説明

ビタミンB1類含有水性製剤の安定化方法

【課題】 ビタミンB1類含有水性製剤を長期にわたって安定に保つことのできる改良された、ビタミンB1類含有水性製剤の安定化方法の提供。
【解決手段】 ビタミンB1類含有水性製剤を気体透過性の一次容器に充填し、それを脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層又はアルミニウム箔層を有する気体難透過性フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にして安定化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビタミンB1類を含有する水性製剤の安定化方法に関する。更に詳しくは、本発明は、ビタミンB1類を含有する水性製剤をビタミンB1類の分解や変質を防止しながら長期にわたって安定に保つために、ビタミンB1類含有水性製剤を一次容器に充填した後に、脱酸素剤と共に特定の二次容器に収容して安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンB1を含有する水性製剤は、健康飲料、目薬、注射剤などとして広く使用されている。中でも高カロリー輸液療法では、高濃度のブドウ糖輸液剤を使用するため、投与されたブドウ糖が効率よくエネルギーに変換されて利用されるように、一般にビタミンB1が同時に投与される。その際に、ビタミンB1は、投与される前のブドウ糖輸液剤に混注することが通常の操作として行われている。これは、高カロリー輸液療法の実施中にビタミンB1が欠乏すると、投与されたブドウ糖のエネルギーへの変換が十分に行われなくなり、乳酸の生成および蓄積を生じてアシドーシスを誘発し、呼吸困難などの重篤な副作用を引き起こし易いことによる。
【0003】
ビタミンB1類は水性製剤の形態であると、光、酸素、熱、pH等の影響を受けて容易に分解してしまうため、従来から使用されているビタミンB1製剤の多くは、凍結乾燥されたバイアル入り製剤であった。また、ビタミンB1を水性製剤の形態で用いる場合は、実質的に気体透過性のないガラス製容器に充填して用いられてきた。
【0004】
また、近年、高カロリー輸液療法の実施時に、ブドウ糖輸液剤にビタミンB1類を混注する繁雑さを解消し、ビタミンB1類の混注忘れを防止するために、ビタミンB1類を配合しつつ安定化を図った高カロリー輸液剤の研究が行われるようになっている。例えば、特許文献1には、亜硫酸イオンを含まないアミノ酸輸液と糖輸液のどちらか一方にビタミンB1を配合し、それらの2液を別の室に封入した用時混合型輸液の輸液剤が開示されている。また、特許文献2には、ブドウ糖とビタミンB1を含むpH3.5〜5.0の輸液と、アミノ酸、電解質および安定剤を含む輸液を別の室に封入した2室容器入り輸液剤が開示されている。さらに、特許文献3には、還元糖輸液とアミノ酸輸液を2室に分けて収納した輸液剤において、亜硫酸塩を含まない還元糖輸液にビタミンB1をアミノ酸輸液にビタミンB2およびビタミンCを配合した輸液剤が開示されている。
また、上記した従来技術とは別に、特許文献4には、ビタミンB1を含有する水性製剤にリン酸または塩酸を配合してビタミンB1を安定化することが記載されている。さらに、特許文献5には、ビタミンB1を含有する水性製剤にアラニン、リジン及びプロリンを配合してビタミンB1を安定化することが記載されている。
【0005】
上記した従来技術によって、ビタミンB1類の安定性は向上するが、未だ長期安定性の点では十分ではなく、その改良が求められている。上記した従来技術は、いずれも、ビタミンB1を含有する液剤の成分面での改良、またはビタミンB1を含有する液剤と他の液剤との分離保存形態についての改良であり、ビタミンB1類を含有する水性製剤自体の全体的な包装形態についての改良を意図したものではない。
【0006】
更に、ビタミンB1類は水溶液中では安定でないため、ビタミンB1類を含有する水性製剤の調製に当たっては、分解して失われるビタミンB1類を見込んで、ビタミンB1類を必要量よりも過剰に配合しているのが一般的な状況であり、コストの上昇および品質管理面での繁雑さを招いていた。ビタミンB1類の水溶液中での安定性が改善できれば、水性製剤の調製時にビタミンB1類を必要な量だけ配合すればすむようになり、コストの上昇および製品管理の繁雑さを防止することができる。
【特許文献1】特開平8−143459号公報
【特許文献2】特開平11−35471号公報
【特許文献3】特開平10−203959号公報
【特許文献4】特開平10−67660号公報
【特許文献5】特開平11−35467号公報
【特許文献6】特許第2675075号公報
【特許文献7】特開2001−261579号公報
【特許文献8】特公平1−16502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ビタミンB1類を含有する水性製剤を、長期にわたって安定に維持するためのビタミンB1類含有水性製剤の安定化方法を提供することである。特に、本発明の主たる目的は、ビタミンB1類を含有する水性製剤に対する光、酸素等の影響を防止して、ビタミンB1類を含有する水性製剤を長期にわたって安定に保つことのできる、ビタミンB1類を含有する水性製剤の改良された安定化方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、保存時のビタミンB1類の減少を見込んで過剰量のビタミンB1類を配合する必要がなく、必要な量だけのビタミンB1類を含有すればよい、ビタミンB1類含有水性製剤の安定化方法を提供することである。
