説明

パターン欠陥検査方法および装置

【課題】
グレインやモホロジーの誤検出や干渉光強度ムラの影響を低減して、様々なプロセスにおけるターゲット欠陥を安定に検出できるパターン欠陥検出方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】
複数波長を出力する照明手段3および4から射出された光を、ビームスプリッタ6で反射しウェハ1に照射する。ウェハ1からの回折光は対物レンズ8で集光され、光変調ユニット7、11、13を通して、光検出部17にてイメージセンサに結像し、信号処理部18にて欠陥を検出する。ここで、光変調ユニットは複数の光学部品を選択的に用いて対象欠陥に最適化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料上の回路パターンの欠陥(ショートや断線など)や異物を検出するパターン欠陥検査・異物検査に係り、特に半導体ウェハや液晶ディスプレイ、ホトマスクなどの回路パターンにおける欠陥・異物を検査するパターン欠陥検査方法及びその装置に関する。以下、欠陥は異物を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の検査装置は試料を移動させつつ、イメージセンサ等の撮像素子により試料を撮像し、検出した画像信号と一定時間遅らせた画像信号の濃淡を比較することにより不一致部を欠陥として認識するものがある(特許文献1)。
【0003】
また、試料の欠陥検査に関する他の技術としては、メモリマット部等のパターン密度が高い領域と周辺回路等のパターン密度が低い領域とが同一ダイ内に混在する半導体ウェハなどにおいて高精度に検査する技術がある(特許文献2)。
【0004】
また、微細な回路パターンを検出する技術としては、光学的に照明光または回折光を制御し、高い分解能で検出する技術がある(特許文献3および4)。
【0005】
また、ホトマスクの回路パターンを検査する技術としては、光源にエキシマレーザ等のUV(Ultra Violet:紫外)レーザ光を用い、光路上に挿入した拡散板を回転させて可干渉性を低減させた光をマスクに均一照明し、得られるマスクの画像データから特徴量を計算してホトマスクの良否を判定する技術がある(特許文献5)。
【0006】
また、UV〜DUV(Deep UV:深紫外)レーザ光を用いた検査技術として、レーザ光を揺動させてレーザの干渉性を低減する技術がある(特許文献6)。
【0007】
【特許文献1】特開昭61−212708号公報
【特許文献2】特開平 8−320294号公報
【特許文献3】特開平 7−318326号公報
【特許文献4】特開2000−155099号公報
【特許文献5】特開平10− 78668号公報
【特許文献6】特開2001−194323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年のLSI製造においては、高集積化のニーズに対応した回路パターンの微細化により、ウェハ上に形成されるパターン幅は200nm以下になっており、それに対応して検出すべき欠陥の寸法も微細化している。特に、「Non Visual Defect」と呼ばれるように従来の技術では検出が困難な欠陥も報告されている。
【0009】
このような中、欠陥検査装置では、検査用対物レンズの高NA(Numerical Aperture:開口数)化や光学的な超解像技術の開発が進められているが、検査用対物レンズの高NA化は物理的限界に達しているため、検出に用いる照明光の波長をUV(Ultra Violet)光やDUV(Deep UV:深紫外)光の領域へ短波長化していくのが本質的なアプローチである。
【0010】
LSIデバイスには、主に繰り返しパターンで形成されるメモリ製品や、主に非繰り返しパターンで形成されるロジック製品など、検査対象となるパターンの構造が複雑かつ多様化してきており、LSIデバイス製造時に管理が必要なターゲット欠陥を確実に見つけ出すことが困難となっている。図2にターゲット欠陥を示す。検出が望まれているターゲット欠陥としては、各プロセスにおける異物、パターン欠陥に加え、CMP工程ではボイドやスクラッチである。さらに、ゲート配線やアルミニウム(AL)等の金属配線部でのショートやブリッジ、配線間を繋ぐコンタクトホールの非導通や非開口がある。
【0011】
これらターゲット欠陥は、欠陥自身の形状が微小(光学系の解像度以下の大きさ)かつ多様化しているのに加え、欠陥が発生している場所の下地パターンも多様化しているため検出が困難である。ここで、ターゲット欠陥の検出を阻害する要因としては、AL等の金属配線工程のグレインやモホロジーと呼ばれる微小凹凸がある。また、絶縁膜等の透明膜(ここでは、照明波長に対して透明という意味)が最表面に露出している工程では、透明膜の微小な膜厚差による干渉光強度ムラが光学ノイズとなる。そのため、グレインやモホロジーの誤検出を低減し、干渉光強度ムラの影響を低減しつつ、大きさが光学系の解像度以下のターゲット欠陥を顕在化するという課題がある。
【0012】
前記干渉強度ムラを低減する方法として、ランプを光源として複数の波長の光を照射する方法もあるが、1つの光源から複数の波長の光を得る場合、ランプの使用時間に応じて波長強度比が変化する。図3はあるランプの出力強度を模式的に表した図である。図3は波長λ1の出力強度51と別の波長λ2の出力強度52を示している。時間Aでは出力強度51と出力強度52の強度比は約3であるが、時間Bでは強度比が7.5となる。これは、波長毎に減衰割合が違うためである。このように強度比が変わると、測定毎に検出される光学像が変化するため安定した欠陥検出ができないという課題がある。
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決して、グレインやモホロジーの誤検出を低減し、干渉光強度ムラの影響を低減して、様々なプロセスにおけるターゲット欠陥を安定に検出できるパターン欠陥検出方法及びその装置を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明では、試料上に形成されたパターンの欠陥を検査するパターン検査装置を、表面にパターンが形成された試料を照明する照明手段と、この照明手段で照明された試料のパターンの光学像を形成する結像光学系手段と、この結像光学系手段で結像させた光学像を検出して試料のパターンの画像を検出する検出手段と、この検出手段で検出した画像を処理して試料上のパターンの欠陥を検出する欠陥検出手段と、
