説明

バリア性積層体とその製造方法、ガスバリアフィルム及びデバイス

【課題】無機層の上に有機層を設けた態様のバリア性積層体であって、有機層と無機層の密着性と曲げ耐性が良好であり、最外層の有機層の表面の平滑性が良好であるバリア性積層体およびその製造方法の提供。
【解決手段】(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を第1の無機層の上に適用し、硬化させる第1の有機層形成工程と、前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程と、を含むことを特徴とする有機無機積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリア性積層体およびガスバリアフィルム、ならびに、これらを用いたデバイスに関する。また、バリア性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バリア性を有するフィルムについて種々検討されている。例えば、特許文献1には、基板上に、SiO2などからなる無機層である積層防湿薄膜を形成し、その上に芳香族基を有する有機層を含む2層以上の有機層を形成したバリア性積層体が記載されている。一般にこのような芳香族基を有する有機層を設けると、該芳香族基を有する有機層の表面が平坦化されて各層が均一に積層できるために、バリア性能が高まる傾向にあることが知られている。一方、同文献では有機層中にシランカップリング基を開裂させるための酸性基は含まれておらず、無機層と有機層の間の密着性は不十分なものであった。
【0003】
しかし、近年ではバリア性積層体の用途が拡大してきており、バリア性積層体の物理的な強度を改善させるために各層間の密着性を高めることが求められてきている。これに対し、特許文献2には、基板上に、エチレン性二重結合と芳香族基とシランカップリング反応を引き起こす基とを有する重合性化合物を重合させてなる有機層を設け、その表面に無機層を真空スパッタで積層することで、有機層と無機層の間の密着性をシランカップリング反応により高めた、高いバリア性を有するガスバリアフィルムが開示されている。同文献には有機層が複数であってもよいことは記載されているが、実際に有機層を複数層設けた場合については検討されていなかった。また、あらかじめ積層してある無機層上に有機層を積層する場合に、エチレン性二重結合と芳香族基とシランカップリング反応を引き起こす基とを有する重合性化合物を重合させてなる有機層を設けた態様の有機層表面の平滑性についても検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−123971号公報
【特許文献2】特開2010−6063号公報
【特許文献3】特開2009−220343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような状況のもと、本発明者がさらなるバリア性積層体の各層間の密着性の改善を目指して、無機層の上に有機層を設けた態様のバリア性積層体の製造を試みた。しかしながら、同文献に記載の方法では、無機層の上に有機層を設けた態様における有機層と無機層の密着性に不満が残る上、さらにシランカップリング剤を側鎖に有する重合性化合物を最外層の有機層に用いると、その有機層の表面の平滑性が悪化する傾向にあることを見出すに至った。また特許文献3にも無機層間の中間層にシランカップリング剤を用いて密着改良を試みているが、下層の無機層とは密着性がとれるものの上層の無機層との密着には不満が残り、また有機層表面の平滑性は悪化する傾向にあり、更なる改良が必要と判った。
【0006】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、無機層の上に有機層を設けた態様のバリア性積層体であって、有機層と無機層の密着性が良好であり、最外層の有機層の表面の平滑性が良好であるバリア性積層体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、第1の無機層上に有機層を形成するときに両者の密着性を高めるには、シランカップリング剤を開裂させるために有機層中に酸性化合物を添加する必要があることがわかった。しかしながら、この方法では、第1の無機層と有機層との密着性が改善されるものの、有機層内での芳香環基とシランカップリング反応を引き起こす基とを有するシランカップリング剤同士の結合も起きてしまう結果、有機層の表面平滑性が悪くなってしまうことがわかった。すなわち、特許文献2に記載の方法に対し、単に有機層の下層に第1の無機膜を設けて通常のシランカップリング剤を用いた反応を行うだけでは、上記課題を解決することができないことがわかった。
【0008】
そこで、本発明者は、有機層として、酸性化合物とシランカップリング剤を含む第1の有機層と、芳香環基を含む特定の重合性化合物を含む第2の有機層を採用することにより、バリア性積層体における各層間の密着性を改善でき、最外層の有機層の表面を平滑化できることを見出した。更には、密着性が向上するとバリア性積層体の曲げ耐性も良化することを新たに見出した。
【0009】
具体的には、以下の手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
[1] (A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を第1の無機層の上に適用し、硬化させる第1の有機層形成工程と、前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程と、を含むことを特徴とする有機無機積層体の製造方法。
[2] (A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を第1の無機層の上に適用し、硬化させる第1の有機層形成工程と、前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程と、前記第2の有機層の上に第2の無機層を形成する工程を含むことを特徴とする有機無機積層体の製造方法。
[3] 前記第1の有機層の上に、前記第2の有機層用組成物を適用することを特徴とする[1]または[2]に記載の有機無機積層体の製造方法。
[4] 前記第1の有機層用組成物における前記(B)重合性化合物、または、前記第2の有機層用組成物における前記(D)重合性化合物の少なくとも一方として、多官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[5] 前記第2の有機層用組成物において、前記(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートとして多官能芳香環(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[6] 前記第2の有機層用組成物において、前記(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしてビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[7] 前記第1の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分と、前記第2の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分が同じ化合物であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[8] 前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物が、酸性(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[9] 前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物が、リン酸アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[10] 前記第1の無機層および前記第2の無機層の少なくとも一方が、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[11] 前記第1の無機層および前記第2の無機層が、いずれも、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[12] 前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物が、ともに溶剤を含むことを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[13] 前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物が、ともに光重合開始剤を含むことを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[14] 前記第2の有機層用組成物が(F)シランカップリング剤を含むことを特徴とする[1]〜[13]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
[15] 前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤として、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤と同じ化合物を含むことを特徴とする[14]に記載の有機無機積層体の製造方法。
[16] 前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤と、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤が、それぞれ独立にジメトキシメチルシリル基またはトリメトキシシリル基を有することを特徴とする[14]または[15]に記載の有機無機積層体の製造方法。
[17] [1]〜[16]のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法によって製造されたことを特徴とする有機無機積層体。
[18] 第1の無機層と、重合体を含む第1の有機層と、重合体を含む第2の有機層とがこの順に積層されている(但し、前記第1の有機層と第2の有機層の間に、1層または2層以上の有機層が積層されていてもよい)有機無機積層体であって、前記第1の有機層中に酸性基とシロキサン結合が含まれており、前記第1の無機層を構成する原子Mと前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されており、前記第2の有機層中に芳香環構造とシロキサン結合が含まれており、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きいことを特徴とする有機無機積層体。
