説明

ハイブリッド作業車両

【課題】 旧い設計の作業車両の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むようにして、既存の変速機の制御内容を変えないようにする。
【解決手段】 変速機2とディファレシャルギヤ4の間の空いたスペースに発電電動機12を配置して、ハイブリッド車100を構成する。発電電動機22を、変速機2の制御装置とは独立したハイブリッド制御装置40で制御する。発電電動機22を主として電動機として作動させ、補機30に対しては主として蓄電部50から電力が供給されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから車輪までの動力伝達経路に、変速機が備えられ、発電電動機による駆動力によって車輪が駆動されるハイブリッド作業車両に関するものであり、特に電力負荷としての補機が搭載されたハイブリッド作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般自動車のみならず建設機械や防災用オフロード車などの作業車両の分野においてもハイブリッド車が開発されている。ちなみに本発明における防災用オフロード車とは、特殊消防車や特殊トラックあるいは装甲車などのように劣悪な環境や悪路走行を伴う任務に使用する車両を指す。防災用オフロード車の懸架装置は悪路走行に対応するため前輪独立懸架であることが多いが、用途によっては車軸懸架などの場合もあり、本発明は全ての懸架形式を利用可能である。
【0003】
図1(a)に示すように、エンジン1と変速機(トランスミッション)2の間にモータ3を配置した構成のハイブリッド車は、一般自動車の分野で広く知られている。この種のレイアウトの車両は、特許文献1(特開2000-289476号公報)などにおいて公知となっている。
【0004】
エンジン1と変速機2の間にモータ3を配置した場合には、車速とモータの回転数の関係は、図2(a)に示すとおりとなり、変速機2の選択速度段が1速、2速、3速、4速と変化するごとにモータ3の回転数が上昇を繰り返す。このためモータ3の回転数を制御するために変速機2の制御のみならずモータ3の制御を組み合わせたプログラムが必要になり、制御装置の改変が必要となる。たとえばモータ3の負荷状態に応じて変速機2を電子制御する必要がある。
【0005】
また、一般自動車の分野では、図1(b)に示すごとく変速機2とディファレンシャルギヤ4の間にモータ3を配置して、ハイブリッド車を構成するという発明が、特許文献2(特公昭49-29642号公報)、特許文献3(特公昭50-16340号公報)にみられるように公知となっている。
【0006】
作業車両の中には、災害現場で救援活動を行うための特殊作業車両としての防災用オフロード車がある。防災用オフロード車には、用途に応じて照明灯、通信装置、計算機、レーダ、砲塔などの装備が補機(電源負荷)として搭載される。これら補機は、エンジン軸出力に比して大電力を消費する。この点に鑑み、防災用オフロード車をハイブリッド車として構成するにあたり、図1(a)に示すのと同様にエンジン1と変速機2の間にモータ3を配置した上で最適な制御システムを構築するという発明が、特許文献4(特開2003-314326号公報)に開示され、公知となっている。
【特許文献1】特開2000-289476号公報
【特許文献2】特公昭49-29642号公報
【特許文献3】特公昭50-16340号公報
【特許文献4】特開2003-314326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
防災用オフロード車などの作業車両は耐用年数が一般乗用車と比較にならないくらい長い。このため、過去古くに設計、生産された旧式の車両も市場に数多く現存する。このため新たに新車開発される車両のみならず市場に現存する旧式の車両についてもハイブリッド化したいとの要請がある。
【0008】
旧式の防災用オフロード車をハイブリッド車として構成するにあたり、図1(a)に示すレイアウトを採用した場合には、車速とモータの回転数の関係はやはり一般自動車と同様に図2(a)に示すとおりとなり、変速機2の選択速度段が1速、2速、3速、4速と変化するごとにモータ3の回転数が上昇を繰り返す。このためモータ3の回転数を制御するために変速機2の制御のみならずモータ3の制御を組み合わせたプログラムが必要になる。たとえばモータ3の負荷状態に応じて変速機2を電子制御しなければならない。
【0009】
しかし、旧式の防災用オフロードの中には、変速機が電子制御に対応していないものもある。このため旧式の防災用オフロード車を新たにハイブリッド車として構成するにあたり図1(a)に示すレイアウトを採用したとすると、変速機を新たに電子制御化する必要があり、制御装置の改変どころか電子制御装置そのものを新たに追加しなければならない場合もあり、大きな設計変更を余儀なくされ多大なコストを要することがある。ここで防災用オフロード車などの作業車両の分野では、既存の変速機およびその周辺の機器を大きく改変することなく、容易にハイブリッド車に改変したいとの要請がある。すなわち、旧い設計の作業車両の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込みたい、つまりレトロフィットさせたいとの要請がある。したがって、上記図1(a)に示すレイアウトは、高コストを招きハイブリッド化を容易に行うことができないことから、これを採用することはできない。
【0010】
そこで、本発明は、旧い設計の作業車両の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むようにして、既存の変速機の制御内容を変えないようにすることを第1の解決課題とするものである。
【0011】
さて、防災用オフロード車には、上述したごとく照明機材や通信機材などの電源負荷たる補機が搭載されており、これら補機の電力需要は、走行用のエンジンの軸出力に比較して非常に大きい。このため防災用オフロード車をハイブリッド車として構成し、モータ3をエンジン1によって駆動して発電作用させて補機に電力を供給したとすると、状況によっては車両の走行性能が損なわれることが予測される。
【0012】
そこで、本発明は、上記第1の解決課題を達成しつつも、車両の走行性能が損なわれないようにすることを、第2の解決課題とするものである。
【0013】
防災用オフロード車は、用途によっては、高負荷で走行しながらも大容量の発電を要求されることもある。よって、この種の用途に使用される防災用オフロード車をハイブリッド車で構成した場合には、1つのモータ3によってエンジン1による走行用の動力をアシストするとともに、発電作用させて補機に大電力を供給しなければならず制御が複雑になることが予測される。さらに1つのモータ3で大電力を賄おうとすると、モータ3が大型化するという問題が発生する。さらに、エンジン1からモータ3までの動力伝達経路が長くなると、メカロスが増大することが予測される。さらに、上述したごとく、モータ3を旧式の防災用オフロード車に組み込んだ場合に、既存の変速機の制御内容を変えないようにするという上記第1の解決課題を維持することが望まれる。
【0014】
そこで、本発明は、高負荷で走行しながらも大容量の発電がされる用途の作業車両をハイブリッド車として構成するに際して、上記第1の解決課題を達成しつつも、制御が複雑にならず、またメカロスが増大せず、モータ(発電電動機)が大型化することのないようにすることを、第3の解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明は、
エンジンから車輪までの動力伝達経路に、少なくとも変速機が備えられた作業車両に適用され、発電電動機による駆動力によって車輪が駆動されるハイブリッド作業車両であって、
変速機と車輪との間に配置され、当該変速機と車輪との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用と電動作用を行う発電電動機と、
発電電動機または蓄電部から電力が供給されることにより作動する補機と、
発電電動機が発電作用を行うことにより電力が蓄積され、電力を補機および発電電動機に供給する蓄電部と
が備えられ、
発電電動機を、独立したハイブリッド制御装置で制御するようにしたこと
を特徴とする。
【0016】
第2発明は、第1発明において、
ハイブリッド制御装置は、
作業車両が走行中には、作業車両が減速している場合または蓄電部の残留電力が規定値よりも下回っている場合を除き、発電電動機を発電作用させず蓄電部に蓄積された電力を補機に供給することで補機を作動させる制御を行なうこと
を特徴とする。
【0017】
第3発明は、
エンジンから車輪までの動力伝達経路に、少なくとも変速機が備えられた作業車両に適用され、発電電動機による駆動力によって車輪が駆動されるハイブリッド作業車両であって、
エンジンと変速機との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用を行う第1の発電電動機と、
変速機と車輪との間に配置され、当該変速機と車輪との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用と電動作用を行う第2の発電電動機と、
第1の発電電動機または/および第2の発電電動機または蓄電部から電力が供給されることにより作動する補機と、
第1の発電電動機または/および第2の発電電動機が発電作用を行うことにより電力が蓄積され、電力を補機および第2の発電電動機に供給する蓄電部と
が備えられ、
第1の発電電動機および第2の発電電動機を、独立したハイブリッド制御装置で制御するようにし、このハイブリッド制御装置は、
第1の発電電動機を発電作用させて第1の発電電動機から補機に電力を供給して補機を作動させる制御を行なうこと
を特徴とする。
【0018】
第4発明は、第1発明または第2発明において、
変速機と、発電電動機の駆動軸との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第1のクラッチを備えたこと
を特徴とする。
【0019】
第5発明は、第1発明または第2発明において、
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第2のクラッチを備えたこと
を特徴とする。
【0020】
第6発明は、第1発明または第2発明において、
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路にあって、変速機とは別に設けられた第2の変速機を備えたこと
を特徴とする。
【0021】
第7発明は、第1発明または第2発明において、
変速機と車輪との間の動力伝達経路に、ハイブリッドユニットが配置され、このハイブリッドユニットは、
当該変速機と車輪との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用と電動作用を行う発電電動機と、
変速機と、発電電動機の駆動軸との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第1のクラッチと、
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第2のクラッチと、
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路にあって、変速機とは別に設けられた第2の変速機と
からなること
を特徴とする。
【0022】
第8発明は、第3発明において、
エンジンと、第1の発電電動機の駆動軸との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第1のクラッチを備えたこと
を特徴とする。
【0023】
第9発明は、第3発明において、
第2の発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第2のクラッチを備えたこと
を特徴とする。
【0024】
第1発明および第2発明について説明する。防災用オフロード車などの作業車両の場合には、エンジンルーム直後に乗員席を設ける都合上、エンジンと変速機の間にハイブリッド化のための発電電動機を配置するための十分なスペースがない場合がある。一方、変速機とディファレンシャルギヤの間には、長い駆動力伝達軸が存在しているため、発電電動機を配置するスペースが十分にあることが多い。そこで、図3に示すごとく変速機2とディファレシャルギヤ4の間の空いたスペースに発電電動機22を配置して、ハイブリッド車100を構成した。この場合、図2(a)に示す車速とエンジン1の回転数の関係に対し、本発明の車速と発電電動機22の回転数の関係は、図2(b)に示すとおりとなり、変速機2の選択速度段が1速、2速、3速、4速と変化したとしても、車速に比例して発電電動機22の回転数が上昇するのみである。このため変速機2の制御とは別の観点から発電電動機22の回転数を制御することが可能となる。すなわち、発電電動機22を、変速機2の制御装置とは独立したハイブリッド制御装置40で制御することができた。これにより既存の変速機2の制御およびその周辺の機器を改変する必要がなくなる。また発電電動機22を、独立したハイブリッド制御装置40で制御することで、発電電動機22の制御が簡易なものとなり、発電電動機22の制御装置を容易に構築することができる。このように第1発明によれば、旧い設計の作業車両100の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むことができるようになり、既存の変速機2の制御内容を変えないようにすることができる。しかし、防災用オフロード車などの作業車両100には、照明機材や通信機材などの電源負荷たる補機30が搭載されており、これら補機30の電力需要は、走行用のエンジン1の軸出力に比較して非常に大きい。このため防災用オフロード車などの作業車両1をハイブリッド車として構成し、発電電動機22をエンジン1によって駆動して発電作用させて補機に電力を供給したとすると、状況によっては車両の走行性能が損なわれることが予測される。すなわち、発電電動機22は、変速機2と車輪5との間の動力伝達経路6に配置されているため、変速機2がエンジン1の動力を断続する変速クラッチを備えている場合には、仮に常時発電電動機22を発電作用させていると変速が行なわれる毎に、エンジン1から発電電動機22への動力伝達が断たれ、走行中の車体の運動エネルギーが車輪5の駆動軸を経て発電電動機22にエネルギー回生され、補機への電力供給のために消費されてしまう。このため変速のたびに急激にエンジンブレーキをかけたように車体が減速する現象が発生する。これにより車両の走行性能が損なわれるとともに乗車している者に不快感を与えるのみならず、車両に砲塔が搭載されている場合には、車両の急速な減速に伴って車両が前のめりに傾いて走行中の射撃精度が低下する。
【0025】
そこで、本第1発明では、発電電動機22を主として電動機として作動させ、補機30に対しては主として蓄電部50から電力が供給されるようにして、この問題を解決した。
【0026】
第2発明では、その制御内容を具体的に限定し、作業車両100が走行中には、作業車両100が減速している場合または蓄電部の残留電力が規定値を下回っている場合を除き、発電電動機22を補機への直接的かつ高応答性を要求される電力供給のための発電に使わず、蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給することで補機30を作動させる制御を行なうこととした。これにより発電電動機22による定常的な発電量は大容量補機の瞬間的な電力需要に応じる必要はなく、変速によってエンジン出力による駆動力が断たれた場合にも、蓄電部に蓄えられた電力が補機に供給されるので、車体の運動エネルギーが消費されるという不都合を避けることができる。
【0027】
つぎに第3発明について説明する。
【0028】
防災用オフロード車などの作業車両100は、用途によっては、高負荷で走行しながらも大容量の発電ができるようにとの要求に応えて新たな車種を開発する必要が生じることもある。
【0029】
