説明

ハイブリッド車の冷却装置

【課題】電動モータやジェネレータが高出力化された場合でも、十分な冷却性能が得られる車両の冷却装置を提案する。
【解決手段】車両1に搭載されるエンジン2、エンジンにより駆動されると共に内部に潤滑油S2を有するジェネレータ4と、ジェネレータにより発電される電力を蓄電するバッテリ5と、バッテリから供給される電力により駆動されると共に車両の駆動輪60を駆動するモータ3と、モータとジェネレータとを冷却する冷却媒体S1が循環される冷却経路11とを備えるハイブリッド車の冷却装置10において、冷却経路11は、冷却媒体を冷却する熱交換部12と、モータの内部を冷却するモータ冷却部33と、ジェネレータを冷却するジェネレータ冷却部46を有し、ジェネレータ冷却部46をモータ冷却部33より下流側で、かつ熱交換部12よりも上流側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源に電動モータを備えた車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動源にエンジンと電動モータを備えたハイブリッドタイプの車両が提案されている。このようなハイブリッドタイプの車両において、サイドメンバの間にエンジン、電動モータ、ジェネレータと駆動分配機構が直列で車幅方向に配置されていると、電動モータの出力を増大しようとしたときに車幅方向へのスペースに制限があるため、思うような電動モータを選択することが難しい。このようなハイブリッドタイプの車両としては特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−308138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動モータを備え、電動モータの駆動のみで走行することが多い車両においては、ジェネレータがあまり使用されないことがある。そのため、ジェネレータ始動時にジェネレータ内の潤滑油の温度低下により潤滑油の粘度が高くなりジェネレータの回転効率が悪化する。また、電動モータでの走行が多い場合、電動モータの出力増大が要求されることがあるが、その分、電動モータやジェネレータからの発熱量が増大するため、冷却能力の向上が要求される。
本発明は、ジェネレータの回転効率を向上させつつも、十分な冷却性能を得られるハイブリッド車の冷却装置を提案することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、車両に搭載されるエンジンと、エンジンにより駆動されると共に内部に潤滑油を有するジェネレータと、ジェネレータにより発電される電力を蓄電するバッテリと、バッテリから供給される電力により駆動されると共に前記車両の駆動輪を駆動するモータと、モータとジェネレータとを冷却する冷却媒体が循環される冷却経路とを備えるハイブリッド車の冷却装置において、冷却経路は、冷却媒体を冷却する熱交換部と、モータの内部を冷却するモータ冷却部と、ジェネレータを冷却するジェネレータ冷却部とを有し、ジェネレータ冷却部が、モータ冷却部より下流側に配置されると共に熱交換部の上流側に配置されることを特徴としている。
【0006】
本発明に係るハイブリッド車の冷却装置において、ジェネレータは潤滑油を貯留する潤滑油溜まり部を内部下方に有し、ジェネレータ冷却部は潤滑油溜まり部の近傍に配置されることを特徴としている。
【0007】
本発明に係るハイブリッド車の冷却装置において、バッテリから供給される電力を直流から交流に変換してモータに電力を供給する電力変換器を更に備え冷却経路は、熱交換部の下流側であってモータ冷却部の上流側に電力変換器冷却部を有することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るハイブリッド車の冷却装置において、ジェネレータは、潤滑油を前記潤滑油溜まり部から排出する排出口と、排出口から排出された潤滑油をジェネレータへ流入させる流入口とを更に備え、排出口と流入口とをつなぐ経路には潤滑油を冷却する潤滑油クーラが配置されていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係るハイブリッド車の冷却装置において、熱交換部はラジエータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジェネレータ冷却部がモータ冷却部の下流にあるため、モータ走行時におけるモータの発熱を冷却媒体が吸収し、その後、ジェネレータ冷却部に冷却媒体が流入し、吸収した熱によりジェネレータを温めることができ、ジェネレータ始動時の回転効率を上げることができる。