さらに、本発明の目的は、ビタミンB1類を含有する水性製剤と、アミノ酸を含有する水性製剤または脂溶性ビタミンを含有する水性製剤とを、混合可能に多室型の容器に充填し、それを長期にわたって安定に維持するための、多室型の容器入り水性製剤の改良された安定化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明者らが種々検討を重ねた結果、ビタミンB1類を含有する水性製剤を気体透過性の一次容器に充填した後、それを脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムからなる特定の二次容器内に封入して二重包装すると、水性製剤中のビタミンB1類が長期にわたって安定に保たれることを見出した。
さらに、本発明者らは、上記二重包装されたビタミンB1類を含有する水性製剤中にブドウ糖を配合しても、ビタミンB1類が該水性製剤中でやはり長期にわたって安定に保たれることを見出した。
【0009】
さらに、本発明者らは、ビタミンB1類を充填した上記一次容器において、一次容器を連通可能な隔離手段によって2室以上に区画した多室型の容器とし、その第1室にビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤を充填し且つ第2室にアミノ酸を含有する水性製剤を充填し、それを脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にすると、それにより得られる多液型の水性製剤入り容器は、長期にわたって安定に保存でき、しかも用時に該第1室と第2室との間の隔離手段を連通させて、第1室内の水性製剤と第2室内の水性製剤を混合するだけで、患者にそのまま極めて簡単に且つ雑菌などによって汚染されることなく衛生的に投与できる高カロリー栄養輸液が得られることを見出した。
また、本発明者らは、この二重包装容器において、一次容器の第1室に充填する水性製剤中に更にビタミンB6やニコチン酸アミドなどのビタミン類、電解質を含有させ、第2室に充填する水性製剤中にビタミンB2、ビタミンCおよびパンテノールなどのビタミン類を含有させ、そして第3室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの脂溶性ビタミン類と、ビタミンB12、ビオチンおよび葉酸などを含有する水性製剤を充填すると、高カロリーで且つ必要なビタミン類やアミノ酸を含有する栄養輸液が得られることを見出した。
【0010】
そして、本発明者らは、ビタミンB1類を充填した上記一次容器において、一次容器を連通可能な隔離手段によって2室以上に区画した多室型の容器とし、その第1室にビタミンB1類を含有する水性製剤を充填し且つ第2室に脂溶性ビタミン類を含有する水性製剤を充填し、それを脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する気体難透過性フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にすると、ビタミンB1類の分解や変質を生ずることなく、長期にわたって安定に保存でき、しかも用時に該第1室と第2室との間の隔離手段を連通させて、第1室内のビタミンB1類を含有する水性製剤と第2室内の脂溶性ビタミンを含有する水性製剤を混合することによって、必須ビタミン類を含む混合ビタミン液が簡単に且つ雑菌などに汚染されることなく衛生的に得られることを見出した。
【0011】
そして、本発明者らは、上記において、二次容器を酸素透過量が特定値以下の気体難透過性フィルムから形成すると、ビタミンB1類を含有する水性製剤を充填した一次容器を加熱滅菌しても、ビタミンB1類の安定性が充分に保たれることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) ビタミンB1類を含有する水性製剤を充填した気体透過性の一次容器を、脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムからなる二次容器に封入することを特徴とする、ビタミンB1類を含有する水性製剤の安定化方法である。
そして、本発明は、
(2) ビタミンB1類を含有する水性製剤が、さらにブドウ糖を含有する前記(1)の安定化方法である。
【0013】
さらに、本発明は、
(3) 一次容器が、1室型の容器であって、該室にビタミンB1類またはビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤を充填する前記した(1)または(2)の安定化方法;
(4) 一次容器が、連通可能な隔離手段によって少なくとも2室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器であって、一次容器の第1室にビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤を充填し、且つ第2室にアミノ酸を含有する水性製剤を充填する前記した(2)の安定化方法;
(5) 一次容器が、連通可能な隔離手段によって3室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器であって、一次容器の第1室にビタミンB1類、ブドウ糖、ビタミンB6、ニコチン酸アミド並びに電解質としてナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、塩素および亜鉛の各イオンを含有する水性製剤を充填し、第2室にアミノ酸、ビタミンB2、ビタミンCおよびパンテノールを含有する水性製剤を充填し、且つ第3室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、ビオチンおよび葉酸を含有する水性製剤を充填する前記した(4)の安定化方法;および、