そこで、新規に設計する車両では、大容量の発電要求に応えるために、第1発明の発電電動機22(第2の発電電動機22)に加えて、図8に示すように、エンジン1と変速機2との間の動力伝達経路に、第1の発電電動機21を配置する構造も採用できるようにしたい。第2の発電電動機22は、第1発明と同様に変速機2と車輪5との間に配置され、独立したハイブリッド制御装置40で制御される。これにより第2の発電電動機22に関しては、第1発明と同様に旧い設計の作業車両100の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むことができるようになり、過去の設計事例で利用実績のある既存の変速機2の制御内容を変えないようにすることができる。そして第2の発電電動機22を主として電動機として作動させ、第1の発電電動機21および蓄電部50から電力が補機30に供給されるようにして、第2の発電電動機22が発電したならば変速が行われる毎に発生する、繰り返し起きる急激な減速現象を解消させた。
【0030】
ただし、第1の発電電動機21は、エンジン1と変速機2との間の動力伝達経路に配置されているため、第1の発電電動機21をエンジンアシストに利用する目的で電動作用させると、図2(a)で説明したのと同様に第1の発電電動機21(モータ3)の負荷状態に応じて変速機2を電子制御しなければならず、旧い形式の変速機を新型車両に再利用するという意味での「設計図のレトロフィット」が困難になるおそれが生じる。
【0031】
そこで、本第3発明では、第2の発電電動機22のみならず第1の発電電動機21を、独立したハイブリッド制御装置40で制御するようにし、このハイブリッド制御装置40で、第1の発電電動機21を発電作用させて第1の発電電動機21から補機30に電力を供給して補機30を作動させるなどの制御を行なうことで、この問題を解決した。すなわち、第1の発電電動機21を、モータとして使用しないようにしたので、第1の発電電動機21の負荷状態に応じて変速機2を電子制御するなど、変速機2の制御内容を改変することを不要とした。よって、旧い設計の作業車両100の既存の装置構成はできる限りそのまま新型車両の設計に利用することにしてハイブリッド化のための機器を新たに追加して組み込むことができるようになり、既存の変速機2の制御内容を変えないようにすることができる。
【0032】
この結果、第2の発電電動機22は、主としてエンジン1による走行用の動力をアシストする電動モータとして機能し、第1の発電電動機21は、補機30に電力を供給する発電機として機能することとなるため、1つの発電電動機を電動作用させたり発電作用させたりする場合と比べて制御が複雑にならず簡易なものとすることができる。また、補機30で消費された蓄電部を充電するための大電力が2つに分かれた発電電動機21、22で賄われるため、1つの発電電動機でまとめて大電力を賄う場合と比べて発電電動機の磁気飽和を避けるための鉄心の重量が軽くなる。このため、個々の発電電動機を小型化することができる。さらに、大容量の発電電動機を1つだけ採用して、それを変速機2と車輪5との間の動力伝達経路6に配置させたとすると、エンジン1から、その発電電動機に至るまでの動力伝達経路6が長くなり、エンジン1の出力軸の馬力がメカロスによって大きく損なわれて発電電動機から出力されることになる。これに対して本発明では、大容量の発電電動機を、第1の発電電動機21と第2の発電電動機22の2つに振り分け、そのうちの1つの第2の発電電動機22を、変速機2と車輪5との間に配置させたため、メカロスによる馬力損失は僅かで済む。その理由は、他の1つの第1の発電電動機21に至っては、エンジン1の出力軸の直ぐ後ろに配置されるため、エンジンで発生した駆動力が直ちに発電電動機21に到達するのでメカロスによる馬力損失は殆どなくなる。よって、メカロスによるエンジン1の馬力損失を抑制することができるからである。
【0033】
さて、防災用オフロード車などの作業車両をハイブリッド車として構成した場合には、そのエンジン1、発電電動機22(第3発明では第1の発電電動機21、第2の発電電動機22)は、通常走行のみならず特殊な用途のための駆動源として使用される。
【0034】
たとえば、酸欠状態にあるトンネル内や工業地帯の大規模火災現場などで救援活動を行う場合には、エンジン1が正常に動作しなくなるおそれがある。このため、エンジン1の稼動を停止して蓄電部50の蓄積電力のみで発電電動機22(第3発明では第1の発電電動機21、第2の発電電動機22)を電動作用させて車両100をあたかも純電気自動車のごとく走行させたいとの要請がある。
【0035】
そこで、第4発明では、変速機2と、発電電動機22の駆動軸22aとの間の動力伝達を遮断および接続する第1のクラッチ61を備えるようにしている(図3)。すなわち第1のクラッチ61を遮断することで、エンジン1から出力される動力が発電電動機22に伝達されることを断ち、その上で蓄電部50から電力を発電電動機22に供給することで、発電部50の蓄積電力により発電電動機22を電動作用させて車輪5を駆動することにより、車両100をあたかも純電気自動車のごとく走行させることができる。
【0036】
また、第8発明では、エンジン1と、第1の発電電動機21の駆動軸21aとの間の動力伝達を遮断および接続する第1のクラッチ61を備えるようにしている(図18)。すなわち、同様に第1のクラッチ61を遮断し、その上で蓄電部50から電力を第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22に供給して第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22を電動作用させて車輪5を駆動することにより、車両100をあたかも純電気自動車のごとく走行させることができる。
【0037】
また、防災用オフロード車などの作業車両をハイブリッド車として構成した場合には、被災地で救援要員が持参した大量のパソコンや照明機材、通信機材などの電源負荷たる補機30に対して、商用電源と同様な品質の大電力を長時間供給することが要求される。この場合、車両100の走行を停止して発電電動機22(第3発明では第1の発電電動機21、第2の発電電動機22)から大電力を補機に供給することが求められる。
【0038】
そこで、第5発明では、発電電動機22の駆動軸22aと車輪5との間の動力伝達を遮断および接続する第2のクラッチ62を備えるようにしている(図3)。すなわち、第2のクラッチ62を遮断することで、エンジン1および発電電動機22の動力が車輪5に伝達されることを断ち、車両100の走行を停止させ、その上でエンジン1の駆動により発電電動機22を発電作用させて発電電動機22から補機30に電力を供給することにより、あるいは蓄電部50から直接補機30に電力を供給することにより、作業車両100を停止させた状態で大電力を補機30に供給することができる。
【0039】
また、第9発明では、第2の発電電動機22の駆動軸22aと車輪5との間の動力伝達を遮断および接続する第2のクラッチ62を備えるようにしている(図示せず)。すなわち、同様に、第2のクラッチ62を遮断することで、エンジン1、第2の発電電動機22の動力が車輪5に伝達されることを断ち、車両100の走行を停止させ、その上でエンジン1の駆動により第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22を発電作用させて第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22から補機30に電力を供給することにより、あるいは蓄電部50から直接補機30に電力を供給することにより、作業車両100を停止させた状態で大電力を補機30に供給することができる。
【0040】
つぎに第6発明について説明する。
【0041】
さて、図1(b)のごとく変速機2とディファレンシャルギヤ4(本図ではディファレンシャルギヤ4を符号4aで示す構成要素と符号4bで示す構成要素に分けて記載)の間の空いたスペースに発電電動機22(モータ3)を配置したとすると、図1(a)のごとくエンジン1と変速機2の間に発電電動機22(モータ3)を配置した場合に比べて、発電電動機22(モータ3)のコストが上昇するという問題がある。以下ではこの原因を示すため、発電電動機22がモータ3として働く場合について説明する。
【0042】
すなわち、図2(c)は、図1(a)のレイアウトに対応するモータ3の特性を示し、図2(d)は、図1(b)のレイアウトに対応するモータ3の特性を示している。図2(c)、(d)は、同じ車速範囲でモータ3を等馬力にするために必要な特性を示している。
【0043】
つまり、図2(c)に示すように、図1(a)のレイアウトに対応するモータ3は、等馬力となる領域が比較的狭いもので十分である。なぜならばモータ3の回転数が1から2の比率で変化する範囲、モータ3のトルクが1から2の比率で変化する範囲でしか一定の馬力を出すことができなくても、変速機を用いてギヤ比を変えることによって、広い速度範囲で等馬力を確保できるからである。これに対して、図2(d)に示すように、図1(b)のレイアウトに対応するモータ3は、変速機を利用して車両を駆動できないので、等馬力となる領域を比較的広くせざるを得ない。したがって、モータ3の回転数が1から8の比率で変化する範囲、モータ3のトルクが1から8の比率で範囲で一定の馬力を出すことが求められる。このような等馬力領域が広く、低回転域で高トルクを出すことができる定出力範囲の広いモータ3は特殊なモータであり、等馬力領域が狭く低域で低トルクしか出すことができない範囲の汎用のモータ3に比べて、高コストとなる。また、図2(d)に示すモータ3は、低回転で高トルクを発生するため発熱量が多く、冷却装置による冷却能力を高める必要があり、更に高コストを招く。
【0044】
防災用オフロード車は、民生用車両の2倍以上の登坂トルクと、民生用車両なみの高速道路走行性能が要求される。民生用車両の場合には、図1(b)のレイアウトをとった場合であっても、図2(c)に示す低回転でのトルク値が小さくて済むので低コストの汎用モータ3を使用しても特に大きな問題は生じない。しかし防災用オフロード車の場合には、図1(b)のレイアウトをとった場合に図2(c)に示す低回転低トルクの等馬力領域が狭い汎用のモータ3を使用すると、モータからディファレンシャルギヤまでの減速比が一定になるため、低速時の登坂時にトルクが不足するか、逆に高速走行時に最高速度までモータ3が回らないという問題が生じる。
【0045】
そこで、この第6発明では、図2(c)に示す汎用のモータ3を用いて図2(d)に示す特殊なモータ3と同等に低回転で高トルクを出力でき、広い車速範囲で等馬力を出力できるようにすることを、低コストでかつ冷却効率を高めることなく実現できるようにすることを解決課題とするものである。
【0046】
この課題を達成するために、発電電動機22(図2におけるモータ3)の駆動軸22aと車輪5との間の動力伝達経路6にあって、変速機2とは別に設けられた第2の変速機7を備えるようにしている。これにより図1(b)のレイアウトをとり、図2(c)に示す低回転低トルクの等馬力領域が狭い汎用のモータ3を使用したとしても、第2の変速機7のギヤ比を、たとえば適宜ローギヤやハイギヤに切り替えて使用することで、登坂時に十分なトルクが得られ、かつ高速走行時に最高速度まで発電電動機22(モータ3)を回せることが可能となる。よって、低コストの汎用のモータ3を使用することができ冷却装置による冷却能力を高めることが不要となり、装置コストを低減させることができる。
【0047】
第7発明では、変速機2と車輪5との間の動力伝達経路6に、ハイブリッドユニット9が配置される。このハイブリッドユニット9内には、上述の発電電動機22と、第1のクラッチ61と、第2のクラッチ62と、第2の変速機7が設けられている。よって、既存の作業車両100の変速機2と車輪5との間のスペースに、ハイブリッド化に伴い必要とされる機器をすべてコンパクトにユニット化して収容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、図面を参照して本発明に係るハイブリッド作業車両について説明する。
【0049】
(第1実施例)
図3(a)、(b)は、第1実施例の作業車両100の構成図である。
【0050】
作業車両100としては、防災用オフロード車を想定している。また実施例では、ハイブリッド車として構成されていない既存の作業車両100に対して、各種機器を追加(レトロフィット)してハイブリッド車を構成した場合を想定している。
【0051】
防災用オフロード車100には、エンジン1と変速機2の間にハイブリッド化のための発電電動機22を配置するための十分なスペースがない。一方、変速機2とディファレンシャルギヤ4の間に発電電動機22を配置するスペースが十分にあることが多い。
【0052】
そこで、図3に示すごとく変速機2とディファレンシャルギヤ4の間の空いたスペースに発電電動機22を含むハイブリッドユニット9を配置して、発電電動機22による駆動力によって車輪5が駆動されるハイブリッド車100を構成するようにしている。作業車両100の全体構成のうち、既存のものに追加されたハイブリッドユニット9およびハイブリッドユニット9以外に追加された機器を、図3の破線内に示す。
【0053】
同図3に示すように、作業車両100は、エンジン1から車輪5までの動力伝達経路6に、トルクコンバータ8、変速機(トランスミッション)2、第1のクラッチ61、動力結合機構70、第2のクラッチ62、第2の変速機7、ディファレンシャルギヤ4(前後デファレンシャルギヤ4a、左右ディファレンシャルギヤ4b)が備えられている。
【0054】
変速機2と前後ディファレンシャルギヤ4aとの間の動力伝達経路に、ハイブリッドユニット9が配置される。このハイブリッドユニット9内には、上述の発電電動機22と、第1のクラッチ61と、第2のクラッチ62と、第2の変速機7と、電動走行準備完了センサ61aと、停車発電安全確認センサ62aが設けられている。
【0055】
発電電動機22は、変速機2と前後ディファレンシャルギヤ4aとの間に配置され、この変速機2と前後ディファレンシャルギヤ4aとの間の動力伝達経路に、その駆動軸22aが連結されて発電作用と電動作用を行う。
【0056】
補機30は、照明灯、通信装置、計算機、レーダ、砲塔など、負荷変動の激しい機器を含む各種の電源負荷であり、車両装備品として搭載されている。
【0057】
補機30は、発電電動機22または蓄電部50から電力が供給されることにより作動する。
【0058】
蓄電部50は、発電電動機22が発電作用を行うことにより電力が蓄積され、電力を補機30および発電電動機30に供給する。
【0059】
発電電動機22は、エンジンECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット;以下同じ)41、トランスミッションECU42とは独立したハイブリッド制御装置40で制御される。ハイブリッド制御装置40を独立で構成している理由は、エンジンECU41やトランスミッションECU42のプログラムを改変することなしに、ハイブリッド化するためである。またベースとなる作業車両100に元々エンジン1や変速機2を制御するコントローラ、ECUが存在しないことを考慮したものである。
【0060】
ただし、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令によってエンジン1の出力トルクを制御することも可能である。たとえばエンジンECU41に、外部から与えられる制御指令を入力する外部信号端子が備えられている場合には、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令を外部信号端子に入力させることによって、エンジン1を制御することができる。また、作業車両100に元々エンジンECU41がなかったり、エンジンECU41が存在したとしても外部信号端子が備えられていない場合には、アクセルペダルを自動制御で踏み込む機構を設けるとともに、アクセルペダルの踏み込み量の制御の設定値を外部から入力する外部信号端子を設けて、この外部信号端子にハイブリッド制御装置40から出力される制御指令を入力させることによって、エンジン1を制御することができる。
【0061】
例えば、作業車両100に外部信号端子200が備えられたエンジンECU41が搭載されている場合には、この外部信号端子200とハイブリッド制御装置40とを電気信号線で結線することによって、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令によるエンジン1の出力トルクを制御することができる。
