説明

パターン形成方法

【課題】IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程などに使用される、高精度な微細パターンを安定的に形成する為のパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、ネガ型現像用レジスト組成物を塗布する工程、(イ)前記レジスト膜の形成後かつ前記レジスト膜の露光前に、保護膜組成物による保護膜を形成する工程、(ウ)液浸媒体を介して露光する工程、及び(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程、を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程に使用されるパターン形成方法に関するものである。特に、液浸式投影露光装置で露光するリソグラフィー工程に於いて、ネガ型現像用レジスト組成物と、該レジスト組成物により形成された膜を保護するための保護膜組成物と、ネガ型現像液とを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とするNA1.35の露光機が開発されている。これらは一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ/NA)
(焦点深度)=±k2・λ/NA2
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k1及びk2はプロセスに関係する係数である。
【0003】
光学顕微鏡において解像力を高める技術として、従来から投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」又は「液浸媒体」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が知られている。この「液浸の効果」はλ0を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA0=sinθとすると、液浸した場合、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ0/n)/NA0
(焦点深度)=±k2・(λ0/n)/NA02
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0004】
この効果を半導体素子の微細画像パターンの転写に応用した装置例としては、特許文献1(特開昭57−153433号公報)、特許文献2(特開平7−220990号公報)等があるが、液浸露光技術に適するレジストに関しては論じてはいない。
最近の液浸露光技術進捗が非特許文献1(SPIE Proc 4688,11(2002))、非特許文献2(J.Vac.Sci.Tecnol.B 17(1999))、特許文献3(国際公開WO2004−077158号パンフレット)、特許文献4(国際公開WO2004−068242号パンフレット)等で報告されている。ArFエキシマレーザーを光源とする場合は、取り扱い安全性と193nmにおける透過率と屈折率の観点で純水(193nmにおける屈折率1.44)が液浸液として最も有望であり、実際に量産にも適用されている。また、液浸液としてさらに高屈折率の媒体を用いて液浸露光すると高い解像力が得られることが知られている(非特許文献3:日経マイクロデバイス、2005年、3月号)。
【0005】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補うためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:PostExposureBake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
【0006】
化学増幅レジストを液浸露光に適用すると、露光時にレジスト層が浸漬液と接触することになるため、レジスト層が変質することや、レジスト層から浸漬液に悪影響を及ぼす成分が滲出することが指摘されている。特許文献4(際公開WO2004−068242号パンフレット)では、ArF露光用のレジストを露光前後に水に浸すことによりレジスト性能が変化する例が記載されており、液浸露光における問題と指摘している。
【0007】
cこのような問題を回避する解決策として、レジストとレンズの間に保護膜(以下、「トップコート」あるいは「オーバーコート」ともいう)を設けて、レジストと水が直接触れ合わないようにするという方法が知られている(例えば特許文献5〜7)。
【0008】
トップコートとしては、液浸液に対する不溶性と露光光源に対する透明性、更にはレジスト層とのインターミキシングを起こさずにレジスト層の上部へと安定に塗布できる性能が求められており、また、既存プロセスをそのまま利用してパターン形成ができるという観点からは、現像液であるアルカリ水溶液に容易に溶解し、レジスト層の現像を行う際に、レジスト層と共に除去できる性質を有することが好ましい。
【0009】
しかしながら、トップコートを用いた従来のパターン形成方法に於いては、液浸リソグラフィーに求められる性能を十分に満足していない。例えば、従来のトップコートを用いたパターン形成方法に於いては、現像後の現像欠陥発生の問題とラインエッジラフネス劣化の問題があり、改善が必要であった。
【0010】
現在、g線、i線、KrF、ArF、EB、EUVリソグラフィー用の現像液としては、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の水系アルカリ現像液が汎用的に用いられている。
上記以外の現像液としては、例えば、特許文献8(特開2006−227174号公報)には、放射線の照射により、ポリマー鎖が切断されて低分子化するレジスト材料の露光部分を溶解し現像するための、酢酸基またはケトン基、エーテル基、フェニル基を少なくとも2つ以上有し、かつ分子量が150以上であることを特徴とする現像液が記載されている。又、特許文献9(特表2002-525683号公報)及び特許文献10(特表2005-533907号公報)には、フッ素原子を含有する特定の樹脂を含有するレジスト材料の露光部分を溶解し現像するための、超臨界流体、ハロゲン化有機溶剤又は非ハロゲン化有機溶剤から選択される現像液が記載されている。
【0011】
しかしながら、半導体素子が微細化するにつれて、性能が総合的に良好なパターンを形成するための、レジスト組成物、現像液、保護膜(トップコート)組成物等の適切な組み合わせを見い出すことが極めて困難になり、例えば、現像後の現像欠陥発生が低減されかつラインエッジラフネスの良好な、トップコートを用いた液浸リソグラフィーに好適に適用できるパターン形成方法を見出すことが求められていた。
【特許文献1】特開昭57−153433号公報
【特許文献2】特開平7−220990号公報
【特許文献3】国際公開第04−077158号パンフレット
【特許文献4】国際公開第04−068242号パンフレット
【特許文献5】国際公開第04−074937号パンフレット
【特許文献6】国際公開第05−019937号パンフレット
【特許文献7】特開2005−109146号公報
【特許文献8】特開2006−227174号公報
【特許文献9】特表2002-525683号公報
【特許文献10】特表2005-533907号公報
【非特許文献1】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2002年, 第4688巻,第11頁
【非特許文献2】J.Vac.Sci.Tecnol.B 17(1999)
【非特許文献3】日経マイクロデバイス、2005年、3月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決し、高集積かつ高精度な電子デバイスを製造するための高精度な微細パターンを安定的に形成するために、現像後の現像欠陥発生を低減し、更にはラインエッジラフネスを低減したパターン形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記の構成であり、これにより本発明の上記目的が達成される。
【0014】
(1) (ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、ネガ型現像用レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)前記レジスト膜の形成後かつ前記レジスト膜の露光前に、前記レジスト膜上に保護膜組成物による保護膜を形成する工程、
(ウ)液浸媒体を介して露光する工程、及び
(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0015】
(2) (エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行う工程であることを特徴とする(1)に記載のパターン形成方法。
【0016】
(3) (エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程が、保護膜組成物とレジスト膜の可溶部分を同時に除去する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【0017】
(4) 更に、(オ)ポジ型現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とする(1)〜(3)に記載のパターン形成方法。
【0018】
(5) 保護膜組成物のネガ型現像液に対する製膜時の溶解速度が1nm/sec〜300nm/secであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0019】
(6) 保護膜組成物がフッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【0020】
(7)保護膜組成物がネガ型現像液とは異なる成分の溶剤を含有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、高精度で、現像後の現像欠陥発生が低減し、かつラインエッジラフネスが低減したパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表
記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0023】
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。パターンを形成する方式としては、ポジ型とネガ型があり、何れも、光照射を契機とした化学反応によって、レジスト膜の現像液に対する溶解性が変化することを利用しているが、光照射部が現像液に溶解する場合をポジ型方式、非照射部が現像液に溶解する場合をネガ型方式と呼ぶ。その場合に用いる現像液としては、ポジ型現像液とネガ型現像液の2つがある。ポジ型現像液とは、図1に点線で示す所定の閾値以上の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液であり、ネガ型現像液とは、前記所定の閾値以下の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液のことである。ポジ型現像液を用いた現像工程のことをポジ型現像(ポジ型現像工程ともいう)と呼び、ネガ型現像液を用いた現像工程のことをネガ型現像(ネガ型現像工程ともいう)と呼ぶ。多重現像(多重現像工程ともいう)とは上記ポジ型現像液を用いた現像工程と上記ネガ型現像液を用いた現像工程とを組み合わせた現像方式のことである。本発明ではネガ型現像に用いるレジスト組成物のことをネガ型現像用レジスト組成物と呼び、多重現像に用いるレジスト組成物のことを多重現像用レジスト組成物と呼ぶ。以下、単にレジスト組成物と記載されている場合は、ネガ型現像用レジスト組成物のことを示す。ネガ型現像用リンス液とは、ネガ型現像工程の後の洗浄工程に用いられる、有機溶剤を含むリンス液のことを表す。保護膜組成物(トップコート組成物ともいう)とは、水に不溶であるが、好ましくはネガ型現像液により剥離可能な保護膜(トップコートともいう)を形成することができる、樹脂組成物のことである。
【0024】
本発明では、液浸リソグラフィーに於けるトップコートプロセスに好適な技術として、(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液(好ましくはアルカリ現像液)に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液(好ましくは有機系現像液)に対する溶解度が減少する膜を形成するネガ型現像用レジスト組成物を塗布する工程、(イ)前記レジスト膜の形成後かつ前記レジスト膜の露光前に、前記レジスト膜上に保護膜組成物による保護膜を形成する工程、(ウ)前記保護膜により保護されたレジスト膜を液浸露光する工程、(エ)図2に示すように、所定の閾値(b)以下の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液(ネガ型現像液)を用いたネガ型現像工程、とを組み合わせた新しいパターン形成方法を提示する。
【0025】
本発明のパターン形成方法は、さらに、(オ)ポジ型現像液を用いて現像する工程を有することが好ましい。
【0026】
本発明のパターン形成方法は、さらに、(ウ)液浸露光工程の後に、(カ)加熱工程を有することが好ましい。
【0027】
本発明のパターン形成方法は、(ウ)液浸露光工程を、複数回有することができる。
【0028】
本発明のパターン形成方法は、(カ)加熱工程を、複数回有することができる。
【0029】
本発明を実施するには、(i)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少するネガ型現像用レジスト組成物、(ii)ネガ型現像液(好ましくは有機系現像液)、(iii)液浸媒体(好ましくは水)に不溶な保護膜を形成する保護膜組成物、が必要である。
【0030】
本発明を実施するには、更に、(iv)ポジ型現像液(好ましくはアルカリ現像液)を使用することが好ましい。
【0031】
本発明を実施するには、更に、(v)有機溶剤を含むネガ型現像用リンス液を使用することが好ましい。
【0032】
本発明に用いられるネガ型現像用レジスト組成物は、酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する膜を形成する樹脂組成物」である。従って、本発明のネガ型現像用レジスト組成物は、所定の閾値(a)以上の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液(ポジ型現像液)と所定の閾値(b)以下の露光部を選択的に溶解・除去させる現像液(ネガ型現像液)とネガ型現像用レジスト組成物を組合わせた、多重現像によるパターン形成に好適に使用できる。
即ち、図3に示すように、露光マスク上のパターン要素を、光照射によって、ウエハー上に投影したときに、光照射強度の強い領域(所定の閾値(a)以上の露光部)を、ポジ型現像液を用いて溶解・除去し、光照射強度の弱い領域(所定の閾値(b)以下の露光部)を、ネガ型現像液を用いて溶解・除去することにより、光学空間像(光強度分布)の周波数の2倍の解像度のパターンを得ることができる。
【0033】
ポジ型現像液、ネガ型現像液の2種類の現像液を用いたパターン形成プロセスを行う場合、その現像の順序は特に限定されないが、露光を行った後、ポジ型現像液もしくはネガ型現像液を用いて現像を行い、次に、最初の現像とは異なる現像液にて、ネガ型もしくはポジ型の現像を行うことが好ましい。さらに、ネガ型の現像を行った後には、有機溶剤を含むネガ型現像用リンス液を用いて洗浄することが好ましい。ネガ型現像の後、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄することで、より良好なパターン形成が可能になる。
【0034】
以下、本発明を実施する為のパターン形成方法について詳細に説明する。
【0035】
<パターン形成方法>
本発明のパターン形成方法は、下記プロセスを含む。これらのプロセスは、この順序で含むことが好ましい。
【0036】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、ネガ型現像用レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)前記レジスト膜の形成後かつ前記レジスト膜の露光前に、前記レジスト膜上に保護膜組成物による保護膜を形成する工程、
(ウ)液浸媒体を介して露光する工程、及び
(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程、
をこの順序で含むことを特徴とするパターン形成方法。
【0037】
本発明のパターン形成方法は、更に、(オ)ポジ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する工程、を含むことが好ましい。これにより、空間周波数の2倍の解像度のパターンを形成することができる。
