ハイブリッド車両の制御装置
【課題】バッテリの内部抵抗が高くても過電圧を抑制し、バッテリを保護する。
【解決手段】内燃機関10と、電動発電機20と、前記内燃機関の出力軸及び前記電動発電機の出力軸に直接的又は間接的に接続された駆動車輪54と、前記電動発電機と前記駆動車輪との間の駆動力を断接するクラッチ25と、前記電動発電機に電力を供給するとともに前記電動発電機からの電力を充電するバッテリ30とを備えたハイブリッド車両に対し、制御信号を出力する制御装置であって、前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、前記電動発電機を回生駆動する要求と、前記バッテリの内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、前記内燃機関の回転数制御を実行する制御手段60を備える。
【解決手段】内燃機関10と、電動発電機20と、前記内燃機関の出力軸及び前記電動発電機の出力軸に直接的又は間接的に接続された駆動車輪54と、前記電動発電機と前記駆動車輪との間の駆動力を断接するクラッチ25と、前記電動発電機に電力を供給するとともに前記電動発電機からの電力を充電するバッテリ30とを備えたハイブリッド車両に対し、制御信号を出力する制御装置であって、前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、前記電動発電機を回生駆動する要求と、前記バッテリの内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、前記内燃機関の回転数制御を実行する制御手段60を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)と電動発電機(モータジェネレータ)とを駆動源とするパラレルハイブリッド車両において、モータジェネレータの回転数制御を実行しながら、回転数制御モータトルク目標値が第2クラッチトルク容量基本目標値より小さいときは、回転数制御第2クラッチトルク容量基本目標値を当該第2クラッチトルク容量基本目標値より大きな値に修正し、これにより伝達トルクと実際値との偏差をゼロに近づけるものが知られている(特許文献1の[0083])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−83417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、エンジンとモータジェネレータとを駆動源とするパラレルハイブリッド車両において、アイドル回転数を維持しながらモータジェネレータに対して発電要求があった場合に、特にバッテリの内部抵抗が高いと、モータジェネレータのトルク変動に対してバッテリの電圧変動が大きくなり、その結果バッテリが過電圧になるおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリの内部抵抗が高くても過電圧を抑制し、バッテリを保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関と電動発電機とを駆動源とし、電動発電機と駆動輪との間にクラッチを備え、電動発電機との間で放電及び充電するバッテリを備えるハイブリッド車両において、少なくともアイドル回転数での駆動要求があり、電動発電機への発電要求があり、かつバッテリの内部抵抗が所定値以上である場合は、内燃機関の回転数制御を実行することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内燃機関の回転数制御を実行すると電動発電機のトルクはフィードフォーワード入力できるので、電動発電機のトルク変動が抑制される。この結果、バッテリの内部抵抗が高くても過電圧になることを抑制でき、バッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るハイブリッド車両のパワートレーンを示す図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態に係るハイブリッド車両のパワートレーンを示す図である。
【図4】図1の統合コントロールユニットの細部を示す制御ブロック図である。
【図5】図4の目標駆動トルク演算部で参照される目標駆動力マップの一例を示す図である。
【図6】図4の目標走行モード演算部で参照される走行モードマップの一例を表す図である。
【図7】モータジェネレータのトルク変動により生じるバッテリの過電圧の課題を説明する図である。
【図8】図4の統合コントロールユニットの制御内容を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS5のエンジン回転数制御実施判定を示す判定ブロック図である。
【図10】図8のステップS5のエンジン回転数制御の切換マップを示す図である。
【図11】図8のステップS5のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】図8のステップS5の処理結果を示すタイムチャートである。
【図13】図8のステップS6のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】図8のステップS6のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るハイブリッド車両1は、内燃機関と電動発電機といった複数の動力源を車両の駆動に使用するパラレル方式自動車であり、図1に示す本例のハイブリッド車両1は、内燃機関(以下、エンジン)10、第1クラッチ15、電動発電機(以下、モータジェネレータ)20、第2クラッチ25、バッテリ30、インバータ35、自動変速機40、プロペラシャフト51、ディファレンシャルギアユニット52、ドライブシャフト53、および左右の駆動輪54を備える。
【0010】
エンジン10は、ガソリン、軽油その他の燃料を燃焼させて駆動エネルギを出力する駆動源の一つであり、エンジンコントロールユニット70からの制御信号に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度や燃料噴射バルブの燃料噴射量等を制御する。
【0011】
第1クラッチ15は、エンジン10の出力軸とモータジェネレータ20の回転軸との間に介装され、エンジン10とモータジェネレータ20との間の動力伝達を断接(ON/OFF)する。第1クラッチ15としては、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチなどを例示することができる。第1クラッチ15において、統合コントロールユニット60からの制御信号に基づいて油圧ユニット16の油圧が制御され、これにより第1クラッチ15のクラッチ板が締結(スリップ状態も含む。)又は解放する。なお、第1クラッチ15に乾式クラッチを採用してもよい。
【0012】
モータジェネレータ20は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルが巻きつけられた同期型モータジェネレータである。このモータジェネレータ20には、ロータ回転角を検出するレゾルバなどの回転角センサ21が設けられている。モータジェネレータ20は、電動機としても機能するし発電機としても機能する。インバータ35から三相交流電力が供給されている場合には、モータジェネレータ20は回転駆動する(力行)。
【0013】
一方、外力によってロータが回転している場合には、モータジェネレータ20は、ステータコイルの両端に起電力を生じさせることで交流電力を生成する(回生)。モータジェネレータ20によって発電された交流電力は、インバータ35によって直流電力に変換された後に、バッテリ30に充電される。また、回生中においてモータジェネレータ20には負のトルクが発生するので、駆動輪に対して制動機能をも奏する。
【0014】
バッテリ30は、複数のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などを直列又は並列に接続した組電池を例示することができる。バッテリ30には電流・電圧センサ31と内部抵抗値を推定するための温度センサ32が取り付けられ、これらの検出結果をモータコントロールユニット80に出力する。
【0015】
第2クラッチ25は、モータジェネレータ20と左右の駆動輪54との間に介装され、モータジェネレータ20と左右の駆動輪54との間の動力伝達を断接(ON/OFF)する。第2クラッチ25は、上述の第1クラッチ15と同様に、たとえば湿式多板クラッチなどを例示することができる。第2クラッチ25において、トランスミッションコントロールユニット90からの制御信号に基づいて油圧ユニット26の油圧が制御され、これにより第2クラッチ25のクラッチ板が締結(スリップ状態も含む。)/解放する。
【0016】
自動変速機40は、前進7速、後退1速などといった変速比を段階的に切り換える有段式変速機であり、車速やアクセル開度等に応じて変速比を自動的に切り換える。自動変速機40の変速比は、トランスミッションコントロールユニット90からの制御信号に基づいて制御される。
【0017】
第2クラッチ25は、図1に示すように、自動変速機40の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用したものとすることができる。またこれに代えて第2クラッチ25を自動変速機40とは別の専用のクラッチとしてもよい。たとえば図2に示すように、第2クラッチ25を、モータジェネレータ20の出力軸と自動変速機40の入力軸との間に介装した専用のクラッチとしてもよい。あるいは、図3に示すように、第2クラッチ25を、自動変速機40の出力軸とプロペラシャフト51との間に介装した専用のクラッチとしてもよい。なお、図2及び図3は、他の実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示す図であり、図2及び図3においては、パワートレーン以外の構成は図1と同様であるため、パワートレーンのみを示す。
【0018】
