説明

パワーモジュールとその製造方法

【課題】低コストかつ小型で高機能なパワーモジュールを得ること。
【解決手段】実施の形態にかかるパワーモジュール100は、金属ベース3と、前記金属ベース3の上に搭載されたパワー素子9と、前記パワー素子9を制御する部品7を搭載し、貫通穴6を備えた制御基板4と、前記金属ベース3の一面のみ露出させ、前記金属ベース3、前記パワー素子9、及び前記制御基板4を覆って封止する樹脂5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーモジュールとその製造方法に関するものであり、例えばインバータなどのパワーモジュールの高機能化、小型化、低コスト化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータなどに用いられる電力用半導体装置は大電流、高電圧下で動作するため、そのような電力用のパワーモジュールにおいては、高い絶縁性を確保するとともに、動作に伴う発熱を半導体装置の外部に効率よく逃がすことが必要不可欠とされている。
【0003】
そのような電力用半導体装置の例として、下記の特許文献を引用して背景技術を説明する。例えば、特許文献1に記載のパワーモジュールは、パワー素子、リードフレーム、絶縁層、ベース、金属ワイヤ、パワー素子を制御する部品が実装された制御基板、モールド樹脂、ケースで構成されている。
【0004】
パワー素子は金属ワイヤ、リードフレームにより電気的に接続され、パワー素子で発生する熱はリードフレーム、絶縁層を介してベースから放熱される。
【0005】
一般的に、ベースはケースとの界面で樹脂漏れがないように接着される一方、制御基板は位置固定のため接着されている。ケースに接着された制御基板と、ベース上の絶縁層と接着されるリードフレームは、併設して配置されており、それぞれ金属ワイヤにより電気的に接続されている。ケース内の封止樹脂は、電気的絶縁が必要なリードフレームに実装されるパワー素子、金属ワイヤ及び制御基板上の部品を封止している。
【0006】
次に、特許文献2に記載のパワーモジュールについて説明する。特許文献1に記載のパワーモジュールと違い、ケースを無くしているので、モールド樹脂によりリードフレームに実装されるパワー素子、金属ワイヤ及び制御基板上の部品は、金属ベース露出面を除き封止される。
【0007】
制御基板の一方面は部品が実装され、他方面は金属ベースと固定された状態で樹脂封止されている。金属ベースはリードフレームに固定されて保持されている。一方、制御基板はリードフレーム端部4点で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−358263号公報
【特許文献2】特開2008−140979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の技術によれば以下のような問題があった。例えば、特許文献1に記載のパワーモジュールにおいては、一般的に樹脂封止時に樹脂流動による樹脂圧が発生する。このとき、制御基板の下面に多く樹脂が入ることで制御基板が傾いたり、移動したりすることで、制御基板と金属ベース間の距離が離れてしまい、金属ワイヤに応力が発生して、破断に至ることがある。特許文献1に記載のパワーモジュールにおいてはケースに制御基板周囲のシール部及び金属ベース周囲のシール部分で接着固定されているため、位置ずれを抑制して、金属ワイヤの破断不良を無くすことができる。
【0010】
しかし、この構造ではケースに制御基板と金属ベースを接着する工程があり、工数が多くなり、加工コストが高くなるという問題があった。また、ケースは封止樹脂面積よりも大きくする必要があり、外形サイズが大きくなった。さらに、ケースのコストもかかるため、パワーモジュールの小型化、低コスト化をするのは困難であった。
【0011】
また、特許文献2に記載のパワーモジュールにおいては、金型内に制御基板と金属ベースが固定されたリードフレームを設置し、高圧樹脂注入されることでパワーモジュール構造を得ている。金型内では制御基板をリードフレームで固定されているが、リードフレームは曲げ端子に使用するため細いのが一般的である。そのため、リードフレームでは樹脂圧に耐えるだけの剛性がないので、制御基板が傾いたり、移動することで、金属ワイヤの破断する懸念が生ずる。
【0012】
また、パワーモジュールの高機能化を実現するためにはICパッケージなどの大型部品を多く搭載する必要があり、制御基板の面積は大きくなる傾向がある。制御基板の面積が大きくなることで、製造上発生する制御基板上下面の樹脂流れ速度の違いにより、押圧が発生することで、端部4点で固定された制御基板の中央部ではたわみ変形が発生する。
【0013】