[19] 第1の無機層と、重合体を含む第1の有機層と、重合体を含む第2の有機層とがこの順に積層されている(但し、前記第1の有機層と第2の有機層の間に、1層または2層以上の有機層が積層されていてもよい)有機無機積層体であって、前記第1の有機層中に酸性基とシロキサン結合が含まれており、前記第1の無機層を構成する原子Mと前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されており、前記第2の有機層中に芳香環構造とシロキサン結合が含まれており、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きく、前記第2の無機層を構成する原子M’と前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合が形成されていることを特徴とする有機無機積層体。
[20] 前記第1の有機層が、前記第2の有機層と隣接していることを特徴とする[18]または[19]に記載の有機無機積層体。
[21] 前記第1の有機層または前記第2の有機層の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[18]〜[20]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[22] 前記第2の有機層が芳香族基を有するポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[18]〜[21]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[23] 前記第2の有機層がポリビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[18]〜[22]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[24] 前記第1の有機層が、酸性基を有するポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする[18]〜[23]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[25] 前記酸性基が、リン酸基であることを特徴とする[24]に記載の有機無機積層体。
[26] 前記第1の無機層および前記第2の無機層の少なくとも一方が、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする[19]〜[25]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[27] 前記第1の無機層および前記第2の無機層が、いずれも、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする[19]〜[25]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[28] 前記第1の有機層に含まれるシロキサン結合を構成しているSi原子が少なくとも1種の有機基と連結しており、該有機基と同種の有機基に、前記第2の有機層に含まれるシロキサン結合を構成しているSi原子が連結していることを特徴とする[19]〜[27]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[29] 前記第1の無機層と前記第2の無機層との間に含まれる有機層の合計膜厚が0.1〜50μmであることを特徴とする[18]〜[28]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[30] バリア性積層体であることを特徴とする[18]〜[29]のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
[31] 基材フィルム上に、[18]〜[30]のいずれか一項に記載の有機無機積層体が形成されていることを特徴とするガスバリアフィルム。
[32] [31]に記載のガスバリアフィルムを基板として用いたことを特徴とするデバイス。
[33] [18]〜[30]のいずれか一項に記載の有機無機積層体、または[31]に記載のガスバリアフィルムを用いて封止したことを特徴とするデバイス。
[34] 前記デバイスが、または太陽電池有機EL素子であることを特徴とする[32]または[33]に記載のデバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、無機層の上に有機層を設けた態様のバリア性積層体であって、有機層と無機層の密着性と曲げ耐性が良好であり、最外層の有機層の表面の平滑性が良好であるバリア性積層体およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、本発明における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を含む意味で使用される。
【0012】
[バリア性積層体の製造方法]
本発明のバリア性積層体の製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)は、(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を第1の無機層の上に適用し、硬化させる第1の有機層形成工程と、前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程と、を含むことを特徴とする。
さらに、本発明のバリア性積層体の製造方法は、前記第2の有機層の上に第2の無機層を形成する工程を含むことが好ましい。本発明のバリア性積層体の製造方法で得られるバリア性積層体は有機層の表面が平滑であるため、上記第2の無機層を形成する工程により、容易に本発明のバリア性積層体のバリア性をさらに高めることができる。
【0013】
<第1の無機層の形成>
(第1の無機層の形成方法)
本発明の製造方法では、前記第1の無機層の形成方法は、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法(PVD)、種々の化学的気相成長法(CVD)、めっきやゾルゲル法等の液相成長法がある。本発明の製造方法では、前記第1の無機層の形成にプラズマ製膜法を用いることが好ましく、プラズマCVD法を用いることがより好ましい。本発明では、無機層の材料として、金属酸化物を用い、プラズマプロセスにより製膜した場合であっても、高いバリア性を有するバリア性積層体が得られる点で、極めて有意である。
無機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
【0014】
(第1の無機層に用いられる成分)
前記第1の無機層の形成に用いられる成分は、金属原子Mを含み、該原子Mが前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合を形成できる以外は特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物または炭化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物、酸化窒化物または炭化物がより好ましく、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含むことが特に好ましく、ケイ素窒化物であることがより特に好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
【0015】
<第1の有機層の形成>
本発明の製造方法は、(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を前記第1の無機層の上に適用し、硬化させることを特徴とする。
前記第1の有機層用組成物に含まれる各成分と、前記第1の有機層の形成方法について、説明する。
【0016】
(第1の有機層の形成方法)
前記第1の有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法など既知の塗布方法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
本発明では、重合性化合物を含む組成物を、光照射して硬化させることが好ましい。照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.1J/cm2以上が好ましく、0.5J/cm2以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート系化合物を用いる場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0017】
((A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物)
前記第1の有機層用組成物は、(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物を含む。前記重合性酸性化合物を含めることにより、得られるバリア性積層体の層間密着性を向上させることができる。
本明細書中、(A)重合性酸性化合物とは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーをいう。本発明で用いる重合性酸性化合物は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸を含有するモノマーであることが好ましく、カルボン酸基またはリン酸基を含有するモノマーであることがより好ましく、リン酸基を含有するモノマーであることが特に好ましい。
また、本明細書中、重合性酸性化合物のオリゴマーもしくはポリマーとは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸等の酸性基を含有するモノマーが重合して得られる重縮合体のことをいう。
前記(A)重合性酸性化合物である酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーは、酸性(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーであることが好ましく、リン酸アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーであることがより好ましい。
また、前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物の酸性基は、分子の末端に存在することが好ましい。
一方、前記オリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物については、特に重合度や分子量に制限はないが、その分子量が100〜10000であることが好ましく、200〜8000であることがより好ましく、400〜6000であることが特に好ましい。
また、前記オリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物の重合度は2〜100であることが好ましく、5〜80であることがより好ましく、10〜50であることが特に好ましい。
前記重合性酸性化合物と、前記オリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物の中では、前記重合性酸性化合物の方が密着性を改善する観点から、好ましい。
【0018】
以下に、本発明で好ましく用いられる(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0019】
【化1】

