説明

ナビサーバ

【課題】災害発生エリアにおける各リンクの安全性の高低を、実際の災害状況に鑑みて的確に評価した上で、ナビ装置による自動車等の移動体の誘導を支援することができるナビサーバを提供する。
【解決手段】本発明のナビサーバ100によれば、災害発生エリアに包含されるリンクが抽出され、プローブ情報に基づいて当該抽出リンクのそれぞれのコストが評価される。プローブ情報により表される自動車(第1移動体)2の空間的かつ時間的な移動パターンには災害による影響が反映されている蓋然性が高い。したがって、災害発生エリアにおける各リンクの安全性の高低が、実際の災害状況および道路状況に鑑みて的確に当該各リンクのコストとして評価されうる。また、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置200に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて当該災害の影響を回避しうるように自動車(第2移動体)2をナビ装置200に誘導させうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が有するナビ装置に道路交通情報を送信することにより、該ナビ装置による該移動体の誘導を支援するナビサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
あるエリアにおいて地震、水害等の災害が発生した後、あるいは災害が発生することが予測された後、このエリアを走行する自動車が災害の影響を回避しうるように迂回経路を迅速に設定して、自動車に搭載されているナビ装置に当該迂回経路等を通知する先行技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−156941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記先行技術によれば、災害の発生によって自動車の走行に支障をきたす可能性が高い地点が、シミュレーション等に基づいて決定され、当該地点の通行を回避するように迂回経路が設定される。このため、シミュレーション結果が実際の災害状況から乖離している場合、当該災害状況に鑑みて不適切な迂回経路が設定される可能性がある。たとえば、実際には自動車の走行に支障をきたす可能性が著しく低いリンクをわざわざ迂回する経路が設定される可能性がある。また、これとは逆に自動車の走行に支障をきたす可能性が高いリンクを包含する迂回経路が設定される可能性がある。したがって、ナビ装置(カーナビ)を通じて迂回経路を通知されたユーザに混乱を招くおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、災害発生エリアにおける各リンクの安全性の高低を、実際の災害状況に鑑みて的確に評価した上で、ナビ装置による自動車等の移動体の誘導を支援することができるナビサーバを提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明のナビサーバは、移動体が有するナビ装置に道路交通情報を送信することにより、該ナビ装置による該移動体の誘導を支援するナビサーバであって、座標列により表される複数のリンクを包含する支援マップ情報が格納されている支援マップ格納部と、第1移動体が有するプローブ装置から、該第1移動体の複数時点における位置をプローブ情報として受信する第1支援処理部と、前記支援マップ情報と、前記プローブ情報とに基づいて前記道路交通情報を生成し、第2移動体が有する前記ナビ装置に該道路交通情報の一部または全部を送信する第2支援処理部とを備え、前記第2支援処理部が災害情報源との通信に基づき、災害が発生したエリアを認識し、前記複数のリンクから当該エリアに包含されるリンクを抽出し、当該抽出リンクのそれぞれについて前記プローブ情報に基づいてコストを評価し、該コストに基づいて前記道路交通情報を生成することを特徴とする。
【0006】
第1発明のナビサーバによれば、災害発生エリアに包含されるリンクが抽出され、プローブ情報に基づいて当該抽出リンクのそれぞれのコストが評価される。プローブ情報により表される第1移動体の空間的かつ時間的な移動パターンには災害による影響が反映されている蓋然性が高い。したがって、災害発生エリアにおける各リンクの安全性の高低が、実際の災害状況および道路状況に鑑みて的確に当該各リンクのコストとして評価されうる。また、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて当該災害の影響を回避しうるように第2移動体を当該ナビ装置に誘導させうる。
【0007】
