説明

パワーモジュール及びその製造方法

【課題】 放熱が必要な場所に限定してリードフレームを用いながら、独立した島状の配線パターンを形成することができ、しかも放熱をそれほど必要としない場所には、微細配線パターンを形成することができる既存のプリント基板を用いることのできる高密度なパワーモジュールを得る。
【解決手段】 補強材に熱硬化性樹脂を含浸してなる回路基板101と、回路基板101に形成した開口部に充填された無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物102と、放熱性の高い絶縁性樹脂混合物102に形成された大電流回路に適したリードフレーム103と、金属箔からなる微細配線パターン104とによりパワーモジュールを構成する。パワーモジュールを、回路基板101の所望の部分に放熱性の高い高熱伝導層としての絶縁性樹脂混合物102が設けられた構造とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パワー用エレクトロニクス実装のためのパワーモジュール及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の高性能化、小型化に伴い、半導体素子の高密度化、高機能化が一層要求されている。また、それらを実装するための回路基板も小型で高密度のものが要求されており、そのために、回路基板の放熱性を考慮した設計が重要となってきている。従来の回路基板としてのプリント基板の多くはガラス−エポキシ樹脂によって成形されたものであったが、回路基板の放熱性を改良するためにアルミニウムなどの金属基板を使用し、この金属基板の片面もしくは両面に絶縁層を介して回路パターンを形成した金属ベース基板も知られている。また、さらに高い熱伝導性が要求される場合には、アルミナや窒化アルミニウムなどのセラミック基板に銅板をダイレクトに接合した基板も使用されている。
【0003】比較的小電力の半導体素子を実装するための回路基板としては、一般的に金属ベース基板が使用されるが、熱伝導性を良好にするためには絶縁層の厚みを薄くしなければならないため、アルミニウムなどの金属基板と回路パターンとの間でノイズの影響を受けると共に、絶縁耐圧にもやや課題を有している。
【0004】上記した金属ベース基板やセラミック基板は、性能とコストの面で両立が困難であるため、近年、熱硬化性樹脂に熱伝導性フィラーを混合した組成物をシート状に加工し、電極であるリードフレームを一体成形によって形成した熱伝導モジュールが提案されている(特開平9−298344号公報、特開平9−321395号公報、特開平09−199822号公報)。
【0005】本熱伝導モジュールは、熱伝導性を良好にするための無機フィラーと、熱硬化性樹脂組成物とを含み、熱硬化性樹脂が未硬化状態では可撓性を有し、硬化後はリジットとなるシート状物からなる。本シート状物は、その可撓性を利用して、所望の形状に成型、加工することが可能であり、本シート状物と大電流に対応できるリードフレームとを熱プレスによって加熱加圧することにより、リードフレームと一体化した熱伝導モジュールが得られる。
【0006】図7に、従来の熱伝導モジュールの完成断面図を示す。図7において、701は無機フィラーと熱硬化性樹脂との混合物、702はリードフレーム、703は放熱板、704はリードフレーム702を曲げ加工した端子部分、705はリードフレーム704上に実装した受動部品である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した熱伝導モジュールにおいては、大電流に対応するために板厚の厚いリードフレームが用いられるので、微細な配線パターンを形成することは困難である。このため、無機フィラーと熱硬化性樹脂で構成される高放熱部と微細配線の必要な制御回路部などを分けて搭載するか、2段に重ねる構成を取る必要がある。しかし、これでは、電源回路やパワー回路を小型化することが困難となる。
【0008】また、上記した熱伝導モジュールにおけるリードフレームの導体配線パターンは、大電流に対応するために厚い金属板を金型によって打ち抜いて形成されるのが一般的である。しかし、この方法で作製される導体配線パターンは、すべて位置決め用導線によってリードフレームの外枠に接続された構造を有している。これは、リードフレームを打ち抜いて加工する際に、分離されたパターンが存在すると脱落してしまうため、すべての配線パターンが外枠に接続された構造をとらざるを得ないからである。また、加工後のリードフレームの電極パターンが接触によって所定の位置からずれることを防止するために、タイバーと呼ばれる位置決め用のパターンを配線パターン間に設けることもある。そして、このように、すべての配線パターンを外枠に接続し、タイバーを設けると、余分な配線が必要となる。このため、本来の高密度配線を形成することが困難になるという問題があった。
【0009】また、リードフレームとシート状物との成型一体化という簡単な工法でモジュールを作製することができる利点はあるものの、配線の多層化は困難である。
【0010】本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、放熱が必要な場所に限定してリードフレームを用いながら、独立した島状の配線パターンを形成することができ、しかも放熱をそれほど必要としない場所には、微細配線パターンを形成することができる既存のプリント基板を用いることのできる高密度なパワーモジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係るパワーモジュールの第1の構成は、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の厚み方向に貫通する所望の部分には、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物が前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記回路基板の少なくとも一方の面には金属箔からなる配線パターンが形成されており、前記絶縁性樹脂混合物の一方の面には、リードフレームが前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記絶縁性樹脂混合物の他方の面には、前記金属箔からなる配線パターンが形成されていることを特徴とする。このパワーモジュールの第1の構成によれば、部分的に回路基板の放熱性を高めることができる。
【0012】また、本発明に係るパワーモジュールの第2の構成は、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の厚み方向に貫通する所望の部分には、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物が前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記回路基板の一方の面には金属箔からなる配線パターンが形成されており、前記絶縁性樹脂混合物の前記配線パターンが形成され前記回路基板と同一の面には、リードフレームが前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記絶縁性樹脂混合物と前記回路基板の前記配線パターンが形成された面と反対側の面の全面には金属箔が放熱板として接着されていることを特徴とする。このパワーモジュールの第2の構成によれば、このパワーモジュールの第2の構成によれば、部分的に回路基板の放熱性を高めることができる。また、絶縁性樹脂混合物と回路基板の配線パターンが形成された面と反対側の面の全面には金属箔が放熱板として接着されているので、この金属箔を利用してパワーモジュールを筐体などに半田付けによって実装することも可能となる。
【0013】また、本発明に係るパワーモジュールの第3の構成は、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の厚み方向に貫通する所望の部分には、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物が前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記回路基板の両面には金属箔からなる配線パターンが形成されており、前記絶縁性樹脂混合物の一方の面には、リードフレームが前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記絶縁性樹脂混合物の他方の面には、前記金属箔からなる配線パターンが形成されおり、前記金属箔からなる配線パターンは、前記絶縁性樹脂混合物と前記回路基板を電気的に接続するように形成され、前記回路基板には貫通するインナービアが形成されていることを特徴とする。このパワーモジュールの第3の構成によれば、部分的に回路基板の放熱性を高めることができると共に、インナービア接続によって回路基板と高放熱部との電気的接続も可能となる。
