説明

ナビゲーション装置

【課題】運転者の注意力のレベルに応じて、交差点での進路変更方向に関する情報を運転者が把握し易い表示画面で提供するナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーションユニット20と、乗員が発話した音声に基づいて車載機器(20,30,50,60)を作動制御する制御ユニット10を備えたナビゲーション装置1であって、制御ユニット10は、乗員の発話検出中、ナビゲーションユニット20に選択指令信号を出力し、ナビゲーションユニット20は、車両走行中、交差点の手前において、通常の案内表示(図3)から、交差点における経路誘導を地図表示に基づいて行う第1経路誘導表示(図4)、又は、交差点での進行方向を進路指示表示により指示する第2経路誘導表示(図5)のいずれかに選択的に表示画面を切換え表示可能であり、選択指令信号を受取った場合に第2経路誘導表示を選択して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置に係り、特に通常の案内表示に加えて、経路上の交差点の手前においてこの交差点での誘導表示を行うナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両が誘導経路上の交差点に接近した場合に、画面表示を通常の案内表示から交差点周辺の拡大表示に切換えたり、通常の案内表示と拡大表示の双方を同一画面の異なる領域にそれぞれ表示する分割表示に切換えたりするナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のナビゲーション装置では、自車両が誘導経路上の交差点から設定距離以上手前に位置するときには、画面全領域で通常の経路案内表示を行う。そして、このナビゲーション装置では、自車両が交差点から設定距離手前の位置に到達すると、画面を詳細画面表示に切換えるようになっている。
この詳細画面表示では、画面の表示領域が左側部,中央部,右側部に3分割され、画面左側部には通常の経路案内表示が表示され、画面中央部には道路形状の簡略表示が表示され、さらに画面右側部には交差点付近の拡大図が表示されるように構成されている。そして、この拡大表示は、交差点に近づくに連れて、その縮尺の倍率が次第に大きくなるように設定されている。
このナビゲーション装置では、このように通常の案内表示から詳細表示に画面を切換えることにより、画面左側部の通常案内表示及び画面中央部の簡略表示によって自車位置を確認できると共に、画面右側部の拡大表示によって交差点についての詳細な情報を得ることが可能となる。
【0004】
また、現在では、車両運転中に携帯電話を手で保持した状態で通話等を行うことが法的に禁じられている。このため、運転者が車両運転中に携帯電話を使用する場合は、携帯電話を手で保持しなくても通話可能とするハンズフリー装置が用いられる。
また、運転中に運転者が、手を用いずに発話した音声で空調機器やオーディオ機器等の車載機器のスイッチ操作を行うことを可能とする音声認識操作技術が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−64509号公報
【特許文献2】特開2003−202896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
運転者が、上述のようなハンズフリー装置を用いて携帯電話を使用していたり、音声認識機能を用いて車載機器を操作していたりするときには、運転操作のみに集中している通常時と比べて、運転者の意識がその分だけ分散し、視認力が低下しているおそれがある。
【0007】
したがって、上記ナビゲーション装置のように、交差点の手前で画面表示を詳細表示に切換えたとしても、運転者の視認力が低下していると、運転者は切換え表示された画面表示の内容を把握するまでに通常よりも時間を要してしまい、これにより車両操作が遅れてしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、運転者の注意力のレベルに応じて、交差点での進路変更方向に関する情報を運転者が把握し易い表示画面で提供するナビゲーション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