【0020】
【化2】

【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
((B)重合性化合物)
前記第1の有機層用組成物は、(B)重合性化合物を含む。
前記(B)重合性化合物としては特に制限はなく、公知の重合性化合物を用いることができる。
本発明の製造方法は、前記第1の有機層用組成物における前記(B)重合性化合物、または、前記第2の有機層用組成物における前記(D)重合性化合物の少なくとも一方として、多官能(メタ)アクリレートを含むことが、曲げ耐性を向上させる観点から好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートの中でも、2官能以上のアクリレートがより好ましく、3官能以上のアクリレートが特に好ましい。
以下、前記(B)重合性化合物として用いられる多官能モノマーとその他のモノマーについて説明する。
【0024】
本発明で用いる重合性組成物には、2官能(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましい。2官能(メタ)アクリレートを含有することにより、バリア性および有機層表面の平滑性がより向上する。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が好ましい例として挙げられる。
【0025】
以下に、2官能アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
また、2官能モノマーは2種類以上含んでいてもよいが、前記第1の有機層用組成物中には2官能モノマーは含まれない方が、バリア性を改善する観点から好ましい。
【0028】
本発明における前記第1の有機層中に含まれる前記(B)重合性組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他のモノマーを含んでいてもよく、前記第1の有機層用組成物中には、前記(B)重合性化合物として3官能のアクリレートを含んでいることが好ましく、3官能のアクリレートのみを含んでいることがバリア性を改善する観点からより好ましい。以下において、3官能以上のモノマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
本発明で用いる前記第1の有機層用組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、単官能モノマーや、(メタ)アクリレート以外のモノマー(例えばスチレン誘導体、無水マレイン酸誘導体、エポキシ化合物、オキセタン誘導体など)や、各種のポリマー(例えばポリエステル、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル等)を含んでも良い。
一方、前記第1の有機層用組成物中には、後述する第2の有機層用組成物に含まれる(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含まないことが、好ましい。
また、前記第1の有機層用組成物中には、前記(B)重合性化合物として3官能のアクリレートを含んでいることが好ましい。
【0033】
前記第1の有機層用組成物における、前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物/(B)重合性化合物の添加量の割合(質量比)は、1/2〜1/200であることが好ましく、1/5〜1/100であることがより好ましく、1/10〜1/40であることが特に好ましい。
【0034】
((C)シランカップリング剤)
前記第1の有機層用組成物は、(C)シランカップリング剤を含む。
前記(C)シランカップリング剤としては、特に制限はなく公知のシランカップリング剤を用いることができる。
【0035】
その中でも、本発明の製造方法では、前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤がジメトキシメチルシリル基またはトリメトキシシリル基を有することが好ましい。さらに、これらのシランカップリング剤の中でも、トリメトキシシリル基を有することが、密着性を改善する観点から好ましい。
また、前記(C)シランカップリング剤は芳香族基を含まないことが、第1の有機層の表面を平滑化し、後述する第2の有機層を適用して硬化したときに、該第2の有機層の表面を平滑化できる観点から好ましい。
また、前記(C)シランカップリング剤は重合性基を有していてもいなくてもよいが、重合性基を有している場合は(メタ)アクリレート基であることが好ましい。また、前記(C)シランカップリング剤は単官能であっても多官能であってもよいが、単官能であることが好ましい。
【0036】
前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤の好ましい例としては、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0037】
【化10】

【0038】
前記第1の有機層用組成物における、前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物/(C)シランカップリング剤の添加量の割合(質量比)は、1/1〜1/50であることが好ましく、1/2〜1/20であることがより好ましく、1/3〜1/10であることが特に好ましい。
前記第1の有機層用組成物における、前記(C)シランカップリング剤/(B)重合性化合物の添加量の割合(質量比)は、1/1〜1/50であることが好ましく、1/2〜1/20であることがより好ましく、1/3〜1/10であることが特に好ましい。
【0039】
(重合開始剤)
本発明における前記第1の有機層用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよく、その中でも光重合開始剤を含んでいることが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、前記第1の有機層中に含まれる重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Esacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZT、エザキュアKTO46など)、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているオリゴマータイプのエザキュアKIPシリーズが挙げられる。
【0040】
(溶剤)
本発明の製造方法では、前記第1の有機層用組成物が溶剤を含むことが好ましく、該溶剤を含む組成物を塗布することが好ましい。
本発明に用いることができる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、THF、炭化水素系溶剤、ハロゲン系溶剤などを挙げることができ、その中でも、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤が好ましく、2−ブタノンがより好ましい。なお、本発明に用いられる溶剤はこれらに限定されない。
【0041】
<第2の有機層の形成>
本発明の製造方法では、前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程を含むことを特徴とする。
【0042】
(第2の有機層の形成方法)
前記第2の有機層の形成方法としては、特に定めるものではなく、第2の有機層用組成物の適用方法、硬化方法ともに第1の有機層の形成方法の好ましい態様と同様である。
【0043】
本発明の製造方法では、前記第1の有機層の上に、前記第2の有機層用組成物を適用することが、前記第1の有機層と前記第2の有機層を隣接させる観点から好ましい。
【0044】
((D)重合性化合物)
本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物が(D)重合性化合物を含む。前記(D)重合性化合物の好ましい例は、前記第1の有機層用組成物に用いられる(B)重合性化合物の好ましい例と同様である。
本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物における前記(D)重合性化合物が多官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。前記(D)重合性化合物に用いられる多官能(メタ)アクリレートの好ましい例は、前記第1の有機層用組成物における前記(B)重合性化合物に好ましく用いられる多官能(メタ)アクリレートの好ましい例と同様である。
【0045】
本発明の製造方法では、前記第1の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分と、前記第2の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分が同じ化合物であることが好ましい。前記第2の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分は前記(D)重合性化合物であることが好ましく、前記第1の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分は前記(B)重合性化合物であることが好ましい。すなわち、前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(B)重合性化合物と、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(D)重合性化合物とが、同じ化合物であることが有機層間の密着性を高める観点から好ましい。
また、上述のとおり、前記第2の有機層用組成物に含まれる主成分としての前記(D)重合性化合物は、前記第1の有機層用組成物に含まれる主成分しての前記(B)重合性化合物と同様、3官能のアクリレートであることが好ましい。
【0046】
((E)芳香族基を有する(メタ)アクリレート
本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物が(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む。本発明に用いることができる前記(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく公知の芳香族基を有する(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0047】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートの芳香族基は、1価であっても、2価以上であってもよいが、2価または3価であることが好ましく、2価であることがより好ましい。すなわち、前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートは2官能または3官能の(メタ)アクリレートであることが好ましく、2官能の(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートの芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビスフェノール基、フェニレン基、ナフチレン基、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、カルド骨格などを挙げることができ、その中でもビスフェノール骨格、フルオレン骨格、カルド骨格が好ましく、ビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、ビスフェノールA骨格を有する(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0048】
前記(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートの好ましい例としては、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化11】