パターンに応じて照明手段の照明波長と照明手段及び/又は結像光学系手段の開口絞りとの組合せを選択する選択手段とを備えて構成し、試料を照明手段から発射した光で照明し、照明された試料のパターンの光学像を結像光学系で結像させ、この結像させた光学像を検出して試料のパターンの画像を検出し、この検出した画像を処理して前記試料上のパターンの欠陥を検出する場合において、試料の表面に形成されたパターンに応じて試料を照明する光の波長と照明段及び/又は結像光学系手段の開口絞りとの組合せを選択して試料のパターンの光学像を結像させるようにした。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明では、パターン欠陥検査装置を、表面にパターンが形成された試料を照明する照明手段と、この照明手段により照明された試料からの回折光の像を結像する結像光学系手段と、この照明手段および/または結像光学系手段の光路中に配置されて光の強度または/および位相を制御する光変調手段と、結像光学系手段により結像された試料からの回折光の像を撮像して画像信号を出力する画像検出手段と、この画像検出手段から出力された画像信号を処理して試料に形成されたパターンの欠陥を検出する欠陥検出手段とを備えて構成し、表面にパターンが形成された試料を照明手段から発射した光で照明し、この照明された試料のパターンの光学像を結像光学系で結像させ、この結像させた光学像を検出して試料のパターンの画像を検出し、この検出した画像を処理して試料上のパターンの欠陥を検出する場合において、照明手段および/または結像光学系の光路中に配置されて光の強度または/および位相を制御するようにした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、グレインやモホロジーの誤検出や干渉光強度ムラの影響を低減して、ウェハ上の多様な欠陥を安定的に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明に係るパターン欠陥検査装置を半導体デバイスの検査に適用した実施例を図1に示す。本発明のパターン欠陥検査装置は、検査対象であるウェハ1を載置して移動させる搬送系2、波長の異なる照明手段3および4、ダイクロイックミラー5、ビームスプリッタ(以下BSと記す)部6、光変調Aユニット7、対物レンズ8、A/F(オートフォーカス)用BS9、A/F検出部10、光変調Bユニット11、リレーレンズ12、光変調Cユニット13、瞳観察ユニット14、結像レンズ部15、試料面観察ユニット16、光検出部17、信号処理回路18、自動分類(以下ADCと記す)部19、入出力部20、各部のコントローラ21および図示しないリレーレンズとミラーで構成されている。なお、コントローラ21から各ユニットへ繋がっている矢印は、制御信号等を通信することを示している。
【0019】
次に動作を説明する。照明手段3および4から射出された照明光はダイクロイックミラー5で光軸を一致させ、BS部6に入射させる。BS部6で反射されたビームは、光変調Aユニット7を介して対物レンズ8を通り、ウェハ1に照射される。
【0020】
ウェハ1で反射した光は、対物レンズ8および光変調Aユニット7を通ってBS部6を通過し、A/F用BS9で分岐される。A/F用BS9を透過した光は、光変調Bユニット11を通過し、リレーレンズ12で光変調Cユニット13部に集光する。この光変調Cユニット13は対物レンズ8の瞳と共役位置に設置されている。光変調Cユニット13を通過した光は結像レンズ部15を通って光検出部17に設置したイメージセンサへ結像し、画像信号に変換される。該変換された画像信号は、信号処理回路18にて欠陥検出処理を施され、ウェハ1上の欠陥を検出し、検査結果を入出力部20へ表示する。画像信号や欠陥検出処理を施された信号はADC部19にも送付されADCを行う。以上の動作を搬送系2でウェハ1を移動させて行うことによってウェハ1全面を検査する。
【0021】
なお、この入出力部20はユーザからの入力情報を受け取るインターフェイス機能を有し、また、コントローラ21への制御信号を送受信可能である。さらに、A/F検出部10は、ウェハ1を対物レンズ8の物体側焦点位置に移動させるための信号を発し、コントローラ21を介して搬送系2を駆動して実時間でウェハ1の表面を対物レンズ8の物体側焦点位置に合わせる。また、瞳観察ユニット14は、本ユニットを光軸部に出し入れすることにより、対物レンズ8の瞳部を観察する機能を有し、試料面観察ユニット16は本ユニットを光軸部に出し入れすることによりウェハ1を観察する機能を有する。
【0022】
以下、各部分の詳細を述べる。
【0023】
まず、搬送系2の詳細を述べる。搬送系2はX軸ステージ201、Y軸ステージ202、Z軸ステージ203、θ軸ステージ204、ウェハチャック205で構成されている。X軸ステージ201は定速走行が可能であり、Y軸ステージはステップ移動が可能な構成である。X軸ステージ201およびY軸ステージ202を用いることにより、ウェハ1の全ての場所を対物レンズ8の中心下に移動させることができる。また、Z軸ステージ203はウェハチャック205を上下させる機能を有し、θ軸ステージ204はウェハチャック205を回転させ、X軸ステージ201、Y軸ステージ202の進行方向とウェハ1の回転方向とを合わせる機能を有する。さらに、ウェハチャック205は真空等で吸着することによりウェハ1を固定する機能を有する。
【0024】
照明手段3および4はウェハ1に照射するビームの成形を行う。照明光源としては、レーザ光源やランプ光源を用いる。
【0025】
レーザ光源は可視光や紫外光(以下UV光)や深紫外光(以下DUV光)、真空紫外光や極紫外光等を用いることが可能であり、レーザの発振形態は連続発振でもパルス発振でも良い。波長は概ね550nm以下が望ましく、例えば532nm、355nm、266nm、248nm、200nm、193nm、157nmや13nmの光源を適用できる。
【0026】
該レーザ光源としては、固体YAGレーザ(波長1024nm)を非線形光学結晶等で波長変換し、基本波の第2高調波(SHG)や第3高調波(THG)、第4高調波(FHG)を発生するものや、エキシマレーザやイオンレーザでも良い。また、2種類の異なる波長を共振させて別の波長を発振させるものでも良い。これは、例えば、波長488nmのArレーザ光のSHG波と波長1064nmのYAGレーザ光とを和周波共振させることにより、波長199nmのレーザを出力させる方法である。パルス発振レーザの形態は、発振周波数が数Hzの低周波パルス発振レーザや、数10MHzの準連続発振パルスレーザでも良い。さらに、パルス発振の方法はQ−スイッチ型でもモードロック型でも良い。
【0027】
それぞれの光源の利点は、短波長の光源を用いると光学系の解像度を向上でき高感度な検査が期待できる。また、YAG等の固体レーザは大掛かりな付帯設備が必要ないため装置規模を小さく、また安価にできる。また、高周波のパルス発振レーザを用いれば、高出力の連続発振レーザと同等に扱えるため、透過率や反射率の低い安価な光学部品も用いることが可能となり、安価な装置を実現できる。
【0028】
ランプ光源は、レーザ光源と同程度の波長域を発光するものを用いることが可能である。ランプ光源としては、Xeランプ、Hg―Xeランプ、Hgランプ、高圧Hgランプ、超高圧HgランプやElectron−Beam−Gas−Emission−Lamp(出力波長は、例えば、351nm、248nm、193nm、172nm、157nm、147nm、126nm、121nm)等が使用可能であり、所望の波長を出力することができれば良い。ランプの選択方法としては、所望の波長の出力が高いランプを選択すれば良く、ランプのアーク長は短い方が望ましい。これは、ビーム形成方法の選択肢が増やせるためである。
【0029】
以下、図4乃至7でレーザ光源を用いた照明手段を説明する。
【0030】
図4は照明手段3の構成を示すもので、レーザ光源301、シャッター302、光量調整部303、BS304、光量測定部305、ビーム拡大部306、ビーム形成部307、干渉性低減部308、開口絞り309、A/F用パターン310と図示しないリレーレンズとミラーで構成されている。