両の現在地周辺の地図を表示画面に表示することにより経路誘導を行うナビゲーションユニットと、乗員が発話した音声に基づいて車載機器を作動制御する制御ユニットと、を備えたナビゲーション装置であって、制御ユニットは、乗員が発話中であることを検出した場合、ナビゲーションユニットに選択指令信号を出力し、ナビゲーションユニットは、車両走行中、誘導経路上の交差点の手前において、通常の案内表示から、交差点における経路誘導を地図表示に基づいて行う第1経路誘導表示、又は、交差点での進行方向を地図表示と関連せずに進路指示表示により指示する第2経路誘導表示のいずれかに選択的に表示画面を切換え表示可能であり、選択指令信号を受取った場合に第2経路誘導表示を選択して表示することを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明によれば、車両内の乗員、特に運転者が発話中である場合に、交差点の手前で通常の案内表示から、交差点における経路誘導を地図表示に基づいて行う第1経路誘導表示ではなく、交差点での進行方向を地図表示と関連せずに進路指示表示により指示する第2経路誘導表示に表示画面を切換え表示する。発話中は、運転者の注意力が分散し、視認力が低下している可能性がある。このため、第2経路誘導表示では、提供する情報が進路指示表示に絞って表示されるので、視認力が低下した状態でも、運転者は確実に交差点での進路変更方向を把握することができる。
【0011】
また、具体的に、車載機器は、空調ユニット又はオーディオユニット、携帯通信機器と接続されるハンズフリーユニットを含む。
【0012】
また、本発明において好ましくは、第2経路誘導表示の進路指示表示は、進路変更方向を示す矢印である。このように構成された本発明によれば、進路指示表示が視認性良好な矢印であるので、運転者は、この矢印の方向で車両進行方向を確実に視認することができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、報知音を発生する報知音発生手段をさらに備え、報知音発生手段は、ナビゲーションユニットが第2経路誘導表示を表示しているときに報知音を発生する。このように構成された本発明によれば、乗員が発話中である場合には、第2経路誘導表示が表示されると共に、報知音発生手段により報知音が発生されるので、この報知音により乗員の注意を第2経路誘導表示に向けさせ、乗員に交差点での進路変更方向を把握させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のナビゲーション装置によれば、運転者の注意力のレベルに応じて、交差点での進路変更方向に関する情報を運転者が把握し易い表示画面で提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1はナビゲーション装置のブロック図、図2はナビゲーションユニットのブロック図、図3はナビゲーションユニットが表示する通常の案内表示画面、図4は第1経路誘導表示画面、図5は第2経路誘導表示画面、図6は制御ユニットの表示切換え処理フロー、図7はナビゲーションユニットの表示切換え処理フローである。
【0016】
本実施形態のナビゲーション装置1は、制御ユニット10と、ナビゲーションユニット20と、ハンズフリーユニット30と、操作部40と、空調ユニット50と、オーディオユニット60とを備えている。
本実施形態では、ハンズフリーユニット30に接続された車載マイク31に向けて発話された乗員の音声により、携帯通信機器70(例えば携帯電話)を介した外部通話と、音声認識処理を用いた車載機器(ナビゲーションユニット20,ハンズフリーユニット30,空調ユニット50,オーディオユニット60)の操作を行うことができるように構成されている。すなわち、車載マイク31は、通信処理用のマイクと音声認識処理用のマイクとを兼用する構成である。
【0017】
制御ユニット10は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、これらにより、制御手段11と、音声認識手段12として機能するように構成されている。
音声認識手段12は、車載マイク31からの音声入力信号に対して音声認識処理を行い、音声認識信号を制御手段11に出力する。