【0038】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、ネガ型現像用レジスト組成物を塗布する工程は、レジスト組成物を基板上に塗布することができればいずれの方法を用いても良く、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、浸漬法などを用いることができ、好ましくはスピンコート法によりレジスト組成物を塗布する。レジスト組成物を塗布後、必要に応じて基板を加熱(プリベーク)する。これにより、不溶な残留溶剤の除去された膜を均一に形成することができる。プリベークの温度は特に限定されないが、50℃〜160℃が好ましく、より好ましくは、60℃〜140℃である。
【0039】
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。
【0040】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5、日産化学社製のARC29AなどのARCシリーズ等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0041】
使用し得るレジスト組成物としては、酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、レジスト組成物であれば特に制限はないが、250nm以下の波長を用いた露光に使用しうるものが好ましく、200nm以下の波長を用いた露光に使用しうるものが更に好ましい。その例としては、後述する、脂環炭化水素基を含有する樹脂の組成物などが挙げられる。
【0042】
(ア)レジスト膜の形成工程後、かつ、(ウ)液浸媒体を介して露光する工程を行う前に、(イ)前記レジスト膜上に保護膜組成物による保護膜(以下、「トップコート」ともいう)を形成する工程、を行う。これにより、レジスト膜を直接、液浸液に接触させないために、レジスト膜と液浸液との間にトップコートを設ける。トップコートに必要な機能としては、レジスト膜上部への塗布適正、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液(好ましくは水)難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、さらにレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
レジスト膜上部へ、レジスト膜を溶解せずに保護膜を均一に塗布するために、保護膜組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましい。レジスト膜を溶解しない溶剤としては、後述するネガ型現像液とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。保護膜組成物の塗布の方法は特に制限されず、例えば、スピンコート法などを適用することができる。
保護膜組成物としては、193nm透明性という観点からは、芳香族を含有しない樹脂を有することが好ましく、具体的には、後述する、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを含有する樹脂が挙げられるが、前記レジスト膜を溶解しない溶剤に溶解する限りは特に限定されない。
トップコートの膜厚は特に制限されないが、露光光源に対する透明性の観点から、通常1nm〜300nm、好ましくは10nm〜150nmの厚みで形成される。
トップコートを形成後、必要に応じて基板を加熱する。
トップコートの屈折率は、解像性の観点から、レジスト膜の屈折率に近いことが好ましい。
トップコートは液浸液に不溶であることが好ましく、水に不溶であることがより好ましい。
トップコートの後退接触角は、液浸液追随性の観点から、保護膜に対する液浸液の後退接触角(23℃)が50度〜100度であることが好ましく、60度〜80度であることがより好ましい。更により好ましくは、保護膜に対する水の後退接触角(23℃)が50度〜100度であり、最も好ましくは、保護膜に対する水の後退接触角(23℃)が60
度〜80度である。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、より良好なレジスト性能を得る為には前記特定範囲の後退接触角を有することが好ましい。
【0043】
トップコートを剥離する際は、ネガ型現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよい。剥離剤としては、レジストへの浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程がレジストの現像処理工程と同時にできるという点では、ネガ型現像液(好ましくは有機溶剤)により剥離できることが好ましい。剥離に用いるネガ型現像液としては、レジストの低露光部を溶解除去できるものであれば特に制限されず、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を含む現像液の中から選択することができ、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤を含む現像液を用いることが好ましく、エステル系溶剤を含む現像液を用いることが更に好ましく、酢酸ブチルを含む現像液を用いることが最も好ましい。ネガ型現像液で剥離するという観点からは、トップコートはネガ型現像液に対する溶解速度が1nm/sec〜300nm/secが好ましく、10nm/sec〜100nm/secがさらに好ましい。
ここで保護膜のネガ型現像液に対する溶解速度とは、保護膜を製膜した後に現像液に暴露した際の膜厚減少速度であり、本発明においては23℃の酢酸ブチル溶液に浸漬させた際の速度とする。
トップコートのネガ型現像液に対する溶解速度を1/sec秒以上、好ましくは10nm/sec以上とすることによって、レジスト現像後の現像欠陥発生が低減する効果がある。また、300nm/sec以下、好ましくは100nm/secとすることによって、恐らくは、液浸露光時の露光ムラが低減した影響で、レジスト現像後のパターンのラインエッジラフネスが良好になるという効果がある。
トップコートはその他の公知の現像液、例えば、アルカリ水溶液などを用いて除去しても良い。使用できるアルカリ水溶液として具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液が挙げられる。
【0044】
(ウ)液浸媒体を介して露光する工程に於いては、レジスト膜への露光を、一般的に良く知られている方法により行うことができる。好ましくは、当該レジスト膜に、所定のマスクを通して、活性光線又は放射線を、液浸液を介して照射する。露光量は適宜設定できるが、通常1〜100mJ/cmである。
本発明における露光装置に用いられる光源の波長には特に制限は無いが、250nm以下の波長の光を用いることが好ましく、その例としては、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)とF2エキシマレーザー光(157nm)、EUV光(13.5nm)、電子線等が挙げられる。この中でも、ArFエキシマレーザー光(193nm)を用いることが更に好ましい。
【0045】
液浸露光工程を行う場合、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤はウエハー上のレジスト層を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。使
用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。これにより、不純物の混入による、レジスト上に投影される光学像の歪みを抑制することができる。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0046】
本発明のパターン形成方法は、露光工程を複数回有していてもよい。その場合の、複数回の露光は同じ光源を用いても、異なる光源を用いても良いが、1回目の露光には、ArFエキシマレーザー光(波長;193nm)を用いることが好ましい。
【0047】
前記、露光工程の後、好ましくは(カ)加熱工程(ベーク、PEBともいう)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。PEBの温度は、良好なレジストパターンが得られる限り特に限定されるものではなく、通常40℃〜160℃である。
【0048】
本発明では、(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成する。
(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程が、レジスト膜の可溶部分を同時に除去する工程であることが好ましい。
【0049】
ネガ型現像を行う際には、有機溶剤を含有する有機系現像液を使用することが好ましい。
ネガ型現像を行う際に使用し得る有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等のケトン系溶剤や、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤を使用することができる。
アルコール系溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系系溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン
、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。
【0050】
現像方式として、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などの方法がある。
【0051】
ネガ型現像液の蒸気圧は20℃において5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が最も好ましい。ネガ型現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
20℃において5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げらる。
最も好ましい範囲である20℃において2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な例としては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げらる。
【0052】
ネガ型現像を行う際に使用しうる現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0053】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
【0054】
また、ネガ型現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0055】
ネガ型現像の後には、有機溶剤を含むネガ型現像用リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0056】
ネガ型現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、ネガ型現像の後に、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。更により好ましくは、ネガ型現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、ネガ型現像の後に、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。ここで、ネガ型現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノールなどを用いることができ、好ましくは、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールである。
【0057】
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0058】
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特
性を得ることができる。
【0059】
ネガ型現像後に用いるリンス液の蒸気圧は20℃において0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
【0060】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0061】
リンス工程においては、ネガ型の現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を塗出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。
【0062】
本発明では、更に(オ)ポジ型現像液を用いて現像を行い、レジストパターンを形成することが好ましい。
【0063】
ポジ型現像液としては、アルカリ現像液を使用することが好ましい。アルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。これらの中でもテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液を用いることが好ましい。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.01〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、通常10〜300秒である。
アルカリ現像液のアルカリ濃度(及びpH)及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整することができる。
【0064】
ポジ型現像工程後に行うリンス工程のリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
更に、リンス処理または超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行うことができる。
【0065】
以下、本発明で使用し得るネガ型現像用レジスト組成物について説明する。
【0066】
<ネガ型現像用レジスト組成物>
(A)酸の作用により極性が増大する樹脂
本発明のレジスト組成物に用いられる、酸の作用により極性が増大する樹脂は、樹脂の
主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(以下、「酸分解性基」ともいう)を有する樹脂(「酸分解性樹脂」、「酸分解性樹脂(A)」又は「樹脂(A)」とも呼ぶ)であり、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有し、酸の作用により極性が増大し、アルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少する樹脂(以下、「脂環炭化水素系酸分解性樹脂」ともいう)であることが好ましい。その理由は明らかではないが、恐らく、活性光線又は放射線の照射の前後において、樹脂の極性が大きく変化することにより、ポジ型現像液(好ましくは、アルカリ現像液)及びネガ型現像液(好ましくは、有機溶剤)を用いて現像した場合の溶解コントラストが向上することに起因するものと考えられる。さらには、単環又は多環の脂環炭化水素構造を有する樹脂は高い疎水性を有し、ネガ型現像液(好ましくは、有機溶剤)によりレジスト膜の光照射強度の弱い領域を現像する場合の現像性が向上すると考えられる。
【0067】
酸の作用により極性が増大する樹脂を含有する本発明のレジスト組成物は、ArFエキシマレーザー光を照射する場合に好適に使用することができる。
【0068】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂に含まれるアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、カルボン酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホン酸基が挙げられる。
酸で分解し得る基(酸分解性基)として好ましい基は、これらのアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
【0069】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂としては、下記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位及び下記一般式(II-AB)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を含有する樹脂であることが好ましい。
【0070】
【化1】