【0031】
レーザ光源301は上述したものを使用することができ、例えば、266nm(YAG―FHG)の連続発振レーザである。
【0032】
シャッター302は、レーザ光源301から射出されたレーザ光を遮光する機能を有する。例えば、図示していないエアシリンダで駆動して光軸部に金属板を挿入/排出することで実現すれば良い。
【0033】
光量調整部303は、BS304に入射する光量を調整する機能を有するものであれば良く、例えば、ND(Neutral Density)フィルタである。該NDフィルタは、対象波長を吸収する形態でも反射する形態でも良いが、吸収型は熱膨張によって破損する恐れがあるため反射型を用いる方が望ましい。反射型を用いる場合は、反射した光がレーザ光源301内部に入射しないようにするためにレーザトラップを付加するのが良い。また、レーザ光源301の偏光を利用して、波長板とPBS(偏光ビームスプリッタ)を用いた構成でも良い。これは、入射偏光に対して1/2波長板で偏光方向を回転させ、PBSに入射する偏光方向を変えることによって、PBSを透過する光量を調整する方法である。
【0034】
次に、BS304は、入射光量の一部を光量測定部305に分岐する機能を有する。光量測定部305側に分岐する光量は、概ね入射光量の1乃至5%程度で良い。
【0035】
光量測定部305は、BS304から分岐された光量を測定し、入出力部20で設定された出力に準ずる値が得られる様に光量調整部303またはレーザ光源301の制御する機能を有する。
【0036】
ビーム拡大部306は、レーザ光源301から射出されたビームを拡大する機能を有する部分であり、例えば、ビームエキスパンダである。
【0037】
ビーム形成部307はウェハ1上の照明範囲を調整する機能を有する。例えば、矩形の照明を行う場合はシリンドリカルレンズを用いる。
【0038】
干渉性低減部308はレーザ光の干渉性を低減する機能を有する部分であり、例えば拡散板である。干渉性を低減するためには、空間的、時間的にレーザ光の位相や角度を変える必要があるため、該拡散板を回転させることが望ましい。
【0039】
開口絞り309は対物レンズ8の瞳部に集光する光の照度分布を調整する機能を有する。図5(a)乃至(d)に例を示す。図5(a)乃至(d)は開口絞り309に設置するフィルタの光軸断面形状を示している。図5(a)乃至(d)は遮光板に開口を設けた構造であり、外接円の中心部が光軸である。図5(a)は開口の大きさを対物レンズ8の瞳部の有効径と同じ大きさにした例であり、図5(b)は図5(a)の開口径を小さくした例である。さらに、図5(c)は瞳部の外周の光を通過させるフィルタの例であり、図5(d)は図5(c)の光の一部のみを通過させるフィルタの例である。
【0040】
これらの開口は、広い範囲の開口を用いた場合、ウェハ1に対して様々な角度から照射することになるため、安定した画像が得られる利点がある。逆に開口を狭めた場合は、ウェハ1上の特定の周波数に対応する画像が得られる利点がある。
【0041】
図6(a)に開口絞り309の別の例を示す。図5の例は開口部と遮光部とで2種類の光透過率のフィルタであるが、図6は透過率の種類を増やした例である。図6(a)は開口中心部と周辺部とで光の透過率を連続的に変化させた例である。図6(b)に図6(a)のA−A’部における透過率を示す。本例では、開口の中心部で透過率を低く、周辺部の透過率を高く設定したフィルタである。製作方法は、例えば透過率を変えた誘電膜をガラス基板に蒸着させれば良い。または、ガラス板表面に回折格子をエッチングし、回折効果を用いて透過率を変化させても良い。図5のフィルタに比べ図6のフィルタの利点は、照明光の照度分布に合わせて設計することができるため、例えば、照明光の照度分布がガウス分布していても図6の形状のフィルタを用いることによって、照度分布をフラットにすることができる点である。逆に、図5のフィルタの利点は、安価に製作できることである。
【0042】
A/F用パターン310は、A/Fに用いるパターンを試料面に投影するためのフィルタである。図7に試料面のレイアウトを示す。図7において、58は対物レンズ8の視野を示しており、59は検査に有効な照明範囲を示している。これに対し、60はA/F用のパターンである。このパターン60は、視野58の内部に存在し、かつ、照明範囲59の外側に存在する。A/F用パターン310は、ガラス板にパターン60の形状で遮光膜を蒸着して製作すれば良い。
【0043】
なお、以上述べた部品の可動部には、緩衝材等により振動を他の部品に伝えない構造であることが望ましい。
【0044】
図8でランプ光源を用いた照明手段を説明する。
【0045】
図8はランプ光源401、シャッター402、波長選択フィルタ403、光量調整部404、BS405、光量測定部406、ビーム拡大部407、ビーム形成部408、開口絞り409、A/F用パターン410と図示しないリレーレンズとミラーで構成されている。
【0046】
ランプ光源401は、上述したランプ光源を使用することができる。
【0047】
シャッター402、光量調整部404、BS405、光量測定部406、ビーム拡大部407、ビーム形成部408、開口絞り409、A/F用パターン410は、図4で説明したレーザ光源を用いた照明手段と同等機能を有する。レーザ光源を用いた照明手段において対応するものはそれぞれ、シャッター302、光量調整部303、BS304、光量測定部305、ビーム拡大部306、ビーム形成部307、開口絞り309、A/F用パターン310である。以下では、残りの部分について説明する。
【0048】
波長選択フィルタ403は、ランプ光源401から射出された複数の波長の中から特定の波長(±数nmの帯域はある)のみを透過する機能を有するフィルタであり、一般に入手可能なものである。
【0049】
次にBS部6の構成を説明する。BS部6は、PBS601(入射したS偏光を90%以上反射、入射したP偏光を90%以上透過)と無偏光BS602(S偏光、P偏光とも50%程度反射または透過)とパーシャルPBS603(S偏光の反射率とP偏光の透過率の合計が100%を越えるBS。例えば、S偏光を40%程度反射、P偏光を90%程度透過)を切り替えて用いる(切り替え機構は図示していない)。これらはウェハ1の表面状態に応じて使い分けるため、検査条件設定時に決めればよい。
【0050】
次に、光変調Aユニット7の構成を図9で説明する。光変調Aユニット7は、図9(a)乃至(c)のユニット701,702,703を切り替えて用いる。以下で図9(a)乃至(c)を説明する。図9(a)はユニット701であり、1/2波長板711、1/4波長板712で構成されている。
動作は、まず、BS部6で反射された照明光が1/2波長板711へ入射する。1/2波長板711では照明光の偏光方向を回転する。該回転された照明は1/4波長板712を通過することにより楕円偏光となり、対物レンズ8を通してウェハ1に照射される。該照射光は、ウェハ1で反射・回折され、対物レンズ8で集光され、1/4波長板712、1/2波長板711を通してBS部6に入射する。この時、ウェハ1で反射・回折された光は、0次回折光と高次回折光とで偏光状態(偏光の回転量や位相差)の変化量が違うため、該回折光の偏光方向に対して1/2波長板711と1/4波長板712を光軸周りに回転させることにより、BS部6における0次回折光と高次回折光の透過比率を変えることができる。前記高次回折光には、ウェハ1上の回路パターンのエッジ情報が含まれているため、0次回折光の光量に対して、高次回折光の光量を多く検出することによって、回路パターンのコントラストを向上させることが可能となる。