(6) 一次容器が、連通可能な隔離手段によって少なくとも2室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器であって、一次容器の第1室にビタミンB1類を含有する水性製剤を充填し、且つ第2室に脂溶性ビタミン類を含有する水性製剤を充填する前記した(1)の安定化方法;
である。
【0014】
そして、本発明は、
(7) 一次容器を、水性製剤を充填した状態で加熱滅菌する前記した(1)〜(6)のいずれかの安定化方法;および、
(8) 二次容器の酸素透過量が、23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定したときに1.0ml/m2・day以下である前記(1)〜(7)のいずれかの安定化方法;
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気体透過性の一次容器に充填したビタミンB1類含有水性製剤を、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する気体難透過性フィルムからなる二次容器に脱酸素剤と共に封入することによって、光、酸素などによる悪影響を排除して、長期にわたって安定なビタミンB1類を含有する水性製剤を提供することができる。
さらに、本発明では、ビタミンB1を含有する水性製剤の安定性が向上するので、ビタミンB1含有水性製剤を調製する際に、ビタミンB1類の分解を見込んで過量に配合する必要がなくなり、必要量のビタミンB1類のみを配合すればよいので、ビタミンB1類を含有する水性製剤の製品管理が容易になり、しかもコストを低減することができ、安価なビタミンB1類含有水性製剤を提供することができる。
【0016】
また、本発明の安定化方法において、一次容器を多室型の一次容器として、その第1室にビタミンB1類含有水性製剤を充填し、第2室以降に他の栄養成分を含有する水性製剤を充填して、それを脱酸素剤と共に二次容器に収容した場合には、第1室に充填したビタミンB1類含有水性製剤中でのビタミンB1類が安定であることにより、ビタミンB1類を含めて、一次容器の第1室および第2室以降に充填する水性製剤における各栄養成分の配合量の調整を簡単に且つ円滑に行うことができる。しかも、用時に第1室と第2室以降との間の隔離手段を連通させて、第1室内の水性製剤と第2室以降の室内の水性製剤を混合することによって、所定の栄養液を、簡単に且つ雑菌などで汚染することなく衛生的に得ることができる。
【0017】
特に、多室型の一次容器の第1室にビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤を充填し且つ第2室にアミノ酸を含有する水性製剤を充填し、それを脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する気体難透過性フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器とする本発明の安定化方法による場合は、長期にわたって安定に保存でき、しかも用時に該第1室と第2室との間の隔離手段を連通させて、第1室内の水性製剤と第2室内の水性製剤を混合するだけで、患者にそのまま極めて簡単に且つ衛生的に投与できる高カロリー栄養輸液を得ることができる。
【0018】
また、多室型の一次容器の第1室にビタミンB1類含有水性製剤を充填し且つ第2室に脂溶性ビタミン類含有水性製剤を充填し、それを脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する気体難透過性フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器とする本発明の安定化方法による場合は、ビタミンB1類の分解や変質を生ずることなく、長期にわたって安定に保存でき、しかも用時に第1室と第2室との間の隔離手段を連通させて、第1室内のビタミンB1類含有水性製剤と第2室内の脂溶性ビタミン含有水性製剤を混合することによって、必須ビタミン類を含む混合ビタミン液(特に総合ビタミン液)を簡単に且つ衛生的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するビタミンB1類としては、従来から用いられているビタミンB1類の何れもが使用でき、例えば、チアミン;プロスルチアミン、アクトチアミン、チアミンジスルフィド、フルスルチアミンなどのチアミン誘導体;塩酸チアミン、硝酸チアミンなどのチアミンの塩類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも前記したチアミン誘導体および/またはチアミンの塩類が好ましく用いられる。
【0020】
本発明で用いる「ビタミンB1類を含有する水性製剤」(以下「ビタミンB1類含有水性製剤」ということがある)とは、ビタミンB1類を含有する水溶液からなる製剤を意味し、具体例としては、健康維持や栄養補給のために飲まれる飲料、目薬、ビタミン注射液、ビタミン配合輸液剤などを挙げることができる。
ビタミンB1類含有水性製剤におけるビタミンB1類の含有量、ビタミンB1類含有水性製剤の組成などは、ビタミンB1類含有水性製剤の種類、すなわちビタミンB1類含有水性製剤が飲料、目薬、ビタミン注射液、ビタミンB1類配合輸液剤などのいずれであるかなどに応じて適宜調整することができる。
一般的には、ビタミンB1類含有水性製剤1リットル中のビタミンB1類の含有量は0.7〜700mgであることが好ましい。