また、ジェネレータの回転が十分になったときには冷却媒体によりジェネレータ自体の発熱を抑えることができるため、十分な冷却性能を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両の駆動系の配置を車体正面側から見たときの概略構成図である。
【図2】本発明に係るハイブリッド車両の冷却装置の構成を車両側面から見た拡大図である。
【図3】インバータ内の冷却構造を模式的にする図である。
【図4】本発明に係る冷却装置の別な構成を車両側面から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1に符号1で示す車両には、エンジン2と、エンジン2により駆動されるジェネレータ4と、ジェネレータ4により発電される電力を蓄電するバッテリ5と、バッテリから供給される電力により駆動されると共に車両1の駆動輪60へ車軸7を介して駆動力を伝達して同駆動輪60を回転駆動する電動モータ3が搭載されたハイブリッドタイプの車両である。
【0013】
エンジン2と電動モータ3との間には、車軸7へ駆動力を伝達する減速機6が配置されている。これらエンジン2、電動モータ3、ジェネレータ4、減速機6は、車両前後方向に延在し、車幅方向に配置されたサイドメンバ8,8の間に形成される空間9内に配置される。中でもエンジン2と減速機6は、車幅方向に直列に配置され、電動モータ3とジェネレータ4は減速機6と隣接し、車幅方向と交差する車両上下方向に並列に配置されている。すなわち、電動モータ3とジェネレータ4は、エンジン2と減速機6に対して上下にオフセットされて配置されている。本形態では、車幅方向と交差する方向を車両上下方向としているが、車両前後方向に電動モータ3とジェネレータ4を並列に配置して、エンジン2と減速機6に対して前後にオフセットして配置してもよい。
【0014】
この車両1は、図2に示すように、電動モータ3とジェネレータ4とを冷却する冷却装置100を備えている。冷却装置100は、2つの系統の異なる冷却手段10,20を備えている。
【0015】
冷却手段10は、冷却媒体となる冷却水S1を冷却経路11内で循環させる水冷冷却装置である。冷却手段10は、冷却経路11上に、冷却水S1を冷却する熱交換部となるラジエータ12と冷却水ポンプ13を備えていて、冷却水ポンプ13を作動することで、冷却経路11内に充填されている冷却水S1を同経路11内で循環させている。ラジエータ12は車両前方に配置され、その一端12aが冷却経路11を介して冷却水ポンプ13の吸引側13aと接続している。冷却水ポンプ13の吐出側13bとラジエータ12の他端12bとを繋ぐ冷却経路11上には、高電圧ユニット50、電動モータ3、ジェネレータ4の順で配置されている。
【0016】
電動モータ3は、中空状のモータケーシング30と、モータケーシング30内部で回転するロータ31と、モータケーシング30とロータ31の間に配置されたステータ32とを備えている。モータケーシング30の内部には、ケーシング全体を取り巻くようにリング状の冷却路で構成されたモータ冷却部33が形成されている。モータ冷却部33は冷却経路11と接続されていて、同経路11内の流れる冷却水S1が通過するように構成されている。
【0017】
ジェネレータ4は、中空状のケーシング40と、ケーシング40の内部で回転するロータ41と、ケーシング40とロータ41の間に配置されたステータ42とを備えていて、ケーシング40の内部に冷却のための潤滑油S2を備えている。
【0018】
ジェネレータ4は、ケーシング40の内部下方に潤滑油溜まり部45を有するとともに、この潤滑油溜り部45と隔壁40aを介して隣接する部位、例えばケーシング40の外部下部にジェネレータ冷却部46が形成されている。ジェネレータ冷却部46は冷却水S1を導入する空間部であって、冷却経路11が接続されており、冷却経路11内を流れる冷却水S1が流入して一定量貯留可能であるとともに、一定量貯留すると通過するように構成されている。本形態において、隔壁40aはケーシング40の一部で構成されている。つまり、ジェネレータ冷却部46は、モータ冷却部33より冷却水S1の流れる方向に対して下流側に配置されると共にラジエータ12の上流側に配置されている。