なお、本例の自動変速機40は一般的な有段式自動変速機を用いることができるのでその詳細な構成は省略するが、自動変速機40の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用して第2クラッチ25を構成する場合は、自動変速機40内の摩擦締結要素のうち現変速段で締結させるべき摩擦締結要素を第2クラッチ25として構成する。
【0019】
また、自動変速機40として、上述した前進7速、後退1速の有段式自動変速機に特に限定されず、その他のたとえば前進5速、後退1速の有段階の変速機であってもよい。第2クラッチ25を自動変速機40の摩擦締結要素を流用しないで構成する場合は、無段式自動変速機を用いることもできる。
【0020】
図1に戻り、自動変速機40の出力軸は、プロペラシャフト51、ディファレンシャルギアユニット52、および左右のドライブシャフト53を介して、左右の駆動輪54に連結されている。なお、図1において55は左右の操舵前輪である。また、図1〜図3においては、後輪駆動のハイブリッド車両を例示したが、前輪駆動のハイブリッド車両や四輪駆動のハイブリッド車両とすることも可能である。
【0021】
本実施形態におけるハイブリッド車両1は、駆動源をエンジン10及び/又はモータジェネレータ20に設定することにより、換言すれば第1および第2のクラッチ15,25の締結/スリップ/解放状態に応じて、以下に説明する各走行モードに切り換えることができる。
【0022】
モータジェネレータ使用走行モード(以下、EV走行モード)は、第1クラッチ15を解放させると共に第2クラッチ25を締結させて、モータジェネレータ20の動力のみを駆動源として走行するモードである。
【0023】
エンジン使用走行モード(以下、HEV走行モード)は、第1クラッチ15および第2クラッチ25をいずれも締結させて、少なくともエンジン10の動力を駆動源に含みながら走行するモードである。
【0024】
上記EV走行モード及びHEV走行モード以外に、第1クラッチ15を締結させると共に第2クラッチ25をスリップ状態にして、エンジン10の動力を駆動源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、WSC走行モード,Wet Start Clutch)を設定してもよい。WSC走行モードは、特にバッテリ30の充電状態SOC(State of Charge)が低下している場合や、エンジン10の冷却水の温度が低い場合にクリープ走行を達成することができるモードである。
【0025】
また、上記EV走行モード及びHEV走行モード以外に、エンジン10を作動させた状態で第1クラッチ15を解放させると共に、第2クラッチ25をスリップ状態として、モータジェネレータ20の動力のみを動力源として走行するモータ使用スリップ走行モード(以下、MWSC走行モード)を設定してもよい。上述したWSC走行モードにおいて、路面勾配が所定値以上における登坂路等である場合に、ドライバがアクセルペダルを調整し車両停止状態または微速発進状態を維持する状態(いわゆるストール停車状態)が継続すると、第2クラッチ25のスリップ量が過多である状態が継続し、そのため、第2クラッチ25が過熱するおそれがある。エンジン回転数をアイドル回転数よりも小さくすると、エンジンストールが発生するためである。そのため、本実施形態では、このような場合において、第2クラッチ25が過熱されてしまうことを防止するためにMWSC走行モードが選択される。
【0026】
なお、EV走行モードからHEV走行モードに移行する際には、解放していた第1クラッチ15を締結し、モータジェネレータ20のトルクを利用することで、エンジン始動を行なうことができる。
【0027】
また、HEV走行モードには、エンジン走行モード、モータアシスト走行モード、および走行発電モードが設定されている。エンジン走行モードでは、モータジェネレータ20を駆動させずに、エンジン10のみを動力源として駆動輪54を動かす。モータアシスト走行モードでは、エンジン10とモータジェネレータ20との両方を駆動させて、これら2つを動力源として駆動輪54を動かす。走行発電モードでは、エンジン10を動力源として駆動輪54を動かすと同時に、モータジェネレータ20を発電機として機能させ、バッテリ30を充電する。
【0028】
なお、以上に説明したモードの他に、停車時において、エンジン10の動力を利用してモータジェネレータ20を発電機として機能させ、バッテリ30を充電したり電装品へ電力を供給したりする発電モードを備えてもよい。
【0029】
本実施形態におけるハイブリッド車両1の制御系は、図1に示すように、統合コントロールユニット60、エンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80、およびトランスミッションコントロールユニット90を備える。これらの各コントロールユニット60,70,80,90は、たとえばCAN通信を介して相互に接続されている。
【0030】
エンジンコントロールユニット70は、統合コントロールユニット60からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(エンジン回転数Ne、エンジントルクTe)を制御する指令を、エンジン10のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeの情報は、CAN通信線を介して統合コントローラ60へ出力される。
【0031】
モータコントロールユニット80は、モータジェネレータ20に設けられた回転角センサ21からの情報を入力し、統合コントロールユニット60からの目標モータジェネレータトルク指令値等に応じて、モータジェネレータ20の動作点(モータ回転数Nm、モータトルクTm)を制御する指令をインバータ35に出力する。また、モータコントロールユニット80は、電流・電圧センサ31により検出された電流値および電圧値に基づいてバッテリ30のSOCを演算および管理する。このバッテリSOC情報は、モータジェネレータ20の制御情報に用いられると共に、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。さらに、モータコントロールユニット80は、モータジェネレータ20に流れる電流値(電流値の正負によって力行制御トルクと回生制御トルクを区別している)に基づいて、モータジェネレータトルクTmを推定する。このモータジェネレータトルクTmの情報は、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。さらにモータコントロールユニット80は、バッテリ30の内部抵抗値を推定するために温度センサ32により検出されたバッテリ温度を統合コントロールユニット60に送出する。
【0032】
トランスミッションコントロールユニット90は、アクセル開度センサ91、車速センサ92、第2クラッチ油圧センサ93、およびドライバの操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチ94からのセンサ情報を入力し、統合コントロールユニット60からの第2クラッチ制御指令に応じ、第2クラッチ25の締結・解放を制御する指令を、油圧ユニット26に出力する。なお、アクセル開度APO、車速VSP、およびインヒビタスイッチの情報は、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。
【0033】
統合コントロールユニット60は、ハイブリッド車両1全体の消費エネルギを管理することで、ハイブリッド車両1を効率的に走行させるための機能を司る。統合コントロールユニット60は、第2クラッチ25の出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ61、第2クラッチ25の伝達トルク容量TCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ62、ブレーキ油圧センサ63、第2クラッチ25の温度を検知する温度センサ64、および車両の前後加速度および横加速度を検出するGセンサ65からのセンサ情報を取得する。また、統合コントロールユニット60は、これらの情報に加えて、CAN通信を介して得られたセンサ情報の取得も行なう。
【0034】
そして、統合コントロールユニット60は、これらの情報に基づいて、エンジンコントロールユニット70への制御指令によるエンジン10の動作制御、モータコントロールユニット80への制御指令によるモータジェネレータ20の動作制御、トランスミッションコントロールユニット90への制御指令による自動変速機40の動作制御、第1クラッチ15の油圧ユニット16への制御指令による第1クラッチ15の締結・解放制御、および第2クラッチ25の油圧ユニット26への制御指令による第2クラッチ25の締結・解放制御を実行する。
【0035】
次いで、統合コントロールユニット60により実行される制御について説明する。図4は、統合コントロールユニット60の細部を示す制御ブロック図である。なお、以下に説明する制御は、たとえば、10msecごとに繰り返し実行される。図4に示すように、統合コントロールユニット60は、目標駆動トルク演算部601、目標走行モード演算部602、目標入力トルク演算部603、目標入力回転数演算部604及び目標クラッチトルク演算部605を備える。
【0036】
目標駆動トルク演算部601は、予め定められた目標駆動力マップを用いて、アクセル開度センサ91により検出されたアクセル開度APO、および車速センサ92により検出された車速VSPに基づいて、目標駆動トルクtFo0を演算する。図5に目標駆動力マップの一例を示す。
【0037】
目標走行モード演算部602は、図6に示す走行モードマップを参照し、目標走行モードを演算し、選択する。図6の走行モードマップには、車速VSPとアクセル開度APOに応じて、EV走行モード、WSC走行モードおよびHEV走行モードの領域がそれぞれ設定されている。なお、この走行モードマップにおいて、EV走行モードまたはHEV走行モードからWSCモードへの切り替え線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機40が1速段のときに、エンジン10のアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動力が要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1’領域までWSC走行モードが設定されている。なお、システム状態検出部606により検出されるバッテリ30のSOC(又は目標充放電電力tP)や車両の勾配をも考慮して目標走行モードが演算される。
