説明

ハイブリッド車両

【課題】原動機としての電動機のバッテリを有するハイブリッド車両において、バッテリの設置スペースが小さくても、バッテリを効率よく冷却する。
【解決手段】エンジンに供給する液体燃料を貯蔵する燃料タンク12の内部には、バッテリ16が液体燃料に浸るように設けられている。この構成により、バッテリ16を、液体燃料による液冷にて冷却することができる。液体燃料の熱伝達率は、空気のそれより良い。また、液体化石燃料の比熱は、空気のそれより大きい。すなわち、液体燃料は、空気よりバッテリ16から発生した熱を効率よく除去できる。また、ハイブリッド車両10の走行時、車速の変化や車両の旋回により、燃料タンク12内の液体燃料が流動し、バッテリ16内が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原動機として内燃機関と電動機を搭載するハイブリッド車両、特に電動機に供給される電力を蓄えるバッテリの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両は、内燃機関と電動機を有し、これらの原動機の出力により走行する車両である。ハイブリッド車両は、電動機に供給される電力を蓄えるバッテリを搭載している。
【0003】
一般的に、バッテリは高温になると、その寿命が短くなる。よって、バッテリが高温にならないよう、バッテリには、冷却用の空気を供給する冷却ファンが備えられている。
【0004】
下記特許文献1には、フレーム部材に囲まれた同一空間に燃料タンク及びバッテリを配置したハイブリッド車両が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−286246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バッテリの冷却を空冷にて行なう場合、空気の熱伝達率は悪い。そのため、バッテリ内において空気の流路を十分に確保する必要がある。しかし、車両におけるバッテリの設置スペースは、限定されており、空気の流路を十分に確保できるほどのバッテリの設置スペースに余裕はない。そのため、バッテリが均一に冷却されずに、バッテリ内の一部が高温になり、結果としてバッテリの寿命が短くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、バッテリの設置スペースが小さくても、バッテリを効率よく冷却することができるハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のハイブリッド車両は、内燃機関と電動機を搭載し、これら原動機の出力により走行するハイブリッド車両において、前記内燃機関に供給される液体燃料を貯蔵する燃料タンクと、前記電動機に供給される電力を蓄え、前記燃料タンク内に設けられているバッテリを有することを特徴とする。
【0009】
また、前記ハイブリッド車両は、前記燃料タンクが前記内燃機関に前記液体燃料を供給する燃料ポンプを有し、前記燃料ポンプの吸込口がバッテリの側に設けられていることが好適である。
【0010】
さらに、前記ハイブリッド車両は、前記燃料ポンプの吸込口が、バッテリの上側に設けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハイブリッド車両によれば、バッテリの設置スペースが小さくても、バッテリを効率よく冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、ハイブリッド車両10の駆動装置とその動力源の概略構成を示す図である。ハイブリッド車両10は、当該車両10を駆動する原動機として、エンジン20と、発電機能を有する第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記す)22及び第2モータジェネレータ(以下、第2MG)24を有する。これら原動機は、動力分配統合機構28を構成する遊星歯車機構に接続されている。また、動力分配統合機構28には、減速機構30と差動機構32を介して駆動輪34が接続されている。これにより、各原動機の動力が動力分配統合機構28により統合され、駆動輪34へ伝達される。
【0013】
ハイブリッド車両10は、エンジン20と第1及び第2MG22,24の出力を制御することにより、各種のモードによる走行を行う。例えば、エンジン20で走行するモード、第2MG24で走行するモード、エンジン20と第2MG24を協調して走行するモード、エンジン20の動力で第1MG22による発電を行うモード等、各種のモードによる走行を行う。
【0014】
内燃機関であるエンジン20と、電動機である第1及び第2MG22,24では、動力源が異なる。すなわち、エンジン20の動力源が液体燃料(例えば、ガソリン等)であるのに対し、第1及び第2MG22,24の動力源は電力である。よって、ハイブリッド車両10は、各原動機に動力源を供給するため、液体燃料を貯蔵する燃料タンク12と、電力を蓄えるバッテリ16を有している。
【0015】
燃料タンク12には、燃料ポンプ14が設けられている。この燃料ポンプ14により、燃料タンク12に貯蔵された液体燃料が燃料パイプ42を介してエンジンに供給される。一方、バッテリ16と第1及び第2MG22,24の間には、電力を変換するインバータ26が設けられている。バッテリ16とインバータ26は、直流用の電力ケーブル44により接続されている。また、インバータ26と第1及び第2MG22,24は、交流用の電力ケーブル44により接続されている。これにより、バッテリ16に蓄えられた電力がインバータ26により直流電流から交流電流に変換され、第1及び第2MG22,24に供給される。また、第1及び第2MG22,24により発電された電力は、インバータ26により交流電流から直流電流に変換され、バッテリ16に蓄えられる。
【0016】
燃料タンク12とバッテリ16の構成を、図面に従って説明する。図2は、燃料タンク12の概略構成を示す図である。燃料タンク12の内部には、燃料ポンプ14とバッテリ16が設けられている。
【0017】
燃料ポンプ14の吸込み側には、燃料タンク12内の液体燃料を吸込む吸込口40が接続され、吐出し側には、燃料タンク12上面を貫通する燃料パイプ42が接続されている。一方、バッテリ16には、燃料タンク12上面を貫通する電力ケーブル44が接続されている。
【0018】
