、探索された分岐点のうちの最も現在地よりの分岐点を案内地点に設定し、現在位置から分岐点までの誘導ルートに沿った道程距離Dと(ステップ310)、推奨ルート上の案内地点よりも現在位置よりにある分岐点の数Mと(ステップ312)、案内地点の直前の道路区間の車線であって、案内地点を誘導ルートに沿った方向に通過できる車線#(ステップ314)を、地図データのリンクデータの車線情報などを参照して求める。
【0026】
そして、算出した距離Dと、分岐点数Mと、車線#を案内する音声メッセージを音声生成部16にスピーカ3から出力させ(ステップ316)、ステップ302からの処理に戻る。ここで、このステップ318で出力する音声メッセージは、「この先600m、3個目の分岐手前で、左車線です」(D=600M、M=2、#=左車線の場合)や、「この先200m、次の分岐手前で、右車線です」(D=200M、M=0、#=右車線の場合)といったものとする。
【0027】
ここで、このような車線変更支援処理の処理例を図4に示す。
いま、図4aに示すような分岐点401が存在し、分岐点401の手前の道路区間の左車線に分岐点401から左方向に分岐する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定され、分岐点401の手前の道路区間の右車線に分岐点401から右方向に分岐する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定されている場合を例にとる。
【0028】
この場合、図4bに示すように、本実施形態に係る車載システムを搭載し、誘導ルート410として、分岐点401で左方向に分岐する道路に進む経路が設定されている車両420が分岐点401までの道程距離がD(ただし、D<所定道程距離L)となる位置に位置している時点で、車線変更是非確認要求が発生すると、分岐点401の手前の右車線では誘導ルート410に従って分岐点401で左方向に分岐できないので、分岐点401が案内地点に設定され、「この先Dm、次の分岐手前で、左車線です」との音声メッセージがユーザに対して出力されることになる。
【0029】
次に、図5aに示すような分岐点501が存在し、分岐点501の手前の道路区間の左車線に分岐点501を直進する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定され、分岐点501の手前の道路区間の右車線に分岐点501を直進する進行方向と分岐点501を右方向に分岐する進行方向の進行方向別通行区分が設定されている場合を例にとる。
【0030】
この場合、図5bに示すように、本実施形態に係る車載システムを搭載し、誘導ルート510として、分岐点501を直進する経路が設定されている車両520が分岐点501までの道程距離がD(ただし、D<所定道程距離L)となる位置に位置している時点で、車線変更是非確認要求が発生すると、分岐点501の手前の全ての車線で誘導ルート510に従って分岐点501を直進できるので、分岐点501は案内地点に設定されず、「この先、車線変更しても大丈夫です」との音声メッセージがユーザに対して出力されることになる。ただし、この例は、車両520から誘導ルート510に沿って所定道程距離L以内に、分岐点501以外の他の分岐点が存在しない場合についてのものである。
【0031】
一方、図5cに示すように、車両520に、誘導ルート510として、分岐点501で右方向に分岐する道路に進む経路が設定されている場合、車線変更是非確認要求が発生すると、分岐点501の手前の左車線では誘導ルート510に従って分岐点501で右方向に分岐できないので、分岐点501が案内地点に設定され「この先Dm、次の分岐手前で、右車線です」との音声メッセージがユーザに対して出力されることになる。
【0032】
次に、図5dに示すように、走行方向に見て当該順序で並んだ分岐点601と分岐点602が存在し、分岐点601の手前の道路区間の左車線に分岐点601を直進する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定され、分岐点601の手前の道路区間の右車線に分岐点601を直進する進行方向と分岐点601を右方向に分岐する進行方向の進行方向別通行区分が設定されており、分岐点602の手前の道路区間の左車線に分岐点602から左方向に分岐する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定され、分岐点602の手前の道路区間の右車線に分岐点602から右方向に分岐する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定されている場合を例にとる。
【0033】
