説明

パターン検査・計測装置

【課題】一次電子線の光学条件の変化、若しくはウエハ表面に存在する一次電子線の進行方向と直交する電界の発生による二次信号の取りこぼしを最低限に抑え、S/Nの高い尚且つ視野内シェーディングの少ないSEM画像を得ることができ、被測定物に対して、高精度・高再現性で寸法や形状の計測、欠陥検査等の測定が可能となるパターン検査・測定技術の提供。
【解決手段】二次信号収束用レンズ69を、前記一次電子線の進行方向上クロスオーバの位置に、若しくはウィーンフィルタ18により二次信号が前記一次電子線を空間的に分離させ、分離された二次信号の進路上に設置する構成とする。また、前記一次電子線の光学条件(たとえば、前記リターディング電圧や帯電制御電極など)に応じて上記二次信号収束用レンズ69の設定を変更する手段を備えることで、常に視野内二次信号の取りこぼしに起因するシェーディングが発生しないSEM像を得ることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置や液晶等の基板に形成された微細な回路パターン等の製造技術に係り、特に、電子線による半導体装置やフォトマスク等のパターンの検査・計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、半導体装置の製造ラインでは、工程の途中でウエハ上に形成された回路パターンの状態を検査・計測する技術が重要な役割を担っている。
【0003】
従来、この検査・計測技術は、光学式顕微鏡をベースにしたものが大半であったが、近年の半導体装置の微細化、製造プロセスの複雑化に対応するため、電子顕微鏡をベースにした検査・計測装置が普及しつつある。特に、半導体回路パターンの寸法管理において、電子顕微鏡をベースにした測長SEMが、現在、製造プロセスに不可欠な品質管理手段となっている。微細な回路パターンの寸法管理を行う際、高い面分解能、計測精度や再現性が要求される同時に、計測する際に回路パターンへのダメージを抑制することも不可欠である。これらの要求を両立するには、一次電子線を高いエネルギーで加速させ、計測対象となる半導体パターンを含む試料に印加するリターディング電圧で試料に入射する直前に減速させることが、一般的である。しかし、必要に応じてリターディング電圧を調整することで前記一次電子線の上記試料への照射エネルギーを変えることも含めて電子光学条件が変わると、回路パターン表面から放出した二次信号の広がりも変わってしまい、二次信号の検出率の変動が生じ、二次信号像では異常コントラストが発生する。これによって、パターン寸法の計測精度や再現性が劣化する恐れがある。したがって、前記一次電子線の照射エネルギーが変えても、前記二次信号の広がりを維持し、均一な検出率でそれらを検出することが重要である。
【0004】
また、半導体装置の検査では、光学式の検査装置では検出困難な、導通、非道通などの電気的特性不良に対する検査のニーズが高まり、電子線式の検査装置が普及しつつある。この電子線式検査装置による半導体装置の電気的特性不良の検出は、ウエハ表面に形成された回路パターンを帯電させ、それにより顕在化されるコントラストを用いて行われる。これは電位コントラスト法といわれ、半導体装置の電気的特性不良を検出するのに有効な手段である。高分解能を得るために対物レンズの主面がウエハに近づく傾向があり、それによって二次電子の広がりが大きくなり、すべての二次信号を検出器で検出することが難しくなる。また、検査対象に応じて前記一次電子線の光学条件が大幅に振れる場合があり、それによって二次電子の広がりが大きくなり、検出率が変動してしまう問題があり、検査感度や再現性に影響を与える。二次信号の検出率の制御性を向上することが電気的特性不良の検出感度・再現性の向上にそのままつながる。
【0005】
ウエハ上の微小パターンの欠陥検査を一例として説明する。
【0006】
半導体装置は、ウエハ上に主にフォトマスクに形成されたパターンをリソグラフィ処理及びエッチング処理により転写する工程を繰り返すことにより製造される。半導体製造装置において、エッチング処理など各種加工処理の良否、異物発生等は、半導体装置の歩留りに大きく影響を及ぼす為、異常や不良発生をなるべく早期に検知するために製造過程のウエハ上のパターンを検査する方法は、従来から実施されている。
【0007】
このようなパターンを検査するために、パターンのSEM(Scanning Electron Microscope、 走査型電子顕微鏡)像を取得することで、欠陥部を特定することを行っている。近年のパターン微細化に伴い、コンタクトホールの加工難易度が増し、コンタクトホール内部で発生する導通欠陥の数が特に増加しており、高感度な欠陥検出技術が必要となっている。
【0008】
図6は、半導体パターンとその欠陥部を含む計測対象を検査するための原理図を模式的に図示したものである。
【0009】
図6において、参照番号400は、半導体パターンが形成された計測対象の一部分を拡大したウエハ断面であって、Si基板404上にSiO膜405を形成し、コンタクトホールを加工しメタルを埋め込んだものである。ここで、正常部が401、導通欠陥が402である。この欠陥を検出するためには、ウエハを帯電させ、正常部と欠陥の電気抵抗が異なることにより生ずる帯電電位差を、検出される二次電子数の差として表される電位コントラスト像を取得する必要がある。
【0010】
電位コントラスト像は、一次電子線照射によって発生する二次電子ないし反射電子を検出することにより得られる。電子源10から放出される一次電子線410を高いエネルギーで加速し、ウエハに印加するリターディング電圧406で試料に入射する直前に減速させ、パターン表面から放出した二次信号を反射板17に衝突させて、これにより生起される第二の二次信号を検出器411によって検出する。特開2000−188310号公報(特許文献1)には、このような反射板方式を用いた2次電子検出の電子光学系の構成例が開示されている。特許文献1に記載の発明においては、一次電子ビームの光軸上にExB偏向器を設け、発生した二次電子を一次電子線光軸から分離して反射板へ導き、反射板に衝突した2次電子により発生した副次粒子を検出することにより、電位コントラスト像を取得している。
【0011】