【0014】すなわち、本発明のパワーモジュールの構成によれば、既存回路基板の所望の部分だけ、高濃度の無機フィラーと絶縁性樹脂との混合物によって形成することにより、極めて高い放熱性を確保することができる。特に厚み方向の熱伝導性を向上させて半導体素子からの発熱を放散するのに有効であり、安価で高密度化、小型化が可能なパワーモジュールを実現することができる。
【0015】また、本発明に係るパワーモジュールの第1の製造方法は、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させる工程と、前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とを備えたことを特徴とする。このパワーモジュールの第1の製造方法によれば、未硬化状態のプリプレグに穿設した開口部にだけ、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填させることができるので、回路基板に放熱性に富む部分を局部的に形成することができる。
【0016】より具体的には、未硬化状態の熱硬化性樹脂を溶剤で希釈して補強材に塗布又は含浸し、乾燥によって溶剤を除去したもの(プリプレグ)を用いる。そして、このプリプレグの所望の部分に、金型もしくはレーザ加工によって開口部を穿設し、離型フィルム上で無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む所定の重量の絶縁性混合物を、前記開口部に滴下する。次いで、前記開口部に充填した絶縁性混合物の部分に、銅板を加工して形成したリードフレームを位置合わせして配置すると共に、プリプレグの両面に銅箔を配置し、熱プレスによって加熱加圧する。最後に、プリプレグの両面の銅箔を化学エッチング法などによって加工し、配線パターンを形成する。
【0017】尚、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性混合物として、液状の熱硬化性樹脂を用いてシート状に加工したものを使用し、これを前記開口部に挿入してもよい。また、絶縁性混合物を粉末状に加工し、所定重量充填する方法も有効である。また、両面に微細配線パターンを形成することができるので、高密度実装に向く。
【0018】また、本発明に係るパワーモジュールの第2の製造方法は、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させる工程と、前記リードフレーム側に形成した前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とを備えたことを特徴とする。このパワーモジュールの第2の製造方法によれば、リードフレーム側と反対側の面の金属箔を全面に残こすことにより、絶縁性樹脂混合物層の放熱性をさらに高めることができる。
【0019】また、本発明に係るパワーモジュールの第3の製造方法は、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグに、厚さ方向に貫通する貫通孔を穿設し、前記貫通孔に導電性ペーストを充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させると共に、前記導電性ペーストの硬化によってインナービア接続を形成する工程と、前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とを備えたことを特徴とする。このパワーモジュールの第3の製造方法によれば、未硬化状態のプリプレグに穿設した開口部にだけ、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填させることができ、かつ、導電性ペーストによって層間の電気的接続も可能となる。その結果、回路基板に放熱性に富む部分を局部的に作製することができると共に、パワーモジュールとして高密度実装でしかも安価な回路基板が得られる。
【0020】より具体的には、未硬化状態の熱硬化性樹脂を溶剤で希釈して補強材に塗布又は含浸し、乾燥によって溶剤を除去したもの(プリプレグ)を用いる。そして、このプリプレグの所望の部分に、金型もしくはレーザ加工によって開口部を穿設し、離型フィルム上で無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む所定の重量の絶縁性混合物を、前記開口部に滴下する。次いで、絶縁性混合物を充填したプリプレグにレーザ加工法やパンチング加工法によって貫通孔を穿設し、導電性フィラーと熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを、印刷法によって前記貫通孔に充填する。貫通孔を穿設する場所は、プリプレグ部分であってもよいし絶縁性樹脂混合物層であってもよい。そして、前記開口部に充填した絶縁性混合物の部分に、銅板を加工して形成したリードフレームを位置合わせして配置すると共に、プリプレグの両面に銅箔を配置し、熱プレスによって加熱加圧する。最後に、プリプレグの両面の銅箔を化学エッチング法などによって加工し、配線パターンを形成する。
【0021】尚、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性混合物として、液状の熱硬化性樹脂を用いてシート状に加工したものを使用し、これを前記開口部に挿入してもよい。また、絶縁性混合物を粉末状に加工し、所定重量充填する方法も有効である。
【0022】導電性ペースト中の導電性フィラーとしては、銅、金、ニッケル、半田などを用いることができる。この場合、導電性ペーストは加熱加圧による硬化によって圧縮され、成分中の熱硬化性樹脂がプリプレグや、絶縁性樹脂混合物層に浸透して、導電性フィラーの量が実質的に増大するので、高い導電性を発揮させることが可能となる。また、導電性ペーストの形成により、両面基板の層間の電気的接続が可能となるので、高密度配線、パワーモジュールの小型化に有効である。
【0023】また、本発明に係るパワーモジュールの第4の製造方法は、両面に配線パターンを有し、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ね、前記リードフレームを重ねた前記回路基板を加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させる工程とを備えたことを特徴とする。このパワーモジュールの第4の製造方法によれば、特定の部分だけ放熱性を高めたパワーモジュールを作製することができるここで、回路基板は、補強材に熱硬化性樹脂を含浸し、金属箔を接着した硬化済み両面配線基板であり、ガラスや有機繊維を織布としたものとエポキシ樹脂とを含む安価な回路基板を用いることができる。
【0024】また、本発明に係るパワーモジュールの第5の製造方法は、両面に配線パターンを有し、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の一方の面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物の他方の全面に金属箔を重ね、前記リードフレームと前記金属箔を重ねた前記回路基板を加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記金属箔を放熱板として接着させる工程とを備えたことを特徴とする。このパワーモジュールの第5の製造方法によれば、特定の部分だけ放熱性を高めたパワーモジュールを作製することができる。ここで、回路基板は、補強材に熱硬化性樹脂を含浸し、金属箔を接着させた硬化済み両面配線基板であり、ガラスや有機繊維を織布としたものとエポキシ樹脂樹脂とを含む安価な回路基板を用いることができる。また、リードフレームを埋設した絶縁性樹脂混合物の反対側の面の全面に金属箔を残こすようにしたことにより、絶縁性樹脂混合物層の放熱性をさらに高めることができる。
【0025】また、前記本発明のパワーモジュールの第1〜第5の製造方法においては、前記絶縁性樹脂混合物が、無機フィラーと未硬化状態の熱硬化性樹脂とを含み、かつ、前記プリプレグと同一の厚みに形成されたシート状物からなるのが好ましい。この好ましい例によれば、所望の寸法に打ち抜き、プリプレグの開口部に位置合わせして、簡易に挿入することができる。
【0026】また、前記本発明のパワーモジュールの第1〜第5の製造方法においては、前記絶縁性樹脂混合物が、無機フィラーと未硬化状態の熱硬化性樹脂とを含む粉体混合物であるのが好ましい。この好ましい例によれば、一定重量を計測してプリプレグの開口部に充填することができるので、正確な充填量を確保することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0028】[第1の実施の形態]本発明のパワーモジュールにおいては、微細配線パターンを有する回路基板の所望の部分にだけ、放熱性を高め、大電流を処理することのできるリードフレームが形成されている。また、リードフレームが形成される回路基板の所望の部分には、高濃度の無機フィラーを絶縁性樹脂によって結合した絶縁性樹脂混合物が設けられている。