【0071】
一般式(pI)〜(pV)中、
11は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、Zは、炭素原子とともにシクロアルキル基を形成するのに必要な原子団を表す。
12〜R16は、各々独立に、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R12〜R14のうち少なくとも1つ、もしくはR15、R16のいずれかはシクロアルキル基を表す。
17〜R21は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R17〜R21のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R19、R21のいずれかは炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。
22〜R25は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基を表す。但し、R22〜R25のうち少なくとも1つはシクロアルキル基を表す。また、R23とR24は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0072】
【化2】

【0073】
一般式(II−AB)中、
11'及びR12'は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
Z'は、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
【0074】
また、上記一般式(II−AB)は、下記一般式(II−AB1)又は一般式(II−AB2)であることが更に好ましい。
【0075】
【化3】

【0076】
式(II−AB1)及び(II−AB2)中、
13'〜R16'は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、−COOH、−COOR5、酸の作用により分解する基、−C(=O)−X−A'−R17'、アルキル基ある
いはシクロアルキル基を表す。Rl3'〜R16'のうち少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。
ここで、R5は、アルキル基、シクロアルキル基又はラクトン構造を有する基を表す。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−、−NHSO2−又は−NHSO2NH−を表す。
A'は、単結合又は2価の連結基を表す。
17'は、−COOH、−COOR5、−CN、水酸基、アルコキシ基、−CO−NH−R6、−CO−NH−SO2−R6又はラクトン構造を有する基を表す。
6は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
nは、0又は1を表す。
【0077】
一般式(pI)〜(pV)において、R12〜R25におけるアルキル基としては、1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
【0078】
11〜R25におけるシクロアルキル基或いはZと炭素原子が形成するシクロアルキル基は、単環式でも、多環式でもよい。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができる。その炭素数は6〜30個が好ましく、特に炭素数7〜25個が好ましい。これらのシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0079】
好ましいシクロアルキル基としては、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカリン残基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基を挙げることができる。より好ましくは、アダマンチル基、ノルボルニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、テトラシクロドデカニル基、トリシクロデカニル基を挙げることができる。
【0080】
これらのアルキル基、シクロアルキル基の更なる置換基としては、アルキル基(炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等が、更に有していてもよい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基を挙げることができる。
【0081】
上記樹脂における一般式(pI)〜(pV)で示される構造は、アルカリ可溶性基の保護に使用することができる。アルカリ可溶性基としては、この技術分野において公知の種々の基が挙げられる。
【0082】
具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、フェノール基、チオール基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造などが挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基の水素原子が一般式(pI)〜(pV)で表される構造で置換された構造である。
【0083】
一般式(pI)〜(pV)で示される構造で保護されたアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(pA)で示される繰り返し単位が好ましい。
【0084】
【化4】

【0085】
ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子又は1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。複数のRは、各々同じでも異なっていてもよい。
Aは、単結合、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基、又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを表す。好ましくは単結合である。
Rp1は、上記式(pI)〜(pV)のいずれかの基を表す。
【0086】
一般式(pA)で表される繰り返し単位は、特に好ましくは、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位である。
【0087】
以下、一般式(pA)で示される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0088】
【化5】