【0038】
目標入力トルク演算部603、目標入力回転数演算部604及び目標クラッチトルク演算部605は、アクセルペダル開度APO、目標駆動トルクtFoO、目標走行モード、車速VSP、クラッチスリップ回転数検出部607によるクラッチスリップ回転数、出力軸回転数検出部608による出力軸回転数および目標充放電電力tPに基づいて、これらの動作点到達目標として、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標クラッチトルク容量をそれぞれ演算する。
【0039】
そして、目標エンジントルク/目標モータトルク演算部609は、目標入力トルク演算部603にて演算された目標入力トルクと目標走行モード演算部602にて演算された目標走行モードとに基づいて、エンジントルク制御部610に目標エンジントルクを出力するとともに、モータトルク/回転数制御部611へ目標モータトルクを出力する。
【0040】
また、目標入力回転数演算部604により演算された目標入力回転数は、モータトルク/回転数制御部611へ出力されるが、モータトルク/回転数制御部611は、過渡走行モード演算部614にて演算されたモータジェネレータ20の制御モードがトルク制御か回転数制御(速度制御)かに応じて、モータジェネレータ20へ目標入力回転数又は目標モータトルクのいずれかを出力する。
【0041】
目標クラッチトルク演算部605により演算された目標クラッチトルクは目標クラッチトルク容量制御部612へ出力され、第1及び第2クラッチの伝達トルクが制御される。
【0042】
なお、モータ制限トルク演算部615は、目標入力回転数演算部604により演算された目標モータ入力回転数と、目標クラッチトルク演算部605により演算された目標クラッチトルク容量とに基づいて、モータジェネレータ20の出力トルクにかける制限を演算し、その結果に基づいて目標エンジントルク/目標モータトルク演算部609により演算された目標モータトルクを制限する。
【0043】
さて、上述したハイブリッド車両において、図7に示すように、エンジン10のアイドル回転数を維持するためにモータジェネレータ20を回転数制御しているときに、モータジェネレータ20に対して発電要求があると、モータジェネレータ20のトルク変動によってバッテリ30の電圧変動が大きくなる。このため、バッテリ30の内部抵抗が高い場合は特に、バッテリ30の電圧が許容上限値を超えて過電圧になるおそれがある。
【0044】
このため本例の制御装置は、図4に示すようにエンジン回転数制御実施判定部613と、過渡走行モード演算部614とを備える。エンジン回転数制御実施判定部613は、エンジン10を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、モータジェネレータ20を回生駆動する要求と、バッテリ30の内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、エンジン10の回転数制御を実行する。本例では、エンジン10のトルク制御から回転数制御に切り換えるとともにモータジェネレータ20の回転数制御からトルク制御に切り換える。
【0045】
なお、低温時又は高温時にバッテリ30やモータジェネレータ20を保護するためにバッテリ30やモータジェネレータ20への入出力電力を制限したり、或いは高SOC時又は低SOC時にバッテリ30を保護するためにバッテリ30の充放電を制限したりすることが生じるが、こうした状況ではモータジェネレータ30を駆動してアイドル回転数を維持するのが困難となる。エンジン回転数制御実行判定部613は、こうした条件においてもエンジン10の回転数制御を実行してよい。
【0046】
エンジン10を少なくともアイドル回転数で駆動する要求の検出は、上記目標走行モード演算部602からの演算結果に基づいて判断する。また、モータジェネレータ20を回生駆動する要求の検出も、上記目標走行モード演算部602からの演算結果に基づいて判断する。また、バッテリ30の内部抵抗値の検出は、モータコントロールユニット80から出力されるバッテリ30の使用履歴、充放電特性などから演算により推定したり、内部抵抗値はバッテリ30の環境温度に相関するため環境温度から内部抵抗値を推定したりすることで行われる。本例の内部抵抗値の検出は温度センサ32によって行われる。制御内容の詳細は後述する。
【0047】
次に制御内容を説明する。図8は統合コントロールユニット60の制御内容を示すフローチャートであり、統合コントロールユニット60は、ステップS1にてエンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80及びトランスミッションコントロールユニット90の各コントロールユニットからのデータを受信するとともに、ステップS2にて第2クラッチ出力回転数センサ61、第2クラッチトルクセンサ62、ブレーキ油圧センサ63、温度センサ64、Gセンサ65、温度センサ32など、CAN通信を介して送出される各センサからのセンサ値を読み込む。
【0048】
統合コントロールユニット60の目標駆動トルク演算部601は、ステップS3にてアクセル開度センサ91からのアクセル開度APOと車速センサ92からの車速VSPとから図5の駆動力マップを参照し、ハイブリッド車両に要求されている目標駆動トルクを演算する。なお、この目標駆動トルクは、次のステップS4にて求められる走行モードに応じて、ステップS9にて目標エンジントルクと目標モータトルクとに分配される。
【0049】
統合コントロールユニット60の目標走行モード演算部602は、ステップS4にて目標駆動トルク、バッテリ30のSOC、アクセル開度APO、車速VSP、車両の勾配等から図6の走行モードマップを参照し、EV走行モード、HEV走行モード又はWSC走行モードのいずれかを選択する。
【0050】
統合コントロールユニット60のエンジン回転数制御実施判定部613は、ステップS5にてバッテリ30のSOCや車両状態から、ステップS3にて演算されたモータジェネレータ20の発電トルクに対し、モータジェネレータ20及びバッテリ30を保護するための制限を考慮して目標発電トルクを演算する。そしてこの場合に、エンジン10の入力回転数制御を実行するのが適切か、モータジェネレータ20の入力回転数制御を実行するのが適切かを決定する。
【0051】
図9はエンジン回転数制御実施判定部613の判定ブロック図の一例であり、インバータ35の出力制限やモータ制限トルクなどモータジェネレータ20のモータトルクに基づく要求、バッテリ30のSOCに基づく要求又はバッテリ30の温度などに基づく要求のいずれかが成立し、かつ目標走行モード、要求駆動力、車速、変速段など車両の走行状態が成立した場合に、エンジン10のトルク制御からエンジン10の回転数制御に切り換えるエンジン回転数制御実施フラグをONに設定する。
【0052】
図10はバッテリ30の温度に基づく要求に対するエンジン回転数制御実施フラグの切換マップであり、バッテリ30の内部抵抗値が所定の閾値以上になるとエンジン回転数制御実施フラグをONに設定してエンジン10の回転数制御を実行する。これに対し、エンジン10の回転数制御を実行している途中でバッテリ30の内部抵抗値が所定の閾値より小さい値以下になるとエンジン回転数制御実施フラグをOFFに設定してエンジン10のトルク制御を実行する。エンジン10のトルク制御と回転数制御との切換閾値に所定のヒステリシスを設けることで切換に伴うハンチング現象を防止する。
【0053】
図11はエンジン回転数制御実施判定部613の判定手順を示すフローチャートであり、バッテリ30の内部抵抗値はバッテリ温度に相関するため(バッテリ温度が低いほど内部抵抗値が大きい)、温度センサ32によるバッテリ温度を切換閾値に設定した例である。まずステップS501にて温度センサ32により検出したバッテリ温度が予め設定された閾値温度以下である場合はステップS502へ進み、エンジン回転数制御実施フラグをONに設定する。
【0054】
これに対し、ステップS501にてバッテリ温度が閾値温度より高い場合はステップS503へ進み、閾値温度に所定のヒステリシス値を加えた温度以上か否かを判断する。バッテリ温度が閾値温度に所定のヒステリシス値を加えた温度以上である場合は、内部抵抗値が低くなっていると判断してステップS504へ進み、エンジン回転数制御実施フラグをOFFに設定する。ステップS503にてバッテリ温度が閾値温度に所定のヒステリシス値を加えた温度未満である場合は、ハンチングを防止するために現在設定されているエンジン回転数制御実施フラグの値(ON又はOFF)を維持する。
【0055】
図8のステップS5によりエンジン回転数制御実施フラグがONに設定されると、後述するステップS12にてエンジンコントロールユニット70へエンジン回転数制御を実行する指令が出力され、モータコントロールユニット80へモータトルク制御を実行する指令が出力される。これにより、図12に示すようにアイドル回転数はエンジン10の回転数制御により維持される一方で、発電要求に対してモータジェネレータ20をフィードフォーワードでトルク制御するので実際のモータトルクの変動が小さくなり、これにともないバッテリ30へ充電される電力の変動も小さくなる。したがって。バッテリ30の内部抵抗値が高い場合などは特に、バッテリ電圧が過電圧になるのを防止できる。
【0056】
図8のステップS6にて、統合コントロールユニット60の目標入力トルク演算部603、目標入力回転数演算部604及び目標クラッチトルク演算部605は、ステップS4で選択された走行モードになるように、過渡的な目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標クラッチトルク容量をそれぞれ演算し、エンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80及びトランスミッションコントロールユニット90のそれぞれに出力する。
【0057】