制御基板においてたわみ変形が発生すると、実装された部品の接続面では、膨張又収縮による応力が発生して、部品の接続面であるはんだ接合部にクラックが発生する。さらに、はんだ接合部は冷熱環境下の熱応力と重畳することで、クラックを促進させて、破断する懸念が生ずる。
【0014】
また、封止後の樹脂は熱収縮することで、制御基板とモールド樹脂の界面では収縮応力が発生することが知られている。制御基板の面積が大きくなるほど、応力は大きくなり、制御基板とモールド樹脂の界面では剥離が発生する。その結果、モールド樹脂で覆われた部品も一緒に熱収縮することで、上記と同様にはんだ接合部ではクラックが発生する。
【0015】
さらに、特許文献2に記載のパワーモジュールにおいては、一方面は部品実装された面、他方面は金属面で形成されている。封止樹脂は部品実装面のレジスト面は密着しにくく、金属面と密着しやすいことが知られている。そのため、制御基板両面の部品実装はより剥離しやすく、はんだ接合部のクラックが問題となっていた。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コストかつ小型で高機能なパワーモジュールを提供することが可能な、パワーモジュールとその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、金属ベースと、前記金属ベースの上に搭載されたパワー素子と、前記パワー素子を制御する部品を搭載し、貫通穴を備えた制御基板と、前記金属ベースの一面のみ露出させ、前記金属ベース、前記パワー素子、及び前記制御基板を覆って封止する樹脂と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケースを用いずに樹脂封止することで、ケースに制御基板と金属ベースを接着する工程が無くなり加工コストの低減と、ケースコストの低減が可能である。さらに、ケース面積を削減することで小型化が可能である。
【0019】
また、制御基板に樹脂充填された貫通穴を設けることで、制御基板内部をモールド樹脂により充填することでアンカー効果となる。その結果、熱収縮による制御基板とモールド樹脂の界面の剥離を抑制できることで、はんだ接合部のクラックを抑制することができる。よって、制御基板の実装部品の高信頼性を実現するとともに、パワーモジュールを小型化、低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるパワーモジュールの側面断面図を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかるパワーモジュールの上面図を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1にかかるパワーモジュールを構成する各要素を示す側面断面図である。
【図4】図4は、実施の形態1にかかるパワーモジュールの製造過程の一工程の様子を示す側面断面図である。
【図5】図5は、実施の形態1にかかるパワーモジュールの製造過程の一工程の様子を示す側面断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1にかかるパワーモジュールの製造過程の一工程の様子を示す側面断面図である。
【図7】図7は、実施の形態2にかかるパワーモジュールの側面断面図を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態3にかかるインバータ装置の側面断面図を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態3にかかるインバータ装置を別の側面から観た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかるパワーモジュールとその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これら実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
実施の形態1.
図1に、本発明の実施の形態1にかかるパワーモジュール100の側面断面図を示す。図2は、図1で示したパワーモジュール100の上面図を示す。図3は、パワーモジュール100を構成する各要素を示す側面断面図である。図4乃至6は、図1のパワーモジュール100を完成させるに至る樹脂充填を含む製造過程の各工程の様子を示す側面断面図である。
【0023】
図1に示すように、パワーモジュール100は、パワー素子9、リードフレーム1の外部端子1a、1b、絶縁シート2、金属ベース3、金属ワイヤ8a、8b、パワー素子9を制御する部品7を搭載した制御基板4を備える。
【0024】
リードフレーム1は外部端子1aと外部端子1bとで構成され、銅板やアルミ板からプレス成形することにより形成される。外部端子1aは、その一方面を延長させて、パワー素子9がはんだ接合される部位を有している。そのため、リードフレーム1(外部端子1a)はパワー素子9のパターン形成と外部端子形成の両方を担っている。
