説明

パッケージの製造方法

【課題】パッケージ内の層間剥離およびクラックの発生を抑制するために、コーティング膜の回路構成部品に対する接着強度を向上させる。
【解決手段】回路構成部品(20)を、モールド樹脂(40)で一体的に封止してなるパッケージの製造方法であって、回路構成部品(20)の表面のうち、モールド樹脂(40)と対向する部分の少なくとも一部に、モールド樹脂(40)との剥離を抑制するためのコーティング膜(30)を被覆形成するコーティング工程と、モールド樹脂(40)を成形して、コーティング膜(30)で被覆された回路構成部品(20)を一体的に封止するモールド工程と、を備え、コーディング工程では、コーティング膜(30)を形成するコーティング材料(31)を、回路構成部品(20)の表面に堆積させる前にプラズマ(33)に曝露させ、活性な状態で回路構成部品(20)の表面に堆積させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路構成部品をモールド樹脂により封止してなるパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路構成部品をモールド樹脂により封止してなる半導体パッケージの製造方法として、例えば特許文献1に示される方法が提案されている。
【0003】
この製造方法は、回路構成部品のうち、少なくとも半導体チップと内部リードとの表面にコーティング膜を被覆形成するコーティング工程と、コーティング膜で被覆された回路構成部品をモールド樹脂により密封するモールド工程と、を備える。
【0004】
このように、特許文献1では、コーティング膜を形成することで、回路構成部品とモールド樹脂との層間剥離およびクラックの発生を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−74866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、コーティング工程において、回路構成部品の表面にコーティング材料を堆積させ、その後、光や熱等の外部エネルギー付与による硬化処理を経て、コーティング膜が形成される。このため、硬化処理時にコーティング膜の表面側から内部に向けて、コーティング材料が順に活性な状態となり、コーティング材料が回路構成部品と反応する前に、コーティング材料同士の反応が進行してしまう。これにより、回路構成部品とコーティング材料の間で反応が生じにくくなり、接着力の弱い部分が生じる虞がある。接着力の弱い部分が生じると、層間剥離およびクラックが発生し、パッケージの信頼性が低下するという不具合が生じる。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、パッケージ内の層間剥離およびクラックの発生を抑制するために、コーティング膜の回路構成部品に対する接着強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電子部品(21)と、電子部品(21)と電気的に接続された外部接続端子としてのリード(23)と、を有する回路構成部品(20)を、モールド樹脂(40)で一体的に封止してなるパッケージの製造方法であって、
回路構成部品(20)の表面のうち、モールド樹脂(40)と対向する部分の少なくとも一部に、モールド樹脂(40)との剥離を抑制するためのコーティング膜(30)を被覆形成するコーティング工程と、
モールド樹脂(40)を成形して、コーティング膜(30)で被覆された回路構成部品(20)を一体的に封止するモールド工程と、を備え、
コーディング工程では、コーティング膜(30)を形成するコーティング材料(31)を、回路構成部品(20)の表面に堆積させる前にプラズマ(33)に曝露させ、活性な状態で回路構成部品(20)の表面に堆積させることを特徴としている。
【0009】
このように、本発明では、コーティング材料(31)が回路構成部品(20)の表面に堆積する前に、プラズマ(33)により活性化されたコーティング材料(32)となる。これにより、コーティング材料(31)を全て堆積させた後に外部からのエネルギー付与によって活性にする場合に較べて、コーティング膜(30)と回路構成部品(20)の接着強度を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載のように、コーティング工程において、コーティング材料(31)を、プラズマ噴霧装置(110)から照射したプラズマ(33)の流れを用いて活性化しつつ噴霧する構成が好ましい。これによれば、コーティング材料(31)がプラズマ(33)によって活性化されたコーティング材料(32)となり、且つ、コーティング材料(32)が噴霧される。すなわち、噴霧によって拡散する前に、すべてのコーティング材料(31)がプラズマ(33)に曝露される。したがって、コーティング材料(31)を噴霧した後にプラズマ(33)に曝露する構成に較べて、より効果的にコーティング材料(31)を活性化することができる。また、活性化のムラを抑制することもできる。さらに、プラズマ源(160)とコーティング材料(31)の噴霧装置を一体化できることから、コーティング材料(31)を噴霧しつつ活性状態にするための装置構成も簡素化することができる。