電位コントラスト像には、検査ウエハの構造及び検査条件によってウエハ表面を、(1)正帯電、および(2)負帯電にさせたものがある。例えば、電子ビームの入射エネルギーを変化させる方法がある(例えば、非特許文献1参照)。また、他の方法として、ウエハに対向して設置した帯電制御電極407の電位を帯電制御電極408により変化させ、正、負帯電とも、使用する電子ビーム410のウエハへの入射エネルギーは、ウエハから発生する二次電子の放出効率が1以上(例えば、500eV)になるように制御する。
【0012】
しかし、帯電制御電極407の電位が変わると、二次電子の軌道又は広がり409が変わってくる。それによって、前記二次信号に対する検出器411の検出率が変わってくる。反射板17を介して前記二次信号を検出する方式では、前記2次信号の反射板上の広がりが変わる。或いは、2次信号の直接検出方式では、前記二次信号の検出素子上の広がりがかわるため、2次電子の取りこぼしが発生し、SEM像の視野内均一性が低下し、検査・解析の感度や精度が低下してしまう。
【0013】
次に、ウエハ上微小パターンの寸法計測を一例として説明する。半導体装置のパターンが微細化すると共に、ウエハ上回路パターンに対する寸法、形状の管理に益々厳しくなる。設計値から僅かの偏差で、半導体装置の性能に大きな影響を与えてしまう。
【0014】
ウエハ上の回路パターンの計測方法としては、光学式及び電子線式がある。その中、ホールや二次元画像での計測は、主に電子線式が用いられている。例えば、電子線を用いて第1の電圧で目的の観察の前に観察に望ましい表面帯電を絶縁表面に与えた後、第1の電圧と異なる第2の加速電圧を試料に印加して像観察を行なう方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0015】
【非特許文献1】H.Nishiyama, et al. : SPIE 4344. p.12 (2001)
【特許文献1】特開2000−188310号公報
【特許文献2】特開2000−200579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したような方法で、電子線照射による被検査材料から放出した二次信号が広がった状態で検出器により検出されるため、上記二次信号の検出率が低く、SEM像のS/Nが悪い、そのため、一枚のSEM像を取得するには、同一領域に対して複数回照射し、得られた二次信号を平均化してSEM像を出力しているが、パターンの寸法測定により多くの時間が要する。
【0017】
また、何らかの原因でウエハ上の回路パターンが局所的な帯電が発生した場合、二次電子の軌道が大幅に揺れてしまい、SEM像上異常なシェーディングが発生し、上記寸法計測の精度や再現性に大きく低下してしまうという課題を有する。
【0018】
本発明の目的は、一次電子線の光学条件の変化、若しくは試料面に存在する一次電子線の進行方向と直交する電界の発生による二次信号の取りこぼしを最低限に抑え、S/Nの高い尚且つ視野内シェーディングの少ないSEM画像を得ることができ、被測定物に対して、高精度・高再現性で寸法や形状の計測、欠陥の検査等を可能にするパターン検査・計測技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するためには、検査・計測用の一次電子線の電子光学条件や試料面に対向して設置した帯電制御電極の電位の変化によらず、又は試料表面に存在する一次電子線の入射方向に直交する電界によらず、試料上のパターンから発生した二次信号を常に二次信号検出用反射板の同じ位置若しくは範囲に収束することができるレンズが望まれる。
【0020】
上記の二次電子収束用レンズは、一般的に二次信号を通す光路上にどの位置に設置しても、前記二次信号を所定位置に収束させることが可能である。しかしながら、前記一次電子線のビーム径や軸外収差など前記一次電子線の性能に悪影響を抑制するためには、前記一次電子線のクロスオーバの位置ないしはクロスオーバ位置近傍に配置するか、前記二次信号を前記一次電子線から空間的に分離させた後の、当該二次信号の進行パスに設置するかなどの措置を用いなければならない。二次信号を一次電子線と空間的に分離するためには、例えばExBフィルタ(ウィーンフィルタ)などを用いる。
【0021】
また、前述したように、前記帯電制御電極やリターディング電圧などの設定によって二次電子の広がりを含む軌道が変わってくるため、電子光学系の設定条件、例えば帯電制御電極への印加電圧やリターディング電圧に応じて、二次信号の軌道を制御するレンズの設定条件を変更する機能が必須といえる。
【0022】
すなわち、本発明における、二次信号収束レンズは、前記一次電子線の進行方向上クロスオーバの位置に、または一次電子線から空間的に分離された二次信号の進路上に設置する構成とする。また、前記一次電子線の光学条件(たとえば、前記リターディング電圧や帯電制御電極など)に応じて上記二次信号収束用レンズの設定を変更する手段を備えることで、常に視野内二次信号の取りこぼしに起因するシェーディングが発生しないSEM像を得ることを可能にする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一次電子線の光学条件の変化、若しくは試料面に存在する一次電子線の進行方向と直交する電界の発生による二次信号の取りこぼしを最低限に抑え、S/Nの高い尚且つ視野内シェーディングの少ないSEM画像を得ることができる。
従って、本発明に係る走査電子顕微鏡を、半導体試料の外観検査装置(検査SEM)、欠陥レビュー装置(レビューSEM)、あるいは回路パターンの測長装置(CD−SEM)等に適用することにより、従来よりも、高精度・高再現性で寸法や形状の計測、欠陥の検査等を可能にする試料検査・計測技術を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
(実施例1)
図1に、第1の実施例に係る検査・計測装置の構成を示す。本実施例の検査装置は、試料の表面電位計測手段と、帯電制御手段とを備えたリターディング式の走査電子顕微鏡装置であり、検査SEM、レビューSEM、測長SEM等への応用が可能である。
【0026】