【0051】
図9(b)はユニット702の構成を示している。ユニット702は1/4波長板712の代わりに、特殊波長板713を用いる例である。特殊波長板713の構成を図10(a)乃至(b)で説明する。図10(a)はある光学軸61の1/4波長板と光学軸61と直交する光学軸62の方向の1/4波長板を接着した構成である。製造方法は、例えば、前記1/4波長板を石英ガラス等の上に並べて接着すれば良い。図10(b)は特殊波長板713の別の実施例である。本例は、光学軸61と光学軸62が直交することに関しては図10(a)と同じであるが、光軸に対する光学軸の向きが違う例である。特殊波長板713を用いることによって、前記楕円照明の楕円方向を混在させることが可能となり、直交したパターンのコントラストを向上できる。
【0052】
図9(c)はユニット703の構成を示している。図9(c)は1/2波長板714、716、複屈折プリズム715、717、1/4波長板718で構成されている。複屈折プリズム715、717は、プリズムの光学軸の方向に応じて、入射光の進行方向を変化させる機能を有する光学部品であり、例えばノマルスキー型のプリズムである。次に動作を説明する。前記PBS6で反射された照明光は、1/2波長板714に入射する。この時、複屈折プリズム715の光学軸とある角度を成す方向に偏光方向を回転させる。複屈折プリズム715を通った光は、複屈折プリズム715の光学軸方向の2軸に分離され1/2波長板716に入射する。1/2波長板716は、複屈折プリズム717の光学軸とある角度を成す方向に入射光の偏光方向を回転させ、複屈折プリズム717に入射させる。
【0053】
複屈折プリズム717を通った光は、複屈折プリズム717の光学軸方向の2軸に分離され、前記複屈折プリズム715による分離方向と合わせて合計4光束に分離された直線偏光を発生させることができる。該4光束の直線偏光は、1/4波長板718に入射し、楕円偏光で対物レンズ8を通ってウェハ1に照射される。ノマルスキー型のプリズムを1個用いた偏光微分干渉光学系による物理的な現象は、一般的な微分干渉顕微鏡と同様である。
【0054】
本発明のユニット703の特徴は、4個以上の光束に分割することによりウェハ1上の直交パターンへの対応が可能となることである。つまり、通常の2点分離のプリズムでは該2点を結ぶ直線の方向しか微分干渉の効果がない。そこで、本発明では複屈折プリズム715で2光束に分岐する方向に対して複屈折プリズム717で2光束に分岐する方向がほぼ直角方向になるように設定することにより平面的に微分干渉を発生させることができ、回路パターンの方向に依らないで微分干渉ができるという利点がある。
【0055】
すなわち、複屈折プリズム715、717を光軸中心で回転させ、かつ、1/2波長板714、716を用いて上述した関係になるように偏光方向を回転させることにより、光路の分岐方向を変えることが可能である。このように光路の分岐方向を変えることにより、様々な方向の回路パターンの欠陥を高感度に検査できる。
【0056】
なお、光変調Aユニット7では、上記の光学素子を用いない、つまり、BS部6と対物レンズ8の間の空間に光学素子を挿入しないことも選択できる構成である。
【0057】
次に対物レンズ8について説明する。対物レンズ8は、光変調Aユニット7を通過した照明光をウェハ1に照射し、ウェハ1からの反射、回折光を集光する機能を有する。本発明における対物レンズ8の特徴は、対物レンズ8の瞳位置に光変調Aユニット7を設置できるスペースを有することである。即ち、本発明による対物レンズ8は、上述した光変調Aユニット7に用いた1/4波長板や特殊波長板を瞳位置に設置することが可能な構成になっている。これを実現するための対物レンズ8の具体的な構成としては、図11(a)に示すように対物レンズ801の瞳63の位置を対物レンズ801の筐体から外側に出した構成でも良いし、図11(b)に示すように対物レンズの試料面側ユニット802とBS部6側ユニット803に分割し、瞳63が試料面側ユニット802とBS部6側ユニット803の間に位置するように構成しても良い。
【0058】
A/F用BS9は、BS部6を透過した光を、A/F検出部10と光変調Bユニット11とに分岐する機能を有している。
【0059】
A/F検出部10は、ウェハ1のZ位置を対物レンズ8の焦点位置に移動するための移動量を計測するユニットである。
【0060】
光変調Bユニット11はA/F用BS9の透過光から特定の光を抽出または、全ての光を透過させる機能を有する。図1において、光学素子1101は特定の振動方向の偏光を通過させる素子である。光変調Bユニット11では、光学素子1101を光軸部分に挿入することによって特定の光を抽出する。また、光学素子1102はガラスであり、光学素子1101による光の抽出を行わない場合は、光学素子1102を光軸に挿入する。
【0061】
リレーレンズ12は光変調Cユニット13の位置に、対物レンズ8の瞳部の共役像を結像する機能を有する。
【0062】
光変調Cユニット13は、対物レンズ8の瞳共役位置において、光の位相や透過率を変調する機能を有する。図12および図13で光変調Cユニット13の詳細を説明する。光変調Cユニット13は対物レンズ8の瞳位置と共役な位置に設置し、ユニット1301、1302、1303を切り替えて用いる。
【0063】
図12(a)乃至(c)は光変調Cユニット13の例を示している。図12(a)はユニット1301であり、空間フィルタA1311、空間フィルタB1312で構成されている。空間フィルタA1311と空間フィルタB1312の外観を図13(a)に示す。空間フィルタA1311は石英等の透明基板64の中央部に誘電体膜65を蒸着したものである。誘電体膜65は、誘電体膜65を蒸着した部分の透過光と蒸着していない部分の透過光とで位相差を持つように設計された膜である。また、空間フィルタB1312は、空間フィルタA1311と同様に誘電体膜65を蒸着したものであるが、空間フィルタB1312では、誘電体膜65を蒸着した部分の透過光と蒸着していない部分の透過光とで透過率を変えるように設計された膜である。なお、誘電体膜65の蒸着範囲は、瞳位置での0次回折光の大きさに相当させれば良く、位相と透過率を同時に変化させた膜を蒸着して用いても良い。また、空間フィルタA1311と空間フィルタB1312は必ずしも同時に使用する必要はなく、それぞれ単独で用いても良い。
【0064】
図12(b)はユニット1302であり、空間フィルタC1313、空間フィルタD1314で構成されている。図13(b)に空間フィルタC1313と空間フィルタ1314の外観を示す。図13(b)に示した空間フィルタは開口絞り309または開口絞り409において輪帯型のフィルタとペアで用いる。図13(b)に示した空間フィルタの特徴は、空間フィルタの誘電体膜65の蒸着範囲を輪帯形状にしていることである。誘電体膜65の性能はそれぞれ空間フィルタA1311および空間フィルタ1312と同様である。
