説明

ハイブリッド車両の制御装置および制御方法

【課題】ハイブリッド車両の要求駆動力が最小燃料消費率相当の内燃機関の駆動力に近い場合でも、走行モードを適切に選択でき、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置および制御方法を提供する。
【解決手段】車速VPおよび駆動輪への要求トルクTRQに対して、内燃機関の動力の変速段ごとに、走行モードの中でエンジン走行モードのときに小さな総合燃料消費率が得られるエンジン走行領域と、アシスト走行モードのときに小さな総合燃料消費率が得られるアシスト走行領域と、充電走行モードのときに小さな総合燃料消費率が得られる充電走行領域が設定されている。車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせが属する走行領域に対応する走行モードを選択し、内燃機関の動力の変速段として、総合燃料消費率が最も小さな変速段を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として内燃機関および発電可能な電動機を有するハイブリッド車両の制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両の制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。このハイブリッド車両の走行モードには、動力源として、内燃機関のみを用いるENG走行モードと、電動機のみを用いるEV走行モードと、内燃機関および電動機の両方を用いるHEV走行モードが含まれる。また、ハイブリッド車両は、1速段、3速段および5速段の変速段を有する第1変速機構と、2速段、4速段および6速段の変速段を有する第2変速機構を備えている。内燃機関の動力(以下「エンジン動力」という)は、第1または第2変速機構により1速段〜6速段のうちの1つの変速段で変速され、駆動輪に伝達されるとともに、電動機の動力(以下「モータ動力」という)は、第2変速機構により2速段、4速段および6速段のうちの1つで変速され、駆動輪に伝達される。
【0003】
この制御装置では、ハイブリッド車両の車速が所定値以下のときには、電動機およびバッテリによる回生を併用するENG走行モードが選択され、エンジン動力の変速段として2速段または1速段が選択されるとともに、モータ動力の変速段として2速段が選択される。また、選択されたエンジン動力の変速段と駆動輪の回転数で定まる内燃機関の回転数に基づき、内燃機関の燃料消費率が最も低くなる最小燃費トルクを、内燃機関の目標トルクとして設定する。そして、算出された目標トルクが得られるように内燃機関を運転するとともに、要求トルクに対する目標トルクの余剰分を用いて、電動機による発電が行われ、発電した電力がバッテリに充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、この従来の制御装置では、車速が所定値以下のときに、内燃機関の目標トルクを最小燃費トルクに設定し、要求トルクに対する目標トルクの余剰分を電動機による回生に振り分ける。この余剰トルクは、電動機による発電・バッテリへの充電などを経て、電気エネルギとして回生されるとともに、その後のEV走行モードやHEV走行モードにおいて、バッテリからの放電や電動機での機械エネルギへの変換を経て、ハイブリッド車両の駆動力として用いられる。このため、これらの過程における効率は、ハイブリッド車両全体としての燃料消費率、ひいては燃費に影響を及ぼす。
【0006】
例えば、要求トルクと内燃機関の最小燃費トルクとの差が小さい場合には、その余剰分に相当する電動機の負荷が小さくなるため、電動機において走行エネルギを電気エネルギに変換する際の変換効率は、大きく低下する。したがって、従来の制御装置のように、内燃機関の目標トルクを最小燃費トルクに設定し、要求トルクに対する目標トルクの余剰分を電動機に振り分けるだけでは、内燃機関の燃料消費率は最小になるものの、ハイブリッド車両全体としての燃料消費率が必ずしも最小にはならず、最良の燃費が得られないおそれがある。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ハイブリッド車両の要求駆動力が最小燃料消費率相当の内燃機関の駆動力に近い場合でも、走行モードを適切に選択することによって、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができるハイブリッド車両の制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両の制御装置において、ハイブリッド車両Vの走行モードは、内燃機関3の動力のみで走行するエンジン走行モードと、内燃機関3の動力を電動機4の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、内燃機関3の動力の一部を用いて電動機4および蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、ハイブリッド車両Vの速度(車速VP)および駆動輪DWに要求される要求駆動力(要求トルクTRQ)に対して、内燃機関3の動力の変速段ごとに、走行モードの中でエンジン走行モードのときに小さな燃料消費(総合燃料消費率TSFC)が得られる領域であるエンジン走行領域と、走行モードの中でアシスト走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域であるアシスト走行領域と、走行モードの中で充電走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域である充電走行領域を設定する走行領域設定手段(総合燃料消費率マップ)と、ハイブリッド車両Vの速度と要求駆動力との組み合わせが属する走行領域に対応する走行モードを選択するとともに、内燃機関3の動力の変速段として、燃料消費が最も小さな変速段を選択する選択手段(ECU2)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、内燃機関の機関出力軸と第1変速機構の第1入力軸が第1クラッチによって互いに係合するとともに、機関出力軸と第2変速機構の第2入力軸との係合が第2クラッチで解放されているときには、内燃機関の動力は、第1変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。また、機関出力軸と第1入力軸との係合が第1クラッチで解放されるとともに、機関出力軸と第2入力軸が第2クラッチによって互いに係合しているときには、内燃機関の動力は、第2変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。電動機の動力は、第1変速機構の複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で、駆動輪に伝達される。
【0010】
また、走行領域設定手段により、ハイブリッド車両の速度および駆動輪に要求される要求駆動力に対して、内燃機関の動力の変速段ごとに、走行モードの間で小さな燃料消費が得られる領域として、エンジン走行領域、アシスト走行領域および充電走行領域が設定されている。そして、これらの走行領域のうち、ハイブリッド車両の速度と要求駆動力との組み合わせが属する走行領域を求め、それに対応する走行モードを選択する。これにより、より小さな燃料消費が得られる走行モードを適切に選択できる。また、内燃機関の動力の変速段として、燃料消費が最も小さな変速段を選択することにより、最小の燃料消費を得るのに適した変速段も併せて選択できる。したがって、以上のように選択された走行モードおよび内燃機関の動力の変速段により、ハイブリッド車両を運転することにより、要求駆動力が最小燃料消費率相当の内燃機関の駆動力に近い場合でも、より小さな燃料消費を得ることができ、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0011】
また、上述した走行領域をあらかじめ設定し、ハイブリッド車両の速度および要求駆動力に応じて参照するだけで、複雑な演算などを必要とすることなく、より小さな燃料消費率が得られる走行モードおよび内燃機関の動力の変速段を、容易かつ適切に決定することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、燃料消費は、内燃機関3へのハイブリッド車両Vの走行用の供給燃料量、内燃機関3の効率および第1および第2変速機構11、31の効率である機関駆動パラメータを用いて算出され、アシスト走行モードのときには、機関駆動パラメータに加えて、アシスト走行用の電力を蓄電器に充電するために内燃機関3に過去に供給された過去供給燃料量、蓄電器の放電効率、電動機4の駆動効率および第1および第2変速機構11、31の効率を用いて算出され、充電走行モードのときには、機関駆動パラメータに加えて、内燃機関3への電動機4による充電用の供給燃料量、内燃機関3の効率、第1および第2変速機構11、31の効率、電動機4の発電効率、蓄電器の充電効率、および蓄電器の電力を将来的にハイブリッド車両Vの走行に用いたときの効率である予測効率を用いて算出されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ハイブリッド車両の燃料消費を算出する際、走行モードごとに、上述したパラメータが用いられる。したがって、内燃機関、第1および第2変速機構、電動機および蓄電器の現在、過去および将来における損失などを反映させながら、燃料消費を精度良く算出でき、それに応じて、ハイブリッド車両の燃費をさらに向上させることができる。
【0014】