第2発明のナビサーバは、第1発明のナビサーバにおいて、前記第2支援処理部が、前記災害発生後に前記第1移動体が通過した頻度が高い道路に包含される前記リンクの前記コストを低く評価することを特徴とする。
【0008】
第2発明のナビサーバによれば、災害発生後において第1移動体の通過頻度が高い道路に包含されるリンクは災害による影響が少なく安全である蓋然性が高いことが勘案された上でコストが評価される。したがって、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて第2移動体が当該災害の影響を回避しうるように誘導されうる。
【0009】
第3発明のナビサーバは、第1または第2発明のナビサーバにおいて、前記第2支援処理部が、前記災害発生後に前記第1移動体が進行方向を反転させた頻度が高い道路に包含される前記リンクの前記コストを高く評価することを特徴とする。
【0010】
第3発明のナビサーバによれば、災害発生後において第1移動体が進行方向を反転させる頻度が高い道路に包含されるリンクは災害による影響を受けており、安全とはいえない蓋然性が高いことが勘案された上でコストが評価される。したがって、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて第2移動体が当該災害の影響を回避しうるように誘導されうる。
【0011】
第4発明のナビサーバは、第1〜第3発明のうちいずれか1つのナビサーバにおいて、前記第2支援処理部が、前記第1移動体が有するナビ装置との通信に基づき、該ナビ装置により設定されたナビルートを認識し、該ナビルートに包含されている一方、前記災害発生後における前記第1移動体の走行ルートから外れている頻度が高い道路に包含されている前記リンクの前記コストを高く評価することを特徴とする。
【0012】
第4発明のナビサーバによれば、第1移動体が有するナビ装置により設定されたナビルートには含まれている一方、災害発生後における第1移動体の実際の走行ルートから外れている道路に包含されるリンクは、第1移動体がそこを回避せざるを得ない程度の災害による影響を受けており、安全とはいえない蓋然性が高いことが勘案された上でコストが評価される。したがって、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて第2移動体が当該災害の影響を回避しうるように誘導されうる。
【0013】
第5発明のナビサーバは、第1〜第4発明のうちいずれか1つのナビサーバにおいて、前記第2支援処理部が、前記災害発生の前後における前記プローブ情報の偏差を演算し、該偏差が大きい道路に包含されている前記リンクの前記コストを高く評価することを特徴とする。
【0014】
第5発明のナビサーバによれば、災害発生の前後においてプローブ情報の偏差が大きい道路に包含されるリンクは災害による影響を受けており、安全とはいえない蓋然性が高いことが勘案された上でコストが評価される。したがって、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて第2移動体が当該災害の影響を回避しうるように誘導されうる。
【0015】
第6発明のナビサーバは、第1〜第5発明のうちいずれか1つのナビサーバにおいて、前記第2支援処理部が、前記ナビ装置との通信により、前記第2移動体の出発位置と目的位置とを認識し、前記コストが低い前記リンクが優先的に包含されるように、該出発位置および該目的位置を結ぶ支援ルートを設定し、該支援ルートの一部または全部を表す情報を前記道路交通情報として生成することを特徴とする。
【0016】
第6発明のナビサーバによれば、第2移動体の出発位置および目的位置を結ぶ支援ルートが設定され、当該支援ルートの一部または全部を表す情報が道路交通情報として設定される。前記のように災害発生エリアにおける各リンクの安全性の高低が、実際の災害状況および道路状況に鑑みて的確に当該各リンクのコストとして評価されうるので、道路交通情報がナビ装置に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて当該災害の影響を回避しうるように第2移動体をナビ装置に誘導させうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のナビサーバの実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
本発明のナビサーバの構成について説明する。図1に示されているナビサーバ100は、災害情報センターサーバ10と、自動車(移動体)2に搭載されているナビ装置(「プローブ装置」にも該当する。)200とのそれぞれと、ネットワーク経由で通信可能な一または複数のコンピュータにより構成されている。ナビ装置200は自動車以外の移動装置に搭載されてもよいし、ユーザ(移動体の一種に該当する。)によって携帯されていてもよい。
