説明

ナビゲーション装置

【課題】デジタル放送を視聴する運転者及び同乗者にとって、各々都合がよいタイミングでの画面切り替え、又は重ねあわせ表示が可能なナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】本発明のナビゲーション装置は、放送受信部により受信したデジタル放送から検出した検出情報や複数の受信信号を解析した解析結果等に基づき、所定の放送を受信中であるか否かを示す制御タイミングを生成する制御部を備えている。例えば、デジタル放送波に含まれる管理情報等から、番組本編とは直接関係しないCM等を受信中であることを示すタイミング信号を生成し、この信号が示すタイミングを用いて、表示内容の変更を行う。これにより、表示部に地図画像を除く経路案内画像、例えば右左折を示す矢印や文字画像等が表示される。この際、一つの表示部に対し、デジタル放送受信画像と経路案内画像とを重畳表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のナビゲーション装置に関するものであり、特にデジタル放送受信装置より得られるデジタル放送画像及びデジタル放送音声を出力可能なナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載用のナビゲーション装置には多くの機能が設けられる傾向がある。特にユーザにとって有用な機能として、出発地から目的地までの経路を自動的に検索し、検索された経路を誘導経路として地図上に表示する経路検索機能が存在する。この機能を用いれば、出発地と目的地とを入力装置から入力することにより、出発地と目的地とを最適ルートで結ぶ誘導経路を自動的に検索し、LCD(液晶表示装置)等の表示装置に表示することが可能である。
【0003】
また、検索された誘導経路に従ってユーザが走行を行う際に、誘導経路を地図上に表示し、併せて自車位置を表示することにより、ユーザを目的地まで案内する誘導機能が存在する。前記の誘導経路表示機能を備えた従来のナビゲーション装置においては、自車位置の検出のために、例えば地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、及び衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS(Global Positioning System)のためのGPS受信機等が用いられる。
【0004】
そしてGPSにより検出された位置情報と、ナビゲーション装置に記憶されている地図データ及び道路データをもとに、自車が誘導経路上のどの位置に存在するかを、リアルタイムで通知することが可能である。また、自車周辺の情報(例えば近傍の交差点における車線数等)をユーザに対して通知することが可能である。このため例えば、走行中に交差点に近付いた際に、その交差点の拡大図を表示する等、走行中の経路に関する様々な情報をリアルタイムでユーザに対して通知することが可能である。
【0005】
また、上記の経路検索機能に加え、デジタル放送受信機能を備えたナビゲーション装置も実用化されている。近年、デジタル放送が開始され、またデジタル放送受信機へ接続される周辺機器の高機能化に伴い、デジタル放送受信機と連携して動作可能なナビゲーション装置が普及している。
【0006】
上記のナビゲーション装置によれば、例えば助手席の同乗者がテレビ視聴中に、運転者が経路情報を知りたい場合、ナビゲーション装置を地図画面に切り替え、現在位置情報と経路情報を得る。そしてその後、再び放送画面に戻すが、これらの操作が煩雑であるという問題があった。
【0007】
上記に関連して特許文献1においては、テレビ画像とテレビ画像以外の画像を適宜同一画面に表示するディスプレイシステムが開示されている。前記発明の場合、基本的にはナビゲーション画像等のテレビ画像以外の画像を出力させておく。そして不定期に発生するデジタル放送側のイベントにより、イベント発生タイミングでテレビ以外の画像とテレビ画像とを同一画面に表示する。
【0008】
例えばナビゲーション画像として地図を表示させつつ、野球番組をその裏側で受信していたとする。そしてこの野球番組において、特定のチームが得点を取る等のイベントが発生した場合に、これを検出してナビゲーション画像の一部に野球番組の画像を重ねあわせて表示する。
【特許文献1】特開2003−189204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら特許文献1のディスプレイシステムは、テレビ画像以外の画像表示が主であるため、運転者のテレビ視聴は間欠的となる。また、必ずしも視聴したいタイミングでテレビ画面が見られるとは限らない。さらに、特許文献1では車両の安全運転を目的としながらも、テレビ側で発生する不定期、且つ発生頻度が予想できないイベントの度に、テレビ画像の表示がなされる。
【0010】
このため、見たい画像が出ているか否かの確認のための視線移動が運転者に発生し、安全運転に支障をきたす可能性があった。また、ナビゲーションの案内中にテレビ側にイベントが発生すると、ナビゲーションの案内が妨げられるという問題があった。