前記目的を達成するために、請求項3に係る発明は、動力源としての内燃機関3および発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、入力された動力を複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DW、DWに伝達可能な変速機構71とを有するハイブリッド車両の制御装置において、ハイブリッド車両V’の走行モードは、内燃機関3の動力のみで走行するエンジン走行モードと、内燃機関3の動力を電動機4の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、内燃機関3の動力の一部を用いて電動機4および蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、ハイブリッド車両V’の速度(車速VP)および駆動輪DWに要求される要求駆動力(要求トルクTRQ)に対して、変速段ごとに、内燃機関3の燃料消費が最小になる最適燃費ラインを含み、走行モードの中でエンジン走行モードのときに小さな燃料消費(総合燃料消費率TSFC)が得られる領域であるエンジン走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が大きな側に配置されたアシスト走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が小さな側に配置された充電走行領域を設定する走行領域設定手段(総合燃料消費率マップ)と、ハイブリッド車両V’の速度と要求駆動力との組み合わせがエンジン走行領域に属するときに、走行モードとして、エンジン走行モードを選択する選択手段(ECU2)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、内燃機関の動力や電動機の動力は、変速機構により、複数の変速段のいずれか1つで変速された状態で駆動輪に伝達される。また、走行領域設定手段により、ハイブリッド車両の速度および駆動輪に要求される要求駆動力に対して、変速段ごとに、走行モードの間でより小さな燃料消費が得られる領域として、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費ラインを含むエンジン走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が大きな側に配置されたアシスト走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が小さな側に配置された充電走行領域が設定されている。
【0016】
そして、ハイブリッド車両の速度と要求駆動力との組み合わせがエンジン走行領域に属するときには、走行モードとして、エンジン走行モードを選択する。したがって、この場合には、要求駆動力が最小燃料消費率相当の内燃機関の駆動力に一致せず、それに近いときでも、エンジン走行モードが選択されることで、より小さな燃料消費を得ることができ、ハイブリッド車両の燃費の向上を図ることができる。
【0017】
また、設定された走行領域をハイブリッド車両の速度および要求駆動力に応じて参照するだけで、複雑な演算などを必要とすることなく、走行モードを容易且つ適切に決定できるとともに、エンジン走行モードとアシスト走行モードまたは充電走行モードとの切換を円滑に行うことができる。
【0018】
前記目的を達成するために、請求項4に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両の制御装置において、ハイブリッド車両Vの走行モードは、内燃機関3の動力のみで走行するエンジン走行モードと、内燃機関3の動力を電動機4の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、内燃機関3の動力の一部を用いて電動機4および蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、ハイブリッド車両Vの速度(車速VP)および駆動輪DWに要求される要求駆動力(要求トルクTRQ)に対して、内燃機関3の動力の変速段ごとに、内燃機関3の燃料消費が最小になる最適燃費ラインを含み、走行モードの中でエンジン走行モードのときに小さな燃料消費(総合燃料消費率TSFC)が得られる領域であるエンジン走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が大きな側に配置されたアシスト走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が小さな側に配置された充電走行領域を設定する走行領域設定手段(総合燃料消費率マップ)と、ハイブリッド車両Vの速度と要求駆動力との組み合わせがエンジン走行領域に属するときに、走行モードとして、エンジン走行モードを選択する選択手段(ECU2、図10)と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るハイブリッド車両の構成は、請求項1に係る発明と同じである。また、本発明によれば、請求項3と同様、ハイブリッド車両の速度および駆動輪に要求される要求駆動力に対して、内燃機関の動力の変速段ごとに、走行モードの間でより小さな燃料消費が得られる領域として、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費ラインを含むエンジン走行領域と、エンジン走行領域よりも要求駆動力が大きな側および小さな側にそれぞれ配置されたアシスト走行領域および充電走行領域が設定されている。
【0020】
そして、ハイブリッド車両の速度と要求駆動力との組み合わせがエンジン走行領域に属するときには、走行モードとして、エンジン走行モードを選択する。このように、要求駆動力が最小燃料消費率相当の内燃機関の駆動力に一致せず、それに近い場合には、エンジン走行モードが選択されることで、より小さな燃料消費を得ることができ、ハイブリッド車両の燃費の向上を図ることができる。また、設定された走行領域をハイブリッド車両の速度および要求駆動力に応じて参照するだけで、走行モードを容易且つ適切に決定できるとともに、エンジン走行モードとアシスト走行モードまたは充電走行モードとの切換を円滑に行うことができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1または4に記載のハイブリッド車両の制御装置において、内燃機関3の動力の変速段が第2変速機構31の変速段である場合、当該変速段用のアシスト走行領域および充電走行領域はそれぞれ、最も小さな燃料消費が得られる、内燃機関3の動力の変速段と第1変速機構11における電動機4の動力の変速段との組み合わせである変速パターンごとに、複数の領域に区分されており、選択手段は、複数の領域のうち、ハイブリッド車両Vの速度と要求駆動力との組み合わせが属する領域に対応する変速パターンを選択することを特徴とする。
【0022】
請求項1または4の発明に係るハイブリッド車両では、内燃機関の動力が第2変速機構で変速されている場合、第1変速機構における電動機の動力の変速段として、内燃機関の動力の変速段と異なる変速段を選択することが可能である。また、電動機の効率は、電動機により力行を行う場合には、蓄電器の放電効率、電動機の駆動効率および第1変速機構の動力伝達効率を含み、電動機により回生を行う場合には、第1変速機構の動力伝達効率、電動機の発電効率および蓄電器の充電効率を含む。また、第1変速機構における電動機の動力の変速段が異なると、それに応じて電動機の回転数が変化するため、電動機の効率も変化する。
【0023】
本発明によれば、内燃機関の動力の変速段が第2変速機構の変速段である場合、その変速段用のアシスト走行領域および充電走行領域はそれぞれ、最も小さな燃料消費が得られる変速パターン(内燃機関の動力の変速段と第1変速機構における電動機の動力の変速段との組み合わせ)ごとに、複数の領域に区分されている。そして、これらの複数の領域のうち、ハイブリッド車両の速度と要求駆動力との組み合わせが属する領域を求め、それに対応する変速パターンを選択する。これにより、内燃機関の動力の変速段が第2変速機構の変速段である場合、最小の燃料消費が得られる電動機の動力の変速段を適切に選択することができる。
【0024】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置において、電動機4および蓄電器の少なくとも一方の温度(バッテリ温度TB)が、電動機4および蓄電器の少なくとも一方に対して設定された所定温度以上のときに、電動機4の出力が制限されることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、電動機および蓄電器の少なくとも一方の温度が、電動機および蓄電器の少なくとも一方に対して設定された所定温度以上のときに、すなわち、当該少なくとも一方が比較的高温状態にあるときに、電動機の出力が制限される。したがって、当該少なくとも一方の温度上昇を抑制することができる。
【0026】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置において、蓄電器の充電状態(充電状態SOC)が所定値以下のときに、電動機4による回生量を増大させるように電動機4の動作を制御することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、蓄電器の充電状態が所定値以下で、比較的小さいときに、電動機による回生量を増大させるように電動機の動作を制御するので、低下した蓄電器の充電状態を確実に回復させることができる。
【0028】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置において、ハイブリッド車両Vには、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報を表すデータを記憶するカーナビゲーションシステム66が設けられており、カーナビゲーションシステム66に記憶されたデータに基づき、ハイブリッド車両Vの走行状況を予測する予測手段(ECU2)をさらに備え、予測されたハイブリッド車両Vの走行状況に応じて、変速段の選択を行うことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、ハイブリッド車両の走行状況が、ハイブリッド車両が走行している周辺の道路情報を表すデータに基づき、予測手段によって予測されるとともに、予測されたハイブリッド車両の走行状況に応じて、変速段の選択が行われる。これにより、ハイブリッド車両の走行状況に適した変速段をあらかじめ選択することができる。
【0030】
請求項9に係る発明は、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置において、内燃機関3の動力の変速段が第2変速機構31の変速段である場合において、アクセルペダルの開度(アクセル開度AP)の変化量が所定値よりも大きいときには、電動機4の動力の変速段として、内燃機関3の動力の変速段よりも低速側の第1変速機構11の変速段を用いたアシスト走行モードを選択することを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、アクセルペダルの開度の変化量が所定値よりも大きいとき、すなわち運転者からの加速要求が高いときには、電動機の動力の変速段として、内燃機関の動力の変速段よりも低速側の第1変速機構の変速段を用いたアシスト走行モードを選択する。これにより、加速要求に見合ったより大きなトルクを駆動輪に伝達でき、ドライバビリティを向上させることができる。
【0032】