【0019】
冷却手段20は、ジェネレータ4の内部を冷却する潤滑油S2を潤滑油経路21内で循環させる潤滑油冷却装置である。冷却手段20は、ケーシング40の上部と下部にケーシング内部と連通するように形成された開口部43,44と、開口部43,44に両端が接続される潤滑油経路21と、潤滑油経路21上に設けられた潤滑油ポンプ22で構成されている。本形態において、開口部43は潤滑油取入口となり、開口部44は潤滑油排出口となる。このため、潤滑油ポンプ22が作動すると、ケーシング40内の潤滑油S2が開口部44から潤滑油経路21へ排出し、潤滑油経路21を介して開口部43からケーシング40内に流入する。開口部44の開口面積は、開口部43から流入する潤滑油S2がケーシング内部に潤滑油溜り部45が形成される大きさとされている。この開口部44の開口面積は、開口部43から供給される潤滑油量との関係で適宜大きさを設定すればよい。潤滑油溜り部45は開口部44の開口面積と潤滑油流入量の関係では形成するのではなく、例えばケーシング40の内部に窪み部を形成して潤滑油溜り部としてもよい。
【0020】
高電圧ユニット50は、ラジエータ12の下流側であってモータ冷却部33の上流側に位置する冷却経路11に配置されている。高電圧ユニット50は、その外装を構成するケーシング51と、ケーシング51の内部に、バッテリ5を充電する充電器52と、電圧を変換するコンバータ53と、バッテリ5から供給される電力を直流から交流に変換して電動モータ3に供給する電力変換器となるインバータ54と、ユニット全体を冷却するための冷却配管で構成された電力変換器冷却部55を備えている。電力変換器冷却部55は冷却経路11と接続されていて、同経路11内の流れる冷却水S1が通過するように構成されている。電力変換器冷却部55は、ラジエータ12の下流側であってモータ冷却部33の上流側に位置する冷却経路11上に配置されることになる。
【0021】
本形態において、冷却経路11は、ラジエータ12の一端12aから電力変換器冷却部55、モータ冷却部33、ジェネレータ冷却部46を経てラジエータ12の他端12bまでが直列に接続されている。このため、ラジエータ12の一端12aを最上流とすると、ジェネレータ4は冷却経路11の最下流に位置する構成部材となる。また、ラジエータの一端12aには、エンジン2を冷却する図示しない冷却経路が接続されていて、電動モータ3、ジェネレータ4、インバータ9の冷却経路11と個別な冷却経路とされている。
【0022】
このような構成によると、エンジン2と電動モータ3とが減速機6を介して車幅方向に配置し、電動モータ2とジェネレータ4とを上下方向に並列に配置して、エンジン2及び減速機6とオフセットして配置しているので、サイドメンバ8,8間における車幅方向の空間9に余裕を生み出せ、電動モータ2とジェネレータ4を車幅方向に大きくすることができる。このため、電動モータ2とジェネレータ4を大容量で高出力化にすることができる。
【0023】
また、ジェネレータ冷却部46がモータ冷却部33の下流にあるため、モータ走行時における電動モータ3の発熱を冷却水S1が吸収し、その後、ジェネレータ冷却部46に冷却水S1が流入し、吸収した熱によりジェネレータ4を温めることができ、ジェネレータ始動時の回転効率を上げることができる。また、ジェネレータ4の回転が十分になったときには冷却水S1によりジェネレータ自体の発熱を抑えることができるため、十分な冷却性能を得られる。
【0024】
さらに、ジェネレータ4に至っては冷却手段20の潤滑油経路21内を循環する潤滑油S2でも冷却されるので、電動モータ2やジェネレータ4を大型化しても充分な冷却性能を得ることができる。冷却手段20によるジェネレータ4の冷却は、潤滑油S2をケーシング40内に流入させて、内部のコイル41やステータ42に直接かけて冷却しているので、効率よく冷却することができるとともに、潤滑油経路21を開口部43,44に接続するという簡素な構成で冷却でき、低コストでよりジェネレータ4の冷却性能を向上することができる。