【0011】
このように、ナビゲーション画像とテレビ画像とを切り替えることは、運転者にとっては運転中に装置を操作することになり煩雑であり、運転に集中できない。また放送を視聴する同乗者にとっては、切り替わるタイミングによっては、良いシーンを見逃す可能性もあるため、テレビ視聴中の視聴中断は避けたい。
【0012】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、デジタル放送を視聴する運転者及び同乗者にとって、各々都合がよいタイミングでの画面切り替え、又は重ねあわせ表示が可能なナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、デジタル放送波の受信及び選局を行う放送受信部と、画像を表示する表示部と、前記表示部に画像を重畳表示するための画像信号を生成する画像重畳部とを備えたナビゲーション装置において、前記放送受信部により受信したデジタル放送波から得られる受信信号の解析結果に基づき、予め定められた放送が受信中であるか否かを示す制御タイミングを生成し、前記制御タイミングに基づき、地図画像を除く経路案内画像とデジタル放送受信画像とを前記表示部に重畳表示するように前記画像重畳部に指示する制御部を備えたことを特徴としている。
【0014】
この構成によると、本発明のナビゲーション装置は、デジタル放送を受信して選局する放送受信部、画像を重畳表示する画像重畳部、及び画像を表示する表示部を備えている。また、放送受信部により受信したデジタル放送から検出した検出情報や複数の受信信号を解析した解析結果等に基づき、所定の放送を受信中であるか否かを示す制御タイミングを生成する制御部を備えている。例えば、デジタル放送波に含まれる管理情報等から、番組本編とは直接関係しないCM等を受信中であることを示すタイミング信号(=制御タイミング)を生成し、この信号が示すタイミングを用いて、表示内容の変更を行う。これにより、表示部に地図画像を除く経路案内画像、例えば右左折を示す矢印や文字画像等が表示される。この際、一つの表示部に対し、デジタル放送受信画像と経路案内画像とを重畳表示させる。これにより、受信中の放送が所定の内容になった時に、デジタル放送の表示と経路案内とを同時に行うことができる。またこの際、併せて音声案内を行う形態でもよい。
【0015】
また上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、デジタル放送波の受信及び選局を行う放送受信部と、画像を表示する表示部と、前記表示部に画像を重畳表示するための画像信号を生成する画像重畳部とを備えたナビゲーション装置において、前記放送受信部により受信したデジタル放送波から得られる受信信号の解析結果に基づき、予め定められた放送が受信中であるか否かを示す制御タイミングを生成し、前記制御タイミングに基づき、地図画像を除く経路案内画像とデジタル放送受信画像とを前記表示部に切り替えて表示するように前記画像重畳部に指示する制御部を備えたことを特徴としている。
【0016】
この構成によると、本発明のナビゲーション装置は、先述の放送受信部、画像重畳部、表示部、及び制御部を備えている。制御部は、先述の制御タイミングを用いて表示部に地図画像を除く経路案内画像を表示させる際に、一つの表示部に対し、デジタル放送受信画像と経路案内画像とを切り替えて表示させる。これにより、例えば番組本編の受信中はデジタル放送受信画像を表示し、番組本編以外を受信中は経路情報等を示す経路案内画像を表示部に表示させる。従ってユーザはこれらの切り替えを手動で行う必要がない。
【0017】
上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、前記制御タイミングが、前記放送受信部により選局されたデジタル放送の番組本編の放送時間と、前記デジタル放送の番組本編を除く放送時間との切り替わりを示していることを特徴としている。
【0018】
この構成によると、上述の制御タイミングが、デジタル放送における番組本編と、前記番組本編を除くデジタル放送、例えばCM等との切り替えタイミングである、これにより、番組本編とCMとの切り替えタイミング等において、経路情報等の案内情報を表示する。このため、同乗者が放送番組視聴中であったとしても、番組本編以外のタイミングで案内画像が表示されるので、番組本編の視聴を妨げることがない。また運転手にしてみれば、番組本編以外に切り替わったタイミングで、手動で案内画面の表示操作を行う必要がないため、利便性が向上する。
【0019】
上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、前記制御部が、前記表示部の全画面領域に対して前記経路案内画像の表示比率を大きくした案内重視モードと、前記表示部の全画面領域に対して前記デジタル放送受信画像の表示比率を大きくすると共に前記案内重視モードと比較して音声による経路案内の頻度を低減させた視聴重視モードとを備え、前記案内重視モード及び前記視聴重視モードの選択指示を受け付け、受け付けた指示に基づいて動作することを特徴としている。