制御手段11は、音声認識手段12からの音声認識信号に基づいて、車載機器の制御を行う。制御手段11は、音声認識信号と各車載機器に対する制御信号や制御データとを関連付ける音声命令情報をメモリ内に記憶している。制御手段11は、音声命令情報を用いて、音声認識信号から対応する制御信号や制御データを取得し、この制御信号及び制御データを、対応する車載機器に出力する。各車載機器は、この制御信号及び制御データに応じた動作を行う。これにより、乗員は、車載マイク31に向けて音声を発することで、各車載機器に設けられた操作スイッチを操作したときと同じように、車載機器を操作することができる。
【0018】
操作部40は、音声認識処理を行う際に押下する音声認識モードスイッチを含む複数の操作スイッチから構成されている。音声認識モードスイッチが押下されると、操作部40から制御手段11に音声認識モード信号が出力される。制御手段11は、この音声認識モード信号を受取っている間、音声認識手段12に音声認識処理を行うように指令を行うと共に、ハンズフリーユニット30に車載マイク31からの音声入力信号を音声認識手段12に出力するように指令を行う。
【0019】
これにより、操作部40で音声認識モードスイッチが押下されている間、制御ユニット10は、音声認識処理に基づいて車載機器の制御を行うことができる。一方、後述するように、操作部40で音声認識モードスイッチが押下されていない場合は、車載マイク31からの音声入力信号は、携帯通信機器70を介した通信処理に用いられる。
【0020】
なお、操作部40に音声認識モードスイッチを設けない構成としてもよい。この場合、車載マイク31が所定音量以上の音声を検出した場合に、車載マイク31からの音声入力信号が音声認識手段12に入力し、音声認識処理が行われるように構成することができる。ただし、携帯通信機器70を用いたハンズフリー通話中には、車載マイク31からの音声入力信号は音声認識手段12に入力せず、通信処理にのみ用いられるように構成する。このため、操作部40にハンズフリー通話のための、オフフック処理,オンフック処理等を指令する操作スイッチを設けてもよい。
【0021】
ハンズフリーユニット30は、車載マイク31とスピーカ32が接続されており、これらを用いて、乗員は携帯通信機器70を手で保持しなくても通することができる。本実施形態では、ハンズフリーユニット30は、本体に接続手段33を内蔵している。この接続手段33は、例えばBlue tooth(ブルートゥース:登録商標)規格等の無線通信方式により、同様の接続手段を内蔵する携帯通信機器70と無線接続する。なお、接続手段33は、ハンズフリーユニット30本体と携帯通信機器70とを有線通信方式により有線接続するものであってもよい。
【0022】
携帯通信機器70と他の通信機器71との間の通信回線接続中に、乗員が車載マイク31に向けて発話すると、音声入力信号が車載マイク31からハンズフリーユニット30本体,接続手段33を経由して携帯通信機器70に送出され、さらに携帯通信機器70から通信回線接続中の通信機器71に送出される。また、通信機器71からの音声信号は、携帯通信機器70から接続手段33,ハンズフリーユニット30本体を経由してスピーカ32から出力される。これにより、乗員は、携帯通信機器70でハンズフリー通話を行うことができる。
【0023】
また、スピーカ32は、他の車載機器の操作等に応じて出力されるガイド音声や報知音等を出力する。例えば、ナビゲーションユニット20のガイド音声を出力する場合、ガイド音声信号が、ナビゲーションユニット20から制御手段11を経由してスピーカ32に送出され、スピーカ32は受取ったガイド音声を乗員に向けて出力する。
【0024】
なお、本実施形態のハンズフリーユニット30では、車載マイク31が通信処理用のマイクと音声認識処理用のマイクとを兼用しているが、これに限らず、車載マイク31を通信処理専用のマイクとし、音声認識処理用のマイクが別途、制御ユニット10に接続された構成としてもよい。
また、本実施形態のハンズフリーユニット30では、スピーカ32がハンズフリー通話用のスピーカと、車載機器の音声ガイドや報知を行うためのスピーカを兼用しているが、これに限らず、スピーカ32をハンズフリー通話専用のスピーカとし、車載機器の音声ガイドや報知を行うためのスピーカが別途、各車載機器に設けられた構成、又は、車載機器の音声ガイドや報知を行うためのスピーカが別途、制御ユニット10に接続された構成としてもよい。