【0019】
ナビサーバ100は支援マップ格納部102と、道路交通情報格納部104と、第1支援処理部110と、第2支援処理部120とを備えている。
【0020】
支援マップ格納部102には支援マップ情報が格納されている。支援マップ情報において、道路を構成する各リンクの位置、形状および姿勢等が、座標((緯度、経度)または(緯度、経度、高度))の列により表現され、かつ、各リンクには当該各リンクを識別するためのリンク識別情報が付されている。
【0021】
道路交通情報格納部104にはナビ装置200からナビサーバ100に送信されたプローブ情報や、道路交通情報センターのサーバ等からナビサーバ100に送信された道路交通情報が格納されている。
【0022】
第1支援処理部110は自動車2に搭載されているナビ装置(プローブ装置)200から、当該自動車2の複数時点における位置を「プローブ情報」として受信する。プローブ情報には自動車2を識別するための番号(VIN)が付されており、これにより、多数のプローブ情報がいずれの自動車2のプローブ情報であるかが識別されうる。第1支援処理部110は道路交通情報センターのサーバ等から、各リンクの移動コスト等の道路交通情報を受信する。
【0023】
第2支援処理部120は災害情報センターサーバ(災害情報源)10との通信に基づき、災害が発生したエリアに包含されるリンクを抽出し、当該抽出リンクのそれぞれについてプローブ情報等に基づいてコストを評価する。第2支援処理部120は支援マップ情報と、プローブ情報(および道路交通情報センターから得られた道路交通情報)と、当該コストとに基づいて道路交通情報を生成する。第2支援処理部120はナビ装置200に当該道路交通情報の一部または全部を送信する。
【0024】
ナビ装置200は自動車2に搭載されたハードウェアとしてのECUまたはコンピュータと、メモリに格納され、当該コンピュータに諸機能を付与するソフトウェアとしてのナビプログラムにより構成されている。なお、ナビプログラムは最初から車載コンピュータのメモリ(ROM)に格納されていてもよいが、車載コンピュータからのリクエストがあったとき等の任意のタイミングでこのプラグラムの一部または全部がサーバ(図示略)からネットワークや衛星放送を介して当該車載コンピュータにダウンロードまたは放送され、そのメモリ(EEPROM,RAM)等に格納されてもよい。
【0025】
ナビ装置200は入力装置201と、出力装置202と、ナビマップ格納部204と、第1処理部210と、第2処理部220とを備えている。
【0026】
入力装置201は自動車2のセンターコンソール等に配置された操作ボタンやマイクロフォンにより構成されており、ユーザの操作または発話による種々の設定を可能とする。出力装置202は自動車2のセンターコンソールに配置されたディスプレイ装置であり、マップ情報等を表示または出力する。ナビマップ格納部204には出力装置202に出力されるナビマップ情報等が格納されている。ナビマップ情報において、道路を構成する各リンクの位置、形状および姿勢等が、座標列により表現され、かつ、各リンクには当該各リンクを識別するためのリンク識別情報が付されている。ナビマップ情報と支援マップ情報とのスペックやデータ構造が異なるため、各マップ情報における座標列の定義等が異なっていても、同一のリンクに共通のリンク識別情報が付されることにより、リンクのマッチングが可能とされている。
【0027】
第1処理部210はナビサーバ100との通信に基づき、自動車2の出発位置p1および目的位置p2を当該ナビサーバ100に認識させる。第2処理部220はナビサーバ100との通信に基づき、当該ナビサーバ100において生成された道路交通情報のうち一部または全部を認識する。第2処理部220は当該道路交通情報と、ナビマップ格納部202に格納されているナビマップ情報とに基づいてナビルートrを設定し、かつ、当該ナビルートrを出力装置202に出力させる。
【0028】
なお、ナビサーバ100やナビ装置200の構成要素が情報を「認識する」とは、当該構成要素が情報を受信すること、情報をデータベースやメモリから探索または読み出すこと、受信等した基礎情報に基づいて演算処理によって情報を算定、推定、設定、決定、探索等すること、パケットをデコードして情報を顕在化させること、さらには算定等した情報をメモリに保存すること等、他の情報処理のために当該情報を準備しておくためのあらゆる情報処理を実行することを意味する。
【0029】
前記構成のナビシステムの機能について説明する。
【0030】