この場合、図5eに示すように、本実施形態に係る車載システムを搭載し、誘導ルート610として、分岐点601を直進し、分岐点602で左方向に分岐する道路に進む経路が設定されている車両620が、分岐点601手前の、分岐点602までの道程距離がD(ただし、D<所定道程距離L)となる位置に位置している時点で、車線変更是非確認要求が発生すると、分岐点601の手前の全ての車線で誘導ルート610に従って分岐点601を直進できるので、分岐点601は案内地点に設定されず、次の、右車線では誘導経路に沿った通過方向に通過できなくなる分岐点602が案内地点に設定される。
【0034】
そして、「この先Dm、2個目の分岐手前で、左車線です」との音声メッセージがユーザに対して出力されることになる。
以上、車線変更支援処理の処理例について示した。
以上のように本車線変更支援処理によれば、所定道程距離L内の分岐点の直前区間において誘導ルートに従って進行するために走行しなければならない車線が、当該直前区間に存在する複数の車線のうちの一部の車線のみである場合に、当該車線#と当該分岐点手前の分岐点数Mや、当該分岐点までの距離Dを通知するメッセージを出力するので、ユーザは、予め、当該車線#と当該分岐点までの距離Dを把握して、誘導経路に従って走行する上での車線変更の是非を判断することができるようになる。また、誘導ルートに従って進行できなくなる車線が直前区間に存在する分岐点が所定道程距離内Lに存在しない場合には、ユーザに車線変更を行っても支障がない旨のメッセージを出力するので、このような場合に、ユーザが安心して車線変更を行えるようになる。
【0035】
とろろで、以上で示した車線変更支援処理は、図6に示すように行うようにしてもよい。
すなわち、この処理では、現在、誘導ルートが設定されている状態において(ステップ602)、車線変更是非確認要求が発生するのを待ち(ステップ604)、車線変更是非確認要求が発生したならば、ユーザが行おうとしている車線変更の車線変更先の車線を推定する(ステップ606)。ここで、この車線変更先の車線の推定は次のように行う。すなわち、カメラ2で撮影した画像に対して画像認識処理部15において行った車線認識処理の車線認識結果と、現在位置が位置するリンクのリンクデータの車線情報が示す車線数とに基づいて、現在走行中の車線を推定する。そして、走行中の車線が最も左よりの車線であれば走行中車線の一つ右側の車線を車線変更先の車線として推定し、走行中の車線が最も右よりの車線であれば走行中車線の一つ左側の車線を車線変更先の車線として推定する。そして、他の場合には、車線変更先の車線の推定は失敗とする。
【0036】
次に、車線変更先の車線の推定が成功したかどうかを調べ(ステップ608)、失敗した場合には、誘導ルート上の現在位置から所定道程距離L(たとえば、Lは1Km)以内の区間内に、交差点などの分岐点であって、当該分岐点の直前の道路区間に、誘導ルートに沿った方向に当該分岐点を通過できない進行方向専用の進行方向別通過区分が設定されている車線が存在する分岐点が存在するかどうかを調べる(ステップ622)。
【0037】
そして、そのような分岐点が存在せず探索が失敗した場合には(ステップ612)、ステップ624に進み、そのような分岐点が存在し探索が成功した場合には(ステップ612)、ステップ614に進む。
一方、車線変更先の車線の推定が成功した場合には(ステップ608)、誘導ルート上の現在位置から所定道程距離L(たとえば、Lは1Km)以内の区間内に、交差点などの分岐点であって、当該分岐点の直前の道路区間の、ステップ606で推定した車線変更先車線に対して誘導ルートに沿った方向に当該分岐点を通過できない進行方向専用の進行方向別通過区分が設定されている分岐点が存在するかどうかを調べる(ステップ610)。
【0038】
そして、そのような分岐点が存在せず探索が失敗した場合には(ステップ612)、ステップ624に進み、そのような分岐点が存在し探索が成功した場合には(ステップ612)、ステップ614に進む。
次に、ステップ612からステップ624に進んだ場合には、車線変更を行っても支障がない旨を示す音声メッセージを音声生成部16にスピーカ3から出力させ、ステップ602からの処理に戻る。
一方、ステップ612からステップ614に進んだ場合には、ステップ622またはステップ610で探索された分岐点のうちの最も現在地よりの分岐点を案内地点に設定し、現在位置から分岐点までの誘導ルートに沿った道程距離Dと(ステップ614)、推奨ルート上の案内地点よりも現在位置よりにある分岐点の数Mと(ステップ616)、案内地点の直前の道路区間の車線であって、案内地点を誘導ルートに沿った方向に通過できる車線#を求める(ステップ618)。
【0039】
そして、算出した距離Dと、分岐点数と、車線#を案内する音声メッセージを音声生成部16にスピーカ3から出力させ(ステップ620)、ステップ602からの処理に戻る。
このような車線変更支援処理によれば、たとえば、前述した図4aのような分岐点401が存在する場合において、図4bに示すように、左車線を走行中の車両420が分岐点401までの道程距離がD(ただし、D<所定道程距離L)となる位置に位置している時点で、車線変更是非確認要求が発生した場合、車線変更先車線として右車線が推定される。そして、車線変更先車線である右車線では誘導ルート410に従って分岐点401で左方向に分岐できないので、分岐点401が案内地点に設定され、「この先Dm、次の分岐手前で、左車線です」との音声メッセージがユーザに対して出力されることになる。