本例では、上記ステップS5にてエンジン10をトルク制御から回転数制御に切り換えるとともに、モータジェネレータ20を回転数制御からトルク制御に切り換えるにあたり、エンジン10のトルクが安定するまで過渡走行モードを実施する。エンジン10のアイドル回転数を維持する要求と、モータジェネレータ20に対する発電要求と、バッテリ30の内部抵抗値が所定の閾値より高い場合に実施されるエンジンの回転数制御への切換手順を図13のフローチャートに示し、同じく図14にタイムチャートを示す。
【0058】
まず図13のステップS601にて、エンジン回転数制御実施フラグのONを確認し、OFFである場合はステップS607へ進んで過渡制御モードzを0(通常モード)に設定し、エンジン10をトルク制御、モータジェネレータ20を回転数制御とする。これに対し、ステップS601にてエンジン回転数制御実施フラグがONである場合はステップS602へ進み、過渡制御モードzが0であるか否かを判断し、z=0の場合はステップS608へ進んで過渡制御モードzを1(エンジントルクの安定待ちモード)に設定する。そして、エンジン10を回転数制御に切り換えるとともにモータジェネレータ20は回転数制御を継続する。なお、z=1の通常モード及びz=1のエンジントルク安定待ちモードでは、モータジェネレータ20の上限トルク及び下限トルクは初期設定値を維持する。
【0059】
z=1に設定されたステップS608の後にステップS601へ戻ると、ステップS602及びステップS603を介してステップS605へ進み、エンジントルクの安定性を判断する。エンジントルクの判断はトルクセンサによる変動幅が所定値以内になった場合にエンジントルクが安定したと判断してもよいし、エンジン10の特性を予め検証しトルクが安定するまでの時間が経過したことでエンジントルクが安定したと判断してもよい。ステップS605にてエンジントルクが安定するまではステップS608へ進んで過渡制御モードzを1に維持するが、エンジントルクが安定したらステップS609へ進み、過渡制御モードzを2(モータ制御移行準備モード)に設定する。そして、エンジン10の回転数制御とモータジェネレータ20の回転数制御は維持するが、図14に示すようにモータジェネレータ20の上限トルクと下限トルクを、モータジェネレータ20がトルク制御を実行する際の制限値にそれぞれ漸近させる。
【0060】
z=2に設定されたステップS609の後にステップS601へ戻ると、ステップS602、ステップS603及びステップS604を介してステップS606へ進み、モータジェネレータ20の上限トルク及び下限トルクの移行が完了したか否かを判断する。この判断は経過時間により判断することができる。制限トルクの移行が完了していない場合はステップS609を介して過渡制御モードz=2を維持するが、移行が完了したらステップS610へ進み、過渡制御モードzを3(エンジン回転数制御モード)に設定する。そして、エンジン10の回転数制御を維持しつつ、モータジェネレータ20をトルク制御に切り換える。
【0061】
エンジン10は、通常のトルク制御から回転数制御へ切り換えようとすると点火タイミング等を切り換える必要があり、過渡的にエンジントルクが低下し、特にモータジェネレータ20に発電トルクが作用している場合には、エンジン回転数が低下してエンストや振動が生じるおそれがある。しかし本例では、このような過渡制御モードを設定することで、エンジントルクの変動にともなうエンストや振動の発生を抑制することができ、発電要求に対しても充分に対応できる。
【0062】
なお、過渡制御モードz=3が本例のエンジン回転数制御モードに相当するが、エンジン10の回転数制御によりエンジン10が回転数制御を性能的に維持できる保証範囲(駆動維持可能範囲ともいう)を超えた場合には、この駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみモータジェネレータ20の回転数制御を実行する。すなわち、エンジン10の駆動維持可能範囲内においてはエンジン10の回転数制御によって当該エンジン10のアイドル回転数が保証されるが、駆動維持可能範囲を超えるとエンジン10の回転数が低下してエンスト等を生じるためである。エンジン10の駆動維持可能範囲内でモータジェネレータ20の回転数制御を実行しないことにより、要求される発電量を確保しながら、連続して回転数をエンストしない状態に維持することができる。
【0063】
エンジン10の駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみモータジェネレータ20の回転数制御を実行するには、たとえばモータジェネレータ20の目標出力トルクに対し、フィードフォーワードで発電トルクを設定しておき、エンジン10の駆動維持可能範囲を超えて回転数が低下した場合のみ、回転数の目標値に対する偏差に応じたモータトルクを加算する。
【0064】
図8へ戻り、統合コントロールユニット60の目標入力回転数演算部604は、ステップS7にて出力軸回転数検出部608によるモータジェネレータ20の出力軸回転数に基づいて目標モータ入力回転数を演算し、モータトルク/回転数制御部611へ出力する。
【0065】
統合コントロールユニット60の目標入力トルク演算部603は、ステップS8にて目標駆動トルク演算部601で演算された目標駆動トルクやモータジェネレータ20を構成する各種デバイスの保護を考慮し、目標入力トルクを演算する。そして、ステップS9にて、統合コントロールユニット60の目標エンジントルク/モータトルク演算部609は、ステップS8で演算された目標入力トルクやモータコントロールユニット80からの発電要求などに基づいてエンジン10とモータジェネレータ20とに配分すべきトルクの目標値を演算する。
【0066】
図8のステップS10では、第1クラッチCL1及び第2クラッチ25のクラッチトルク容量を演算し、ステップS12にて油圧ユニット16,26へ出力する。なお、ステップS11にて、WSC走行モードにおいて目標モータトルクに対して回転数変動分及び外乱補正分のトルクマージンを考慮した制限値を演算する。
【0067】
以上のとおり本例のハイブリッド車両の制御装置によれば、エンジン10を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、モータジェネレータ20を回生駆動する要求と、バッテリ30の内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、エンジン10の回転数制御を実行するので、図12に示すように、アイドル回転数はエンジン10の回転数制御により維持される一方で、発電要求に対してモータジェネレータ20をフィードフォーワードでトルク制御するので実際のモータトルクの変動が小さくなり、これにともないバッテリ30へ充電される電力の変動も小さくなる。したがって。バッテリ30の内部抵抗値が高い場合などは特に、バッテリ電圧が過電圧になるのを防止できる。
【0068】
このエンジン10の回転数制御への切り換えにあたり、図14のz=0→1→2→3に示す過渡制御モードを設定することで、エンジントルクの変動にともなうエンストや振動の発生を抑制することができ、発電要求に対しても充分に対応することができる。
【0069】
また、エンジン10の回転数制御によりエンジン10が回転数制御を性能的に維持できる保証範囲(駆動維持可能範囲ともいう)を超えた場合には、この駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみモータジェネレータ20の回転数制御を実行するので、エンジン10の駆動維持可能範囲内でモータジェネレータ20の回転数制御を実行しないことにより、要求される発電量を確保しながら、連続して回転数をエンストしない状態に維持することができる。
【0070】
上記エンジン10が本発明に係る内燃機関に相当し、上記モータジェネレータ20が本発明に係る電動発電機に相当し、上記第2クラッチ25が本発明に係るクラッチに相当し、上記目標走行モード演算部602が本発明に係る内燃機関駆動要求検出手段及び回生駆動要求検出手段に相当し、上記温度センサ32が本発明に係る内部抵抗検出手段に相当し、上記エンジン回転数制御実施判定部613が本発明に係る制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0071】
1…ハイブリッド車両
10…エンジン
15…第1クラッチ
20…モータジェネレータ
25…第2クラッチ
30…バッテリ
35…インバータ
40…自動変速機
60…統合コントロールユニット
70…エンジンコントロールユニット
80…モータコントロールユニット
90…トランスミッションコントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関(エンジン)と電動発電機(モータジェネレータ)とを駆動源とするパラレルハイブリッド車両において、モータジェネレータの回転数制御を実行しながら、回転数制御モータトルク目標値が第2クラッチトルク容量基本目標値より小さいときは、回転数制御第2クラッチトルク容量基本目標値を当該第2クラッチトルク容量基本目標値より大きな値に修正し、これにより伝達トルクと実際値との偏差をゼロに近づけるものが知られている(特許文献1の[0083])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−83417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、エンジンとモータジェネレータとを駆動源とするパラレルハイブリッド車両において、アイドル回転数を維持しながらモータジェネレータに対して発電要求があった場合に、特にバッテリの内部抵抗が高いと、モータジェネレータのトルク変動に対してバッテリの電圧変動が大きくなり、その結果バッテリが過電圧になるおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、バッテリの内部抵抗が高くても過電圧を抑制し、バッテリを保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内燃機関と電動発電機とを駆動源とし、電動発電機と駆動輪との間にクラッチを備え、電動発電機との間で放電及び充電するバッテリを備えるハイブリッド車両において、少なくともアイドル回転数での駆動要求があり、電動発電機への発電要求があり、かつバッテリの内部抵抗が所定値以上である場合は、内燃機関の回転数制御を実行することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内燃機関の回転数制御を実行すると電動発電機のトルクはフィードフォーワード入力できるので、電動発電機のトルク変動が抑制される。この結果、バッテリの内部抵抗が高くても過電圧になることを抑制でき、バッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係るハイブリッド車両のパワートレーンを示す図である。