【0021】
ビタミンB1類含有水性製剤は、本発明の方法による二重包装容器の種類や用途などに応じて、ビタミンB1類のみを含有していてもよいし、またはビタミンB1類の安定性を損なわない他の栄養成分を含有していてもよい。ビタミンB1類含有水性製剤が含有し得る他の栄養成分としては、例えば、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸アミド、パンテノール、アスコルビン酸などのビタミン類、ブドウ糖、マルトース、フルクトース、キシリトールなどを挙げることができ、ビタミンB1類含有水性製剤はこれらの栄養成分の1種または2種以上を含有することができる。
【0022】
特に、本発明の安定化方法では、一次容器内に充填した水性製剤中のビタミンB1類が長期にわたって安定に保たれるので、ビタミンB1類含有水性製剤中にブドウ糖を含有させることができ、それによって、ブドウ糖の消化・エネルギーへの変換を促進するビタミンB1類を含有する長期安定性に優れる高カロリーブドウ糖輸液を調製することができる。ブドウ糖を含有するビタミンB1類含有水性製剤(ブドウ糖輸液)では、水性製剤1リットル当たり、ブドウ糖の含有量が14〜700g、特に50〜500gで、ビタミンB1類の含有量が0.7〜70mg、特に2〜30mgとするのが好ましい。
【0023】
また、本発明の安定化方法におけるビタミンB1類含有水性製剤は、上記した栄養成分の他に、水性製剤の種類などに応じて、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、酢酸カリウム、L−乳酸ナトリウム、塩化マグネシウム、グルコン酸カルシウム、塩化カリウムなどの電解質、微量元素として硫酸亜鉛などを含有することができる。特に、ビタミンB1類およびブドウ糖を含有するビタミンB1類含有水性製剤では前記した電解質を含有することが好ましい。
【0024】
本発明におけるビタミンB1類含有水性製剤のpHは、ブドウ糖の含有の有無に拘わらず、2〜7であることが、ビタミンB1類含有水性製剤の長期安定性、などの点から好ましく、3〜5であることがより好ましい。ビタミンB1類含有水性製剤を前記したpHへの調整は、塩酸などの無機酸、コハク酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸の1種または2種以上を用いて行うことができる。
【0025】
ビタミンB1類含有水性製剤を充填する一次容器の形状、構造、寸法、肉厚などは特に制限されず、本発明の安定化方法による二重包装容器の種類、用途などに応じて決めることができる。例えば、一次容器は、袋状(バッグ状)、ボトル状、蓋と底を有する筒状などの形状にすることができる。
本発明の安定化方法における一次容器は、ビタミンB1類またはビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤を充填する1個の室のみを有する1室型の容器であってもよいし、或いはビタミンB1類またはビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤を充填した第1室と、該第1室と連通可能な隔離手段によって隔離された、他の水性製剤を充填した第2室、またはそれよりも多くの室を有する多室型の容器であってもよい。
【0026】
特に、本発明は、
A・一次容器として1室型の容器を用い、該室にビタミンB1類またはビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤を充填し、その一次容器を脱酸素剤と共に二次容器に封入して二重包装容器にして安定化する方法(以下これを「安定化方法A」ということがある);
B・一次容器として、連通可能な隔離手段によって少なくとも2室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器を用い、一次容器の第1室にビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤を充填し、且つ第2室にアミノ酸を含有する水性製剤を充填し、その一次容器を脱酸素剤と共に二次容器に封入して二重包装容器にして安定化する方法(以下これを「安定化方法B」ということがある);および
C・一次容器として、連通可能な隔離手段によって少なくとも2室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器を用い、一次容器の第1室にビタミンB1類を含有する水性製剤を充填し、且つ第2室に脂溶性ビタミン類を含有する水性製剤を充填し、その一次容器を脱酸素剤と共に二次容器に封入して二重包装容器にして安定化する方法(以下これを「安定化方法C」ということがある);
を具体的な態様として包含する。
【0027】
本発明で用いる一次容器は、ビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤を充填してなる第1室とアミノ酸を含有する水性製剤を充填してなる第2室からなる2室型の容器であっても、または前記した2室以外に他の液剤を充填してなる第3室などを有する3室以上の多室型の容器であってもよい。
安定化方法Bにおける一次容器の具体的な態様としては、一次容器として連通可能な隔離手段によって3室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器を用い、一次容器の第1室にビタミンB1類、ブドウ糖、ビタミンB6、ニコチン酸アミド並びに電解質としてナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、塩素および亜鉛の各イオンを含有する水性製剤を充填し、第2室にアミノ酸、ビタミンB2、ビタミンCおよびパンテノールを含有する水性製剤を充填し、且つ第3室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、ビオチンおよび葉酸を含有する水性製剤を充填する方法などを挙げることができる。