【0065】
図12(c)はユニット1303であり、ガラス板1315、1316で構成されている。これは、前記ユニット1301または1302で光変調を行わない場合に用いるものである。
【0066】
光変調Cユニット13では、図12(a)または(b)のような複数の空間フィルタを用意し、照明光の形状に合わせて切り替える機構(図示せず)を持つ。
【0067】
本発明の空間フィルタの効果は、ウェハ1の0次回折光の強度を低く、相対的に高次回折光強度を高くできるので、回路パターンのコントラストを高くすることができることである。照明を輪帯状にした場合の利点は、高次回折光を多く検出することができるため、輪帯状にしない場合に比べて、回路パターンのエッジ情報を強調できることである。
【0068】
瞳観察ユニット14は、光変調Cユニット13の位置の像を観察する機能を有するものであり、図示しない可動機構を用いて、瞳像を観察する場合に光軸に挿入する。
【0069】
結像レンズ部15は、ウェハ1の像を複数の倍率で光検出部17に結像する機能を有しており、結像レンズ部15に予め用意されたレンズ1501、1502、1503を切り替えて光軸部に挿入して倍率を変える機構(図示せず)である。
【0070】
試料面観察ユニット16は、検出した欠陥の像を観察する機能を有し、図示しない可動機構を用いて、欠陥を観察する場合に光軸に挿入する。
【0071】
光検出部17は結像レンズ部15で集光した光を検出することによって、ウェハ1の像を撮像し、A/D(アナログ/ディジタル)変換する機能を有するものである。光検出部17は、例えばイメージセンサであり、1次元のCCDセンサやTDI(Time Delay Integration)イメージセンサでも良く、また、フォトマル(光電子倍増管)を直列に並べたものでも良い。さらに、TVカメラのような2次元CCDセンサでも良い。TDIイメージセンサの利点は、検出信号を複数回加算することによって、検出信号のS/Nを向上できることである。TDIイメージセンサを用いる場合は、搬送系2の動作と同期してセンサを駆動するのが望ましい。
【0072】
以上述べた光学部品の内、照明手段3および照明手段4以外で用いる光学部品は、照明手段3および照明手段4から射出される波長で収差補正されていることが望ましい。
【0073】
図14で信号処理回路18の詳細を説明する。信号処理回路18は、階調変換部1801、画像フィルタ1802、遅延メモリ1803、位置合わせ部1804、局所階調変換部1805、比較処理部1806、CPU1807、散布図作成部1808、記憶手段1809で構成されている。
【0074】
動作は、まず、光検出部17で得られた検出信号は信号処理回路18に送られ、階調変換部1801で特開平8−320294号公報に記載されたような階調変換を施される。この階調変換部1801は、対数変換や指数変換・多項式変換等により画像を補正するものである。画像フィルタ1802は、階調変換部1801で階調変換された画像信号から、照明光源特有の画像ノイズを効率良く除去するフィルタである。遅延メモリ1803は、参照画像信号を記憶する記憶部であり、画像フィルタ1802からの出力画像信号を、繰り返される半導体ウェハを構成する1セル又は複数セルピッチまたは1ダイまたは複数ダイ分記憶して遅延させるものである。ここで、セルはダイ内のパターンの繰返し単位である。なお、画像フィルタ1802は遅延メモリ1803を通過した後でもよい。
【0075】
次に、位置合わせ部1804は、階調変換部1801から出力された画像信号(ウェハ1から得られる検出画像信号)1820と、遅延メモリ1803から得られる遅延画像信号(基準となる参照画像信号)1821との位置ずれ量を正規化相関法等によって検出して画素単位に位置合わせを行う部分である。局所階調変換部1805は、特徴量(明るさ、微分値、標準偏差、テクスチャ等)の異なる信号を該特徴量が一致するように双方もしくは一方の画像信号について階調変換する部分である。
【0076】
また、比較処理部1806は局所階調変換部1805で階調変換された検出画像信号同士を比較して特徴量の相違に基づいて欠陥を検出する部分である。すなわち、比較処理部1806は、遅延メモリ1803から出力されるセルピッチ等に相当する量だけ遅延した参照画像信号と検出した検出画像信号を比較する。ウェハ1上における配列データ等の座標を入出力部20から入力しておくことにより、CPU1807はウェハ1上における配列データ等の座標に基づいて欠陥検査データを作成して記憶手段1809に格納する。該欠陥検査データは必要に応じて入出力部20やADC部19へ送られる。なお、比較処理部1806の詳細は特開昭61−212708号公報に示したもの等で良く、例えば、画像の位置合わせ回路や位置合わせされた画像の差画像検出回路、差画像を二値化して不一致を検出する回路、二値化された出力から面積や長さ(投影長)、座標などを算出する特徴抽出回路からなる。
【0077】
散布図作成部1808は、入力画像から検出画像の特徴量と参照画像の特徴量との散布図を作成する機能を有し、CPU1807を介して入出力部20等に表示するものである。
【0078】
図15は信号処理回路18のシーケンスの一例を示している。まず、入力された検出・参照画像に対し、必要に応じてノイズ除去処理S1901で画像のS/Nを向上させる。ノイズ除去には各種フィルタが用意され、対象物やノイズの質に応じて選択可能となっている。例えば、着目画素の近傍画素の値に重みをつけて用いる方法やメディアン・フィルタ、また、フーリエ変換を利用し規則的に生じるノイズを除去する方法がある。
【0079】
次にノイズ除去により劣化した画像の復元処理S1902を行う。例えば、ウィーナ・フィルタによる復元処理である。
【0080】
次に、比較する検出画像と参照画像間で画質に大きな違いがないかを調べる。評価指標は、コントラスト、明るさのばらつき(標準偏差)、ノイズ成分の周波数などがある。特徴量を演算する処理S1903で画像の評価指標を演算し、演算した特徴量を比較する処理S1904の結果を基に画像の合わせ込み処理S1905を行う。もし、特徴量の合わせ込みができないレベルにあるときは、比較処理部1807にて感度を低下させ虚報の発生を押さえるようにする。その後欠陥検出判定S1906を行う。なお、信号処理回路18での詳細な欠陥算出方法については、例えば特開2001−194323号公報等に開示されているような方法がある。
【0081】
次に入出力部20について説明する。入出力部20は、ユーザとのインターフェイス部であり、データや制御信号の入出力部でもある。ここで、ユーザからの入力情報としては、例えば検査対象ウェハのレイアウト情報や名称、また上述した光学系の検査条件等である。また、ユーザへの出力情報としては、例えば、欠陥検査結果や検出した欠陥の画像等である。
【0082】
ADC部19は本発明の検査装置で検出した信号を分類する機能を有する。ADC部19の動作を説明する。まず、光検出部17で得られた画像は、信号処理回路18とADC部19に送信される。信号処理回路18で欠陥検出判定を行い、欠陥と判定された場合は、欠陥検出Flagと信号処理回路18で処理した画像をADC部19に送信する。ADC部19では、欠陥検出Flagを受信した場合、前記光検出部17で得られた画像と前記信号処理回路18から送信された画像から欠陥部の画像特徴量を算出し、さらに、コントローラ21から送信された搬送系2の座標データから座標特徴量を算出し分類を行う。該分類された情報は、入出力部20に送信され、欠陥情報として表示される。