図1に示される走査電子顕微鏡装置は、室内が真空排気されるチャンバー2と、チャンバー2内に試料としてのウエハ9を搬送するための予備室(本実施例では図示せず)を備えており、この予備室は、チャンバー2とは独立して真空排気できるように構成されている。また、検査装置は上記チャンバー2と予備室の他に制御部6、画像処理部5から構成されている。チャンバー2内は大別して、電子光学系3、帯電制御部、検出部7、試料室8、光学顕微鏡部4から構成されている。本実施例において、チャンバー2とは、試料室8を含んだ真空容器全体を意味し、上述した電子光学系3、帯電制御部、検出部7、光学顕微鏡部4は、真空容器内の減圧された状態で動作する。試料室8は、チャンバー2内で試料ステージが駆動する空間を示す概念であり、図1の点線で囲われた領域が試料室に相当する。被検査試料としては、配線パターンや回路パターンが形成された半導体ウエハ、ウエハの一部分を割断して取りだした試料片、或は回路が形成された半導体チップなどがあるが、磁気ヘッドや記録媒体、液晶パネル等、半導体装置以外の試料の電位観察も当然可能である。
【0027】
電子光学系3は、電子源10、電子ビーム引き出し電極11、コンデンサレンズ12、ブランキング用偏向器13、走査偏向器15、絞り14、対物レンズ16、二次信号収束用レンズ69、反射板17、ExB偏向器18から構成されている。検出部7のうち、検出器20がチャンバー2内の対物レンズ16の上方に配置されている。検出器20の出力信号は、チャンバー2の外に設置されたプリアンプ21で増幅され、AD変換機22によりデジタルデータとなる。本実施例の電子光学系においては、一次電子線のクロスオーバ位置がExB偏向器18によって形成される。従って、二次信号収束用レンズ69は、ExB偏向器18と走査偏向器15の間に配置される。
帯電制御部は、ステージに対向して設置した帯電制御電極65、帯電制御電極制御部66、帯電制御電源67から構成されている。
【0028】
検出部7は、真空排気されたチャンバー2内の検出器20、チャンバー2の外のプリアンプ21、AD変換器22、光変換器23、光ファイバ24、電気変換器25、高圧電源26、プリアンプ駆動電源27、AD変換器駆動電源28、逆バイアス電源29から構成されている。検出器20、プリアンプ21、AD変換器22、光変換器23、プリアンプ駆動電源27、AD変換器駆動電源28は、高圧電源26により正の電位にフローティングされている。
【0029】
試料室8は、試料台30、Xステージ31、Yステージ32、ウエハホルダ33、位置モニタ用測長器34、光学式高さ測定器35から構成されている。
【0030】
光学顕微鏡部4は、チャンバー2の室内における電子光学系3の近傍にあって、互いに影響を及ぼさない程度離れた位置に設備されており、電子光学系3と光学顕微鏡部4の間の距離は既知である。そして、Xステージ31またはYステージ32が、電子光学系3と光学顕微鏡部4との間の既知の距離を往復移動するようになっている。光学顕微鏡部4は、光源40、光学レンズ41、CCDカメラ42により構成されている。
【0031】
装置各部の動作命令および動作条件は、制御部6から入出力される。制御部6は、装置各部、例えば電子光学系3やXステージ31、Yステージ32その他の制御パラメータや動作条件が格納されたデータベースを備えている。データベースは、所定の情報を格納するストレージ(不揮発性記憶手段)、当該ストレージに格納される情報を処理する演算装置、当該演算装置により処理される情報を一時格納するメモリなどのハードウェアにより構成される。データベース内のストレージには、電子ビーム発生時の加速電圧、電子ビーム偏向幅、偏向速度、検出装置の信号取り込みタイミング、試料台移動速度、二次電子収束レンズの設定等々の条件が格納されており、目的に応じて選択され、装置各部の制御が実行される。データベースに格納された制御条件は、装置ユーザがユーザインタフェースを介してマニュアル操作で選択しても良いし、制御部6に予め動作条件を設定しておき、設定に従って動作させるようにしても良い。
【0032】
制御部6は、補正制御回路43を用いて、位置モニタ用測長器34、光学式高さ測定器35の信号から位置や高さのずれをモニタし、その結果より補正信号を生成し、電子ビームが常に正しい位置に照射されるようレンズ電源45や走査信号発生器44に補正信号を送る。
【0033】
ウエハ9の画像を取得するためには、細く絞った電子ビーム19を該ウエハ9に照射し、二次電子もしくは反射電子またはその両者51を発生させ、これらを電子ビーム19の走査、必要がある場合ステージ31、32の移動と同期して検出することでウエハ9表面の画像を得る。
【0034】
電子源10には、拡散補給型の熱電界放出電子源が使用されている。この電子源10を用いることにより、従来の、例えばタングステン(W)フィラメント電子源や、冷電界放出型電子源に比べて安定した電子ビーム電流を確保することができるため、明るさ変動の少ない電位コントラスト像が得られる。電子ビーム19は、電子源10と引き出し電極11との間に電圧を印加することで電子源10から引き出される。電子ビーム19の加速は、電子源10に高電圧の負の電位を印加することでなされる。
【0035】
これにより、電子ビーム19は、その電位に相当するエネルギーで試料台30の方向に進み、コンデンサレンズ12で収束され、さらに対物レンズ16により細く絞られて試料台30上のX、Yステージ31、32の上に搭載されたウエハ9に照射される。なお、ブランキング用偏向器13には、走査信号およびブランキング信号を発生する走査信号発生器44が接続され、コンデンサレンズ12および対物レンズ16には、各々レンズ電源45が接続されている。ウエハ9には、リターディング電源36により負の電圧(リターディング電圧)を印加できるようになっている。このリターディング電源36の電圧を調節することにより一次電子ビームを減速し、電子源10の電位を変えずにウエハへの電子ビーム照射エネルギーを最適な値に調節することができる。
【0036】