【0025】
図1に示すように、リードフレーム1(外部端子1a)のパワー素子9がはんだ接合される部位の反対面は絶縁シート2と金属ベース3が配置され、パワー素子9の発熱は熱伝導性の高い銅やアルミで形成される金属ベース3を介して放出される。
【0026】
絶縁シート2はエポキシなどの熱硬化性樹脂が用いられ、その内部にはシリカやBNなどの高伝導性フィラーが混入されている。外部端子1bは、部品7が実装された制御基板4の片方の端と金属ワイヤ8bにより接続されている。制御基板4の他方の端は、金属ワイヤ8aを介してパワー素子9及び外部端子1aに導通している。制御基板4は、金属ワイヤ8a、8bにより空中で保持されている。
【0027】
制御基板4に搭載された部品7は、例えばICパッケージや、フォトカプラなど、パワー素子9を効率よく制御するための部品である。パワー素子9は、入力交流電力を直流に変換するコンバータ部のダイオードや、直流を交流に変換するインバータ部のバイポーラトランジスタ、IGBT、MOSFET、GTO等である。
【0028】
リードフレーム1の外部端子1aの上のインバータ部の上アームおよび下アームにそれぞれ3個ずつ、コンバータ部の上アームおよび下アームにそれぞれ3個ずつのパワー素子9が搭載されている。また、ブレーキ用のコンバータ、インバータとしてのパワー素子9を1個ずつ搭載している。
【0029】
モールド樹脂5は、エポキシなどの熱硬化性樹脂が用いられる。図1に示すように、モールド樹脂5により外部端子1aおよび1b、金属ベース3の露出面を除き全体が樹脂封止される。
【0030】
制御基板4は、パワー素子9が実装されるリードフレーム1(外部端子1a)、絶縁シート2、金属ベース3と併設され、両者の間に段差を有するように配置されている。制御基板4と金属ベース3の間に段差を有するように配置することにより、制御基板4と金属ベース3との間を大きくでき、制御基板4の下面側から樹脂が進入しやすい構成になっている。また、樹脂量の多い制御基板4の下面側に大型部品を配置することにより、制御基板4の上面側と下面側の樹脂注入流量が一定となるように制御できるので、樹脂のまわりこみによるエア残りの抑制に効果的である。
【0031】
また、制御基板4には貫通穴6が設けられており、モールド樹脂5が樹脂充填されている。樹脂充填された制御基板4の貫通穴6の存在によって、モールド樹脂5によって制御基板4内を貫通して樹脂充填することが可能になる。
【0032】
即ち、樹脂充填された貫通穴6のアンカー効果により、制御基板4とモールド樹脂5の界面剥離を抑制することができる。これにより、モールド樹脂5は制御基板4と部品7の全体を覆うことが可能となる。従って、モールド樹脂5により制御基板4と部品7の冷熱環境下の熱応力を抑制でき、冷熱環境下のはんだ接合部の信頼性を向上させることが可能となる。
【0033】
また、パワー素子9が実装される金属ベース3の上に制御基板4を設置して縦に並んだ段組み構造でも同等の効果が得られる。しかしこの場合、制御基板4を保持する貫通穴6を金属ベース3より外側に設置する必要があり、制御基板4の面積が大きくなり、パワーモジュール100が大型化してしまうので、横に併設するのが望ましい。
【0034】
この構造によれば、ケースを用いずに樹脂封止することで、ケースに制御基板4と金属ベース3を接着する工程が無くなり加工コストの低減と、ケースコストの低減が可能である。さらに、ケース面積を削減することで小型化が可能である。
【0035】
また、制御基板4に樹脂充填された貫通穴6を設けることで、制御基板4の内部をモールド樹脂5により充填することでアンカー効果を得ることができる。その結果、熱収縮による制御基板4とモールド樹脂5との界面の剥離を抑制できることで、はんだ接合部のクラックを抑制することができる。よって、制御基板4の両面での部品実装や、制御基板4の面積を拡大することが可能となり、パワーモジュール100の高機能化が可能となる。
【0036】
また、制御基板4の両面での部品実装においては、制御基板4の界面剥離の抑制により、はんだ接合部のクラックを抑制することができる。従って、制御基板4の実装部品の高信頼性を実現するとともに、パワーモジュール100を小型化、低コスト化することができる。
【0037】
リードフレーム1はパワー素子9のパターン形成と外部端子形成の両方を担っているので、金属基板などの市販品を用いた場合に必要な接続部材を削減できる。さらに、リードフレーム1は制御基板4の外部端子も兼ねるため、接続部材を削減できる。その結果、パワーモジュール100を低コスト化できる。
【0038】