【0029】図1に、このパワーモジュールの断面図を示す。図1において、101は補強材に熱硬化性樹脂を含浸してなる回路基板、102は回路基板101に形成した開口部に充填された無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物、103は放熱性の高い絶縁性樹脂混合物102に形成された大電流回路に適したリードフレーム、104は金属箔からなる微細配線パターンである。図1に示すように、本パワーモジュールは、回路基板101の所望の部分に放熱性の高い高熱伝導層としての絶縁性樹脂混合物102が設けられた構造を有している。
【0030】成形後のパワーモジュールの高放熱部分においては、無機フィラーが絶縁性樹脂中で相互に接触して高密度に配合されており、他の部分には微細配線パターン104が形成されている。
【0031】無機フィラーとしては、電気的に絶縁で、かつ、熱伝導度の大きい無機物質の粒状物が用いられ、例えば、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子が用いられる。特に機械的強度の面ではアルミナ粒子、シリカ粒子が良好であり、また、熱伝導度の面ではマグネシア粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ホウ素粒子が良好である。
【0032】無機フィラーの粒径は、0.1〜100μmの範囲にあるのが望ましい。
【0033】また、無機フィラーとしては、繊維状のものも好んで用いられる。繊維状の無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ及びマグネシアからなる群から選ばれた少なくとも1種が用いられる。繊維状の無機フィラーを用いれば、絶縁性樹脂混合物102の機械的強度を増加させることができると共に、樹脂中にあって相互接触の頻度が高くなるので、絶縁性樹脂混合物102の熱伝導度を高くすることができる。
【0034】これら繊維状の無機フィラーとしては、その径が0.1〜100μmの範囲にあり、かつ、繊維長が200μm以上であるアスペクト比の大きいものが望ましい。
【0035】また、無機フィラーを固結するための絶縁性樹脂としては、熱硬化性樹脂が望ましく、特に、加熱加圧による硬化後の基板強度が高く、耐熱性も良好であるものが望ましい。中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれた1つであるのが望ましい。臭素化したエポキシ樹脂は、硬化後の耐熱性、難燃性に優れ、機械的強度も良好であるので、特に望ましい。
【0036】リードフレーム103は、微細配線パターン104を形成する金属箔の2倍以上の厚みを有するのが望ましい。放熱性を要求される部分には大電流を流す必要があるからである。また、リードフレーム103は、銅からなり、かつ、その表面が化学エッチングに耐える金属によってメッキ処理されているのが望ましい。銅箔からなる微細配線パターン104を化学エッチング法によって形成する際に、リードフレーム103がエッチング処理されるのを防止することができるからである。化学エッチングに耐える金属は、ニッケル、錫、半田及び金からなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが望ましい。銅箔からなる微細配線パターン104を化学エッチング法によって形成する際には、塩化銅、塩化鉄が用いられるからである。
【0037】回路基板101の補強材は、ガラス質もしくは有機質の繊維の織布又は不織布からなるのが望ましい。回路基板101としての適度な弾性と機械強度を必要とするからである。特に、補強材として有機質の繊維を用いれば、回路基板の軽量化を図ることができ、中でも織布を用いることにより、基板のそりを小さくすることができる。
【0038】尚、絶縁性樹脂混合物のリードフレームが埋設された面と反対側の面に形成された金属箔上に、さらに放熱板を接着させることにより、絶縁性樹脂混合物の放熱性をさらに高めることができる。
【0039】この場合、放熱板の材料としては、アルミ又は銅が望ましい。銅は熱伝導性に富み、放熱を効率良く行うことができるからである。また、アルミは銅より熱伝導性が劣るが、比重が小さいためにパワーモジュールの軽量化に寄与することができるからである。
【0040】以上のように構成されたパワーモジュールは、補強材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグに、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させる工程と、前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とにより作製される。
【0041】プリプレグは、基板強度を確保するための補強材と、金属箔及び絶縁性樹脂混合物との接着性を確保するための熱硬化性樹脂とを含むのが望ましい。
【0042】また、プリプレグとしては、被圧縮性が大きく、すなわち、シート両面から加圧された場合にその厚み方向に変形し易く、また、樹脂成分を吸収ないし浸透できる程度の液吸収性を有し、加熱加圧時に絶縁性樹脂混合物中の樹脂を浸透させることができるものが望ましい。このようなプリプレグの補強材としては、加熱加圧に耐える耐熱性の合成繊維やガラス繊維の不織布が用いられる。プリプレグの厚みは、加圧時の厚みが成形目的の基板厚みとなるように、また、加圧時の変形量を考慮して決定される。
【0043】プリプレグに開口部を穿設し、絶縁性樹脂混合物を充填する際には、プリプレグの両表面にカバーフィルムを貼り合わせるのが望ましい。カバーフィルムを貼り合わせるのは、絶縁性樹脂混合物を充填する際にプリプレグの表面から先に絶縁性樹脂成分がプリプレグに吸収されるのを防止すると共に、プリプレグの表面の汚染を防止するためである。カバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)などの樹脂フィルムを使用することができる。また、開口部は、プリプレグを、例えば、パンチによって剪断して形成することができる。その開口部は、プリプレグの所望の部分に任意の数だけ形成することができる。
【0044】開口部に充填する絶縁性樹脂混合物としては、ペースト状の混合物、シート状の混合物又は粉末状の混合物を用いることができる。ペースト状の混合物は、無機フィラーと、熱硬化性性樹脂のモノマーと、適当な溶剤とを混練し、開口部に充填できる程度の粘度に調製して用いられる。ペーストには、さらに必要であれば、カップリング剤、分散剤、着色剤、離型剤を添加することも可能である。シート状の混合物は、上記したペースト状の混合物をさらに溶剤で低粘度化し、ドクターブレード法、押し出し法などによって造膜し、溶剤を乾燥させることによって得られる。粉末状の混合物は、上記組成のペースト状の混合物を乾燥して溶剤を除去したものをさらに粉砕し、分級することによって得られる。
【0045】絶縁性樹脂ペーストをプリプレグの開口部に充填するに際しては、既存のスクリーン印刷法、ドクターブレード法、コーター法、ディスペンサー法を用いることができる。具体的には、開口部が穿設されたプリプレグの片面に離型フイルムを貼着し、離型フイルムが貼着された面を下面にしてプリプレグを配置し、プリプレグの上面側の開口部にドクターブレード法を用いて絶縁性樹脂ペーストを充填する。この場合、上記したようにカバーフィルムをマスキングとして用いてもよい。
【0046】加熱加圧処理工程においては、絶縁性樹脂混合物にリードフレームを重ねると共に、プリプレグの両面に金属箔を重ねて、加熱加圧処理を行う。加熱加圧処理には、加熱されたプレスが用いられ、充填した絶縁性樹脂混合物を含むプリプレグの表裏を、金属箔を介して上下のプレス金型の平坦な押圧面で挟んで加圧する。プレス金型はヒータによって加熱されており、加圧中に絶縁性樹脂混合物を含むプリプレグがプレス金型によって加熱される。
【0047】この加熱加圧処理工程においては、絶縁性樹脂混合物中の樹脂成分をプリプレグに浸透させて、絶縁性樹脂混合物中の無機フィラーの量を実質的に増大させ、同時に絶縁性樹脂混合物中の樹脂成分を硬化させ、さらにリードフレーム及び金属箔を接着させる。
【0048】最後に、金属箔を、化学エッチング法によって所定の配線パターンとなるように加工する。
【0049】以上説明した製造方法によれば、プリプレグ部分には金属箔からなる微細配線パターンが形成され、放熱を必要とする部分には大電流を流すことのできるリードフレームが形成されるので、所望の部分だけ放熱性を高めたパワーモジュールを実現することができる。また、放熱の不要な部分には、既存の回路基板を用いることができる。また、このパワーモジュールの放熱部分には、無機フィラーが大量に充填されているので、熱膨脹係数を半導体とほぼ同じにすることができるだけでなく、放熱性に優れた基板となり、半導体素子を直接実装することができるパワーモジュールを実現することができる。
【0050】[第2の実施の形態]ここで、本発明に係るパワーモジュールの製造方法について、図2を参照しながら具体的に説明する。