【0011】
請求項3に記載のように、コーティング工程において、噴霧ノズル(150)から噴霧させたコーティング材料(31)を、回路構成部品(20)の表面に堆積させる前に、少なくとも1つのプラズマ源(160)から照射したプラズマ(33)に曝露させる構成にしてもよい。これによれば、請求項2に記載のように、プラズマ(33)を利用してコーティング材料(31)を噴霧化する場合に較べて、コーティング材料(31)を噴霧化させるためのガスの流量調整が容易であり、安定的に噴霧化することができる。
【0012】
より好ましくは、請求項4に記載のように、コーティング材料(31)を、複数のプラズマ源(160)から照射したプラズマ(33)に曝露させる構成が好ましい。これによれば、コーティング材料(31)が複数の方向からプラズマ(33)によって活性化される。したがって、活性化のムラを抑制することができる。
【0013】
さらには、請求項5に記載のように、複数のプラズマ源(160)から照射したプラズマ(33)の流れのベクトル和が、コーティング材料(31)の噴霧方向のベクトルと平行になるように各プラズマ(33)を照射する構成を採ることが好適である。これによれば、活性化したコーティング材料(32)の進行方向は、プラズマ源(160)から照射されたプラズマ(33)の影響を受けにくくなる。したがって、噴霧方向が定まりやすく、コーティング材料(32)を適正な場所に適正な量を堆積させることができる。
【0014】
請求項6に記載のように、回路構成部品(20)を予め加熱しておき、加熱前よりも回路構成部品(20)の温度を高めた状態で、コーティング工程を行う構成が好ましい。これによれば、活性化したコーティング材料(32)は、回路構成部品(20)に堆積直後から接着反応が進行する。したがって、コーティング膜(30)と回路構成部品(20)との接着強度を向上することができる。
【0015】
請求項7に記載のように、回路構成部品(20)におけるコーティング材料(32)を堆積させる面と反対の面側から、回路構成部品(20)を加熱しつつ、コーティング工程を行う構成が好ましい。これによれば、活性化したコーティング材料(32)は、回路構成部品(20)に堆積直後から、堆積した順に逐次接着反応が進行する。したがって、コーティング膜(30)と回路構成部品(20)との接着強度を向上することができる。
【0016】
請求項8に記載のように、コーティング工程の後、モールド工程の前に、回路構成部品(20)におけるコーティング膜(30)を堆積させた面と反対の面側から、回路構成部品(20)とともにコーティング膜(30)を加熱して半硬化状態とする半硬化工程を備える構成が好ましい。これによれば、回路構成部品(20)を封止するモールド工程を行う前に、コーティング膜(30)と回路構成部品(20)の接着反応を事前に進行させておくことができる。したがって、半硬化工程を行わない場合に較べて、ハンドリング性を向上させることができる。また、コーティング膜(30)が完全に硬化せず、半硬化状態に保たれる。したがって、モールド工程において、コーティング膜(30)とモールド樹脂(40)との接着強度を向上することもできる。
【0017】
請求項9に記載のように、プラズマ(33)は、不活性ガスを含む構成が好ましい。これによれば、酸化作用を持つガスの割合を減少させることができる。したがって、コーティング材料(31)を、不活性ガスを含むプラズマ(33)に曝露した際に、酸化作用を持つガス、たとえば酸素などの割合が高い場合に較べて、コーティング材料(31)の表面を、より回路構成部品(20)と反応しやすい状態にすることができる。このため、回路構成部品(20)との接着反応が促進され、コーティング膜(30)と回路構成部品(20)の接着強度を向上することができる。
【0018】
より好ましくは、請求項10に記載のように、プラズマ(33)は、還元性ガスを含む構成が良い。これによれば、コーティング材料(31)を還元性ガスを含むプラズマ(33)に曝露した際に、コーティング材料(31)の表面を、還元性を有しないガスを作用した場合に較べて、より回路構成部品(20)と反応しやすい状態とすることができる。したがって、回路構成部品(20)との接着反応が促進され、コーティング膜(30)と回路構成部品(20)の接着強度を向上することができる。とくに、上記した還元性ガスは、請求項11に記載のように、水素を含む構成が好適である。これによれば、水素プラズマの強い還元性のため、コーティング材料(31)をより効果的に活性化することができる。
【0019】