【0050】
前記第2の有機層用組成物における、前記(D)重合性化合物/(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートの添加量の割合(質量比)は、99/1〜1/99であることが好ましく、19/1 〜1/9であることがより好ましく、9/1〜1/4であることが特に好ましい。
【0051】
((F)シランカップリング剤)
前記第2の有機層用組成物は、(F)シランカップリング剤を含む。
その中でも、本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤がジメトキシメチルシリル基またはトリメトキシシリル基を有することが好ましい。
前記(F)シランカップリング剤の好ましい例は、前記第1の有機層用組成物に用いられる(C)シランカップリング剤の好ましい例と同様である。
【0052】
本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤として、前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤と同じ化合物を含むことが、製造工程の簡略化と安定化の観点から好ましい。
【0053】
前記第2の有機層用組成物における、前記(D)重合性化合物/(F)シランカップリング剤の添加量の割合(質量比)は、1/1〜1/50であることが好ましく、1/2〜1/20であることがより好ましく、1/3〜1/10であることが特に好ましい。
一方、前記第2の有機層用組成物中には重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物が全く含まれていないことが、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤の結合サイトが後述する第2の無機層の製膜前に開裂させずに残す観点から、好ましい。
【0054】
(光重合開始剤)
本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物が光重合開始剤を含むことが好ましく、該光重合開始剤の好ましい例は、前記第1の有機層用組成物に用いられる光重合開始剤の好ましい例と同様である。
本発明の製造方法では、前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物が、ともに光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0055】
(溶剤)
本発明の製造方法では、前記第2の有機層用組成物が溶剤を含むことが好ましく、該溶剤の好ましい例は、前記第1の有機層用組成物に用いられる溶剤の好ましい例と同様である。
本発明の製造方法では、前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物が、ともに溶剤を含むことが好ましい。このように溶剤を含むことで、前記第1の有機層の上に前記第2の有機層用組成物を適用する場合は、前記第1の有機層用組成物と前記第2の有機層用組成物の密着性を高めることができる。さらに、前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物に含まれる溶剤が同じ溶剤であることが、より前記第1の有機層用組成物と前記第2の有機層用組成物の密着性を高める観点から好ましい。このような各有機層用組成物を用いることで、前記第1の有機層と前記第2の有機層の界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層を形成することができ、前記第1の有機層用組成物と前記第2の有機層用組成物の密着性が高まる。
【0056】
<その他の有機層の形成>
本発明の製造方法では、その他の有機層を形成してもよい。
前記その他の有機層の形成方法としては、前記第1の有機層または前記第2の有機層の形成方法と同様である。
また、前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上のその他の有機層の上に第2の有機層用組成物を適用する場合は、さらにその他の有機層用組成物に溶剤が含まれていることが、前記第1の有機層用組成物、その他の有機層および前記第2の有機層用組成物の密着性を高める観点から好ましい。
【0057】
<第2の無機層の形成>
本発明の製造方法では、前記第2の無機層の製造方法としては特に制限はなく、公知の方法を採用することができ、前記第1の無機層の製造方法の例で挙げた方法と同様の方法を用いることができる。その中でも、前記第2の無機層の製造方法は、プラズマ製膜法で製造することが好ましく、プラズマCVD法で製造することがより好ましい。本発明では、無機層の材料として、金属酸化物を用い、プラズマプロセスにより製膜した場合であっても、高いバリア性を有するバリア性積層体が得られる点で、極めて有意である。
その他の前記第2の無機層の形成方法としては、特に定めるものではなく、第1の無機層の形成方法の好ましい態様と同様である。また、前記第2の無機層は、前記第1の無機層と同一または別の金属原子M’を含み、該原子M’が前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合を形成できる成分を用いることが好ましい。
さらに、本発明のバリア性積層体において、特にバリア性を高める必要がない場合は、ITOやアルミニウムを前記第2の無機層として積層してもよい。また、その場合は、前記第2の有機層にシランカップリング剤を含まない方が、より好ましい。
【0058】
[バリア性積層体]
本発明のバリア性積層体は、第1の無機層と、重合体を含む第1の有機層と、重合体を含む第2の有機層とがこの順に積層されている(但し、前記第1の有機層と第2の有機層の間に、1層または2層以上の有機層が積層されていてもよい)有機無機積層体であって、前記第1の有機層中に酸性基とシロキサン結合が含まれており、前記第1の無機層を構成する原子Mと前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されており、前記第2の有機層中に芳香環構造とシロキサン結合が含まれており、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きいことを特徴とする構造である。
本発明者の検討によれば、第1の有機層に含まれる酸性化合物により、同じく第1の有機層に含まれるシランカップリング剤が開裂し、第1の無機層と第1の有機層の間の密着性を改良することができる。また、前記第2の有機層中に芳香環構造が含まれていることにより、前記第2の有機層の表面の平滑性が高い。
また、前記第2の有機層中にシランカップリング剤由来の構造は含まれていてもいなくてもよいが、シランカップリング剤由来の構造が含まれている場合は、前記芳香環構造とは、異なる化合物に由来する構造であることが好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもないが、前記シランカップリング剤が、重合性基と、芳香環構造とを同一分子中に有する構造の化合物であると、該化合物のシランカップリング結合を引き起こす基は芳香環構造からみて側鎖に位置されることとなる。そのため、シランカップリング結合を引き起こす基どうしが第2の有機層中で互いに結合したり、後述する第2の無機層を本発明のバリア性積層体が有する場合は該第2の無機層中の金属原子(M)とシランカップリング結合を引き起こす基が結合したりすることで、重合性基と、芳香環構造とを同一分子中に有する構造のシランカップリング剤は、芳香環構造が第2の有機層の表面を向いて配向し難くなる。したがって、第2の有機層の表面の平滑性を高める観点からは、前記第2の有機層中にシランカップリング剤由来の構造が含まれている場合は、前記芳香環構造とは異なる化合物に由来する構造であることが好ましい。
【0059】
さらに、本発明のバリア性積層体は第2の無機層を前記第2の有機層の上に設けてあることが好ましく、前記第2の無機層を構成する原子M’と前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合が形成されていることがより好ましい。
第2の有機層にシランカップリング剤は含まれていてもいなくてもよいが、シランカップリング剤が含まれている場合は第2の有機層に含まれる酸価が前記第1の有機層に含まれる酸価よりも小さいため、第2の有機層内でシランカップリング剤どうしが結合しにくい。第2の無機層と第2の有機層との間の密着性を改良することができる。その結果、バリア性と密着性が同時に向上しているものと推定される。
以下、本発明のバリア性積層体の各層の構成について詳細に説明する。
【0060】
(第1の無機層)
第1の無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層である。
本発明のバリア性積層体では、前記第1の無機層を構成する原子Mと前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されていることを特徴とする。このような結合により、本発明のバリア性積層体は前記第1の無機層と前記第1の有機層の密着性が高い。
前記第1の無機層に含まれる成分は、上記性能を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化窒化物または金属酸化炭化物であり、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物などを好ましく用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、Zn、Tiから選ばれる金属の酸化物、窒化物、酸化窒化物または炭化物が好ましく、特にSiまたはAlの金属酸化物、窒化物、酸化窒化物または炭化物がより好ましく、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含むことが好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
本発明により形成される無機層の平滑性は、1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.3nm以下がより好ましい。
【0061】
無機層の厚みに関しては特に限定されないが、1層に付き、通常、5〜500nmの範囲内であり、好ましくは10〜200nmである。無機層は複数のサブレイヤーから成る積層構造であってもよい。この場合、各サブレイヤーが同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、米国公開特許2004−46497号明細書に開示されているように前記第1の有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0062】
(第1の有機層)
本発明における第1の有機層は重合体を含み、酸性基とシロキサン結合が含まれており、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きく、前記第1の無機層を構成する原子Mと該第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されていることを特徴とする。このようなM−O−Siの結合を有していることで、本発明のバリア性積層体は、密着性が高く、水蒸気透過率も良好となる。
【0063】
前記第1の有機層に含まれる成分としては、前記第1の有機層用組成物を重合してなる成分を挙げることができる。