【0083】
ここで、前記画像特徴量とは、欠陥部の濃淡値総和、濃淡値の変化具合(微分値)、画素数、投影長、重心位置や比較した正常部の濃淡値等である。また、座標特徴量とは、ウェハ1の中心からの距離、ウェハ1のダイ毎の繰り返し回数、ダイ内の位置等である。
【0084】
さらに、本発明の光学系を用いれば、各種光学条件で画像を取得できるため、欠陥検出時とは異なる光学条件で検出した画像から算出した特徴量を分類に用いることができる。例えば、BS部6にPBSを設置し、光変調Aユニット7を円偏光照明に設定し、光変調Bユニット11と光変調Cユニットに光学素子を設置しない条件(条件A)にすれば、通常の明視野顕微鏡と同等の画像が取得でき、光変調Aユニット7に前記複屈折プリズムのユニットを挿入する条件(条件B)にすればパターン高さ情報が得られる。従って、条件Aで平面的な大きさを分類し、条件Bで高さを分類することによって、異物などの立体的な形状を分類できる。
【0085】
なお、上記実施例においては、照明手段3としてレーザを用い、照明手段4としてランプ光源を用いた場合を説明したが、照明手段3と4とは互いに波長の異なるレーザを発振するレーザ光源あってもよく、また互いに波長の異なる光を射出するランプ光源であっても良い。更に、上記実施例においては、波長の異なる照明手段3及び4を用いた場合について説明したが、波長帯域の広い白色光または複数の輝線を持つ光を射出するランプ光源又はレーザ光源による照明手段を1つだけ用い、この照明手段から射出された光を波長分離手段で複数の光に分離し、この分離したそれぞれの光の光量を検出して光量調整部303又は404に相当する光量調整手段を用いてそれぞれの光量を調整するようにしても良い。
【0086】
次に、上記検査装置を用いた本発明の検査条件設定方法を、図16乃至18を用いて説明する。図16は、本発明の検査装置に用いる条件設定画面の一部の例である。図16に示した例では、設定画面が、品種名登録部2101、工程名登録部2102、注目エリアデータ登録部2103、プロセスルール登録部2104、検査レイヤ情報登録部2105で構成されている。以下で詳細を述べる。
【0087】
品種名登録部2101および工程名登録部2102は、図16の画面で登録した内容を後で呼び出す時に用いるキーワードであり、後でわかる名前ならば何でも良い。注目エリアデータ2103は、ウェハ1の検査するエリアを指定する。注目エリアデータ2103の設定は必ずしも必要ではなく、例えば、検査面積を減らして検査時間を短くしたい場合や、ウェハ1に作られた回路パターン毎に検出感度を変えたい場合、また、ウェハ1の場所毎に検出する欠陥の特徴を変えたい場合に設定すれば良い。
【0088】
プロセスルール登録部2104は検査対象ウェハの回路パターンの製作ルールを記述する。例えば、180nmや90nm等である。
【0089】
検査レイヤ情報登録部2105は検査対象ウェハの最表面の状態を選択する部分である。本発明では、ユーザが検査することが多いウェハの状態を選択できるようにしている。検査レイヤ情報登録部2105で選択された情報は、本発明の検査装置内部に事前に保持している対応表で光学条件を決定する。図17は該対応表の例である。該対応表は、本発明の検査装置に事前に登録されているのが望ましいが、本発明の装置を用いてユーザが作成してもよいし、本発明の検査装置に接続された外部記憶媒体からダウンロードしても良い。
【0090】
図17の対応表は、縦軸が検査レイヤ情報、横軸が本発明の検査装置で変更可能な光学条件を示している。例えば、照明波長は2種類の波長を選択可能であるので、検査レイヤ情報に応じて、照明手段3の波長を選択したり、照明手段4の波長を選択したり、照明手段3および照明手段4を同時照明することを選択できる。また、開口絞りの項目では、開口絞り309または409の選択肢を記述している。さらに、光変調条件の項目では、光変調Aユニット7、光変調Bユニット11、光変調Cユニット13の選択肢が記述されている。また、同様にBS部6の選択肢や結像レンズ部15の選択肢を記述した対応表も作成しておく。どの検査レイヤ情報に対してどの技術を選択するかは、物理的な現象の解析で割り当てても良いし、光学シミュレーションを用いて決めても良く、また、実際にウェハを検査することにより決めても良い。
【0091】
実際にウェハを検査して条件設定する方法を図18で説明する。条件設定はまず、照明波長を決定する。方法は、まず照明手段3の波長Aのみで回路パターンの画像を取得して(S2311)コントラストを算出する(S2321)。次に照明手段4の波長Bのみで回路パターンの画像取得し(S2312)、コントラストを算出する(S2322)。最後に照明手段3と照明手段4の波長AおよびBを同時照射し、回路パターンの画像取得し(S2313)、コントラストを算出する(S2323)。以上3種類の条件のコントラストを比較し(S2330)、コントラストが最も高い照明条件を該ウェハの照明条件とする。
【0092】
次に、本発明の検査装置で設定可能な光変調条件を設定し検査を行う。先ず、光変調条件Aに設定し(S2341)、検査を行う(S2351)。次に光変調条件Bに設定し(S2342)、検査を行う(S2352)。この操作を光変調条件Zまで行う。この検査はウェハ全面を検査しても良いが、検査条件設定の時間を短くする場合は、数個のダイに限定しても良い。上記の光変調条件の検査結果をレビューし(S2360)、注目欠陥を最も多く検出している条件を選択すれば良い(S2370)。この時、各検査終了時にレビューしても良いが、全検査結果の和の結果でレビューすれば短時間でレビューが可能となる。以上で条件設定終了である。
【0093】
以上、条件設定方法について述べたが、上述した内容以外の項目としてウェハの検査場所毎に異なる光学条件を設定しても良い。この場合は、複数回検査を行った後、それぞれの検査結果の和を出力する。
【0094】
また、照明手段3または4から射出される照明波長がウェハ1にダメージを与える強度がわかっている場合は、ダメージを与えない照明強度を算出してウェハ1に照射する。ダメージを与えるか否かは、検査レイヤ情報から推定すれば良い。もし、照明光量が少なくて欠陥からの信号量が不足する場合は、光検出器17のゲインを上げて検査に必要な信号を得ればよい。
【0095】
次に、本発明の検査装置の使用方法を説明する。図19は半導体デバイス製造ラインと本発明の検査装置を示した図である。図19は、デバイス製造時の全プロセス3101のうち、デバイス製造プロセス3102と検査プロセス3103、本発明の検査装置3104、データベース3105から構成されている。デバイス製造においては、製造プロセス3101に従ってウェハが加工されていく。デバイス製造時には、加工の出来映えを確認するために、検査プロセス3103が付加される。この検査プロセス3103で検査されるウェハは製造プロセスによって様々な表面状態である。例えば、レジスト塗布後であったり、絶縁膜塗布後、該絶縁膜のエッチング後、さらに金属膜の塗布、エッチング後である。これらの様々な表面状態において、検査装置は高感度に検査する必要がある。
