説明

ヒンジ装置、そのヒンジ装置を備えた自動原稿搬送装置、読取ユニット及び画像形成装置

【課題】 回転部材に切り欠きを設けることなく、デザイン性をも向上することが可能なヒンジ装置、そのヒンジ装置を備えた自動原稿搬送装置、読取ユニット及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 カバー12を開く際、支持部側回動軸93が固定部側案内溝95によって上方に案内され、固定部側回動軸94がカバー12の回動に伴って傾斜する支持部側案内溝96によって下方への移動が規制されつつ案内される。これにより、カバー12の原稿搬送前方端12fが伏臥姿勢時よりも下方に下がることがなく原稿排出トレイ72の上面72aとの干渉が防止され、しかもその開閉動作においてカバー12のガタツキも防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置、そのヒンジ装置を備えた自動原稿搬送装置、読取ユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリンタ機能及びスキャナ機能等を備えた複合機等では、原稿圧着板が本体に対し開閉できるようになっており、原稿圧着板と本体とは一般にヒンジで接続されている。この一例として、下記特許文献1には、本体に取付けた取付部材と、取付部材に1対のヒンジを介して回動自在に取付けられた回動部材とを備えたヒンジ装置が開示されている。より具体的には、このヒンジ装置は、1対のヒンジの周囲に歯を設け、水平方向に延伸し歯に噛み合う固定された1対のラックを備えている。これにより、回動部材を右回転させると1対のヒンジが左に移動するため、当該ヒンジと、複合機の背後の壁との距離が大きくなり、外装を壁にぶつけることなく、外装12を大きく開放できる。
【特許文献1】特開2000−129993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1のように、ヒンジ装置の回動中心は、一般に、複合機の背面よりも内側に形成される。このため、この特許文献1の構成では、同文献の図3に示すように、原稿圧着板の後端を切り欠いて、原稿圧着板を開閉する際に、その後端部が本体上面と干渉しないようにしている。しかし、このような構成では、原稿圧着板に切り欠き部分を設ける必要があり、また、原稿圧着板を閉じたとき、その切り欠き部分と本体上面との間に隙間が開いてしまいデザイン上も好ましい構成ではなかった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、回転部材に切り欠きを設けることなく、デザイン性をも向上することが可能なヒンジ装置、そのヒンジ装置を備えた自動原稿搬送装置、読取ユニット及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係るヒンジ装置は、回動部材を本体に対して伏臥した姿勢と起立した姿勢との間で変位可能となるように前記本体と前記回動部材の一端側とを回動可能に連結するヒンジ装置であって、前記本体に固定される固定部と、前記回動部材を支持する支持部と、前記支持部に設けられ、前記回動部材が通過する変位軌跡面に直交する直交方向に沿って延びる支持部側回動軸と、前記固定部に設けられ、前記直交方向に沿って延びる固定部側回動軸と、を備え、前記固定部には、前記支持部側回動軸と係合し、前記回動部材が前記伏臥した姿勢から前記起立した姿勢に変位するに従って、当該支持部側回動軸を前記本体から離間する方向に案内する固定部側案内穴が形成され、前記支持部には、前記支持部側回動軸と前記固定部側案内穴との係合位置に対して前記回動部材の一端側寄りの位置において前記固定部側回動軸と係合し、前記回動部材が前記伏臥した姿勢から前記起立した姿勢に変位するに従って、当該固定部側回動軸を前記支持部側回動軸に近づけるように案内する支持部側案内穴が形成されていることを特徴とする。
なお、「固定部」は、本体に対して別体或いは一体形成されたものであってもよい。また、「支持部」は、回動部材の一端側に対して別体或いは一体形成されたものであってもよい。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のヒンジ装置において、前記固定部側案内穴は、前記回動部材の回動方向に沿って曲がった弓なり状の案内溝であり、前記支持部側案内穴は、前記回動部材が伏臥した姿勢にある状態で、前記支持部側回動軸の上方に位置し、かつ、当該回動部材と前記本体との対向方向に沿った直線状をなす案内溝であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のヒンジ装置において、前記固定部は互いに対をなす固定部対からなり、前記支持部は前記固定部対それぞれの対向面又はその裏面に隣接配置される支持部対からなり、前記各支持部対の支持部側回動軸は、その支持部対に隣接配置される固定部対に向かって突出して当該固定部対の固定部側案内穴に係合し、前記各固定部対の固定部側回動軸は、その固定部対に隣接配置される支持部対に向かって突出して当該支持部対の支持部側案内穴に係合する構成であることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヒンジ装置において、前記固定部側案内穴は、前記回動部材が伏臥した姿勢の状態で前記支持部側回動軸と係合する面が、その伏臥した回動部材に沿った方向と平行をなしていることを特徴する。
【0009】
請求項5の発明は、請求項4に記載のヒンジ装置において、前記固定部側回動軸は、前記回動部材が前記伏臥した姿勢にある状態で、前記支持部側案内穴のうち前記本体から離間した端部に当接することを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のヒンジ装置において、前記固定部側案内穴及び前記支持部側案内穴のうち少なくともいずれか一方には、前記回動部材が伏臥した姿勢にある状態で、当該案内穴と係合する前記支持部側回動軸または前記固定部側回動軸の移動を規制する第1規制部が設けられていることを特徴とする。
なお、「第1規制部、第2規制部」には例えば次の構成が含まれる。
(a)案内穴(固定部側案内穴、支持部側案内穴)を案内溝とし、その案内溝の対向面の少なくともいずれか一方面に弾性変形可能な規制突部を突出形成して幅の狭い部分を設けた構成。
(b)案内穴(固定部側案内穴、支持部側案内穴)のうち、回動軸(支持部側回動軸、固定部側回動軸)の摺接する面に当該回動軸が進入可能な凹所を設けた構成。