すなわち、前記第1の有機層はポリ(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、前記第1の有機層は酸性基を有するポリ(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。また、前記酸性基が、リン酸基であることが好ましい。
また、本発明のバリア性積層体は、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きい。
【0064】
また、本発明のバリア性積層体は、前記第1の有機層または前記第2の有機層の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0065】
前記第1の有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満であることが好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0066】
前記第1の有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、第1の有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。
前記第1の有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
【0067】
本発明のバリア性積層体は、前記第1の有機層が、前記第2の有機層と隣接していることが、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間の密着性を高め、かつ水蒸気透過率を改善する観点から好ましい。
【0068】
本発明のバリア性積層体は、前記第1の有機層に含まれるシロキサン結合を構成しているSi原子が少なくとも1種の有機基と連結しており、該有機基と同種の有機基に、前記第2の有機層に含まれるシロキサン結合を構成しているSi原子が連結していることが好ましい。すなわち、前記第1の有機層用組成物中に含まれる(C)シランカップリング剤と、前記第2の有機層用組成物中に含まれていてもよい(F)シランカップリング剤とが同じ化合物であることが、好ましい。
【0069】
(第2の有機層)
本発明における第2の有機層は、重合体を含み、シロキサン結合が含まれており、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きいことを特徴とする。
前記第2の有機層に含まれる成分としては、前記第2の有機層用組成物を重合してなる成分を挙げることができる。
【0070】
前記第2の有機層は、シランカップリング剤を含んでいてもいなくてもよいが、後述する第2の無機層をさらに積層する場合には、含んでいることが好ましい。前記第2の有機層がシランカップリング剤を含んでいる場合、前記第2の無機層を構成する原子M’と前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合が形成されていることが、バリア性積層体の密着性を改良する観点から好ましい。
【0071】
また、本発明のバリア性積層体は、前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きく、前記第2の有機層は酸価がゼロであることが、前記第2の有機層を形成するときに第2の有機層用組成物中に含まれる(F)シランカップリング剤を開裂させずに結合サイトを残した状態とし、その後の前記第2の無機層をプラズマ製膜するときに第2の有機層用組成物中に含まれる(F)シランカップリング剤を開裂させることができ、好ましい。このような構成であることで、前記第2の無機層を構成する原子M’と前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合を有する構成とすることができ、より前記第2の有機層と前記第2の無機層の間の密着性を高め、かつ、より水蒸気透過率を改善することができる。
【0072】
前記第2の有機層の平滑性、膜厚および膜硬度の好ましい範囲は、前記第1の有機層の好ましい範囲と同様である。また、前記第2の有機層は、前記第1の有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。このような構成であることで、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間の密着性をより高めることができる。
前記第1の有機層との界面が明確で無い場合は、前述の前記第1の有機層の酸価は該第1の有機層と前記第1の無機層との界面での値を測定値とし、前記第2の有機層の酸価は前記第1の有機層とは逆側の表面における値を測定とする。なお、本発明のバリア性積層体が第2の無機層を有する場合は、該第2の有機層と前記第2の無機層との界面での値を第2の有機層の酸価の測定値とする。
【0073】
(その他の有機層)
有機層は第1の有機層および第2の有機層の他に積層する場合は、各々の有機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが好ましい。その他の有機層としては、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間の中間有機層や、前記第1の無機層と後述する基材フィルムとの間の基材フィルム側中間有機層を挙げることができる。本発明の製造方法では、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間の中間有機層は形成されていない方が、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間の密着性を改善する観点から好ましい。一方、本発明の製造方法では、前記第1の無機層と後述する基材フィルムとの間の基材フィルム側中間有機層が形成されていることが、密着性を向上する観点から好ましい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように無機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0074】
本発明のバリア性積層体は、前記第1の無機層と前記第2の無機層との間に含まれる有機層の合計膜厚が0.1〜50μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることがより好ましく、0.4〜5μmであることが特に好ましい。なお、前記第1の無機層と前記第2の無機層との間に含まれる有機層の合計膜厚とは、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間に中間有機層が設けられていない場合は前記第1の有機層の膜厚と前記第2の有機層の膜厚との合計膜厚のことを言い、前記第1の有機層と前記第2の有機層の間に中間有機層が設けられている場合は前記第1の有機層の膜厚と前記第2の有機層の膜厚と中間有機層の膜厚との合計膜厚のことを言う。
【0075】
(第2の無機層)
前記第2の無機層は、通常、金属化合物からなる薄膜の層であり、本発明のバリア性積層体に必須の構成ではないが、よりバリア性を高める観点から、第2の無機層が前記第2の有機層の上に積層されていることが好ましい。前記第2の無機層を構成する原子M’と前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合が形成されていることが好ましい。
前記第2の無機層に含まれる成分の好ましい範囲は、前記第1の無機層に含まれる成分の好ましい範囲と同様である。
【0076】
前記第2の無機層の平滑性、膜厚および膜硬度の好ましい範囲は、前記第1の有機層の好ましい範囲と同様である。また、米国公開特許2004−46497号明細書に開示されているように前記第2の有機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0077】
(有機層と無機層の積層)
有機層と無機層の積層は、第1の無機層/第1の有機層/第2の有機層の順に積層されているバリア性積層体が含まれている以外は、所望の層構成に応じて有機層と無機層を繰り返し製膜することにより行うことができる。
例えば、基材フィルム/基材フィルム側中間有機層/第1の無機層/第1の有機層/第2の有機層の順に積層したり、基材フィルム/基材フィルム側中間有機層/第1の無機層/第1の有機層/第2の有機層/第2の無機層の順に積層したり、基材フィルム/第1の無機層/第1の有機層/第2の有機層/第2の無機層/有機層の順に積層したり、基材フィルム/第1の無機層/第1の有機層/中間有機層/第2の有機層/第2の無機層の順に積層したり、基材フィルム//基材フィルム側中間有機層/第1の無機層/第1の有機層/中間有機層/第2の有機層/第2の無機層の順に積層したりすることができる。
バリア性積層体を構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。また、有機層および無機層以外の他の構成層を含んでいてもよい。
【0078】
また、本発明におけるバリア性積層体は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、バリア性積層体を構成する組成が膜厚方向に有機領域と無機領域が連続的に変化するいわゆる傾斜材料層を含んでいてもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(2005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示されている有機領域と無機領域が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。
【0079】
(機能層)
本発明のバリア性積層体は、バリア性積層体上、もしくはその他の位置に、機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0080】
(バリア性積層体の用途)
本発明のバリア性積層体は、通常、支持体の上に設けるが、この支持体を選択することによって、様々な用途に用いることができる。支持体には、基材フィルムのほか、各種のデバイス、光学部材等が含まれる。具体的には、本発明のバリア性積層体はガスバリアフィルムのバリア層として用いることができる。また、本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、バリア性を要求するデバイスの封止に用いることができる。本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは、光学部材にも適用することができる。以下、これらについて詳細に説明する。
【0081】
<ガスバリアフィルム>
本発明のガスバリアフィルムは、基材フィルム上に、本発明のバリア性積層体が形成されていることを特徴とする。本発明のガスバリアフィルムにおいて、本発明のバリア性積層体は、基材フィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。本発明のバリア性積層体は、基材フィルム側から無機層、有機層の順に積層していてもよいし、有機層、無機層の順に積層していてもよい。本発明の積層体の最上層は無機層でも有機層でもよい。
また、本発明におけるガスバリアフィルムは大気中の酸素、水分、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等を遮断する機能を有するバリア層を有するフィルム基板である。