【0062】
なお、後述する第2実施例においても、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令によってエンジン1の出力トルクを制御することが必要な場合には、同様にエンジンECU41の外部信号端子200とハイブリッド制御装置40とを結線することによって対処するものとする。
【0063】
第1のクラッチ61は、変速機2と、発電電動機22の駆動軸22aとの間の動力伝達を遮断および接続する。
【0064】
第2のクラッチ62は、発電電動機22の駆動軸22aと前後ディファレンシャルギヤ4aとの間の動力伝達を遮断および接続する。
【0065】
第1のクラッチ61、第2のクラッチ62としては、形式は問わない。足踏み式であっても手動式であってもよく、遠隔操作可能な自動式でもよい。また渦電式や電磁石方式の電気機構をもつものであってもよい。また、油圧や空気圧を利用したものであってもよい。また乾式や湿式のいずれであってもよい。
【0066】
第2の変速機7は、発電電動機22の駆動軸22aと前後ディファレンシャルギヤ4aとの間の動力伝達経路にあって、変速機2とは別に設けられている。
【0067】
作業車両100のうち前後ディファレンシャギヤ4aを挟んで車体前側には左右の車輪101、102が設けられているとともに、前後ディファレンシャギヤ4aを挟んで車体の後ろ側には左右の車輪103、104および左右の車輪105、106が設けられている。作業車両100は6輪車両である。以下では作業車両100が6輪車両であることを想定して説明するが、本実施例が適用される作業車両100は、2軸以上車軸を備えた4輪以上の車両であればよく、4輪車両、8輪車両などにも当然適用することができる。
【0068】
エンジン1の動力は、動力伝達経路6を経由して各車輪101〜106に伝達される。すなわち、エンジン1の動力は、トルクコンバータ8、変速機(トランスミッション)2、第1のクラッチ61、動力結合機構70、第2のクラッチ62、第2の変速機7に伝達される。そして、第2の変速機7から出力される動力は、前後ディファレンシャルギヤ4aによって車体の前後に振り分けられ、左右ディファレンシャルギヤ4bを介して車体前側の左右の車輪101、102に伝達されるとともに、車体後ろ側の左右の車輪103、104および左右の車輪105、106に伝達される。
【0069】
作業車両100の運転室には、アクセルペダル110、ブレーキペダル111、操作パネル112が設けられている。
【0070】
アクセルペダル110には、踏み込み量センサ110a、110bが設けられている。踏み込み量センサ110a、110bでは、アクセルペダル110の踏み込み量が検出される。踏み込み量センサ110aの検出信号は、エンジンECU41に入力され、踏み込み量センサ110bの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。
【0071】
ブレーキペダル111には、踏み込み量センサ111aが設けられている。踏み込み量センサ111aでは、ブレーキペダル111の踏み込み量が検出される。踏み込み量センサ111aの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。
【0072】
操作パネル112は、ハイブリッド制御装置40と電気的に接続されており、作業車両100の走行状態を表示する。また操作パネル112には、モード選択スイッチ112aが設けられている。モード選択スイッチ112aは、作業車両100の各種駆動モードである後述する「走行発電モード」、「電動走行モード」、「停車発電モード」を選択指示するスイッチである。モード選択スイッチ112aを操作して「走行発電モード」、「電動走行モード」、「停車発電モード」のいずれかが選択指示されると、選択指示内容を示す信号がハイブリッド制御装置40に入力される。
【0073】
エンジン1には、エンジン1の出力軸の回転数を検出するエンジン回転センサ1aが設けられている。エンジン回転センサ1aの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。
【0074】
変速機2には、変速機2の出力軸の回転数を検出する変速機出力軸回転センサ2aが設けられている。変速機出力軸回転センサ2aの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。
【0075】
第2の変速機7には、第2の変速機7の出力軸の回転数を検出する第2の変速機出力軸回転センサ7aが設けられている。第2の変速機出力軸回転センサ7aの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。第2の変速機出力軸回転センサ7aで検出される回転数は、概ね作業車両100の速度(車速)に比例している。
【0076】
第1のクラッチ61には、電動走行準備完了センサ61aが設けられている。電動走行準備完了センサ61aは、作業車両100を「電動走行モード」で電動走行させる準備が完了したことを判定するためのセンサであり、第1のクラッチ61が完全に切り離され、変速機2と、発電電動機22の駆動軸22aとの間の動力伝達を遮断する動作が完了したことを検出すると、「準備完了」の信号を出力する。電動走行準備完了センサ61aは、たとえばリミットスイッチで構成されている。電動走行準備完了センサ61aの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。
【0077】
第2のクラッチ62には、停車発電安全確認センサ62aが設けられている。停車発電安全確認センサ62aは、作業車両100が発進できない状態となり作業車両100を「停車発電モード」で発電させてもよいとの安全確認をとるためのセンサであり、第2のクラッチ62が完全に切り離され、発電電動機22の駆動軸22aと前後ディファレンシャルギヤ4aとの間の動力伝達を遮断する動作が完了したことを検出すると、「安全状態」の信号を出力する。停車発電安全確認センサ62aは、たとえばリミットスイッチで構成されている。停車発電安全確認センサ62aの検出信号は、ハイブリッド制御装置40に入力される。
【0078】
変速機2は、1速、2速、3速、4速の各速度段を選択するクラッチを有するトランスミッションを想定している。しかし、変速機2はクラッチ式に限らず、ベルトとプーリを用いた変速方式など各種変速方式の変速機であってもよい。また機械駆動式トランスミッションに限定されることなくトルクコンバータなどを用いた動流体駆動式トランスミッションであってもよい。また変速機2は手動操作で変速を行うものであってもよく自動変速であってもよい。本実施例では、変速機2は、変速機コントローラとしてのトランスミッションECU42によって制御されて、変速機2は自動変速するものとする。
【0079】
またエンジン1と変速機2の間にトルクコンバータ8を設けているが、トルクコンバータ8の配設を省略する実施も可能である。
【0080】
動力結合機構70は、変速機2から出力される動力と発電電動機22から出力される動力とを結合して、第2の変速機7に出力するものである。
【0081】
動力結合機構70の一方の入力軸71には第1のクラッチ61を介して変速機2の出力軸が連結されており、動力結合機構70の他方の入力軸72には発電電動機22の駆動軸22aが連結されており、動力結合機構70の出力軸73には第2のクラッチ62を介して第2の変速機7の入力軸が連結されている。動力結合機構70の各入力軸71、72は同軸で構成されている。動力結合機構70の各入力軸71、72と出力軸73は、ギヤによって連結されている。なお、ギヤ以外にたとえばベルト機構で連結する実施も可能である。
【0082】
ただし、図3に示す動力結合機構70の構成は一例であり、図4(a)、(b)に例示する構成とすることもできる。
【0083】
図4(a)は、動力結合機構70の各入力軸71、72を別軸で構成し、動力結合機構70の一方の入力軸71に変速機2の出力軸を連結し、動力結合機構70の他方の入力軸72には発電電動機22の駆動軸22aを連結し、動力結合機構70の出力軸73に第2の変速機7の入力軸を連結したものである。図4(a)では、動力結合機構70の入力軸71、出力軸73は同軸で構成されている。動力結合機構70の入力軸71、出力軸73と入力軸72は、ギヤによって連結されている。なお、ギヤ以外にたとえばベルト機構で連結する実施も可能である。
【0084】
図4(b)は、動力結合機構70の入力軸71に変速機2の出力軸を連結し、動力結合機構70の出力軸73に第2の変速機7の入力軸を連結し、入力軸71、出力軸73を同軸で構成し、これら入力軸71、出力軸73に発電電動機22の駆動軸22aを直結したものである。
【0085】
また、図4(c)に示すように、動力結合機構70の内部に第2のクラッチ62を組み込むように構成してもよい。
【0086】
また、図4(d)に示すように、発電電動機22の駆動軸22aの回転数が所望する回転数となるように、動力結合機構70のたとえば入力軸72に減速機あるいは増速機74を介して、発電電動機22の駆動軸22aを連結してもよい。
【0087】
第2の変速機7は、変速比が例えば1倍と1/4倍の減速比であるハイ、ロー2段の速度段を有する変速機である。第2の変速機7は、変速機2と同様に各種形態を採用することができる。本実施例では、第2の変速機7は、手動で変速が行われるものとする。
【0088】
エンジン1の出力トルクはエンジン制御装置としてのエンジンECU41によって制御される。この実施形態ではエンジン1の出力トルクはアクセル開度によって定まるものとする。エンジンECU41は、アクセルペダル踏み込み量センサ110aで検出されるアクセルペダル110の踏み込み量に応じて、エンジン1の出力トルクを制御する。エンジンECU41と、トランスミッションECU42はそれぞれ単独にエンジン1、変速機2を制御してもよく、エンジンECU41と、トランスミッションECU42は信号の授受を行うことにより協調してエンジン1、変速機2を制御してもよい。また、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令によってエンジン1の出力トルクを制御することも可能である。たとえばエンジンECU41に、外部から与えられる制御指令を入力する外部信号端子が備えられている場合には、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令を外部信号端子に入力させることによって、エンジン1を制御することができる。また、作業車両100に元々エンジンECU41がなかったり、エンジンECU41が存在したとしても外部信号端子が備えられていない場合には、アクセルペダルを自動制御で踏み込む機構を設けるとともに、アクセルペダルの踏み込み量の制御の設定値を外部から入力する外部信号端子を設けて、この外部信号端子にハイブリッド制御装置40から出力される制御指令を入力させることによって、エンジン1を制御することができる。
【0089】
例えば、図3に示すように、作業車両100に外部信号端子200が備えられたエンジンECU41が搭載されている場合には、この外部信号端子200とハイブリッド制御装置40とを電気信号線で結線することによって、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令によってエンジン1の出力トルクの制御することができる。
【0090】
発電インバータ25、蓄電部50、出力変換部26はそれぞれ直流電源線31に電気的に接続されている。出力変換部26は補機30に電気的に接続されている。
【0091】
発電インバータ25、蓄電部50、出力変換部26はそれぞれ発電インバータECU27、蓄電部ECU28、出力変換部ECU29によって制御される。発電インバータECU27、蓄電部ECU28、出力変換部ECU29とハイブリッド制御装置40との間は相互に無線通信あるいはアナログまたはディジタルなどの信号線で電気的にまたは光通信によって接続されており、信号の授受が行われる。たとえば発電インバータECU27は、発電電動機22の回転数等の情報を送出し、蓄電部ECU28は、残留電力の情報を送出し、出力変換部ECU29は補機30への電力供給状態の情報を送出するなど発電インバータ25、蓄電部50、出力変換部26から直流電源線31に対する電力収支の情報が授受される。ハイブリッド制御装置40は、発電インバータECU27、蓄電部ECU28、出力変換部ECU29それぞれに対して制御指令を与える。
【0092】
発電電動機22は、動力結合機構70を介して変速機2の出力軸および第2の変速機7の入力軸に連結されており、発電作用と電動作用を行う。つまり発電電動機22は電動機(モータ)として作動し、また発電機としても作動する。ただし、後述するように発電電動機22はハイブリッド制御装置40から発電インバータECU27に与えられる制御指令によって、主として電動機(モータ)として作動する。
【0093】
発電電動機22は、発電インバータ25によってトルク制御される。発電インバータ25は発電インバータECU27から出力される発電電動機制御指令(トルク指令)に応じて発電電動機22をトルク制御する。
【0094】
蓄電部50は、キャパシタや電池などによって構成され、発電電動機22が発電作用した場合に発電した電力を蓄積する。また蓄電部50は蓄電部50に蓄積された電力を発電インバータ25を介して発電電動機22に、または同電力を補機30に供給する。
【0095】
出力変換部26は、発電電動機22が発電作用した場合には発電した電力を、または蓄電部50に蓄積された電力を、補機30に適合する所望の電圧、周波数、相数の電力に変換して補機30に供給するものであり、たとえばCVCC発電インバータが内蔵されている。出力変換部26は、たとえば3相交流100V、60Hzの定電圧、定周波数の電力30kWを補機30に供給する。
【0096】
発電インバータECU27は、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令に応じて発電インバータ25に発電電動機制御指令(トルク指令)を出力する。
【0097】
発電インバータECU27から発電インバータ25に対して負(−)極性のトルク指令が与えられると、発電インバータ25は発電電動機22が発電機として作動するように制御する。すなわちエンジン1で発生した出力トルクの一部は、トルクコンバータ8、変速機2、第1のクラッチ61、動力結合機構70を介して発電電動機22の駆動軸22aに伝達されてエンジン1のトルクを吸収して発電が行われる。そして発電電動機22で発生した交流電力は発電インバータ25で直流電力に変換されて直流電源線31に供給される。
【0098】
また発電インバータECU27から発電インバータ25に対して正(+)極性のトルク指令が与えられると、発電インバータ25は発電電動機22が電動機として作動するように制御する。すなわち蓄電部50に蓄積された直流電力は発電インバータ25で交流電力に変換されて発電電動機22に供給され、発電電動機22の駆動軸22aを回転作動させる。これにより発電電動機22でトルクが発生し、このトルクは、発電電動機22の駆動軸22aから動力結合機構70、第1のクラッチ61、変速機2、トルクコンバータ8を介してエンジン出力軸に伝達されて、エンジン1の出力トルクに加算される。この加算した出力トルク(走行動力)は、車輪5を駆動するトルクとして動力伝達経路6に入力される。また発電電動機22の発電量(吸収トルク量)、電動量(アシスト量;発生トルク量)は、上記トルク指令の内容に応じて変化する。また、発電電動機22が発電する場合にエンジン出力を増加させる必要がある場合には、ハイブリッド制御装置40からエンジンECU41の外部信号端子200に対してエンジン出力を増加させる制御指令が与えられる。すなわち、ハイブリッド制御装置40が、発電電動機22(後述する第2実施例では、発電電動機21または/および発電電動機22)において、エンジン出力を利用した発電で発電量を増加させようとするとき、発電のエネルギー源であるエンジンの出力を増加させる必要があることは、自明のことである。なお、エンジン負荷の増加に応じてエンジン出力を増加させる自動操作を行うことは、エンジン制御の分野で従来から周知である。