バッテリ16は、燃料タンク12内の下方に、常に液体燃料に浸るように設けられている。本実施形態では、吸込口40をバッテリ16の上側に配置し、その吸込口40より下部の液体燃料が残るような構成である。これにより、バッテリ16は常に液体燃料に浸ることができる。また、前記構成に限らず、液体燃料の液面レベルを検知するセンサ等を使用すれば、吸込口40がバッテリ16の上側より低い位置に配置されていてもよい。つまり、液面レベルを検知するセンサに基づいて燃料ポンプ14を制御することにより、吸込口40が位置する高さに関係なく、バッテリ16は常に液体燃料に浸ることができる。
【0019】
バッテリ16の構成を、図面に従って説明する。図3は、バッテリ16の概略構成を示す斜視図である。バッテリ16は、略直方体であり、対向する側面が互いに開口部であるケース46と、ケース46の内部に収納される単電池48を有している。バッテリ16は、二次電池、例えばリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池は、雰囲気温度が高くても、他の二次電池、例えばニッケル水素二次電池より性能劣化が少ないことを特徴とする。特に夏場の燃料タンク12内の温度は、例えば液体燃料がガソリンの場合、約60℃に達する。この温度域での使用を考慮すると、リチウムイオン二次電池が好適である。
【0020】
ケース46は、例えば表面を絶縁塗装等の処理を施した金属製であり、耐溶剤性に優れている。また、ケース46は、樹脂製を使用してもよい。この場合、表面には耐溶剤性に優れている高密度ポリエチレン等の層を設けてもよい。ケース46の側面の下部には、ボルト等が貫通する孔を有する固定プレート46aが設けられている。これにより、バッテリ16が燃料タンク12に固定される。
【0021】
単電池48の一の側面には、電荷を取り出す正電極取出部50が設けられ、当該側面に対向する側面には、電荷を取り出す負電極取出部52が設けられている。ケース46内における各単電池48は、正電極取出部50及び負電極取出部52が設けられている側面がケース46の開口部にくるように配置されており、液体燃料の流路を確保するよう間隔をおいて配置される。単電池48を直列接続することにより、バッテリ16は、組電池として、第1及び第2MG22,24の駆動に必要な高電圧を得ることができる。このため、単電池48は、ケース46の一方の開口部側面において、隣接する単電池48の電極取出部の正負が逆になるよう配置される。すなわち、ある単電池48の正電極取出部50と隣接する単電池48の負電極取出部52が隣り合っている。よって、隣接する単電池48の電極取出部を接続することにより、容易に直列接続することができる。
【0022】
この構成によって、バッテリ16を、液体燃料を冷却媒体とする液冷にて冷却することができる。液体燃料の熱伝達率は、空気のそれより良い。すなわち、液体燃料は、バッテリ16から発生した熱を空気より効率よく除去できる。また、液体燃料の比熱は、空気のそれより大きい。すなわち、液体燃料は、バッテリ16から発生した熱を空気より多く除去できる。
【0023】
液体燃料によりバッテリ16内を冷却するためには、ケース46内の単電池48間の流路において、液体燃料を流動させる必要がある。ハイブリッド車両10の走行時、車速の変化や車両の旋回により、燃料タンク12内の液体燃料が流動する。このとき、ケース46内の単電池48間の液体燃料も流動する。これにより、バッテリ16内がむら無く冷却され、バッテリ16内の一部が高温になることは無い。さらに、バッテリ16から発生した熱を除去した液体燃料は、周囲の液体燃料より高温になるため対流により燃料タンク12の上方に移動する。このとき、吸込口40がバッテリ16の上側にあるため、高温の液体燃料が燃料タンク12から排出される。代わりに低温の液体燃料がバッテリ16内に流入してくる。これにより、バッテリ16の冷媒機能を果す液体燃料を、他の動力を使用して攪拌及び流動させる必要はない。なお、液体燃料のうち、化石燃料であるガソリン及び軽油等は、導電性のない液体である。よって、電位差があるバッテリ16をその液体に浸しても短絡が発生することはない。一方、液体燃料で導電性のある液体を使用する場合は、当然バッテリ16を気密構造にする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置をその動力源の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る燃料タンクの概略構成を示す図である。
【図3】本実施形態に係るバッテリの概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
10 ハイブリッド車両、12 燃料タンク、14 燃料ポンプ、16 バッテリ、20 エンジン、22 第1MG、24 第2MG、26 インバータ、28 動力分配統合機構、30 減速機構、32 差動機構、34 駆動輪、40 吸込口、42 燃料パイプ、44 電力ケーブル、46 ケース、48 単電池、50 正電極取出部、52 負電極取出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動機を搭載し、これら原動機の出力により走行するハイブリッド車両において、
前記内燃機関に供給される液体燃料を貯蔵する燃料タンクと、
前記電動機に供給される電力を蓄え、前記燃料タンク内に設けられているバッテリと、
を有することを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両において、
前記燃料タンクは、前記内燃機関に前記液体燃料を供給する燃料ポンプを有し、
前記燃料ポンプの吸込口が、バッテリの側に設けられている、
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2に記載のハイブリッド車両において、
前記燃料ポンプの吸込口が、バッテリの上側に設けられている、
ことを特徴とするハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−320331(P2007−320331A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149332(P2006−149332)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】