ナビ装置200において、第1処理部210により、GPS受信機(図示略)により受信されたGPS信号や、自動車2に搭載されている加速度センサおよびレートセンサ等(図示略)の出力に基づき、時刻tにおける自動車2の位置p(t)が一定時間間隔ごとに測定される(図2/S022)。複数時点における位置p(t)が、自動車2の識別情報が付された「プローブ情報」としてナビサーバ100に対して送信またはアップロードされる。
【0031】
これに応じてナビサーバ100において、第1支援処理部110により、自動車2のプローブ情報が認識または交通情報格納部104に格納もしくは蓄積される(図2/S011)。蓄積されたプローブ情報に基づき、リンクごとの通行所要時間等のコストの統計演算結果が得られる。また、第1支援処理部110が道路交通情報センターサーバから道路交通情報を定期的に受信し、当該道路交通情報を先の道路交通情報に代えて交通情報格納部104に格納または記憶させる。道路交通情報センターから提供される道路交通情報には、各リンクにおける移動所要時間や移動距離などのほか、交通規制の有無に応じて高低が変化する各リンクのコストが包含されている。
【0032】
また、ユーザによって入力装置201が操作されることによって、自動車2の目的位置p2が入力または設定される(図2/S024)。第1処理部210により、自動車2の目的位置p2と、当該目的位置p2の入力時刻t’における自動車2の位置p(t’)としての出発位置p1が、自動車2の識別情報が付された上でナビサーバ100に対して送信またはアップロードされる。
【0033】
これに応じてナビサーバ100において、第1支援処理部110により、自動車2の出発位置p1および目的位置p2が認識される(図2/S012)。また、第1支援処理部110により、支援マップ格納部102から支援マップ情報が読み出され、道路交通情報格納部104からプローブ情報等が読み出され、かつ、当該読み出し情報に基づき、当該自動車2の出発位置p1および目的位置p2を結ぶ支援ルートRが設定される(図2/S013)。支援ルートRは、目的位置p2までの移動距離もしくは予測所要時間が最短である、または、目的位置p2までの走行に際して自動車2の燃費が最良である等の条件下で設定される。後述するように、災害発生時には第2支援処理部120によって評価される、災害発生エリアに包含されるリンクのコストが加味された上で支援ルートRが設定される。
【0034】
さらに、第2支援処理部120により、支援ルートRを構成する複数のリンクから一部または全部のリンクが抽出される(図2/S014)。また、第2支援処理部120により、当該抽出リンクのリンク識別情報が、目的位置p2等に付された識別情報により識別される自動車2に搭載されているナビ装置200に宛てて送信またはダウンロードされる。
【0035】
これに応じて、ナビ装置200において、第2処理部220により当該リンク識別情報と、ナビマップ格納部204により格納されているナビマップ情報と、自動車2の出発位置(目的位置p2の入力時刻とは異なる時刻における自動車2の現在位置であってもよい。)p1と、先に入力された目的位置p2とに基づき、図4に示されているようなナビルートrが設定され、かつ、出力装置202にナビマップ情報とともに出力される(図2/S028)。なお、ナビルートrに加え、自動車2の現在位置p(t)および進行方向(方位)を表すアイコン等が、ナビマップ情報とともに出力または表示される。さらに、第2処理部220により、ナビルートrを構成する全部のリンクのリンク識別情報が、自動車2の識別情報が付された上でナビサーバ100に送信またはアップロードされる。
【0036】
これに応じて、ナビサーバ100において第2支援処理部120により当該リンク識別情報、ひいては当該リンク識別情報により識別されるリンクにより構成されるナビルートrが認識または記憶される(図2/S015)。
【0037】
第2支援処理部120は災害情報センターサーバ10と定常的に通信することにより災害発生の有無を認識しており、災害が発生した場合または災害が発生する蓋然性が高い場合、当該災害発生エリアを認識する(図2/S016)。また、第2支援処理部120は支援マップ情報に基づき、災害発生エリアに包含されるリンクを抽出する(図2/S017)。
【0038】
さらに、第2支援処理部120は当該抽出リンクのコストを評価する(図2/S018)。たとえば第2支援処理部120は前記災害発生後に図3に示されているように自動車2が通過した(次に述べるように進行方向を反転させた場合は除く。)頻度が高い道路に包含されるリンクのコストを低く評価する。これは、災害発生後において自動車(またはプローブカー)2の通過頻度が高い道路に包含されるリンクは災害による影響が少なく安全である蓋然性が高いことが勘案されたためである。
【0039】