【0099】
以下、ハイブリッド制御装置40で行われる制御内容について説明する。
【0100】
図5に示すように、まず運転者が選択指示したモードが「走行発電モード」、「電動走行モード」、「停車発電モード」のいずれかであるかが判断される(ステップ201)。この結果、運転者が選択指示したモードが「走行発電モード」である場合には、「走行発電モード」に対応する制御を実行する(ステップ202)。「走行発電モード」に対応する制御は図6に示される。「走行発電モード」では、以下の考えを基に制御が行われる。
【0101】
すなわち、防災用オフロード車などの作業車両100には、照明機材や通信機材などの電源負荷たる補機30が搭載されており、これら補機30の電力需要が走行用のエンジン1の軸出力に占める割合が非常に大きい場合がある。このため防災用オフロード車などの作業車両1をハイブリッド車として構成し、発電電動機22をエンジン1によって駆動して発電作用させて補機30に電力を供給したとすると、状況によっては車両の走行性能が損なわれることが予測される。すなわち、発電電動機22は、変速機2と車輪5(前後ディファレンシャルギヤ4a)の間の動力伝達経路6に配置されているため、変速機2がエンジン1の動力を断続するクラッチを備えている場合には、仮に常時発電電動機22を発電作用させていると変速が行なわれる毎に、エンジン1から発電電動機22への動力伝達が断たれ、車輪5にかかる走行負荷が発電電動機22に吸収される。このため変速のたびに急激にエンジンブレーキをかけたように車体が減速する現象が発生する。これにより車両の走行性能が損なわれるとともに乗車している者に不快感を与えるのみならず、車両に搭載された砲塔で射撃している最中に、車両の急速な減速に伴って車両がいきなり前のめりに傾くと、走行中の射撃精度が著しく低下する。
【0102】
そこで、上記車体減速現象が生じるであろう「走行発電モード」では、原則として発電電動機22で発電を行わせず蓄電部50の蓄積電力を補機30に供給する制御を行うことで、この問題を解決した。
【0103】
具体的には、作業車両100が走行中には、作業車両100が減速している場合または蓄電部50の残留電力が規定値を下回っている場合を除き、発電電動機22を発電作用させず蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給することで補機30を作動させる制御を行なうこととした。これにより発電電動機22が発電したならば変速が行われる毎に発生するであろう減速現象が解消される。
【0104】
以下、具体的に説明する。
【0105】
(走行発電モード)
走行発電モード選択時の制御内容を図6に示す。
【0106】
走行発電モードが選択されると、まず、基本パワーマネージメントの制御を実行する。基本パワーマネージメント制御実行中における電力の流れを図7(a)に矢印にて示す。
【0107】
すなわち、基本パワーマネージメント制御中は、蓄電部50の残留電力が規定の下限値を所定レベル以上、上回っている場合には発電電動機22を発電作用させず蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給して補機30を作動させる(図7(a)の実線矢印参照)。なお、「電力を補機30に供給する」とは、具体的には「電力を出力変換部26に供給することによって、その結果として電力を出力変換部26に接続された補機30に供給する」ことを意味するが、表現を簡素化するためにこのように表記している。ただし、蓄電部50の残留電力が規定の下限値に向けて所定レベルまで接近すると、発電電動機22を発電作用させ発電電動機22の発電によって得られた電力を補機30に供給して補機30を作動させるとともに蓄電部50に供給し蓄電部50の充電を行う(図7(a)の破線矢印参照)。
【0108】
補機30の電力消費が減少して発電電動機22の発電が過剰になると蓄電部50の残留電力量が上昇する。このため蓄電部50の残留電力量が上限値を超えないように発電電動機22の発電動作を抑制する周知の制御が行われる(ステップ301に記載した基本パワーマネージメント)。
【0109】
つぎに、各センサ110b、111a、1a、2a、7a、61a、62aの検出値に基づき作業車両100の状態推定を行う。これは、エンジンECU41やトランスミッションECU42から情報を得ることなくハイブリッド制御装置40が作業車両100の走行状態等を認識するためである。
【0110】
走行状態の推定項目はたとえば以下のとおりである。
【0111】
1) 安定走行状態の判定
作業車両1が走行中に、エンジン回転センサ1aの検出値と変速機出力軸回転センサ2aの検出値を比較して、これら回転数の比率が変速機2の規定のギヤ比に合致する回転比率になっているか否か、つまり変速機2のクラッチが完全に係合するなど滑りなく完全に噛み合った状態になっており安定して走行しているか否かが判定される。
【0112】
2) シフトアップの判定
変速機出力軸回転センサ2aの検出値に基づき作業車両100が加速中であることが判定され、エンジン回転センサ1aの検出値に基づきエンジン回転数が急に低下して安定したことが観測されると、その瞬間に変速機2でシフトアップが行われたと判定する。
【0113】
3) シフトダウンの判定
変速機出力軸回転センサ2aの検出値に基づき作業車両100が減速中であることが判定され、エンジン回転センサ1aの検出値に基づきエンジン回転数が急に上昇して安定したことが観測されると、その瞬間に変速機2でシフトダウンが行われたと判定する。
【0114】
4) 意図的な起動状態の判定
踏み込み量センサ111aの検出値に基づきブレーキペダル111が所定のしきい値以上踏み込まれていないことが観測され、踏み込み量センサ110bの検出値に基づきアクセルペダル110が所定のしき値以上踏み込まれていることが観測され、かつ、変速機出力軸回転センサ2aの検出値に基づき作業車両100が停止状態から加速し続けていることが観測されたならば、作業車両100は運転者による意図的な起動状態にあるものと判定する。
【0115】
5) 意図的な制動状態の判定
踏み込み量センサ111aの検出値に基づきブレーキペダル111が所定のしきい値以上踏み込まれていることが観測され、踏み込み量センサ110bの検出値に基づきアクセルペダル110が所定のしきい値以上踏み込まれていないことが観測され、かつ、変速機出力軸回転センサ2aの検出値に基づき作業車両100が減速し続けていることが観測されたならば、作業車両100は運転者による意図的な制動状態にあるものと判定する。
【0116】
6) 意図的な加速状態の判定
踏み込み量センサ111aの検出値に基づきブレーキペダル111が所定のしきい値以上踏み込まれていないことが観測され、踏み込み量センサ110bの検出値に基づきアクセルペダル110が所定のしきい値以上踏み込まれていることが観測され、かつ、変速機出力軸回転センサ2aの検出値に基づき作業車両100が加速し続けていることが観測されたならば、作業車両100は運転者による意図的な加速状態にあるものと判定する。
【0117】
7)電動走行の準備完了の判定
電動走行準備完了センサ61aから「準備完了」の検出信号が出力されると、第1のクラッチ61が完全に切り離されて作業車両100を「電動走行モード」で電動走行させる準備が完了したことが判定される。
【0118】
8)発進防止の安全確認の判定
停車発電安全確認センサ62aから「安全状態」の検出信号が出力されると、第2のクラッチ62が完全に切り離されて作業車両100が発進できない状態となり作業車両100を「停車発電モード」で発電させてもよいとの安全確認がとれたと判定する。
【0119】
9)第1のクラッチ61の噛み合い正常の判定
電動走行準備完了センサ61aから「準備完了」の検出信号が出力されておらず、変速機出力軸回転センサ2aで検出された変速機2の出力軸回転数と発電電動機22の駆動軸22aの回転数とが等しい場合には、第1のクラッチ61は安定に噛み合っていると判定する。
【0120】
10)第2のクラッチ62の噛み合い正常の判定
停車発電安全確認センサ62aから「安全状態」の検出信号が出力されておらず、第2の変速機出力軸回転センサ7aで検出された第2の変速機7の出力軸回転数と発電電動機22の駆動軸22aの回転数との比率が、第2の変速機7で選択されている速度段のギヤ比が等しい場合には、第2のクラッチ62は安定に噛み合っていると判定する。
【0121】
11)加速要請の判定
踏み込み量センサ111aの検出値に基づきブレーキペダル111が踏み込まれていないことが観測され、踏み込み量センサ110bの検出値に基づきアクセルペダル110が所定のしきい値以上踏み込まれていることが観測されたか、アクセルペダル110の踏み込み量の変化量が所定レベルを超えて増大しているときには、運転者による意図的な加速要請があるものと判定する。
【0122】
12)減速要請の判定
踏み込み量センサ110bの検出値に基づきアクセルペダル110が踏み込まれていないことが観測され、踏み込み量センサ111aの検出値に基づきブレーキペダル111が所定のしきい値以上踏み込まれていることが観測されたか、ブレーキペダル111の踏み込み量の変化量が所定レベルを超えて増大しているときには、運転者による意図的な減速要請があるものと判定する。
【0123】
上記判定の手法は一例であり、作業車両100の加減速の状態を、第2の変速機出力軸回転センサ7aの検出信号に基づき判定してもよい。また、第2のクラッチ62が正常に噛み合っている場合には、発電電動機22の駆動軸22aの回転数を検出することで、作業車両100の加減速状態を推定してもよい。さらに、第1のクラッチ61および第2のクラッチ62が正常に噛み合っている場合には、変速機出力軸回転センサ2aの検出信号に基づき、作業車両100の加減速状態を推定することができる(ステップ302)。
【0124】
上記作業車両100の状態推定結果から、作業車両100がつぎのいずれの状態であるかを判定する(ステップ303〜306)。
【0125】
・状態1(加減速なしまたは加減速あるがシフトに変化なし)
・状態2(弱い加速または弱い減速でシフトが変化している)
・状態3(強い加速でシフトが変化している)
・状態4(強い減速でシフトが変化している)
さらに、各状態1〜4に適合した制御を実行する(ステップ301、307、308、309)。
【0126】
すなわち、作業車両100が加速中あるいは減速中でない場合(ステップ303の判断「加減速なし」)であって変速機2でシフトダウンもシフトアップもされてない場合(ステップ304の判断「シフトに変化なし」)には、状態1であると判定し、上記ステップ301に戻り、基本パワーマネージメントの制御を実行する(ステップ301;図7(a))。
【0127】
一方、作業車両100が加速中または減速中である場合(ステップ303の判断「加減速中」)であって、変速機2でシフトダウンがされたかシフトアップがされた場合(ステップ304の判断「シフトに変化あり」)には、つぎに、
作業車両100の加速または減速が弱いか否かが判定される(ステップ305)。この結果、変速機2でシフトダウンがされたかシフトアップがされた場合であって作業車両100の加速または減速が弱いと判断された場合には(ステップ305の判断「加減速弱い」)、状態2であると判定し「弱い加減速」時の制御を実行する。
【0128】
「弱い加減速」時の制御実行中における電力の流れを図7(b)に矢印にて示す。
【0129】
すなわち、「弱い加減速」時は、弱い加速に伴う変速動作中であるか、弱い減速に伴う変速動作中であるかいずかである。弱い加速に伴う変速動作中は、たとえばアクセルペダル110を弱く踏んでいるにもかかわらず平地あるいは下り坂などの路面状況によって作業車両100が加速してシフトアップするような状態である。このような状態では、作業車両100に強力な加速は要求されない。また弱い減速に伴う変速動作中は、ブレーキペダル111を踏まないか若しくは弱く踏んだ状態で、泥濘地あるいは上り坂などの路面状況によって作業車両100が減速してシフトダウンするような状態である。このような状態では、作業車両100に強力な回生ブレーキは要求されない。
【0130】
そこで、「弱い加減速」時の制御実行中は、発電電動機22で発電作用を停止させて蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給して補機30を作動させる(ステップ307;図7(b)の実線矢印参照)。
【0131】
一方、変速機2でシフトダウンがされたかシフトアップがされた場合であって作業車両100の加速または減速が強いと判断された場合には(ステップ305の判断「加減速強い」)、つぎに、作業車両100の加速中であるかあるいは減速中であるかが判断される(ステップ306)。この結果、変速機2でシフトダウンがされたかシフトアップがされた場合であって作業車両100の加速が強いと判断された場合には(ステップ306の判断「加速」)、状態3であると判定し「強い加速」時の制御を実行する。
【0132】
「強い加速」時の制御実行中における電力の流れを図7(c)に矢印にて示す。
【0133】
すなわち、「強い加速」時は、たとえばアクセルペダル110が強く踏み込まれた状態で作業車両100が加速して変速機2でシフトアップが行われるような状態である。このような状態では、作業車両100には強力な加速が要求される。
【0134】
そこで、「強い加速」時の制御実行中は、蓄電部50に蓄積された電力を放電して発電電動機22に供給することで発電電動機22を電動作用させモータとして駆動することで作業車両100の加速をアシストするとともに、蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給して補機30を作動させる。作業車両100が高速走行している場合には、第2の変速機7の速度段は、減速率が小さいハイに切り替えられる。また作業車両100が低速走行している場合には、第2の変速機7の速度段は、減速率が大きいローに切り替えられる。作業車両100が高速走行しているか低速走行しているかは、変速機出力軸回転センサ2aの検出値あるいは第2の変速機出力軸回転センサ7aの検出値などから判断することができる(ステップ308;図7(c)の実線矢印参照)。
【0135】
一方、変速機2でシフトダウンがされたかシフトアップがされた場合であって作業車両100の減速が強いと判断された場合には(ステップ306の判断「減速」)、状態4であると判定し「強い減速」時の制御を実行する。
【0136】
「強い減速」時の制御実行中における電力の流れを図7(d)に矢印にて示す。
【0137】
すなわち、「強い加速」時は、たとえばブレーキペダル111が強く踏み込まれた状態で作業車両100が減速して変速機2でシフトダウンが行われるような状態である。このような状態では、作業車両100には強力な減速が要求される。
【0138】
そこで、「強い減速」時の制御実行中は、発電電動機22を発電作用させて、回生制動を行う。ただし作業車両100の減速度が過大になる場合には発電電動機22による発電量を制限する。発電電動機22の発電による電力だけでは補機30の電力需要に応じられない場合には、蓄電部50に蓄積された電力を放電して補機30に供給して電力供給不足を補う(ステップ309;図7(d)の実線矢印参照)。「強い減速」時の制御実行中は、作業車両100の運動エネルギーを発電に利用して回生制動を行うため、燃料消費量を抑制することができる。
【0139】
図5において、運転者が選択指示したモードが「電動走行モード」である場合には、エンジン1の稼働を停止して、「電動走行モード」に対応する制御を実行する。「電動走行モード」時の制御は、上記ステップ302と同様に作業車両100の状態推定を行い、その結果に応じて行う。
【0140】
すなわち、電動走行準備完了センサ61aから「準備完了」の検出信号が出力されているか否かが判断され、その結果「準備完了」の検出信号が出力されていると判断された場合には、第1のクラッチ61が完全に切り離されて作業車両100を「電動走行モード」で電動走行させる準備が完了したと判定する。
【0141】