ウエハ9上に電子ビーム19を照射することによって発生した二次電子もしくは反射電子またはその両者51は、ウエハ9に印加された負の電圧により加速される。ウエハ9上方に、一次電子線のクロスオーバの位置、またはクロスオーバの位置に近い位置に合わせて、二次信号収束用レンズ69が配置され、これにより加速された二次電子もしくは反射電子またはその両者51は、レンズ69により広がりを調整する。二次信号収束用レンズとしては、磁界型レンズ、静電型レンズのいずれかを使用できる。磁界型レンズと静電型レンズを組み合わせて用いることもできる。
【0037】
二次信号収束用レンズ69を制御する制御部70は、試料に印加する負の電圧及び帯電制御電極65の設定条件を含む一次電子線の光学条件に連動させて可変させることができる。また、ExB偏向器18が配置され、加速された二次電子もしくは反射電子またはその両者51は所定の方向へ偏向される。ExB偏向器(ウィーンフィルタ)18にかける電圧と磁界の強度により、偏向量を調整することができる。また、この電磁界は、試料に印加した負の電圧に連動させて可変させることができる。レンズ69およびExB偏向器18により、二次電子もしくは反射電子またはその両者51の広がりおよび進行方向が調整され、所定の条件で反射板17に衝突する。この反射板17に加速された二次電子もしくは反射電子またはその両者51が衝突すると、反射板17からは第二の二次電子もしくは反射電子またはその両者52が発生する。
【0038】
上記反射板17に衝突して発生した第二の二次電子および後方散乱電子52は、この吸引電界により検出器20に導かれる。検出器20は、電子ビーム19がウエハ9に照射されている間に発生した二次電子もしくは反射電子またはその両者51がその後加速されて反射板17に衝突して発生した第二の二次電子もしくは反射電子またはその両者52を、電子ビーム19の走査のタイミングと連動して検出するように構成されている。検出器20の出力信号は、チャンバー2の外に設置されたプリアンプ21で増幅され、AD変換器22によりデジタルデータとなる。AD変換器22は、検出器20が検出したアナログ信号をプリアンプ21によって増幅された後に直ちにデジタル信号に変換して、画像処理部5に伝送するように構成されている。検出したアナログ信号を検出直後にデジタル化してから伝送するので、高速で且つSN比の高い信号を得ることができる。なお、ここでの検出器20として、例えば、半導体検出器を用いてもよい。
【0039】
X、Yステージ31、32上にはウエハ9が搭載されており、検査実行時にはX、Yステージ31、32を静止させて電子ビーム19を二次元に走査する方法と、検査実行時にX、Yステージ31、32をY方向に連続して一定速度で移動されるようにして電子ビーム19をX方向に直線に走査する方法のいずれかを選択できる。ある特定の比較的小さい領域を検査する場合には前者のステージを静止させて検査する方法、比較的広い領域を検査するときは、ステージを連続的に一定速度で移動して検査する方法が有効である。なお、電子ビーム19をブランキングする必要がある時には、ブランキング用偏向器13により電子ビーム19が偏向されて、電子ビームが絞り14を通過しないように制御できる。
【0040】
位置モニタ用測長器34として、本実施例ではレーザ干渉による測長計を用いた。Xステージ31およびYステージ32の位置が実時間でモニタでき、制御部6に転送されるようになっている。また、Xステージ31、Yステージ32、そしてウエハホルダ33のモータの回転数等のデータも同様に各々のドライバから制御部6に転送されるように構成されており、制御部6はこれらのデータに基いて電子ビーム19が照射されている領域や位置が正確に把握できるようになっており、必要に応じて実時間で電子ビーム19の照射位置の位置ずれを補正制御回路43より補正するようになっている。また、ウエハ毎に、電子ビームを照射した領域を記憶できるようになっている。
【0041】
光学式高さ測定器35は、電子ビーム以外の測定方式である光学式測定器、例えばレーザ干渉測定器や反射光の位置で変化を測定する反射光式測定器が使用されており、X、Yステージ上31、32に搭載されたウエハ9の高さを実時間で測定するように構成されている。本実施例では、光源37から照射される白色光をウエハ9に照射し、反射光の位置を位置検出モニタにて検出し、位置の変動から高さの変化量を算出する方式を用いた。この光学式高さ測定器35の測定データに基いて、電子ビーム19を細く絞るための対物レンズ16の焦点距離がダイナミックに補正され、常に非検査領域に焦点が合った電子ビーム19を照射できるようになっている。また、ウエハ9の反りや高さ歪みを電子ビーム照射前に予め測定しており、そのデータをもとに対物レンズ16の検査領域毎の補正条件を設定するように構成することも可能である。
【0042】
画像処理部5は、画像記憶部46、情報処理手段48、モニタ50により構成されている。情報処理手段48には、検出器7の出力信号から被検査試料上の任意領域の二次信号の二次元分布情報を取得し、当該二次元分布情報を基に被検査試料表面の帯電電位を計算するためのソフトウェア、及び当該二次元分布情報を処理して被検査試料の欠陥検査を行うためのソフトウェアが格納されるメモリを備えており、帯電電位検出演算及び欠陥検査のための演算処理が実行される。二次元分布情報としては、所望倍率における画像データ、あるいは当該画像を構成する画素データなどが使用できる。画素の大きさや画像データの視野サイズは、任意のサイズのデータを用いることができる。また、図示されてはいないが、モニタ50には、装置ユーザが装置の制御系に対して必要な情報を設定入力するための情報入力手段が備えられており、モニタ50と情報入力手段とにより装置のユーザインタフェースを構成している。上記検出器20で検出されたウエハ9の画像信号は、プリアンプ21で増幅され、AD変換器22でデジタル化された後に光変換器23で光信号に変換され、光ファイバ24によって伝送され、電気変換器25にて再び電気信号に変換された後に画像記憶部46に記憶される。画像形成における電子ビームの照射条件及び検出系の各種検出条件は、あらかじめ検査条件設定時に設定され、ファイル化されて制御部6内のデータベースに登録されている。
【0043】