【0020】
この構成によると、表示部の全画面領域に対して経路案内画像の表示比率を大きくした案内重視モードと、表示部の全画面領域に対してデジタル放送受信画像の表示比率を大きくすると共に音声案内の頻度を低減させた視聴重視モードとを備えている。そしてこれら複数のモードの切り替えを、ナビゲーション装置が備える操作パネル等により選択可能としている。これにより、運転者或いは同乗者の好みにあわせて、デジタル放送の表示と案内表示との何れを優先するかを選ぶことができる。
【0021】
上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、前記制御部が、前記視聴重視モードで動作している場合、前記番組本編の放送時間において前記経路案内画像を用いた経路案内処理を禁止すると共に、前記番組本編を除く放送時間となったタイミングにおいて、前記タイミングにおける経路案内処理と、前記タイミング以降における経路案内処理とをあわせて実施することを特徴としている。
【0022】
この構成によると、視聴重視モードでは、番組本編受信中には経路案内画像を表示せず、番組本編受信中ではないことが検出されたタイミングにおいて、実行対象のナビゲーション処理、つまり案内画像の表示等を行う。また、検出タイミング以降に実施対象となると推定されるナビゲーション処理も併せて実施する。このため、番組本編受信中でない時間帯が比較的短い場合等において、効率的にナビゲーション処理を実施することができる。
【0023】
上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、前記制御部が、前記視聴重視モードで動作しており、且つ自動車専用道を走行中である場合に、前記番組本編の放送時間において経路案内処理を許可することを特徴としている。
【0024】
この構成によると、視聴重視モードでは、自動車専用道走行時の場合に限り、番組本編受信中であっても実行対象のナビゲーション処理を実施する。これは、運転者にとっては初めて走行する道であっても、自動車専用道に一旦入ってしまえば、ナビゲーション処理が発生する頻度が低いためである。しかしインターチェンジやジャンクション等の分岐点ではナビゲーション処理が重要となる(通過した場合に戻るのに苦労する)ことから、視聴重視モードであっても、ナビゲーション処理を実施する。このように、状況にあわせてナビゲーション処理の処理形態を変更することが可能である。
【0025】
上記の目的を達成するために本発明のナビゲーション装置は、前記制御部が、前記視聴重視モードで動作している場合に、自動車専用道を走行中である場合を除き、前記番組本編の放送時間において経路案内音声を用いた経路案内処理を禁止することを特徴としている。
【0026】
この構成によると、視聴重視モードでは、自動車専用道走行時を除き、番組本編受信中は音声によるナビゲーション処理を行わない。これにより、デジタル放送の視聴に専念できる。ただし、インターチェンジやジャンクション等の分岐点でのナビゲーション処理が重要となる自動車専用道においては、音声報知を行う。このように、状況にあわせてナビゲーション処理の処理形態を変更することが可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、基本的にはデジタル放送の視聴継続を優先させ、視聴中の番組とは直接関係のないCM等の期間中に集中的に、経路案内画像による経路案内(=ナビゲーション)や音声報知を行う。このため、同乗者のデジタル放送視聴が妨げられることがなく、また運転者も効率的に経路案内を受けることができる。このように、同乗者に対するテレビの視聴サービスを重視しつつ、運転者に対しても経路案内が必要な場合において有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、ここで示す実施形態は一例であり、本発明はここに示す実施形態に限定されるものではない。
[実施の形態1]
【0029】
〈1−1.内部構成について〉
図1は、本発明の第一の実施形態に係るナビゲーション装置100の内部構成示すブロック図である。図中の1及び1’は、デジタル放送受信用ダイバーシティアンテナ(=放送受信部)である。2は、デジタルテレビ受信用のチューナ、及び復調器を含むフロントエンド部(=放送受信部)である。3は、フロントエンド部2から出力されるTS(Transport Stream)から、画像データ、音声データ、放送情報データ等を分離、デコードするTSデコーダである。
【0030】
4は、複数の画像データを合成して二画面表示したり、画像上に文字画像を重ねたりするスケーラ/OSD(On-Screen Display)部(=画像重畳部)である。5は、スケーラ/OSD部4で合成された画像データを、表示装置6(=表示部)の信号フォーマットにあわせた信号にエンコードした後、D/A変換を行う画像処理部である。画像処理部5から出力された信号は、表示装置6に送られ、表示装置6が備える液晶モニタ等に画像が表示される。