また、第2支援処理部120は災害発生後に図3に示されているように自動車2が進行方向を反転またはUターンさせた頻度が高い道路に包含されるリンクのコストを高く評価する。これは、災害発生後において自動車2が進行方向を反転させる頻度が高い道路に包含されるリンクは災害による影響を受けており、安全とはいえない蓋然性が高いことが勘案されたためである。
【0040】
さらに、第2支援処理部120は図4に示されているようにナビルートr(図2/S015参照)に包含されている一方、災害発生後における自動車2の走行ルートから外れている頻度が高い道路に包含されているリンクのコストを高く評価する。これは、ナビルートrには含まれている一方、災害発生後における自動車2の走行ルートから外れている道路に包含されるリンクは、自動車2がそこを回避せざるを得ない程度の災害による影響を受けており、安全とはいえない蓋然性が高いことが勘案されたためである。
【0041】
また、第2支援処理部120は災害発生の前後におけるプローブ情報の偏差を演算し、当該偏差が大きい道路に包含されているリンクのコストを高く評価する。これは、災害発生の前後においてプローブ情報の偏差が大きい道路に包含されるリンクは災害による影響を受けており、安全とはいえない蓋然性が高いことが勘案されたためである。たとえば、同一の識別情報が付されているプローブ情報であるにもかかわらず、図5に示されているように災害発生前のプローブ情報から演算される走行ルートのうち、災害発生後のプローブ情報から演算される走行ルートと相違する道路に包含されるリンクのコストが高く評価される。さらに、災害発生前のプローブ情報から演算される自動車2の交通量や平均通行時間と、災害発生後のプローブ情報から演算される自動車2の交通量や平均時間とが閾値を越えて相違するような道路に包含されるリンクのコストが高く評価される。
【0042】
なお、災害発生後からの経過時間の長短に応じて、前記複数の手法が選択的に採用されてもよい。また、災害発生エリアに包含されるリンクのコストが、その初期値から、前記手法にしたがって増減されることにより最終的に評価されてもよい。災害発生後の各リンクのコストの初期値が、災害発生前までのプローブ情報および道路交通情報センターの道路交通情報に応じたコストとは無関係に設定されてもよく、災害発生前までのコストに災害発生に応じたコストが加算されることによって設定されてもよい。さらに、同一のリンクであっても災害タイプの別に応じてコストが差別化されてもよい。たとえば、支援マップ情報部において、リンク識別情報に災害タイプおよびコストの組み合わせを表す情報が付され、第2支援処理部120によって災害発生エリアに加えて災害タイプ(地震、火事、水害等)が認識されたとき、当該エリアに包含される各リンクのコストが当該災害タイプに応じて初期設定された後、この初期値が前記のようにプローブ情報に基づいて増減されることにより各リンクのコストが最終的に評価されてもよい。また、地震発生地域におけるリンクコストの初期値が、震度またはマグニチュードが大きいほど高く設定される等、災害発生地域に包含されるリンクのコストの初期値が、災害の程度に応じて設定されてもよい。さらに、災害発生地域に包含されるリンクのコストの初期値が、その他の地域のリンクよりも一律に高くなるように設定されてもよい。
【0043】
そして、第2支援処理部120は当該コストが低いリンクを優先的に包含されるように、出発位置p1および目的位置p2を結ぶ支援ルートRを設定する(図2/S013)。また、第2支援処理部120は前記のように支援ルートRからリンクを抽出し(図2/S014)、当該抽出リンクのリンク識別情報を災害発生に応じた道路交通情報としてナビ装置200に送信する。なお、自動車2の現在位置p(t)が災害発生エリアまたはその近傍エリアにある場合、支援ルートとは無関係に当該エリアに包含されるリンクのコストが、リンク識別情報とともに災害発生時の道路交通情報としてナビ装置200に送信されてもよい。
【0044】
災害発生に応じた道路交通情報の送信対象となるナビ装置200としては、出発位置p1、目的位置p2、支援ルートR、または、プローブ情報から把握される現在位置p(t)が災害発生エリアまたはその近傍範囲に包含される自動車2に搭載されているナビ装置200が選定される。
【0045】
これに応じて、ナビ装置200において第2処理部220は図6に一点鎖線で示されているような災害が発生していない通常時におけるナビルートrとは異なる、図6に実線で示されているようなナビルートrを災害発生時には設定かつ出力することができる。
【0046】