次に、図1および図2に示したパワーモジュール100の製造工程について説明する。パワーモジュール100の製造工程は主に部材設置工程、樹脂注入工程、樹脂保圧とキュア工程の3工程に分けられる。図3は、モールド樹脂5によりパワーモジュール100として一体化される各要素を示す図である。リードフレーム1の外部端子1a、1b、パワー素子9、金属ワイヤ8a、8b、パワー素子9を制御する制御基板4、絶縁シート2、金属ベース3が以下の工程によりモールド樹脂5でパワーモジュール100として一体化される。
【0039】
部材設置工程では、図4に示すように、モールド型10の中空部に半硬化状態の絶縁シート2が貼られた金属ベース3を設置する。次に、モールド型10の中空部にパワー素子9が実装された外部端子1a(リードフレーム1)と、リードフレーム1の外部端子1aおよび1bと金属ワイヤ8aおよび8bで保持された制御基板4を設置する。本実施の形態においては、図2に示すように、制御基板4は、端部4箇所と中央部1箇所の貫通穴6があるが、貫通穴6には、図4に示すようにモールド型10から中空部に露出した下可動ピン12を挿入する。
【0040】
下可動ピン12は、制御基板4を保持するための大きな径の支柱およびその先の貫通穴6に挿入するための小さな径の支柱の径の異なる2種類の支柱で構成されており、貫通穴6に下可動ピン12を挿入された制御基板4は、空中で保持される。なお、制御基板4の面積が小さい場合は、中央部1箇所の貫通穴6を省いて制御基板4を端部4箇所の貫通穴6に挿入された下可動ピン12で保持するようにしても構わない。
【0041】
樹脂注入工程では、型締め後に樹脂注入される。型締め時には、図4に示すようにモールド型10の中空部に露出可能となるように設置された上可動ピン11がリードフレーム1の外部端子1a、制御基板4をそれぞれ押さえつけることにより位置固定する。モールド樹脂5はリードフレーム1の外部端子1aの端部より注入され、リードフレーム1の外部端子1aは半硬化状態の絶縁シート2を金属ベース3に押さえつけながら流動する。このとき、外部端子1aは樹脂注入位置から片持ち構造になっており、樹脂注入に沿って、外部端子1aを絶縁シート2側に変形しやすくすることで、半硬化状態の絶縁シート2と金属ベース3を効率よく押さえることができる。
【0042】
上可動ピン11は下可動ピン12とは異なり、1種類からなる径の支柱により形成される。上可動ピン11及び下可動ピン12はモールド型10の中空部内で上下にしゅう動できるようになっている。
【0043】
外部端子1a(リードフレーム1)の周囲がモールド樹脂5により充填された後、モールド樹脂5は制御基板4の上面および下面側を充填していく(図4)。制御基板4は貫通穴6に挿入される下可動ピン12の固定により、モールド樹脂5の流動方向の移動が抑制されている。一方、上可動ピン11は制御基板4を押さえつけることで、制御基板4の傾き変化を抑制している。
【0044】
なお、上記樹脂注入工程において下可動ピン12が貫通穴6に挿入せずに制御基板4を下から支持していてもよい。その場合は、下可動ピン12が制御基板4を保持したこの状態で貫通穴6にモールド樹脂5が充填されるようにしてもかまわない。
【0045】
また、本実施の形態において下可動ピン12は制御基板4の中央部にも設置されており、制御基板4の上面からの樹脂圧によるたわみ変形を抑制し、上可動ピン11は制御基板4の下面からの樹脂圧によるたわみ変形を抑制している。
【0046】
樹脂保圧とキュア工程では、半硬化状態の絶縁シート2を加圧硬化する工程と、制御基板4の貫通穴6に樹脂充填して加圧硬化する工程がある。熱硬化性樹脂は、硬化するまで時間がかかるため、加圧することで樹脂を流動させることができる。
【0047】
図5に示すようにモールド樹脂5を注入した後、図6に示すように、上可動ピン11と下可動ピン12はモールド型10内へ収納される。上可動ピン11と下可動ピン12が存在していた空間は径が大きいため、支柱が存在していた空間の一部が残る場合があるが、加圧することによりこれらの空間にモールド樹脂5を樹脂充填することができる。そして、制御基板4の貫通穴6は小さいが、加圧することにより貫通穴6にもモールド樹脂5を樹脂充填することができる。
【0048】
また、半硬化状態の絶縁シート2は、上記加圧時の圧力により内部欠陥を押しつぶすとともに、モールド型10を加熱してキュア時間を経過させることにより硬化して、絶縁耐圧性能と放熱性能を発揮する。
【0049】
以上説明したパワーモジュール100の構成によれば、リードフレーム1と絶縁シート2が貼られた金属ベース3を加圧硬化する工程と、制御基板4の貫通穴6に樹脂充填する加圧硬化工程を同時に行うことで、加工費を抑制して、パワーモジュール100の低コスト化を図ることができる。
【0050】
また、モールド型10の中空部内の上可動ピン11と下可動ピン12により制御基板4を保持することで、制御基板4の傾きや移動を抑制でき、金属ワイヤ8aおよび8bの破断を抑制することができる。