【0031】
7は、音声データを、エンコードされている音声フォーマットにあわせデコードするとともに、D/A変換を行ってアナログ音声信号に変換する音声信号処理部である。本実施形態では、TSデコード3より与えられた音声データや、音声合成部19により生成された音声案内用の音声データ等を処理対象としている。音声信号処理部7により変換されたアナログ音声信号は、音声出力部8により、スピーカ9をドライブできるように増幅される。
【0032】
10は、放送波等で送られて来る交通情報データを受信するアンテナである。11は、アンテナ10で受信した放送波から、交通情報データを抽出、復号する交通情報受信デコーダである。12は、GPS衛星(不図示)より、GPSに用いる各種電波を受信するGPS受信アンテナである。13は、GPS受信アンテナ12で受信した信号をデコードし、緯度経度情報を生成するとともに、ジャイロ等を利用した航法装置を備える測位航法装置である。
【0033】
14は、ナビゲーション装置100に対する操作を受け付ける操作入力部である。15は、ナビゲーション装置100の各部を制御するCPU(=制御部)である。16は、各部の制御や処理に関連する情報を一時的に記録するRAM、及びプログラムや固定データ等を格納するROMである。17は、ナビゲーションで使われる地図データや音楽データ等を格納するディスク装置である。18は、ナビゲーション用の地図や案内情報を描画する描画部である。19は、ナビゲーション用の合成音声を生成する音声合成部である。20は、同一筐体内に収納した本装置の各部の集まりを示す。
【0034】
〈1−2.ナビゲーション処理について〉
ここで、本発明の第一の実施形態に係るナビゲーション処理の概要を、図1〜図4の図面を用いながら説明する。
【0035】
ナビゲーション装置100は予め、表示装置6に表示される動作設定メニュー(不図示)等において、入力操作部14によりデジタル放送視聴重視設定を受け付けることが可能である。この設定を受け付けると、RAM/ROM16に設定情報が記録される。
【0036】
運転者が車両に乗車し、ナビゲーション装置100に目的地設定が行われると、測位航法装置13から得られる自車位置と、設定された目的地とから、CPU15がルート探索を行う。探索により得られた経路は、RAM/ROM16に経路情報として格納される。さらに経路情報に関連する地図、及び地図上の経路を、描画部18が描画する。
【0037】
描画部18により描画された画像はスケーラ/OSD部4に与えられ、ナビゲーション画面に含まれる各画像に重畳され、画像処理部5を経て表示装置6に表示される。これにより表示装置6には地図、経路、及び自車位置等が表示され、ナビゲーションが可能となる。
【0038】
この状態において、ナビゲーション装置100を視聴可能な運転者や同乗者(以下、「視聴者」という)によりデジタル放送の視聴が選択されると、デジタル放送受信用ダイバーシティアンテナ1及び1’で受信したデジタル放送波が、フロントエンド2で、視聴者が選択した受信可能な放送局に選局され、TSが出力される。
【0039】
TSはTSデコーダ3でデコードされ、画像データ、音声データ、及び放送情報データ等に復号される。画像データはスケーラ/OSD部4に送られ、音声データは音声信号処理部7へ送られ、放送情報データはCPU15へ送られる。画像データはスケーラ/OSD部4、画像処理部5を通り、所定の画像フォーマットの信号に変換された後、表示装置6に送られる。
【0040】
デジタル放送が表示装置6に表示されている状態(以下、「テレビ視聴状態」という)への移行指示をCPU15が受けると、スケーラ/OSD部4は表示装置6の全画面でデジタル放送の受信画像を表示する(図3)。音声も、TSデコードされたテレビ音声データが、音声信号処理部7、及び音声出力部8を経て9スピーカを駆動し、受信音声が出力される。このため、視聴者は受信画像と受信音声とを視聴可能である。
【0041】
デジタル放送の受信中、ナビゲーション装置100のCPU15は常時、自車位置と目的地の経路を監視する。この際、デジタル放送視聴重視設定が有効に設定されている動作モード(=視聴重視モード)であり、且つ受信放送の表示中である場合、CPU15は通常の案内タイミングにおいて経路案内を行わない。なお案内タイミングとしては例えば、右左折指示をする700m手前のポイントや、直前のポイント等が用いられる。
【0042】
また、上述の状態である場合、TSデコーダ3で分離された放送に付随するデータをCPU15が解析する。そして特定の条件により、番組本編を受信している状態(以下、「本編状態」という)か、番組本編とは異なる放送を受信している状態(以下、「非本編状態」という)かを判別する。なお、非本編状態の一例としては、例えばCM、時報、放送終了後のカラーバー、番組宣伝、番組解説、歌番組におけるMC(master of ceremonies)等を、非本編状態とみなす。