次に、制御部6により実行される二次信号収束用レンズ69の制御動作について詳述する。まず、ある電子光学条件で撮像された画像にシェーディングが発生したとする。情報処理手段48内の演算部は、画像中のシェーディング領域を構成する画素の信号強度を分析して、シェーディングの程度を推定する。例えば、ある視野内の画像上の特定領域全体の画素信号強度が所定のしきい値よりも大きい場合には、シェーディングが発生していると判断する。演算部は、シェーディング発生領域の視野内にしめる割合や、シェーディング発生領域の画素信号強度の最大値などの情報をもとに、発生したシェーディングの程度を推定し、当該シェーディングの程度情報を制御部6へ伝送する。
【0044】
一方、制御部6内のストレージには、シェーディングの程度情報と二次信号収束用レンズ69の制御条件を対応して記述した補正テーブルが格納されている。補正テーブルに格納されるシェーディングの程度情報としては、例えば、シェーディング領域の最大画素信号強度やシェーディング発生領域の面積、あるいは撮像した視野画像内に対するシェーディング発生領域の占める割合(例えば、所定倍率における所定サイズの視野画像を構成する全ピクセル数と、当該視野画像内でシェーディング発生領域に属する部分のピクセル数の比)などがある。また、二次信号収束用レンズ69の制御条件としては、レンズ69が静電型レンズの場合には電極への印加電圧値、磁界型レンズの場合には、コイルへの励磁電流値が考えられる。図2には、その一例を概念的に示す。図2は、二次信号収束用レンズ69の制御条件として磁界型レンズの励磁電流値、シェーディングの程度情報としてシェーディング発生領域の割合を取った場合の補正テーブルの構成例である。制御部6内の演算装置は、情報処理手段48から伝送されるシェーディングの程度情報をもとに補正テーブルを検索し、適合する二次信号収束用レンズ69の制御条件を選択して、二次信号収束用レンズ制御部70へ送信する。二次信号収束用レンズ制御部70は、送信された制御情報に基づき、二次信号収束用レンズ69へ適当な励磁電流を流す。
【0045】
図2に示した補正テーブルを使用するためにはシェーディングの程度情報が必要であり、従って、現在設定された電子光学条件でシェーディングが発生するか否か判断するための、判断画像の取得が必要となる。実際には、検査・計測のための電子光学系の調整時に調整用画像を取得した際、あるいは検査・計測途中でシェーディングが発生した場合などに、適宜補正テーブルを読み出して、二次信号収束レンズ制御部70へ補正信号を送る。
【0046】
例えば、電子光学系の設定時に取得した調整用画像にシェーディングが発生していたとする。このような調整用画像は、例えば、一次電子線のフォーカス調整時に取得することができる。制御部6がシェーディングの発生を検知すると、情報処理手段48に対してシェーディング発生の信号を送信し、情報処理手段48は、シェーディングの除去を行う必要があるかどうかの確認要求をモニタ50に表示させる。確認要求は、「シェーディング除去」や「電子光学系再設定」などのボタンやアイコンをGUI表示させ、装置ユーザに当該ボタンやアイコンを選択させることにより行われる。選択は、情報入力手段によりおこなっても良い。同時に、「シェーディング除去不要」「電子光学系再設定不要」など、不要意志を確認するためのボタンやアイコンもGUI表示させる。装置ユーザが、「要」ボタンを押した場合、情報処理手段48は、要ボタンが押されたという情報を制御部6に送信する。制御部6は、「シェーディング除去要」の情報を情報処理手段48から受信すると、補正テーブルを参照して、シェーディング除去に最も適した二次信号収束用レンズ69の制御条件を選択して、二次信号収束用レンズ制御部70へ送信する。これにより、二次信号収束用レンズの自動制御が実現される。
【0047】
以上の説明では、補正テーブルに二次信号収束用レンズの制御条件の選択条件が含まれている必要があるが、二次信号収束用レンズ69ないしは電子光学系の調整条件のみを格納した補正テーブルを使用することも可能である。その場合、シェーディング発生時には、「シェーディング対策1」「シェーディング対策2」・・・・「シェーディング対策n」といった電子光学系の再設定条件をモニタ50に複数表示させる。装置ユーザは、シェーディングの発生している画像を参照して、最も適当と思われるシェーディングの補正条件、例えば「シェーディング対策2」を選択する。情報処理手段48は、装置ユーザがシェーディング対策2を選択したという情報を制御部6に送信し、制御部6は、補正テーブルを参照して、シェーディング対策2に対応する二次信号収束用レンズの動作条件を選択し、二次信号収束用レンズ制御部70へ送信する。以上説明した制御方式は半自動制御であり完全な自動制御ではないが、シェーディングの程度情報と電子光学系の設定条件の因果関係が明確ではない場合であっても、ある程度、装置の動作を自動化できるという利点がある。また、補正テーブルに格納すべきデータ量が少なくて済むので、容量の小さなメモリが使用できるという利点もある。
【0048】
図3には、補正テーブルの別の構成例を示す。被検査試料の種類によっては、シェーディングが発生しやすい一次電子線の照射条件が予め分かっている場合もあり、そのような場合は、一次電子線の照射条件(例えば、電子源の引出電圧、ビーム電流値、リターディング電圧値、耐電制御電極への印加電圧値、ExB偏向器の制御条件など)と二次信号収束用レンズ69の制御条件を対応して格納した補正テーブルを用いる。例えば、図3に示す補正テーブルの「二次信号収束レンズ制御条件」フィールドには、電極への印加電圧値やコイルへの励磁電流値、あるいはその組み合わせが格納される。また、「一次電子照射条件」には、電子源の引出電圧、ビーム電流値、リターディング電圧値、耐電制御電極への印加電圧値、ExB偏向器の制御条件のいずれかの条件、あるいはその組み合わせが格納される。図3の補正テーブルを使用することにより、一次電子線の照射条件の設定段階で、二次信号収束用レンズの最適な制御条件を選択することが可能となる。
【0049】
以上、二次信号収束レンズ69の制御パラメータをテーブル形式で格納した例を示したが、制御パラメータと当該制御パラメータを選択するための選択条件とは、必ずしもテーブル形式で格納する必要はない。また、制御パラメータの選択条件は、種々のパラメータの組み合わせにより、任意の程度に複雑化することが可能である。
【0050】
なお、以上の構成例においては、画像処理部5と制御部6とが別々に構成された例を用いて説明したが、画像処理部5と制御部6とを同一の情報処理手段により構成しても構わない。