【0051】まず、図2(a)、(b)に示すように、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグ201の両表面に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部202を穿設する。次いで、図2(c)に示すように、開口部202に、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物203を充填する。次いで、図2(d)に示すように、絶縁性樹脂混合物203の部分に、絶縁性樹脂混合物203を挟んでリードフレーム204と放熱板206を重ね、かつ、その外側に金属箔205を配置する。ここで、リードフレーム204は、予め配線パターン状に形成されており、放熱板206側の金属箔205は、放熱板206の位置する部分が開口されている。次いで、図2(d)、(e)に示すように、金属箔205の外側から加圧すると同時に加熱処理を施して、プリプレグ201と絶縁性樹脂混合物203の樹脂成分を硬化させ、リードフレーム204と金属箔205と放熱板206を接着させる。尚、硬化後のプリプレグ201が回路基板207となる。次いで、図2(e)、(f)に示すように、リードフレーム204側の金属箔205を、化学エッチング法によって所定の配線パターン208となるように加工する。以上の工程により、パワーモジュールが作製される。尚、放熱板206側の金属箔205も配線パターン208として機能する。
【0052】以上のようにして作製されたパワーモジュールには、両面に金属箔205からなる配線パターン208が一体に積層されており、かつ、高放熱性が要求される絶縁性樹脂混合物203には大電流に対応できるリードフレーム204が形成されている。
【0053】金属箔205としては、一般に銅箔が用いられる。銅箔を用いる場合、その厚みは12〜100μmの範囲にあるのが望ましい。特に銅箔の厚みが35〜70μmの範囲にあれば、実装部品を微細に実装するために適した微細な配線パターンを形成することができる。放熱板206側の金属箔205は、放熱を効果的に行うために全面に残しておくのが望ましい。ヒートシンクなどに一体化して効率良く放熱することができるからである。
【0054】リードフレーム204としては、一般に銅板が用いられるが、上記した方法においては、銅を主成分とする圧延銅板やニッケルメッキもしくは錫メッキが施された鉄−ニッケル合金板を用いるのが望ましい。図2(e)、(f)の工程で、リードフレーム204側の金属箔205が配線パターン208以外の部分を化学エッチング法によって除去されるが、この際にリードフレーム204がエッチングされないようにすることができるからである。
【0055】また、リードフレーム204は、絶縁性樹脂混合物203の表面に配置され、プレス金型によって加圧されると同時に加熱処理が施されるので、配線パターン状に形成されたリードフレーム204の隙間にも絶縁性樹脂混合物203が充填される。その結果、リードフレーム204の表面まで絶縁性樹脂混合物203が入り込み、リードフレーム204の表面は、回路基板207の表面とほぼ面一のレベルに調製固定される(図2(f)参照)。
【0056】リードフレーム204として銅板を用いる場合、その厚みは金属箔205としての銅箔の厚みの2倍以上の厚みであるのが望ましい。特にリードフレーム204として、200μm〜500μmの範囲の厚みの銅板を用いれば、大電流に対応することができる。また、リードフレーム204として銅板を用いれば、リードフレーム204自体の放熱性が良好となるため、パワートランジスタなどの発熱量の大きい電子部品や機能素子を実装することが可能となる。
【0057】この製造方法においては、加熱加圧処理により、絶縁性樹脂混合物203中の樹脂成分をプリプレグ201内に浸透させて、実質的に無機フィラーの量を増大させることができる。さらに、加熱加圧処理により、無機フィラーとリードフレームとを接触させた状態で、絶縁性樹脂混合物203中の樹脂成分を硬化させ、絶縁性樹脂混合物部分を回路基板207の所望の部分に形成することができる。これにより、厚み方向の熱伝導度を平面方向よりも特に大きくして、さらに熱抵抗を低下させることができるので、放熱性に優れ、かつ、半導体を直接実装することができる配線パターンを備えたパワーモジュールを実現することができる。
【0058】[第3の実施の形態]次に、本発明に係るパワーモジュールの製造方法について、図3を参照しながら具体的に説明する。ここでは、予め配線パターン302が形成された回路基板301を用いてパワーモジュールを作製する方法について説明する。
【0059】まず、図3(a)に示すように、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの両面に金属箔を配置し、加圧すると同時に加熱処理を施して、プリプレグを硬化させると共に、金属箔を接着させる。次いで、金属箔を化学エッチング法によって所定の配線パターン302となるように加工する。これにより、予め配線パターン302が形成された回路基板301が得られる。次いで、図3(a)、(b)に示すように、配線パターン302が形成された回路基板301の所望の部分に開口部303を穿設する。次いで、図3(b)、(c)に示すように、開口部303に、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物304を充填する。次いで、図3(d)に示すように、リードフレーム305を絶縁性樹脂混合物304の上に重ねる。ここで、リードフレーム305は、予め配線パターン状に形成されている。次いで、図3(d)、(e)に示すように、リードフレーム305の外側から加圧すると同時に加熱処理を施して、絶縁性樹脂混合物304の樹脂成分を硬化させ、リードフレーム305を接着させる。以上の工程により、パワーモジュールが作製される。
【0060】リードフレーム305としては、銅を主成分とする圧延銅板やニッケルメッキもしくは錫メッキが施された鉄−ニッケル合金板を用いるのが望ましい。
【0061】また、リードフレーム305は、絶縁性樹脂混合物304の表面に配置され、プレス金型によって加圧されると同時に加熱処理が施されるので、配線パターン状に形成されたリードフレーム304の隙間にも絶縁性樹脂混合物304が充填される。その結果、リードフレーム304の表面まで絶縁性樹脂混合物304が入り込み、リードフレーム304の表面は、回路基板301の表面とほぼ面一のレベルに調製固定される(図3(e)参照)。
【0062】[第4の実施の形態]次に、本発明に係るパワーモジュールの製造方法について、図4を参照しながら具体的に説明する。ここでも、予め配線パターン402が形成された回路基板401を用いてパワーモジュールを作製する方法について説明する。
【0063】まず、図4(a)に示すように、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの両面に金属箔を配置し、加圧すると同時に加熱処理を施して、プリプレグを硬化させると共に、金属箔を接着させる。次いで、金属箔を化学エッチング法によって所定の配線パターン402となるように加工する。これにより、予め配線パターン402が形成された回路基板401が得られる。次いで、図4(a)、(b)に示すように、配線パターン402が形成された回路基板401の所望の部分に開口部403を穿設する。次いで、図4(b)、(c)に示すように、開口部403に、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物404を充填する。次いで、図4(d)に示すように、絶縁性樹脂混合物404の部分に、絶縁性樹脂混合物404を挟んでリードフレーム405と放熱板406を重ねる。ここで、リードフレーム405は、予め配線パターン状に形成されている。次いで、図4(d)、(e)に示すように、リードフレーム405と放熱板406の外側から加圧すると同時に加熱処理を施して、絶縁性樹脂混合物404の樹脂成分を硬化させ、リードフレーム405と放熱板406を接着させる。以上の工程により、パワーモジュールが作製される。
【0064】[第5の実施の形態]次に、本発明に係るパワーモジュールの製造方法について、図5を参照しながら具体的に説明する。
【0065】まず、図5(a)、(b)に示すように、補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグ501の両表面に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部502を穿設する。次いで、図5(b)、(c)に示すように、開口部502に、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物503を充填する。次いで、図5(d)に示すように、プリプレグ501と絶縁性樹脂混合物503の所望の部分に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの貫通孔を穿設し、この貫通孔に導電性フィラーと熱硬化性樹脂とを含む導電性ペースト504を充填する。次いで、図5(e)に示すように、絶縁性樹脂混合物503の部分にリードフレーム505を重ね、かつ、プリプレグ501の両面に金属箔506を配置する。ここで、リードフレーム505は、予め配線パターン状に形成されている。次いで、図5(e)、(f)に示すように、金属箔506の外側から加圧すると同時に加熱処理を施して、プリプレグ501と絶縁性樹脂混合物503及び導電性ペースト504の樹脂成分を硬化させ、金属箔506とリードフレーム505を接着させる。尚、硬化後のプリプレグ501が回路基板507となる。次いで、図5(f)、(g)に示すように、金属箔506を、化学エッチング法によって所定の配線パターン508となるように加工する。以上の工程により、パワーモジュールが作製される。