ガスバリアフィルムを構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。
ガスバリアフィルムはバリア性積層体、基材フィルム以外の構成成分(例えば、易接着層等の機能性層)を有しても良い。機能性層はバリア性積層体の上、バリア性積層体と基材フィルムの間、基材フィルム上のバリア性積層体が設置されていない側(裏面)のいずれに設置してもよい。
【0082】
(プラスチックフィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等の積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0083】
本発明のガスバリアフィルムを後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0084】
本発明のガスバリアフィルムを有機EL素子等のデバイスに用いる場合は、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であるものを用いる。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のガスバリアフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、耐溶剤層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0085】
<デバイス>
本発明のデバイスは、本発明のガスバリアフィルムを基板として用いるか、本発明のガスバリアフィルムをその封止に用いることを特徴とする。
本発明のバリア性積層体およびガスバリアフィルムは空気中の化学成分(酸素、水、窒素酸化物、硫黄酸化物、オゾン等)によって性能が劣化するデバイスに好ましく用いることができる。前記デバイスの例としては、例えば、有機EL素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池等)等の電子デバイスを挙げることができ有機EL素子に好ましく用いられる。
【0086】
本発明のバリア性積層体は、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のバリア性積層体を設ける方法である。バリア性積層体を設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
【0087】
本発明のガスバリアフィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリアフィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
【0088】
(有機EL素子)
本発明のガスバリアフィルムを用いた本発明のデバイスとしては、有機EL素子を挙げることができる。前記有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
【0089】
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリアフィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)またはHAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)、IPS型(In-Plane Switching)であることが好ましい。
【0090】
本発明のガスバリアフィルムは偏光板と組み合わせて使用することもでき、このときガスバリアフィルムのバリア性積層体がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にガスバリアフィルムが配置されることになるため、ガスバリアフィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリアフィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリアフィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリアフィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0091】
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0092】
(太陽電池)
本発明のガスバリアフィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のガスバリアフィルムは、接着層が太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。本発明のガスバリアフィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【0093】
(電子ペーパー)
本発明のガスバリアフィルムは、電子ペーパーにも用いることができる。電子ペーパーは反射型電子ディスプレイであり、高精細且つ高コントラスト比を実現することが可能である。
電子ペーパーは、基板上にディスプレイ媒体および該ディスプレイ媒体を駆動するTFTを有する。ディスプレイ媒体としては、従来知られているいかなるディスプレイ媒体でも用いることができる。電気泳動方式、電子粉粒体飛翔方式、荷電トナー方式、エレクトロクロミック方式等のいずれのディスプレイ媒体であっても好ましく用いられるが、電気泳動方式のディスプレイ媒体がより好ましく、なかでもマイクロカプセル型電気泳動方式のディスプレイ媒体が特に好ましい。電気泳動方式のディスプレイ媒体は、複数のカプセルを含むディスプレイ媒体であり、該複数のカプセルのそれぞれが懸濁流体内で移動可能な少なくとも1つの粒子を含む。ここでいう少なくとも1つの粒子は、電気泳動粒子または回転ボールであることが好ましい。また、電気泳動方式のディスプレイ媒体は、第1の面および該第1の面と対向する第2の面を有し、該第1および該第2の面の内の1つの面を介して観察イメージを表示する。
また、基板上に設けられるTFTは、少なくともゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極及びドレイン電極を有し、活性層とソース電極の間か活性層とドレイン電極の間の少なくとも一方に、電気的に接続する抵抗層をさらに有する。電子ペーパーは、電圧印加により光の濃淡を生じる。
【0094】
高精細なカラー表示の電子ディスプレイを製造する場合は、アライメント精度を確保するためにカラーフィルター上にTFTを形成することが好ましい。ただし、電流効率が低い通常のTFTで必要な駆動電流を得ようとしてもダウンサイジングに限界があるため、ディスプレイ媒体の高精細化に伴って画素内のTFTが占める面積が大きくなってしまう。画素内のTFTが占める面積が大きくなると、開口率が低下しコントラスト比が低下する。このため、透明なアモルファスIGZO型TFTを用いても、光透過率は100%にはならず、コントラストの低下は避けられない。そこで、例えば特開2009−021554号公報に記載されるようなTFTを用いることにより、画素内のTFTの占める面積を小さくして、開口率とコントラスト比を高くすることができる。また、この種のTFTをカラーフィルター上に直接形成すれば、高精細化も達成することができる。
【0095】
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネルが挙げられる。
【0096】
<光学部材>
本発明のガスバリアフィルムを用いた光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるガスバリアフィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0097】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0098】
1.ガスバリアフィルムの作製
基材フィルムとして、ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、帝人デュポン社製、商品名:テオネックスQ65FA)を20cm角に裁断し、その易接着面側に以下の手順でバリア層を形成して評価した。
【0099】
(1−0)基材フィルム側の中間有機層(Y−6)の形成
基材フィルム側の中間有機層用組成物Y−6を18.6g、紫外線重合開始剤(ランベルティ社製、ESACURE KTO46)1.4g、2−ブタノン180gからなる重合性組成物を液厚が5μmとなるようにワイヤーバーを用いて基材フィルム上に塗布し、窒素置換法により酸素濃度が0.1%となったチャンバー内にて高圧水銀ランプの紫外線を照射(積算照射量約1J/cm2)して硬化させ、膜厚が600nm±50nmの基材フィルム側の中間有機層を形成した。
但し、前記基材フィルム側の中間有機層用組成物Y−6は、下記構造の重合性化合物TMPATを14.9g、シランカップリング剤SC−1を3.7g含む。
【0100】
(1−1)第1の無機層(X)の形成
CCP(容量結合プラズマ方式)−CVD装置を用いて、第1の無機層であるケイ素窒化物層を膜厚40nmになるよう調整して基材フィルム側中間有機層上に形成した。原料ガスとして、シランガス(流量160sccm)、アンモニアガス(流量370sccm)、水素ガス(流量590sccm)、および窒素ガス(流量240sccm)を用いた。また成膜圧力は40Pa、周波数13.56MHzの高周波電源を用いプラズマ励起電力を2.5kWとした。
【0101】
(1−2)第1の有機層形成
下記表1に示す組成を有する重合性組成物(18.6g)、紫外線重合開始剤(ランベルティ社製、ESACURE KTO46)1.4g、2−ブタノン180gからなる第1の有機層用組成物を液厚が5μmとなるようにワイヤーバーを用いて第1の無機層上に塗布し、窒素置換法により酸素濃度が0.1%となったチャンバー内にて高圧水銀ランプの紫外線を照射(積算照射量約1J/cm2)して第一の有機層を硬化させ、膜厚が600nm±50nmの第一の有機層を形成した。
なお、比較例6および7では第1の有機層(重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物を含む有機層)を形成しなかった。
【0102】
(1−3)中間有機層(Y−1〜Y−5)の形成
実施例11〜15では、下記表3に示す組成を有する重合性化合物を用いた以外は、第1の有機層と同様にして中間有機層を形成した。
【0103】
(1−4)第2の有機層の形成
下記表2に示す組成を有する重合性化合物を用い、膜厚を400nm±50nmにした以外は、第一の有機層と同様にして、実施例1〜10、16、17、比較例1および2では第1の有機層上に、実施例11〜15では中間有機層上に、比較例6および7では第1の無機層上に、それぞれ第2の有機層を形成した。
なお、比較例3〜5では第2の有機層を形成しなかった。
【0104】
(1−5)第2の無機層(X)の形成
CCP(容量結合プラズマ方式)−CVD装置を用いて、第2の無機層(X)であるケイ素窒化物層を形成した。実施例1〜16、比較例1、2、6および7では第2の有機層上に、比較例3〜5では第1の有機層上に膜厚40nmになるよう調整して形成した。
【0105】
以下の表1〜3に、実施例の第1の有機層、第2の有機層および有機層に用いた重合性化合物の種類と混合比を示す。
【表1】