【図3】本発明のさらに他の実施の形態に係るハイブリッド車両のパワートレーンを示す図である。
【図4】図1の統合コントロールユニットの細部を示す制御ブロック図である。
【図5】図4の目標駆動トルク演算部で参照される目標駆動力マップの一例を示す図である。
【図6】図4の目標走行モード演算部で参照される走行モードマップの一例を表す図である。
【図7】モータジェネレータのトルク変動により生じるバッテリの過電圧の課題を説明する図である。
【図8】図4の統合コントロールユニットの制御内容を示すフローチャートである。
【図9】図8のステップS5のエンジン回転数制御実施判定を示す判定ブロック図である。
【図10】図8のステップS5のエンジン回転数制御の切換マップを示す図である。
【図11】図8のステップS5のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図12】図8のステップS5の処理結果を示すタイムチャートである。
【図13】図8のステップS6のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】図8のステップS6のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るハイブリッド車両1は、内燃機関と電動発電機といった複数の動力源を車両の駆動に使用するパラレル方式自動車であり、図1に示す本例のハイブリッド車両1は、内燃機関(以下、エンジン)10、第1クラッチ15、電動発電機(以下、モータジェネレータ)20、第2クラッチ25、バッテリ30、インバータ35、自動変速機40、プロペラシャフト51、ディファレンシャルギアユニット52、ドライブシャフト53、および左右の駆動輪54を備える。
【0010】
エンジン10は、ガソリン、軽油その他の燃料を燃焼させて駆動エネルギを出力する駆動源の一つであり、エンジンコントロールユニット70からの制御信号に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度や燃料噴射バルブの燃料噴射量等を制御する。
【0011】
第1クラッチ15は、エンジン10の出力軸とモータジェネレータ20の回転軸との間に介装され、エンジン10とモータジェネレータ20との間の動力伝達を断接(ON/OFF)する。第1クラッチ15としては、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できる湿式多板クラッチなどを例示することができる。第1クラッチ15において、統合コントロールユニット60からの制御信号に基づいて油圧ユニット16の油圧が制御され、これにより第1クラッチ15のクラッチ板が締結(スリップ状態も含む。)又は解放する。なお、第1クラッチ15に乾式クラッチを採用してもよい。
【0012】
モータジェネレータ20は、ロータに永久磁石を埋設し、ステータにステータコイルが巻きつけられた同期型モータジェネレータである。このモータジェネレータ20には、ロータ回転角を検出するレゾルバなどの回転角センサ21が設けられている。モータジェネレータ20は、電動機としても機能するし発電機としても機能する。インバータ35から三相交流電力が供給されている場合には、モータジェネレータ20は回転駆動する(力行)。
【0013】
一方、外力によってロータが回転している場合には、モータジェネレータ20は、ステータコイルの両端に起電力を生じさせることで交流電力を生成する(回生)。モータジェネレータ20によって発電された交流電力は、インバータ35によって直流電力に変換された後に、バッテリ30に充電される。また、回生中においてモータジェネレータ20には負のトルクが発生するので、駆動輪に対して制動機能をも奏する。
【0014】
バッテリ30は、複数のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などを直列又は並列に接続した組電池を例示することができる。バッテリ30には電流・電圧センサ31と内部抵抗値を推定するための温度センサ32が取り付けられ、これらの検出結果をモータコントロールユニット80に出力する。
【0015】
第2クラッチ25は、モータジェネレータ20と左右の駆動輪54との間に介装され、モータジェネレータ20と左右の駆動輪54との間の動力伝達を断接(ON/OFF)する。第2クラッチ25は、上述の第1クラッチ15と同様に、たとえば湿式多板クラッチなどを例示することができる。第2クラッチ25において、トランスミッションコントロールユニット90からの制御信号に基づいて油圧ユニット26の油圧が制御され、これにより第2クラッチ25のクラッチ板が締結(スリップ状態も含む。)/解放する。
【0016】
自動変速機40は、前進7速、後退1速などといった変速比を段階的に切り換える有段式変速機であり、車速やアクセル開度等に応じて変速比を自動的に切り換える。自動変速機40の変速比は、トランスミッションコントロールユニット90からの制御信号に基づいて制御される。
【0017】
第2クラッチ25は、図1に示すように、自動変速機40の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用したものとすることができる。またこれに代えて第2クラッチ25を自動変速機40とは別の専用のクラッチとしてもよい。たとえば図2に示すように、第2クラッチ25を、モータジェネレータ20の出力軸と自動変速機40の入力軸との間に介装した専用のクラッチとしてもよい。あるいは、図3に示すように、第2クラッチ25を、自動変速機40の出力軸とプロペラシャフト51との間に介装した専用のクラッチとしてもよい。なお、図2及び図3は、他の実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示す図であり、図2及び図3においては、パワートレーン以外の構成は図1と同様であるため、パワートレーンのみを示す。
【0018】
なお、本例の自動変速機40は一般的な有段式自動変速機を用いることができるのでその詳細な構成は省略するが、自動変速機40の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用して第2クラッチ25を構成する場合は、自動変速機40内の摩擦締結要素のうち現変速段で締結させるべき摩擦締結要素を第2クラッチ25として構成する。
【0019】
また、自動変速機40として、上述した前進7速、後退1速の有段式自動変速機に特に限定されず、その他のたとえば前進5速、後退1速の有段階の変速機であってもよい。第2クラッチ25を自動変速機40の摩擦締結要素を流用しないで構成する場合は、無段式自動変速機を用いることもできる。
【0020】
図1に戻り、自動変速機40の出力軸は、プロペラシャフト51、ディファレンシャルギアユニット52、および左右のドライブシャフト53を介して、左右の駆動輪54に連結されている。なお、図1において55は左右の操舵前輪である。また、図1〜図3においては、後輪駆動のハイブリッド車両を例示したが、前輪駆動のハイブリッド車両や四輪駆動のハイブリッド車両とすることも可能である。
【0021】
本実施形態におけるハイブリッド車両1は、駆動源をエンジン10及び/又はモータジェネレータ20に設定することにより、換言すれば第1および第2のクラッチ15,25の締結/スリップ/解放状態に応じて、以下に説明する各走行モードに切り換えることができる。
【0022】
モータジェネレータ使用走行モード(以下、EV走行モード)は、第1クラッチ15を解放させると共に第2クラッチ25を締結させて、モータジェネレータ20の動力のみを駆動源として走行するモードである。
【0023】
エンジン使用走行モード(以下、HEV走行モード)は、第1クラッチ15および第2クラッチ25をいずれも締結させて、少なくともエンジン10の動力を駆動源に含みながら走行するモードである。
【0024】
上記EV走行モード及びHEV走行モード以外に、第1クラッチ15を締結させると共に第2クラッチ25をスリップ状態にして、エンジン10の動力を駆動源に含みながら走行するエンジン使用スリップ走行モード(以下、WSC走行モード,Wet Start Clutch)を設定してもよい。WSC走行モードは、特にバッテリ30の充電状態SOC(State of Charge)が低下している場合や、エンジン10の冷却水の温度が低い場合にクリープ走行を達成することができるモードである。
【0025】
また、上記EV走行モード及びHEV走行モード以外に、エンジン10を作動させた状態で第1クラッチ15を解放させると共に、第2クラッチ25をスリップ状態として、モータジェネレータ20の動力のみを動力源として走行するモータ使用スリップ走行モード(以下、MWSC走行モード)を設定してもよい。上述したWSC走行モードにおいて、路面勾配が所定値以上における登坂路等である場合に、ドライバがアクセルペダルを調整し車両停止状態または微速発進状態を維持する状態(いわゆるストール停車状態)が継続すると、第2クラッチ25のスリップ量が過多である状態が継続し、そのため、第2クラッチ25が過熱するおそれがある。エンジン回転数をアイドル回転数よりも小さくすると、エンジンストールが発生するためである。そのため、本実施形態では、このような場合において、第2クラッチ25が過熱されてしまうことを防止するためにMWSC走行モードが選択される。
【0026】