【0089】
【化6】

【0090】
前記一般式(II−AB)、R11'、R12'におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、沃素原子等を挙げることができる。
【0091】
上記R11'、R12'におけるアルキル基としては、炭素数1〜10個の直鎖状あるいは分岐状アルキル基が挙げられる。
【0092】
上記Z'の脂環式構造を形成するための原子団は、置換基を有していてもよい脂環式炭
化水素の繰り返し単位を樹脂に形成する原子団であり、中でも有橋式の脂環式炭化水素の繰り返し単位を形成する有橋式脂環式構造を形成するための原子団が好ましい。
【0093】
形成される脂環式炭化水素の骨格としては、一般式(pI)〜(pV)に於けるR12〜R25の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0094】
上記脂環式炭化水素の骨格には置換基を有していてもよい。そのような置換基としては、前記一般式(II−AB1)あるいは(II−AB2)中のR13'〜R16'を挙げることができる。
【0095】
本発明に係る脂環炭化水素系酸分解性樹脂においては、酸の作用により分解する基は、前記一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位、及び後記共重合成分の繰り返し単位のうち少なくとも1種の繰り返し単位に含有することができる。酸の作用により分解する基は、一般式(pI)〜一般式(pV)で示される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位に含まれることが好ましい。
【0096】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)におけるR13'〜R16'の各種置換基は、上記一般式(II−AB)における脂環式構造を形成するための原子団ないし有橋式脂環式構造を形成するための原子団Zの置換基ともなり得る。
【0097】
上記一般式(II−AB1)あるいは一般式(II−AB2)で表される繰り返し単位として、下記具体例が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されない。
【0098】
【化7】

【0099】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、ラクトン基を有することが好ましい。ラクトン基としては、ラクトン構造を含有していればいずれの基でも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を含有する基であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造を有する基が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては一般式(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)で表される基であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0100】
【化8】

【0101】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在するRb2は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在するRb2同士が結合して環を形成してもよい。
【0102】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を有するもの(例えば−COOR5のR5が一般式(LC1−1)〜(LC1−16)で表される基を表す)、又は下記一般式(AI)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0103】
【化9】

【0104】
一般式(AI)中、
b0は、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
b0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子
が挙げられる。
b0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げることができる。
b0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
bは、単結合、アルキレン基、単環または多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される連結基である。Ab1は、直鎖、分岐アルキレン基、単環または多環のシクロアルキレン基であり、好ましくは、メチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のうちのいずれかで示される基を表す。
【0105】
ラクトン構造を有する繰り返し単位は通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0106】
ラクトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0107】
【化10】

【0108】
【化11】

【0109】
【化12】

【0110】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、極性基を有する有機基を含有する繰り返し単位、特に、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位を有していることが好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。極性基で置換された脂環炭化水素構造の脂環炭化水素構造としてはアダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。極性基としては水酸基、シアノ基が好ましい。
極性基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0111】
【化13】

【0112】
一般式(VIIa)〜(VIIc)中、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子又は水酸基、シアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cのうち少なくとも1つは水酸基、シアノ基を表す。好ましくはR2c〜R4cのうち1つまたは2つが水酸基で残りが水素原子である。
一般式(VIIa)において、更に好ましくはR2c〜R4cのうち2つが水酸基で残りが水素原子である。
【0113】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(II−AB1)又は(II−AB2)中のR13'〜R16'のうち少なくとも1つが上記一般式(VII)で表される基を有するもの(例えば、−COOR5におけるR5が一般式(VIIa)〜(VIId)で表される基を表す)、又は下記一般式(AIIa)〜
(AIId)で表される繰り返し単位等を挙げることができる。
【0114】
【化14】

【0115】
一般式(AIIa)〜(AIId)中、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基、ヒドロキメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)におけるR2c〜R4cと同義である。
【0116】
一般式(AIIa)〜(AIId)で表される構造を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0117】
【化15】

【0118】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0119】
【化16】

【0120】
上記一般式(VIII)に於いて、
2は、−O−又は−N(R41)−を表す。R41は、水素原子、水酸基、アルキル基又は−OSO2−R42を表す。R42は、アルキル基、シクロアルキル基又は樟脳残基を表す。R41及びR42のアルキル基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)等で置換されていてもよい。
【0121】
上記一般式(VIII)で表される繰り返し単位として、以下の具体例が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0122】
【化17】

【0123】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。これを含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。カルボキシル基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接カルボキシル基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にカルボキシル基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0124】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、更に一般式(F1)で表される基を1〜3個有する繰り返し単位を有していてもよい。これによりラインエッジラフネス性能が向上する。
【0125】
【化18】

【0126】
一般式(F1)中、
50〜R55は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R50〜R55の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
Rxは、水素原子または有機基(好ましくは酸分解性保護基、アルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基)を表す。
【0127】
50〜R55のアルキル基は、フッ素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基、例えば、メチル基、トリフルオロメチル基を挙げることができる。
50〜R55は、すべてフッ素原子であることが好ましい。
【0128】
Rxが表わす有機基としては、酸分解性保護基、置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルメチル基、アルコキシメチル基、1−アルコキシエチル基が好ましい。
【0129】
一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位として好ましくは下記一般式(F2)で表される繰り返し単位である。
【0130】
【化19】

【0131】
一般式(F2)中、
Rxは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rxのアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
Faは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合)を表す。
Fbは、単環または多環の環状炭化水素基を表す。
Fcは、単結合、直鎖または分岐のアルキレン基(好ましくは単結合、メチレン基)を表す。
1は、一般式(F1)で表される基を表す。
1は、1〜3を表す。
Fbにおける環状炭化水素基としてはシクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルニレン基が好ましい。
【0132】
一般式(F1)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0133】
【化20】

【0134】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、更に脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0135】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を含有することができる。
【0136】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
これにより、脂環炭化水素系酸分解性樹脂に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移温度)、
(3)ポジ型現像液及びネガ型現像液に対する溶解性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0138】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0139】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0140】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0141】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
(1) 上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位を含有するもの(側鎖型)。
好ましくは(pI)〜(pV)の構造を有する(メタ)アクリレート繰り返し単位を含有するもの。
(2) 一般式(II-AB)で表される繰り返し単位を含有するもの(主鎖型)。
但し、(2)においては例えば、更に以下のものが挙げられる。
(3) 一般式(II-AB)で表される繰り返し単位、無水マレイン酸誘導体及び(メタ)アクリレート構造を有するもの(ハイブリッド型)。
【0142】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0143】
酸分解性樹脂中、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0144】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂中、一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中20〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜50モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
【0145】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂中、一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の含有
量は、全繰り返し構造単位中10〜60モル%が好ましく、より好ましくは15〜55モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。
【0146】
酸分解性樹脂中、ラクトン環を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中10〜70モル%が好ましく、より好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは25〜40モル%である。
酸分解性樹脂中、極性基を有する有機基を有する繰り返し単位の含有量は、全繰り返し構造単位中1〜40モル%が好ましく、より好ましくは5〜30モル%、更に好ましくは5〜20モル%である。
【0147】
また、上記更なる共重合成分の単量体に基づく繰り返し構造単位の樹脂中の含有量も、所望のレジストの性能に応じて適宜設定することができるが、一般的に、上記一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し構造単位と上記一般式(II−AB)で表される繰り返し単位の合計した総モル数に対して99モル%以下が好ましく、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。
【0148】
本発明のネガ型現像用レジスト組成物がArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0149】
本発明に用いる脂環炭化水素系酸分解性樹脂として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位/アクリレート系繰り返し単位の混合のいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。
【0150】
脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、少なくとも、ラクトン環を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、水酸基及びシアノ基の少なくともいずれかで置換された有機基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位、並びに、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位の3種類の繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
【0151】
好ましくは一般式(pI)〜(pV)で表される脂環式炭化水素を含む部分構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン構造を有する繰り返し単位20〜50モル%、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30%含有する3元共重合ポリマー、または更にその他の繰り返し単位を0〜20%含む4元共重合ポリマーである。
【0152】
特に好ましい樹脂としては、下記一般式(ARA−1)〜(ARA−7)で表される酸分解性基を有する繰り返し単位20〜50モル%、下記一般式(ARL−1)〜(ARL−7)で表されるラクトン基を有する繰り返し単位20〜50モル%、下記一般式(ARH−1)〜(ARH−3)で表される極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位5〜30モル%含有する3元共重合ポリマー、または更にカルボキシル基、あるいは一般式(F1)で表される構造を有する繰り返し単位、又は脂環炭化水素構造を有し酸分解性を示さない繰り返し単位を5〜20モル%含む4元共重合ポリマーである。
【0153】
(式中、Rxy1は、水素原子またはメチル基を表し、Rxa1及びRxb1は、各々独立に、メチル基またはエチル基を表し、Rxc1は、水素原子またはメチル基を表す。)
【0154】
【化21】

【0155】
(式中、Rxy1は水素原子又はメチル基を、Rxd1は水素原子又はメチル基を、Rxe1はトリフルオロメチル基、水酸基、シアノ基を表す。)
【0156】
【化22】