【0011】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のヒンジ装置において、前記固定部側案内穴及び前記支持部側案内穴のうち少なくともいずれか一方には、前記回動部材が起立した姿勢にある状態で、当該案内穴と係合する前記支持部側回動軸または前記固定部側回動軸の移動を規制する第2規制部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項8の発明に係る自動原稿搬送装置は、原稿が配置される原稿配置部と、当該原稿配置部に配置された原稿を搬送する原稿搬送部と、を有する自動原稿搬送装置において、前記原稿搬送部は、前記原稿配置部の一端側に配され、それに配置された原稿に接触しつつ搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラを覆う形状をなすとともに、自動原稿搬送装置の本体に対して前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載のヒンジ装置を介して連結されるカバーと、前記カバーに設けられ当該カバーが前記本体に対して伏臥した姿勢にある状態で、前記搬送ローラに押圧されるピンチローラと、を備え、前記カバーは、前記伏臥した姿勢にある状態で前記本体と対向する対向面が当該本体の対向部の形状に沿った形状であることを特徴とする。
なお、「自動原稿搬送装置」は、原稿読取装置や画像形成装置(プリンタ、ファクシミリ装置や、プリンタ機能及びスキャナ機能等を備えた複合機など)の本体に対して着脱可能に装着されるものであっても、着脱不能なものであってもよい。
【0013】
請求項9の発明は、請求項8に記載の自動原稿搬送装置において、前記ヒンジ装置は、前記カバーのうちその変位軌跡面に直交する直交方向における両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9に記載の自動原稿搬送装置において、前記カバーと、前記支持部と、前記支持部側回動軸とが一体成形されていることを特徴とする。
【0015】
請求項11の発明に係る読取ユニットは、前記請求項8〜請求項10のいずれかに記載の自動原稿搬送装置と、当該自動原稿搬送装置によって搬送された原稿の画像を読み取る読取部を有する画像読取装置と、を備える。
なお、「読取ユニット」は、画像形成装置(プリンタ、ファクシミリ装置や、プリンタ機能及びスキャナ機能等を備えた複合機など)の本体に対して着脱可能に装着されるものであっても、着脱不能なものであってもよい。
【0016】
請求項12の発明に係る画像形成装置は、前記請求項11に記載の読取ユニットと、その読取ユニットにて読み取られた原稿画像を被記録媒体に画像形成する画像形成ユニットと、を備える。
なお、「被記録媒体」には、用紙の他にOHPシートなどが含まれる。
「画像形成装置」は、プリンタ(レーザプリンタ)などの印刷装置だけでなく、ファクシミリ装置や、プリンタ機能及びスキャナ機能等を備えた複合機であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
<請求項1,2の発明>
本構成によれば、回動部材を伏臥した姿勢から起立した姿勢へと回動させると、それに伴って当該回動部材を支持する支持部材に設けられた支持部側回動軸が固定部側案内穴によって本体から離間するように案内される。つまり、回転部材全体が本体から離間する方向に移動するから、回転部材のうちヒンジ装置によって連結された一端側の端部が本体と干渉することを防止できる。また、回動部材の一端に切り欠き部分を設ける必要がないためデザイン性の向上を図ることができる。しかも、この回動の際、固定部に設けられた固定部側回転軸と、支持部に形成された支持部側案内穴とが係合しつつ当該固定部側回転軸が支持部側回動軸に近づくように案内される。従って、これらの固定部側回転軸及び支持部側案内穴を設けない構成に比べて本体に対する回動部材のガタツキを抑制できる。なお、請求項2の構成がより望ましい。
【0018】
<請求項3の発明>
本構成によれば、組をなす固定部対と支持部対とが隣接配置され、互いに各回動軸(固定部側回動軸、支持部側回動軸)が案内穴(支持部側案内穴、固定部側案内穴)に係合する構成であるから、回動軸方向のずれを規制できる。
【0019】
<請求項4,5の発明>
請求項4の構成によれば、回動部材が伏臥した姿勢にあるとき、その伏臥方向と平行をなす面に、支持部側回動軸が係合する。従って、伏臥姿勢の状態において回動部材が本体から離間する方向(上記伏臥方向と直交する方向)に移動してしまう、つまり、本体に対して回動部材が浮き上がってしまうことを規制できる。特に、複合機等の画像形成装置では、例えば原稿を搬送するためのピンチローラなど、伏臥姿勢の回転部材を下方から上方へと付勢する機構が配されている構成があり、このような構成においては、回動部材とピンチローラ等との押圧状態を維持できるため、特に有効である。
更に、請求項5の構成では、回動部材が伏臥した姿勢にある状態で、固定部側回動軸が、支持部側案内穴のうち本体から離間した端部に当接する構成であるから、回動部材が本体側に近接する方向の移動をも規制できる。
【0020】
<請求項6の発明>
本構成によれば、第1規制部によって、固定部材を伏臥姿勢に仮保持することができる。
<請求項7の発明>
本構成によれば、第2規制部によって、固定部材を起立姿勢に仮保持することができる。
【0021】
<請求項8,11,12の発明>
本構成によれば、上記請求項1〜請求項7のいずれかに記載のヒンジ装置を利用することで、回動部材に相当するカバーの形状を、本体の対向部に沿った形状にすることができる。例えば本体の対向部が平面状であれば、カバーの対向面もそれに沿った直線状にするのである。これにより、カバーを閉じた状態で本体との間の隙間をなくし、外観上のデザインの向上を図ることができる。
【0022】
<請求項9の発明>
本構成によれば、ヒンジ装置が、カバーの回動中心方向の両端にそれぞれ設けられているから、カバーを安定的に開閉させることができる。
【0023】
<請求項10の発明>
本構成によれば、カバー、支持部及び支持部側回動軸を一体成形することにより製造コストの低減、組み立て工程の簡略化等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図1〜図11を参照しつつ説明する。
1.全体構成
本実施形態に係る画像形成装置は、プリンタ機能及びスキャナ機能等を備えた複合機1であり、図1はその外観を示す斜視図である。この複合機1は、フィーダ部21及び画像形成部22(ともに図4参照)等を内蔵する画像形成ユニット2と、自動搬送原稿読取ユニット(以下「読取ユニット3」という)とを備え、画像形成ユニット2の上面に設けられた排紙トレイ2aの上方に空間を空けて読取ユニット3が配された構成になっている。読取ユニット3は、原稿Mの画像を読み取るための読取部70を有するとともに上面に矩形状の原稿台4a(ともに図5参照)が設けられた画像読取装置4と、その原稿台4aを覆うように配される自動原稿搬送装置(オートドキュメントフィーダ。以下、「ADF5」という)とを備えて構成されている。