請求項12に記載のように、コーティング工程では、コーティング材料(31)を、加熱により噴霧に適した所定粘度として噴霧する構成が好ましい。これによれば、溶剤を用いて粘度を調整した場合に較べて、脱溶剤の必要がないため、形成されたコーティング膜(30)の硬化時間を短縮することができる。また、請求項13に記載のように、コーティング材料(31)を、溶剤の添加により噴霧に適した所定粘度に調整して噴霧する構成にしても良い。これらによれば、コーティング材料(31)を所定の粘度に調整できるため、コーティング材料(31)を霧化する際に、効果的に細粒化することができる。したがって、コーティング材料(31)の表面積を増加することができるため、プラズマ(33)に曝露した際に、より多くのコーティング材料(31)を活性化することができる。
【0020】
請求項14に記載のように、プラズマ(33)は、大気圧プラズマを用いることができる。これによれば、真空チャンバ等の特殊な装置を必要としない。したがって、コーティング工程を簡素化することができる。また、請求項15に記載のように、プラズマ(33)は、真空プラズマであってもよい。これによれば、プラズマ生成時の気圧が負圧の場合は、大気圧の場合に較べて、気体分子からプラズマ(33)を発生させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る製造方法で形成されるパッケージの断面図である。
【図2】第1実施形態に係るパッケージの製造方法を示す工程別の断面図であり、(a)はプリヒート工程、(b)はコーティング工程、(c)はコーティング工程完了後、(d)はモールド工程を示す。
【図3】第2実施形態に係るパッケージの製造方法のうち、コーティング工程を示す断面図である。
【図4】コーティング工程の変形例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図5】第3実施形態に係る製造方法で形成されるパッケージの断面図である。
【図6】第3実施形態に係るパッケージの製造方法を示す工程別の断面図であり、(a)はプリヒート工程、(b)はコーティング工程、(c)はコーティング直後、(d)はモールド工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分に、同一符号を付与する。
【0023】
(第1実施形態)
最初に、本実施形態に係るパッケージ10の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、パッケージ10は、回路構成部品20と、該回路構成部品20の表面のうち、モールド樹脂40と対向する部分の少なくとも一部に被覆形成されたコーティング膜30と、コーティング膜30で被覆された回路構成部品20を一体的に封止するモールド樹脂40と、を有している。
【0025】
回路構成部品20は、ICチップなどの電子部品21と、電子部品21が接着されたアイランド22と、外部接続端子としてのリード23と、電子部品21とリード23を電気的に接続するボンディングワイヤ24と、を有する。
【0026】
そして、電子部品21と、アイランド22と、ボンディングワイヤ24と、リード23のうち、ボンディングワイヤ24との接続部分を含む一部(インナーリード23a)とがモールド樹脂40により被覆されている。また、モールド樹脂40との対向部分に、コーティング膜30が形成されている。尚、図1に示す符号23bは、リード23のうち、モールド樹脂40から外部に突出したアウターリードである。
【0027】
次いで、本実施形態に係るパッケージ10の製造方法を以下に説明する。
【0028】
図示しないが、先ず、回路構成部品20を形成する。リードフレームのアイランド22に電子部品21をダイマウントし、その後、電子部品21とリードフレームのリード23とをボンディングワイヤ24により電気的に接続する。
【0029】
次に、図2(a)に示すように、恒温槽100を用い、回路構成部品20を加熱して、加熱前よりも回路構成部品20の温度を高めた状態に保つための、プリヒート工程を行う。
【0030】
次に、プリヒート工程により回路構成部品20が加熱前よりも温度の高い状態で、コーティング工程を行う。このコーティング工程では、図2(b)に示すように、プラズマ噴霧装置110を用いて、コーティング材料31を活性化させつつ、回路構成部品20に噴霧し、図2(c)に示すように、コーティング膜30を形成する。尚、図2(b)に示す符号32は活性化されたコーティング材料を示す。
【0031】