【0157】
(式中、Rxy1は水素原子またはメチル基、を表す。)
【0158】
【化23】

【0159】
本発明に用いる脂環炭化水素系酸分解性樹脂は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明のレジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0160】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開
始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
精製は、後述の樹脂(C)と同様の方法を用いることができ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液液抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈殿法や、濾別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。
【0161】
本発明に係る樹脂の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは1,000〜20,000、最も好ましくは1,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
分散度(分子量分布)は、通常1〜5であり、好ましくは1〜3、更に好ましくは1.2〜3.0、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲のものが使用される。分散度の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
【0162】
本発明のレジスト組成物において、本発明に係わる全ての樹脂の組成物全体中の配合量は、全固形分中50〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、樹脂は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0163】
本発明の脂環炭化水素系酸分解性樹脂、より好ましくは本発明のレジスト組成物中には、保護膜組成物との相溶性の観点から、フッ素原子および珪素原子を含有しないことが好ましい。
【0164】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のレジスト組成物は活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「光酸発生剤」又は「(B)成分」ともいう)を含有する。
そのような光酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0165】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0166】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、
独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0167】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0168】
活性光線又は放射線の照射により分解して酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0169】
【化24】

【0170】
上記一般式(ZI)において、R201、R202及びR203は、各々独立に有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-などが挙げられ、好ましくは炭素原子を含有する有機アニオンである。
【0171】
好ましい有機アニオンとしては下式に示す有機アニオンが挙げられる。
【0172】
【化25】

【0173】
式中、
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。Rd1は水素原子、アルキル基を表す。
Rc3、Rc4、Rc5は、各々独立に、有機基を表す。Rc3、Rc4、Rc5の有機基として好ましくはRc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができ、最も好ましくは炭素数1〜4のパーフロロアルキル基である。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。Rc3とRc4が結合して形成される基としてはアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフ
ロロアルキレン基である。
Rc1、Rc3〜Rc5の有機基として特に好ましくは1位がフッ素原子またはフロロアアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。また、Rc3とRc4が結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。
【0174】
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0175】
尚、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0176】
更に好ましい(ZI)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0177】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖又は分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1
つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0178】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。化合物(ZI−2)は、式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0179】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
201〜R203としての直鎖、分岐、環状の2−オキソアルキル基は、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0180】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0181】
【化26】

【0182】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0183】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、炭素数1〜20個の直鎖又は分岐状アルキル基、好ましくは炭素数1〜12個の直鎖又は分岐状アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくはR1c〜R5cのうちいずれかが直鎖又は分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0184】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖又は分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
x及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0185】
一般式(ZII)、(ZIII)中、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207は、置換基を有していてもよい。R204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同
様のものを挙げることができる。
【0186】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0187】
【化27】

【0188】
一般式(ZIV)〜(ZVI)中、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
226は、アルキル基又はアリール基を表す。
227及びR228は、各々独立に、アルキル基、アリール基または電子吸引性基を表す。R227は、好ましくはアリール基である。
228は、好ましくは電子吸引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0189】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物として、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物が好ましい。
【0190】
化合物(B)は、活性光線または放射線の照射によりフッ素原子を有する脂肪族スルホン酸又はフッ素原子を有するベンゼンスルホン酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0191】
化合物(B)は、トリフェニルスルホニウム構造を有することが好ましい。
【0192】
化合物(B)は、カチオン部にフッ素置換されていないアルキル基若しくはシクロアルキル基を有するトリフェニルスルホニウム塩化合物であることが好ましい。
【0193】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げる。
【0194】
【化28】

【0195】
【化29】

【0196】
【化30】

【0197】
【化31】

【0198】
【化32】

【0199】
【化33】

【0200】
光酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
光酸発生剤の含量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。光酸発生剤の含量をこの範囲とすることで、レジストパターンを形成したときの露光ラチチュードの向上や架橋層形成材料との架橋反応性が向上する。
【0201】
(C)溶剤
前記各成分を溶解させてレジスト組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、炭素数4〜10の環状ラクトン、炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0202】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0203】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0204】
炭素数4〜10の環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0205】
炭素数4〜10の、環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0206】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0207】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特
に好ましい。
【0208】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0209】
(E)塩基性化合物
本発明のレジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、(E)塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0210】
【化34】

【0211】
一般式(A)〜(E)中、
200 、R201及びR202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0212】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203 、R204、R205及びR206 は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0213】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0214】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはトリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチ
オフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0215】
塩基性化合物の使用量は、レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0216】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0217】
(F)界面活性剤
本発明のレジスト組成物は、更に(F)界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0218】
本発明のレジスト組成物が上記(F)界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0219】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0220】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0221】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0222】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0223】
(F)界面活性剤の使用量は、レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0224】
(G)カルボン酸オニウム塩
本発明におけるレジスト組成物は、(G)カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、(G)カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明の(H)カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0225】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0226】
これらの(G)カルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0227】
(G)カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0228】
(H)その他の添加剤
本発明のレジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0229】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0230】
以下、本発明のパターン形成方法に用いられる保護膜を形成する為の保護膜組成物について説明する。
【0231】
<保護膜組成物>
本発明のパターン形成方法に於いては、液浸液がレジスト膜へと直接接触することを防ぎ、レジスト膜内部への液浸液の浸透及びレジスト膜成分の液浸液への溶出によるレジスト性能の劣化を抑制し、更には液浸液への溶出成分による露光装置のレンズ汚染を防止するために、液浸露光を行う前に、保護膜組成物より形成される膜をレジスト膜上部に形成する。
【0232】
本発明のパターン形成方法に用いられる保護膜組成物は、保護膜組成物をレジスト膜上に均一に形成するために、樹脂を溶剤に溶解させて用いることが好ましい。
【0233】
レジスト膜を溶解せずに良好なパターンを形成するために、本発明の保護膜組成物は、レジスト膜を溶解しない溶剤を含有することが好ましく、ネガ型現像液とは異なる成分の溶剤を用いることがさらに好ましい。また、液浸液への溶出防止の観点からは、液浸液への溶解性が低い方が好ましく、水への溶解性が低い方がさらに好ましい。本明細書に於いては、「液浸液への溶解性が低い」とは液浸液不溶性であることを示す。同様に、「水への溶解性が低い」とは水不溶性であることを示す。また、揮発性及び塗布性の観点から、溶剤の沸点は90℃〜200℃が好ましい。
液浸液への溶解性が低いとは、水への溶解性を例にとると、保護膜組成物をシリコンウェハ上に塗布、乾燥し、膜を形成させた後に、純水に23℃で10分間浸漬し、乾燥した後の膜厚の減少率が、初期膜厚(典型的には50nm)の3%以内であることを云う。
本発明では、保護膜を均一に塗布する観点から、固形分濃度が0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは、1〜10質量%となるように溶剤を使用する。
【0234】
使用しうる溶剤としては、後述する樹脂(X)を溶解し、レジスト膜を溶解しない限りは特に制限はないが、アルコール系溶剤、フッ素系溶剤、炭化水素系溶剤を用いることが好ましく、非フッ素系のアルコール系溶剤を用いることが更に好ましい。これにより、レジスト膜に対する非溶解性がさらに向上し、保護膜組成物をレジスト膜上に塗布した際に、レジスト膜を溶解することなく、より均一に保護膜形成できる。
アルコール系溶剤としては、塗布性の観点から、1価のアルコールが好ましく、更に好ましくは、炭素数4〜8の1価アルコールである。炭素数4〜8の1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状のアルコールを用いることができるが、直鎖状又は分岐状のアルコールが好ましい。このようなアルコール系溶剤としては、例えば、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、イソブチルアルコール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、などを用いることができ、中でも好ましくは、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールである。
フッ素系溶剤としては、例えば、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブタノール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ−1−ヘキサノール、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロ−1,8−オクタンジオール、2−フルオロアニソール、2,3−ジフルオロアニソール、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロ−2−ペンタノン、パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロテトラペンチルアミン等が挙げられ、この中でも、フッ化アルコール又はフッ化炭化水素系溶剤を好適に用いることができる。
炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘプタン、n−ノナン、n−オクタン、n−デカン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、3,3−ジメチルヘキサン、2,3,4−トリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる
これらの溶剤は一種単独で又は複数を混合して用いても良い。
上記以外の溶剤を混合する場合、その混合比は、保護膜組成物の全溶剤量に対して、通常0〜30質量%、好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%である。上記以外の溶剤を混合することで、レジスト膜に対する溶解性、保護膜組成物中の樹脂の溶解性、レジスト膜からの溶出特性、などを適宜調整することができる。
【0235】
前記樹脂は、露光時に光が保護膜を通してレジスト膜に到達するため、使用する露光光源において透明であることが好ましい。ArF液浸露光に使用する場合は、ArF光への透明性の点から前記樹脂は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0236】
前記樹脂としては、少なくとも一つのフッ素原子及び/又は少なくとも一つの珪素原子を含有するモノマーに由来する繰り返し単位を含有する樹脂(X)であることが好ましく、少なくとも一つのフッ素原子及び/又は少なくとも一つの珪素原子を含有するモノマーに由来する繰り返し単位を含有する、水不溶性樹脂(X’)であることがさらに好ましい。少なくとも一つのフッ素原子及び/又は少なくとも一つの珪素原子を含有するモノマーに由来する繰り返し単位を含有することで、ネガ型現像液に対する良好な溶解性が得られ、本発明の効果が十分に得られる。
【0237】
樹脂(X)におけるフッ素原子または珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0238】
樹脂(X)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環または多環のシクロアルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、さらに他の置換基を有していてもよい。
【0239】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0240】
【化35】