また、前記目的を達成するために、請求項10に係る発明は、内燃機関3と、発電可能な電動機4と、電動機4との間で電力の授受が可能な蓄電器(実施形態における(以下、本項において同じ)バッテリ52)と、内燃機関3の機関出力軸(クランク軸3a)および電動機4からの動力を第1入力軸13で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第1変速機構11と、機関出力軸からの動力を第2入力軸32で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪DWに伝達可能な第2変速機構31と、機関出力軸と第1変速機構11との間を係合可能な第1クラッチC1と、機関出力軸と第2変速機構31との間を係合可能な第2クラッチC2とを有するハイブリッド車両の制御方法において、ハイブリッド車両Vの走行モードは、内燃機関3の動力のみで走行するエンジン走行モードと、内燃機関3の動力を電動機4の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、内燃機関3の動力の一部を用いて電動機4および蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、ハイブリッド車両Vの速度(車速VP)および駆動輪DWに要求される要求駆動力(要求トルクTRQ)に対して、内燃機関3の動力の変速段ごとに、内燃機関3の燃料消費が最小になる最適燃費ラインよりも要求駆動力が大きな側に、エンジン走行モードのときに得られる燃料消費(総合燃料消費率TSFC)とアシスト走行モードのときに得られる燃料消費が互いに一致する点を結んだアシスト禁止ラインを設定するとともに、最適燃費ラインよりも要求駆動力が小さな側に、エンジン走行モードのときに得られる燃料消費と充電走行モードのときに得られる燃料消費が互いに一致する点を結んだ充電禁止ラインを設定し、内燃機関3の動力の変速段、ハイブリッド車両Vの速度および要求駆動力に応じ、要求駆動力がアシスト禁止ライン以下で充電禁止ライン以上のときに、エンジン走行モードを選択し(図10のステップ3、5、6)、要求駆動力がアシスト禁止ラインの上側にあるときに、アシスト走行モードを選択し(ステップ3、4)、要求駆動力が充電禁止ラインの下側にあるときに、充電走行モードを選択する(ステップ5、7)ことを特徴とする。
【0033】
本発明によれば、請求項1の発明と同様の構成のハイブリッド車両を対象として、制御が次のように行われる。まず、ハイブリッド車両の速度および要求駆動力に対して、内燃機関の動力の変速段ごとに、アシスト禁止ラインおよび充電禁止ラインを設定する。アシスト禁止ラインは、内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費ラインよりも要求駆動力が大きな側に設定されており、エンジン走行モードのときに得られる燃料消費とアシスト走行モードのときに得られる燃料消費が互いに一致する点を結んだものである。また、充電禁止ラインは、最適燃費ラインよりも要求駆動力が小さな側に設定されており、エンジン走行モードのときに得られる燃料消費と充電走行モードのときに得られる燃料消費が互いに一致する点を結んだものである。
【0034】
そして、本発明によれば、ハイブリッド車両の速度および要求駆動力に応じ、要求駆動力がアシスト禁止ライン以下で充電禁止ライン以上のときには、エンジン走行モードを選択する。このように、要求駆動力が最小燃料消費率相当の内燃機関の駆動力に一致せず、それに近い場合には、エンジン走行モードが選択される。また、要求駆動力がアシスト禁止ラインの上側にあるときには、アシスト走行モードを選択し、要求駆動力が充電禁止ラインの下側にあるときには、充電走行モードを選択する。以上により、要求駆動力に応じて、走行モードを適切に選択し、いずれの走行モードにおいてもより小さな燃料消費を得ることができ、ハイブリッド車両の燃費を向上させることができる。
【0035】
また、ハイブリッド車両の速度および要求駆動力に応じて、アシスト禁止ラインおよび充電禁止ラインとの関係を参照するだけで、走行モードを容易且つ適切に決定できるとともに、エンジン走行モードとアシスト走行モードまたは充電走行モードとの切換を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態による制御装置を適用したハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【図2】本実施形態による制御装置のECUなどを示すブロック図である。
【図3】エンジン走行モードにおいて得られる総合燃料消費率を示すマップの一例である。
【図4】アシスト走行モードおよび充電走行モードにおいて得られる総合燃料消費率を示すマップの一例である。
【図5】走行モード間における総合燃料消費率の関係を示す図である。
【図6】内燃機関の動力の変速段が3速段のときの総合燃料消費率マップの一例である。
【図7】内燃機関の動力の変速段が4速段のときの総合燃料消費率マップの一例である。
【図8】内燃機関の動力の変速段が5速段のときの総合燃料消費率マップの一例である。
【図9】図6〜図8の総合燃料消費率マップによる走行モード間における総合燃料消費率の関係を示す図である。
【図10】走行モード選択処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明による制御装置を適用した、図1とは異なるハイブリッド車両を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施形態により限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが、含まれる。図1に示すハイブリッド車両Vは、一対の駆動輪DW(一方のみ図示)および一対の従動輪(図示せず)などから成る四輪車両であり、動力源としての内燃機関(以下「エンジン」という)3および発電可能な電動機(以下「モータ」という)4を備えている。エンジン3は、複数の気筒を有するガソリンエンジンであり、クランク軸3aを有している。エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期などは、図2に示す制御装置1のECU2によって制御される。
【0038】
モータ4は、いわゆるモータジェネレータである、一般的な1ロータタイプのブラシレスDCモータであり、固定されたステータ4aと、回転自在のロータ4bを有している。このステータ4aは、回転磁界を発生させるためのものであり、鉄心や三相コイルで構成されている。また、ステータ4aは、ハイブリッド車両Vに固定されたケーシングCAに取り付けられるとともに、パワードライブユニット(以下「PDU」という)51を介して、充電および放電可能なバッテリ52に電気的に接続されている。このPDU51は、インバータなどの電気回路によって構成されており、ECU2に電気的に接続されている(図2参照)。上記のロータ4bは、磁石などで構成されており、ステータ4aに対向するように配置されている。
【0039】
以上の構成のモータ4では、ECU2によるPDU51の制御によって、バッテリ52からPDU51を介してステータ4aに電力が供給されると、回転磁界が発生し、それに伴い、この電力が動力に変換され、ロータ4bが回転する。この場合、ステータ4aに供給される電力が制御されることによって、ロータ4bの動力が制御される。
【0040】
また、ステータ4aへの電力供給を停止した状態で、動力の入力によりロータ4bが回転しているときに、ECU2によるPDU51の制御によって、回転磁界が発生し、それに伴い、ロータ4bに入力された動力が電力に変換され、発電が行われる。この場合、ステータ4aで発電される電力が制御されることによって、ロータ4bに伝達される動力が制御される。
【0041】
さらに、ハイブリッド車両Vは、エンジン3およびモータ4の動力を車両の駆動輪DWに伝達するための駆動力伝達装置を備えており、この駆動力伝達装置は、第1変速機構11および第2変速機構31などから成るデュアルクラッチトランスミッションを有している。
【0042】
第1変速機構11は、入力された動力を、1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つにより変速して駆動輪DWに伝達するものである。これらの1速段〜7速段の変速比は、その段数が大きいほど、より高速側に設定されている。具体的には、第1変速機構11は、エンジン3のクランク軸3aと同軸状に配置された第1クラッチC1、遊星歯車装置12、第1入力軸13、3速ギヤ14、5速ギヤ15、および7速ギヤ16を有している。
【0043】
第1クラッチC1は、乾式多板クラッチであり、クランク軸3aに一体に取り付けられたアウターC1aと、第1入力軸13の一端部に一体に取り付けられたインナーC1bなどで構成されている。第1クラッチC1は、ECU2によって制御され、締結状態では、クランク軸3aに第1入力軸13を係合させる一方、解放状態ではこの係合を解除し、両者13、3aの間を遮断する。
【0044】
遊星歯車装置12は、シングルプラネタリ式のものであり、サンギヤ12aと、このサンギヤ12aの外周に回転自在に設けられた、サンギヤ12aよりも歯数の多いリングギヤ12bと、両ギヤ12a、12bに噛み合う複数(例えば3つ)のプラネタリギヤ12c(2つのみ図示)と、プラネタリギヤ12cを回転自在に支持する回転自在のキャリア12dとを有している。
【0045】
サンギヤ12aは、第1入力軸13の他端部に一体に取り付けられている。第1入力軸13の他端部にはさらに、前述したモータ4のロータ4bが一体に取り付けられており、第1入力軸13は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。以上の構成により、第1入力軸13、サンギヤ12aおよびロータ4bは、互いに一体に回転する。
【0046】
また、リングギヤ12bには、ロック機構BRが設けられている。このロック機構BRは、電磁式のものであり、ECU2によりON/OFFされ、ON状態のときに、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、OFF状態のときに、リングギヤ12bの回転を許容する。なお、ロック機構BRとして、シンクロクラッチを用いてもよい。
【0047】
キャリア12dは、中空の回転軸17に一体に取り付けられている。回転軸17は、第1入力軸13の外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。
【0048】
3速ギヤ14は、回転軸17に一体に取り付けられており、回転軸17およびキャリア12dと一体に回転自在である。また、5速ギヤ15および7速ギヤ16は、第1入力軸13に回転自在に設けられている。さらに、これらの3速ギヤ14、7速ギヤ16、および5速ギヤ15は、遊星歯車装置12と第1クラッチC1の間に、この順で並んでいる。
【0049】