表1中、リン酸および塩酸は、重合性でもオリゴマーもしくはポリマーでもない酸性化合物である。
【表2】

【表3】

【0106】
(芳香族基を有する(メタ)アクリレート)
以下に芳香族基を有する(メタ)アクリレートの構造を示す。
【0107】
【化12】

【化13】

【化14】

【0108】
(重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物)
以下に重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物の構造を示す。なお、PA、CA−1、CA−2およびPPはいずれも酸性(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーである。
【0109】
【化15】

【0110】
【化16】

【0111】
【化17】

【0112】
【化18】

【0113】
【化19】

【0114】
(重合性化合物)
以下に重合性化合物の構造を示す。なお、TMPTA、BEPGAおよびPETAはいずれも多官能の重合性化合物である。
【0115】
【化20】

【0116】
【化21】

【0117】
【化22】

【0118】
(シランカップリング剤)
以下にシランカップリング剤の構造を示す。なお、いずれもジメトキシメチルシリル基またはトリメトキシシリル基を有する。
【0119】
【化23】

【0120】
【化24】

【0121】
【化25】

【0122】
(1−6)ガスバリアフィルムの評価
<密着性試験>
第一の有機層および第二の有機層と無機層(X)の密着性を評価する目的で、JISK5400に準拠した碁盤目試験を行なった。無機層(X)を積層した側のフィルム表面にカッターナイフで膜面に対して90°の切込みを1mm間隔で入れ、1mm間隔の碁盤目を100個作製した。この上に2cm幅のマイラーテープ[日東電工製、ポリエステルテープ(No.31B)]を貼り付け、テープ剥離試験機を使用して貼り付けたテープをはがした。フィルム上の100個の碁盤目のうち剥離せずに残存したマスの数をカウントし評価した。
【0123】
<カルシウム法による水蒸気透過率の測定>
G.NISATO、P.C.P.BOUTEN、P.J.SLIKKERVEERらSID Conference Record of the International Display Research Conference 1435-1438頁に記載の方法を用いて水蒸気透過率(g/m2/day)を測定した。このときの温度は40℃、相対湿度は90%とした。
【0124】
<曲げ耐性試験>
以下に記載の方法を用いて曲げ耐性を測定した。
屈曲は、各サンプルを成膜面外側にして円筒形マンドレル法(JIS K5600−5−1)で行った。試験後、光学顕微鏡でひび割れの有無を確認し、ひび割れの発生しない最大直径(mm)を屈曲性値とした。
【0125】
ガスバリア層の層構成と、得られたガスバリアフィルムの各特性の評価結果を下記表4に記載した。
【0126】