【0040】
一方、図4cに示すように、右車線を走行中の車両420が分岐点401までの道程距離がD(ただし、D<所定道程距離L)となる位置に位置している時点で、車線変更是非確認要求が発生した場合、車線変更先車線として左車線が推定される。そして、車線変更先車線である左車線では誘導ルート410に従って分岐点401で左方向に分岐できるので、分岐点401は案内地点に設定されず、「この先、車線変更しても大丈夫です」との音声メッセージがユーザに対して出力されることになる。ただし、この例は、車両420から誘導ルート410に沿って所定道程距離L以内に、分岐点401以外の他の分岐点が存在しない場合についてのものである。
【0041】
このように図6に示した車線変更処理によれば、誘導ルートに従って進行できなくなる車線が直前区間に存在する分岐点が所定道程距離内Lに存在している場合でも、車線変更先と推定される車線を進んだ場合には誘導ルートに従って進行できる場合には、車線変更を行っても支障がない旨のメッセージを出力する。よって、より適正に車線変更の是非をユーザに通知することができるようになる。
【0042】
ところで、以上の各車線変更支援処理では、車線変更是非確認要求が、ユーザの操作部4の所定の操作に応じて発生するものとしたが、車線変更是非確認要求は、他の起因によって発生させるようにしてもよい。すなわち、たとえば、VICS受信機8で受信した交通情報や、カメラ2で撮影した画像に対する画像認識処理部15の他車認識処理等により、自車前方の渋滞を検知した場合に、自動的に車線変更是非確認要求を発生させるなどしてもよい。
【0043】
また、以上の各車線変更支援処理で案内地点の探索に用いた所定道程距離Lを固定値とせずに、運転により熟練したユーザに対しては所定道程距離Lとしてより短い道程距離が設定されるように調整するようにしてもよい。当該調整は、たとえば、カメラ2で撮影した画像に対する画像認識処理部15の車線認識処理を利用してユーザの行った車線変更を検出し、ユーザの行った車線変更の頻度が大きいほど、所定道程距離Lとしてより短い道程距離が設定されるように、所定道程距離Lを調整することにより行う。または、所定道程距離Lは、ユーザが任意の値を設定できるようにしてもよい。
【0044】
また、以上の各車線変更支援処理は、VICS受信機8で受信した交通情報に基づいて、ステップ310、614で設定した案内地点直前の道路区間に、当該案内地点を誘導ルートに沿った方向に通過する方向の渋滞が発生しているかどうかを判定し、渋滞の発生の有無に応じて音声メッセージを変化させるようにしてもよい。すなわち、渋滞が発生してない場合には、「この先600m、2個目の分岐手前で、左車線です。分岐手前に渋滞ありません」(D=600M、M=2、#=左車線の場合)といった音声メッセージや、「この先、車線変更しても大丈夫です」といった音声メッセージを出力し、渋滞が発生している場合には、「この先600m、2個目の分岐手前で、左車線です。分岐手前渋滞です」(D=600M、M=2、#=左車線の場合)といった音声メッセージを出力するようにしてもよい。また、渋滞が発生している場合には、当該渋滞が現在位置まで連続しているかどうかを調べ、連続している場合には、「この先600m、2個目の分岐手前で、左車線です。分岐手前まで渋滞です」(D=600M、M=2、#=左車線の場合)といった音声メッセージを出力するようにしてもよい。
【0045】
このようにすることにより、たとえば、次のように、車線変更支援処理は行われることになる。
すなわち、いま、図7aに示すように、走行方向に見て当該順序で並んだ分岐点701と分岐点702が存在し、分岐点701の手前の道路区間の左車線に分岐点701を直進する進行方向と分岐点701を左方向に分岐する進行方向の進行方向別通行区分が設定され、分岐点701の手前の道路区間の右車線に分岐点701を直進する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定されており、分岐点702の手前の道路区間の左車線に分岐点702から左方向に分岐する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定され、分岐点702の手前の道路区間の右車線に分岐点702から右方向に分岐する進行方向専用の進行方向別通行区分が設定されている場合を例にとる。
【0046】
この場合、図7bに示すように、本実施形態に係る車載システムを搭載し、誘導ルート710として、分岐点701を直進し、分岐点702で左方向に分岐する道路に進む経路が設定されている車両720が、分岐点701手前の、分岐点702までの道程距離がD(ただし、D<所定道程距離L)となる位置に位置している時点で、車線変更是非確認要求が発生すると、案内地点として分岐点702が選定される。そして、この時点において、渋滞が分岐点701の直前の区間730でのみ生じており、分岐点702の直前の区間では生じていない場合には、「この先Dm、2個目の分岐手前で、左車線です。分岐手前に渋滞ありません」といった音声メッセージが出力されることになる。