【0241】
一般式(F2)〜(F3)中、
57〜R64は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61及びR62〜R64の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62及びR63は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0242】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
【0243】
樹脂(X)は、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0244】
【化36】

【0245】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖もしくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)またはシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニル基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、またはウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは1〜5の整数を表す。
【0246】
樹脂(X)とし、下記一般式(C−I)〜(C−V)で示される繰り返し単位の群から選択される少なくとも1種を有する樹脂が挙げられる。
【0247】
【化37】

【0248】
一般式(C−I)〜(C−V)中、
1〜R3は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
1〜W2は、フッ素原子および珪素原子の少なくともいずれかを有する有機基を表す。
4〜R7は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。ただし、R4〜R7の少なくとも1つはフッ素原子を表す。R4とR5もしくはR6とR7は環を形成していてもよい。
8は、水素原子、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。
9は、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
1〜L2は、単結合又は2価の連結基を表し、上記L3〜L5と同様のものである。
Qは、単環または多環の環状脂肪族基を表す。すなわち、結合した2つの炭素原子(C−C)を含み、脂環式構造を形成するための原子団を表す。
30及びR31は、各々独立に、水素又はフッ素原子を表す。
32及びR33は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、フッ素化アルキル基又はフッ素化シクロアルキル基を表す。
但し、一般式(C−V)で表される繰り返し単位は、R30、R31、R32及びR33の内の少なくとも1つに、少なくとも1つのフッ素原子を有する。
【0249】
樹脂(X)は、一般式(C−I)で表される繰り返し単位を有することが好ましく、下記一般式(C−Ia)〜(C−Id)で表される繰り返し単位を有することがさらに好ましい。
【0250】
【化38】

【0251】
一般式(C−Ia)〜(C−Id)に於いて、
10及びR11は、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数1〜4個の、直鎖もしくは分岐のフッ素化アルキル基を表す。
3〜W6は、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを1つ以上有する有機基を表す。
【0252】
1〜W6が、フッ素原子を有する有機基であるとき、炭素数1〜20のフッ素化された、直鎖、分岐アルキル基もしくはシクロアルキル基、または、炭素数1〜20のフッ素化された直鎖、分岐、または環状のアルキルエーテル基であることが好ましい。
【0253】
1〜W6のフッ素化アルキル基としては、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基などが挙げられる。
【0254】
1〜W6が、珪素原子を有する有機基であるとき、アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造であることが好ましい。具体的には、前記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0255】
以下、一般式(C−I)で表される繰り返し単位の具体例を示す。Xは、水素原子、−CH3、−F、又は、−CF3を表す。
【0256】
【化39】

【0257】
【化40】

【0258】
【化41】

【0259】
【化42】

【0260】
【化43】

【0261】
【化44】

【0262】
樹脂(X)は、ネガ型現像液に対する溶解性を調整するために、下記一般式(Ia)で表される繰り返し単位を有していても良い
【0263】
【化45】

【0264】
一般式(Ia)に於いて、
Rfは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
1は、アルキル基を表す。
2は、水素原子又はアルキル基を表す。
【0265】
一般式(Ia)に於ける、Rfの少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基は、炭素数1〜3であることが好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
1のアルキル基は、炭素数3〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10の分岐状のアルキル基がより好ましい。
2は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基が好ましく、炭素数3〜10の直鎖若しくは分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0266】
以下、一般式(Ia)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0267】
【化46】

【0268】
樹脂(X)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していても良い。
【0269】
【化47】

【0270】
一般式(III)に於いて、
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する基を表す。
6は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0271】
一般式(III)に於ける、R4のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
トリアルキルシリル基は、炭素数3〜20のトリアルキルシリル基が好ましい。
環状シロキサン構造を有する基は、炭素数3〜20の環状シロキサン構造を有する基が好ましい。
6の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基が好ましい。
【0272】
樹脂(X)は、ラクトン基、エステル基、酸無水物や樹脂(A)における酸分解性基と同様の基を有していても良い。樹脂(X)は更に下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【0273】
【化48】

【0274】
樹脂(X)としては、アルカリ可溶性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位(d)を含有することが好ましい。これにより、液浸水への溶解性や塗布溶剤に対する溶解性を制御できる。アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基を有する基等が挙げられる。
アルカリ可溶性基を有するモノマーとしては、酸解離指数pKaが4以上のモノマーが好ましく、さらに好ましくはpKaが4〜13のモノマーであり、最も好ましくはpKaが8〜13のモノマーである。pKaが4以上のモノマーを含有することで、ネガ型及びポジ型の現像時の膨潤が抑制され、ネガ型現像液に対する良好な現像性のみならず、ポジ型現像液である弱塩基性のアルカリ現像液を使用した場合においても良好な現像性が得られる。
酸解離定数pKaは、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載のものであり、アルカリ可溶性基を含むモノマーのpKaの値は、例えば、無限希釈溶媒を用いて25℃で測定することができる。
pKaが4以上のモノマーは、特に限定されず、たとえば、フェノール性水酸基、スルホンアミド基、−COCH2CO-、フルオロアルコール基、カルボン酸基等の酸基(アルカリ可溶性基)を有するモノマーなどが挙げられる。特に、フルオロアルコール基を含むモノマーが好ましい。フルオロアルコール基は少なくとも1つの水酸基が置換したフルオロアルキル基であり、炭素数1〜10個のものが好ましく、炭素数1〜5個のものが更に好ましい。フルオロアルコール基の具体例としては、例えば、−CF2OH、−CH2CF2OH、−CH2CF2CF2OH、−C(CF32OH、−CF2CF(CF3)OH、−CH2C(CF32OH、等を挙げることができる。フルオロアルコール基として特に好ましいのはヘキサフルオロイソプロパノール基である。
【0275】
樹脂(X)中のアルカリ可溶性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の総量は、好ましくは、樹脂(X)を構成する全繰り返し単位に対して、0〜90モル%、より好ましくは0〜80モル%、更により好ましくは0〜70モル%である。
【0276】
アルカリ可溶性基を有するモノマーは、酸基を1つだけ含んでいても2つ以上含んでいてもよい。該モノマーに由来する繰り返し単位は、繰り返し単位1つあたり2つ以上の酸基を有していることが好ましく、酸基を2〜5個有することがより好ましく、酸基を2〜3個有することが特に好ましい。
【0277】
アルカリ可溶性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の、好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0278】
【化49】