【0025】
画像読取装置4の一端側(図1で紙面右下方向)には、各種の操作ボタン6a及び液晶表示部6bなどを備えた操作パネル6が設けられている。また、この操作パネル6の下側の位置には上記排紙トレイ2aに連なって開口した用紙取り出し孔7が形成されており、いわゆる胴内排出タイプとなっている。その用紙取り出し孔7の下側には水平方向に伸びるスリット状の開口した手差給紙口8が形成されており、更にその下側には、給紙カセット9が設けられ、操作パネル6等が配された面と同じ面側から着脱可能に取り外せるようになっている。以下の説明では、複合機1について、操作パネル6や給紙カセット9が設けられた面側(図1で紙面右下方向)を「前方」、その反対側(図1で紙面左上方向)を「後方」とする。
【0026】
図2は、読取ユニット3を開けた状態を示す複合機1の斜視図である。同図に示すように、読取ユニット3は、上記操作パネル6とは反対側の後端部が画像形成ユニット2の上面後端側において回動可能に軸支されている。これにより、読取ユニット3を上方に持ち上げることで用紙取り出し孔7が更に開放され、排紙トレイ2aに排出された画像形成済みの用紙Wを容易に取り出すことができるようになっている。
【0027】
図3はADF5を開いた状態を示す複合機1の斜視図である。同図に示すように、ADF5は、やはり上記操作パネル6とは反対側の後端部が画像読取装置4の上面後端側において回転軸13により回動可能に軸支され、このADF5を開くことで画像読取装置4上面の原稿台4aが露出されるようになっている。また、ADF5は、上面に原稿Mが載置される原稿トレイ10(本発明の「原稿配置部」に相当)と、その原稿トレイ10に載置された原稿Mを、当該ADF5の回動軸方向に沿った搬送方向(図1では紙面左下方向)に向けて搬送する原稿搬送部11とを備えて構成されている。
【0028】
そして、この原稿搬送部11を覆うカバー12が、本発明の「ヒンジ装置」に相当する構成によって開閉可能に軸支されているのである。
【0029】
2.各部の構成
(1)画像形成ユニット
画像形成ユニット2の各構成について、図4を参照しつつ説明する。図4は、複合機1を給紙ローラ25等の軸方向から見た要部側断面図であり、同図において紙面右側が複合機1の前方であり、紙面左側が複合機1の後方となる。なお、原稿搬送部11については簡略化した側面を図示している。
【0030】
画像形成ユニット2のケーシング20内には、用紙Wを給紙するためのフィーダ部21や、給紙された用紙Wに所定の画像を形成するための画像形成部22などが備えられている。また、画像形成部22の上部には、画像形成部22により画像形成され、排出された用紙Wを保持するために用いられる排紙トレイ2aが配されている。
【0031】
(a)フィーダ部
フィーダ部21は、給紙カセット9と、給紙カセット9内に設けられた用紙押圧板23と、給紙カセット9の前端側端部の上方に設けられる送出ローラ24、給紙ローラ25および分離パッド26と、給紙ローラ25に対向する対向ローラ27と、紙粉取りローラ28と、紙粉取りローラ28に対し用紙Wの搬送方向の下流側に設けられるレジストローラ29とを備えている。
【0032】
なお、送出ローラ24、給紙ローラ25、対向ローラ27、及び、給紙ローラ25に沿った円弧状をなすガイド部30によって、給紙カセット9の前端側から供給される用紙Wは、当該複合機1の後方側に向かうように方向転換され、給紙カセット9の上方に設けられる画像形成部22に送り出されるようになっている。
【0033】
給紙カセット9は、ケーシング20内の底部に着脱可能に装着されており、この中に用紙Wを積層して収納するために用いられる。この給紙カセット9は、内部に用紙Wを補給する際等に、複合機1の前方側に引き出し可能となるように構成されている。このとき、フィーダ部21は、給紙ローラ25と分離パッド26との間で切り離され、対向ローラ27と分離パッド26とこの分離パッド26の裏側に配設されるバネ31とが、給紙カセット9と一体となって引き出される。
【0034】
用紙押圧板23は、給紙ローラ25に対して遠い方の端部(後端部)において揺動可能に支持されることによって、給紙ローラ25に対して近い方の端部(前端部)が上下方向に移動可能に構成されており、図示しないバネにより上方向に付勢されている。このため、用紙押圧板23は、用紙Wの積層量が増えるに従って、給紙ローラ25に対して遠い方の端部を支点として、バネ31の付勢力に抗して下向きに揺動される。
【0035】
送出ローラ24は、用紙押圧板23により給紙カセット9内の最上位に積層された用紙Wに当接するよう設定されており、給紙ローラ25により用紙Wを搬送可能な位置(給紙ローラ25と分離パッド26の間の位置)まで送る。
【0036】
分離パッド26は、給紙ローラ25に対向する位置に配設されている。そして分離パッド26の裏側に配設されるバネ31によって、給紙ローラ25に向かって押圧されている。また、この分離パッド26は、複数の用紙Wが重なった状態で搬送経路(図4で二点鎖線L)内に供給されることを防止するための機能を備えている。即ち、送出ローラ24により送られてきた用紙Wは、給紙ローラ25と分離パッド26とに接触する。このとき、分離パッド26と用紙Wとの間には、適度な摩擦力が加えられるので、送出ローラ24により複数の用紙Wが分離パッド26まで送られてきたとしても、最上位に位置する用紙W以外の用紙Wは分離パッド26により係止される。このため、給紙ローラ25からは1枚毎に用紙Wが供給される。
【0037】
そして、用紙Wは、この給紙ローラ25によって約180度方向転換されつつ、紙粉取りローラ28によって紙粉が取り除かれた後、レジストローラ29に送られる。
【0038】
また、レジストローラ29は、1対のローラから構成されており、給紙ローラ25の近傍に配置された位置センサ(図示せず)による検知タイミングに基づいて、駆動および停止の動作が制御装置(図示せず)により制御される。そして、この制御により用紙Wの斜行が修正される。即ち、制御装置は、給紙ローラ25による用紙Wの搬送時において、レジストローラ29は駆動している状態とし、位置センサが用紙Wの先端を検知すると、レジストローラ29を停止させる。そして、用紙Wがレジストローラ29に接触し、弛んだ状態になった頃に、制御装置は再びレジストローラ29を駆動し、用紙Wを画像形成部22に送るようにしている。
【0039】
また、給紙ローラ25のやや上方には、複合機1の手前側からレジストローラ29の位置に直接用紙Wを給紙するための手差給紙口8が形成されており、給紙カセット9に用紙Wを収納することなく搬送経路Lに用紙Wを供給することができる。