【0066】図6に、以上のようにして作製されたパワーモジュールの断面構成図を示す。図6に示すように、配線パターン604を備えた回路基板601の所望の部分には、高熱伝導度を有する無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物602が形成されており、回路基板601及び絶縁性樹脂混合物602の所望の部分に電気的に両面の配線パターン604を接続する導電性ペースト605が形成されている。また、高熱伝導度を有する絶縁性樹脂混合物602の表面には、大電流に対応できるリードフレーム603が形成されている。導電性ペースト604は、両面の配線パターン604を電気的に接続するばかりではなく、リードフレーム603と配線パターン604を電気的に接続することもできる。このことは、高放熱性が要求される絶縁性樹脂混合物602と回路基板601も電気配線によって接続することができることを意味し、パワーモジュールの微細配線化、小型化に大きく寄与することができる。
【0067】以下、具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0068】〔実施例1〕本実施例においては、パワーモジュールのプリプレグとして、ガラス不織布に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸したものを用いた。具体的には、外形が250mm×250mmで厚みが約0.1mmのプリプレグ(松下電工(株)製;R−1586)を10枚使用し、このプリプレグの両面に、カバーフィルムとして厚みが24μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを100℃、20kg/cm2 の条件で加熱加圧して貼り合わせた。このとき、含浸した熱硬化性エポキシ樹脂が溶融し、各々のプリプレグは未硬化状態で接着した。次いで、カバーフィルムを両面に貼り合わせたプリプレグを、金型でプレスして打ち抜き、50mm×50mm、30mm×25mm、25mm×20mmのサイズの開口部を穿設した。
【0069】次いで、上記開口部に絶縁性樹脂混合物を充填した。絶縁性樹脂混合物としては、エポキシ樹脂(日本レック(株)製;NVR−1010、硬化剤を含む)12重量%と無機フィラー88重量%との混合物を用い、無機フィラーとしては、下記(表1)に示すアルミナ(Al2 3 )、シリカ(SiO2 )、窒化アルミニウム(AlN)、マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)などの粉末(7〜12μm程度)を用いた。そして、下記(表1)に示す組成を、適度なペースト粘度となるように溶剤としてのブチルカルビトールと混合し、3本ロールによって混練して絶縁性樹脂混合物を得た。
【0070】
【表1】


【0071】上記したように、ブチルカルビトール溶剤は、絶縁性樹脂混合物をペースト状に粘度調整するためのものであり、高濃度の無機フィラーを添加する上で重要な構成要素となる。但し、後の乾燥工程で低沸点溶剤は揮発し、絶縁性樹脂組成中には残らないため、ブチルカルビトール溶剤の添加量については明記していない。
【0072】上記のようにして調製した絶縁性樹脂混合物ペーストを上記開口部に充填するに際しては、ウレタンスキージを用いた周知の方法により、カバーフィルム上の絶縁性樹脂混合物ペーストを上記開口部に刷り込んだ。上記開口部が大きい場合には、開口部を設けたプリプレグのスキージ面の反対側の面に離型フィルムを敷いて行うこともできる。次いで、絶縁性樹脂混合物ペーストを充填した後のプリプレグを、ブチルカルビトール溶剤が揮発するように、120℃の温度で10分間乾燥した。次いで、このようにして作製した絶縁性樹脂混合物ペースト充填プリプレグのカバーフィルムを剥離し、絶縁性樹脂混合物に位置合わせしてリードフレームを重ねた。このリードフレームは、厚み0.5mmの圧延銅板に、電解メッキ法によって5μm厚のニッケルメッキを施し、パターン形成したものである。この場合、リードフレームを重ねるだけでもよいが、絶縁性樹脂混合物中の熱硬化性樹脂が硬化しないような温度(80℃〜120℃)で加圧し、リードフレームを絶縁性樹脂混合物に一旦埋設してもよい。本実施例においては、100℃の温度、10kg/cm2 の圧力で1分間加熱加圧し、リードフレームを絶縁性樹脂混合物に表面まで一旦埋設した。次いで、片面を粗化した厚み70μmの銅箔を、上記プリプレグの両面に粗化面が内側となるように配置し、175℃の温度で加熱しながら30分間加圧した。これにより、プリプレグ中のエポキシ樹脂及び絶縁性樹脂混合物中のエポキシ樹脂が硬化し、それらに銅箔及びリードフレームが接着した。尚、硬化後のプリプレグが回路基板(ガラスエポキシ基板)となる。
【0073】次いで、表面の銅箔を、フォトリソ法によって所定の配線パターンとなるように加工した。具体的には、硬化した基板にドライフィルムレジストをラミネートし、配線パターン状のフィルムを用いてUV露光及び現像を行った後、塩化第2銅溶液を用いた化学エッチング法によって不要な部分の銅を除去した。最後に、剥離工程でドライフィルムレジストを除去した。これにより、配線パターンが得られた。このとき、リードフレームはニッケルメッキ処理が施されているので、塩化第2銅ではエッチングされず、そのまま残る。
【0074】以上の工程により、回路基板には銅箔からなる配線パターンが形成され、絶縁性樹脂混合物には、表面にリードフレームが、裏面に銅箔からなる配線パターンがそれぞれ形成されたパワーモジュールが完成した。
【0075】このようにして得られたパワーモジュールの絶縁性樹脂混合物部分と回路基板部分の厚み方向の熱抵抗を測定し、寸法から熱伝導度を算出した。
【0076】具体的には、10mm角に切断した試料の表面を一定電力の加熱ヒータに接触させて加熱し、接触加熱部分の温度と反対面の温度を測定し、熱の伝わり方から計算によって熱抵抗を求めた。そして、試料の厚みと断面積から計算によって熱伝導度求めた。
【0077】一般的な樹脂基板の熱伝導度は、ガラスエポキシ基板が0.2W/mK程度、ガラスとアルミナとからなる低温焼結基板が約2W/mK、PPS樹脂とMgOとの混合物からなる射出成型法で作製した基板が2W/mK、セラミック基板の96%アルミナ基板が約20W/mK程度である。充填した絶縁性樹脂混合物の熱伝導度、熱膨張係数、絶縁耐圧を評価した結果も併せて上記(表1)に示す。上記(表1)から明らかなように、絶縁性樹脂混合物の熱伝導度は、混合した無機フィラーの種類と量とにより制御可能であることが分かる。特にアルミナを95重量%添加した絶縁性樹脂混合物は、熱伝導度が向上するだけでなく、熱膨張係数も低下するので、パワー半導体等を直接実装する場合に適している。また、MgOやAlNを添加した絶縁性樹脂混合物は、熱伝導度がさらに向上し、かつ熱膨張係数が回路基板であるガラスエポキシ基板と同等であることから、この絶縁性樹脂混合物を用いることにより、パワーモジュール全体の信頼性を向上させることができる。
【0078】以上のことから、本発明の製造方法によって作製したパワーモジュールは、従来のガラスエポキシ基板に比べて約20倍以上の熱伝導度が局部的に得られ、その高熱伝導部は、従来のリードフレームを用いたパワーモジュールと遜色のない熱伝導性を発揮することが分かる。
【0079】また、絶縁耐圧は、同様にパワーモジュールの厚み方向の交流耐圧を求め、単位厚み当たりのものに換算したものである。すべてのパワーモジュールについて絶縁耐圧を評価したところ、15kV/mmを超える値であった。
【0080】無機フィラーと熱硬化性樹脂の濡れ性が悪い場合には、その間にミクロな隙間が生じ、基板の強度や絶縁耐圧の低下を招く。一般に、樹脂だけの絶縁耐圧は15kV/mm程度とされており、絶縁耐圧が10kV/mm以上であれば、良好な接着が得られていると判断することができる。このことからも、本実施例のパワーモジュールは良好なものと考えられる。
【0081】尚、本実施例においては、プリプレグの両面に銅箔を重ねてパワーモジュールを作製したが、裏面だけフォトリソ法によってエッチングされないようにし、銅箔を全面に残して、放熱板として利用することも有効である。