この電動走行準備完了を条件に、蓄電部50に蓄積された電力を放電して発電電動機22に供給することで発電電動機22を電動作用させモータとして駆動することで作業車両100を走行させる。また、蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給して補機30を作動させる。作業車両100が高速走行している場合には、第2の変速機7の速度段は、減速率が小さいハイに切り替えられる。また作業車両100が低速走行している場合には、第2の変速機7の速度段は、減速率が大きいローに切り替えられる(ステップ203)。
【0142】
図5において、運転者が選択指示したモードが「停車発電モード」である場合には、エンジン1の稼動を継続させながら「停車発電モード」に対応する制御を実行する。「停車発電モード」時の制御は、上記ステップ302と同様に作業車両100の状態推定を行い、その結果に応じて行う。
【0143】
すなわち、停車発電安全確認センサ62aから「安全状態」の検出信号が出力されているか否かが判断され、その結果「安全状態」の検出信号が出力されていると判断された場合には、第2のクラッチ62が完全に切り離されて作業車両100を「停車発電モード」で停車発電動作させる準備が完了したと判定する。
【0144】
この停車発電の安全確認完了を条件に、発電電動機22を発電作用させ発電電動機22の発電によって得られた電力を補機30に供給するとともに、蓄電部50の蓄積電力を補機30に供給して補機30を作動させる。補機30の電力需要によっては、発電電動機22の発電電力のみを補機30に供給してもよく、蓄電部50の蓄積電力のみを補機30に供給してもよい。また補機30の電力需要に対して発電電動機22の発電電力に余裕がある場合、あるいは蓄電部50の残留電力が規定値を下回ることが予測される場合には、発電電動機22の発電電力を蓄電部50に供給して蓄電部50を充電してもよい(ステップ204)。
【0145】
つぎに、上述の第1実施例の作用効果について説明する。
【0146】
本実施例によれば、図3に示すごとく変速機2とディファレシャルギヤ4の間の空いたスペースに発電電動機22を配置して、ハイブリッド車100を構成した。この場合、車速と発電電動機(図1(a)のモータ3に対応)22の回転数の関係は、図2(b)に示すとおりとなり、変速機2の選択速度段が1速、2速、3速、4速と変化したとしても、車速に比例して発電電動機22の回転数が上昇するのみである。このため変速機2の制御と切り離して発電電動機22の回転数を制御することが可能となる。すなわち、発電電動機22を、変速機2の制御装置とは独立したハイブリッド制御装置40で制御することができた。これにより既存の変速機2の制御およびその周辺の機器を改変する必要がなくなる。また発電電動機22を、独立したハイブリッド制御装置40で制御することで、発電電動機22の制御が簡易なものとなり、発電電動機22の制御装置を容易に構築することができる。このように本実施例によれば、旧い設計の作業車両100の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むことができるようになり、既存の変速機2の制御内容を変えないようにすることができる。
【0147】
また、変速機2とディファレシャルギヤ4の間の空いたスペースに発電電動機12を配置したことによる問題点、つまり発電電動機22が発電中、変速が行われる毎に発生するであろう減速現象は、作業車両100が走行中、作業車両100が減速している場合または蓄電部の残留電力が規定値を下回っている場合を除き、発電電動機22を発電作用させず蓄電部50に蓄積された電力を補機30に供給することで補機30を作動させる制御を行なうことにより解決した。
【0148】
また、本実施例によれば、第1のクラッチ61を遮断することで、エンジン1から出力される動力が発電電動機22に伝達されることを断ち、その上で蓄電部50から電力を発電電動機22に供給することで、発電部50の蓄積電力により発電電動機22を電動作用させて車輪5を駆動することができる。これにより、たとえば、酸欠状態にあるトンネル内や工業地帯の大規模火災現場などで救援活動を行う場合など、エンジン1が正常に動作しなくなるおそれがあるの状況下にエンジン1の稼動を停止して作業車両100をあたかも純電気自動車のごとく走行させることができる。
【0149】
また、本実施例によれば、第2のクラッチ62を遮断することで、エンジン1および発電電動機22の動力が車輪5に伝達されることを断ち、車両100の走行を停止させ、その上でエンジン1の駆動により発電電動機22を発電作用させて発電電動機22から補機30に電力を供給することにより、あるいは蓄電部50から直接補機30に電力を供給することにより、作業車両100を停止させた状態で大電力を補機30に供給することができる。これにより、たとえば、被災地で救援要員が持参した大量のパソコンや照明機材、通信機材などの電源負荷たる補機30に対して、商用電源と同様な品質の大電力を長時間供給することが要求される状況下で、作業車両100の走行を停止して発電電動機22から大電力を補機に供給することが可能となる。
【0150】
つぎに第2の変速機7を設けたことによる効果について説明する。
【0151】
図1(b)のごとく変速機2とディファレンシャルギヤ4の間の空いたスペースに発電電動機22(モータ3)を配置したとすると、図1(a)のごとくエンジン1と変速機2の間に発電電動機22(モータ3)を配置した場合に比べて、発電電動機22(モータ3)のコストが上昇するという問題がある。すなわち、図2(c)は、図1(a)のレイアウトに対応するモータ3の特性を示し、図2(d)は、図1(b)のレイアウトに対応するモータ3の特性を示している。図2(c)、(d)は、同じ車速範囲でモータ3を等馬力にするために必要な特性を示している。
【0152】
図2(c)に示すように、図1(a)のレイアウトに対応するモータ3は、等馬力となる領域が比較的狭い。モータ3の回転数が1から2の比率で変化する範囲、モータ3のトルクが1から2の比率で変化する範囲でしか一定の馬力を出すことができない。これに対して、図2(d)に示すように、図1(b)のレイアウトに対応するモータ3は、等馬力となる領域が比較的広い。モータ3の回転数が1から8の比率で変化する範囲、モータ3のトルクが1から8の比率で範囲で一定の馬力を出すことができる。このような等馬力領域が広く、低回転域で高トルクを出すことができる範囲のモータ3は特殊なモータであり、等馬力領域が狭く低域で低トルクしか出すことができない範囲の汎用のモータ3に比べて、高コストとなる。また、図2(d)に示すモータ3は、低回転で高トルクを発生するため発熱量が多く、冷却装置による冷却能力を高める必要があり、更に高コストを招く。
【0153】
防災用オフロード車は、民生用車両の2倍以上の登坂トルクと、民生用車両なみの高速道路走行性能が要求される。民生用車両の場合には、図1(b)のレイアウトをとった場合であっても、図2(c)に示す低回転低トルクの等馬力領域が狭い汎用のモータ3を使用しても特に大きな問題は生じない。しかし防災用オフロード車の場合には、図1(b)のレイアウトをとった場合に図2(c)に示す低回転低トルクの等馬力領域が狭い汎用のモータ3を使用すると、変速機2のギヤ比をどのように調整しても、登坂時にトルクが不足するか、高速走行時に最高速度までモータ3が回らないという問題が生じる。
【0154】
本実施例では、発電電動機22(図2におけるモータ3)の駆動軸22aとディファレンシャルギヤ4(前後ディファレンシャルギヤ4a、左右ディファレンシャルギヤ4b)との間の動力伝達経路6にあって、変速機2とは別に設けられた第2の変速機7を備えるようにしている。これにより図1(b)のレイアウトをとり、図2(c)に示す低回転低トルクの等馬力領域が狭い汎用のモータ3を使用したとしても、第2の変速機7のギヤ比を、適宜ロー、ハイに変速することで、登坂時に十分なトルクが得られ、かつ高速走行時に最高速度まで発電電動機22(モータ3)を回せることが可能となる。よって、低コストの汎用のモータ3を使用することができ冷却装置による冷却能力を高めることが不要となり、装置コストを低減させることができる。
【0155】
さらに、本実施例では、変速機2とディファレンシャルギヤ4との間の動力伝達経路6に、ハイブリッドユニット9を配置することによりハイブリッド車を構成することができる。よって、エンジン馬力やタイヤサイズなどの車格が同じ系統に属する類似車種については、作業車両の細部の構造、仕様の違いによらず、このハイブリッドユニット9を共通の標準部品として準備しておき、ハイブリッドユニット9を変速機2とディファレンシャルギヤ4との間に組み込むだけで、ハイブリッド車を短時間かつ低コストで製作することができる。
【0156】
(第2実施例)
防災用オフロード車100は、用途によっては、高負荷で走行しながらも大容量負荷への電源供給を要求される場合もある。
【0157】
そこで、大容量の発電要求に応えるために、この第2実施例では、第1実施例の発電電動機22(第2実施例では第2の発電電動機22)に加えて、エンジン1とトルクコンバータ8との間の動力伝達経路6に、第1の発電電動機21を配置することとした。なお、図8では、図3に示すアクセルペダル110、ブレーキペダル111および各種センサの図示は省略している。
【0158】
図8は、第2実施例の作業車両100の構成図である。以下では、第1実施例と同じ構成要素について同一の符号を付して適宜重複した説明を省略する。なお、作業車両100は4輪車両を想定し、ディファレンシャルギヤ4を介して動力が左右の車輪103、104に伝達されるものとする。なお第1実施例と同様に、本第2実施例が適用される作業車両100は、2軸以上車軸を備えた4輪以上の車両であればよく、6輪車両、8輪車両などにも当然適用することができる。
【0159】
第1の発電電動機21は、エンジン1とトルクコンバータ8との間に配置され、エンジン1とトルクコンバータ8との間の動力伝達経路にその駆動軸21が連結され発電作用を行う。
【0160】
第2の発電電動機22は、変速機2とディファレンシャルギヤ4との間に配置され、この変速機2とディファレンシャルギヤ4との間の動力伝達経路に、その駆動軸22aが連結されて発電作用と電動作用を行う。
【0161】
補機30は、第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22または蓄電部50から電力が供給されることにより作動する。
【0162】
蓄電部50は、第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22が発電作用を行うことにより電力が蓄積され、電力を補機30および第2の発電電動機22に供給する。
【0163】
第1の発電機22および発電電動機22は、エンジンECU41、トランスミッションECU42とは独立したハイブリッド制御装置40で制御される。ハイブリッド制御装置40を独立で構成している理由は、エンジンECU41やトランスミッションECU42のプログラムを改変することなしに、ハイブリッド化するためである。またベースとなる作業車両100に元々エンジン1や変速機2を制御するコントローラ、ECUが存在しないことを考慮したものである。
【0164】
第1のクラッチ61は、エンジン1と第1の発電電動機21の駆動軸21aとの間の動力伝達を遮断および接続する。
【0165】
第2のクラッチ62は、発電電動機22の駆動軸22aとディファレンシャルギヤ4との間の動力伝達を遮断および接続する。
【0166】
第2の動力結合機構70は、第1実施例の動力結合機構70と同様に、変速機2から出力される動力と第2の発電電動機22から出力される動力とを結合して、第2の変速機7に出力する。
【0167】
第1の動力結合機構170は、第2の動力結合機構70と同様に構成されており、エンジン1から出力される動力と第1の発電電動機21から出力される動力とを結合して、トルクコンバータ8に出力する。
【0168】
ただし、図8に示す第1の動力結合機構170の構成は一例であり、第2の動力結合機構70について図4(a)、(b)で例示したのと同様の構成とすることもできる。また、第2の動力結合機構70について図4(c)で例示したのと同様に、第1の動力結合機構170の内部に第1のクラッチ61を組み込むように構成してもよい。また、図4(d)と同様に、第1の発電電動機21の駆動軸21aの回転数が所望する回転数となるように、第2の動力結合機構170の入力軸あるいは出力軸に減速機あるいは増速機74を介して、第1の発電電動機21の駆動軸21aを連結してもよい。
【0169】
第1の発電インバータ125、第2の発電インバータ25、蓄電部50、出力変換部26はそれぞれ直流電源線31に電気的に接続されている。出力変換部26は補機30に電気的に接続されている。
【0170】
第1の発電インバータ125、第2の発電インバータ25、蓄電部50、出力変換部26はそれぞれ第1の発電インバータECU127、第2の発電インバータECU27、蓄電部ECU28、出力変換部ECU29によって制御される。第1の発電インバータECU127、第2の発電インバータECU27、蓄電部ECU28、出力変換部ECU29とハイブリッド制御装置40との間は相互に無線通信あるいはアナログまたはディジタルなどの信号線で電気的に接続されており、信号の授受が行われる。たとえば第1の発電インバータECU127は、第1の発電電動機21の回転数等の情報を送出し、第2の発電インバータECU27は、第2の発電電動機22の回転数等の情報を送出し、蓄電部ECU28は、残留電力の情報を送出し、出力変換部ECU29は補機30への電力供給状態の情報を送出するなど第1の発電インバータ125、第2の発電インバータ25、蓄電部50、出力変換部26から直流電源線31に対する電力収支の情報が授受される。ハイブリッド制御装置40は、第1の発電インバータECU127、第2の発電インバータECU27、蓄電部ECU28、出力変換部ECU29それぞれに対して制御指令を与える。
【0171】
第1の発電電動機21は、第1の動力結合機構170を介してエンジン1の出力軸およびトルクコンバータ8の入力軸に連結されており、発電作用を行う。ただし、後述するように第1の発電電動機21はハイブリッド制御装置40から第1の発電インバータECU127に与えられる制御指令によって、発電機として作動する。
【0172】
第2の発電電動機22は、第2の動力結合機構70を介して変速機2の出力軸および第2の変速機7の入力軸に連結されており、発電作用と電動作用を行う。ただし、後述するように第2の発電電動機22はハイブリッド制御装置40から第2の発電インバータECU27に与えられる制御指令によって、主として電動機(モータ)として作動する。
【0173】
蓄電部50は、第1の発電電動機21または第2の発電電動機22が発電作用した場合に発電した電力を蓄積する。また蓄電部50は蓄電部50に蓄積された電力を第2の発電インバータ25を介して第2の発電電動機22に、または、
同電力を補機30に供給する。
【0174】
出力変換部26は、第1の発電電動機21が発電作用した場合には発電した電力を、または第2の発電電動機22が発電作用した場合には発電した電力を、または蓄電部50に蓄積された電力を、補機30に適合する所望の電圧、周波数、相数の電力に変換して補機30に供給するものである。
【0175】
第1の発電インバータECU127は、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令に応じて第1の発電インバータ125に発電電動機制御指令(トルク指令)を出力する。また、第2の発電インバータECU27は、ハイブリッド制御装置40から出力される制御指令に応じて第2の発電インバータ25に発電電動機制御指令(トルク指令)を出力する。
【0176】
以下、ハイブリッド制御装置40で行われる制御内容について説明する。
【0177】
第1実施例と同様に、図5に示すように、まず運転者が選択指示したモードが「走行発電モード」、「電動走行モード」、「停車発電モード」のいずれかであるかが判断される(ステップ201)。この結果、運転者が選択指示したモードが「走行発電モード」である場合には、「走行発電モード」に対応する制御を実行する(ステップ202)。「走行発電モード」に対応する制御は図9、図10、図11、図12に示される。「走行発電モード」では、以下の考えを基に制御が行われる。
【0178】