【0051】
次に、図4に、本実施例の装置構成で、ウエハから放出した二次電子が、二次信号収束用レンズ69が動作しない場合(a)と動作する場合(b)における、反射板17での広がりの計算結果の一例を示す。図4に示した二次電子の広がりは、ある照射エネルギー(ELand)を持つ一次電子線がある電子光学条件でウエハ9の表面に一点照射の場合、反射板17でウエハ9から放出した二次電子の広がり及び検出部7までの検出率のシミュレーション結果である。また、図4には示されていないが、一次電子線がウエハ9表面に走査する際に二次信号も、それに従って反射板17上走査する(図4の(a)に示したように、広がった二次信号全体が反射板上に走査する。)。本シミュレーション結果によると、この反射板上での走査範囲が広くなると、二次信号51の強度に比例する第二の二次電子もしくは反射電子またはその両者52の検出器20までの検出率が、反射板上の出射位置の依存性が顕著になり、二次信号画像上シェーディングが発生する。また、ウエハ上電気特性の異なるパターンの境界付近で、入射一次電子線と直交する電界成分がある場合、二次信号の反射板17で当たる位置は、更に中心から外れてしまう。よって、同様な理由で、二次信号画像上シェーディングが発生する。
【0052】
これに対して、図4の(b)に示すように、二次信号収束用レンズ69が動作する場合には、二次電子の広がりが所要の広がり範囲に制御することが可能となり、また、一次電子線の反射板上でのシフト量を最小限に抑制することが可能となる。したがって、これにより、視野内二次信号の取りこぼしに起因するシェーディングが発生しないSEM像を得ることが可能になる。
【0053】
図5の(a)にウエハ上導体及び絶縁体の境界部のSEM像を示す。上述したシミュレーション結果通り、図3の(b)に示すように、二次信号収束用レンズ69が動作することで、SEM像の視野内シェーディングを防ぐことができた。また、像の平均明るさもレンズ69が動作することにより飛躍的に向上したことが判った。
【0054】
以上説明したように、本実施例の装置においては、ウエハパターンから放出した二次信号の検出率は、二次信号収束用レンズを投入することにより、飛躍的に向上することができ、視野内シェーディングの少ない均一なSEM像を得ることが可能にした。これは、画像のS/N向上に繋がり、検査の高感度化や計測の高精度、高再現性に繋がる。
【0055】
(実施例2)
ウエハから加速された二次信号51が反射板17を使わず、直接に検出器20により検出され、検出部7により画像化される方式もある。本実施例では、そのような二次信号の直接検出方式において、検出器20を一次電子線の光軸外に配置した場合の装置構成及び設定方法について述べる。なお、本実施例において、実施例1と同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。なお、図7に示した装置構成では、画像処理部5と制御部6とを同一の情報処理手段100により構成した。
【0056】
図7に、第2の実施例に係る検査・計測装置の構成を示す。ウエハ9上に電子ビーム19を照射することによって発生した二次電子もしくは反射電子またはその両者51は、ウエハ9に印加された負の電圧により加速される。ウエハ9上方に、二次信号収束用レンズ69が配置され、これにより加速された二次電子もしくは反射電子またはその両者51はレンズ69により広がりを調整する。レンズ69を制御する制御部70は、試料に印加する負の電圧及び帯電制御電極65の設定条件を含む一次電子線の光学条件に連動させて可変させることができる。また、ExB偏向器18が配置され、加速された二次電子もしくは反射電子またはその両者51は所定の方向へ偏向される。E×B偏向器18にかける電圧と磁界の強度により、偏向量を調整することができる。また、この電磁界は、ウエハに印加した負の電圧に連動させて可変させることができる。
【0057】
レンズ69及びExB偏向器18により二次電子もしくは反射電子またはその両者51の広がり及び進行方向が調整され、検出器20から発生した吸引電界により検出器20に導かれる。検出器20は、電子ビーム19がウエハ9に照射されている間に発生した二次電子もしくは反射電子またはその両者51を、電子ビーム19の走査のタイミングと連動して検出するように構成されている。本実施例においては、E×B偏向器18と二次信号収束用レンズ69の動作条件を連動して制御する必要がある。従って、情報処理手段100内に格納される補正テーブルには、二次信号収束用レンズ69の動作条件に加え、ExB偏向器18の動作条件(コイルの励磁電流値と電極への印加電圧値)が格納されることになる。
【0058】
このように、ExB偏向器18及び二次信号収束用レンズ69の設定を一次電子線の光学条件に応じて最適化することで、二次電子もしくは反射電子またはその両者51を直接に検出器20に当るようにロス少なく検出することができ、S/Nの高い、視野内二次信号の取りこぼしに起因するシェーディングの少ないSEM像を得ることが可能になる。
【0059】
(実施例3)
検出器20を一次電子線の進行通路(光軸)に合わせて設置する方式(二次信号の直接検出方式、設置位置が一次電子線の光軸上)もある。本実施例では、その場合の装置構成及び設定方法について述べる。なお、本実施例において、実施例1と同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0060】
図8に、第3の実施例に係る検査・計測装置の構成を示す。ウエハ9上に電子ビーム19を照射することによって発生した二次電子もしくは反射電子またはその両者51は、ウエハ9に印加された負の電圧により加速される。ウエハ9上方に、二次信号収束レンズ69が配置され、これにより加速された二次電子もしくは反射電子またはその両者51はレンズ69により広がりを調整する。レンズ69を制御する制御部70は、試料に印加する負の電圧及び帯電制御電極65の設定条件を含む一次電子線の光学条件に連動させて可変させることができる。
【0061】