【0047】
一方、図7cに示すように、渋滞区間730が、車両720の位置から分岐点703の直前までの区間まで連続して生じている場合には、「この先Dm、2個目の分岐手前で、左車線です。分岐手前まで渋滞です」といった音声メッセージが出力されることになる。
このようにすることにより、所定距離L内の分岐点の直前区間において誘導ルートに従って進行するために走行しなければならない車線が、当該直前区間に存在する複数の車線のうちの一部の車線のみである場合に、ユーザは、予め、当該直前区間の走行しなければならない車線に渋滞によって妨げられずに復帰できるかどうかを把握して、車線変更の是非を判断することができるようになる。
【0048】
また、以上の図3、図6に示した車線変更処理は、誘導ルートが設定されていない場合にも音声メッセージを出力するように構成してもよい。すなわち、図3のステップ302、図6のステップ602を排し、他のステップを、誘導ルートが設定されていない場合には、走行中の路線を誘導ルートと見なして適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るナビゲーション装置が保持する地図データを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車線変更支援処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る車線変更支援処理の処理例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車線変更支援処理の処理例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車線変更支援処理の他の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る車線変更支援処理の処理例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1…ナビゲーション装置、2…カメラ、3…スピーカ、4…操作部、5…表示装置、6…車両状態センサ、7…GPS受信機、8…VICS受信機、11…現在状態算出部、12…ルート探索部、13…地図データ記憶部、14…メモリ、15…画像認識処理部、16…音声生成部、17…制御部、18…案内画像生成部、19…GUI制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるナビゲーション装置であって、
現在位置を算出する現在位置算出手段と、
目的地までの経路を探索して誘導経路として設定し、当該誘導経路を案内する経路案内手段と、
車線変更支援手段とを有し、
前記車線変更支援手段は、所定の契機で、道路を構成する各車線に設定されている進行方向別通行区分の情報を含む道路地図データに基づいて、前記誘導経路上の前記現在位置から進行方向側に所定距離内の分岐であって、当該分岐直前の区間に当該分岐を誘導経路外にのみ通過することができる進行方向別通行区分が設定されている車線が存在する分岐を、走行車線制限分岐として探索し、前記走行車線制限分岐が存在した場合に、存在した走行車線制限分岐のうちの現在位置最寄りの走行車線制限分岐までの前記現在位置からの距離と、前記誘導経路に沿って当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐を通過するために、当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐直前の区間において走行すべき車線とを案内するメッセージを出力することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
自動車に搭載されるナビゲーション装置であって、
現在位置を算出する現在位置算出手段と、
目的地までの経路を探索して誘導経路として設定し、当該誘導経路を案内する経路案内手段と、
走行中の車線を識別する車線認識手段と、
車線変更支援手段とを有し、
前記車線変更支援手段は、所定の契機で、前記車線認識手段が識別した走行中の車線に基づいてユーザが意図している車線変更の車線変更先の車線を推定し、道路を構成する各車線に設定されている進行方向別通行区分の情報を含む道路地図データに基づいて、前記誘導経路上の前記現在位置から進行方向側に所定距離内の分岐であって、当該分岐直前の区間の前記推定した車線変更先の車線に当該分岐を誘導経路外にのみ通過することができる進行方向別通行区分が設定されている分岐を、走行車線制限分岐として探索し、前記走行車線制限分岐が存在した場合に、存在した走行車線制限分岐のうちの現在位置最寄りの走行車線制限分岐までの前記現在位置からの距離と、前記誘導経路に沿って当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐を通過するために、当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐直前の区間において走行すべき車線とを案内するメッセージを出力することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビゲーション装置であって、