【0096】
従来の検査装置では、設定可能な光学条件が限られるため、製造プロセス3102によっては検査性能が劣化してしまうが、本発明の検査装置3104を用いれば、プロセス状態に応じて光学条件を最適化できるため、一台の検査装置で各検査プロセス3103での高感度検査が可能となり、半導体デバイス製造ラインの欠陥発生状況を的確にモニタリングできる。なお、上述したように、検査条件設定に必要な情報は、ユーザが登録しても良いが、デバイス製造時の全プロセス3101の情報と接続可能なデータベース3105からプロセス情報を入手し、検査条件設定に用いても良い。
【実施例2】
【0097】
本発明に係るパターン欠陥検査装置の別の実施例を図20に示す。本発明のパターン欠陥検査装置は、検査対象であるウェハ1を載置および移動させる搬送系2、波長の違う照明手段3および4、BS部22および23、光変調Aユニット24、対物レンズ8、A/F部25、光変調Bユニット11、リレーレンズ12、光変調Cユニット13、瞳観察ユニット14、結像レンズ部15、試料面観察ユニット16、光検出部17、信号処理回路18、ADC部19、入出力部20および図示しないコントローラやリレーレンズとミラーで構成されている。
【0098】
本実施例は、実施例1で説明した構成に対し、BS部22および23に用いる光学素子の性能と、光変調Aユニット24に用いる光学素子の性能、およびA/F部25の方式が違う例である。
【0099】
まず、BS部22および23について説明する。実施例1に示したBS部6に用いるPBSは、図21(a)に示すような特性を備えている。図21はPBSの透過率を波長毎に示した図である。AおよびBは実施例1で用いる波長を示しており、1個のPBSで波長A、Bとも同程度の性能(P偏光とS偏光の透過率)が得られる場合である。
【0100】
一方、実施例2は、図21(b)および(c)に示す性能のPBSを用いる場合の例である。図21(b)は、波長Aに対してはP偏光の透過率が高くてS偏光の透過率が低く(=反射率が高い)、波長Bに対してはP偏光の透過率が高くてS偏光の透過率も高いという性能を持っていることを示している。また、図21(c)は波長Aに対して、P偏光の透過率が高く、S偏光の透過率も高く、波長Bに対しては、P偏光の透過率が高く、S偏光の透過率が低い性能を持っていることを示している。一般的に、広範囲の波長域で透過率、反射率を所望の値に設計するのは難しいため、図21(a)に説明したBSを用いるよりも、図21(b)および(c)で説明したBSを用いる方が安価な装置を作ることができる。
【0101】
図21(b)および(c)の性能を持つBSを用いた構成例としては、図21(b)および(c)における波長Aを照明手段3から射出される波長とし、波長Bを照明手段4から射出される波長とすると、BS部22には図21(b)の性能に準ずるBSを用い、BS部23には図21(c)の性能に準ずるBSを用いれば、BS部22およびBS部23では、それぞれの波長に対してPBSの性能を満たすことができる。
【0102】
次に、光変調Aユニット7の説明をする。図22は光変調Aユニット7の一例を示している。図22は1/2波長板2401、2403および1/4波長板2402、2404で構成されている。
【0103】
図22に用いる波長板の性能を図23(a)および(b)に示す。図23(a)は1/2波長板2401の性能を示しており、図23(b)は1/2波長板2403の性能を示している。図23は1/2波長板の光学軸に対する波長毎の位相差性能をそれぞれ表している。つまり、図23(a)では、波長Aの光に対して1/2波長板の性能を満たすが、波長Bに対しては、ガラス板と同様の性能を示すものである。一方、図23(b)では、波長Aに対してガラス板と同様の性能を示すが、波長Bに対しては1/2波長板の性能を満たすものである。実施例1の1/2波長板701では、波長AおよびB(照明光源3および4から射出される波長)のどちらの波長に対しても、1/2波長板の性能を満たす波長板を用いているのに対し、本実施例では、それぞれどちらかの波長に対して1/2波長板の性能を満たす波長板を用いる。本実施例のような波長板を用いるのは、上述したBSを同様、広帯域の波長における1/2波長板性能を満たすことが難しい場合である。本説明では、1/2波長板について述べたが、1/4波長板に対しても同様である。
【0104】
次に、A/F部25を説明する。A/F部25は、対物レンズ8のNAの外側からウェハ1にパターンを投影し、該投影したパターンの反射光をCCDラインセンサ等で撮像してウェハ1の面を対物レンズ8の焦点位置に合わせる機構である。投影するパターン形状およびその位置は、図7を用いて説明した内容で良い。A/F部25に用いる光源の波長は、照明手段3および4から射出される波長と異なる波長が望ましい。
【実施例3】
【0105】
本発明の係るパターン欠陥検査装置の別の実施例を図24に示す。本実施例のパターン欠陥検査装置の基本構成は実施例1と同じである。本実施例では、実施例1の構成に加え、注水系26と排水系27とで構成されている。
【0106】
次に注水系26と配水系27の詳細を述べる。注水系26は、ウェハ1と対物レンズ8との隙間に媒体66を供給する機能を有し、配水系27は前記ウェハ1と対物レンズ8に供給された媒体66を除去する機能を有する。ここで媒体66は、空気よりも屈折率が大きく(1<屈折率、望ましくは照明波長における屈折率がSiO2等の屈折率と近いもの)、ウェハ1にダメージを与えないものである。これは例えば、半導体工場で定常的に使用されている純水でも良い。
【0107】
本実施形態の目的は、LSI上の形成された絶縁膜等の透明薄膜による薄膜干渉を低減することによる光学ノイズ低減と、対物レンズの高NA化による解像度向上による高感度なパターン欠陥検査装置を提供することにある。
【0108】
上記の効果が得られる原理を説明する。本来、薄膜干渉は屈折率が変化する界面で発生する。例えば、屈折率が1.5の絶縁膜に光が入射する場合、屈折率が1である空気との界面で薄膜干渉が起こる。本実施例の特徴は、対物レンズとウェハ間の空気を除去し、代わりに屈折率が1.5程度の媒体で充填することにより、屈折率が変化する部分をなくし、薄膜干渉を低減することである。また、対物レンズのNAは対物レンズとウェハ間の媒体の屈折率に比例する。従って、上述したように対物レンズとウェハ間の媒体の屈折率を大きくするとNAを向上することができ、高解像な検出像が得られるわけである。
【0109】
図24に示した実施例では、純水などの媒体66を対物レンズ8の下面とウェハ1との間に局所的に供給する構成の例を示したが、ウェハI全体を図示していない手段を用いて媒体66の中に浸漬させ、更に対物レンズ8の下面も媒体66に浸漬させるように構成しても良い。
【0110】
以上述べたように構成すれば、各種のLSIパターンの欠陥を高速、高感度に検査できる。なお、各実施例で述べた内容は別の実施例でも用いることができる。また。上述した実施例では、波長を2種類用いた場合で説明したが、必ずしも2種類である必要はなく、波長が1種類の場合でも光変調ユニットは適用可能である。また、3種類以上の波長でも適用可能である。この場合、光学素子の波長特性(収差や反射率特性等)を補正したものを用いる。