また、第1入力軸13には、第1シンクロクラッチS1および第2シンクロクラッチS2が設けられている。第1シンクロクラッチS1は、スリーブS1a、シフトフォークおよびアクチュエータ(いずれも図示せず)を有している。第1シンクロクラッチS1は、ECU2による制御により、スリーブS1aを第1入力軸13の軸線方向に移動させることによって、3速ギヤ14または7速ギヤ16を、第1入力軸13に選択的に係合させる。
【0050】
第2シンクロクラッチS2は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されており、ECU2による制御により、スリーブS2aを第1入力軸13の軸線方向に移動させることによって、5速ギヤ15を第1入力軸13に係合させる。
【0051】
また、3速ギヤ14、5速ギヤ15、および7速ギヤ16には、第1受動ギヤ18、第2受動ギヤ19および第3受動ギヤ20がそれぞれ噛み合っており、これらの第1〜第3受動ギヤ18〜20は、出力軸21に一体に取り付けられている。出力軸21は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第1入力軸13と平行に配置されている。また、出力軸21には、ギヤ21aが一体に取り付けられており、このギヤ21aは、差動装置を有するファイナルギヤFGのギヤに噛み合っている。出力軸21は、これらのギヤ21aやファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに連結されている。
【0052】
以上の構成の第1変速機構11では、遊星歯車装置12、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18によって1速段および3速段のギヤ段が構成され、5速ギヤ15および第2受動ギヤ19によって5速段のギヤ段が、7速ギヤ16および第3受動ギヤ20によって7速段のギヤ段が、それぞれ構成されている。また、第1入力軸13に入力された動力は、これらの1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つによって変速され、出力軸21、ギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して駆動輪DWに伝達される。
【0053】
前述した第2変速機構31は、入力された動力を、2速段、4速段および6速段のうちの1つにより変速して駆動輪DWに伝達するものである。これらの2速段〜6速段の変速比は、その段数が大きいほど、より高速側に設定されている。具体的には、第2変速機構31は、第2クラッチC2、第2入力軸32、第2入力中間軸33、2速ギヤ34、4速ギヤ35、および6速ギヤ36を有しており、第2クラッチC2および第2入力軸32は、クランク軸3aと同軸状に配置されている。
【0054】
第2クラッチC2は、第1クラッチC1と同様、乾式多板クラッチであり、クランク軸3aに一体に取り付けられたアウターC2aと、第2入力軸32の一端部に一体に取り付けられたインナーC2bで構成されている。第2クラッチC2は、ECU2によって制御され、締結状態では、クランク軸3aに第2入力軸32を係合させる一方、解放状態ではこの係合を解除し、両者32と3aとの間を遮断する。
【0055】
第2入力軸32は、中空状に形成され、第1入力軸13の外側に相対的に回転自在に配置されるとともに、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。また、第2入力軸32の他端部には、ギヤ32aが一体に取り付けられている。
【0056】
第2入力中間軸33は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、第2入力軸32および前述した出力軸21と平行に配置されている。第2入力中間軸33には、ギヤ33aが一体に取り付けられており、ギヤ33aには、アイドラギヤ37が噛み合っている。アイドラギヤ37は、第2入力軸32のギヤ32aに噛み合っている。なお、図1では、図示の便宜上、アイドラギヤ37は、ギヤ32aから離れた位置に描かれている。第2入力中間軸33は、これらのギヤ33a、アイドラギヤ37およびギヤ32aを介して、第2入力軸32に連結されている。
【0057】
2速ギヤ34、6速ギヤ36、および4速ギヤ35は、第2入力中間軸33に回転自在に設けられ、この順で並んでおり、前述した第1受動ギヤ18、第3受動ギヤ20および第2受動ギヤ19にそれぞれ噛み合っている。さらに、第2入力中間軸33には、第3シンクロクラッチS3および第4シンクロクラッチS4が設けられている。両シンクロクラッチS3およびS4は、第1シンクロクラッチS1と同様に構成されている。
【0058】
第3シンクロクラッチS3は、ECU2による制御により、そのスリーブS3aを第2入力中間軸33の軸線方向に移動させることによって、2速ギヤ34または6速ギヤ36を、第2入力中間軸33に選択的に係合させる。第4シンクロクラッチS4は、ECU2による制御により、そのスリーブS4aを第2入力中間軸33の軸線方向に移動させることによって、4速ギヤ35を第2入力中間軸33に係合させる。
【0059】
以上の構成の第2変速機構31では、2速ギヤ34および第1受動ギヤ18によって2速段のギヤ段が構成され、4速ギヤ35および第2受動ギヤ19によって4速段のギヤ段が、6速ギヤ36および第3受動ギヤ20によって6速段のギヤ段が、それぞれ構成されている。また、第2入力軸32に入力された動力は、ギヤ32a、アイドラギヤ37およびギヤ33aを介して第2入力中間軸33に伝達され、第2入力中間軸33に伝達された動力は、これらの2速段、4速段および6速段のうちの1つによって変速され、出力軸21、ギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して駆動輪DWに伝達される。
【0060】
以上のように、第1および第2変速機構11、31では、変速された動力を駆動輪DWに伝達するための出力軸21が共用化されている。
【0061】
また、駆動力伝達装置には、リバース機構41が設けられており、リバース機構41は、リバース軸42と、リバースギヤ43と、スリーブS5aを有する第5シンクロクラッチS5を備えている。ハイブリッド車両Vを後進させる場合には、ECU2による制御により、スリーブS5aをリバース軸42の軸線方向に移動させることによって、リバースギヤ43をリバース軸42に係合させる。
【0062】
また、ECU2には、クランク角センサ61からCRK信号が入力される。このCRK信号は、エンジン3のクランク軸3aの回転に伴い、所定のクランク角ごとに出力されるパルス信号である。ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン回転数NEを算出する。また、ECU2には、電流電圧センサ62から、バッテリ52に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が、入力される。ECU2は、この検出信号に基づいて、バッテリ52の充電状態SOCを算出する。
【0063】
さらに、ECU2には、バッテリ温度センサ63から、バッテリ52の温度(以下「バッテリ温度」という)TBを表す検出信号が入力される。また、ECU2には、アクセル開度センサ64からハイブリッド車両Vのアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度APを表す検出信号が、車速センサ65から車速VPを表す検出信号が、入力される。また、ECU2には、カーナビゲーションシステム66に記憶された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報を表すデータが適宜、入力される。
【0064】
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されており、上述した各種のセンサ61〜65からの検出信号や、カーナビゲーションシステム66からのデータに応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、ハイブリッド車両Vの動作を制御する。なお、実施形態では、ECU2が選択手段および予測手段に相当する。
【0065】
以上の構成のハイブリッド車両Vの走行モードには、ENG走行モード、EV走行モード、アシスト走行モード、充電走行モード、減速回生モードおよびENG始動モードが含まれる。各走行モードにおけるハイブリッド車両Vの動作は、ECU2によって制御される。以下、これらの走行モードについて順に説明する。
【0066】
[ENG走行モード]
ENG走行モードは、エンジン3のみを動力源として用いる走行モードである。ENG走行モードでは、エンジン3の燃料噴射量、燃料噴射時期および点火時期を制御することによって、エンジン3の動力(以下「エンジン動力」という)が制御される。また、エンジン動力は、第1または第2変速機構11、31により変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0067】
まず、第1変速機構11により1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つでエンジン動力を変速する場合の動作について、順に説明する。この場合、上記のいずれの変速段においても、第1クラッチC1を締結状態に制御することによって、第1入力軸13をクランク軸3aに係合させるとともに、第2クラッチC2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第2入力軸33の係合を解除する。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0068】
1速段の場合には、ロック機構BRをON状態に制御することによって、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2によって、第1入力軸13に対する3速ギヤ14、5速ギヤ15および7速ギヤ16の係合を解除する。
【0069】
以上により、エンジン動力は、第1クラッチC1、第1入力軸13、サンギヤ12a、プラネタリギヤ12c、キャリア12d、回転軸17、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達され、さらにギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに伝達される。その際、上記のようにリングギヤ12bが回転不能に保持されているため、第1入力軸13に伝達されたエンジン動力は、サンギヤ12aとリングギヤ12bとの歯数比に応じた変速比で減速された後、キャリア12dに伝達され、さらに、3速ギヤ14と第1受動ギヤ18との歯数比に応じた変速比で減速された後、出力軸21に伝達される。その結果、エンジン動力は、上記の2つの変速比によって定まる1速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0070】