【0025】
また、本実施形態では、制御ユニット10が音声認識処理により制御を行う車載機器として、ナビゲーションユニット20,ハンズフリーユニット30,空調ユニット50,オーディオユニット60が制御ユニット10に接続されている。なお、これら以外にも、他の車載機器を制御ユニット10に接続して、音声認識処理による制御を行うことができるように構成してもよい。
【0026】
ナビゲーションユニット20は、図2に示すように、制御回路21と、車速センサ22と、ジャイロセンサ23と、GPSセンサ24と、記憶部25と、表示部26と、入力部27とを備えている。
制御回路21は、マイクロプロセッサ及びその周辺回路からなり、後述する車速演算処理,自車位置測位処理,経路演算処理,画像表示処理,距離演算処理,表示切換処理等を行うように構成されている。
【0027】
車速センサ22は、自車両の移動に伴って得られる車速パルスを検出するセンサであり、制御回路21はこの車速パルスを処理することにより、自車両の速度を計算する。
ジャイロセンサ23は、自車両の進行方位を検出するセンサであり、制御回路21はこの検出信号を処理することにより、自車両の相対的な方位を検出する。
GPSセンサ24は、GPS衛星からのGPS信号をアンテナやレシーバ等で検出するセンサであり、制御回路21はこのGPS信号を処理することにより、地表における自車両の現在地の絶対的な位置座標や方位を計算する。
【0028】
記憶部25は、制御回路21が実行する各種の制御プログラム等を記憶するROMと、制御回路21の作業領域であるRAMと、地図データ25aや各種データを記憶するハードディスク等から構成されている。地図データ25aは、道路地図描画用データや各種の図形データから構成されている。
【0029】
表示部26は、液晶モニタ等の表示装置であり、制御回路21の制御に基づいて、地図表示や各種情報を表示画面に表示して乗員に提供する。
入力部27は、操作スイッチ,リモコン,タッチパネル等によって構成され、乗員はこれにより指示命令や各種情報を入力可能となっている。乗員は、入力部27により、表示部26での地図表示の縮尺変更の指示入力、誘導目的地の入力、誘導経路の選択等を行うことができる。
【0030】
次に、制御回路21の各処理について説明する。
車速演算処理では、制御回路21は、車速センサ22からの信号に基づいて自車両の速度を逐次算出する。
自車位置測位処理では、制御回路21は、車速センサ22,ジャイロセンサ23,GPSセンサ24からの信号に基づいて、GPS航法測位,自律航法測位等により自車両の現在地(自車位置)を逐次計算し、自車位置を特定する。
【0031】
経路演算処理では、制御回路21は、記憶部25から地図データ等を読み出しながら、ダイクストラ法等の経路探索アルゴリズムを使って経路探索を行う。制御回路21は、特定した自車位置又は指定された地点を経路探索開始点として、入力部27により指定された目的地までの誘導経路を、地図データ25aに基づいて計算することで、誘導経路を表す経路データを作成する。制御回路21によって複数の経路が求められた場合は、乗員は入力部27により所望の経路を選択することができる。
【0032】
経路データは、誘導経路のリンク情報やノード情報等からなり、記憶部25に一次記憶される。経路データの誘導経路は、目的地までの間に、通常、複数の交差点を経由するように構成されている。制御回路21は、誘導経路に従って車両が走行できるように、交差点の手前で、乗員に対して画面や音声等による進行方向指示の誘導を行い、車両を経路誘導する。制御回路21は、経路データと自車位置とにより、次に通過し進行方向を変更することになる誘導経路上の交差点を特定する。
【0033】
画像表示処理では、図3に示すように、制御回路21は、自車位置,経路データ及び地図データ25a等に基づいて画像データを生成し、この画像データにより地図上に自車位置及び誘導経路が表示された表示データaを表示部26に適宜な縮尺で表示する。
図3は、地図情報A上に自車両を表す略三角形状の自車位置標識B及び誘導経路Cが示された通常の案内表示を示している。自車位置標識Bは、その位置により自車位置を示し、その頂部の向きにより自車両の進行方向を示している。