本実施形態において、プラズマ噴霧装置110は、大気圧プラズマを用いる。コーティング材料31の活性化および噴霧に用いるプラズマ33の成分は、例えばアルゴンを用いることができる。アルゴンガス34をプラズマ噴霧装置110のプラズマ管120内に導入し、プラズマ発生部130で高電圧を印加することによってアルゴンリッチな大気圧プラズマ33を発生させる。コーティング材料31は、プラズマ管120に一体的に形成され、その先端部分がプラズマ発生部130よりも下流側で管内に突出する導入ノズル140を通じて、プラズマ管120の内部に導入され、プラズマ33によって活性化される。また、活性化されたコーティング材料32は、図2(b)の破線で示すように、プラズマ33の流れによって回路構成部品20に向けて噴霧される。尚、コーティング材料31として、フィラーを含まない液状エポキシ樹脂を用いる。
【0032】
次に、コーティング工程の後、図2(d)に示すように、トランスファモールド法により、コーティング膜30に被覆された回路構成部品20をエポキシ樹脂などのモールド樹脂40にて一体的に封止するモールド工程を実施する。このモールド工程の加熱により、コーティング膜30は完全に硬化状態となる。そして、リードフレームの不要部分の除去や、リード23の折曲などを経て、図1に示すパッケージ10を製造することができる。
【0033】
次いで、本実施形態に係るパッケージ10の製造方法について、特徴部分の作用効果を説明する。
【0034】
本実施形態では、コーディング工程において、コーティング膜30を形成するコーティング材料31を、回路構成部品20の表面に堆積させる前に、プラズマ33に曝露させ、活性な状態で回路構成部品20の表面に堆積させる。ここで、活性な状態とは、主に、コーティング材料31が有するカルボニル基などの官能基にプラズマ33を曝露することによって不対電子が生成され、ラジカルとなっている状態を指す。このため、活性化されたコーティング材料32は、表面酸化によって酸素過剰となっている回路構成部品20の表面との間で接着反応を起こしやすい。これにより、コーティング膜30と回路構成部品20の剥離を抑制することができる。なお、上記したように、プラズマ33の成分に酸化作用を有しないアルゴンを含むようにすれば、コーティング材料31をより回路構成部品20と反応しやすい状態にすることができる。
【0035】
図2(a)に示すように、本実施形態では、恒温槽100を用いて回路構成部品20を加熱するプリヒート工程を行う。これにより、コーティング工程において、回路構成部品20に堆積したコーティング材料32の回路構成部品20との接着反応エネルギーは、プリヒート工程を行わない場合に較べて高くなる。したがって、コーティング膜30と回路構成部品20との接着強度を向上することができる。
【0036】
図2(b)に示すように、本実施形態では、プラズマ噴霧装置110を用いて、コーティング材料31を活性化しつつ噴霧させる。このコーティング工程において、活性化したコーティング材料32は、プラズマ33の流れによって噴霧される構成になっているので、回路構成部品20に向かうコーティング材料32は、一様に活性化される。このため、コーティング材料32の活性化ムラを抑制することができる。さらに、コーティング材料31の活性化と噴霧を同時に行うことができる構造のため、コーティング材料31を噴霧しつつ活性状態にするための装置構成も簡素化することができる。
【0037】
また、本実施形態において、コーティング材料31には、フィラーを含まない液状エポキシ樹脂を用いる。このため、モールド工程で硬化したコーティング膜30のヤング率は、フィラーを含む硬化後のモールド樹脂40に較べて小さくなる。したがって、コーティング膜30を、回路構成部品20とモールド樹脂40との間で、応力緩和材料として機能させることができる。
【0038】
尚、本実施形態では、プリヒート工程において、恒温槽100を用いているが、上記例に限定されるものではない。回路構成部品20の加熱には、ホットプレートなどのヒートツールを用いてもよい。また、プリヒート工程は省略することもできる。
【0039】
また、本実施形態では、コーティング工程において、コーティング材料31の活性化および噴霧に用いるプラズマ33の成分にアルゴンを用いたが、ほかに、不活性ガスであるヘリウムやキセノンを用いてもよい。また、不活性ガスに限定されることなく、二酸化炭素、窒素、大気を用いてもよい。これらのガスをプラズマ化したラジカル分子をコーティング材料31に衝突させることで、コーティング材料31を活性な状態にすることができる。
【0040】
また、還元性を示す一酸化炭素や、アンモニアを用いることもできる。とくに、強い還元性を示す水素を含むとよい。
【0041】
さらに、上記したガス成分の混合ガスであってもよい。これによれば、プラズマ33中に酸化作用を持つガス、たとえば酸素などの割合が高い場合に較べて、コーティング材料31の表面を、より回路構成部品20と反応しやすい状態にすることができる。このため、回路構成部品20との接着反応が促進され、コーティング膜30と回路構成部品20の接着強度を向上することができる。
【0042】