【0082】〔実施例2〕本実施例においても、上記実施例1と同様に、ガラス不織布に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸したプリプレグに開口部を穿設した。また、絶縁性樹脂混合物としては、エポキシ樹脂(日本レック(株)製;NVR−1010、硬化剤を含む)12重量%と無機フィラーとしてのアルミナ(Al2 3 :昭和電工(株)SA−40 平均粒径12μm)88重量%との混合物を用いた。そして、上記実施例1と同様に、プリプレグの開口部に、絶縁性樹脂混合物ペーストを充填した。次いで、絶縁性樹脂混合物ペーストを充填した後のプリプレグを、ブチルカルビトール溶剤が揮発するように、120℃の温度で10分間乾燥した。次いで、このようにして作製した絶縁性樹脂混合物ペースト充填プリプレグの絶縁性樹脂混合物に位置合わせして、表面にリードフレームを重ね、裏面にアルミ放熱板を重ねた。リードフレームは、厚み0.3mmの圧延銅板に、電解メッキ法によって5μm厚の錫メッキを施し、パターン形成したものである。また、アルミ放熱板は、厚み0.3mmの純アルミを、絶縁性樹脂混合物が充填された開口部と同じ大きさに加工したものである。この場合、リードフレームとアルミ放熱板を位置合わせして重ねるだけでもよいが、絶縁性樹脂混合物中の熱硬化性樹脂が硬化しないような温度(80℃〜120℃)で加圧し、リードフレームとアルミ放熱板を絶縁性樹脂混合物に一旦埋設してもよい。本実施例においては、100℃の温度、10kg/cm2 の圧力で1分間加熱加圧し、リードフレームとアルミ放熱板を絶縁性樹脂混合物の両面にそれぞれの表面まで一旦埋設した。次いで、片面を粗化した厚み35μmの銅箔を、上記プリプレグの両面に粗化面が内側となるように配置し、175℃の温度で加熱しながら30分間加圧した。これにより、プリプレグ中のエポキシ樹脂及び絶縁性樹脂混合物中のエポキシ樹脂が硬化し、それらに銅箔及びリードフレームが接着した。尚、硬化後のプリプレグが回路基板(ガラスエポキシ基板)となる。最後に、表面の銅箔を、フォトリソ法によって所定の配線パターンとなるように加工した。
【0083】以上の工程により、回路基板の表面に銅箔からなる配線パターンが形成され、裏面に銅箔からなるべたパターンが形成され、また、絶縁性樹脂混合物の表面にリードフレームが形成され、裏面にアルミ放熱板が形成されたパワーモジュールが完成した。
【0084】このようにして得られたパワーモジュールの絶縁性樹脂混合物部分の熱伝導度を上記実施例1と同様の方法で評価したところ、3.5W/mKと良好な値を示した。すなわち、従来の金属ベース基板に比べて約2倍の熱伝導度が得られ、高性能化が図れた。
【0085】また、信頼性の評価として、最高温度260℃で10秒間のリフロー試験を行ったところ、絶縁性樹脂混合物とリードフレームとの界面に特に異常は認められず、また、回路基板(ガラスエポキシ基板)部分にも異常は認められなかった。これにより、ガラスエポキシ基板と絶縁性樹脂混合物及びリードフレーム、アルミ放熱板さらには銅箔配線パターンと強固な密着が得られていることが分かる。
【0086】〔実施例3〕本実施例においては、配線パターン付き回路基板として、補強材としての紙にフェノール樹脂を含浸し、銅箔配線パターンを形成した紙−フェノール基板を用いた(利昌工業(株)製両面紙フェノール;CS−1256)。補強材としての紙は、木材パルプを原料とし、抄紙技術を用いて作製したものである。
【0087】具体的には、厚み0.1mmのプリプレグを10枚重ね、その両面に厚み35μmの銅箔を配置して、熱プレスによってプリプレグを硬化させ、フォトリソ法によって銅箔を所定の配線パターンとなるように加工したものである。この両面に配線パターンを有する紙−フェノール基板に、上記実施例1と同様にして開口部を穿設した。また、絶縁性樹脂混合物としては、エポキシ樹脂(日本レック(株)製;NVR−1010、硬化剤を含む)12重量%と無機フィラーとしての窒化アルミ(AlN:ダウ社製平均粒径10μm)88重量%との混合物を用いた。絶縁性樹脂混合物は、適度なペースト粘度となるように溶剤としてのブチルカルビトールと混合し、3本ロールによって混練して得た。そして、上記実施例1と同様に、紙−フェノール基板の開口部に、絶縁性樹脂混合物ペーストを充填した。
【0088】絶縁性樹脂混合物としては、シート状の混合物を用いることもできる。以下、絶縁性樹脂混合物シートを用いる場合について説明する。まず、混合した絶縁性樹脂混合物スラリーを、ドクターブレード法によってシート状に造膜する。ギャップは1.5mmに設定し、乾燥工程で溶剤を除去した後に1.0mm厚となるようにした。次いで、造膜後のシートを、ブチルカルビトール溶剤が揮発するように、120℃の温度で10分間乾燥した。このようにして作製した絶縁性樹脂混合物シートは、乾燥後でも可撓性を有するため、種々のサイズに切り抜くことができる。ここでは、絶縁性樹脂混合物シートを前記紙−フェノール基板の開口部に合わせたサイズに金型プレスを用いて打ち抜いた。そして、打ち抜いたそれぞれの絶縁性樹脂混合物シートを、前記紙−フェノール基板の開口部に位置合わせして充填した。
【0089】次いで、紙−フェノール基板の開口部に充填した絶縁性樹脂混合物に位置合わせしてリードフレームを重ねた。リードフレームとしては、厚み0.25mmの圧延した銅板をそのまま用いた。
【0090】次いで、紙−フェノール基板の両面に、厚み24μmのポリフェニレンサルファイト(PPS)からなる離型フイルムを貼着し、熱プレスを用いて150℃の温度で加熱しながら60分間加圧して、絶縁性樹脂混合物中のエポキシ樹脂を硬化させた。これにより、硬化後の絶縁性樹脂混合物にリードフレームが接着した。PPSからなる離型フィルムは、プレス金型を用いて絶縁性樹脂混合物を硬化させる際に、絶縁性樹脂混合物がプレス金型に付着するのを防止するためのものである。尚、離型フイルムは、熱プレス後に剥離される。
【0091】以上の工程により、絶縁性樹脂混合物部分の表面にリードフレームが形成され、回路基板の両面に配線パターンが形成されたパワーモジュールが完成した。
【0092】このようにして得られたパワーモジュールの絶縁性樹脂混合物部分の熱伝導度を上記実施例1と同様の方法で評価したところ、6.3W/mKと良好な値を示した。すなわち、従来の金属ベース基板に比べて約3倍の熱伝導度が得られ、高性能化が図れた。
【0093】また、信頼性の評価として、最高温度260℃で10秒間のリフロー試験を行ったところ、絶縁性樹脂混合物とリードフレームとの界面に特に異常は認められず、また、回路基板(紙−フェノール基板)部分にも異常は認められなかった。これにより、紙−フェノール基板と絶縁性樹脂混合物及びリードフレーム、銅箔配線パターンと強固な密着が得られていることが分かる。
【0094】以上のように、本発明によれば、無機フィラーの熱的性能を十分に生かしたパワーモジュールを実現することができる。すなわち、無機フィラーとしての窒化アルミ(AlN)の良好な熱伝導性を利用すれば、セラミック基板に近い熱伝導性が得られる。
【0095】〔実施例4〕本実施例においては、配線パターン付き回路基板として、補強材としてのアラミド不織布にシアネート樹脂を含浸し、銅箔配線パターンを形成したアラミド−シアネート基板を用いた。補強材としてのアラミド不織布は、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミドパルプを原料とし、抄紙技術を用いて作製したものである(Dupont社製 商品名:サーマウント)。
【0096】具体的には、アラミド不織布にシアネート樹脂を含浸してプリプレグとし、厚み0.1mmのプリプレグを10枚重ね、その両面に厚み35μmの銅箔を配置して、熱プレスによってプリプレグを硬化させ、フォトリソ法によって銅箔を所定の配線パターンとなるように加工したものである。この両面に配線パターンを有するアラミド−シアネート基板に、上記実施例1と同様に開口部を穿設した。
【0097】絶縁性樹脂混合物としては、エポキシ樹脂(旭チバ(株)製シアネート 製品名AroCy M−30、硬化剤を含む)12重量%と無機フィラーとしてのアルミナ繊維(Al2 3 :繊維径12μm、繊維長100μm:住友化学(株)製)88重量%との混合物を用いた。具体的には、上記組成を適度な粘度となるように溶剤としてのブチルカルビトールと混合して、3本ロールによって混練し、混合した絶縁性樹脂混合物スラリーを、120℃の温度で20分間乾燥して、溶剤を除去した。この溶剤を除去した状態の絶縁性樹脂固形物は、まだ硬化していないが、溶剤を除去したことにより、室温で固体状態となる。本絶縁性樹脂固形物をライカイ機によって粉砕した後、篩によって50μm〜120μm程度の顆粒状の絶縁性樹脂混合物粉体を作製した。そして、この絶縁性樹脂混合物粉体を開口部に充填するために必要な重量を計測し、それぞれの開口部に充填した。
【0098】次いで、回路基板の開口部に充填した絶縁性樹脂混合物に位置合わせしてリードフレームを重ね、その反対側にアルミ放熱板を重ねた。リードフレームとしては、厚み0.25mmの圧延した銅板をそのまま用いた。
【0099】次いで、アラミド−シアネート基板の両面に、厚み24μmのポリフェニレンサルファイト(PPS)からなる離型フイルムを貼着し、熱プレスを用いて150℃の温度で加熱しながら60分間加圧して、絶縁性樹脂混合物中のエポキシ樹脂を硬化させた。これにより、硬化後の絶縁性樹脂混合物にリードフレームとアルミ放熱板が接着した。PPSからなる離型フィルムは、プレス金型を用いて絶縁性樹脂混合物を硬化させる際に、絶縁性樹脂混合物がプレス金型に付着するのを防止するためのものである。尚、離型フイルムは、熱プレス後に剥離される。