また、本発明の安定化方法Cにおける一次容器は、ビタミンB1類を含有する水性製剤を充填してなる第1室と脂溶性ビタミンを含有する水性製剤を充填してなる第2室からなる2室型の容器であっても、または前記した2室以外に他の液剤を充填してなる第3室などを有する3室以上の多室型の容器であってもよい。
【0028】
本発明の安定化方法Aにより安定化された二重包装容器は、ブドウ糖を含有する水性製剤に外部からビタミンB1類を別途供給するためのビタミンB1類の長期保存容器として有用である。
また、本発明の安定化方法Bによる二重包装容器では、その使用時に一次容器を二次容器から取り出して、外部から押圧などによる力を加えることによって、2室または3室以上を区画していた隔離手段が剥離、破壊などによって解除されて2室または3室以上の室が連通し、第1室に充填されていたビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤、第2室に充填されていたアミノ酸を含有する水性製剤、および場合により第3室に充填されていた脂溶性ビタミンを含有する水性製剤やその他の水性製剤が混合されて、ビタミンB1類、ブドウ糖、アミノ酸および場合により脂溶性ビタミン、他の水溶性ビタミン類、電解質などの他の成分を含有する経管総合栄養液などを衛生的に且つ簡単に得ることができる。
そして、本発明の安定化方法Cによる二重包装容器では、その使用時に一次容器を二次容器から取り出して、外部から押圧などによる力を加えることによって、2室を区画していた隔離手段が剥離、破壊などによって解除されて2室が連通し、第1室に充填されていたビタミンB1類を含有する水性製剤と、第2室に充填されていた脂溶性ビタミンを含有する水性製剤が混合されて、複数のビタミン類を含有するビタミン液(特に総合ビタミン液)を衛生的に且つ簡単に得ることができる。
【0029】
2種類以上の液剤を、連通可能な隔離手段によって区画された複数の室にそれぞれ個別に充填し、用時に該隔離手段を連通させて2種類以上の液剤を混合して使用する、可撓性材料製の多室型容器は従来から色々知られており、本発明では一次容器としてそのような従来既知のいずれのものをも使用することができる。
特に、本発明では、例えば特許文献6に記載されているような、熱融着性のシート材料から袋状の容器を形成し、容器の周縁部分は剥離しないように高温で強固にヒートシールし、一方複数の室を区画する隔離手段(隔離部分)はそれよりも低温でヒートシールして、用時に外部から袋を押圧することによって該隔離部分のヒートシールが解除されて複数の室に充填した液剤が混合されるようにした輸液容器が本発明の二重包装容器における一次容器として好ましく用いられる。
【0030】
本発明で用いる一次容器は、気体透過性で液体非透過性の材料からなる容器であればいずれもよいが、気体透過性で液体を通さない高分子材料から形成されていることが好ましく、特に二重包装容器Bおよび二重包装容器Cなどに用いられる多室型の一次容器は、気体透過性で液体を通さない可撓性の高分子材料から形成されていることが好ましい。
一次容器を形成する気体透過性で液体非透過性の高分子材料の好ましい例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の混合物、ポリプロピレン系樹脂とスチレン系エラストマー及び/またはオレフィン系エラストマーの混合物、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。一次容器は、前記した高分子材料の単層からなっていても、または2層以上よりなる多層構造を有していてもよい。
【0031】
特に、一次容器が多室型の容器の場合は、ポリプロピレン系樹脂とスチレン系エラストマーおよび/またはオレフィン系エラストマーの混合物、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の混合物などのような2種類以上の樹脂の混合物を用いて形成されていることが好ましい。前記した混合物からなるシート状材料を上下に重ねて、容器の周縁部となる部分を高温でヒートシールし、複数の室に区画する隔離手段部分をそれよりも低温でヒートシールすると、周縁部は強固にヒートシールされ、隔離手段が外力を加えることによってヒートシールが容易に解除されて連通し得る、多室型の一次容器を簡単に製造することができる。しかも、かかる一次容器では、低温でのヒートシールにより形成された隔離手段の機能の安定性にも優れている。
【0032】
一次容器の製法は特に制限されず、一次容器を形成する材料の種類、一次容器の形状などに応じて適当な製法を採用することができ、例えば、上記した高分子材料を用いて、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、インフレーション成形法、射出成形法、注型法、シートを作製し周囲を熱等で融着する方法、筒状体を作製し蓋と底付けを行う方法などを採用して製造することができる。
特に、多室型の一次容器は、例えば、ブロー成形法、インフレーション成形法などによって容器を製造し、該容器の隔離手段となる部分を後から連通可能なようにヒートシールする方法、シートを作製してそれを2枚重ね、その周囲を高温でヒートシールし、隔離手段となる部分を低温でヒートシールする方法などによって製造することができる。