また、本実施形態では、コーティング工程において、コーティング材料31の活性化および噴霧に用いるプラズマ33に大気圧プラズマを用いる例を示したが、真空プラズマを用いてもよい。プラズマ33生成時の気圧が負圧の場合は、大気圧の場合に較べて、気体分子からプラズマ33を発生させることが容易である。真空プラズマを用いる場合は、真空チャンバ内に回路構成部品20を配し、チャンバ内の圧力を負圧とした状態で、アルゴン、クリプトンおよびキセノンのような不活性ガスや、一酸化炭素、アンモニアおよび水素などの還元性ガスを導入する。そして、電圧の印加によってプラズマ33を発生させる。然る後に、コーティング材料31を、導入ノズル140を通じて、プラズマ管120の内部に導入し、プラズマ33によって活性化しつつ、プラズマ33の流れによって回路構成部品20に向けて噴霧する。
【0043】
また、本実施形態では、コーティング材料31として、液状エポキシ樹脂を用いる例を示した。しかしながら、コーティング材料31は上記例に限定されるものではない。例えば、ポリイミド、テフロンおよびアクリルなどの接着性材料を用いてもよい。なお、テフロンは、デュポン社の登録商標である。
【0044】
また、本実施形態では、コーティング材料31として、液状樹脂を加熱せずに用いる例を示した。しかしながら、コーティング材料31を、加熱、あるいは、溶剤の添加により噴霧に適した所定粘度として噴霧する構成が好ましい。これによれば、熱や溶剤を加えない液状樹脂に較べて、コーティング材料31の粘度を下げることができるので、コーティング材料31を霧化する際に、効果的に細粒化することができる。したがって、コーティング材料31の表面積を増加することができるため、プラズマ33に曝露した際に、より多くのコーティング材料31を活性化することができる。
【0045】
また、本実施形態では、図2(b)に示すように、コーティング材料31の導入ノズル140をプラズマ管120内に一体的に配置しているが、上記例に限定されるものではない。本実施形態の特徴である、コーティング材料31を活性化させつつ、回路構成部品20に噴霧するという要件を満たせば、導入ノズル140は、プラズマ33の流れを生成する機構と別に配置してもよい。より好ましくは、プラズマ発生部130と導入ノズル140の先端の距離が小さくなるように配置すればよい。これにより、電圧の印加によってプラズマ33の状態になったガスが通常の気体に戻る前に、コーティング材料31をプラズマ33に曝露できる。すなわち、プラズマ発生部130と導入ノズル140の先端の距離が大きい場合に較べて、コーティング材料31の活性化を効果的に行うことができる。
【0046】
また、コーティング工程の前に、プラズマ噴霧装置110によって発生させたプラズマ33を用いて回路構成部品20の表面を洗浄および活性化する工程を設けてもよい。この場合、導入ノズル140からコーティング材料31を導入せず、プラズマ管120のプラズマ発生部130で発生させたプラズマ33を回路構成部品20の表面に照射する。これによれば、コーティング材料31の活性化に加えて、回路構成部品20の表面の活性化を行うため、コーティング膜30と回路構成部品20の接着強度を向上させることができる。なお、回路構成部品20の表面を洗浄および活性化する工程は、コーティング工程で用いるプラズマ発生源と同じものを用いることができる。したがって、異なる設備を使用した場合に較べて安価であり、且つ、回路構成部品20の表面を洗浄および活性化した後にコーティング工程までの時間を短縮できる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図3に基づいて説明する。尚、コーティング工程以外の、プリヒート工程(図2(a)参照)、コーティング工程完了後の状態(図2(c)参照)、およびモールド工程(図2(d)参照)は、第1実施形態と同様であり、ここでの説明を省略する。
【0048】
第1実施形態では、コーティング工程において、コーティング材料31を活性化しつつ噴霧する例を示した。これに対し、本実施形態では、図3に示すように、噴霧ノズル150から噴霧させたコーティング材料31を、回路構成部品20の表面に堆積させる前に、1つのプラズマ源160から照射したプラズマ33に曝露させて、活性化させたコーティング材料32を回路構成部品20の表面に堆積させる。
【0049】
このように、本実施形態では、コーティング材料31が回路構成部品20の表面に堆積する前に、噴霧化された状態で、プラズマ33に曝露される。このため、プラズマ33を利用してコーティング材料31を噴霧化する場合に較べて、コーティング材料31を噴霧化させるためのガスの流量調整が容易であり、安定的に噴霧化することができる。
【0050】
(変形例)