【0279】
【化50】

【0280】
【化51】

【0281】
【化52】

【0282】
【化53】

【0283】
【化54】

【0284】
【化55】

【0285】
【化56】

【0286】
【化57】

【0287】
【化58】

【0288】
樹脂(X)は、下記の(X−1)〜(X−8)から選ばれるいずれかの樹脂であることが好ましい。
(X−1)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)を有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)のみを有する樹脂。
(X−2)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)を有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(b)のみを有する樹脂。
(X−3)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)と、分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数4〜20)を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(c)の共重合樹脂。
(X−4)トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルケ
ニル基(好ましくは炭素数4〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数4〜20)を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の共重合樹脂。
(X−5)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)及び繰り返し単位(b)の共重合樹脂。
(X−6)フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を有する繰り返し単位(a)と、トリアルキルシリル基又は環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)と、分岐状のアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜20)、分岐状のアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)、シクロアルケニル基(好ましくは炭素数4〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数4〜20)を有する繰り返し単位(c)とを有する樹脂、より好ましくは繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の共重合樹脂。
樹脂(X−3)、(X−4)、(X−6)における、分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、分岐状のアルケニル基、シクロアルケニル基、またはアリール基を有する繰り返し単位(c)としては、親疎水性、相互作用性などを考慮し、適当な官能基を導入することができる。
(X−7)前記(X−1)〜(X−6)をそれぞれ構成する繰り返し単位に、さらにアルカリ可溶性基(d)を有する繰り返し単位(好ましくは、pKaが4以上のアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位)を有する樹脂。
(X−8)フルオロアルコール基を有するアルカリ可溶性基(d)を有する繰り返し単位のみを有する樹脂。
樹脂(X−3)、(X−4)、(X−6)、(X−7)において、フルオロアルキル基を有する繰り返し単位(a)および/またはトリアルキルシリル基、または環状シロキサン構造を有する繰り返し単位(b)は、10〜99モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがより好ましい。
また、樹脂(X−7)におけるアルカリ可溶性基(d)を有することで、ネガ型現像液を用いた際の剥離容易性のみならず、その他の剥離液、例えば、アルカリ性の水溶液を剥離液として用いた場合の剥離容易性が向上する。
【0289】
樹脂(X)は、常温(25℃)において、固体であることが好ましい。さらに、ガラス転移温度(Tg)が50〜200℃であることが好ましく、80〜160℃がより好ましい。
【0290】
25℃において固体であるとは、融点が25℃以上であることをいう。
ガラス転移温度(Tg)は、走査カロリメトリー(Differential Scanning Calorimeter)により測定することができ、例えば、試料を一度昇温、冷却後、再度5℃/分にて昇温したときの比容積が変化した値を解析することにより測定することができる。
【0291】
樹脂(X)は、液浸液(好ましくは水)に対して不溶で、ネガ型現像液(好ましくは有機溶剤を含む現像液、さらに好ましくはエステル系溶剤を含む現像液)に対して可溶であることが好ましい。ポジ型現像液を用いて現像剥離できるといった観点からは、樹脂(X)はアルカリ現像液に対しても可溶であることが好ましい。
【0292】
樹脂(X)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、樹脂(X)の分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(X)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
珪素原子の含有量及び珪素原子を含む繰り返し単位の含有量を前記範囲とすることで、液浸液(好ましくは水)に対する不溶性、ネガ型現像液を用いた際の保護膜の剥離容易性
、さらには、レジスト膜との非相溶性をいずれも向上させることができる。
フッ素原子の含有量及びフッ素原子を含む繰り返し単位の含有量を前記範囲とすることで、液浸液(好ましくは水)に対する不溶性、ネガ型現像液を用いた際の保護膜の剥離容易性、さらには、レジスト膜との非相溶性をいずれも向上させることができる。
【0293】
樹脂(X)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、樹脂(X)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、樹脂(X)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
【0294】
樹脂(X)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000、特に好ましくは3,000〜15,000である。
【0295】
樹脂(X)は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、保護膜から液浸液への溶出低減の観点から、残存モノマー量が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5が好ましく、より好ましくは1〜3、更により好ましくは1〜1.5の範囲である。
【0296】
樹脂(X)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。
【0297】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。反応の濃度は、通常5〜50質量%であり、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0298】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下するこ
とで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
【0299】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、例えば、炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素など)、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロエタンなど)、ニトリル(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなどの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、カーボネート(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)、カルボン酸(酢酸など)、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。このような少なくとも炭化水素を含む溶媒において、アルコール(特に、メタノールなど)と他の溶媒(例えば、酢酸エチルなどのエステル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等)との比率は、例えば前者/後者(体積比;25℃)=10/90〜99/1、好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=30/70〜98/2、さらに好ましくは前者/後者(体積比;25℃)=50/50〜97/3程度である。
【0300】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0301】
ポリマー溶液を沈殿又は再沈殿溶媒(貧溶媒)中に供給する際のノズルの口径は、好ましくは4mmφ以下(例えば0.2〜4mmφ)である。また、ポリマー溶液の貧溶媒中への供給速度(滴下速度)は、線速度として、例えば0.1〜10m/秒、好ましくは0.3〜5m/秒程度である。
【0302】
沈殿又は再沈殿操作は攪拌下で行うのが好ましい。攪拌に用いる攪拌翼として、例えば、デスクタービン、ファンタービン(パドルを含む)、湾曲羽根タービン、矢羽根タービン、ファウドラー型、ブルマージン型、角度付き羽根ファンタービン、プロペラ、多段型、アンカー型(又は馬蹄型)、ゲート型、二重リボン、スクリューなどを使用できる。攪拌は、ポリマー溶液の供給終了後も、さらに10分以上、特に20分以上行うのが好ましい。攪拌時間が少ない場合には、ポリマー粒子中のモノマー含有量を充分低減できない場合が生じる。また、攪拌翼の代わりにラインミキサーを用いてポリマー溶液と貧溶媒とを混合攪拌することもできる。
【0303】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0304】
沈殿又は再沈殿した粒子状ポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0305】
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。
即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
樹脂溶液Aの調製に際し使用する溶媒は、重合反応に際しモノマーを溶解させる溶媒と同様の溶媒を使用することができ、重合反応に際し使用した溶媒と同一であっても異なっていてもよい。
【0306】
本発明の保護膜組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては特に制限は無く、保護膜組成物を均一に成膜することができ、かつ保護膜組成物の溶剤に溶解することができれば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも用いることができる。
界面活性剤の添加量は、好ましくは0.001〜20質量%であり、更に好ましくは、0.01〜10質量%である。
界面活性剤は1種単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0307】
前記界面活性剤としては、例えば、アルキルカチオン系界面活性剤、アミド型4 級カチオン系界面活性剤、エステル型4 級カチオン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、アルコキシレート系界面活性剤、脂肪酸エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、及びエチレンジアミン系界面活性剤、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)から選択されるものを好適に用いることができる。
界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等の界面活性剤や、下記に挙げる市販の界面活性剤をそのまま用いることができる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204D、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【実施例】
【0308】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0309】
合成例1(樹脂(X1)の合成)
4−[ビス(トリフルオロメチル)−ヒドロキシメチル]スチレン43.6g(0.1モル)をプロピレングリコールモノメチルエーテル250mlに溶解し、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製;商品名V−65)0.20gを加えた。この溶液を窒素気流下、70℃にて4時間攪拌した。その後、反応液をヘキサン1L中に激しく攪拌しながら投入。析出した樹脂をイオン交換水にて水洗し、濾別、真空下乾燥することにより、白色の樹脂39g を得た。得られた樹脂(X1)の重量平均分子量は、7500、分散度(Mw/Mn)は、1.65であった。
【0310】
【化59】

【0311】
同様にして、樹脂(X2)〜(X8)を合成した。
【0312】
以下、樹脂(X2)〜(X8)の構造を示す。樹脂の組成比(モル比)、重量平均分子量、分散度を表1にまとめた。
【0313】
【化60】

【0314】
<保護膜組成物の調製>
下記表1に示す成分を表1に示す溶剤に溶解させ固形分濃度2.5質量%の溶液を調整し、これを0.05μmのポリエチレンフィルターでろ過して保護膜組成物Tx1〜Tx8を調製した。
【0315】
ネガ型現像液に対する保護膜組成物の溶解性の評価
ヘキサメチルジシラザンによる脱水処理を行った4インチシリコンウェハー上に、表1に示す各保護膜組成物をスピンコーターを用いて塗布し、120℃60秒間、ホットプレート上で塗布溶剤を加熱乾燥させて膜厚100nmの保護膜を形成させた。形成された保護膜を、23℃の酢酸ブチル溶液(ネガ型現像液)に所定時間浸漬させ、その溶解速度を
リソテックジャパン(株)製レジスト溶解速度解析装置(RDA790)を用いて測定し、保護膜組成物のネガ型現像液に対する溶解速度を算出した。結果を表1に示す。
【0316】
【表1】

【0317】
表1における略号は次の通りである。
【0318】
W−1: メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−2: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−3: PF6320(OMNOVA社製)(フッ素系)
【0319】
SL−1:1−ブタノール
SL−2:パーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフラン
SL−3:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0320】
合成例2(樹脂(A1)の合成)
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルの6/4(質量比)の混合溶剤20gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した(溶剤1)。γ―ブチロラクトンメタクリレート、ヒドロキシアダマンタンメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートをモル比40/25/35の割合でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルの6/4(質量比)の混合溶剤に溶解し、22質量%のモノマー溶液(200g)を調製した。更に、開始剤V−601(和光純薬工業製)をモノマーに対し8mol%を加え、溶解させた溶液を、上記溶剤1に対して6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘキサン1800ml/酢酸エチル200mlに注ぎ、析出した紛体をろ取、乾燥すると、樹脂(A1)が37g得られた。得られた樹脂(A1)の重量平均分子量は、6500、分散度(Mw/Mn)は、1.65であった。
【化61】