【0033】
本発明の安定化方法Bでは、多室型の一次容器の第1室には、ビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤が充填され、第2室にはアミノ酸を含有する水性製剤が充填されるが、第1室に充填される水性製剤に含有させるビタミンB1類としては、上記したビタミンB1類が用いられる。
安定化方法Bでは、一次容器の第1室に充填される水性製剤は、栄養成分としてビタミンB1類とブドウ糖のみを含有していてもよいし、またはビタミンB1類およびブドウ糖の安定性を損なわない他の栄養成分を含有していてもよい。一次容器の第1室に充填される該水性製剤は、ビタミンB1類およびブドウ糖と共に、ビタミンB6、ニコチン酸アミドなどのビタミン類などを含有することが好ましい。
安定化方法Bでは、一次容器の第1室に充填されるビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤のpHは、特に3〜5の範囲であることが、ビタミンB1類の長期安定性などの点から好ましい。
【0034】
安定化方法Bにおいて、一次容器の第2室に充填されるアミノ酸を含有する水性製剤としては、従来から栄養補給を目的として使用されている必須アミノ酸および非必須アミノ酸を含有するアミノ酸輸液剤が好適に用いられる。また、第2室に充填されるアミノ酸含有水性製剤は、ビタミンC、ビタミンB2、パンテノールなどの水溶性ビタミンを含有しているのが好ましい。
【0035】
さらに、安定化方法Bにおいて、一次容器に第3室を形成しておいて、該第3室にビタミンA、E、D、K等の脂溶性ビタミン、ビタミンB12、ビオチン、葉酸等を含有する水性製剤を充填しておくことが好ましい。
安定化方法Bにおける一次容器を、上記のような各成分を含有する3種類の水性製剤を第1〜3室のそれぞれに充填した3室型の容器とすることによって、その使用時に各室間の隔離手段を解除して第1〜3室内に充填した水性製剤を混合するだけで、必要な栄養成分の全てが含まれた完全栄養輸液剤を極めて簡単に且つ衛生的に調製することができる。
また、安定化方法Bでは、一次容器の第1室および/または第2室には、高カロリー輸液療法で使用される上記したような各種の電解質、亜鉛、銅、マンガン、鉄、クロムなどの微量元素を含有させてもよい。
【0036】
安定化方法Bでは、一次容器の第1室に充填される水性製剤におけるビタミンB1類およびブドウ糖の含有量、および第2室に充填されるアミノ酸含有水性製剤におけるアミノ酸の含有量は、一般に、一次容器の複数の室に充填されていた水性製剤を混合した後の混合液1000ml当たり、ブドウ糖が50〜500g、ビタミンB1類が1〜50mg、アミノ酸が10〜55gとなる量であることが好ましい。また、ビタミンB2も1〜10mg程度含まれるようにすることが好ましい。さらに、その他のビタミンについては、高カロリー輸液療法で一般に使用される量を配合することができる。
【0037】
本発明の安定化方法Cでは、多室型の一次容器の第1室には、ビタミンB1類を含有する水性製剤が充填され、第2室には脂溶性ビタミンを含有する水性製剤が充填されている。第1室に充填される水性製剤に含有させるビタミンB1類としては、上記したビタミンB1類が用いられる。
安定化方法Cにおいて、一次容器の第1室に充填される水性製剤は、栄養成分としてビタミンB1類のみを含有していてもよいし、またはビタミンB1類と共に、例えば、ビタミンB2、ビタミンB6、ニコチン酸アミド等のビタミン類などを含有することができる。
安定化方法Cにおいて、一次容器の第1室に充填されるビタミンB1類含有水性製剤のpHは、特に3〜5の範囲であることが、ビタミンB1類の長期安定性などの点から好ましい。
【0038】
安定化方法Cにおいて、一次容器の第2室に充填される脂溶性ビタミンを含有する水性製剤としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミンの1種または2種以上を含有する水性製剤を挙げることができ、特にビタミンA、ビタミンDおよびビタミンEの3種を少なくとも含有するか、或いはビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKの4種を少なくとも含有することが望ましい。
その際に、ビタミンAとしてはビタミンA(レチノール)活性を有するものであればいずれでもよく、具体例としてはパルミチン酸レチノール、酢酸レチノールなどを挙げることができる。
ビタミンDとしてはビタミンD活性を有するものであればいずれでもよく、具体例としてはビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、これらの活性型などを挙げることができる。
ビタミンEとしてはビタミンE活性を有するものであればいずれでもよく、具体例としては酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、dl−α−トコフェロールなどを挙げることができる。
また、ビタミンKとしてはビタミンK活性を有するものであればいずれでもよく、具体例としてはフィトナジオン、メナテトレノン、メナジオン、これらの誘導体などを挙げることができる。
【0039】
安定化方法Cにおいて、一次容器の第2室に充填される脂溶性ビタミン含有水性製剤としては、脂溶性ビタミンが十分に乳化または可溶化されているものを用いることが好ましい。特に、安定化方法Cにおいて、一次容器の第2室には、本発明者らが先に発明した特許文献7の明細書に記載されている、界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類を用い、安定化剤として糖アルコールおよびグリセリンから選ばれる少なくとも1種を用いて可溶化した脂溶性ビタミン可溶化液などが好ましく用いられる。