【表4】

【0127】
上記表4の結果から明らかなとおり、有機層を二層以上積層した構造にして、下層のみに重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物を導入することで密着性が向上することがわかった。また、上層にのみ芳香族基を有する多官能(メタ)アクリレートを導入することで低い水蒸気透過率を実現できることが判った。また重合性酸性化合物として酸性基を末端に有する(メタ)アクリレートを用いることにより、さらに密着性が向上することがわかった。
【0128】
2.有機EL素子の作成と評価
(2−1)有機EL素子の作成
ITO膜を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□)を2−プロパノールで洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン 膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン 膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム 膜厚60nm
最後にフッ化リチウムを1nm、金属アルミニウムを100nm順次蒸着して陰極とし、その上に厚さ5μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作成した。
【0129】
(2−2)有機EL素子上へのガスバリア層の設置
熱硬化型の接着剤(ダイゾーニチモリ(株)製、エポテック310)を用いて、上記の実施例3〜16のガスバリアフィルムを有機EL素子にそれぞれ貼り合せ、65℃で3時間加熱して接着剤を硬化させた。このようにして封止された有機EL素子を各20素子ずつ作成した。
【0130】
(2−3)有機EL素子発光面状の評価
作成直後の有機EL素子を、Keithley社製SMU2400型ソースメジャーユニットを用いて7Vの電圧を印加して発光させた。顕微鏡を用いて発光面状を観察したところ、いずれの素子もダークスポットの無い均一な発光を与えることが確認された。
次に各素子を60℃・相対湿度90%の暗い室内に500時間静置した後、発光面状を観察した。直径300μmよりも大きいダークスポットが観察された素子の比率を故障率は、本発明のものはいずれも5%以下であった。
【0131】
3.ガスバリアフィルム(2)の作製
[比較例21]
特許文献2である特開2010−6063号公報の実施例に記載された試料No.14の作成方法に従い、有機層の膜厚を500nmにケイ素酸化物の無機層膜厚を40nmに変更した以外は同様にしてガスバリアフィルム2aを作製した。得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は0.01g/m2・day、剥離残数は100であり、曲げ耐性は8mmであった。
次にガスバリアフィルム2aの上に同じ有機層と無機層を1層ずつ積層しガスバリアフィルム2bを作製した。ガスバリアフィルムの層構成は、PEN/有機層/無機層/有機層/無機層である。得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は0.006g/m2・day、剥離残数は20であり、曲げ耐性は15mmであった。
【0132】
[実施例21]
またガスバリアフィルム2bから無機層直上の有機層との間に表1に記載のUL−1を500nmの厚みで追加したガスバリアフィルム2cを作製した。ガスバリアフィルムの層構成は、PEN/有機層/無機層/UL−1/有機層/無機層である。得られたガスバリアフィルムの水蒸気透過率は0.002g/m2day、剥離残数は100であり、曲げ耐性は7mmであった。
【0133】
以上より本発明のガスバリアフィルム2cは、2bに比べて密着性に優れ、曲げ耐性が向上し、低い水蒸気透過率を実現できることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を第1の無機層の上に適用し、硬化させる第1の有機層形成工程と、
前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程と、
を含むことを特徴とする有機無機積層体の製造方法。
【請求項2】
(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物、(B)重合性化合物および(C)シランカップリング剤を含む第1の有機層用組成物を第1の無機層の上に適用し、硬化させる第1の有機層形成工程と、
前記第1の有機層の上、または前記第1の有機層の上に設けた1層もしくは2層以上の有機層の上に、(D)重合性化合物および(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートを含む第2の有機層用組成物を適用し、硬化させる第2の有機層形成工程と、
前記第2の有機層の上に第2の無機層を形成する工程を含むことを特徴とする有機無機積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の有機層の上に、前記第2の有機層用組成物を適用することを特徴とする請求項1または2に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の有機層用組成物における前記(B)重合性化合物、または、前記第2の有機層用組成物における前記(D)重合性化合物の少なくとも一方として、多官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の有機層用組成物において、前記(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートとして多官能芳香環(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の有機層用組成物において、前記(E)芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしてビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分と、前記第2の有機層用組成物に含まれる化合物の主成分が同じ化合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項8】
前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物が、酸性(メタ)アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項9】
前記(A)重合性酸性化合物またはオリゴマーもしくはポリマーである酸性化合物が、リン酸アクリレートまたはそのオリゴマーもしくはポリマーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の無機層および前記第2の無機層の少なくとも一方が、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項11】
前記第1の無機層および前記第2の無機層が、いずれも、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項12】
前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物が、ともに溶剤を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項13】
前記第1の有機層用組成物および前記第2の有機層用組成物が、ともに光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項14】
前記第2の有機層用組成物が(F)シランカップリング剤を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項15】
前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤として、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤と同じ化合物を含むことを特徴とする請求項14に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項16】
前記第1の有機層用組成物に含まれる前記(C)シランカップリング剤と、前記第2の有機層用組成物に含まれる前記(F)シランカップリング剤が、それぞれ独立にジメトキシメチルシリル基またはトリメトキシシリル基を有することを特徴とする請求項14または15に記載の有機無機積層体の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の有機無機積層体の製造方法によって製造されたことを特徴とする有機無機積層体。
【請求項18】
第1の無機層と、重合体を含む第1の有機層と、重合体を含む第2の有機層とがこの順に積層されている(但し、前記第1の有機層と第2の有機層の間に、1層または2層以上の有機層が積層されていてもよい)有機無機積層体であって、
前記第1の有機層中に酸性基とシロキサン結合が含まれており、
前記第1の無機層を構成する原子Mと前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されており、
前記第2の有機層中に芳香環構造とシロキサン結合が含まれており、
前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きいことを特徴とする有機無機積層体。
【請求項19】
第1の無機層と、重合体を含む第1の有機層と、重合体を含む第2の有機層とがこの順に積層されている(但し、前記第1の有機層と第2の有機層の間に、1層または2層以上の有機層が積層されていてもよい)有機無機積層体であって、
前記第1の有機層中に酸性基とシロキサン結合が含まれており、
前記第1の無機層を構成する原子Mと前記第1の有機層を構成するSi原子との間にM−O−Siの結合が形成されており、
前記第2の有機層中に芳香環構造とシロキサン結合が含まれており、
前記第1の有機層の酸価が前記第2の有機層の酸価よりも大きく、
前記第2の無機層を構成する原子M’と前記第2の有機層を構成するSi原子との間にM’−O−Siの結合が形成されていることを特徴とする有機無機積層体。
【請求項20】
前記第1の有機層が、前記第2の有機層と隣接していることを特徴とする請求項18または19に記載の有機無機積層体。
【請求項21】
前記第1の有機層または前記第2の有機層の少なくとも一方がポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項18〜20のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項22】
前記第2の有機層が芳香族基を有するポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項18〜21のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項23】
前記第2の有機層がポリビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項18〜22のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項24】
前記第1の有機層が、酸性基を有するポリ(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項18〜23のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項25】
前記酸性基が、リン酸基であることを特徴とする請求項24に記載の有機無機積層体。
【請求項26】
前記第1の無機層および前記第2の無機層の少なくとも一方が、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする請求項19〜25のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項27】
前記第1の無機層および前記第2の無機層が、いずれも、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素酸窒化物およびケイ素炭化物のいずれか1つを含む無機層であることを特徴とする請求項19〜25のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項28】
前記第1の有機層に含まれるシロキサン結合を構成しているSi原子が少なくとも1種の有機基と連結しており、
該有機基と同種の有機基に、前記第2の有機層に含まれるシロキサン結合を構成しているSi原子が連結していることを特徴とする請求項19〜27のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項29】
前記第1の無機層と前記第2の無機層との間に含まれる有機層の合計膜厚が0.1〜50μmであることを特徴とする請求項18〜28のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項30】
バリア性積層体であることを特徴とする請求項18〜29のいずれか一項に記載の有機無機積層体。
【請求項31】
基材フィルム上に、請求項18〜30のいずれか一項に記載の有機無機積層体が形成されていることを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項32】
請求項31に記載のガスバリアフィルムを基板として用いたことを特徴とするデバイス。
【請求項33】
請求項18〜30のいずれか一項に記載の有機無機積層体、または請求項31に記載のガスバリアフィルムを用いて封止したことを特徴とするデバイス。
【請求項34】
前記デバイスが、または太陽電池有機EL素子であることを特徴とする請求項32または33に記載のデバイス。

【公開番号】特開2011−200780(P2011−200780A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69319(P2010−69319)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】