【0051】
また、下可動ピン12により制御基板4の中央を保持することで、制御基板4の上面側からの樹脂圧によるたわみ変形を抑制することができる。さらに、上可動ピン11は制御基板4の下面側からの樹脂圧によるたわみ変形を抑制する。これにより、樹脂注入時に発生する制御基板4のたわみ変形を抑制することが可能となり、制御基板4に実装された部品7のはんだ接合部のクラックを抑制することができる。
【0052】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2にかかるパワーモジュール200の側面断面図を示す。図1に示した実施の形態1にかかるパワーモジュール100と異なる点は、金属ベース3を制御基板4の外縁まで延長したことである。
【0053】
制御基板4の貫通穴6は金属ベース3に露出している突起3aで位置決めされる。モールド樹脂5は金属ベース3の下面とリードフレーム1の外部端子1a及び外部端子1bを除き、パワーモジュール200の全体を封止している。突起3aは金属ベース3とは別部材で構成してもよく、金属ベース3から同一材料で突起3aを形成した場合と同じ効果が得られる。
【0054】
本実施の形態においては、金属ベース3を大きくすることにより、パワー素子9の発熱を金属ベース3で長手方向に広げることができるので、放熱性が向上する。その結果、パワーモジュール200の外形サイズを変更することなく、パワー素子9の集積化、低コスト化が実現できる。
【0055】
パワーモジュール200の製造工程においては、実施の形態1で用いられた下可動ピン12に代わって金属ベース3の突起3aによって、制御基板4が保持される。モールド樹脂5をモールド型10内に充填しているときは、図4および図5と同様に上可動ピン11で制御基板4を上から押さえて保持し、樹脂保圧時には上可動ピン11はモールド型10内に収納される。制御基板4の貫通穴6はモールド樹脂5により樹脂充填されて、実施の形態1と同様にモールド樹脂5と制御基板4の界面の剥離を抑制している。
【0056】
以上説明したパワーモジュール200の構成によれば、パワーモジュール200の外形サイズを大きくすることなく、金属ベース3の放熱面積を大きくすることができる。これにより、パワー素子9の放熱性を向上させて、パワー素子9の集積化および低コスト化が実現できる。
【0057】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3にかかるパワーモジュール300を含むインバータ装置400の側面断面図を示す。さらに、図8を観る方向と垂直な方向から観たインバータ装置400の側面図を図9に示す。
【0058】
パワーモジュール300の構成は、金属ベース3の部分以外は実施の形態1にかかるパワーモジュール100と同様である。本実施の形態においては、図8および図9に示されるようにパワーモジュール300の金属ベース3に放熱用のフィン13が直接接合されている。パワーモジュール300はその状態で、ファン15が搭載されるケース14に設置される。一方、パワーモジュール300の外部端子1aおよび1bは電源基板16にはんだ接合されている。以上により、インバータ装置400が構成される。
【0059】
フィン13と金属ベース3は、かしめ接合されている。かしめ接合はフィン13を金属ベース3の凹部に挿入して常温でプレスするため、はんだ接合や溶接などの熱履歴を与えずに接合でき、モールド樹脂5の耐熱性を考慮する必要がない。
【0060】
フィン13の材料としては、金属ベース3と同じように銅やアルミなどの高熱伝導率金属を用いる。なお、フィン13と金属ベース3を高放熱接着材で接着しても同様の効果が得られる。
【0061】
フィン13はパワーモジュール300の外縁まで形成されており、これにより放熱面積を大きくしている。フィン13を接合したパワーモジュール300をケース14に挿入するだけで、フィン13の風路を形成することができる。
【0062】
以上説明したパワーモジュール300を含んだインバータ装置400の構成によれば、パワーモジュール300の金属ベース3にフィン13を直接接合することで、パワーモジュール300の下面部に風路を形成でき、ケース14を簡略化できる。その結果、インバータ装置400を低コスト化できる。
【0063】
更に、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出されうる。
【0064】
例えば、上記実施の形態1乃至3それぞれに示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出されうる。更に、上記実施の形態1乃至3にわたる構成要件を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のように、本発明にかかるパワーモジュールとその製造方法は、低コストかつ小型で高機能なパワーモジュールを提供することに有用であり、特に、インバータなどに用いられる電力用半導体装置のように大電流、高電圧下で動作するため、高い絶縁性を確保するとともに、動作に伴う発熱を半導体装置の外部に効率よく逃がすことが必要不可欠な電力用のパワーモジュールに適している。