【0040】
安定化方法Cにおいて、一次容器の第1室に充填されているビタミンB1類含有水性製剤および第2室に充填されている脂溶性ビタミン含有水性製剤における各ビタミンの含有量は、特に制限されず、安定化方法Cにより得られる二重包装容器の用途などに応じて決めることができる。一般には、成人が1日に必要なビタミン摂取量は、ビタミンAが2000〜5000IU、ビタミンDが200〜1000IU、ビタミンEが2〜20mg、ビタミンKが0.2〜10mg、ビタミンB1が3〜100mgとされているので、前記量を考慮して決めればよい。
【0041】
安定化方法Cにおいて、一次容器の第2室に充填される脂溶性ビタミン含有水性製剤のpHは5.0〜7.0、特に5.5〜6.5であることが、人体に対する安全性、液中での脂溶性ビタミンの可溶化性および安定性などの点から好ましい。脂溶性ビタミン含有水性製剤のpHを前記した範囲に調節するに当たっては、医薬品添加物として使用できる化合物であればいずれも使用でき、例えば、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、プロピオン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸などの有機酸、炭酸、硼酸、リン酸、硫酸、塩酸などの無機酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ性化合物などを用いてpH調節を行うことができる。
【0042】
安定化方法Cにおいて、一次容器の第2室に充填される脂溶性ビタミン含有水性製剤は、必要に応じて、水溶性ビタミン類(ビタミンC、ビタミンB12、葉酸など)、糖類、アミノ酸類、電解質成分などの他の成分の1種または2種以上を含有してもよい。
安定化方法Cにおいて、一次容器の第1室にビタミンB1類およびそれと共存可能なビタミンB2、ビタミンB6およびニコチン酸アミドなどを含有する水性製剤を充填し、第2室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKの脂溶性ビタミンと共にそれと共存可能なビタミンC、ビタミンB12、葉酸、ビオチンおよびパンテノールなどのビタミン類を含有する水性製剤を充填すると、第1室と第2室の隔離手段を解除して両水性製剤を混合してときに、人体に必要なビタミン類を含有する総合ビタミン液を得ることができる。
【0043】
ビタミンB1類含有水性製剤を充填した一次容器、またはビタミンB1類含有水性製剤と他の水性製剤を隔離して充填した一次容器は、加熱滅菌処理を行わずにそのまま脱酸素剤と共に二次容器に封入してもよい。しかしながら、加熱滅菌処理した後に二次容器に封入することが、衛生性、安全性などの点から好ましい。加熱滅菌処理は、一次容器にビタミンB1類含有水性製剤、またはビタミンB1類と他の水性製剤を充填し、一次容器を密封した後に行うことが好ましい。
水性製剤を充填した一次容器の加熱滅菌処理は、高圧蒸気滅菌法、水浴滅菌法、スプレー滅菌法(シャワー菌滅法)などのいずれの方法で行ってもよく、そのうちでも高圧蒸気滅菌法が好ましく採用される。加熱滅菌処理に当たっては、日本薬局方に規定されている条件を採用してもよいし、またはビタミンB1類含有水性製剤の性質によって他の好適な条件を採用してもよい。
一次容器の加熱滅菌に当たって、例えば特許文献8に開示されているように、酸素を実質的に含まない飽和水蒸気を用いて滅菌すると、ビタミンおよびアミノ酸の滅菌時の変質・分解を防止することができ、望ましい。
【0044】
ビタミンB1類含有水性製剤またはビタミンB1類と他の水性製剤を充填した一次容器を、次に脱酸素剤と共に二次容器に封入することによって、ビタミンB1類含有水性製剤を安定化することができる。
脱酸素剤としては、使用上毒性などの問題がなく、酸素を効率的に吸収し雰囲気中の酸素を低減させるものであれば、いずれのものでも使用できる。脱酸素剤としては、鉄粉などの金属粉末、第一鉄塩、亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、ハロゲン化金属などの無機物を主体とするもの、アスコルビン酸、エリソルビン酸、それらの塩、ヒドロキノンやカテコールなどのポリフェノールなどの有機化合物を主体とするものなど種々のものが知られており、毒性がなく且つ酸素吸収性能に優れるものであればいずれも使用できる。また、脱酸素剤には酸素吸収のみを行うものと、酸素吸収と共に炭酸ガスの放出を行うものがあるが、本発明ではそれらのいずれもが使用できる。市販のものとしては、三菱瓦斯化学社製の“エージレス”(商品名)などが知られており、エージレスは本発明において好適に使用できる。また、二次容器を構成するフィルムとして、その内側に脱酸素機能を有するシートをラミネートしたものを使用してもよい。
【0045】
脱酸素剤の使用量は、二重包装容器の保存中に、一次容器内に充填されているビタミンB1類含有水性製剤またはビタミンB1類含有水性製剤と他の水性製剤中のビタミンB1類や他の成分が、酸素によって変質したり分解したりしないような低酸素濃度雰囲気を維持できる量であることが必要である。脱酸素剤の具体的な使用量は、二重包装容器内における酸素量、脱酸素剤の酸素吸収能などによって決めることができる。
【0046】