【0040】
(b)画像形成部
次に、画像形成部22は、スキャナユニット40、プロセスユニット41、定着ユニット42などを備えている。
(スキャナユニット)
スキャナユニット40は、ケーシング20内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示省略)、ポリゴンモータ43により回転駆動されるポリゴンミラー44、レンズ45および46、反射鏡47および48などを備えており、レーザ発光部から発光される所定の画像データに基づくレーザビームを、図1における一点鎖線で示すように、ポリゴンミラー、レンズ45、反射鏡47、レンズ46、反射鏡48の順に通過あるいは反射させて、後述するプロセスユニット41における感光体ドラム52の表面上に高速走査にて照射させている。
【0041】
(プロセスユニット)
図4に示すように、複合機1には、感光体ドラム52を少なくとも備えて画像形成ユニット2の本体部に対して着脱可能なプロセスユニット41が設けられている。画像形成ユニット2内には、排紙トレイ2aの下方においてプロセスユニット41を収容する収容部2bがケーシング20の前面側に開口した状態で形成されている。そして、図2に示すように、この開口部を塞ぐように開閉可能に設けられた開閉扉2cを空けることによりプロセスユニット41の着脱作業を行うことができるようになっている。
【0042】
プロセスユニット41は、ドラムカートリッジ50と、現像カートリッジ51とから構成されている。また、プロセスユニット41とスキャナユニット40との間には、空間が形成されている。
【0043】
プロセスユニット41のうち、ドラムカートリッジ50には、感光体ドラム52、スコロトロン型帯電器53、転写ローラ54を備えている。また、現像カートリッジ51には、現像ローラ55、層厚規制ブレード56、トナー供給ローラ57およびトナーボックス58などを備えている。そして、この現像カートリッジ51は、ドラムカートリッジ50に対して着脱自在に装着されている。
【0044】
また、トナーボックス58内には、トナー(現像剤)が充填されている。そして、トナーボックス58内のトナーは、トナーボックス58の中心に設けられる回転軸59に支持されるアジテータ60の白抜き矢印方向(時計方向)への回転により、攪拌されて、トナーボックス58に設けられたトナー供給口61から放出される。
【0045】
トナー供給口61の側方位置には、トナー供給ローラ57が反時計方向に回転可能に配設されており、また、このトナー供給ローラ57に対向して、現像ローラ55が反時計方向に回転可能に配設されている。そして、これらトナー供給ローラ57と現像ローラ55とは、そのそれぞれがある程度圧縮するような状態で互いに当接されている。
【0046】
トナー供給ローラ57は、金属製のローラ軸に、導電性の発泡材料からなるローラが被覆されている。また、現像ローラ55は、金属製のローラ軸に、磁気特性を持たない導電性のゴム材料からなるローラが被覆されている。より具体的には、現像ローラ55のローラ部分は、カーボン微粒子などを含む導電性のウレタンゴムまたはシリコーンゴムからなるローラ本体の表面に、フッ素が含有されているウレタンゴムまたはシリコーンゴムのコート層が被覆されている。なお、現像ローラ55には、現像バイアスが印加される。
【0047】
また、現像ローラ55の近傍には、層厚規制ブレード56が配設されている。この層厚規制ブレード56は、金属の板バネ材からなるブレード本体の先端部に、絶縁性のシリコーンゴムからなる断面半円形状の押圧部62を備えており、現像ローラ55の近くにおいて現像カートリッジ51に支持されて、押圧部62がブレード本体の弾性力によって現像ローラ55上に圧接されるように構成されている。
【0048】
そして、トナー供給口61から放出されるトナーは、トナー供給ローラ57の回転により、現像ローラ55に供給され、この時、トナー供給ローラ57と現像ローラ55との間で正に摩擦帯電され、さらに、現像ローラ55上に供給されたトナーは、現像ローラ55の回転に伴って、層厚規制ブレード56の押圧部62と現像ローラ55との間に進入し、ここでさらに十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ55上に担持される。
【0049】
感光体ドラム52は、現像ローラ55の側方位置において、その現像ローラ55と対向するような状態で時計方向に回転可能に配設されている。この感光体ドラム52は、ドラム本体が接地されるとともに、その表面部分が、ポリカーボネートなどから構成される正帯電性の感光層により形成されている。なお、この感光体ドラム52は、図示しないメインモータからの動力によって回転駆動されるように構成されている。
【0050】
スコロトロン型帯電器53は、感光体ドラム52に接触しないように、所定の間隔を隔てて配設されている。このスコロトロン型帯電器53は、感光体ドラム52の半径方向において、水平方向から約30度上方に配置されている。また、このスコロトロン型帯電器53は、このタングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型の帯電器であり、感光体ドラム52の表面を一様に正極性に帯電させるように構成されている。
【0051】
そして、感光体ドラム52の表面は、その感光体ドラム52の回転に伴って、まず、スコロトロン型帯電器53により一様に正帯電された後、スキャナユニット40からのレーザビームの高速走査により露光され、所定の画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0052】
次いで、現像ローラ55の回転により、現像ローラ55上に担持されかつ正帯電されているトナーが、感光体ドラム52に対向して接触する時に、感光体ドラム52の表面上に形成される静電潜像、即ち、一様に正帯電されている感光体ドラム52の表面のうち、レーザビームによって露光され電位が下がっている露光部分に供給され、選択的に担持されることによって可視像化され、これによって反転現像が達成される。
【0053】
転写ローラ54は、感光体ドラム52の下方において、この感光体ドラム52に対向するように配置され、ドラムカートリッジ50に反時計方向に回転可能に支持されている。この転写ローラ54は、金属製のローラ軸に、イオン導電性のゴム材料からなるローラが被覆されており、転写時には、転写バイアス(転写順バイアス)が印加されるように構成されている。そのため、感光体ドラム52の表面上に担持された可視像は、用紙Wが感光体ドラム52と転写ローラ54との間を通る間に用紙Wに転写される。
【0054】
(定着ユニット)