通常の案内表示では、表示部26の表示領域(表示画面)Pの略全範囲に、自車位置を含む広域地図を示す通常の表示データa(以下、「広域表示データa」という)が表示される。
【0034】
誘導経路Cは、他の道路と区別可能なように、表示形態を変えて画面表示されている。本実施形態では、誘導経路Cは、他の道路と表示色を異ならせている。これにより、乗員は地図上の誘導経路Cを認識することができる。
制御回路21は、誘導経路C上の複数の交差点のうち、自車両の直前にある交差点を特定している。図3では、制御回路21は、自車位置標識Bの前方に位置する誘導経路C上の交差点Xを特定する。
距離演算処理では、制御回路21は、特定した自車位置と、設定した経路データから交差点Xまでの到達距離を逐次計算する。
【0035】
表示切換処理では、制御回路21は、表示切換え条件が満たされる間、通常の案内表示(図3)から経路誘導表示(図4,図5)に表示部26の表示を切換える。すなわち、制御回路21は、自車位置が誘導経路C上で交差点Xの手前に位置し、自車位置から交差点Xまでの到達距離が所定の表示切換距離(本例では350m)以下である場合に、通常の案内表示から経路誘導表示に表示を切換える。そして、自車両が交差点Xを通過後に、制御回路21は、表示画面を経路誘導表示画面から通常の案内表示画面に戻す。
【0036】
なお、本実施形態では、表示切換え条件は、到達距離が所定の表示切換距離以下であることであるが、これに限らず、到達距離及び車速に基づいて、自車位置から交差点Xまでの到達予測時間を算出し、この到達予測時間が所定の表示切換時間(例えば30秒)以下である場合に、通常の案内表示から経路誘導表示に表示を切換えるように構成してもよい。
【0037】
本実施形態では、経路誘導表示には、交差点における経路誘導を地図表示に基づいて行う第1経路誘導表示(図4)と、交差点での進行方向を地図表示と関連せずに進路指示表示により指示する第2経路誘導表示(図5)の2通りがある。制御回路21は、後述するように、制御ユニット10から受取る選択指令信号に基づいて、表示部26に2通りの経路誘導表示のいずれかを選択的に表示するように制御を行う。
【0038】
図4に示すように、第1経路誘導表示は、表示領域Pに分割表示領域(分割画面)Qが表示された表示形式である。表示領域Pには、継続的に広域表示データaが表示され、分割表示領域Qには、交差点X付近の拡大図である表示データb(以下、「拡大表示データb」という)が表示される。さらに、本実施形態では、分割表示領域Qには、制御回路21が算出した到達距離を示す到達距離表示cが表示される。図4では、分割表示領域Qの左下部分に到達距離表示cが表示され、到達距離が「350m」であることを示している。
【0039】
本実施形態では、分割表示領域Qは、表示部26の表示領域Pの右半分に表示される。この分割表示領域Qに表示される拡大表示データbは、広域表示データaのうち交差点X付近を所定倍率の拡大縮尺で表示するものであり、分割表示領域Qの中央部に交差点Xが位置するように表示される。なお、図4では、拡大表示データbは広域表示データaと方位を変更して表示している。
【0040】
また、広域表示データaは、表示領域Pのうち分割表示領域Q以外の領域に、表示切換え前と同様に表示されるが、自車位置標識Bが画面左側中央部に表示されるように、横方向にずれて表示される。したがって、表示切換え後は、広域表示データaの表示範囲が狭くなるため、図3における広域表示の約半分の地理範囲を表示する。
このように第1経路誘導表示では、地図表示である広域表示データa及び拡大表示データbを共に表示し、これらに表示される誘導経路C及び自車位置標識B等により、交差点Xでの車両進路を誘導する。
【0041】
なお、本実施形態では、第1経路誘導表示は、広域表示データaを図3の広域表示と同じ縮尺で表示するように構成しているが、これに限らず、広域表示データaを予め設定された縮尺で表示するように構成してもよい。ただし、この場合でも、広域表示データaは、拡大表示データbよりも広域を表示する縮尺で縮小表示するように構成される(すなわち、縮尺の倍率が小さい)。
【0042】