【0100】以上の工程により、配線パターンを有する回路基板の所定に部分に、絶縁性樹脂混合物からなる高熱伝導層が形成され、かつ、絶縁性樹脂混合物部分には、その表面にリードフレームが形成され、裏面にアルミ放熱板が形成されたパワーモジュールが完成した。
【0101】このようにして得られたパワーモジュールの絶縁性樹脂混合物の熱伝導度を上記実施例1と同様の方法で評価したところ、2.3W/mKと良好な値を示した。すなわち、従来の金属ベース基板に比べて遜色のない熱伝導度が得られた。また、繊維状アルミナを用いることにより、機械的強度に優れたパワーモジュールが得られた。
【0102】また、信頼性の評価として、吸湿リフロー試験(吸湿:85℃85%RH 168Hrs. リフロー:最高温度260℃で10秒間)を行ったところ、絶縁性樹脂混合物とリードフレームとの界面に特に異常は認められず、また、回路基板(アラミド−シアネート基板)部分にも異常は認められなかった。これにより、アラミド−シアネート基板と絶縁性樹脂混合物及びリードフレーム、銅箔配線パターン、アルミ放熱板のいずれとも強固な密着が得られていることが分かる。
【0103】〔実施例5〕本実施例においては、パワーモジュールのプリプレグとして、ガラス不織布に熱硬化性エポキシ樹脂を含浸したものを用いた(松下電工(株)製;R−1661)。プリプレグの作製方法及び外形、さらに開口部については上記実施例1と同様である。
【0104】プリプレグの開口部に充填する絶縁性樹脂混合物としては、エポキシ樹脂(日本レック(株)製品名;NVR−1010、硬化剤を含む)12重量%と無機フィラーとしての窒化ホウ素(BN)粉末(電気化学工業(株)平均粒径7μm)88重量%との混合物を用いた。ここでは、上記実施例1と同様の方法で絶縁性樹脂混合物ペーストを作製し、この絶縁性樹脂混合物ペーストを開口部に充填した。次いで、絶縁性樹脂混合物ペーストを充填した後のプリプレグを、ブチルカルビトール溶剤が揮発するように、120℃の温度で10分間乾燥した。次いで、このようにして作製した絶縁性樹脂混合物ペースト充填プリプレグのカバーフィルムを剥離した。次いで、カバーフィルムを剥離したプリプレグの両面に、再度カバーフィルムをラミネートし、本プリプレグの所望の部分に、炭酸ガスレーザによって所望の数の貫通孔(0.4mm径)を穿設した。そして、このようにして形成された貫通孔に導電性ペーストを充填した。この導電性ペーストは、導電性フィラーとしての平均粒径1.2μmの銀粉(三井金属鉱業(株)製:#1200)86重量%と、室温で液状のビスフェノールFエポキシ樹脂(油化シェルエポキシ製)12重量%と、アミン系硬化剤(味の素(株)MYH−21)2重量%とを混合し、3本ロールによって混練して得られたものである。この導電性ペーストを、プリプレグの所望の部分に形成された貫通孔に充填するに際しては、ウレタンスキージを用いた周知の方法により、カバーフィルム上の導電性ペーストを上記貫通孔に刷り込んだ。次いで、導電性ペーストを充填したプリプレグのカバーフィルムを剥離し、絶縁性樹脂混合物に位置合わせしてリードフレームを重ねた。このリードフレームは、厚み0.5mmの圧延銅板に、電解メッキ法によって5μm厚の半田(Pb/Sn混合重量比90/10)メッキを施し、所定の配線パターンとなるように加工したものである。この場合、リードフレームを重ねるだけでもよいが、絶縁性樹脂混合物中の熱硬化性樹脂が硬化しないような温度(80℃〜120℃)で加圧し、リードフレームを絶縁性樹脂混合物に一旦埋設してもよい。本実施例においては、100℃の温度、10kg/cm2の圧力で1分間加熱加圧し、リードフレームを絶縁性樹脂混合物に表面まで一旦埋設した。次いで、片面を粗化した厚み18μmの銅箔を、上記プリプレグの両面に粗化面が内側となるように配置し、175℃の温度で加熱しながら30分間加圧した。これにより、プリプレグ中のエポキシ樹脂、導電性ペースト及び絶縁性樹脂混合物中のエポキシ樹脂が硬化し、リードフレーム及び銅箔が接着すると共に、導電性ペーストによって銅箔とリードフレームとが電気的に接続された。
【0105】次いで、表面の銅箔を、フォトリソ法によって所定の配線パターンとなるように加工した。具体的には、硬化した基板にドライフィルムレジストをラミネートし、配線パターン状のフィルムを用いてUV露光及び現像を行った後、塩化第2銅溶液を用いた化学エッチング法によって不要な部分の銅を除去した。最後に、剥離工程でドライフィルムレジストを除去した。これにより、銅箔配線パターンが得られた。このとき、リードフレームは半田メッキ処理が施されているので、塩化第2銅ではエッチングされず、そのまま残る。
【0106】以上の工程により、ガラス不織布エポキシ基板部分には銅箔からなる配線パターンが形成され、絶縁性樹脂混合物部分には、表面にリードフレームが、裏面に銅箔からなる配線パターンがそれぞれ形成され、かつ、導電性ペーストによって層間の銅箔及び層間のリードフレームと銅箔とが電気的に接続された高密度配線を有するパワーモジュールが完成した。
【0107】このようにして得られたパワーモジュールは、上記実施例1と同様の熱伝導度を示し、また、信頼性評価の結果も良好であった。加えて、導電性ぺーストによる層間接続の信頼性も良好であった。この導電性ペーストによる層間接続では、リードフレームと回路基板上の配線パターンとを裏面の銅箔配線パターンを介して電気的に接続することができるので、極めて高密度な配線を実現することができる。
【0108】尚、本実施例においては、導電性ペーストを用いて層間の電気的接続を行ったが、リードフレーム及び銅箔を重ねて硬化した後、ドリル加工などによって貫通孔を形成し、銅メッキ技術によって層間をスルーホール接続する方法も有効である。
【0109】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、放熱が必要な場所に限定してリードフレームを用いながら、独立した島状の配線パターンを形成することができ、しかも放熱をそれほど必要としない場所には、微細配線パターンを形成することができる既存のプリント基板を用いることのできる高密度なパワーモジュールを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるパワーモジュールを示す断面図
【図2】本発明の第2の実施の形態におけるパワーモジュールの製造方法を示す工程断面図
【図3】本発明の第3の実施の形態におけるパワーモジュールの製造方法を示す工程断面図
【図4】本発明の第4の実施の形態におけるパワーモジュールの製造方法を示す工程断面図
【図5】本発明の第5の実施の形態におけるパワーモジュールの製造方法を示す工程断面図
【図6】本発明の第5の実施の形態におけるパワーモジュールを示す断面図
【図7】従来のリードフレームを用いたパワーモジュールを示す断面図
【符号の説明】
101 補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグ
102 開口部に充填された絶縁性樹脂混合物
103 リードフレーム
104 配線パターン
201 補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグ
202 開口部
203 絶縁性樹脂混合物
204 リードフレーム
205 金属箔
206 アルミ放熱板
207 硬化した回路基板
208 配線パターン
301 回路基板
302 配線パターン
303 開口部
304 絶縁性樹脂混合物
305 リードフレーム
401 回路基板
402 配線パターン
403 開口部
404 絶縁性樹脂混合物
405 リードフレーム
406 アルミ放熱板
501 プリプレグ
502 開口部
503 絶縁性樹脂混合物
504 導電性ペースト
505 リードフレーム
506 金属箔
507 硬化した回路基板
508 配線パターン
601 回路基板
602 絶縁性樹脂混合物
603 リードフレーム
604 配線パターン
605 導電性ペースト
701 無機フィラーと熱硬化性樹脂との混合物
702 リードフレーム
703 放熱板
704 リードフレームを曲げ加工した端子部
705 実装した受動部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】 補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の厚み方向に貫通する所望の部分には、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物が前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記回路基板の少なくとも一方の面には金属箔からなる配線パターンが形成されており、前記絶縁性樹脂混合物の一方の面には、リードフレームが前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記絶縁性樹脂混合物の他方の面には、前記金属箔からなる配線パターンが形成されているパワーモジュール。