すなわち、防災用オフロード車などの作業車両100は、用途によっては、高負荷で走行しながらも大容量の発電を要求されることもある。
【0179】
そこで、大容量の発電要求に応えるために、第2の発電電動機22に加えて、第1の発電電動機21を配置することとした。第2の発電電動機22は、第1実施例と同様に、独立したハイブリッド制御装置40で制御される。これにより第2の発電電動機22に関しては、第1実施例と同様に旧い設計の作業車両100の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むことができるようになり、既存の変速機2の制御内容を変えないようにすることができる。そして、第2の発電電動機22を主として電動機として作動させ、第1の発電電動機21および蓄電部50から電力を補機30に供給することにより、第2の発電電動機22が発電したならば変速が行われる毎に発生するであろう減速現象を解消させた。
【0180】
ただし、第1の発電電動機21は、エンジン1とトルクコンバータ8の間の動力伝達経路6に配置されているため、第1の発電電動機21を電動作用させると、図2(a)で説明したのと同様に第1の発電電動機21(モータ3)の負荷状態に応じて変速機2を電子制御しなければならず、レトロフィットが困難になるおそれが生じる。
【0181】
そこで、本第2実施例では、第2の発電電動機22のみならず第1の発電電動機21を、独立したハイブリッド制御装置40で制御して、第1の発電電動機21を発電機として使用することで、上記問題を解決している。
【0182】
以下、具体的に説明する。
【0183】
(走行発電モード)
まず、説明の便宜のため、下記の数値で作業車両100が設計されているものとして説明する。
【0184】
・車体重量:10トン
・エンジン定格出力:260kW
・第1の発電電動機21:連続定格出力50kW、連続駆動出力50kW(瞬時出力100kW)
・第2の発電電動機22:連続定格出力50kW、連続駆動出力50kW(瞬時出力100kW)
・蓄電部50:瞬時最大放電出力100kW
・補機30:連続消費電力50kW、瞬時消費電力300kW(あるいは補機30は回生制動されるものであって連続最大入力50kW)
走行発電モードが選択されると、図9〜図12に示す制御が実行される。この制御実行中におけるエネルギー(機械エネルギー、電気エネルギー(電力))の流れを図13、図14、図15、図16に矢印にて示す。なお、図13、図14、図15、図16では、第1のクラッチ61、第2のクラッチ62は完全に接続されているものとして、これら第1のクラッチ61、第2のクラッチ62の図示を省略している。
【0185】
以下では、補機30の需要電力は、補機30に内蔵のコントローラからハイブリッド制御装置40に通知され、第1の発電電動機21の現在の発電電力は、第1の発電インバータECU127からハイブリッド制御装置40に通知され、第2の発電電動機22の現在の駆動電力または発電電力は、第2の発電インバータECU27からハイブリッド制御装置40に通知され、蓄電部50の充電に必要な電力は、蓄電部ECU28からハイブリッド制御装置40に通知されるものとする。ただし、これら通知を行う機能がない場合には、各部の電流、電圧を計測することによりハイブリッド制御装置40で必要な情報を取得することができる。
【0186】
(連続定格負荷モード時)
補機30はたとえば通信機(連続消費電力50kW)である場合を想定する。
【0187】
まず、図9に示すように、補機30の現在の需要電力が出力変換部26のECU27からハイブリッド制御装置40に通知され、第1の発電電動機21の定格発電出力(50kW)で賄われる範囲であるかが判断される(ステップ401)。
【0188】
補機30の現在の需要電力が、第1の発電電動機21の定格発電出力(50kW)に対して少なく、第1の発電電動機21の発電量が余る場合には(ステップ401の判断「発電量が余る」)、軽負荷モード時の制御に移行する。軽負荷モード時の制御は図11にて後述する(ステップ402)。
【0189】
補機30の現在の需要電力が、第1の発電電動機21の定格発電出力(50kW)に対して多く、第1の発電電動機21の発電量では不足する場合には(ステップ401の判断「発電量が不足する」)、重負荷モード時の制御に移行する。重負荷モード時の制御は図10にて後述する(ステップ403)。
【0190】
補機30の現在の需要電力が、第1の発電電動機21の定格発電出力(50kW)と釣り合っているか、ほぼ釣り合っている場合には(ステップ401の判断「発電量と補機電力負荷が釣り合う」)、第1の発電電動機21で発電した電力を補機30のみに供給するように制御する。この場合、補機30の需要電力の増減に応じて、第1の発電電動機21の発電電力を調整する。この制御実行中における電力の流れを図13に実線の矢印にて示す。たとえばエンジン1から最大出力(260kW)を出して補機30を作動させながら作業車両100が走行している場合には、エンジン1の出力260kWのうち50kWが補機30で消費され、残りの約200kWの動力が動力伝達経路6を介して変速機2から出力されることになる(ステップ404)。
【0191】
つぎに、作業車両100が、一定速度で巡航しているか、加速中であるか、減速中であるかが判断される。
【0192】
作業車両100が加速中であるか否かの判断は、たとえばアクセルペダル110の踏み込み量センサ110bの検出値に基づき、アクセルペダル110の踏み込み量が1秒前の踏み込み量に比べて所定の規定値よりも増えたか否かをもって行う(ステップ405)。
【0193】
作業車両100が減速中であるか否かの判断は、たとえばブレーキペダル111の踏み込み量センサ111aの検出値に基づき、ブレーキペダル111の踏み込み量が所定の規定値よりも大きいか否かをもって行う(ステップ407)。
【0194】
この結果、作業車両100が加速中でなく(ステップ405の判断「規定値より大きな増加はない」)、かつ作業車両100が減速中でもない(ステップ407の判断「規定値より大きくない」)場合には、作業車両100が、一定速度で巡航しているものとし、ステップ401に戻る。これにより、たとえば作業車両100で加速も減速もされていない定速巡航時には、約200kWの動力が車輪5に伝達されて作業車両100が走行されることになる。
【0195】
作業車両100が加速中であると判断された場合には、蓄電部50に蓄積された電力を放電して第2の発電電動機22に供給することで第2の発電電動機22を電動作用させモータとして駆動することで作業車両100の加速をアシストする。この制御実行中における電力の流れを図13に破線の矢印にて示す。たとえば、蓄電部50から瞬時放電出力100kWが第2の発電インバータ25に供給され、第2の発電電動機22で90kWの動力が発生し、変速機2から出力される約200kWの動力に加算される。このため第2の動力結合機構70を介して約290kWの動力が車輪5に伝達されて作業車両100が走行されることになる。なお、アクセルペダル110の踏み込み量の増加に応じて第2の発電電動機22の駆動トルクを増加させる制御を行うことができる(ステップ406)。
【0196】
作業車両100が減速中であると判断された場合には、第2の発電電動機22を発電作用させて、回生制動を行う。ただし作業車両100の減速度が過大になる場合には第2の発電電動機22による発電量を制限する。また第1の発電電動機21の発電を抑制して第2の発電電動機22による発電電力を補機30に供給してもよい。この制御実行中における電力の流れを図13に一点鎖線の矢印にて示す。たとえば運転者がブレーキペダル111を踏んでアクセルペダル110から足を離すと、作業車両100が減速する。作業車両100の減速エネルギーによって第2の発電電動機22は駆動され瞬時最大電力100kWが回生により発電される。第2の発電電動機22で発電された瞬時最大電力100kWは第2の発電インバータ25を介して蓄電部50に供給されて、蓄電部50が充電される。また、例えば下り坂を連続的に降坂するときのようにエンジンブレーキが連続してかかる場合には、第1の発電電動機21による発電を抑制して第2の発電電動機22から補機30に対して連続発電電力50kWを供給してもよい。なお、ブレーキペダル111の踏み込み量の増加に応じて第2の発電電動機22の発電電力を増加させる制御を行うことができる(ステップ408)。
【0197】
(重負荷モード時)
補機30はたとえば通信機(連続消費電力50kW)であって、瞬間的に、連続消費電力50kWを超える200kW、300kWの電力を供給する場合を想定する。このような場合には、図10に示す重負荷モード時の制御が実行される。
【0198】
補機30が重負荷である場合でも、緊急の重負荷モードと、通常の重負荷モードがある。緊急の重負荷モードとは、「極めて巨大な電力量を要求され、作業車両100を減速させても電力を供給する必要がある場合」であり、通常の重負荷モードとは、「中程度の電力量が要求され、作業車両100を減速させるまでもない場合」である。
【0199】
操作パネル112には、緊急の重負荷モードを許容する緊急の重負荷モード選択スイッチ112bが設けられている。緊急の重負荷モード選択スイッチ112bにより緊急の重負荷モードが選択指示されると、緊急の重負荷モードを許容することを示す信号がハイブリッド制御装置40に入力される。
【0200】
重負荷モード時では、まず、第2の発電電動機22で発電せずに補機30の需要電力を賄えるか否か、つまり補機30の現在の需要電力が、第1の発電電動機21の定格発電出力(50kW)と蓄電部50の現在の残留電力の合計で賄われる範囲であるかが判断される(ステップ501)。
【0201】
第2の発電電動機22で発電せずに補機30の需要電力を賄うことができると判断された場合には(ステップ501の判断「賄える」)、通常の重負荷モードであると判断し、第1の発電電動機21で発電する電力と蓄電部50の蓄積電力を連続定格負荷モード時よりも増加させて補機30に供給するように制御する。たとえば蓄電部50の十分な蓄積電力があって100kWの瞬時放電が可能で、補機30の瞬時負荷が200kWであるとすると、第1の発電電動機21で瞬時出力100kWの発電を行って補機30に電力を供給するとともに蓄電部50で瞬時最大放電出力100kWの放電を行って電力を補機30に供給することで補機30の瞬時需要電力200kWを賄うことができる(ステップ502)。
【0202】
第2の発電電動機22で発電しないと補機30の需要電力を賄うことができないと判断された場合には(ステップ501の判断「賄えない」)、緊急の重負荷モード選択スイッチ112bにより緊急の重負荷モードが選択指示され、緊急の重負荷モードを許容することを示す信号が入力されているか否かが判断される(ステップ503)。この結果、緊急の重負荷モードを許容することを示す信号が入力されていない場合には(ステップ503の判断「許容しない」)、電力不足であることを示す警報信号を出力し、警報内容を操作パネル112に表示する(ステップ504)。
【0203】
緊急の重負荷モードを許容することを示す信号が入力されている場合には(ステップ503の判断「許容する」)、緊急の重負荷モードであると判断し、第1の発電電動機21で発電する電力と蓄電部50の蓄積電力を連続定格負荷モード時よりも増加させて補機30に供給するとともに、第2の発電電動機22を発電作用させてその発電電力を補機30に供給するように制御する。この制御実行中における電力の流れを図14に実線の矢印にて示す。たとえば蓄電部50の十分な蓄積電力があって100kWの瞬時放電が可能で作業車両100が走行中である場合には、補機30の瞬時負荷が300kWであるとすると、第1の発電電動機21で瞬時出力100kWの発電を行って補機30に電力を供給し蓄電部50で瞬時最大放電出力100kWの放電を行って電力を補機30に供給し第2の発電電動機22で瞬時出力100kWの発電を行って補機30に電力を供給することで補機30の瞬時需要電力300kWを賄うことができる。作業車両100が走行中の場合には、車輪5から第2の発電電動機22の駆動軸22aに伝達される作業車両100の運動エネルギーおよび変速機2から第2の発電電動機22の駆動軸22aに伝達されるエンジン1の動力によって第2の発電電動機22が駆動され瞬時最大電力100kWで発電される。ただし瞬間的に作業車両100が減速することがある(ステップ505)。以後、図9のフローチャートのスタートに戻る。
【0204】
(軽負荷モード時)
補機30の種類によっては、補機30の消費電力が第1の発電電動機21の連続定格発電出力(50kW)に比べて低く回生制動されるものがある。たとえば作業車両100に連結されたトレーラの車輪を駆動するモータが該当する。このような構成をとる場合、連続定格負荷モード時と同様に第2の発電電動機22の発電電力を補機30のみに供給する制御を行うことも可能であるが、トルクコンバータ8、変速機2の定格容量が定まっている場合には、トルクコンバータ8、変速機2に入力される動力が定格容量を超えてしまい望ましくない場合がある。
【0205】
たとえばエンジン1の定格出力260kWのうち50kWは第1の発電電動機21の定格出力として消費される前提でトルクコンバータ8、変速機2の定格容量を210kWで設計したとする。この場合、補機30の電力需要が低く第1の発電電動機21の発電能力に十分な余裕があっても余った分を機械的な動力としてトルクコンバータ8、変速機2に入力させることができない。たとえば第1の発電電動機21の連続定格発電出力50kWに対して補機30の電力需要が10kWと軽微である場合、エンジン1の出力からトルクコンバータ8、変速機2に、最大で250kWの動力を入力させることが可能である。しかし、トルクコンバータ8、変速機2の定格容量が210kWであるため、250kWのうち40kWは、トルクコンバータ8、変速機2が破損するおそれがあるため入力させることができない。
【0206】
そこで、本実施例では、第1の発電電動機21を50kWで連続定格発電出力させて、50kWを補機30に供給するのみならず第2の発電電動機22、蓄電部50に供給するようにしている。
【0207】
図11に示すように、軽負荷モードでは、まず、補機30から電力が回生されているか否かが判断される。このとき補機30の需要電力PAUXが、補機30に内蔵のコントローラからハイブリッド制御装置40に通知される(ステップ601)。補機30から電力が回生されている場合には、回生モード時の制御に移行する。回生モード時の制御は図12にて後述する(ステップ602)。
【0208】
つぎに蓄電部50を充電するに必要な電力PCAPをハイブリッド制御装置40から蓄電部ECU28に問い合わせる(ステップ603)。
【0209】
つぎに第2の発電電動機22の連続出力制限値PMG2を求め、第2の発電インバータECU27に通知する。第2の発電電動機22の連続出力制限値PMG2は、
PMG2=PMG1−PAUX−PCAP
PMG2:第2の発電電動機22の連続出力制限値
PMG1:第1の発電電動機21の連続定格発電出力(50kW)
PAUX:補機30の需要電力
PCAP:蓄電部50の充電所要電力
で求められる(ステップ604)。
【0210】
つぎに、ハイブリッド制御装置40は、踏み込み量センサ110bからアクセルペダル110の踏み込み量を入力する。なお、ハイブリッド制御装置40とエンジンECU41との間で信号の授受が行われる場合には、ハイブリッド制御装置40は、エンジンECU41からアクセルペダル110の踏み込み量のデータを取得してもよい(ステップ605)。
【0211】
つぎにハイブリッド制御装置40は、エンジン回転センサ1aの検出値と変速機出力軸回転センサ2aの検出値に基づき、車速と変速機2の速度段を計測する。なお、ハイブリッド制御装置40とトランスミッションECU42との間で信号の授受が行われる場合には、ハイブリッド制御装置40は、トランスミッションECU42から車速と変速機2の速度段のデータを取得してもよい(ステップ606)。
【0212】
つぎに、ハイブリッド制御装置40は、ステップ605で取得されたアクセルペダル110の踏み込み量と、ステップ606で取得された車速と変速機2の速度段とを対比して、加速するために必要な駆動力が不足しているか否かを判断する(ステップ607)。この結果、加速するために必要な駆動力が不足していないと判断された場合には(ステップ608の判断「不足していない」)、ステップ601に戻る。