尚、本実施形態では、プラズマ33を照射するプラズマ源160が1つの例を示したが、プラズマ源160は複数存在してもよい。例えば、図4(a)および図4(b)に示すように、噴霧ノズル150から噴霧させたコーティング材料31を、回路構成部品20の表面に堆積させる前に、4つのプラズマ源160から照射したプラズマ33に曝露させ、コーティング材料31を活性化する構成としてもよい。また、本変形例では、プラズマ源160をコーティング材料31の噴霧ノズル150の軸線に対して4回対称(90度回転させると自らと重なる)の位置に配置する。そして、4つのプラズマ源160すべてが、同じ流速でプラズマ33を照射する。
【0051】
換言すれば、4つのプラズマ源160から照射したプラズマ33の流れのベクトル和が、コーティング材料31の噴霧方向のベクトルと平行になるように各プラズマ33を照射する構成となっている。このため、活性化したコーティング材料32の進行方向は、プラズマ源160から照射されたプラズマ33の影響を受けにくくなる。したがって、噴霧方向が定まりやすく、コーティング材料32を適正な場所に適正な量を堆積することができる。また、プラズマ源160が、コーティング材料31の噴霧ノズル150の軸線に対して回転対称の位置に配置されているため、コーティング材料32の活性化ムラを抑制することもできる。
【0052】
尚、上記の変形例では、プラズマ33を照射するプラズマ源160が4つの例を示したが、上記例に限定されるものではなく、少なくとも2つ以上のプラズマ源160を配置することができる。また、プラズマ源160の配置およびプラズマ源160から照射するプラズマ33の流速も任意に設定することができる。
【0053】
なお、本実施形態およびその変形例においても、第1実施形態と同様に、プリヒート工程後、コーティング工程の前に、プラズマ源160によって発生させたプラズマ33を用いて回路構成部品20の表面を洗浄および活性化する工程を設けてもよい。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、図5および図6に基づいて説明する。上記した各実施形態では、コーティング工程の前に、プリヒート工程を行う例を示した。これに対し、本実施形態では、プリヒート工程に加えて、コーティング工程においても回路構成部品20を加熱することを特徴とする。さらには、コーティング工程後であって、モールド工程前に、回路構成部品20を加熱し、コーティング膜30を半硬化状態とする半硬化工程を備えることを特徴とする。
【0055】
最初に、本実施形態に係るパッケージ10の構成について説明する。
【0056】
図5に示すように、パッケージ10は、第一実施形態と同様に、回路構成部品20と、回路構成部品20の表面のうち、モールド樹脂40と対向する部分の少なくとも一部に被覆形成されたコーティング膜30と、コーティング膜30で被覆された回路構成部品20を一体的に封止するモールド樹脂40と、を有している。
【0057】
回路構成部品20は、第一実施形態と同様に、ICチップなどの電子部品21と、電子部品21が接着されたアイランド22と、外部接続端子としてのリード23と、電子部品21とリード23を電気的に接続するボンディングワイヤ24と、を有している。これに加えて、本実施形態では、アイランド22の電子部品21が接着されている面と反対の面側に、電子部品21の生じた熱を放熱する放熱板25を有する。この放熱板25は、アイランド22に接着固定されている。また、放熱板25におけるアイランド22との対向面と反対の面(以下、裏面と示す)は、モールド樹脂40から露出されている。
【0058】
そして、電子部品21と、アイランド22と、ボンディングワイヤ24と、リード23のインナーリード23aと、放熱板25の裏面を除く一部がモールド樹脂40により被覆されている。また、モールド樹脂40との対向する一部に、コーティング膜30が形成されている。
【0059】
次いで、本実施形態に係るパッケージ10の製造方法を以下に説明する。
【0060】
図示しないが、先ず、回路構成部品20を形成する。リードフレームのアイランド22に電子部品21をダイマウントし、電子部品21とリードフレームのリード23とをボンディングワイヤ24により電気的に接続する。その後、アイランド22の電子部品21を接着した面と反対の面側に放熱板25を接着する。尚、放熱板25の接着タイミングは、ボンディングワイヤ24による電子部品21とリード23の接続の前後を問わない。
【0061】
次に、図6(a)に示すように、放熱板25の裏面とホットプレート170が接触するように、放熱板25が一体化された回路構成部品20をホットプレート170に配置し、ホットプレート170により加熱するプリヒート工程を行う。
【0062】
次に、プリヒート工程により回路構成部品20が加熱前よりも温度の高い状態で、コーティング工程を行う。このコーティング工程では、図6(b)に示すように、ホットプレート170を用いて加熱することにより、回路構成部品20の温度をプリヒート工程前の温度よりも高く保ちつつ、第2実施形態と同様の手法を用いて、コーティング膜30を形成する。
【0063】