【0043】
本編状態と非本編状態の判別方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、デジタル放送の受信音声が無音となることをもって非本編状態の開始又は終了と判定する手法、デジタル放送中のステレオ音声、或いは二重音声の部分を本編状態と判定する手法、テレビ信号における輝度、色分散等の画像信号の特徴を用いることによって非本編状態を判定する手法などを用いることができる。
【0044】
CPU15は、以上の判別結果に基づき、図2に示す制御タイミング信号を生成する。図2においては、横軸が時間経過を、縦軸が信号レベルを示している。制御タイミング信号は、本編状態においては信号レベルがHになり、非本編状態においては信号レベルがLになる信号である。図2の例では、例えば信号レベルがLからHに変化するT1の時点において、CM等が終了し、番組本編が開始されたことが示されている。
【0045】
制御タイミング信号の信号レベルがHからLに変化した場合、つまり本編状態から非本編状態に切り替わった場合、CPU15は現在の自車位置に基づき、経路案内を実施する。なおこの際、直近の経路案内だけではなく、今後実施予定である複数の経路案内を、RAM/ROM16に格納した経路情報から繰り上げて検索し、一度にまとめて実施する形態でもよい。
【0046】
以上の結果、図4に示すように、デジタル放送受信画面30に経路案内画像34が重ねあわせて表示される。図4の例では、デジタル放送受信画面30に、OSD/スケーラ4により生成されたOSD画像32と、CM画像33と、経路案内画像34が表示されている。
【0047】
同様に、音声によっても案内を行うため、音声合成部19から音声信号処理部7に案内音声データが送られる。これにより、案内音声への切り替え、或いはテレビ音声と案内音声との混合が行われ、スピーカ9から出力される(図4の案内音声35)。これにより、デジタル放送が本編からCMに切り替わった時点で、経路情報を運転者に伝えることが可能である。
【0048】
〈1−3.処理フローについて〉
ここで、本発明の第一の実施形態に係るナビゲーション処理の処理フローを、図5のフロー図を用いながら説明する。なお、図5における丸印は接続子を示しており、接続子に処理が移行した場合、図中の「スタート」とステップS110の間に位置する接続子へ処理がジャンプするものとする。
【0049】
本処理は、ナビゲーション装置100の電源が起動している状態において、ナビゲーション処理の実行命令をCPU15が検知することにより開始される。なお、実行命令は、例えば操作入力部14に含まれる操作ボタンが押下された場合等に発行される。
【0050】
本処理の開始後、CPU15はステップS110において、GPS受信アンテナ12や測位航法装置13を用いた、ナビゲーション処理を実施する。次にCPU15はステップS120において、テレビ画面の表示指示を検知したか否かを判定する。テレビ画面の表示指示は例えば、ユーザによる選局動作を操作入力部14が受け付けた場合等に発行される。
【0051】
テレビ画面の表示指示を検知していない場合、再びステップS110に移行する。テレビ画面の表示指示を検知した場合、CPU15はステップS130において、現在の動作モードが視聴重視モードであるか否かの判定を行う。なお本実施形態では、視聴重視モードが指定されていないモード、つまり通常の経路案内を行うモードを、案内重視モードとする。これらのモードの選択は、予めナビゲーション装置100の設定画面等において、ユーザ操作により実施可能である。
【0052】
視聴重視モードでない場合、後述するステップS200に移行する。視聴重視モードである場合、CPU15はステップS140において、TSデコーダ3や画像処理部5等を用いて、デジタル放送の受信画像を表示装置6に全画面表示する(図3)。また併せて、スピーカ9より、デジタル放送の受信音声を出力する。
【0053】
次にCPU15はステップ150において、受信画像の表示停止指示を検知したか否かを判定する。なお表示停止指示は、例えば操作入力部14によりテレビ非表示操作を受け付けたり、ナビゲーション画面への移行操作を受け付けた場合等に発行される。表示停止指示を検知した場合、再びステップS110に移行する。
【0054】
表示停止指示を検知していない場合、CPU15はステップS160において、選局されて表示中のデジタル放送が、本編状態であるか否かの判定を行う。具体的には、図2に示す制御タイミング信号の信号レベルを参照することにより、判定を行う。図2の例では、信号レベルがHの場合は本編状態、信号レベルがLの場合はCM等の非本編状態を示している。
【0055】
信号レベルがHである、つまり本編状態である場合、ステップS140に再び移行する。なおこの際、後述するステップS170による簡易ナビゲーション処理が実施中である場合は、ナビゲーション処理を強制中断する。
【0056】