【0321】
同様にして、樹脂(A2)〜(A8)を合成した。
【0322】
以下、樹脂(A2)〜(A8)の構造を示す。樹脂の組成比(モル比)、重量平均分子量、分散度は表2にまとめた。
【0323】
【化62】

【0324】
<レジスト組成物の調製>
下記表2に示す成分を表2に示す溶剤に溶解させ固形分濃度6質量%の溶液を調整し、これを0.05μmのポリエチレンフィルターでろ過して保護膜組成物Ra1〜Ra8を調製した。
【0325】
【表2】

【0326】
表2における略号は次の通りである。
【0327】
N−1:N,N−ジフェニルアニリン
N−2:ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン
N−3:4−ジメチルアミノピリジン
【0328】
W−1: メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W−2: メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−4: PF6320(OMNOVA社製)(フッ素系)
【0329】
SL−5:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SL−6:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0330】
上記で調製した保護膜組成物及びレジスト組成物を用いて下記の方法で評価を行った。
【0331】
実施例1
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚78nmの反射防止膜を形成した。その上にレジスト組成物Ra1をスピン塗布し、120℃で、60秒間ベークを行い、膜厚150nmのレジスト膜を形成した。
次いで、このレジスト膜上に保護膜形成組成物Tx1をスピン塗布し、90℃で、60秒間ベークを行い、膜厚30nmの保護膜を上記レジスト膜上に形成した。
得られたウェハーを、液浸液として純水を用い、ArFエキシマレーザースキャナーとしてNA0.85のレンズが装備されたASML社製のPAS5500/1250iを用いて、パターン形成用のマスクを介して、液浸露光した。露光後、ウェハを2000rpmの回転数で回転させ、水を除去した。その後120℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチル(ネガ型現像液)で60秒間現像(ネガ型現像)し保護膜組成物とレジスト膜の可溶部分を同時に除去した後、1−ヘキサノールでリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハーを回転させることにより、150nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
【0332】
実施例2〜8及び比較例1 (レジスト膜・保護膜 組成変更)
レジスト組成物及び保護膜組成物の組み合わせを表3に示す通りにした以外は、実施例1の方法と同様にして、150nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
【0333】
実施例9 (ポジ型現像後ネガ型現像)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上にレジスト組成物Ra1をスピン塗布し、120℃で、60秒間ベークを行い、150nmのレジスト膜を形成した。
次いで、このレジスト膜上に保護膜形成組成物Tx1をスピン塗布し、90℃で、60秒間ベークを行い、30nmの保護膜を上記レジスト膜上に形成した。
得られたウェハーを、液浸液として純水を用い、ArFエキシマレーザースキャナーとしてNA0.85のレンズが装備されたASML社製のPAS5500/1250iを用いて、パターン形成用のマスクを介して、液浸露光した。露光後、ウェハを2000rpmの回転数で回転させ、水を除去した。その後120℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)(ポジ型現像液)で60秒間現像(ポジ型現像)し保護膜組成物とレジスト膜の可溶部分を同時に除去した後、純水でリンスし、ピッチ600nm、線幅450nmのパターンを得た。次に、酢酸ブチル(ネガ型現像液)で60秒間現像(ネガ型現像)し、1−ヘキサノールでリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させることにより、150nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
【0334】
実施例10 (ネガ型現像後ポジ型現像)
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上にレジスト組成物Ra1をスピン塗布し、120℃で、60秒間ベークを行い、150nmのレジスト膜を形成した。
次いで、このレジスト膜上に保護膜形成組成物Tx1をスピン塗布し、90℃で、60秒間ベークを行い、30nmの保護膜を上記レジスト膜上に形成した。
得られたウェハーを、液浸液として純水を用い、ArFエキシマレーザースキャナーと
してNA0.85のレンズが装備されたASML社製のPAS5500/1250iを用いて、パターン形成用のマスクを介して、液浸露光した。露光後、ウェハを2000rpmの回転数で回転させ、水を除去した。その後120℃で、60秒間加熱した後、酢酸ブチル(ネガ型現像液)で60秒間現像(ネガ型現像)し保護膜組成物とレジスト膜の可溶部分を同時に除去した後、1−ヘキサノールでリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させることにより、ピッチ600nm、線幅450nmのパターンを得た。次に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)(ポジ型現像液)で60秒間現像(ポジ型現像)し、純水でリンスして、150nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
【0335】
実施例11〜20、比較例2〜4 (現像条件変更)
保護膜形成組成物、レジスト組成物、ネガ型現像液及びネガ型現像用リンス液の組合せを表3に示す組み合わせにした以外は、実施例1の方法と同様にして、150nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
尚、比較例2〜4においては、ネガ型現像に変えて、ポジ型現像のみを行った。具体的には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)(ポジ型現像液)で60秒間現像(ポジ型現像)し保護膜組成物とレジスト膜の可溶部分を同時に除去した後、純水でリンスした後、4000rpmの回転数で30秒間ウェハを回転させた。
【0336】
ラインエッジラフネス(LER)の評価
実施例1〜20及び比較例1〜4で得られた150nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンを測長走査型電子顕微鏡(日立社製S−9260)を使用して観察し、150nmラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、エッジがあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。結果を表3に示す。
【0337】
ネガ型現像後の現像欠陥の評価
実施例1〜20及び比較例1〜4と同様のウェハ処理をし、150nm(1:1)のラインアンドスペースレジストパターンをウェハ面内78箇所に作成するように露光した。この際の露光の面積は計205cm2である。得られたパターン付きウェハの現像欠陥数をケーケルエー・テンコール(株)製KLA−2360を用いて測定し、得られた数値を露光面積で割った値を現像欠陥数(個数/cm2)と定義した。結果を表3に示す。
現像欠陥数(個数/cm2)は1以下の場合に性能が良好であることを示し、0.6以上1未満、0.2以上0.6未満の順に改良していることを示す。現像欠陥数が1以上のものは、性能が良くない。
【0338】
【表3】

【0339】
表3において、質量比は、ネガ型現像液として2種類の有機溶剤を併用した時及びネガ型現像用リンス液として2種類の有機溶剤を併用した時の、2種類の溶剤の混合質量比を表す。この際、ネガ型現像液又はネガ型現像用リンス液が単独の有機溶剤からなる場合の質量比は100である。
【0340】
本実施例で用いたネガ型現像用の現像液及びリンス液に用いた溶剤の蒸気圧及び沸点を表4に示す。
【0341】
【表4】

【0342】
上記実施例から、本発明のネガ型現像用レジスト組成物により、ラインエッジラフネスが低減され、現像後の現像欠陥発生が抑制された、高精度な微細パターンを安定的に形成
できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0343】
【図1】従来の方法に於ける、ポジ型現像、ネガ型現像と、露光量との関連を示す模式図である。
【図2】従来の方法に於ける、ポジ型現像とネガ型現像を併用したパターン形成方法を示す模式図である。
【図3】本発明の方法に於ける、ポジ型現像、ネガ型現像と、露光量との関連を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)酸の作用により極性が増大する樹脂を含有し、活性光線又は放射線の照射により、ポジ型現像液に対する溶解度が増大し、ネガ型現像液に対する溶解度が減少する、ネガ型現像用レジスト組成物を塗布する工程、
(イ)前記レジスト膜の形成後かつ前記レジスト膜の露光前に、前記レジスト膜上に保護膜組成物による保護膜を形成する工程、
(ウ)液浸媒体を介して露光する工程、及び
(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程が、有機溶剤を含有する現像液を用いて現像を行う工程であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
(エ)ネガ型現像液を用いて現像を行う工程が、保護膜組成物とレジスト膜の可溶部分を同時に除去する工程であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
更に、(オ)ポジ型現像液を用いて現像する工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項5】
保護膜組成物のネガ型現像液に対する製膜後の溶解速度が1nm/sec〜300nm/secであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項6】
保護膜組成物がフッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のパターン形成方法。
【請求項7】
保護膜組成物がネガ型現像液とは異なる成分の溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−309878(P2008−309878A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155322(P2007−155322)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】