次に、コーティング工程の後、図6(c)に示すように、コーティング工程により被覆形成されたコーティング膜30を半硬化すべく、放熱板25側から、ホットプレート170を用いて回路構成部品20を加熱する半硬化工程を行う。
【0064】
次に、半硬化工程の後、図6(d)に示すように、トランスファモールド法により、コーティング膜30に被覆された回路構成部品20をエポキシ樹脂などのモールド樹脂40にて一体的に封止するモールド工程を実施する。このモールド工程の加熱により、コーティング膜30は完全に硬化状態となる。そして、リードフレームの不要部分の除去や、リード23の折曲などを経て、図5に示すパッケージ10を製造することができる。
【0065】
次いで、本実施形態に係るパッケージ10の製造方法について、特徴部分の作用効果を説明する。
【0066】
図6(a)に示すように、本実施形態においても、ホットプレート170を用いて回路構成部品20を加熱するプリヒート工程を行う。したがって、第1実施形態の場合と同様に、コーティング工程の後に形成されるコーティング膜30と回路構成部品20との接着強度を向上することができる。
【0067】
図6(b)に示すように、本実施形態では、コーティング工程において、ホットプレート170で加熱しつつ、コーティング膜30を形成する。これによれば、プリヒート工程と同様に、活性化されたコーティング材料32の回路構成部品20に対する接着反応性は、プリヒート工程を行わない場合に較べて高くなる。すなわち、コーティング工程の後に形成されるコーティング膜30と回路構成部品20との接着強度を向上することができる。
【0068】
図6(c)に示すように、本実施形態では、コーティング工程の後、モールド工程前に、形成されたコーティング膜30を半硬化させる半硬化工程を行う。これによれば、回路構成部品20を封止するモールド工程を行う前に、コーティング膜30と回路構成部品20の接着反応を事前に進行しておくことができる。したがって、半硬化工程を行わない場合に較べて、ハンドリング性を向上させることができる。また、コーティング膜30が完全に硬化せず、半硬化状態に保たれる。したがって、モールド工程において、コーティング膜30とモールド樹脂40との接着強度を向上することもできる。
【0069】
尚、本実施形態では、コーティング工程におけるコーティング膜30の形成方法は、第2実施形態と同様の手法を用いている。しかしながら、コーティング膜30の形成方法は、上記例に限定されるものではない。第1実施形態のコーティング工程に示す手法を用いても良いし、第2実施形態における変形例の手法を用いても良い。
【0070】
また、本実施形態では、プリヒート工程において、回路構成部品20とホットプレート170を接触した状態とする例を示したが、回路構成部品20とホットプレート170との相対位置は、上記例に限定されるものではなく、非接触の状態としてもよい。また、プリヒート工程において、回路構成部品20の加熱のためにホットプレート170を用いているが、上記例に限定されるものではない。回路構成部品20の加熱には、恒温槽などのヒートツールを用いても良い。あるいは、プリヒート工程を省略することもできる。
【0071】
また、本実施形態では、コーティング工程において、ホットプレート170で加熱しつつコーティング膜30を形成した後、コーティング膜30を半硬化させる半硬化工程を実施する例を示した。しかしながら、上記例に限定されるものではなく、コーティング工程中の加熱工程と、半硬化工程は、いずれか1工程を実施するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、半硬化工程において、放熱板25側から、ホットプレート170を用いて回路構成部品20を加熱する例を示した。しかしながら、半硬化工程は、ホットプレートや恒温槽などのヒートツールを用いることに限定されるものではなく、プラズマやUVを利用してもよい。この場合は、短時間でコーティング膜30の表面のみを半硬化状態にすることにより、ハンドリング性を向上させることができる。この半硬化工程において、プラズマを用いる場合には、コーティング工程で用いたプラズマ源160を利用することができる。
【0073】
尚、上記した各実施形態においては、電子部品21とリード23の接続にボンディングワイヤ24を用いる例を示したが、上記例に限定されるものではない。例えば、バンプを介して電子部品21とリード23を接続させてもよい。
【符号の説明】
【0074】
20・・・回路構成部品
30・・・コーティング膜
31・・・コーティング材料
32・・・活性化されたコーティング材料
33・・・プラズマ
34・・・アルゴンガス
40・・・モールド樹脂
110・・・プラズマ噴霧装置
120・・・プラズマ管
130・・・プラズマ発生部
140・・・導入ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(21)と、該電子部品(21)と電気的に接続された外部接続端子としてのリード(23)と、を有する回路構成部品(20)を、モールド樹脂(40)で一体的に封止してなるパッケージの製造方法であって、