3速段の場合には、ロック機構BRをOFF状態に制御することによって、リングギヤ12bの回転を許容するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、3速ギヤ14のみを第1入力軸13に係合させる。
【0071】
以上により、エンジン動力は、第1入力軸13から3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。この場合、上記のように3速ギヤ14が第1入力軸13に係合しているため、サンギヤ12a、キャリア12dおよびリングギヤ12bは一体に空転する。このため、3速段の場合には、1速段の場合と異なり、エンジン動力は、遊星歯車装置12で減速されることなく、3速ギヤ14と第1受動ギヤ18との歯数比によって定まる3速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0072】
以下、同様に、5速段の場合には、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、5速ギヤ15のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、エンジン動力は、第1入力軸13から5速ギヤ15および第2受動ギヤ19を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ15、19の歯数比によって定まる5速段の変速比で変速される。
【0073】
7速段の場合には、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、7速ギヤ16のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、エンジン動力は、第1入力軸13から7速ギヤ16および第3受動ギヤ20を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ16、20の歯数比によって定まる7速段の変速比で変速される。
【0074】
次に、エンジン動力を第2変速機構31により2速段、4速段および6速段のうちの1つで変速する場合の動作について、順に説明する。この場合、これらのいずれの変速段においても、第1クラッチC1を解放状態に制御することによって、クランク軸3aへの第1入力軸13の係合を解除するとともに、第2クラッチC2を締結状態に制御することによって、第2入力軸32をクランク軸3aに係合させる。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0075】
2速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、2速ギヤ34のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2クラッチC2、第2入力軸32、ギヤ32a、アイドラギヤ37、ギヤ33a、第2入力中間軸33、2速ギヤ34および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達され、さらにギヤ21aおよびファイナルギヤFGを介して、駆動輪DWに伝達される。その際、エンジン動力は、2速ギヤ34と第1受動ギヤ18との歯数比によって定まる2速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0076】
以下、同様に、4速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、4速ギヤ35のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2入力中間軸33から4速ギヤ35および第2受動ギヤ19を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ35、19の歯数比によって定まる4速段の変速比で変速される。
【0077】
6速段の場合には、第3および第4シンクロクラッチS3、S4の制御によって、6速ギヤ36のみを第2入力中間軸33に係合させる。これにより、エンジン動力は、第2入力中間軸33から6速ギヤ36および第3受動ギヤ20を介して、出力軸21に伝達され、両ギヤ36、20の歯数比によって定まる6速段の変速比で変速される。
【0078】
[EV走行モード]
EV走行モードは、モータ4のみを動力源として用いる走行モードである。EV走行モードでは、バッテリ51からモータ4に供給される電力を制御することによって、モータ4の動力(以下「モータ動力」という)が制御される。また、モータ動力が、第1変速機構11により1速段、3速段、5速段および7速段のうちの1つで変速され、駆動輪DWに伝達される。この場合、これらのいずれの変速段においても、第1および第2クラッチC1、C2を解放状態に制御することによって、クランク軸3aに対する第1および第2入力軸13、32の係合を解除する。これにより、モータ4および駆動輪DWとエンジン3との間が遮断されるので、モータ動力がエンジン3に無駄に伝達されることがない。また、第5シンクロクラッチS5の制御によって、リバース軸42に対するリバースギヤ43の係合を解除する。
【0079】
1速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様、ロック機構BRをON状態に制御することによって、リングギヤ12bを回転不能に保持するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、第1入力軸13に対する3速ギヤ14、5速ギヤ15および7速ギヤ16の係合を解除する。
【0080】
以上により、モータ動力は、第1入力軸、サンギヤ12a、プラネタリギヤ12c、キャリア12d、回転軸17、3速ギヤ14および第1受動ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。その結果、モータ動力は、ENG走行モードの場合と同様、1速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0081】
3速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様、ロック機構BRをOFF状態に制御することによって、リングギヤ12bの回転を許容するとともに、第1および第2シンクロクラッチS1、S2の制御によって、3速ギヤ14のみを第1入力軸13に係合させる。これにより、モータ動力は、第1入力軸13から、3速ギヤ14および第1ギヤ18を介して、出力軸21に伝達される。その結果、モータ動力は、ENG走行モードの場合と同様、3速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達される。
【0082】
5速段または7速段の場合には、ENG走行モードの場合と同様にして、ロック機構BR、第1および第2シンクロクラッチS1、S2を制御する。これにより、モータ動力は、5速段または7速段の変速比で変速され、駆動輪DWに伝達されるなお、EV走行モード中、第1変速機構11の変速段は、モータ4の高い駆動効率が得られるように、設定される。
【0083】
[アシスト走行モード]
アシスト走行モードは、エンジン3をモータ4でアシストする走行モードである。アシスト走行モードでは、基本的に、エンジン3の良好な燃費が得られるように、エンジン3のトルク(以下「エンジントルク」という)を制御する。また、運転者から駆動輪DWに要求されるトルク(以下「要求トルク」という)TRQに対するエンジントルクの不足分が、モータ4のトルク(以下「モータトルク」という)によって補われる。要求トルクTRQは、検出されたアクセル開度APに応じて算出される。
【0084】
アシスト走行モード中、エンジン動力を第1変速機構11によって変速しているとき(奇数段のとき)には、モータ動力の変速比は、第1変速機構11で設定されている変速段の変速比と同じになる。一方、エンジン動力を第2変速機構31によって変速しているとき(偶数段のとき)には、モータ動力の変速比として、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかの変速比を選択することが可能である。
【0085】
[充電走行モード]
充電走行モードは、エンジン動力の一部をモータ4で電力に変換し、発電を行うとともに、発電した電力をバッテリ52に充電する走行モードである。充電走行モードでは、基本的に、エンジン3の良好な燃費が得られるように、エンジントルクを制御する。また、要求トルクTRQに対するエンジントルクの余剰分を用いて、モータ4で発電が行われ、発電した電力がバッテリ52に充電される(回生)。
【0086】
アシスト走行モードの場合と同様、充電走行モード中、エンジン動力を第1変速機構11によって変速しているとき(奇数段のとき)には、モータ動力の変速比は、第1変速機構11の変速段の変速比と同じになる。また、エンジン動力を第2変速機構12によって変速しているとき(偶数段のとき)には、モータ動力の変速比として、第1変速機構11の1速段、3速段、5速段または7速段のいずれかの変速比を選択することが可能である。
【0087】
次に、前述したENG走行モード、アシスト走行モードまたは充電走行モードの選択と、各走行モードにおける変速段の選択について説明する。
【0088】
まず、これらの選択に用いられる総合燃料消費率TSFCについて説明する。この総合燃料消費率TSFCは、ハイブリッド車両Vにおけるエネルギ源としての燃料が、ハイブリッド車両の走行エネルギに最終的に変換されることを想定したときの、最終的な走行エネルギに対する燃料量の比であり、したがって、その値が小さいほど、ハイブリッド車両Vの燃費がより良いことを示す。
【0089】
総合燃料消費率TSFCは、ENG走行モードのときには、エンジン3へのハイブリッド車両Vの走行用の供給燃料量、エンジン3の効率および第1および第2変速機構11、31の効率を用いて算出される。以下、これらの3つのパラメータを併せて「機関駆動パラメータ」という。
【0090】
また、総合燃料消費率TSFCは、アシスト走行モードのときには、上記の機関駆動パラメータに加えて、アシスト走行用の電力をバッテリ52に充電するためにエンジン3に過去に供給された過去供給燃料量、バッテリ52の放電効率、モータ4の駆動効率および第1および第2変速機構11、31の効率を用いて算出される。
【0091】