前記機能を発揮するナビシステムによれば、災害発生エリアに包含されるリンクが抽出され、プローブ情報に基づいて当該抽出リンクのそれぞれのコストが評価される(図2/S016〜S018、図3〜図5参照)。プローブ情報により表される自動車2の空間的かつ時間的な移動パターンには災害による影響が反映されている蓋然性が高い。したがって、災害発生エリアにおける各リンクの安全性の高低が、実際の災害状況および道路状況に鑑みて的確に当該各リンクのコストとして評価されうる。また、各リンクのコストに基づいて生成された道路交通情報がナビ装置200に送信されることにより、実際の災害状況および道路状況に鑑みて自動車2が当該災害の影響を回避しうるように、ナビ装置200に災害発生に応じたナビルートrの出力等によって当該自動車2を誘導させうる(図2/S026、図6参照)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のナビサーバの構成説明図
【図2】本発明のナビサーバの機能説明図
【図3】リンクコストの評価方法の説明図(その1)
【図4】リンクコストの評価方法の説明図(その2)
【図5】リンクコストの評価方法の説明図(その3)
【図6】災害発生前後におけるナビルートの相違に関する説明図
【符号の説明】
【0048】
2‥自動車(第1移動体、第2移動体)、100‥ナビサーバ、102‥支援マップ格納部、104‥道路交通情報格納部、110‥第1支援処理部、120‥第2支援処理部、200‥ナビ装置(プローブ装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が有するナビ装置に道路交通情報を送信することにより、該ナビ装置による該移動体の誘導を支援するナビサーバであって、
座標列により表される複数のリンクを包含する支援マップ情報が格納されている支援マップ格納部と、
第1移動体が有するプローブ装置から、該第1移動体の複数時点における位置をプローブ情報として受信する第1支援処理部と、
前記支援マップ情報と、前記プローブ情報とに基づいて前記道路交通情報を生成し、第2移動体が有する前記ナビ装置に該道路交通情報の一部または全部を送信する第2支援処理部とを備え、
前記第2支援処理部が災害情報源との通信に基づき、災害が発生したエリアを認識し、前記複数のリンクから当該エリアに包含されるリンクを抽出し、当該抽出リンクのそれぞれについて前記プローブ情報に基づいてコストを評価し、該コストに基づいて前記道路交通情報を生成することを特徴とするナビサーバ。
【請求項2】
請求項1記載のナビサーバにおいて、
前記第2支援処理部が、前記災害発生後に前記第1移動体が通過した頻度が高い道路に包含される前記リンクの前記コストを低く評価することを特徴とするナビサーバ。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビサーバにおいて、
前記第2支援処理部が、前記災害発生後に前記第1移動体が進行方向を反転させた頻度が高い道路に包含される前記リンクの前記コストを高く評価することを特徴とするナビサーバ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のナビサーバにおいて、
前記第2支援処理部が、前記第1移動体が有するナビ装置との通信に基づき、該ナビ装置により設定されたナビルートを認識し、該ナビルートに包含されている一方、前記災害発生後における前記第1移動体の走行ルートから外れている頻度が高い道路に包含されている前記リンクの前記コストを高く評価することを特徴とするナビサーバ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載のナビサーバにおいて、
前記第2支援処理部が、前記災害発生の前後における前記プローブ情報の偏差を演算し、該偏差が大きい道路に包含されている前記リンクの前記コストを高く評価することを特徴とするナビサーバ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1つに記載のナビサーバにおいて、
前記第2支援処理部が、前記ナビ装置との通信により、前記第2移動体の出発位置と目的位置とを認識し、前記コストが低い前記リンクが優先的に包含されるように、該出発位置および該目的位置を結ぶ支援ルートを設定し、該支援ルートの一部または全部を表す情報を前記道路交通情報として生成することを特徴とするナビサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8805(P2009−8805A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168916(P2007−168916)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【特許番号】特許第4177422号(P4177422)
【特許公報発行日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】