前記回路構成部品(20)の表面のうち、前記モールド樹脂(40)と対向する部分の少なくとも一部に、前記モールド樹脂(40)との剥離を抑制するためのコーティング膜(30)を被覆形成するコーティング工程と、
前記モールド樹脂(40)を成形して、前記コーティング膜(30)で被覆された回路構成部品(20)を一体的に封止するモールド工程と、を備え、
前記コーディング工程では、前記コーティング膜(30)を形成するコーティング材料(31)を、前記回路構成部品(20)の表面に堆積させる前にプラズマ(33)に曝露させ、活性な状態で前記回路構成部品(20)の表面に堆積させることを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記コーティング工程において、前記コーティング材料(31)を、プラズマ噴霧装置(110)から照射したプラズマ(33)の流れを用いて活性化しつつ噴霧することを特徴とする請求項1に記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記コーティング工程において、噴霧ノズル(150)から噴霧させた前記コーティング材料(31)を、少なくとも1つのプラズマ源(160)から照射した前記プラズマ(33)に曝露させることを特徴とする請求項1に記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記コーティング材料(31)を、複数のプラズマ源(160)から照射した前記プラズマ(33)に曝露させることを特徴とする請求項3に記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
複数のプラズマ源(160)から照射した各プラズマ(33)の流れのベクトル和が、前記コーティング材料(31)の噴霧方向のベクトルと平行になるように各プラズマ(33)を照射することを特徴とする請求項4に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング工程の前に、前記回路構成部品(20)を予め加熱しておくプリヒート工程を備え、
該プリヒート工程により加熱前よりも前記回路構成部品(20)の温度を高めた状態で、前記コーティング工程を行うことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記回路構成部品(20)におけるコーティング材料(31)を堆積させる面と反対の面側から、前記回路構成部品(20)を加熱しつつ、コーティング工程を行うことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項8】
前記コーティング工程の後、前記モールド工程の前に、前記コーティング膜(30)を半硬化状態とする半硬化工程を備えることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ(33)は、不活性ガスを含むことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項10】
前記プラズマ(33)は、還元性ガスを含むことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項11】
前記プラズマ(33)は、還元性ガスとして、水素を含むことを特徴とする請求項10に記載のパッケージの製造方法。
【請求項12】
前記コーティング工程では、前記コーティング材料(31)を、加熱により噴霧に適した所定粘度として噴霧することを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項13】
前記コーティング工程では、前記コーティング材料(31)を、溶剤の添加により噴霧に適した所定粘度に調整して噴霧することを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項14】
前記プラズマ(33)は、大気圧プラズマであることを特徴とする請求項1〜13いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項15】
前記プラズマ(33)は、真空プラズマであることを特徴とする請求項1〜13いずれか1項に記載のパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−8919(P2013−8919A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141930(P2011−141930)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】