さらに、総合燃料消費率TSFCは、充電走行モードのときには、機関駆動パラメータに加えて、エンジン3へのモータ4による充電用の供給燃料量、エンジン3の効率、第1および第2変速機構11、31の効率、モータ4の発電効率、バッテリ52の充電効率、およびバッテリ52の電力を将来的にハイブリッド車両Vの走行に用いたときの効率である予測効率を用いて算出される。
【0092】
以上のように算出される総合燃料消費率TSFCは、エンジン3の燃料消費率だけでなく、第1および第2変速機構11、31の効率を反映し、アシスト走行モードまたは充電走行モードではさらに、モータ4の駆動効率および発電効率やバッテリ52の放電効率および充電効率などを反映する。
【0093】
次に、図3〜図5を参照しながら、前述したENG走行モード、アシスト走行モードおよび充電走行モードにおいて得られるハイブリッド車両Vの総合燃料消費率TSFCの関係について述べる。
【0094】
図3のマップは、ENG走行モードにおいて得られる総合燃料消費率TSFCを、車速VP(横軸)および要求トルクTRQ(縦軸)に対して規定したものである。図4のマップは、エンジン3をBSFCボトムトルクで運転したときに、アシスト走行モードまたは充電走行モードにおいて得られる総合燃料消費率TSFCを、車速VPおよび要求トルクTRQに対して規定したものである。このBSFCボトムトルクは、エンジン3の変速段と車速VPによって定まるエンジン回転数NEに対して、エンジン3の最小の燃料消費率が得られるトルクである。
【0095】
また、図5は、図3および図4のマップを同一の車速VPREFで要求トルクTRQに沿って切り取った総合燃料消費率TSFCを、3つの走行モードについて並記したものである。なお、図示の便宜上、図5では、総合燃料消費率TSFCの小さな側が、上側に示されており、したがって、同図の上側ほど、ハイブリッド車両Vの燃費が良いことを表す。
【0096】
これらの図から分かるように、ENG走行モードでは、総合燃料消費率TSFCは、エンジントルクがBSFCボトムトルクのときに最小になる。また、このBSFCボトムトルクを含むその近傍のトルク範囲では、ENG走行モードにおける総合燃料消費率TSFCが、アシスト走行モードまたは充電走行モードにおける総合燃料消費率TSFCよりも小さくなる(同図のハッチング部分)。これは、前述したように、このトルク範囲では、要求トルクTRQとBSFCボトムトルクとの差が小さく、モータ4の負荷が小さいことから、モータ4の駆動効率または発電効率が低いためである。
【0097】
以上から、このBSFCボトムトルクを含むトルク範囲では、アシスト走行または充電走行を行うよりも、エンジントルクをBSFCボトムトルクからずらしたエンジン走行を行う方が、より小さな総合燃料消費率TSFCが得られ、ハイブリッド車両Vの燃費が向上することが分かる。
【0098】
図6〜図8は、走行モードおよび変速段の選択に用いられる総合燃料消費率マップを示す。このような総合燃料消費率マップは、実際には、エンジン動力の変速段(1速段〜7速段)ごとに設定され、ECU2に記憶されており、図6〜図8はそのうちの3速段〜5速段の例である。
【0099】
これらの図に示すように、各総合燃料消費率マップは、図3および図4と同様、車速VP(横軸)および要求トルクTRQ(縦軸)に対して、総合燃料消費率TSFCを規定したものである。各総合燃料消費率マップには、ENG(エンジン)走行領域と、それよりも要求トルクTRQが大きな側のアシスト走行領域と、ENG走行領域よりも要求トルクTRQが下側の充電走行領域が設定されている。
【0100】
ENG走行領域は、エンジン動力の各変速段において、3つの走行モードの中でENG走行モードのときに最も小さな総合燃料消費率TSFCが得られる領域である。図5に関連して述べた関係から、ENG走行領域は、BSFCボトムトルクを結んだBSFCボトムラインを含んでおり、このBSFCボトムラインは、ENG走行領域を横切るように延びている。
【0101】
同様に、アシスト走行領域は、3つの走行モードの中でアシスト走行モードのときに最も小さな総合燃料消費率TSFCが得られる領域である。アシスト走行領域とENG走行領域との境界線は、アシスト禁止ラインになっている。以上の定義から明らかなように、このアシスト禁止ラインは、ENG走行モードのときに得られる総合燃料消費率TSFCとアシスト走行モードのときに得られる総合燃料消費率TSFCが互いに一致する点を結んだものである。
【0102】
充電走行領域は、3つの走行モードの中で充電走行モードのときに最も小さな総合燃料消費率TSFCが得られる領域である。充電走行領域とENG走行領域との境界線は、充電禁止ラインになっている。以上の定義から明らかなように、この充電禁止ラインは、ENG走行モードのときに得られる総合燃料消費率TSFCと充電走行モードのときに得られる総合燃料消費率TSFCが互いに一致する点を結んだものである。図9は、以上の関係を示すために、図6〜図8のマップを同一の車速VPREFで要求トルクTRQに沿って切り取った総合燃料消費率TSFCを並記したものである。
【0103】
以上の関係から、エンジン動力の変速段に対応する総合燃料消費率マップにおいて、エンジン車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせがENG走行領域に属する場合には、ENG走行モードを選択することにより、アシスト走行領域に属する場合には、アシスト走行モードを選択することにより、充電走行領域に属する場合には、充電走行モードを選択することにより、そのエンジン動力の変速段において最小の総合燃料消費率TSFCが得られる。
【0104】
また、エンジン動力の変速段が第2変速機構31で設定される偶数段の場合、このエンジン動力の変速段と第1変速機構11で設定されるモータ動力の変速段との組み合わせ(以下「変速パターン」という)を任意に選択することが可能であるとともに、総合燃料消費率TSFCは変速パターンに応じて異なる。このため、図7に示すように、エンジン動力の偶数段用の総合燃料消費率マップでは、アシスト走行領域および充電走行領域は、最小の総合燃料消費率TSFCが得られる変速パターンごとに、複数の領域に区分されている。なお、同図中の例えば「ENG4/MOT3」は、エンジン動力の変速段が4速段で、モータ動力の変速段が3速段である変速パターンを示す。
【0105】
したがって、エンジン動力の変速段が偶数段の場合には、以上のように設定された総合燃料消費率マップを、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて検索し、両者の組み合わせが属する領域を求めることによって、最小の総合燃料消費率が得られる走行モードと、走行モードがアシスト走行モードまたは充電走行モードのときの変速パターンを選択することができる。
【0106】
図10は、上述した総合燃料消費率マップを用い、エンジン動力の変速段に応じて走行モードを選択する走行モード選択処理を示す。本処理は、ECU2により、所定時間ごとに実行される。
【0107】
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)において、そのときに設定されているエンジン動力の変速段と車速VPに応じて、アシスト禁止判定値TASTNGを算出する。具体的には、このエンジン動力の変速段用の総合燃料消費率マップを検索し、車速VPに対応するアシスト禁止ライン上の要求トルクTRQの値を読み出し、アシスト禁止判定値TASTNGとして設定する。
【0108】
次に、エンジン動力の変速段および車速VPに応じて、充電禁止判定値TCHGNGを算出する(ステップ2)。具体的には、総合燃料消費率マップを検索し、車速VPに対応する充電禁止ライン上の要求トルクTRQの値を読み出し、充電禁止判定値TCHGNGとして設定する。
【0109】
次に、要求トルクTRQがアシスト禁止判定値TASTNGよりも大きいか否かを判別する(ステップ3)。この答がYESのとき、すなわち、要求トルクTRQがアシスト禁止ラインよりも上側にあり、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせがアシスト走行領域に属するときには、走行モードとして、アシスト走行モードを選択し(ステップ4)、本処理を終了する。
【0110】
上記ステップ3の答がNOのときには、要求トルクTRQが充電禁止判定値TCHGNGよりも小さいか否かを判別する(ステップ5)。この答がNOのとき、すなわち、要求トルクTRQが、アシスト禁止ライン以下、かつ充電禁止ライン以上で、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせがENG走行領域に属するときには、走行モードとして、ENG走行モードを選択し(ステップ6)、本処理を終了する。
【0111】
また、上記ステップ5の答がYESのとき、すなわち、要求トルクTRQが充電禁止ラインよりも下側にあり、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせが充電走行領域に属するときには、走行モードとして、充電走行モードを選択し(ステップ7)、本処理を終了する。
【0112】
以上の処理により、エンジン動力の変速段、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて、最小の総合燃料処理率TSFCが得られる走行モードを適切に選択することができる。
【0113】
なお、上述した処理は、すでに決定されたエンジン動力の変速段に応じて、走行モードを選択するものであるが、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて、走行モードおよびエンジン動力の変速段などを同時に選択することもできる。
【0114】
すなわち、この場合にはまず、車速VPおよび要求トルクTRQに応じ、すべての総合燃料消費率マップを検索することによって、それぞれのエンジン動力の変速段における総合燃料消費率TSFCを算出する。次に、算出されたこれらの総合燃料消費率TSFCを互いに比較し、最小の総合燃料消費率TSFCとそれを含む総合燃料消費率マップおよび走行領域を特定する。そして、特定された走行領域に対応する走行モードを選択するとともに、特定された総合燃料消費率マップに対応するエンジン動力の変速段を選択する。また、エンジン動力の変速段が偶数段の場合には、変速パターンを併せて選択する。
【0115】
以上により、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて、最小の総合燃料消費率TSFCが得られる走行モードおよび変速段を適切に選択することができる。
【0116】