【0025】
ジェネレータ4は、冷却経路11上の配置では、冷却経路11の最下流に位置するため、既に高電圧ユニット50や電動モータ3を通過して温度上昇した冷却水S1が搬送される。このため、ジェネレータ4が始動して時間が経過する、冷却水S1による冷却性能は低下するが、冷却手段20から冷却用の潤滑油S2が供給されるため、冷却水S1による冷却不足を補うことができる。また、ケーシング40内部の潤滑油溜り部45には冷却水S1が導入れるジェネレータ冷却部46が隔壁40aを介して隣接して形成されているので、潤滑油溜り部45の潤滑油S2を、ジェネレータ冷却部46内を流れる冷却水S1で冷却することができるので、ケーシング内部の潤滑油S1を効率よく冷却することが可能となる。このため、ジェネレータ冷却部46を走行風に触れる領域に設置することで、潤滑油経路21に潤滑油クーラを配置しなくても、ジェネレータ4の冷却性能を維持するとこができる。無論、レイアウト等の関係で、ジェネレータ冷却部46を走行風に触れる領域に設置することができない場合や、冷却不足が想定される場合には、潤滑油経路21上に、図4に示すように潤滑油クーラ48を配置してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 車両
2 エンジン
3 モータ
6 減速機
4 ジェネレータ
5 バッテリ
10 冷却手段
20 冷却手段
11 冷却経路
12 熱交換部(ラジエータ)
21 経路
33 モータ冷却部
43 流入口
44 潤滑油排出口
45 潤滑油溜り部
46 ジェネレータ冷却部
48 潤滑油クーラ
54 電力変換器(インバータ)
55 電力変換器冷却部
S1 冷却媒体
S2 潤滑油
60 駆動輪
100 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジンと、該エンジンにより駆動されると共に内部に潤滑油を有するジェネレータと、該ジェネレータにより発電される電力を蓄電するバッテリと、該バッテリから供給される電力により駆動されると共に前記車両の駆動輪を駆動するモータと、前記モータと前記ジェネレータとを冷却する冷却媒体が循環される冷却経路とを備えるハイブリッド車の冷却装置において、
前記冷却経路は、前記冷却媒体を冷却する熱交換部と、前記モータの内部を冷却するモータ冷却部と、前記ジェネレータを冷却するジェネレータ冷却部とを有し、
前記ジェネレータ冷却部は、前記モータ冷却部より下流側に配置されると共に前記熱交換部の上流側に配置されることを特徴とするハイブリッド車の冷却装置。
【請求項2】
前記ジェネレータは前記潤滑油を貯留する潤滑油溜まり部を内部下方に有し、
前記ジェネレータ冷却部は前記潤滑油溜まり部の近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車の冷却装置。
【請求項3】
前記バッテリから供給される電力を直流から交流に変換して前記モータに電力を供給する電力変換器を更に備え、
前記冷却経路は、前記熱交換部の下流側であって前記モータ冷却部の上流側に電力変換器冷却部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車の冷却装置。
【請求項4】
前記ジェネレータは、前記潤滑油を前記潤滑油溜まり部から排出する排出口と、前記排出口から排出された潤滑油を前記ジェネレータへ流入させる流入口とを更に備え、
前記排出口と前記流入口とをつなぐ経路には前記潤滑油を冷却する潤滑油クーラが配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のハイブリッド車の冷却装置。
【請求項5】
前記熱交換部はラジエータであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載のハイブリッド車の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213290(P2011−213290A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85201(P2010−85201)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】