検出器20を光軸上に配置する場合、検出器に一次電子線を通す穴があるため、二次電子もしくは反射電子またはその両者51の検出率を確保するために、その穴の位置に当らないように工夫する必要がある。例えば、レンズ69により二次電子もしくは反射電子またはその両者51の広がりを当初大きくして、一次電子線の通す穴に当る二次信号51の量を少なくし、検出器20から発生した吸引電界により検出器20に導かれる。検出器20は、電子ビーム19がウエハ9に照射されている間に発生した二次電子もしくは反射電子またはその両者51を、電子ビーム19の走査のタイミングと連動して検出するように構成されている。
【0062】
このように、二次信号レンズ69の設定を一次電子線の光学条件に応じて最適化することで、二次電子もしくは反射電子またはその両者51を直接に検出器20に当るようにロス少なく検出することができ、S/Nの高い、視野内二次信号の取りこぼしに起因するシェーディングの少ないSEM像を得ることが可能になる。
【0063】
(実施例4)
ウエハから加速された二次信号51が、ExB偏向器(ウィーンフィルタ)18によって一次電子線と分離されてから二次信号収束用レンズ69により上記二次信号の広がりが調整され検出される方式もある。本実施例では、その場合の装置構成及び設定方法について述べる。
【0064】
図9に、第4の実施例に係る検査・計測装置の構成を示す。ウエハ9上に電子ビーム19を照射することによって発生した二次電子又は反射電子或はその両者51は、ウエハ9に印加された負の電圧により加速される。ウエハ9上方に設置されているExB偏向器18によって一次電子線と分離され、二次信号51が検出カラム71に導入される。ExB偏向器18の電磁界は、試料に印加した負の電圧に連動させて可変させることができ、加速された二次信号51は所定の方向へ偏向される。二次信号収束用レンズ69は、前記検出カラム71で二次信号51の進行方向に設置される。二次信号51の検出器20での広がりが調整され、検出器20に検出される。検出器20は、電子ビーム19がウエハ9に照射されている間に発生した二次電子もしくは反射電子又はその両者51を、電子ビーム19の走査のタイミングと連動して検出するように構成されている。ExB偏向器18及び二次信号収束用レンズ69の設定を一次電子線の光学条件に応じて最適化することで、二次信号51を直接に検出器20に当るようにロス少なく検出することができ、S/Nの高い、視野内シェーディングの少ないSEM像を得ることが可能になる。
【0065】
以上詳述したように、本発明によれば、一次電子線の光学条件の変化、若しくは試料面に存在する一次電子線の進行方向と直交する電界の発生による二次信号の取りこぼしを最低限に抑え、S/Nの高い尚且つ視野内シェーディングの少ないSEM画像を得ることができ、被測定物に対して、高精度・高再現性で寸法や形状の計測、欠陥の検査、レビューといった測定が可能となり、半導体装置に対するより真実に近い情報を得ることができる。
【0066】
また、本発明の二次信号の制御レンズを荷電粒子を用いた検査・計測装置に適用させることにより、計測・計測装置の測定精度、再現性の向上が実現できる。また、荷電粒子を用いた半導体の検査装置に適用させた場合は、電気的特性不良の高感度検出が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施例に係る検査・計測装置の構成を説明する図。
【図2】SEM画像のシェーディング状況による二次信号収束レンズ制御信号の選択を説明する図。
【図3】1次電子線照射条件による二次信号収束レンズ制御信号の選択を説明する図。
【図4】反射板位置での二次電子の広がりと検出率を示すシミュレーション結果。
【図5】二次信号収束用レンズによる視野内シェーディング低減の実験結果を示す図。
【図6】半導体装置のウエハ断面と欠陥部を説明する図。
【図7】本発明の第2の実施例に係る検査・計測装置の構成を説明する図。
【図8】本発明の第3の実施例に係る検査・計測装置の構成を説明する図。
【図9】本発明の第4の実施例に係る検査・計測装置の構成を説明する図。
【符号の説明】
【0068】
2…チャンバー、3…電子光学系、4…光学顕微鏡部、5…画像処理部、6…制御部、7…検出部、8…試料室、9…ウエハ、10…電子源、11…引き出し電極、12…コンデンサレンズ、13…ブランキング偏向器、14…絞り、15…走査偏向器、16…対物レンズ、17…反射板、18…ExB偏向器、19…電子ビーム、20…検出器、21…プリアンプ、22…AD変換器、23…光変換器、24…光ファイバ、25…電気変換器、26…高圧電源、27…プリアンプ駆動電源、28…AD変換器駆動電源、29…逆バイアス電源、30…試料台、31…Xステージ、32…Yステージ、33…ウエハホルダ、34…位置モニタ測長器、35…光学式高さ測定器、36…リターディング電源、37…光源、40…光源、41…光学レンズ、42…CCDカメラ、43…補正制御回路、44…走査信号発生器、45…レンズ電源、46…画像記憶部、48…計算機(演算部と比較演算回路)、50…モニタ、51…二次電子および後方散乱電子、52…第二の二次電子および後方散乱電子、62…試料交換室、65…帯電制御電極、66…帯電制御電極制御部、67…帯電制御電源、68…Vr制御部、69…二次信号収束用レンズ、70…二次信号収束用レンズ制御部、71…検出カラム、401…正常部、402…導通欠陥、404…Siウエハ、405…酸化膜、408…帯電制御電極電源、411…二次信号検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源と、前記電子源から放出される一次電子線により試料面上のパターンを走査する電子光学系と、前記一次電子線の照射により前記試料面から二次的に発生した二次信号を検出する検出手段と、検出された前記二次信号の二次元分布情報から前記試料面上のパターンの寸法計測ないし検査を行う手段とを有し、
前記電子光学系は、前記一次電子線のクロスオーバ位置またはクロスオーバ位置近傍、ないし前記一次電子線から分離された二次電子の軌道上に配置された二次信号収束用レンズを備え、
当該二次信号収束用レンズにより前記二次信号の軌道又は広がりを制御することを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記電子光学系は、ウィーンフィルタを備え、