なお、表示切換え処理を行う際に、すでに入力部27を介した乗員による操作等により、広域表示データaを表示する縮尺が、拡大表示データbを表示する倍率と同じ縮尺か、より詳細表示する大きな倍率の縮尺に設定されていた場合には、制御回路21が、第1経路誘導表示への表示切換え処理を行わないように構成してもよい。この場合、制御回路21は、分割表示領域Qを出現させることなく、広域表示データaのみを継続して表示する。
【0043】
また、本実施形態では、第1経路誘導表示は、通常の案内表示である広域表示データa上に重ねて分割表示領域Qを出現させるように構成されているが、これに限らず、広域表示データaに代えて、拡大表示データb及び到達距離表示cを表示領域Pに表示する構成としてもよい。表示領域Pの画面サイズが小さい場合には、分割表示領域Qを出現させると画面表示が煩雑となり乗員にとって表示内容が視認しづらくなるため、拡大表示データb及び到達距離表示cを表示し、広域表示データaを表示しない態様とするのが好適である。
【0044】
また、図5に示すように、第2経路誘導表示は、表示領域Pに進路指示表示Dと到達距離表示cを表示する表示形式である。本実施形態では、進路指示表示Dは、交差点Xで曲がるべき進路変更方向を示す矢印が拡大表示されたものである。また、第2経路誘導表示では、表示領域Pの右下部に到達距離表示cが第1経路誘導表示よりも拡大表示される。なお、第2経路誘導表示では、到達距離表示cを表示しない構成としてもよい。
本実施形態の第2経路誘導表示では、地図表示に基づかないで交差点Xでの進路変更方向を拡大して表示している。これにより、乗員は、注意力が散漫になり、視認力が低下していたとしても、目前の交差点Xでの進路変更方向を第1経路誘導表示よりも明確に認識することができる。
【0045】
なお、本実施形態の第2経路誘導表示では、地図表示がまったく表示されていないが、矢印である進路指示表示Dと到達距離表示cの背景として地図表示を行ってもよい。この場合、矢印である進路指示表示Dは、地図表示に関連して進路変更方向を指示しておらず、地図表示は、第1経路誘導表示における地図表示よりもコントラストを低下させ、進路指示表示D及び到達距離表示cが目立つように表示することが好ましい。
また、本実施形態の第2経路誘導表示では、矢印である進路指示表示Dが連続的に表示される態様であるが、これに限らず、進路指示表示Dが点滅し、さらに時間又は到達距離に応じて進路指示表示Dの点滅速度が変化する構成であってもよい。また、進路指示表示Dの表示色,明るさ,大きさ等が、時間又は到達距離に応じて変化する構成であってもよい。
【0046】
次に、図6及び図7に基づいて、表示切換え処理について説明する。図6,図7は、それぞれ制御ユニット10(制御手段11)の処理フロー,ナビゲーションユニット20の制御回路21の処理フローであり、これら処理フローは、所定時間毎に繰り返し行われる。
【0047】
図6の処理フローでは、まず、制御ユニット10は、音声認識処理中であるか否かを判定する(ステップS1)。上述のように操作部40で音声認識モードスイッチが押下されることに基づいて音声認識モード信号が出力される。制御ユニット10では、制御手段11が、この音声認識モード信号を検出している場合に音声認識手段12に音声認識処理を行うように指令を行う。制御手段11は、音声認識手段12にこの指令を出力している間、音声認識処理中であると判断する。なお、これ以外にも、音声認識手段12が、車載マイク31から音声入力信号を実際に受取っていると判断できる場合に、音声認識処理中であると判定するように構成してもよい。
【0048】
そして、音声認識処理中である場合(ステップS1;Yes)、制御手段11は、ナビゲーションユニット20に選択指令信号を出力し(ステップS3)、処理を終了する。一方、音声認識処理中でない場合(ステップS1;No)、制御手段11は、ハンズフリー通話中であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0049】
本実施形態では、ハンズフリー通話中には、ハンズフリーユニット30から通話中であることを示す通話中信号が制御手段11に出力されるように構成されている。制御手段11は、この通話中信号を検出している場合に、ハンズフリー通話中であると判断する。
そして、ハンズフリー通話中である場合(ステップS2;Yes)、制御手段11は、ナビゲーションユニット20に選択指令信号を出力し(ステップS3)、処理を終了する。一方、ハンズフリー通話中でない場合(ステップS2;No)、制御手段11は、そのまま処理を終了する。