定着ユニット42は、プロセスユニット41よりも用紙搬送方向下流側(後方側)に配設され、ギヤが形成された定着ローラ63、定着ローラ63を押圧する押圧ローラ64、および、サーモスタット65を備えている。
定着ローラ63は、金属製で、加熱のためのハロゲンランプを備えている。押圧ローラ64には、この押圧ローラ64を下方から定着ローラ63の中心軸方向に回転可能に押圧(付勢)するバネ66を備えている。また、この押圧ローラ64は、定着ローラ63または用紙Wと密着し、定着ローラ63と同期して回転するよう構成されている。
【0055】
サーモスタット65は、例えばバイメタルからなり、定着ローラ63から発生される熱に応じて、定着ローラ63を加熱するためのヒータの電源をON・OFFし、定着ローラ63が異常な高温に加熱されないようにしている。
【0056】
このような定着ユニット42において、定着ローラ63は、プロセスユニット41において用紙W上に転写されたトナーを、用紙Wが定着ローラ63と押圧ローラ64との間を通過する間に加熱および加圧することにより定着させる。さらに、定着ローラ63は、画像定着後の用紙Wを、ガイド部材67,68により形成される排紙パスを介して、排出ローラ69まで搬送する。そして、排出ローラ69は、送られてきた用紙Wを排紙トレイ2a上に排紙する。つまり、定着ユニット42、ガイド部材67,68、及び排出ローラ69によって画像形成部22にて画像が形成された用紙Wが前方側に向かうように方向転換されて画像形成部22の上方に配置される排紙トレイ2a側に送り出されることとなる。
【0057】
(2)読取ユニット
読取ユニット3は、画像読取装置4とADF5とを備え、画像読取装置4は、画像形成ユニット2の排紙トレイ2aの上方において、その下面4bが当該排紙トレイ2aと対向し、この排紙トレイ2aを覆うように配されている。
【0058】
読取ユニット3は、フラットベッド方式のスキャナとして構成されており、このフラットベッド方式の構成では、前述したように、ADF5が後方に開くと、読取部70の原稿台4aが露出するようになっており(図3参照)、その原稿台4a上に本やその他の各種原稿を載置した状態で読み取りができるように構成されている。
【0059】
一方、図5は読取部70の内部構成を概念的に示している。この図に示すように、読取部70は、原稿トレイ10上に載置された原稿Mが、ガラス板からなる原稿台4aを介してCIS(コンタクトイメージセンサ)71と対向し、さらに原稿排出トレイ72に導かれるように、原稿Mを誘導するための搬送路73が弧を描くように設けられている。そして、搬送路73の原稿搬送方向の上流側先端部には、原稿トレイ10上に載置された原稿Mを一枚ずつ分離して搬送路73に導くための原稿給紙ローラ79が設けられ、更にその下流側には、搬送ローラ74及びピンチローラ75が設けられている。搬送ローラ74は、原稿Mの下面に当接するように設けられ、ピンチローラ75は、上記カバー12の下面側に設けられ、このカバー12を閉めた状態(伏臥姿勢)でピンチローラ75が搬送ローラ74に対して上方から押圧するようになっている。
【0060】
また、搬送路73上のCIS71との対向部には、そこを通過する原稿Mを押圧して原稿台4a上に密着させるための押圧ローラ76が設けられ、搬送路73の原稿搬送方向の下流側末端部には、原稿Mを原稿排出トレイ72に排出するための排出ローラ77が設けられている。さらに、搬送路73の経路上で搬送ローラ74及びピンチローラ75の近傍には、原稿Mが通過したか否かを検出するための通過検出センサ78が設けられている。
【0061】
CIS71は、原稿Mの搬送方向と直交する方向(図1で紙面左右方向。図5で紙面奥行き方向)に延設されたライン型のセンサである。その延設方向に複数のフォトダイオード(図示略)が列設されている。CIS71は、図示しない光源より原稿Mに強い光を当てたときの反射光を個々のフォトダイオードで受光し、原稿Mの画素毎に反射光の光強度(明度)を電気信号に変換するように構成されている。読取部70では、これを図示しないA/D変換機にてデジタルデータ化することで、原稿M上に形成された画像を画像データとして読取ることができる。
【0062】
読取部70での原稿Mの読取りは、原稿台4a上に原稿Mを載置して行う場合と、ADF5を利用する場合とがある。前者の場合、原稿Mの搬送方向(図1で紙面奥行き方向)に沿って延びる軸79に沿って、かつ、原稿台4aに沿ってCIS71が移動され、その際に1ラインずつ、原稿台4a上に載置された原稿Mの読取りが行われる。また、後者の場合には、CIS71が原稿台4aを介して押圧ローラ76と対向するように、原稿トレイ10の左端部に移動され、その位置で保持されて、ADF5により搬送される原稿Mの読取りが1ラインずつ行われるようになっている。
【0063】
(3)ADF
次に、ADF5について具体的に説明する。図6は、ADF5を斜め上方から見た斜視図である。なお、ADF5についての説明においては、原稿トレイ10に載置された原稿Mの搬送方向(同図で紙面左右向。複合機1の左右方向)を「原稿搬送方向」とし、その前方(同図で紙面左方向。同図で示した白抜き矢印方向。)を「原稿搬送前方」、その後方(同図で紙面右方向)を「原稿搬送後方」として説明する。また、同図は、カバー12が開いた状態、つまり、ADF5の本体としての原稿排出トレイ72に対して起立した姿勢が示されている。以下、この図の状態を「起立姿勢」又は「開いた状態」といい、図1〜4のように、カバー12が閉まった状態、つまり、原稿排出トレイ72に対して伏臥した姿勢を「伏臥姿勢」又は「閉じた状態」という。
【0064】
(原稿トレイ及び原稿搬送部)
上述した原稿台4aは、原稿搬送方向に延びる長方形をなし、その原稿台4aの前面を覆う原稿排出トレイ72はそれに対応した長方形の平板形状をなす。そして、原稿排出トレイ72上の原稿搬送前方端12f側にはカバー12によって覆われた原稿搬送部11が設けられ、原稿トレイ10は、原稿搬送部11に対し原稿搬送後方側から原稿搬送後方に向かって斜め上方に延びる傾斜姿勢で、かつ、原稿排出トレイ72と隙間をあけた状態で設けられている。なお、原稿トレイ10には、載置した原稿Mを幅方向(原稿搬送方向に直交する方向。複合機1の前後方向)における両端で挟んで搬送をガイドする1対のガイド壁80,80が設けられている。
【0065】
原稿搬送部11は、原稿トレイ10の原稿搬送前方端12f及び上記搬送路73とを繋げる原稿シュート部81が設けられている。原稿シュート部81の原稿トレイ10寄りの位置には、原稿搬送方向に直交する方向に延びる回転軸82によって回転する原稿給紙ローラ79が設けられている。そして、この原稿給紙ローラ79が、原稿トレイ10に載置された最上位の原稿M表面に当接した状態で回動することにより、その原稿Mを搬送路73へと導くことができる。