なお、EV走行モードからHEV走行モードに移行する際には、解放していた第1クラッチ15を締結し、モータジェネレータ20のトルクを利用することで、エンジン始動を行なうことができる。
【0027】
また、HEV走行モードには、エンジン走行モード、モータアシスト走行モード、および走行発電モードが設定されている。エンジン走行モードでは、モータジェネレータ20を駆動させずに、エンジン10のみを動力源として駆動輪54を動かす。モータアシスト走行モードでは、エンジン10とモータジェネレータ20との両方を駆動させて、これら2つを動力源として駆動輪54を動かす。走行発電モードでは、エンジン10を動力源として駆動輪54を動かすと同時に、モータジェネレータ20を発電機として機能させ、バッテリ30を充電する。
【0028】
なお、以上に説明したモードの他に、停車時において、エンジン10の動力を利用してモータジェネレータ20を発電機として機能させ、バッテリ30を充電したり電装品へ電力を供給したりする発電モードを備えてもよい。
【0029】
本実施形態におけるハイブリッド車両1の制御系は、図1に示すように、統合コントロールユニット60、エンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80、およびトランスミッションコントロールユニット90を備える。これらの各コントロールユニット60,70,80,90は、たとえばCAN通信を介して相互に接続されている。
【0030】
エンジンコントロールユニット70は、統合コントロールユニット60からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(エンジン回転数Ne、エンジントルクTe)を制御する指令を、エンジン10のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。なお、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeの情報は、CAN通信線を介して統合コントローラ60へ出力される。
【0031】
モータコントロールユニット80は、モータジェネレータ20に設けられた回転角センサ21からの情報を入力し、統合コントロールユニット60からの目標モータジェネレータトルク指令値等に応じて、モータジェネレータ20の動作点(モータ回転数Nm、モータトルクTm)を制御する指令をインバータ35に出力する。また、モータコントロールユニット80は、電流・電圧センサ31により検出された電流値および電圧値に基づいてバッテリ30のSOCを演算および管理する。このバッテリSOC情報は、モータジェネレータ20の制御情報に用いられると共に、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。さらに、モータコントロールユニット80は、モータジェネレータ20に流れる電流値(電流値の正負によって力行制御トルクと回生制御トルクを区別している)に基づいて、モータジェネレータトルクTmを推定する。このモータジェネレータトルクTmの情報は、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。さらにモータコントロールユニット80は、バッテリ30の内部抵抗値を推定するために温度センサ32により検出されたバッテリ温度を統合コントロールユニット60に送出する。
【0032】
トランスミッションコントロールユニット90は、アクセル開度センサ91、車速センサ92、第2クラッチ油圧センサ93、およびドライバの操作するシフトレバーの位置に応じた信号を出力するインヒビタスイッチ94からのセンサ情報を入力し、統合コントロールユニット60からの第2クラッチ制御指令に応じ、第2クラッチ25の締結・解放を制御する指令を、油圧ユニット26に出力する。なお、アクセル開度APO、車速VSP、およびインヒビタスイッチの情報は、CAN通信を介して統合コントロールユニット60に送出される。
【0033】
統合コントロールユニット60は、ハイブリッド車両1全体の消費エネルギを管理することで、ハイブリッド車両1を効率的に走行させるための機能を司る。統合コントロールユニット60は、第2クラッチ25の出力回転数N2outを検出する第2クラッチ出力回転数センサ61、第2クラッチ25の伝達トルク容量TCL2を検出する第2クラッチトルクセンサ62、ブレーキ油圧センサ63、第2クラッチ25の温度を検知する温度センサ64、および車両の前後加速度および横加速度を検出するGセンサ65からのセンサ情報を取得する。また、統合コントロールユニット60は、これらの情報に加えて、CAN通信を介して得られたセンサ情報の取得も行なう。
【0034】
そして、統合コントロールユニット60は、これらの情報に基づいて、エンジンコントロールユニット70への制御指令によるエンジン10の動作制御、モータコントロールユニット80への制御指令によるモータジェネレータ20の動作制御、トランスミッションコントロールユニット90への制御指令による自動変速機40の動作制御、第1クラッチ15の油圧ユニット16への制御指令による第1クラッチ15の締結・解放制御、および第2クラッチ25の油圧ユニット26への制御指令による第2クラッチ25の締結・解放制御を実行する。
【0035】
次いで、統合コントロールユニット60により実行される制御について説明する。図4は、統合コントロールユニット60の細部を示す制御ブロック図である。なお、以下に説明する制御は、たとえば、10msecごとに繰り返し実行される。図4に示すように、統合コントロールユニット60は、目標駆動トルク演算部601、目標走行モード演算部602、目標入力トルク演算部603、目標入力回転数演算部604及び目標クラッチトルク演算部605を備える。
【0036】
目標駆動トルク演算部601は、予め定められた目標駆動力マップを用いて、アクセル開度センサ91により検出されたアクセル開度APO、および車速センサ92により検出された車速VSPに基づいて、目標駆動トルクtFo0を演算する。図5に目標駆動力マップの一例を示す。
【0037】
目標走行モード演算部602は、図6に示す走行モードマップを参照し、目標走行モードを演算し、選択する。図6の走行モードマップには、車速VSPとアクセル開度APOに応じて、EV走行モード、WSC走行モードおよびHEV走行モードの領域がそれぞれ設定されている。なお、この走行モードマップにおいて、EV走行モードまたはHEV走行モードからWSCモードへの切り替え線は、所定アクセル開度APO1未満の領域では、自動変速機40が1速段のときに、エンジン10のアイドル回転数よりも小さな回転数となる下限車速VSP1よりも低い領域に設定されている。また、所定アクセル開度APO1以上の領域では、大きな駆動力が要求されることから、下限車速VSP1よりも高い車速VSP1’領域までWSC走行モードが設定されている。なお、システム状態検出部606により検出されるバッテリ30のSOC(又は目標充放電電力tP)や車両の勾配をも考慮して目標走行モードが演算される。
【0038】
目標入力トルク演算部603、目標入力回転数演算部604及び目標クラッチトルク演算部605は、アクセルペダル開度APO、目標駆動トルクtFoO、目標走行モード、車速VSP、クラッチスリップ回転数検出部607によるクラッチスリップ回転数、出力軸回転数検出部608による出力軸回転数および目標充放電電力tPに基づいて、これらの動作点到達目標として、目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標クラッチトルク容量をそれぞれ演算する。
【0039】
そして、目標エンジントルク/目標モータトルク演算部609は、目標入力トルク演算部603にて演算された目標入力トルクと目標走行モード演算部602にて演算された目標走行モードとに基づいて、エンジントルク制御部610に目標エンジントルクを出力するとともに、モータトルク/回転数制御部611へ目標モータトルクを出力する。
【0040】
また、目標入力回転数演算部604により演算された目標入力回転数は、モータトルク/回転数制御部611へ出力されるが、モータトルク/回転数制御部611は、過渡走行モード演算部614にて演算されたモータジェネレータ20の制御モードがトルク制御か回転数制御(速度制御)かに応じて、モータジェネレータ20へ目標入力回転数又は目標モータトルクのいずれかを出力する。
【0041】
目標クラッチトルク演算部605により演算された目標クラッチトルクは目標クラッチトルク容量制御部612へ出力され、第1及び第2クラッチの伝達トルクが制御される。
【0042】
なお、モータ制限トルク演算部615は、目標入力回転数演算部604により演算された目標モータ入力回転数と、目標クラッチトルク演算部605により演算された目標クラッチトルク容量とに基づいて、モータジェネレータ20の出力トルクにかける制限を演算し、その結果に基づいて目標エンジントルク/目標モータトルク演算部609により演算された目標モータトルクを制限する。
【0043】
さて、上述したハイブリッド車両において、図7に示すように、エンジン10のアイドル回転数を維持するためにモータジェネレータ20を回転数制御しているときに、モータジェネレータ20に対して発電要求があると、モータジェネレータ20のトルク変動によってバッテリ30の電圧変動が大きくなる。このため、バッテリ30の内部抵抗が高い場合は特に、バッテリ30の電圧が許容上限値を超えて過電圧になるおそれがある。
【0044】
このため本例の制御装置は、図4に示すようにエンジン回転数制御実施判定部613と、過渡走行モード演算部614とを備える。エンジン回転数制御実施判定部613は、エンジン10を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、モータジェネレータ20を回生駆動する要求と、バッテリ30の内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、エンジン10の回転数制御を実行する。本例では、エンジン10のトルク制御から回転数制御に切り換えるとともにモータジェネレータ20の回転数制御からトルク制御に切り換える。
【0045】