【0213】
一方、加速するために必要な駆動力が不足していると判断された場合には(ステップ608の判断「不足している」)、第1の発電電動機21の発電電力を第2の発電電動機2に供給して、連続出力制限値PMG2を限度として、第2の発電電動機22を電動作用させて第2の発電電動機22を駆動する。これにより作業車両100の加速がアシストされ、加速するために必要な駆動力が得られる。この制御実行中における電力の流れを図15に矢印にて示す。たとえば、第1の発電電動機21で発電した電力50kW(PMG1)のうち、10kW(PAUX)が補機30に供給されて補機30が作動し、10kW(PCAP)が蓄電部50に供給されて蓄電部50の充電が行われ(図15の破線矢印参照)、残りの30kW(PMG2)が第2の発電インバータ25に供給されて第2の発電電動機22で約30kWの動力が発生し、変速機2から出力される約210kWの動力に加算される。このため第2の動力結合機構70を介して約240kWの動力が車輪5に伝達されて作業車両100が走行されることになる。なお、この場合、連続出力制限値PMG2を上限として、アクセルペダル110の踏み込み量の増加に応じて第2の発電電動機22の駆動トルクを増加させる制御を行うことができる。また、蓄電部50が残留電力が上限に達しており、蓄電部50を充電する必要がない場合には(充電所要電力PCAPがほぼ0)、第1の発電電動機21で発電した電力50kW(PMG1)のうち、10kW(PAUX)が補機30に供給されて補機30が作動し、残りの40kW(PMG2)が第2の発電インバータ25に供給されて第2の発電電動機22で約40kWの動力が発生し、変速機2から出力される約210kWの動力に加算される。このため第2の動力結合機構70を介して約250kWの動力が車輪5に伝達されて作業車両100が走行されることになる(ステップ609)。
【0214】
(回生負荷モード時)
補機30が、上述したように例えば作業車両100に連結されたトレーラの車輪を駆動するモータである場合には、補機30の需要電力が極めて小さくなるばかりでなく、例えば長い坂道を連続して降坂する場合には補機30から電力が継続することがある。このような場合、図15に示す軽負荷モード時のエネルギーの流れでは第1の発電電動機21で発生する電力を消費できないことがある。そこで、回生負荷モード時には、回生電力を蓄電部50の充電で消費するのみならず、エンジンブレーキを働かせるなどして余剰のエネルギーを摩擦熱として消費するようにしている。
【0215】
回生負荷モード時には、図12に示すように、まず、ハイブリッド制御装置40は、蓄電部50の充電量(残留電力)を蓄電部ECU28に問い合わせ(ステップ701)、さらに蓄電部50を充電することは可能であるかを判断する(ステップ702)。この結果、蓄電部50の残留電力が上限に達しておらず充電する余裕がある十分にあると判断した場合には(ステップ702の判断「充電する余裕が十分にある」)、補機30の回生電力を蓄電部50に供給して蓄電部50を充電する。このように蓄電部50の残留電力が少なく蓄電部50の充電のみで補機30の回生電力を消費できる場合には、補機30は蓄電部50のみに電力を供給する(ステップ703)。
【0216】
また蓄電部50の残留電力が上限に達しておらず若干だが充電する余裕があると判断した場合には(ステップ702の判断「蓄電部には若干だが余裕がある」)、補機30の回生電力を蓄電部50に供給して蓄電部50を充電するのみならず、補機30の回生電力を第1の発電電動機21と第2の発電電動機22に供給して余剰のエネルギーを摩擦熱として消費する。この制御実行中における電力の流れを図16に矢印にて示す。たとえば、補機30が上述したトレーラのモータである場合には、車体全体の減速による回生(図16にて二点鎖線にて示す)と補機30の駆動系の減速に伴う回生が同時に発生して、回生動力が過大になって蓄電部50の充電のみの電力消費では、消費すべき電力が余剰になる。このような場合には、補機30の回生電力を蓄電部50に供給した上で(図16の破線参照)、第1の発電電動機21に回生電力を供給してエンジン1を加速して、エンジンブレーキを働かせる。これにより余剰の電力エネルギーがエンジン1の内部で摩擦熱として消費される(図16の実線参照)。さらに蓄電部50および第1の発電電動機21だけで消費できない残りの回生電力を第2の発電電動機22に供給して変速機2、トルクコンバータ8を介してエンジン1を加速する。これにより余剰の電力エネルギーが変速機2、トルクコンバータ8、エンジン1の内部で摩擦熱として消費される(図16の一点鎖線参照)。例えばエンジン1の定格出力を260kWとしエンジンブレーキをかける目安を定格出力の約10%とすると、26kW程度をエンジン1の摩擦熱として回生電力を消費することができる。補機30の回生電力が30kWであるとすると、そのうちの5kWが蓄電部50に供給され(図16の破線参照)、20kWが第1の発電電動機21に供給され(図16の実線参照)、5kWが第2の発電電動機22に供給される(図16の一点鎖線参照)。このときハイブリッド制御装置40からエンジンECU41に対してエンジン1のトルクを低減させる指令を出すなどして、エンジン1の出力を低減させる制御を同時に行う。エンジン1のトルク低下に伴いエンジン1は減速しようとするので、第1の発電電動機21によってエンジン1を加速させるためのトルクがエンジン1に入力することで、エンジン1内部で回生電力を摩擦熱として消費させることができる。このとき第1の発電インバータ125の動作モードを最も効率が悪い状態で制御することが望ましい。これにより第1の発電電動機21と第1の発電インバータ125の発熱量が増え、回生電力を消費することができる。例えば効率を75%まで低下させた場合、20kWのうち75%の15kWだけがエンジン1に伝達されて摩擦熱として消費される。同様に第2の発電インバータ25の動作モードを最も効率が悪い状態で制御して第2の発電電動機22と第2の発電インバータ25の発熱量を増やすことが望ましい(ステップ704)。
【0217】
また蓄電部50の残留電力が上限に達し蓄電部50が満充電であると判断した場合には(ステップ702の判断「蓄電部は満充電である」)、補機30の回生電力を第1の発電電動機21と第2の発電電動機22に供給して余剰のエネルギーを摩擦熱として消費する(ステップ705)。
【0218】
さらに車体にリターダなどの摩擦熱発生装置が組み込まれている場合には、リターダによって回生電力を消費させてもよい。リターダ(図示せず)を搭載することにより車体全体の減速に伴う回生動力(図16にて二点鎖線にて示す)を変速機2、トルクコンバータ8のみならずリターダで熱エネルギーとして消費させることができる。なお、補機30から回生される電力が大きくなった場合には、第2の電動機22に供給する電力の比率を大きくして、変速機2およびトルクコンバータ8の内部での熱消費を増加させる実施も可能である。
【0219】
図5において、運転者が選択指示したモードが「電動走行モード」である場合には、エンジン1の稼働を停止して、「電動走行モード」に対応する制御を実行する。電動走行モード時の制御処理手順を図17に示し、この制御実行中における電力の流れを図18に矢印にて示す。なお、図18では、第2のクラッチ62は完全に接続された状態になっているものとして第2のクラッチ62の図示を省略している。
【0220】
電動走行モード時には、エンジン1が停止されるためトランスミッションECU42は、エンジン稼動時の通常の制御シーケンスで変速機2を制御することができない。そこで、本実施例では、電動走行モード時には、ハイブリッド制御装置40が第1の発電インバータECU127、第2の発電インバータECU27、蓄電部ECU28に制御指令を出力して、第1の発電電動機21、第2の発電電動機22の駆動電力および蓄電部50の充放電を制御するとともに、変速機2に制御指令を出力して変速機2における変速を制御する。なお、ハイブリッド制御装置40がトランスミッションECU42を介して変速機2における変速を制御してもよい。この場合、ハイブリッド制御装置40からトランスミッションECU42に対して、通常の制御シーケンスとは異なる制御指令が出力される場合もあるので、その場合は、トランスミッションECUとしては制御プログラムを改変可能なもの、あるいは新規開発するものを使うことが前提になる。
【0221】
以下では説明の便宜のため、変速機2の速度段の段数は、ハイ(減速比約1.0)、ロー(減速比1.0よりも大きい値)の2段であるとして説明する。
【0222】
図17に示すように、まず、電動走行準備完了センサ61aから「準備完了」の検出信号が出力されているか否かをもって第1のクラッチ61が完全に遮断されているか否かが判断される(ステップ801)。この結果、第1のクラッチ61が完全に遮断されていないと判断された場合には(ステップ801の判断「完全に遮断されていない」)、第1のクラッチ61を完全に遮断する操作を行う(ステップ802)。
【0223】
第1のクラッチ61が完全に遮断されていると判断された場合には(ステップ801の判断「完全に遮断されている」)、作業車両100を「電動走行モード」で電動走行させる準備が完了したと判定し、つぎにアクセルペダル110の踏み込み量が踏み込み量センサ110bから入力される。本実施例では、アクセルペダル110の踏み込み量を大、中、小の3段階に分けて制御している。ここで「大」は、アクセルペダル110が強く踏み込まれたと判断できるレベル、「中」は、アクセルペダル110が強く踏み込まれたと判断できるレベル、「小」は、アクセルペダル110が踏み込まれていないと判断できる雑音信号レベルに設定される(ステップ803)。
【0224】
アクセルペダル110の踏み込み量が小の場合には(ステップ803の判断「小」)、ステップ801に戻る。
【0225】
アクセルペダル110の踏み込み量が中の場合には(ステップ803の判断「中」)、変速機2の速度段をハイにシフトする。たとえば作業車両100が平坦な道路を高速で走行中でアクセルペダル110が軽く踏み込まれている場合には、変速機2の速度段がハイにシフトされる(ステップ804)。
【0226】
アクセルペダル110の踏み込み量が大の場合には(ステップ803の判断「大」)、変速機2の速度段をローにシフトする。たとえば作業車両100が急坂を登坂中あるいは路面の突起を乗り越えるときなどアクセルペダル110が強く踏み込まれた場合には、変速機2の速度段がローにシフトされる(ステップ805)。
【0227】
つぎに、アクセルペダル110の踏み込み量に応じたトルクが第1の発電電動機21、第2の発電電動機22が発生するように、蓄電部50から第1の発電電動機21、第2の発電電動機22に供給される電力を制御する。また補機30の電力需要に応じて蓄電部50から補機30に供給される電力を制御する。たとえば第1の発電電動機21、第2の発電電動機22が連続定格発電出力50kW、瞬時出力100kWであるとすると、アクセルペダル110が軽く踏み込まれアクセルペダル踏み込み量が「中」となっている場合には、変速機2の速度段がハイにシフトされた上で、蓄電部50から第1の発電電動機21、第2の発電電動機22にそれぞれ定格出力に相当する50kWの電力が供給され、第1の発電電動機21、第2の発電電動機22が電動作用し車輪5が約100kWで駆動される。またアクセルペダル110が強く踏み込まれアクセルペダル踏み込み量が「大」となっている場合には、変速機2の速度段がローにシフトされた上で、蓄電部50から第1の発電電動機21、第2の発電電動機22にそれぞれ瞬時出力に相当する100kWの電力が供給され、第1の発電電動機21、第2の発電電動機22が電動作用し車輪5は、約200kWで駆動される。なお、補機30の電力需要に応じて蓄電部50から補機30に電力が供給される。また補機30から電力が回生される場合には、回生電力が蓄電部50に供給され蓄電部50で充電が行われる(ステップ806;図18の実線矢印参照)。なお、電動走行モードを多用する場合には、蓄電部50を大容量として設計するか、既存の蓄電部に新たな蓄電部を追加して蓄電部50を大容量化することが望ましい。
【0228】
なお、第1実施例と同様に、作業車両100が高速走行している場合には、第2の変速機7の速度段が、減速率が小さいハイに切り替えられ、また作業車両100が低速走行している場合には、第2の変速機7の速度段は、減速率が大きいローに切り替えられる。
【0229】
なお、実施例の電動走行モードでは、蓄電部50の蓄積電力を第1の発電電動機21および第2の発電電動機22に供給して両者を電動作用させて車輪5を駆動させているが、蓄電部50の蓄積電力を第1の発電電動機21、第2の発電電動機22のいずれか一方のみに供給していずれか一方を電動作用させて車輪5を駆動させる実施も可能である。
【0230】
図5において、運転者が選択指示したモードが「停車発電モード」である場合には、エンジン1の稼動を継続させながら「停車発電モード」に対応する制御を実行する。以下、補機30の電力需要が低く安定している状態から補機30の電力需要が瞬間的に急増した状態に変化する状況を想定して説明する。
【0231】
この制御実行中における電力の流れを図19、図20、図21に矢印にて示す。図19、図20、図21では、第1のクラッチ61は完全に接続されているものとして図示を省略している。また、補機30に供給される電力の時間変化を図22に示す。電力の供給状態(電流の流れ)は、電流モード1、電流モード2、電流モード3の各状態に変化する。図19は、電流モード1を示し、図20は、電流モード2を示し、図21は、電流モード3を示している。
【0232】
「停車発電モード」が選択指示されると、まず、停車発電安全確認センサ62aから「安全状態」の検出信号が出力されているか否かが判断され、その結果「安全状態」の検出信号が出力されていると判断された場合には、第2のクラッチ62が完全に切り離されて作業車両100を「停車発電モード」で停車発電動作させる準備が完了したと判定する。
【0233】
この停車発電の安全確認完了を条件に、第1の発電電動機21および第2の発電電動機22を発電作用させ第1の発電電動機21および第2の発電電動機22の発電によって得られた電力を補機30に供給する。たとえば補機30が被災地における暖房用ヒータや夜間照明機材である場合などのように、補機30の負荷がゆるやかに変動する場合には、エンジン1の定格出力260kWのうち50kWの電力が第1の発電電動機21および第2の発電電動機22それぞれに供給されて、第1の発電電動機21および第2の発電電動機22で発電が行われ、第1の発電電動機21および第2の発電電動機22から合計100kWの電力が補機30で連続的に供給される(図19の実線矢印参照)。
【0234】
ただし、エンジン1の出力に基づき補機30に電力を連続して供給し続けると、燃料切れによって停電が起き補機30への電力供給が停止することがある。また、燃料給油中はエンジン1が停止するため、補機30への電力供給が停止する。ここで、補機30がパソコンなどの場合には、停電による電力供給停止は回避されなければならない。
【0235】
そこで、エンジン1の燃料が不足してきた場合には、エンジン1を停止させて第1の発電電動機21および第2の発電電動機22における発電を停止させるとともに、蓄電部50の蓄積電力を瞬時最大放電出力100kWで放電させて、補機30に供給する(図19の破線矢印参照)。燃料給油後は、エンジン1の稼動を再開して、蓄電部50の放電を停止させるとともに、第1の発電電動機21および第2の発電電動機22における発電を再開して第1の発電電動機21および第2の発電電動機22から合計100kWの電力を補機30に供給する。ただし、燃料給油後は、第1の発電電動機21および第2の発電電動機22それぞれで連続定格発電出力50kWを若干上回る発電出力で発電を行わせ、連続定格発電出力50kWに対し余剰分の電力を蓄電部50に供給する。これにより蓄電部50で給油中に放電した分の電力が充電により補われる。なお、燃料給油の間隔は長期であり、その間、蓄電部50における放電は極く僅かであるため、充電は急速充電で行わなくてもよい(図19の一点鎖線矢印参照)。
【0236】