【請求項2】 補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の厚み方向に貫通する所望の部分には、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物が前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記回路基板の一方の面には金属箔からなる配線パターンが形成されており、前記絶縁性樹脂混合物の前記配線パターンが形成され前記回路基板と同一の面には、リードフレームが前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記絶縁性樹脂混合物と前記回路基板の前記配線パターンが形成された面と反対側の面の全面には金属箔が放熱板として接着されているパワーモジュール。
【請求項3】 補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の厚み方向に貫通する所望の部分には、無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物が前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記回路基板の両面には金属箔からなる配線パターンが形成されており、前記絶縁性樹脂混合物の一方の面には、リードフレームが前記回路基板の表面とほぼ面一に埋没されており、前記絶縁性樹脂混合物の他方の面には、前記金属箔からなる配線パターンが形成されおり、前記金属箔からなる配線パターンは、前記絶縁性樹脂混合物と前記回路基板を電気的に接続するように形成され、前記回路基板には貫通するインナービアが形成されているパワーモジュール。
【請求項4】 前記リードフレームの厚みが前記金属箔の厚みよりも厚い請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項5】 前記リードフレームが、前記金属箔の2倍以上の厚みを有する請求項4に記載のパワーモジュール。
【請求項6】 前記絶縁性樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項7】 前記熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれた1つである請求項6に記載のパワーモジュール。
【請求項8】 前記補強材が、織布又は不織布からなる請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項9】 前記補強材が、ガラス質又は有機質の繊維からなる請求項8に記載のパワーモジュール。
【請求項10】 前記無機フィラーが、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも1種の粒子である請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項11】 前記無機フィラーの粒径が0.1〜100μmの範囲にある請求項10に記載のパワーモジュール。
【請求項12】 前記無機フィラーが繊維状である請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項13】 前記繊維状の無機フィラーが、アルミナ、シリカ及びマグネシアからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項12記載のパワーモジュール。
【請求項14】 前記繊維状の無機フィラーの径が0.1〜100μmの範囲にあり、かつ、前記繊維状の無機フィラーの繊維長が200μm以上である請求項12に記載のパワーモジュール。
【請求項15】 前記リードフレームが銅を主成分とする圧延銅板からなる請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項16】 前記絶縁性樹脂混合物の前記リードフレームが埋設された面と反対側の面に形成された金属箔上に、さらに放熱板が接着された請求項1又は3に記載のパワーモジュール。
【請求項17】 前記放熱板がアルミ又は銅からなる請求項16に記載のパワーモジュール。
【請求項18】 前記インナービアは、少なくとも熱硬化性樹脂と金属フィラーとを含む導電性ペーストによって電気的接続が行われる請求項3に記載のパワーモジュール。
【請求項19】 前記金属箔が銅箔であり、かつ、その厚みが12〜200μmの範囲にある請求項1〜3のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項20】 補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させる工程と、前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とを備えたパワーモジュールの製造方法。
【請求項21】 補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させる工程と、前記リードフレーム側に形成した前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とを備えたパワーモジュールの製造方法。
【請求項22】 補強材に熱硬化性樹脂を含浸したプリプレグの所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグに、厚さ方向に貫通する貫通孔を穿設し、前記貫通孔に導電性ペーストを充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物を充填したプリプレグの両面に金属箔を重ねる工程と、前記両面に重ねた金属箔の外側から加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記プリプレグ中の熱硬化性樹脂成分を硬化させて、前記金属箔を前記プリプレグと接着させると共に、前記導電性ペーストの硬化によってインナービア接続を形成する工程と、前記金属箔を所望の配線パターンにエッチング成形する工程とを備えたパワーモジュールの製造方法。
【請求項23】 両面に配線パターンを有し、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の表面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ね、前記リードフレームを重ねた前記回路基板を加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させる工程とを備えたパワーモジュールの製造方法。
【請求項24】 両面に配線パターンを有し、補強材と熱硬化性樹脂とを含む回路基板の所望の箇所に、厚さ方向に貫通する所望の大きさの開口部を穿設する工程と、前記開口部に無機フィラーと絶縁性樹脂とを含む絶縁性樹脂混合物を充填する工程と、前記絶縁性樹脂混合物の一方の面に所望の配線パターン状に形成したリードフレームを重ねると共に、前記絶縁性樹脂混合物の他方の全面に金属箔を重ね、前記リードフレームと前記金属箔を重ねた前記回路基板を加熱加圧処理して、前記リードフレームを前記絶縁性樹脂混合物に埋設させ、かつ、前記金属箔を放熱板として接着させる工程とを備えたパワーモジュールの製造方法。
【請求項25】 前記リードフレームが銅からなり、かつ、前記リードフレームの表面が化学エッチングに耐える金属によってメッキ処理されている請求項20〜24のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項26】 前記リードフレームの表面にメッキ処理される金属が、ニッケル、錫、半田及び金からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項25に記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項27】 前記絶縁性樹脂混合物が、無機フィラーと未硬化状態の熱硬化性樹脂とを含み、かつ、前記プリプレグと同一の厚みに形成されたシート状物からなる請求項20〜26のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法。
【請求項28】 前記絶縁性樹脂混合物が、無機フィラーと未硬化状態の熱硬化性樹脂とを含む粉体混合物である請求項20〜27のいずれかに記載のパワーモジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−185663(P2001−185663A)
【公開日】平成13年7月6日(2001.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−367840
【出願日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】