なお、低温時又は高温時にバッテリ30やモータジェネレータ20を保護するためにバッテリ30やモータジェネレータ20への入出力電力を制限したり、或いは高SOC時又は低SOC時にバッテリ30を保護するためにバッテリ30の充放電を制限したりすることが生じるが、こうした状況ではモータジェネレータ30を駆動してアイドル回転数を維持するのが困難となる。エンジン回転数制御実行判定部613は、こうした条件においてもエンジン10の回転数制御を実行してよい。
【0046】
エンジン10を少なくともアイドル回転数で駆動する要求の検出は、上記目標走行モード演算部602からの演算結果に基づいて判断する。また、モータジェネレータ20を回生駆動する要求の検出も、上記目標走行モード演算部602からの演算結果に基づいて判断する。また、バッテリ30の内部抵抗値の検出は、モータコントロールユニット80から出力されるバッテリ30の使用履歴、充放電特性などから演算により推定したり、内部抵抗値はバッテリ30の環境温度に相関するため環境温度から内部抵抗値を推定したりすることで行われる。本例の内部抵抗値の検出は温度センサ32によって行われる。制御内容の詳細は後述する。
【0047】
次に制御内容を説明する。図8は統合コントロールユニット60の制御内容を示すフローチャートであり、統合コントロールユニット60は、ステップS1にてエンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80及びトランスミッションコントロールユニット90の各コントロールユニットからのデータを受信するとともに、ステップS2にて第2クラッチ出力回転数センサ61、第2クラッチトルクセンサ62、ブレーキ油圧センサ63、温度センサ64、Gセンサ65、温度センサ32など、CAN通信を介して送出される各センサからのセンサ値を読み込む。
【0048】
統合コントロールユニット60の目標駆動トルク演算部601は、ステップS3にてアクセル開度センサ91からのアクセル開度APOと車速センサ92からの車速VSPとから図5の駆動力マップを参照し、ハイブリッド車両に要求されている目標駆動トルクを演算する。なお、この目標駆動トルクは、次のステップS4にて求められる走行モードに応じて、ステップS9にて目標エンジントルクと目標モータトルクとに分配される。
【0049】
統合コントロールユニット60の目標走行モード演算部602は、ステップS4にて目標駆動トルク、バッテリ30のSOC、アクセル開度APO、車速VSP、車両の勾配等から図6の走行モードマップを参照し、EV走行モード、HEV走行モード又はWSC走行モードのいずれかを選択する。
【0050】
統合コントロールユニット60のエンジン回転数制御実施判定部613は、ステップS5にてバッテリ30のSOCや車両状態から、ステップS3にて演算されたモータジェネレータ20の発電トルクに対し、モータジェネレータ20及びバッテリ30を保護するための制限を考慮して目標発電トルクを演算する。そしてこの場合に、エンジン10の入力回転数制御を実行するのが適切か、モータジェネレータ20の入力回転数制御を実行するのが適切かを決定する。
【0051】
図9はエンジン回転数制御実施判定部613の判定ブロック図の一例であり、インバータ35の出力制限やモータ制限トルクなどモータジェネレータ20のモータトルクに基づく要求、バッテリ30のSOCに基づく要求又はバッテリ30の温度などに基づく要求のいずれかが成立し、かつ目標走行モード、要求駆動力、車速、変速段など車両の走行状態が成立した場合に、エンジン10のトルク制御からエンジン10の回転数制御に切り換えるエンジン回転数制御実施フラグをONに設定する。
【0052】
図10はバッテリ30の温度に基づく要求に対するエンジン回転数制御実施フラグの切換マップであり、バッテリ30の内部抵抗値が所定の閾値以上になるとエンジン回転数制御実施フラグをONに設定してエンジン10の回転数制御を実行する。これに対し、エンジン10の回転数制御を実行している途中でバッテリ30の内部抵抗値が所定の閾値より小さい値以下になるとエンジン回転数制御実施フラグをOFFに設定してエンジン10のトルク制御を実行する。エンジン10のトルク制御と回転数制御との切換閾値に所定のヒステリシスを設けることで切換に伴うハンチング現象を防止する。
【0053】
図11はエンジン回転数制御実施判定部613の判定手順を示すフローチャートであり、バッテリ30の内部抵抗値はバッテリ温度に相関するため(バッテリ温度が低いほど内部抵抗値が大きい)、温度センサ32によるバッテリ温度を切換閾値に設定した例である。まずステップS501にて温度センサ32により検出したバッテリ温度が予め設定された閾値温度以下である場合はステップS502へ進み、エンジン回転数制御実施フラグをONに設定する。
【0054】
これに対し、ステップS501にてバッテリ温度が閾値温度より高い場合はステップS503へ進み、閾値温度に所定のヒステリシス値を加えた温度以上か否かを判断する。バッテリ温度が閾値温度に所定のヒステリシス値を加えた温度以上である場合は、内部抵抗値が低くなっていると判断してステップS504へ進み、エンジン回転数制御実施フラグをOFFに設定する。ステップS503にてバッテリ温度が閾値温度に所定のヒステリシス値を加えた温度未満である場合は、ハンチングを防止するために現在設定されているエンジン回転数制御実施フラグの値(ON又はOFF)を維持する。
【0055】
図8のステップS5によりエンジン回転数制御実施フラグがONに設定されると、後述するステップS12にてエンジンコントロールユニット70へエンジン回転数制御を実行する指令が出力され、モータコントロールユニット80へモータトルク制御を実行する指令が出力される。これにより、図12に示すようにアイドル回転数はエンジン10の回転数制御により維持される一方で、発電要求に対してモータジェネレータ20をフィードフォーワードでトルク制御するので実際のモータトルクの変動が小さくなり、これにともないバッテリ30へ充電される電力の変動も小さくなる。したがって。バッテリ30の内部抵抗値が高い場合などは特に、バッテリ電圧が過電圧になるのを防止できる。
【0056】
図8のステップS6にて、統合コントロールユニット60の目標入力トルク演算部603、目標入力回転数演算部604及び目標クラッチトルク演算部605は、ステップS4で選択された走行モードになるように、過渡的な目標エンジントルク、目標モータジェネレータトルク、目標クラッチトルク容量をそれぞれ演算し、エンジンコントロールユニット70、モータコントロールユニット80及びトランスミッションコントロールユニット90のそれぞれに出力する。
【0057】
本例では、上記ステップS5にてエンジン10をトルク制御から回転数制御に切り換えるとともに、モータジェネレータ20を回転数制御からトルク制御に切り換えるにあたり、エンジン10のトルクが安定するまで過渡走行モードを実施する。エンジン10のアイドル回転数を維持する要求と、モータジェネレータ20に対する発電要求と、バッテリ30の内部抵抗値が所定の閾値より高い場合に実施されるエンジンの回転数制御への切換手順を図13のフローチャートに示し、同じく図14にタイムチャートを示す。
【0058】
まず図13のステップS601にて、エンジン回転数制御実施フラグのONを確認し、OFFである場合はステップS607へ進んで過渡制御モードzを0(通常モード)に設定し、エンジン10をトルク制御、モータジェネレータ20を回転数制御とする。これに対し、ステップS601にてエンジン回転数制御実施フラグがONである場合はステップS602へ進み、過渡制御モードzが0であるか否かを判断し、z=0の場合はステップS608へ進んで過渡制御モードzを1(エンジントルクの安定待ちモード)に設定する。そして、エンジン10を回転数制御に切り換えるとともにモータジェネレータ20は回転数制御を継続する。なお、z=1の通常モード及びz=1のエンジントルク安定待ちモードでは、モータジェネレータ20の上限トルク及び下限トルクは初期設定値を維持する。
【0059】
z=1に設定されたステップS608の後にステップS601へ戻ると、ステップS602及びステップS603を介してステップS605へ進み、エンジントルクの安定性を判断する。エンジントルクの判断はトルクセンサによる変動幅が所定値以内になった場合にエンジントルクが安定したと判断してもよいし、エンジン10の特性を予め検証しトルクが安定するまでの時間が経過したことでエンジントルクが安定したと判断してもよい。ステップS605にてエンジントルクが安定するまではステップS608へ進んで過渡制御モードzを1に維持するが、エンジントルクが安定したらステップS609へ進み、過渡制御モードzを2(モータ制御移行準備モード)に設定する。そして、エンジン10の回転数制御とモータジェネレータ20の回転数制御は維持するが、図14に示すようにモータジェネレータ20の上限トルクと下限トルクを、モータジェネレータ20がトルク制御を実行する際の制限値にそれぞれ漸近させる。
【0060】
z=2に設定されたステップS609の後にステップS601へ戻ると、ステップS602、ステップS603及びステップS604を介してステップS606へ進み、モータジェネレータ20の上限トルク及び下限トルクの移行が完了したか否かを判断する。この判断は経過時間により判断することができる。制限トルクの移行が完了していない場合はステップS609を介して過渡制御モードz=2を維持するが、移行が完了したらステップS610へ進み、過渡制御モードzを3(エンジン回転数制御モード)に設定する。そして、エンジン10の回転数制御を維持しつつ、モータジェネレータ20をトルク制御に切り換える。
【0061】
エンジン10は、通常のトルク制御から回転数制御へ切り換えようとすると点火タイミング等を切り換える必要があり、過渡的にエンジントルクが低下し、特にモータジェネレータ20に発電トルクが作用している場合には、エンジン回転数が低下してエンストや振動が生じるおそれがある。しかし本例では、このような過渡制御モードを設定することで、エンジントルクの変動にともなうエンストや振動の発生を抑制することができ、発電要求に対しても充分に対応できる。
【0062】