【0066】
また、搬送路73の途中には、原稿シュート部81に連なる面側に上記搬送ローラ74が上記回転軸82と平行をなす回転軸(図示せず)によって回転可能に設けられている。一方、これと対向するカバー12の内面12aには、やはり上記回転軸82と平行をなす回転軸83によって軸支されたピンチローラ75に回転可能に設けられている。ピンチローラ75は、カバー12を閉じた状態(伏臥姿勢)で搬送ローラ74に押圧されるようになっている(図5参照)。そして、搬送ローラ74が回転駆動されることで、ピンチローラ75も従動して回転し、原稿給紙ローラ79からの原稿Mを両ローラ74,75でニップして搬送路73下流側へと導く役目を果たす。なお、原稿給紙ローラ79の回転軸82及び搬送ローラ74の回転軸とは、原稿シュート部81の後方に配されたギア機構(図6ではケース84に覆われている)によって図示しないモータからの駆動力が伝達されるようになっている。
【0067】
(カバー)
次にカバー12は、原稿排出トレイ72の原稿搬送前方端12fにおいて本発明の「ヒンジ装置」に相当するヒンジ部90を介して回動可能に連結されている。このカバー12は、全体として、下側が開放した矩形箱状をなし、その上面部12bは、原稿シュート部81上方を覆うとともに原稿搬送前方側が搬送路73に沿って湾曲した形状をなす。また、原稿トレイ10に近接する原稿搬送後方壁は、その原稿トレイ10の原稿搬送前方端12f及びそれに載置された原稿Mの搬送経路Lを避けるように矩形状の切り欠き部12cが形成されている。
【0068】
また、カバー12の原稿搬送前方右壁(複合機1の後面側の壁)は、上記ギア機構を覆うケース84の形状に対応した切り欠き部12dが形成されている。また、この切り欠き部12dの原稿搬送後方部には、カバー12を閉じた状態で原稿シュート部81側に設けられた係止部(係合突起85)と係合する被係合部(係合凹部86)が設けられており、これにより、カバー12を閉めたとき、その原稿搬送後方部における浮き上がりを防止できる。
【0069】
一方、カバー12の原稿搬送前方左壁(複合機1の前面側の壁)は、図1〜3にも示すように、カバー12を閉めた状態で、原稿排出トレイ72の上面72a(本発明の「本体の対向部」に相当)に対して隙間なく対面するように下端面12e(本発明の「対向面」に相当)が全長に亘って一直線状の平面になっている。
【0070】
(ヒンジ部)
さて、ヒンジ部90の構造について、図6に加えて図7〜図9を参照しつつ説明する。図7はカバーを開けた状態のADFの前面図であり、図8はカバーを閉じた状態のADFの前面図であり、図9は伏臥姿勢のカバーを示す模式図である。
本実施形態に係るヒンジ部90は、カバー12を、原稿排出トレイ72に対し原稿搬送前方端12f側を中心に伏臥姿勢(図7参照)と起立姿勢(図8参照)との間で回動可能に連結するためのものである。
【0071】
図6,7に示すように、カバー12の湾曲した原稿搬送前方端12fには、原稿搬送方向に直交する方向の両端に1対の平板状の支持部91,91が一体的に突出形成されている。これに対して、原稿シュート部81側には、上記各支持部91の外面(裏面。1対の支持部91の対向面とは反対側の面)にそれぞれ接触するように1対の固定部92,92(図6,7では原稿搬送前方左側の固定部92のみ図示)が設けられている。以下、支持部91及び固定部92は、原稿搬送前方左側のものと原稿搬送前方右側のものとは構造がほぼ同じなので、原稿搬送前方右側の支持部91及び固定部92を例に挙げて説明する。
【0072】
図9に拡大して示すように、支持部91は、カバー12が伏臥姿勢にある状態で下方の原稿排出トレイ72側に部分的に突出するように一体的に形成されている。一方、固定部92は、下側が原稿排出トレイ72の上面よりも下に位置し上側が上方に突出した形状をなす。支持部91のうち、カバー12の伏臥姿勢下で最下端に位置する下端部には、固定部92との対向方向(原稿搬送方向に直交する紙面奥側の方向。本発明の「変位軌跡面に直交する直交方向」に相当)に向かって突出した断面円形状の支持部側回動軸93が一体形成されている。固定部92には、カバー12の伏臥姿勢下で上記支持部側回動軸93の上方に位置において、支持部91との対向方向(紙面手前側)に向かって突出した断面円形状の固定部側回動軸94が一体形成されている。
【0073】
続いて、固定部92には、支持部側回動軸93の直径よりやや大きい寸法の幅を有し、当該支持部側回動軸93と係合する固定部側案内溝95が形成されている。この固定部側案内溝95は、最上端部分95aが固定部側回動軸94に対して原稿搬送後方(カバー12の開放端側)に位置し、その最上端部分95aから下方に伸び、途中から当該固定部側回動軸94の真下に回り込む弓なり状の形状をなす。更に、固定部側案内溝95は、伏臥姿勢下で支持部側回動軸93が位置する最下端部分95bが水平方向(原稿搬送方向。伏臥姿勢のカバー12に沿った方向)に沿って屈曲した形状になっている。つまり、最下端部分95bの上面95cが水平方向と平行をなしているのである。
【0074】
一方、支持部91には、固定部側回動軸94の直径よりやや大きい寸法の幅を有し、当該固定部側回動軸94と係合する支持部側案内溝96が形成されている。この支持部側案内溝96は、伏臥姿勢下で、支持部側回動軸93の上方において固定部側回動軸94との係合位置から下方(支持部91の突出端側。カバー12の上面部12bに直交する方向。)に向かって長く伸びた直線形状をなす。
【0075】
なお、図12は、カバー12の起立姿勢下における、原稿搬送前方左側の支持部91及び固定部92の連結部分の拡大図である。起立姿勢のカバー12から原稿搬送後方に突出した支持部91には、その突出先端側において支持部側回動軸93が原稿搬送前方の左側(固定部92側)に突設されている。また、この支持部91には、支持部側回動軸93に対して原稿搬送前方に支持部側案内溝96が水平方向(原稿搬送方向)に沿って形成されている。一方、原稿シュート部81に一体的に形成された固定部92は、その上部において原稿搬送前方の右側(支持部91側)に突出した固定部側回動軸94が上記支持部側案内溝96の原稿搬送後方端内に嵌入している。また、固定部93には、固定部側回動軸94に対して原稿搬送後方位置から傾斜しつつ下端部分が原稿搬送前方に向けて屈曲した固定部側案内溝92が形成されており、この固定部側案内溝92の最上端部分95aに支持部側回動軸93が嵌入されている。
【0076】
3.本実施形態の作用
本実施形態の作用について図7〜図11を参照しつつ説明する。
図8に示すようにカバー12が伏臥姿勢にある状態では、支持部側回動軸93は、固定部側案内溝95の最下端部分95bの上面95cに当接している。つまり、この当接によってカバー12の原稿搬送前方端12f側における浮き上がりを防止できる。特に本実施形態では、カバー12の内面12aには搬送ローラ74と押圧接触されるピンチローラ75が設けられているため、特に有効である。