【符号の説明】
【0066】
1 リードフレーム
1a,1b 外部端子
2 絶縁シート
3 金属ベース
3a 突起
4 制御基板
5 モールド樹脂
6 制御基板の貫通穴
7 部品
8a,8b 金属ワイヤ
9 パワー素子
10 モールド型
11 上可動ピン
12 下可動ピン
13 フィン
14 ケース
15 ファン
16 電源基板
100,200,300 パワーモジュール
400 インバータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベースと、
前記金属ベースの上に搭載されたパワー素子と、
前記パワー素子を制御する部品を搭載し、貫通穴を備えた制御基板と、
前記金属ベースの一面のみ露出させ、前記金属ベース、前記パワー素子、及び前記制御基板を覆って封止する樹脂と、
を備えることを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記パワー素子を上に搭載したリードフレームが絶縁シートを介して前記金属ベースの上に接合している
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記金属ベースは前記パワー素子を搭載していない延伸領域を備え、当該延伸領域上に形成された複数の突起にて前記制御基板を下面から保持している
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記突起の先端は前記貫通穴に下方から挿入されている
ことを特徴とする請求項3に記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記金属ベースの下方に露出した前記一面に放熱用のフィンが接合されている
ことを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記貫通穴には前記樹脂が侵入している
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
【請求項7】
モールド型の中空部に金属ベースを配置する第1工程と、
前記金属ベースの上にパワー素子を配置する第2工程と、
前記パワー素子を制御する部品を搭載し貫通穴を備えた制御基板を、前記中空部に露出したそれぞれ複数の上可動ピンおよび下可動ピンにより上下から保持する第3工程と、
第1乃至3工程の後に、前記中空部に樹脂を注入する第4工程と、
第4工程の後に、前記上可動ピンおよび前記下可動ピンを前記モールド型の内部に収納する第5工程と、
第5工程の後に、前記樹脂をさらに加圧注入することにより前記上可動ピンおよび前記下可動ピンが露出していた空間を前記樹脂により埋め尽くす第6工程と、
を含むことを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項8】
第4工程により前記貫通穴に樹脂を充填する
ことを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項9】
第3工程において、前記下可動ピンは前記貫通穴に下方から挿入され
第6工程により前記貫通穴に樹脂を充填する
ことを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項10】
第2工程は、絶縁シートが貼られた前記金属ベースの当該絶縁シート上に前記パワー素子が搭載されたリードフレームを配置する工程であり、
第3工程において、前記上可動ピンは上から前記リードフレームを保持する
ことを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項11】
第2工程は、半硬化状態の絶縁シートが貼られた前記金属ベースの当該絶縁シート上に前記パワー素子が搭載されたリードフレームを配置する工程であり、
第3工程において、前記上可動ピンは上から前記リードフレームを保持し、
第6工程により半硬化状態の前記絶縁シートを加圧硬化する
ことを特徴とする請求項9に記載のパワーモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−256803(P2012−256803A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130291(P2011−130291)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】