補機30としてレーダと電磁式の質量投射機を搭載しており、通常時は、レーダを使用し補機30の電力需要が安定して連続消費電力50kWであったとする(図22の電流モード1参照)。なお、本明細書における「電磁式の質量投射機」とは、長射程のレールガン、中射程のコイルガン、あるいは短射程ながらも金属片を電磁力で高速に加速させた後、散乱させて小型ミサイルを迎撃するアクティブアーマのほか、従来の発射薬との複合によって弾丸を電磁的に加速して発射する砲塔などをさすものである。
【0237】
この状態から突然に電磁式の質量投射機を作動させると、補機30の電源負荷が突然に50kWから瞬時消費電力300kWに急増する。補機30への供給電力を連続消費電力50kWから瞬時消費電力300kWに増加させるためには、蓄電部50から瞬時最大放電出力100kWの放電が可能であるとして、エンジン1をそれまでの出力50kWから約200kWまで増加させる必要がある。しかし、エンジン1は、出力要求指令が出されてから実際に出力が増加するまでに応答遅れが約1秒間あるため、そのままでは電力需要の急増に対処することができない。
【0238】
そこで、電磁式の質量投射機を作動させる時点の約1秒前にエンジン1の出力を150kWに増加させる制御指令をエンジン1に与える。なお、この場合、ハイブリッド制御装置40がエンジンECU41を介してエンジン1の出力を制御してもよい。この場合、ハイブリッド制御装置40からエンジンECU41に対して、通常の制御シーケンスとは異なる制御指令が出力されることになる。
【0239】
このエンジン1の出力増加制御指令に合わせて、第1の発電電動機21、第2の発電電動機22でそれぞれ75kWの発電が行われるように制御される。これにより第1の発電電動機21で瞬時出力75kWの発電が行われて、50kWの電力が補機30に供給される(図20の実線矢印参照)とともに、25kWの電力が蓄電部50に供給される(図20の破線矢印参照)。また第2の発電電動機22で瞬時出力75kWの発電が行われて、75kWの電力が蓄電部50に供給される(図20の一点鎖線矢印参照)。これにより補機30が50kWで作動するとともに蓄電部50が合計100kWで充電される(図22の電流モード2参照)。
【0240】
電磁式の質量投射機を作動させる時点に達すると、エンジン1の出力を150kWから200kWに増加させる制御指令をエンジン1に与える。このエンジン1の出力増加制御指令に合わせて、第1の発電電動機21、第2の発電電動機22でそれぞれ100kWの発電が行われるように制御されるとともに、蓄電部50から100kWの放電が行われるように制御される。これにより第1の発電電動機21で瞬時出力100kWの発電が行われて、100kWの電力が補機30に供給されるとともに、第2の発電電動機22で瞬時出力100kWの発電が行われて、100kWの電力が補機30に供給される(図21の実線矢印参照)。また蓄電部50で瞬時最大放電出力100kWの放電が行われて、100kWの電力が補機30に供給される(図21の破線矢印参照)。この結果、補機30には合計300kWが瞬時に供給され、この300kWの電力が瞬時に消費されることになる(図22の電流モード3参照)。
【0241】
なお、実施例の停車発電モードでは、第1の発電電動機21および第2の発電電動機22を発電作用させて補機30に電力を供給しているが、第1の発電電動機21の発電電力のみを補機30に供給してもよく、第2の発電電動機22の発電電力のみを補機30に供給してもよい。この場合、蓄電部50の蓄積電力を併せて補機30に供給してもよい。また第1の発電電動機21の発電中、補機30の電力需要に対して第1の発電電動機21の発電電力に余裕がある場合、あるいは蓄電部50の残留電力が規定値を下回ることが予測される場合には、第1の発電電動機21の発電電力を蓄電部50に供給して蓄電部50を充電してもよい。同様にまた第2の発電電動機22の発電中、補機30の電力需要に対して第2の発電電動機22の発電電力に余裕がある場合、あるいは蓄電部50の残留電力が規定値を下回ることが予測される場合には、第2の発電電動機22の発電電力を蓄電部50に供給して蓄電部50を充電してもよい。
【0242】
つぎに、上述の第2実施例の作用効果について説明する。
【0243】
本第2実施例では、第2の発電電動機22のみならず第1の発電電動機21を、独立したハイブリッド制御装置40で制御し、このハイブリッド制御装置40で、第1の発電電動機21を発電作用させて第1の発電電動機21から補機30に電力を供給して補機30を作動させるなどの制御を行なうようにしている。すなわち、第1の発電電動機21を、モータとして使用しないようにしたので、第1の発電電動機21の負荷状態に応じて変速機2を電子制御するなど、変速機2の制御内容を改変することを不要とした。よって、旧い設計の作業車両100の既存の装置構成はできる限りそのままにしてハイブリッド化のための機器をそのまま組み込むことができるようになり、既存の変速機2の制御内容を変えないようにすることができる。
【0244】
この結果、第2の発電電動機22は、主としてエンジン1による走行用の動力をアシストする電動モータとして機能し、第1の発電電動機21は、補機30に電力を供給する発電機として機能することとなるため、1つの発電電動機を電動作用させたり発電作用させたりする場合と比べて制御が複雑にならず簡易なものとすることができる。また、2つに分けて発電電動機21、22で補機30の大電力が賄われるため、1つの発電電動機で大電力を賄う場合と比べて個々の発電電動機を小型化することができる。
【0245】
さらに、1つの大容量の発電電動機を、変速機2と車輪5との間の動力伝達経路6に配置させたとすると、エンジン1から、その発電電動機に至るまでの動力伝達経路6が長くなり、エンジン1の出力軸の馬力がメカロスによって大きく損なわれて発電電動機から出力されることになる。これに対して本実施例では、大容量の発電電動機を、第1の発電電動機21と第2の発電電動機22の2つに振り分け、そのうちの1つの第2の発電電動機22を、変速機2と車輪5との間に配置させたため、メカロスによる馬力損失は僅かで済み、他の1つの第1の発電電動機21に至っては、エンジン1の出力軸の直ぐ後ろに配置されるため、メカロスによる馬力損失は殆どなくなる。よって、メカロスによるエンジン1の馬力損失を抑制することができる。
【0246】
また、本実施例によれば、第1のクラッチ61を遮断し、その上で蓄電部50から電力を第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22に供給して第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22を電動作用させて車輪5を駆動するようにすることで、車両100をあたかも純電気自動車のごとく走行させることができる。
【0247】
また、本実施例によれば、第2のクラッチ62を遮断することで、エンジン1、第2の発電電動機22の動力が車輪5に伝達されることを断ち、車両100の走行を停止させ、その上でエンジン1の駆動により第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22を発電作用させて第1の発電電動機21または/および第2の発電電動機22から補機30に電力を供給することにより、あるいは蓄電部50から直接補機30に電力を供給することにより、作業車両100を停車させた状態で大電力を補機30に供給することができる。
【0248】
また、本実施例では、第2の発電電動機22(図2におけるモータ3)の駆動軸22aとディファレンシャルギヤ4(前後ディファレンシャルギヤ4a、左右ディファレンシャルギヤ4b)との間の動力伝達経路6にあって、変速機2とは別に設けられた第2の変速機7を備えるようにしている。これにより図1(b)のレイアウトをとり、図2(c)に示す低回転低トルクの等馬力領域が狭い汎用のモータ3を使用したとしても、第2の変速機7のギヤ比を、適宜ロー、ハイに変速することで、登坂時に十分なトルクが得られ、かつ高速走行時に最高速度まで発電電動機22(モータ3)を回せることが可能となる。よって、低コストの汎用のモータ3を使用することができ冷却装置による冷却能力を高めることが不要となり、装置コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0249】
【図1】図1(a)、(b)は車両のレイアウトを例示した図である。
【図2】図2(a)、(b)、(c)、(d)はモータの特性を説明する図である。
【図3】図3(a)、(b)は、第1実施例の作業車両の構成図である。
【図4】図4(a)、(b)、(c)、(d)は動力結合機構の構成例を示した図である。
【図5】図5は実施例の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1実施例における走行発電モードに対応する制御の処理手順を示したフローチャートである。
【図7】図7(a)、(b)、(c)、(d)は、第1実施例の装置における電力の流れを説明する図である。
【図8】図8は、第2実施例の作業車両の構成図である。
【図9】図9は、第2実施例の走行発電モード時の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図10】図10は、第2実施例の走行発電モード時の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、第2実施例の走行発電モード時の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図12】図12は、第2実施例の走行発電モード時の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2実施例の走行発電モード時のエネルギー(機械エネルギー、電気エネルギー(電力))の流れを示した図である。
【図14】図14は、第2実施例の走行発電モード時のエネルギー(機械エネルギー、電気エネルギー(電力))の流れを示した図である。
【図15】図15は、第2実施例の走行発電モード時のエネルギー(機械エネルギー、電気エネルギー(電力))の流れを示した図である。
【図16】図16は、第2実施例の走行発電モード時のエネルギー(機械エネルギー、電気エネルギー(電力))の流れを示した図である。
【図17】図17は、第2実施例の電動走行モード時の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図18】図18は、第2実施例の電動走行モード時の制御処理手順を示したフローチャートである。
【図19】図19は、第2実施例の停車発電モード時のエネルギーの流れを示した図である。
【図20】図20は、第2実施例の停車発電モード時のエネルギーの流れを示した図である。
【図21】図21は、第2実施例の停車発電モード時のエネルギーの流れを示した図である。
【図22】図22は、第2実施例の停車発電モード時の電力の時間変化を示した図である。
【符号の説明】
【0250】
1 エンジン、2 変速機、4(4a、4b) ディファレンシャルギヤ、5 車輪、6 動力伝達経路、7 第2の変速機、8 トルクコンバータ、9 ハイブリッドユニット、21 第1の発電電動機、22 第2の発電電動機、30 補機、40 ハイブリッド制御装置、50 蓄電部、61 第1のクラッチ、62 第2のクラッチ、100 作業車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから車輪までの動力伝達経路に、少なくとも変速機が備えられた作業車両に適用され、発電電動機による駆動力によって車輪が駆動されるハイブリッド作業車両であって、
変速機と車輪との間に配置され、当該変速機と車輪との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用と電動作用を行う発電電動機と、
発電電動機または蓄電部から電力が供給されることにより作動する補機と、
発電電動機が発電作用を行うことにより電力が蓄積され、電力を補機および発電電動機に供給する蓄電部とが備えられ、
発電電動機を、独立したハイブリッド制御装置で制御するようにしたこと
を特徴とするハイブリッド作業車両。
【請求項2】
ハイブリッド制御装置は、
作業車両が走行中には、作業車両が減速している場合または蓄電部の残留電力が規定値よりも下回っている場合を除き、発電電動機を発電作用させず蓄電部に蓄積された電力を補機に供給することで補機を作動させる制御を行なうこと
を特徴とする請求項1記載のハイブリッド作業車両。
【請求項3】
エンジンから車輪までの動力伝達経路に、少なくとも変速機が備えられた作業車両に適用され、発電電動機による駆動力によって車輪が駆動されるハイブリッド作業車両であって、
エンジンと変速機との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用を行う第1の発電電動機と、
変速機と車輪との間に配置され、当該変速機と車輪との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用と電動作用を行う第2の発電電動機と、
第1の発電電動機または/および第2の発電電動機または蓄電部から電力が供給されることにより作動する補機と、
第1の発電電動機または/および第2の発電電動機が発電作用を行うことにより電力が蓄積され、電力を補機および第2の発電電動機に供給する蓄電部と
が備えられ、
第1の発電電動機および第2の発電電動機を、独立したハイブリッド制御装置で制御するようにし、このハイブリッド制御装置は、
第1の発電電動機を発電作用させて第1の発電電動機から補機に電力を供給して補機を作動させる制御を行なうこと
を特徴とするハイブリッド作業車両。
【請求項4】
変速機と、発電電動機の駆動軸との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第1のクラッチを備えたこと
を特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド作業車両。
【請求項5】
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第2のクラッチを備えたこと
を特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド作業車両。
【請求項6】
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路にあって、変速機とは別に設けられた第2の変速機を備えたこと
を特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド作業車両。
【請求項7】
変速機と車輪との間の動力伝達経路に、ハイブリッドユニットが配置され、このハイブリッドユニットは、
当該変速機と車輪との間の動力伝達経路に、その駆動軸が連結され発電作用と電動作用を行う発電電動機と、
変速機と、発電電動機の駆動軸との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第1のクラッチと、
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第2のクラッチと、
発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路にあって、変速機とは別に設けられた第2の変速機と
からなること
を特徴とする請求項1または2記載のハイブリッド作業車両。
【請求項8】
エンジンと、第1の発電電動機の駆動軸との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第1のクラッチを備えたこと
を特徴とする請求項3記載のハイブリッド作業車両。
【請求項9】
第2の発電電動機の駆動軸と車輪との間の動力伝達経路の動力を遮断および接続する第2のクラッチを備えたこと
を特徴とする請求項3記載のハイブリッド作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−143478(P2009−143478A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324704(P2007−324704)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】