【0077】
図10は回動途中のカバーを示す模式図である。同図に示すように、カバー12を開けるように徐々に回動させていくと、支持部側回動軸93が固定部側案内溝95によって上方に案内され、それとともに、固定部側回動軸94が支持部側案内溝96によって支持部側回動軸93に近づくように案内される。これにより、カバー12全体が上方に持ち上げられ、その原稿搬送前方端12fが原稿排出トレイ72の上面72aに干渉することなく回動し始める。つまり、上記2つの係合の協働により、カバー12の原稿搬送前方端12fが当初の高さよりも下方に下がることが規制されつつカバー12が回動されるのである。
図11は起立姿勢のカバーを示す模式図である。そして、同図に示すように、カバー12が完全に開いた起立姿勢になる(図7参照)と、支持部側回動軸93は固定部側案内溝95の最上端部分95aに当接する一方で、固定部側回動軸94が支持部側案内溝96の突出端側に当接し、カバー12のこれ以上の回動が規制される。閉めるときも、以上の逆の動作が行われ、やはりカバー12を、その原稿搬送前方端12fが原稿排出トレイ72の上面72aに干渉させることなく回動させて、図8に示すように、下端面12eが全長に亘って原稿排出トレイ72の上面72aに接触した伏臥姿勢にすることができる。なお、本実施形態において、「変位軌跡面」とは、図9〜図11において原稿搬送方向に直交する紙面奥側の方向から見たとき、カバー12が伏臥姿勢と起立姿勢との間で変位する軌跡領域をいい、これらの図においては紙面と平行をなす面である。
【0078】
4.本実施形態の効果
(1)本実施形態によれば、上述したように、カバー12を開く際、支持部側回動軸93が固定部側案内溝95によって上方に案内され、固定部側回動軸94がカバー12の回動に伴って傾斜する支持部側案内溝96によって下方への移動が規制されつつ案内される。これにより、カバー12の原稿搬送前方端12fが伏臥姿勢時よりも下方に下がることがなく原稿排出トレイ72の上面72aとの干渉が防止され、しかもその開閉動作においてカバー12のガタツキも防止できる。従って、従来構成のようにカバー12の原稿搬送前方端12fに切り欠き部分を設ける必要がなく、カバー12の下端面12eを全長に亘って原稿排出トレイ72の上面72aに接触させた状態で伏臥姿勢にすることができ、デザイン性向上をも図ることができる。
【0079】
(2)また、組をなす固定部92と支持部91とが接触するように隣接配置され、互いに各回動軸(固定部側回動軸94、支持部側回動軸93)が案内溝(支持部側案内溝96、固定部側案内穴95)に係合する構成であるから、回動軸方向(原稿搬送方向に直交する方向)のずれを規制できる。
(3)更に、伏臥姿勢下では、そのカバー12の伏臥方向に沿った固定部側案内溝95の最下端部分95bの上面95cと、支持部側回動軸93との当接により上下方向の移動が規制される。これにより、カバー12の内面12aに設けたピンチローラ75を搬送ローラ74に対してしっかりと押圧させた状態にすることができる。更に、このとき、支持部側回動軸93は、最下端部分95bの下面とも係合しているから、カバー12の上下方向の移動が規制できる。
【0080】
(4)ヒンジ部90は、カバー12の両端にそれぞれ設けた構成であるから、カバー12を安定的に開閉することができる。
(5)支持部91及び支持部側回動軸93はカバー12に一体的に設けられているから、製造コストの低減、組み立て工程の簡略化等を図ることができる。
【0081】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本実施形態では、固定部側案内溝95、支持部側案内溝96は支持部91、固定部92に対してそれぞれ貫通形成された構成であったが、これに限らず、有底の溝であってもよい。また、固定部側案内溝95については、支持部側回動軸93と係合し、カバー12が伏臥姿勢から起立姿勢に変位するに従って、その支持部側回動軸93を原稿排出トレイ72から離間する方向に案内するものであれば、必ずしも溝である必要はなく、案内穴(貫通穴でも有底穴でもよい)であってもよい。また、支持部側案内溝96についても、固定部側回動軸94と係合し、カバーが伏臥姿勢から起立姿勢に変位するに従って、その固定部側回動軸94を支持部側回動軸93に近づけるように案内するものであれば必ずしも溝である必要はなく、案内穴(貫通穴でも有底穴でもよい)であってもよい。
【0082】
(2)上記実施形態において、伏臥姿勢下で、固定部側回動軸94が支持部側案内溝96の最上端部分と当接する構成とすれば、カバーの上下方向の移動を更に強固に規制することができる。
【0083】
(3)上記実施形態に対して、1対の固定部92,92が、各支持部91の対向面にそれぞれ接触するように設けた構成であってもよい。
【0084】
(4)また、例えば図9において符号(110)は、第1規制部に相当する規制凸部であり、これは、固定部側案内溝95の最下端部分95bの手前に形成され他の部分より幅狭としている。そして、規制凸部(110)は、伏臥姿勢下において支持部側回動軸93に接触し、カバー12を伏臥姿勢に仮保持することができる。
【0085】
(5)また、例えば図11において符号(111)は、第2規制部に相当する規制凸部であり、これは、固定部側案内溝95の最上端部分95aの下側に形成され他の部分より幅狭としている。そして、規制凸部(111)は、起立姿勢下において支持部側回動軸93に接触し、カバー12を起立姿勢に仮保持することができる。
【0086】
(6)本実施形態では、カバー12の連結部分に本発明のヒンジ装置を適用した例を説明したが、これに限らず、例えば読取ユニット3と画像形成ユニット2との連結部分、ADF5と画像読取装置4との連結部分などに適用しても同様の効果を得ることができる。また、他の装置についても本体に対して伏臥姿勢と起立姿勢との間で回動可能に設けられる回動部材と当該本体との連結部分について適用することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機の外観を示す斜視図
【図2】読取ユニットを開いた状態を示す複合機の斜視図
【図3】ADFを開いた状態を示す複合機の斜視図
【図4】複合機の要部側断面図
【図5】読取部の内部構成を示した簡略図
【図6】ADF部分を示した斜視図
【図7】カバーを開けた状態のADFの前面図
【図8】カバーを閉じた状態のADFの前面図
【図9】伏臥姿勢のカバーを示す模式図
【図10】回動途中のカバーを示す模式図
【図11】起立姿勢のカバーを示す模式図
【図12】原稿搬送前方左側の支持部及び固定部の連結部分の拡大図