【0050】
このように、本実施形態では、制御ユニット10は、音声認識処理中又はハンズフリー通話処理中であることを検出することに基づいて、車載マイク31に向けて乗員が発話中であることを検出した場合に、選択指令信号をナビゲーションユニット20に出力するように構成されている。
【0051】
また、図7の処理フローでは、まず、制御回路21は、自車両が交差点Xの手前を走行中、表示切換え条件が満たされたか否かを判定する(ステップS11)。
表示切換え条件が満たされていない場合(ステップS11;No)、制御回路21は、そのまま処理を終了する。これにより、図3に示すような通常の案内表示が、表示部26に引き続き表示される。一方、表示切換え条件が満たされている場合(ステップS11;Yes)、制御回路21は、制御ユニット10から出力される選択指令信号を検出しているか否かを判定する(ステップS12)。
【0052】
選択指令信号を検出していない場合(ステップS12;No)、制御回路21は、第1経路誘導表示を表示部26に表示するように制御を行い(ステップS15)、処理を終了する。これにより、ナビゲーションユニット20の表示部26には、図4に示すような第1経路誘導表示が表示される。
【0053】
一方、選択指令信号を検出している場合(ステップS12;Yes)、制御回路21は、第2経路誘導表示を表示部26に表示するように制御を行い(ステップS13)、さらに制御ユニット10に報知音発生要求信号を出力し(ステップS14)、処理を終了する。これにより、ナビゲーションユニット20の表示部26には、図5に示すような第2経路誘導表示が表示される。そして、制御ユニット10が報知音発生要求信号を受取ると、制御手段11はハンズフリーユニット30のスピーカ32から報知音を発生させる制御を行う。これにより、第2経路誘導表示が表示されているときに、スピーカ32から報知音が発生し、乗員は第2経路誘導表示が表示されていることを認識することができる。制御ユニット10及びスピーカ32は、本発明の報知音発生手段に相当する。
【0054】
なお、本実施形態では、表示切換え条件が満たされている間、音声認識処理又はハンドフリー通話が行われている場合に、第2経路誘導表示が表示され、音声認識処理又はハンドフリー通話が終了すると、第1経路誘導表示に表示が切換わるように構成されている。しかしながら、これに限らず、一旦、第2経路誘導表示が表示された場合には、交差点Xを通過するまで、第2経路誘導表示を維持するように構成してもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態のナビゲーション装置1では、交差点の手前を走行中、所定の表示切換え条件が満たされると、表示部26の表示画面を、通常の案内表示から、交差点での車両進行方向をより分かり易く表示して乗員に車両操作を促す経路誘導表示に切換えるように構成されている。
【0056】
そして、本実施形態では、この経路誘導表示は、第1経路誘導表示と第2経路誘導表示のいずれかが選択されて表示されるように構成されており、このうち第2経路誘導表示は、乗員が発話した音声の音声認識処理に基づく車載機器の操作が行われている場合や、ハンズフリーユニット30を用いた携帯通信機器70での通話が行われている場合に、選択表示されるように構成されている。
【0057】
すなわち、乗員が発話している場合には、乗員は、音声認識処理に基づく車載機器の操作や携帯通信機器70での通話のため、注意力が分散している状態にある可能性がある。したがって、注意力が分散している状態では、乗員の視認力が低下してしまい、交差点の拡大図を表示する第1経路誘導表示を乗員が見ても、交差点での進路変更方向を直ちに認識できないおそれがある。
そこで、本実施形態のナビゲーション装置1では、発話により乗員の注意力が分散し視認力が低下している可能性がある状態では、表示する視覚情報を絞った第2経路誘導表示を表示するように構成されている。
【0058】
この第2経路誘導表示では、進路指示表示Dを画面中央に目立つように表示し、付随的に到達距離表示cを画面角部に表示する。このように、第2経路誘導表示では、交差点で曲がる方向を特に強調して表示し、且つ、地図表示を表示しないか、表示しても進路指示表示Dとは関連した表示形式としないことで、乗員に提供する視覚情報を少なく絞ることで、視認力が低下した状態でも、交差点での進路変更方向を第1経路誘導表示よりも明確に認識できるようにしている。