信号レベルがLである、つまり非本編状態である場合、CPUはステップS170において、簡易ナビゲーション処理を行う。簡易ナビゲーション処理とは、テレビ画面を表示しながらも、画面の一部領域に、地図画像を除くナビゲーション用画像(=経路案内画像)を重ねあわせて表示する処理である。例えば図4に示す例では、デジタル放送受信画面30の右下において、CM画像33に重畳された案内画像34が表示されている。なおこの重畳処理は、OSD/スケーラ4により生成される重畳表示用信号を用いて実施される。
【0057】
また簡易ナビゲーション処理においては、音声合成部19により生成された経路案内音声によるナビゲーションも行う。音声合成部19から音声信号処理部7に案内音声データが送られ、スピーカ9から案内音声35が出力される。これにより、経路情報を運転者に伝えることが可能である。
【0058】
なお簡易ナビゲーション処理においては、ステップS170の時点で自車がナビゲーションポイント(=経路案内が必要とされる地点。例えば交差点の手前等)に位置していない場合、予め設定されている進行経路上に存在する直近のナビゲーションポイントにおける経路案内を先行して行うことが望ましい。
【0059】
或いは、直近のナビゲーションポイントだけではなく、二つ先、或いはさらにその先のナビゲーションポイントにおける経路案内も、併せて先行実施する形態でもよい。具体的には例えば、直近のナビゲーションポイントにおける案内が「200m先を右折して下さい」、二つ先のナビゲーションポイントにおける案内が「1km直進して下さい」、三つ先のナビゲーションポイントにおける案内が「300m先を左折して下さい」だとする。
【0060】
この場合、ステップS170、即ち非本編状態の期間中に、「200m先を右折し、1km直進し、300m先を左折して下さい」のような、ひとつにまとめたナビゲーション処理を行う。ただし、非本編状態の期間が短く、本編状態に切り替わるまでに経路案内完了が間に合わないとCPU15が判断した場合、通常通りのナビゲーション処理を行う形態でもよい。以上のようにステップS170が実施されると、再びステップS150に移行する。
【0061】
ステップS130に戻り説明を行うと、ステップS130において視聴重視モードではないと判定された場合、CPU15はステップS200において、デジタル放送の受信画像を表示装置6に全画面表示する(図3)。また併せて、スピーカ9より、デジタル放送の受信音声を出力する。
【0062】
次にCPU15はステップ220において、受信画像の表示停止指示を検知したか否かを判定する。表示停止指示を検知している場合、再びステップS110に移行する。表示停止指示を検知していない場合、CPU15はステップS230において、自車位置が予め定められたナビゲーションポイントであるかの判定を行う。
【0063】
ナビゲーションポイントではない場合、ステップS200に再び移行する。ナビゲーションポイントである場合、CPU15はステップS240において、受信画像の表示画面からナビゲーション画面への切り替えを行った後、通常の経路案内を行う。経路案内が完了した場合や、自車位置がナビゲーションポイントから離れた場合、CPU15はステップS200に再び移行する。
【0064】
以上に説明した本実施形態によれば、従来であれば予め定められたナビゲーションポイントごとで行われていた経路案内を、本願ではCM等の非本編状態の期間において行う。しかも、地図画像を除く案内画像、例えば図4に示す標識画像等を画面の一部に重畳表示させて経路案内を行う。このため、経路案内が番組本編の視聴の妨げになるのを回避するとともに、非本編状態におけるCM等の受信状態も確認できる。
【0065】
また、本願の経路案内は、本編状態に復帰するか、ナビゲーションポイントを離れるか、何れか早い方の状態まで続き、その後は表示していた経路情報を画面上から消去し、再び受信中のテレビ画像のみを表示する。従って非番組状態の期間が長い場合に、複数の経路案内を先行して一度に実施することが可能であり、CM等の時間を有効活用できる。
【0066】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。
[実施の形態2]
【0067】
〈2−1.内部構成について〉
第一の実施形態と同内容であるため、ここでは説明を省略する。
【0068】
〈2−2.ナビゲーション処理について〉
ここで、本発明の第二の実施形態に係るナビゲーション処理の概要を説明する。
【0069】
本実施形態のナビゲーション処理は、走行経路が高速道路(=自動車専用道)であるか否かにより、処理内容の切り替えを行う。なお、ここで言う「高速道路」とは、インターチェンジ等により侵入が制限され、所定の手続き、例えば料金支払等を行わなければ走行できない自動車専用道を指す。従って歩行者が通行可能な一般道とは区別される。
【0070】
高速道路では、一旦インターチェンジに入ると、目的とするインターチェンジまでの間、経路案内を行う必要性が低い。経路案内が必要となるのは、例えばジャンクションや分岐点等の付近程度である。このような理由から、高速道路では常時、地図画面を表示してもあまり意味がない。