さらに、上述した例は、エンジン動力の変速段ごとに設定された複数の総合燃料消費率マップを用いるものであるが、これらの複数の総合燃料消費率マップを統合した1つの総合燃料消費率マップを用いるようにしてもよい。すなわち、この場合には、上記の複数の総合燃料消費率マップをすべて重ね合わせ、それらのうち、最小の総合燃料消費率TSFCを示す部分を残すことによって、1つの総合燃料消費率マップをあらかじめ設定する。そして、そのように統合された総合燃料消費率マップを、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて検索し、両者の組み合わせが属する領域を特定することによって、1つの総合燃料消費率マップから、最小の総合燃料消費率TSFCが得られる走行モードおよび変速段を容易かつ適切に選択することができる。
【0117】
また、ECU2は、検出されたバッテリ52の充電状態SOCが所定値以下のときには、充電状態SOCを回復させるために、充電走行モードにおいて、モータ4による回生量を増大させるようにモータ4の動作を制御する。この場合、回生量の増大分を補うように、エンジントルクを増大させる。
【0118】
さらに、アシスト走行モード中、検出されたバッテリ温度TBが所定温度以上になったときには、モータ4の出力を制限し、モータ4によるエンジン3のアシストを制限する。この場合、アシストの制限分を補うように、エンジントルクを増大させる。
【0119】
また、エンジン動力の変速段が偶数段の場合において、アクセル開度APの変化量が所定値よりも大きいときには、モータ動力の変速段として、エンジン動力の変速段よりも低速側の第1変速機構11の変速段を用いたアシスト走行モードを選択する。
【0120】
さらに、ECU2は、前述したカーナビゲーションシステム66から入力された、ハイブリッド車両Vが走行している周辺の道路情報に基づいて、ハイブリッド車両Vの走行状況を予測する。そして、予測されたハイブリッド車両Vの走行状況に応じて、変速段の選択を行う。
【0121】
以上のように、本実施形態によれば、エンジン動力の変速段ごとにあらかじめ設定され、記憶された、図6〜図8に示すような総合燃料消費率マップに基づき、要求トルクTRQがアシスト禁止ライン以下かつ充電禁止ライン以上で、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせがENG走行領域に属するときには、ENG走行モードを選択する(図10のステップ3、5、6)。したがって、要求トルクTRQがエンジン3のBSFCボトムトルクに近い場合でも、最小の総合燃料消費率を得ることができる。
【0122】
また、要求トルクTRQがアシスト禁止ラインよりも上側にあり、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせがアシスト走行領域に属するときには、アシスト走行モードを選択し(ステップ3、4)、要求トルクTRQが充電禁止ラインよりも下側にあり、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせがアシスト走行領域に属するときには、充電走行モードを選択する(ステップ5、7)。このように、要求トルクTRQがエンジン4のBSFCボトムトルクから遠い場合には、アシスト走行モードまたは充電走行モードを選択することによって、最小の総合燃料消費率を得ることができる。以上のように、要求トルクTRQとエンジン3のBSFCボトムトルクとの関係に応じて、最適な走行モードを選択し、最小の総合燃料消費率を得ることによって、ハイブリッド車両Vの燃費を向上させることができる。
【0123】
また、エンジン動力の変速段が偶数段の場合において、アシスト走行モードまたは充電走行モードを選択するときには、アシスト走行領域または充電走行領域内に区分された複数の領域から、車速VPと要求トルクTRQとの組み合わせが属する領域を特定することによって、最小の総合燃料消費率が得られる最適な変速パターンを選択することができる。
【0124】
さらに、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて、すべての総合燃料消費率マップを検索し、最小の総合燃料消費率TSFCを示す総合燃料消費率マップを特定することによって、最小の総合燃料消費率が得られる最適なエンジン動力の変速段を容易に選択することができる。
【0125】
また、上述した内容の総合燃料消費率マップをあらかじめ準備し、車速VPおよび要求トルクTRQに応じて参照するだけで、複雑な演算などを必要とすることなく、最小の総合燃料消費率TSFCが得られる走行モードおよび変速段を、容易かつ適切に決定することができる。
【0126】
また、総合燃料消費率TSFCを算出する際には、走行モードごとに、前述したパラメータが用いられる。したがって、エンジン3、第1および第2変速機構11、31、モータ4およびバッテリ52の現在、過去および将来における損失などを反映させながら、総合燃料消費率TSFCを精度良く算出でき、それに応じて、ハイブリッド車両Vの燃費をさらに向上させることができる。
【0127】
さらに、バッテリ52の充電状態SOCが所定値以下のときに、充電走行モードにおいて、モータ4による回生量を増大させるようにモータ4の動作を制御するので、低下したバッテリ52の充電状態SOCを確実に回復させることができる。また、バッテリ温度TBが所定温度以上のときに、モータ4の出力を制限するので、バッテリ温度TBの上昇を抑制することができる。さらに、エンジン動力の変速段が偶数段の場合において、アクセル開度APの変化量が所定値よりも大きくなったときに、モータ動力の変速段として、エンジン動力の変速段よりも低速側の第1変速機構11の変速段を用いたアシスト走行モードを選択するので、加速要求に見合ったより大きなトルクを駆動輪DWに伝達でき、ドライバビリティを向上させることができる。
【0128】
さらに、カーナビゲーションシステム66からのデータに基づいて、ハイブリッド車両Vの走行状況を予測し、その結果に応じて変速段を選択するので、予測されるハイブリッド車両の走行状況に適した変速段をあらかじめ選択することができる。例えば、ハイブリッド車両Vが下り坂を走行すると予測されるときには、モータ4の高い発電効率が得られるような変速段を選択し、上り坂を走行すると予測されるときには、より大きなトルクを出力することが可能な低速側の変速段を選択することができる。
【0129】
また、本発明は、図11に示すハイブリッド車両V’にも適用可能である。同図において、図1に示すハイブリッド車両Vと同じ構成要素については、同じ符号を付している。このハイブリッド車両V’は、ハイブリッド車両Vと比較して、前述した第1および第2変速機構11、31に代えて、変速機構71を備える点が主に異なる。
【0130】
この変速機構71は、有段式の自動変速機であり、入力軸72および出力軸73を有している。入力軸72は、クラッチCを介してクランク軸3aに連結されており、入力軸72には、モータ4のロータ4bが一体に取り付けられている。クラッチCは、第1および第2クラッチC1、C2と同様の乾式多板クラッチである。
【0131】
また、出力軸73には、ギヤ73aが一体に取り付けられており、このギヤ73aは、前述したファイナルギヤFGのギヤに噛み合っている。出力軸73は、これらのギヤ73aやファイナルギヤFGを介して駆動輪DW、DWに連結されている。以上の構成の変速機構71では、入力軸72には、エンジン動力およびモータ動力が入力されるとともに、入力された動力は、複数の変速段(例えば1速段〜7速段)の1つで変速され、駆動輪DW、DWに伝達される。また、変速機構71の動作は、ECU2によって制御される。
【0132】
このハイブリッド車両V’に本発明による制御装置を適用した場合にも、走行モードや変速段の選択が、上述した制御装置1の場合と同様にして行われるので、その詳細な説明については省略する。これにより、上述した実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0133】
なお、変速機構71を、エンジン動力およびモータ動力の双方を変速した状態で駆動輪DWに伝達するように構成しているが、エンジン動力のみを変速した状態で駆動輪DWに伝達するように構成してもよい。あるいは、エンジン動力を変速した状態で駆動輪DWに伝達する変速機構と、モータ動力を変速した状態で駆動輪DWに伝達する変速機構を、それぞれ別個に設けてもよい。
【0134】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、エンジン走行領域、アシスト走行領域および充電走行領域を設定するためのパラメータとして、ハイブリッド車両の総合燃料消費率TSFCを用いているが、これに限らず、ハイブリッド車両の燃料消費量を用いてもよい。また、実施形態では、上記の3つの走行領域を総合燃料消費率マップ中に設定し、マップ化しているが、これに限らない。例えば、エンジン走行領域とアシスト走行領域との境界線であるアシスト禁止ラインと、エンジン走行領域と充電走行領域との境界線である充電禁止ラインを、ECU2に記憶し、これらの2つのアシスト・充電禁止ラインと要求トルクTRQとの比較結果に基づいて、走行モードを選択してもよい。
【0135】
さらに、モータ4の出力の制限を、バッテリ温度TBが所定温度以上のときに行っているが、これに代えて、または、これとともに、センサなどで検出されたモータ4の温度がそれに対する所定温度以上のときに行ってもよい。それにより、モータ4の温度の上昇を抑制することができる。
【0136】
また、実施形態では、第1および第2変速機構11、31のそれぞれの複数の変速段を、奇数段および偶数段に設定しているが、これとは逆に、偶数段および奇数段に設定してもよい。さらに、実施形態では、第1および第2変速機構11、31として、変速された動力を駆動輪DWに伝達するための出力軸21が共用化されたタイプのものを用いているが、出力軸が別個に設けられたタイプのものを用いてもよい。また、実施形態では、クラッチC、第1および第2クラッチC1、C2は、乾式多板クラッチであるが、湿式多板クラッチや、電磁クラッチでもよい。
【0137】
さらに、実施形態では、本発明における電動機として、ブラシレスDCモータであるモータ4を用いているが、発電可能な他の適当な電動機、例えばACモータを用いてもよい。また、実施形態では、本発明における蓄電器は、バッテリ52であるが、充電および放電可能な他の適当な蓄電器、例えばキャパシタでもよい。さらに、実施形態では、本発明における内燃機関として、ガソリンエンジンであるエンジン3を用いているが、ディーゼルエンジンや、LPGエンジンを用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0138】
V ハイブリッド車両
V’ ハイブリッド車両
1 制御装置
2 ECU(選択手段、予測手段)
3 エンジン(内燃機関)
3a クランク軸(出力軸)
4 モータ(電動機)
DW 駆動輪
11 第1変速機構