前記車線変更支援手段は、前記走行車線制限分岐が存在しない場合に、車線変更を行っても支障がない旨を表すメッセージを出力することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のナビゲーション装置であって、
前記所定の契機は、ユーザの所定操作入力の発生であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1、2または3記載のナビゲーション装置であって、
前記現在位置地点における渋滞を検出する渋滞検出手段と、
前記所定の契機は、前記渋滞検出手段による現在位置地点における渋滞の検出の発生であることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載のナビゲーション装置であって、
当該ナビゲーション装置が搭載された自動車が行った車線変更の頻度を算定する車線変更頻度算定手段と、
前記所定距離を、前記車線変更頻度算定手段が算定した頻度が大きいほど小さくなるように調整する調整手段とを有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
自動車に搭載されたナビゲーション装置において、ユーザの車線変更を支援する車線変更支援方法であって、
現在位置を算出するステップと、
目的地までの経路を探索して誘導経路として設定し、当該誘導経路を案内するステップと、
所定の契機で、道路を構成する各車線に設定されている進行方向別通行区分の情報を含む道路地図データに基づいて、前記誘導経路上の前記現在位置から進行方向側に所定距離内の分岐であって、当該分岐直前の区間に当該分岐を誘導経路外にのみ通過することができる進行方向別通行区分が設定されている車線が存在する分岐を、走行車線制限分岐として探索し、前記走行車線制限分岐が存在した場合に、存在した走行車線制限分岐のうちの現在位置最寄りの走行車線制限分岐までの前記現在位置からの距離と、前記誘導経路に沿って当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐を通過するために、当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐直前の区間において走行すべき車線とを案内するメッセージを出力するステップとを有することを特徴とする車線変更支援方法。
【請求項8】
自動車に搭載されたナビゲーション装置において、ユーザの車線変更を支援する車線変更支援方法であって、
現在位置を算出するステップと、
目的地までの経路を探索して誘導経路として設定し、当該誘導経路を案内するステップと、
走行中の車線を識別するステップと、
所定の契機で、識別した走行中の車線に基づいてユーザが意図している車線変更の車線変更先の車線を推定し、道路を構成する各車線に設定されている進行方向別通行区分の情報を含む道路地図データに基づいて、前記誘導経路上の前記現在位置から進行方向側に所定距離内の分岐であって、当該分岐直前の区間の前記推定した車線変更先の車線に当該分岐を誘導経路外にのみ通過することができる進行方向別通行区分が設定されている分岐を、走行車線制限分岐として探索し、前記走行車線制限分岐が存在した場合に、存在した走行車線制限分岐のうちの現在位置最寄りの走行車線制限分岐までの前記現在位置からの距離と、前記誘導経路に沿って当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐を通過するために、当該現在位置最寄りの走行車線制限分岐直前の区間において走行すべき車線とを案内するメッセージを出力するステップとを有することを特徴とする車線変更支援方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の車線変更支援方法であって、
前記走行車線制限分岐が存在しない場合に、車線変更を行っても支障がない旨を表すメッセージを出力するステップを有することを特徴とする車線変更支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−133801(P2009−133801A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312090(P2007−312090)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】