【0071】
そこでデジタル放送を常時表示しても良いが、これも問題がある。なぜなら、高速道路の場合、降りるはずのインターチェンジを行き過ぎてしまうと、元の経路に戻るために時間と費用が余計にかかってしまう。従って本実施形態では、高速道路走行中は本編状態であっても、降りる予定のインターチェンジ手前等のナビゲーションポイント等において、経路案内を実施する。
【0072】
〈2−3.処理フローについて〉
ここで、本発明の第二の実施形態に係るナビゲーション処理の処理フローを、図6のフロー図を用いながら説明する。なお、第一の実施形態の図5と同様の処理については、同じ符号を付加することにより、説明を省略するものとする。
【0073】
第一の実施形態と異なる点として、ステップS160において、選局されて表示中のデジタル放送が本編状態であると判定された場合に、ステップS165に移行する。CPU15はステップS165において、自車が高速道路を走行中であり、且つナビゲーションポイントに位置するか否かの判定を行う。なお高速道路であるか否かと、ナビゲーションポイントであるか否かとの判定は、例えば測位航法装置13により得られる自車位置と、ディスク装置17に記録されている地図情報とを比較するソフトウェア処理によって行う。
【0074】
高速道路を走行中、且つナビゲーションポイントである場合は、ステップS170に移行し、簡易ナビゲーション処理を実施する。これにより、デジタル放送が本編状態であっても、経路案内が実施される。逆に上記条件を満たさない場合、ステップS140に移行し、通常通りのテレビ画像の表示処理を行う。
【0075】
以上に説明した本実施形態によれば、高速道路の走行中は、視聴重視モードであってもナビゲーションポイントにおける経路案内を優先し、簡易ナビゲーション処理を行う。このため、インターチェンジを行き過ぎてしまう等により、経路に戻るための時間と費用が余計にかかってしまうのを防止することができる。
【0076】
[その他の実施の形態]
以上、好ましい実施の形態及び実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施の形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形して実施することができる。
【0077】
従って本発明は、以下の形態にも適用可能である。
(A)本実施形態では、CPU15がテレビ画像表示とナビゲーション画像表示との重畳や切り替えを行うタイミングとして、番組本編からCMへの移行タイミングを例に説明を行っているが、これ以外のタイミングにより重畳や切り替えを実施する形態でもよい。例えば、番組のジャンル情報等に基づいて、番組単位で切り替えタイミングを生成する形態でもよい。具体的には、ジャンルがスポーツの番組を視聴対象、ジャンルがニュースの番組を視聴対象外に予め設定しておく。この場合、CPU15はTSより得られるジャンル情報がスポーツの場合は通常のテレビ画像表示、ニュースの場合は経路案内画像34を番組に重畳させて表示する。このように、ユーザが興味を持っていない番組の期間にルート案内等を行うため、視聴の妨げになりくいという効果が得られる。
【0078】
(B)本実施形態では、本発明のナビゲーション処理を実施する車載用装置として、車載用デジタル放送受信機20を例に説明しているが、これ以外のナビゲーション装置において実施する形態でもよい。例えば、自動車電話や各種オーディオ機器等と一体型になった車載用ナビゲーション装置でもよい。また受信するデジタル放送として、地上デジタル放送やBSデジタル放送、CSデジタル放送等、複数のデジタル放送の受信機能を備えたナビゲーション装置でもよい。
【0079】
(C)本実施形態では、本発明のナビゲーション処理に関わる車載用デジタル放送受信機20の各種機能部が、マイクロプロセッサ等の演算処理装置上でプログラムを実行することにより実現されているが、各種機能部が複数の回路により実現される形態でもよい。
【0080】
(D)本実施形態では、デジタル放送受信装置とナビゲーション装置とが同一筐体に収容されている形態を例に説明したが、必ずしも同一筐体である必要はない。例えば相互に通信部を備え、通信部を介して画像音声信号やデータ転送を行うことにより、上記と同様の動作をさせる形態であってもよい。
【0081】
(E)本発明の第二の実施形態では、自動車専用道の一例として高速道路を例に説明を行っているが、これ以外の自動車専用道、或いは自動車専用ではない一般道を、ステップS165の処理分岐条件とする形態でもよい。例えば長距離トンネルや海底トンネル、巨大道路橋等において、本編状態であっても、経路案内を行う形態であってもよい。
【0082】
(F)音声による経路案内に関して、一般道を走行する場合は合成音声による案内は停止し、経路案内画像34を表示するタイミングで所定の音声、例えば「ポーン」というような報知音を鳴らすだけの形態でもよい。これにより、運転者に対し、経路案内画像34が画面に表示されたことを知らせることができる。従って運転者は、報知音が鳴った時だけ画面を確認すれば良いし、視聴者にとって耳障りになることが少ない。