前記二次信号収束用レンズは、当該ウィーンフィルタが形成するクロスオーバ位置に配置されたことを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記電子光学系は、ウィーンフィルタと対物レンズとを備え、
前記二次信号収束用レンズは、当該ウィーンフィルタと対物レンズの間に配置されたことを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記二次信号収束用レンズは、前記一次電子線の光学条件に応じて調整することができ、前記二次信号の広がりを任意に制御できることを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記二次信号収束用レンズとして、磁界型レンズ、静電型レンズのいずれか、または当該磁界型レンズ、静電型レンズの組み合わせを用いることを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記電子光学系は、ウィーンフィルタを備え、
前記二次信号収束用レンズが、当該ウィーンフィルタと前記検出手段との間に配置されたことを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項7】
請求項5に記載の試料検査・計測装置において、
前記二次信号の広がりを制御する機能を、前記磁界型レンズの磁界を発生するコイルの励磁電流もしくは前記静電型レンズの電極への印加電圧を調整することにより実現することを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の試料検査・計測装置において、
前記励磁電流または印加電圧を供給する電源と、当該電源の動作を制御する制御装置とを備え、
当該制御装置は、
前記二次信号収束用レンズの動作条件と、当該動作条件の選択条件とが対応して格納された記憶手段と、
当該記憶手段に格納された情報を読み出して前記電源に伝送するための演算手段とを備えることを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項9】
請求項7に記載の試料検査・計測装置において、
前記二次信号の広がりを前記一次電子線の光学条件に応じて、前記二次信号収束用レンズにより、前記二次信号を前記反射板上もしくは前記検出手段の検出素子上のある位置もしくは一定の範囲内に集約するよう構成したことを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項10】
請求項8に記載の試料検査・計測装置において、
前記記憶手段には、前記二次信号収束用レンズへ供給する励磁電流値または印加電圧値と、前記一次電子線の照射条件とが対応して格納された補正テーブルが格納されたことを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項11】
請求項8に記載の試料検査・計測装置において、
前記寸法計測ないし検査を行う手段は、前記二次元分布情報として前記二次信号から形成される画像を構成する画素に対して所定の演算処理を行うことにより、取得画像に発生したシェーディングの程度情報を分析する画像処理部を備え、
前記制御装置の記憶手段には、
前記二次信号収束用レンズの動作条件と、当該励磁電流値または印加電圧値の選択条件と、取得した二次信号画像に発生したシェーディングの程度情報とが対応して格納された補正テーブルが格納され、
前記制御装置の演算手段は、
前記画像処理部から伝送されるシェーディングの程度情報をもとに、前記二次信号収束用レンズの動作条件を選択することを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項12】
請求項8に記載の試料検査・計測装置において、
前記寸法計測ないし検査を行う手段、または前記制御装置における演算結果が表示される表示画面と、該表示画面に表示される応答要求に対して情報を入力するための情報入力手段とを備え、
当該表示画面には、複数の前記一次電子線の照射条件と、そのいずれかの選択要求が表示され、前記情報入力手段により選択された一次電子線の照射条件によって、前記二次信号収束用レンズの動作条件が決定されることを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項13】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記寸法計測ないし検査を行う手段における演算結果が表示される表示画面と、該表示画面に表示される応答要求に対して情報を入力するための情報入力手段とを備え、
前記寸法計測ないし検査を行う手段は、前記二次元分布情報として前記二次信号から形成される画像を構成する画素に対して所定の演算処理を行うことにより、取得画像に発生したシェーディングの程度情報を分析する画像処理部を備え、
前記表示画面には、前記シェーディングを除去するための電子光学系の再設定ボタンが複数表示され、当該選択されたボタンに対応する電子光学系に応じた前記二次信号収束用レンズの動作条件が決定されることを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項14】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記電子光学系は、前記二次信号を反射する反射板を備えたことを特徴とする試料検査・計測装置。
【請求項15】
請求項1に記載の試料検査・計測装置において、
前記検出手段は、前記一次電子線の照射により前記試料面から二次的に発生した二次信号を直接検出する検出器を有し、かつ、前記検出器は、前記一次電子線の進行通路に沿って設置されていることを特徴とする試料検査・計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−27737(P2008−27737A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199072(P2006−199072)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】