【0111】
また、各光変調ユニットは単独で用いても良いし、複合的に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の実施例を説明した図
【図2】LSIの断面構造と欠陥を説明した図
【図3】ランプ光源の使用時間と出力強度の関係を説明した図
【図4】レーザ照明手段の構成を説明した図
【図5】開口絞りのフィルタを説明した図
【図6】開口絞りの別例を説明した図
【図7】A/F用のパターンを説明した図
【図8】ランプ照明手段の構成を説明した図
【図9】光変調Aユニットの構成の一例を説明した図
【図10】特殊波長板の構成を説明した図
【図11】対物レンズの構成を説明した図
【図12】光変調Bユニットの構成の一例を説明した図
【図13】空間フィルタの構成を説明した図
【図14】信号処理回路の構成を説明した図
【図15】信号処理の流れを説明した図
【図16】条件設定画面を説明した図
【図17】検査レイヤと光学条件の関係を説明した図
【図18】検査条件設定方法のシーケンスを説明した図
【図19】本発明の検査装置の使用方法を説明した図
【図20】本発明の第2の実施形態を説明した図
【図21】ビームスプリッタの性能を説明した図
【図22】第2の実施形態に用いる光変調ユニットの一例を説明した図
【図23】光変調ユニットの波長板性能を説明した図
【図24】本発明の第3の実施形態を説明した図
【符号の説明】
【0113】
1…ウェハ、2…搬送系、3、4…照明手段、5…ダイクロイックミラー、6、9、22、23…ビームスプリッタ部、7、11、13、24…光変調ユニット、8…対物レンズ、10…A/F検出部、12…リレーレンズ、14、16…観察ユニット、15…結像レンズ部、17…光検出部、18…信号処理回路、19…ADC部、20…入出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料上に形成されたパターンの欠陥を検査するパターン検査装置であって、
表面にパターンが形成された試料を照明する照明手段と、
該照明手段で照明された前記試料のパターンの光学像を形成する結像光学系手段と、
該結像光学系手段で結像させた光学像を検出して前記試料のパターンの画像を検出する検出手段と、
該検出手段で検出した画像を処理して前記試料上のパターンの欠陥を検出する欠陥検出手段と、
前記パターンに応じて前記照明手段の照明波長と前記照明手段及び/又は前記結像光学系手段の開口絞りとの組合せを選択する選択手段と
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項2】
表面にパターンが形成された試料を照明する照明手段と、
該照明手段により照明された試料からの回折光の像を結像する結像光学系手段と、
該照明手段および/または該結像光学系手段の光路中に配置されて光の強度または/および位相を制御する光変調手段と、
前記結像光学系手段により結像された試料からの回折光の像を撮像して画像信号を出力する画像検出手段と、
該画像検出手段から出力された画像信号を処理して前記試料に形成されたパターンの欠陥を検出する欠陥検出手段と
を備えたことを特徴とするパターン欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照明手段は複数の照明光源を備え、該複数の照明光源にランプ光源とレーザ光源とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項4】
前記照明手段は、ランプ光源を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項5】
前記照明手段は、レーザ光源を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項6】
前記照明手段は、波長の異なる複数の照明光源と、該複数の照明光源のそれぞれの強度を測定する強度測定部と、該強度測定部で測定した前記複数の照明光源のそれぞれの強度の比率が一定になるように前記複数の照明光源から発射される光の強度を調整する強度調整部とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項7】
前記光変調手段は、1/2波長板と1/4波長板とを備えていることを特徴とする請求項2記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項8】
前記光変調手段は、微分干渉光学系を備えていることを特徴とする請求項2記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項9】
前記光変調手段は、透過率を制御された誘電体膜を用いたフィルタを備えていることを特徴とする請求項2記載のパターン欠陥検査装置。
【請求項10】
表面にパターンが形成された試料を照明手段から発射した光で照明し、
該照明された前記試料のパターンの光学像を結像光学系で結像させ、
該結像させた光学像を検出して前記試料のパターンの画像を検出し、
該検出した画像を処理して前記試料上のパターンの欠陥を検出するパターン検査方法であって、
前記試料の表面に形成されたパターンに応じて前記試料を照明する光の波長と前記照明段及び/又は前記結像光学系手段の開口絞りとの組合せを選択して前記試料のパターンの光学像を結像させることを特徴とするパターン検査方法。
【請求項11】
表面にパターンが形成された試料を照明手段から発射した光で照明し、
該照明された前記試料のパターンの光学像を結像光学系で結像させ、
該結像させた光学像を検出して前記試料のパターンの画像を検出し、
該検出した画像を処理して前記試料上のパターンの欠陥を検出するパターン検査方法であって、
該照明手段および/または該結像光学系の光路中に配置されて光の強度または/および位相を制御することを特徴とするパターン欠陥検査方法。
【請求項12】
前記試料を、ランプとレーザとを用いて照明することを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項13】
前記試料を、ランプで照明することを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項14】
前記照明を、レーザで照明することを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン欠陥検査方法。
【請求項15】
前記照明を波長の異なる複数の照明光を用いて行い、該複数の照明光のそれぞれの強度を測定し、該測定した前記複数の照明光のそれぞれの強度の比率が一定になるように前記複数の照明光の強度を調整することを特徴とする請求項10又は11に記載のパターン欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−29881(P2006−29881A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206688(P2004−206688)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】