さらに、本実施形態では、第2経路誘導表示が行われるときに、スピーカ32から報知音を発生するように構成されているので、乗員は、表示画面への注意を向け易くなり、第2経路誘導表示により、交差点に到達する前に確実に進路変更方向を把握することができる。
【0059】
このように、本実施形態のナビゲーション装置1では、交差点での進路変更方向を把握できるよう、乗員の注意力のレベルに応じて視覚情報が異なる画面表示を乗員に提供し、これにより、乗員は発話中であっても交差点での進路変更方向を確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態におけるナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態におけるナビゲーションユニットのブロック図である。
【図3】本発明の実施形態におけるナビゲーションユニットが表示する通常の案内表示画面である。
【図4】本発明の実施形態における第1経路誘導表示画面である。
【図5】本発明の実施形態における第2経路誘導表示画面である。
【図6】本発明の実施形態における制御ユニットの表示切換え処理フローである。
【図7】本発明の実施形態におけるナビゲーションユニットの表示切換え処理フローである。
【符号の説明】
【0061】
1 ナビゲーション装置
10 制御ユニット
11 制御手段
12 音声認識手段
20 ナビゲーションユニット
21 制御回路
26 表示部
27 入力部
30 ハンズフリーユニット
31 車載マイク
32 スピーカ
33 接続手段
40 操作部
50 空調ユニット
60 オーディオユニット
70 携帯通信機器
71 通信機器
a 広域表示データ
b 拡大表示データ
c 到達距離表示
A 地図情報
B 自車位置標識
C 誘導経路
D 進路指示表示
P 表示領域
Q 分割表示領域
X 交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地周辺の地図を表示画面に表示することにより経路誘導を行うナビゲーションユニットと、
乗員が発話した音声に基づいて車載機器を作動制御する制御ユニットと、を備えたナビゲーション装置であって、
前記制御ユニットは、乗員が発話中であることを検出した場合、前記ナビゲーションユニットに選択指令信号を出力し、
前記ナビゲーションユニットは、車両走行中、誘導経路上の交差点の手前において、通常の案内表示から、前記交差点における経路誘導を地図表示に基づいて行う第1経路誘導表示、又は、前記交差点での進行方向を地図表示と関連せずに進路指示表示により指示する第2経路誘導表示のいずれかに選択的に表示画面を切換え表示可能であり、前記選択指令信号を受取った場合に前記第2経路誘導表示を選択して表示することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記車載機器は、空調ユニット又はオーディオユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記車載機器は、携帯通信機器と接続されるハンズフリーユニットを含むことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記第2経路誘導表示の進路指示表示は、進路変更方向を示す矢印であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
報知音を発生する報知音発生手段をさらに備え、
前記報知音発生手段は、前記ナビゲーションユニットが前記第2経路誘導表示を表示しているときに報知音を発生することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−150759(P2009−150759A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328475(P2007−328475)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】