なお、過渡制御モードz=3が本例のエンジン回転数制御モードに相当するが、エンジン10の回転数制御によりエンジン10が回転数制御を性能的に維持できる保証範囲(駆動維持可能範囲ともいう)を超えた場合には、この駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみモータジェネレータ20の回転数制御を実行する。すなわち、エンジン10の駆動維持可能範囲内においてはエンジン10の回転数制御によって当該エンジン10のアイドル回転数が保証されるが、駆動維持可能範囲を超えるとエンジン10の回転数が低下してエンスト等を生じるためである。エンジン10の駆動維持可能範囲内でモータジェネレータ20の回転数制御を実行しないことにより、要求される発電量を確保しながら、連続して回転数をエンストしない状態に維持することができる。
【0063】
エンジン10の駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみモータジェネレータ20の回転数制御を実行するには、たとえばモータジェネレータ20の目標出力トルクに対し、フィードフォーワードで発電トルクを設定しておき、エンジン10の駆動維持可能範囲を超えて回転数が低下した場合のみ、回転数の目標値に対する偏差に応じたモータトルクを加算する。
【0064】
図8へ戻り、統合コントロールユニット60の目標入力回転数演算部604は、ステップS7にて出力軸回転数検出部608によるモータジェネレータ20の出力軸回転数に基づいて目標モータ入力回転数を演算し、モータトルク/回転数制御部611へ出力する。
【0065】
統合コントロールユニット60の目標入力トルク演算部603は、ステップS8にて目標駆動トルク演算部601で演算された目標駆動トルクやモータジェネレータ20を構成する各種デバイスの保護を考慮し、目標入力トルクを演算する。そして、ステップS9にて、統合コントロールユニット60の目標エンジントルク/モータトルク演算部609は、ステップS8で演算された目標入力トルクやモータコントロールユニット80からの発電要求などに基づいてエンジン10とモータジェネレータ20とに配分すべきトルクの目標値を演算する。
【0066】
図8のステップS10では、第1クラッチCL1及び第2クラッチ25のクラッチトルク容量を演算し、ステップS12にて油圧ユニット16,26へ出力する。なお、ステップS11にて、WSC走行モードにおいて目標モータトルクに対して回転数変動分及び外乱補正分のトルクマージンを考慮した制限値を演算する。
【0067】
以上のとおり本例のハイブリッド車両の制御装置によれば、エンジン10を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、モータジェネレータ20を回生駆動する要求と、バッテリ30の内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、エンジン10の回転数制御を実行するので、図12に示すように、アイドル回転数はエンジン10の回転数制御により維持される一方で、発電要求に対してモータジェネレータ20をフィードフォーワードでトルク制御するので実際のモータトルクの変動が小さくなり、これにともないバッテリ30へ充電される電力の変動も小さくなる。したがって。バッテリ30の内部抵抗値が高い場合などは特に、バッテリ電圧が過電圧になるのを防止できる。
【0068】
このエンジン10の回転数制御への切り換えにあたり、図14のz=0→1→2→3に示す過渡制御モードを設定することで、エンジントルクの変動にともなうエンストや振動の発生を抑制することができ、発電要求に対しても充分に対応することができる。
【0069】
また、エンジン10の回転数制御によりエンジン10が回転数制御を性能的に維持できる保証範囲(駆動維持可能範囲ともいう)を超えた場合には、この駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみモータジェネレータ20の回転数制御を実行するので、エンジン10の駆動維持可能範囲内でモータジェネレータ20の回転数制御を実行しないことにより、要求される発電量を確保しながら、連続して回転数をエンストしない状態に維持することができる。
【0070】
上記エンジン10が本発明に係る内燃機関に相当し、上記モータジェネレータ20が本発明に係る電動発電機に相当し、上記第2クラッチ25が本発明に係るクラッチに相当し、上記目標走行モード演算部602が本発明に係る内燃機関駆動要求検出手段及び回生駆動要求検出手段に相当し、上記温度センサ32が本発明に係る内部抵抗検出手段に相当し、上記エンジン回転数制御実施判定部613が本発明に係る制御手段に相当する。
【符号の説明】
【0071】
1…ハイブリッド車両
10…エンジン
15…第1クラッチ
20…モータジェネレータ
25…第2クラッチ
30…バッテリ
35…インバータ
40…自動変速機
60…統合コントロールユニット
70…エンジンコントロールユニット
80…モータコントロールユニット
90…トランスミッションコントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、電動発電機と、前記内燃機関の出力軸及び前記電動発電機の出力軸に直接的又は間接的に接続された駆動車輪と、前記電動発電機と前記駆動車輪との間の駆動力を断接するクラッチと、前記電動発電機に電力を供給するとともに前記電動発電機からの電力を充電するバッテリとを備えたハイブリッド車両に対し、制御信号を出力する制御装置であって、
前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求を検出する内燃機関駆動要求検出手段と、
前記電動発電機を回生駆動する要求を検出する回生駆動要求検出手段と、
前記バッテリの内部抵抗値を検出する内部抵抗検出手段と、
前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、前記電動発電機を回生駆動する要求と、前記バッテリの内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、前記内燃機関の回転数制御を実行する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、前記電動発電機を回生駆動する要求と、前記バッテリの内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、前記電動発電機の回転数制御から前記内燃機関の回転数制御に切り換えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記内燃機関の出力トルクの安定性を検出する安定性検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電動発電機の回転数制御から前記内燃機関の回転数制御へ切り換える場合に、前記内燃機関の出力トルクが安定するまでは前記電動発電機の回転数制御と前記内燃機関の回転数制御とを並行して実行し、前記内燃機関の出力トルクが安定した後に前記電動発電機をトルク制御に切り換えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の回転数制御により前記内燃機関が駆動維持可能範囲を超えた場合に、前記駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみ前記電動発電機の回転数制御を実行するハイブリッド車両の制御装置。
【請求項1】
内燃機関と、電動発電機と、前記内燃機関の出力軸及び前記電動発電機の出力軸に直接的又は間接的に接続された駆動車輪と、前記電動発電機と前記駆動車輪との間の駆動力を断接するクラッチと、前記電動発電機に電力を供給するとともに前記電動発電機からの電力を充電するバッテリとを備えたハイブリッド車両に対し、制御信号を出力する制御装置であって、
前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求を検出する内燃機関駆動要求検出手段と、
前記電動発電機を回生駆動する要求を検出する回生駆動要求検出手段と、
前記バッテリの内部抵抗値を検出する内部抵抗検出手段と、
前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、前記電動発電機を回生駆動する要求と、前記バッテリの内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、前記内燃機関の回転数制御を実行する制御手段と、
を備えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関を少なくともアイドル回転数で駆動する要求と、前記電動発電機を回生駆動する要求と、前記バッテリの内部抵抗値が所定値以上であることを検出した場合に、前記電動発電機の回転数制御から前記内燃機関の回転数制御に切り換えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記内燃機関の出力トルクの安定性を検出する安定性検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記電動発電機の回転数制御から前記内燃機関の回転数制御へ切り換える場合に、前記内燃機関の出力トルクが安定するまでは前記電動発電機の回転数制御と前記内燃機関の回転数制御とを並行して実行し、前記内燃機関の出力トルクが安定した後に前記電動発電機をトルク制御に切り換えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の回転数制御により前記内燃機関が駆動維持可能範囲を超えた場合に、前記駆動維持可能範囲を超えた偏差についてのみ前記電動発電機の回転数制御を実行するハイブリッド車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−91562(P2012−91562A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238413(P2010−238413)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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