13 第1入力軸
31 第2変速機構
32 第2入力軸
C1 第1クラッチ
C2 第2クラッチ
52 バッテリ(蓄電器)
66 カーナビゲーションシステム
71 変速機構
VP 車速(ハイブリッド車両の速度)
TSFC ハイブリッド車両の総合燃料消費率
TRQ 要求トルク(要求駆動力)
TB バッテリ温度(蓄電器の温度)
SOC バッテリの充電状態(蓄電器の充電状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記ハイブリッド車両の走行モードは、前記内燃機関の動力のみで走行するエンジン走行モードと、前記内燃機関の動力を前記電動機の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、前記内燃機関の動力の一部を用いて前記電動機および前記蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、
前記ハイブリッド車両の速度および前記駆動輪に要求される要求駆動力に対して、前記内燃機関の動力の変速段ごとに、前記走行モードの中で前記エンジン走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域であるエンジン走行領域と、前記走行モードの中で前記アシスト走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域であるアシスト走行領域と、前記走行モードの中で前記充電走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域である充電走行領域を設定する走行領域設定手段と、
前記ハイブリッド車両の速度と前記要求駆動力との組み合わせが属する走行領域に対応する走行モードを選択するとともに、前記内燃機関の動力の変速段として、燃料消費が最も小さな変速段を選択する選択手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記燃料消費は、前記エンジン走行モードのときには、前記内燃機関への前記ハイブリッド車両の走行用の供給燃料量、当該内燃機関の効率および前記第1および第2変速機構の効率である機関駆動パラメータを用いて算出され、前記アシスト走行モードのときには、前記機関駆動パラメータに加えて、アシスト走行用の電力を前記蓄電器に充電するために前記内燃機関に過去に供給された過去供給燃料量、前記蓄電器の放電効率、前記電動機の駆動効率および前記第1および第2変速機構の効率を用いて算出され、前記充電走行モードのときには、前記機関駆動パラメータに加えて、前記内燃機関への前記電動機による充電用の供給燃料量、前記内燃機関の効率、前記第1および第2変速機構の効率、前記電動機の発電効率、前記蓄電器の充電効率、および前記蓄電器の電力を将来的に前記ハイブリッド車両の走行に用いたときの効率である予測効率を用いて算出されることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
動力源としての内燃機関および発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、入力された動力を複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な変速機構とを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記ハイブリッド車両の走行モードは、前記内燃機関の動力のみで走行するエンジン走行モードと、前記内燃機関の動力を前記電動機の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、前記内燃機関の動力の一部を用いて前記電動機および前記蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、
前記ハイブリッド車両の速度および前記駆動輪に要求される要求駆動力に対して、変速段ごとに、前記内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費ラインを含み、前記走行モードの中で前記エンジン走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域であるエンジン走行領域と、当該エンジン走行領域よりも前記要求駆動力が大きな側に配置されたアシスト走行領域と、前記エンジン走行領域よりも前記要求駆動力が小さな側に配置された充電走行領域を設定する走行領域設定手段と、
前記ハイブリッド車両の速度と前記要求駆動力との組み合わせが前記エンジン走行領域内に属するときに、前記走行モードとして、前記エンジン走行モードを選択する選択手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御装置において、
前記ハイブリッド車両の走行モードは、前記内燃機関の動力のみで走行するエンジン走行モードと、前記内燃機関の動力を前記電動機の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、前記内燃機関の動力の一部を用いて前記電動機および前記蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、
前記ハイブリッド車両の速度および前記駆動輪に要求される要求駆動力に対して、前記内燃機関の動力の変速段ごとに、前記内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費ラインを含み、前記走行モードの中で前記エンジン走行モードのときに小さな燃料消費が得られる領域であるエンジン走行領域と、当該エンジン走行領域よりも前記要求駆動力が大きな側に配置されたアシスト走行領域と、前記エンジン走行領域よりも前記要求駆動力が小さな側に配置された充電走行領域を設定する走行領域設定手段と、
前記ハイブリッド車両の速度と前記要求駆動力との組み合わせが前記エンジン走行領域に属するときに、前記走行モードとして、前記エンジン走行モードを選択する選択手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
前記内燃機関の動力の変速段が前記第2変速機構の変速段である場合、当該変速段用の前記アシスト走行領域および充電走行領域はそれぞれ、最も小さな燃料消費が得られる、前記内燃機関の動力の変速段と前記第1変速機構における前記電動機の動力の変速段との組み合わせである変速パターンごとに、複数の領域に区分されており、
前記選択手段は、前記複数の領域のうち、前記ハイブリッド車両の速度と前記要求駆動力との組み合わせが属する領域に対応する変速パターンを選択することを特徴とする、請求項1または4に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
前記電動機および前記蓄電器の少なくとも一方の温度が、当該少なくとも一方に対して設定された所定温度以上のときに、前記電動機の出力が制限されることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
前記蓄電器の充電状態が所定値以下のときに、前記電動機による回生量を増大させるように前記電動機の動作を制御することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項8】
前記ハイブリッド車両には、当該ハイブリッド車両が走行している周辺の道路情報を表すデータを記憶するカーナビゲーションシステムが設けられており、
当該カーナビゲーションシステムに記憶されたデータに基づき、前記ハイブリッド車両の走行状況を予測する予測手段をさらに備え、
当該予測されたハイブリッド車両の走行状況に応じて、前記変速段の選択を行うことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項9】
前記内燃機関の動力の変速段が前記第2変速機構の変速段である場合において、アクセルペダルの開度の変化量が所定値よりも大きいときには、前記電動機の動力の変速段として、前記内燃機関の動力の変速段よりも低速側の第1変速機構の変速段を用いたアシスト走行モードを選択することを特徴とする、請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項10】
内燃機関と、発電可能な電動機と、当該電動機との間で電力の授受が可能な蓄電器と、前記内燃機関の機関出力軸および前記電動機からの動力を第1入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で駆動輪に伝達可能な第1変速機構と、前記機関出力軸からの動力を第2入力軸で受け取り、複数の変速段のいずれか1つで変速した状態で前記駆動輪に伝達可能な第2変速機構と、前記機関出力軸と前記第1変速機構との間を係合可能な第1クラッチと、前記機関出力軸と前記第2変速機構との間を係合可能な第2クラッチとを有するハイブリッド車両の制御方法において、
前記ハイブリッド車両の走行モードは、前記内燃機関の動力のみで走行するエンジン走行モードと、前記内燃機関の動力を前記電動機の動力でアシストしながら走行するアシスト走行モードと、前記内燃機関の動力の一部を用いて前記電動機および前記蓄電器で充電しながら走行する充電走行モードを含み、
前記ハイブリッド車両の速度および前記駆動輪に要求される要求駆動力に対して、前記内燃機関の動力の変速段ごとに、記内燃機関の燃料消費が最小になる最適燃費ラインよりも前記要求駆動力が大きな側に、前記エンジン走行モードのときに得られる燃料消費と前記アシスト走行モードのときに得られる燃料消費が互いに一致する点を結んだアシスト禁止ラインを設定するとともに、前記最適燃費ラインよりも前記要求駆動力が小さな側に、前記エンジン走行モードのときに得られる燃料消費と前記充電走行モードのときに得られる燃料消費が互いに一致する点を結んだ充電禁止ラインを設定し、
前記内燃機関の動力の変速段、前記ハイブリッド車両の速度および前記要求駆動力に応じ、当該要求駆動力が前記アシスト禁止ライン以下で前記充電禁止ライン以上のときに、前記エンジン走行モードを選択し、前記要求駆動力が前記アシスト禁止ラインの上側にあるときに、前記アシスト走行モードを選択し、前記要求駆動力が前記充電禁止ラインの下側にあるときに、前記充電走行モードを選択することを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−52804(P2013−52804A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193025(P2011−193025)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】