【0083】
(G)上記に関連して、ナビゲーション装置が検索した経路から自車が外れた場合にも、前述のごとく「ポーン」という報知音を鳴らすとともに、表示装置6の画面の一部領域に、図4に示すような経路案内画像34を重畳表示する形態でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のナビゲーション装置を、車載用デジタル放送受信機に適用した場合の装置構成を示すブロック図である。
【図2】タイミング信号の波形の一例を示す波形図である。
【図3】表示部に表示される番組本編の画像の一例を示す画面図である。
【図4】表示部に表示される番組本編以外の画像の一例を示す画面図である。
【図5】第一の実施形態に係るナビゲーション処理を示すフロー図である。
【図6】第二の実施形態に係るナビゲーション処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0085】
100 ナビゲーション装置
1、1’ ダイバーシティアンテナ(放送受信部)
2 フロントエンド部(放送受信部)
4 スケーラ/OSD部(画像重畳部)
6 表示装置(表示部)
15 CPU(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送波の受信及び選局を行う放送受信部と、
画像を表示する表示部と、
前記表示部に画像を重畳表示するための画像信号を生成する画像重畳部と、
を備えたナビゲーション装置において、
前記放送受信部により受信したデジタル放送波から得られる受信信号の解析結果に基づき、予め定められた放送が受信中であるか否かを示す制御タイミングを生成し、前記制御タイミングに基づき、地図画像を除く経路案内画像とデジタル放送受信画像とを前記表示部に重畳表示するように前記画像重畳部に指示する制御部を備えたこと
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
デジタル放送波の受信及び選局を行う放送受信部と、
画像を表示する表示部と、
前記表示部に画像を重畳表示するための画像信号を生成する画像重畳部と、
を備えたナビゲーション装置において、
前記放送受信部により受信したデジタル放送波から得られる受信信号の解析結果に基づき、予め定められた放送が受信中であるか否かを示す制御タイミングを生成し、前記制御タイミングに基づき、地図画像を除く経路案内画像とデジタル放送受信画像とを前記表示部に切り替えて表示するように前記画像重畳部に指示する制御部を備えたこと
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御タイミングが、前記放送受信部により選局されたデジタル放送の番組本編の放送時間と、前記デジタル放送の番組本編を除く放送時間との切り替わりを示していること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記表示部の全画面領域に対して前記経路案内画像の表示比率を大きくした案内重視モードと、前記表示部の全画面領域に対して前記デジタル放送受信画像の表示比率を大きくすると共に前記案内重視モードと比較して音声による経路案内の頻度を低減させた視聴重視モードとを備え、前記案内重視モード及び前記視聴重視モードの選択指示を受け付け、受け付けた指示に基づいて動作すること
を特徴とする請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記視聴重視モードで動作している場合、前記番組本編の放送時間において前記経路案内画像を用いた経路案内処理を禁止すると共に、前記番組本編を除く放送時間となったタイミングにおいて、前記タイミングにおける経路案内処理と、前記タイミング以降における経路案内処理とをあわせて実施すること
を特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記視聴重視モードで動作しており、且つ自動車専用道を走行中である場合に、前記番組本編の放送時間において経路案内処理を許可すること
を特徴とする請求項5に記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
前記制御部が、前記視聴重視モードで動作している場合に、自動車専用道を走行中である場合を除き、前記番組本編の放送時間において経路案内音声を用いた経路案内処理を禁止すること
を特徴とする請求項4に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−14487(P2010−14487A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173665(P2008−173665)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】