【符号の説明】
【0088】
1…複合機(画像形成装置)
2…画像形成ユニット
3…読取ユニット
4…画像読取装置
5…ADF(自動原稿搬送装置)
10…原稿トレイ(原稿配置部)
11…原稿搬送部
12…カバー(回動部材)
12e…下端面(対向面)
70…読取部
72…原稿排出トレイ(本体)
72a…上面(本体の対向部)
74…搬送ローラ
75…ピンチローラ
90…ヒンジ部(ヒンジ装置)
91…支持部(支持部対)
92…固定部(固定部対)
93…支持部側回動軸
94…固定部側回動軸
95…固定部側案内溝(固定部側案内穴)
95c…上面(係合する面)
96…支持部側案内溝(支持部側案内穴)
M…原稿
W…用紙(被記録媒体)
110…規制凸部(第1規制部)
111…規制凸部(第2規制部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動部材を本体に対して伏臥した姿勢と起立した姿勢との間で変位可能となるように前記本体と前記回動部材の一端側とを回動可能に連結するヒンジ装置であって、
前記本体に固定される固定部と、
前記回動部材を支持する支持部と、
前記支持部に設けられ、前記回動部材が通過する変位軌跡面に直交する直交方向に沿って延びる支持部側回動軸と、
前記固定部に設けられ、前記直交方向に沿って延びる固定部側回動軸と、を備え、
前記固定部には、前記支持部側回動軸と係合し、前記回動部材が前記伏臥した姿勢から前記起立した姿勢に変位するに従って、当該支持部側回動軸を前記本体から離間する方向に案内する固定部側案内穴が形成され、
前記支持部には、前記支持部側回動軸と前記固定部側案内穴との係合位置に対して前記回動部材の一端側寄りの位置において前記固定部側回動軸と係合し、前記回動部材が前記伏臥した姿勢から前記起立した姿勢に変位するに従って、当該固定部側回動軸を前記支持部側回動軸に近づけるように案内する支持部側案内穴が形成されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記固定部側案内穴は、前記回動部材の回動方向に沿って曲がった弓なり状の案内溝であり、
前記支持部側案内穴は、前記回動部材が伏臥した姿勢にある状態で、前記支持部側回動軸の上方に位置し、かつ、当該回動部材と前記本体との対向方向に沿った直線状をなす案内溝であることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記固定部は互いに対をなす固定部対からなり、前記支持部は前記固定部対それぞれの対向面又はその裏面に隣接配置される支持部対からなり、
前記各支持部対の支持部側回動軸は、その支持部対に隣接配置される固定部対に向かって突出して当該固定部対の固定部側案内穴に係合し、
前記各固定部対の固定部側回動軸は、その固定部対に隣接配置される支持部対に向かって突出して当該支持部対の支持部側案内穴に係合する構成であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記固定部側案内穴は、前記回動部材が伏臥した姿勢の状態で前記支持部側回動軸と係合する面が、その伏臥した回動部材に沿った方向と平行をなしていることを特徴する請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項5】
前記固定部側回動軸は、前記回動部材が前記伏臥した姿勢にある状態で、前記支持部側案内穴のうち前記本体から離間した端部に当接することを特徴とする請求項4に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
前記固定部側案内穴及び前記支持部側案内穴のうち少なくともいずれか一方には、前記回動部材が伏臥した姿勢にある状態で、当該案内穴と係合する前記支持部側回動軸または前記固定部側回動軸の移動を規制する第1規制部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項7】
前記固定部側案内穴及び前記支持部側案内穴のうち少なくともいずれか一方には、前記回動部材が起立した姿勢にある状態で、当該案内穴と係合する前記支持部側回動軸または前記固定部側回動軸の移動を規制する第2規制部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のヒンジ装置。
【請求項8】
原稿が配置される原稿配置部と、当該原稿配置部に配置された原稿を搬送する原稿搬送部と、を有する自動原稿搬送装置において、
前記原稿搬送部は、前記原稿配置部の一端側に配され、それに配置された原稿に接触しつつ搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラを覆う形状をなすとともに、自動原稿搬送装置の本体に対して前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載のヒンジ装置を介して連結されるカバーと、
前記カバーに設けられ当該カバーが前記本体に対して伏臥した姿勢にある状態で、前記搬送ローラに押圧されるピンチローラと、を備え、
前記カバーは、前記伏臥した姿勢にある状態で前記本体と対向する対向面が当該本体の対向部の形状に沿った形状であることを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項9】
前記ヒンジ装置は、前記カバーのうちその変位軌跡面に直交する直交方向における両端にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項8に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項10】
前記カバーと、前記支持部と、前記支持部側回動軸とが一体成形されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の自動原稿搬送装置。
【請求項11】
前記請求項8〜請求項10のいずれかに記載の自動原稿搬送装置と、当該自動原稿搬送装置によって搬送された原稿の画像を読み取る読取部を有する画像読取装置と、を備える読取ユニット。
【請求項12】
前記請求項11に記載の読取ユニットと、その読取ユニットにて読み取られた原稿画像を被記録媒体に画像形成する画像形成ユニットと、を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−118613(P2006−118613A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307347(P2004−307347)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】