さらに、一次容器から蒸散した水分が二次容器内に結露して一次容器の外表面を濡らすことを防止するために、一次容器を脱酸素剤と共に二次容器に封入する際に、水分吸収材を一緒に封入することもできる。水分吸収材としては、シリカゲル、和紙、不織布、高分子吸収材などが使用できる。また、二次容器を形成するフィルムとして内側に吸水機能を有するシートをラミネートしたものを用いてもよい。
【0047】
本発明では、二次容器用としてアルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムからなる容器を使用することが必要である。
二次容器として、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有していない気体難透過性フィルム(例えば合成樹脂のみからなる積層フィルム)から形成した容器を用いると、一次容器に充填されたビタミンB1類含有水性製剤中のビタミンB1類の安定性が十分に保たれず、変質や分解を生ずる。
【0048】
二次容器を形成する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムとしては、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有し且つ気体難透過性のフィルムであればいずれも使用可能であるが、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を気体難透過性の高分子材料フィルムで挟んだ積層フィルムが気体難透過性、遮光性に優れ且つ機械的特性にも優れていることから好ましく用いられる。
二次容器を構成する遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムを形成する気体難透過性高分子材料としては、2軸延伸ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニリデンなどを挙げることができる。アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層が積層フィルムの内部に存在するようにして、前記した気体難透過性高分子材料よりなる1つの層または2層以上を、例えばポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体などの低融点の樹脂を接着剤として用いて熱融着して積層することによって、二次容器として好適に用い得る、遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムが得られる。その際に、気体難透過性の積層フィルムの一方の表面にポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体のような低融点重合体層を存在させると、遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムから二次容器を製造する際のヒートシール性に優れたものとなる。上記したような、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムを二次容器として用いることにより、光変性を生じるビタミンなどの安定性も確保され、これらの変質や分解を防ぐことができる。
【0049】
限定されるものではないが、本発明で好ましく用いられる二次容器用の遮光性で且つ気体難透過性のフィルムとしては、例えば、
(1)2軸延伸ポリアミド(OPA)/ポリエチレン(PE)/アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)/ポリエチレン(PE)よりなる層構造を有する積層フィルム;
(2)OPA/PE/アルミニウム蒸着PET/PEよりなる層構造を有する積層フィルム;
(3)OPA/PE/アルミニウム箔/PE/PEよりなる層構造を有する積層フィルム;
(4)OPA/PE/アルミニウム箔/PE/PET/PEよりなる層構造を有する積層フィルム;
(5)PET/PE/アルミニウム蒸着PET/PE/エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)/PEよりなる層構造を有する積層フィルム;
(6)ポリ塩化ビニリデン/PE/アルミニウム蒸着PET/PEよりなる層構造を有する積層フィルム;
(7)PET/アルミニウム蒸着エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)/PEよりなる層構造を有する積層フィルム;
などを挙げることができる。
【0050】
本発明の安定化方法による場合は、一次容器に充填されたビタミンB1類含有水性製剤中のビタミンB1類、さらには一次容器に充填されたアミノ酸、他のビタミン類などをより長期間にわたって安定に維持できる点から、二次容器を構成する気体難透過性フィルムの酸素透過量が、23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定したときに1.0ml/m2・day以下であることが好ましく、0.60ml/m2・day以下であることが好ましい。
また、二次容器を構成する気体難透過性フィルムにおけるアルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層の厚さは、ビタミンB1類や他の成分の変質および分解防止、二次容器を構成する気体難透過性フィルムの製造の容易性などの点から、アルミニウム蒸着層の場合は0.05〜1.5μm、アルミニウム箔層の場合は5〜15μmであることが好ましい。
【0051】
上記したアルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムを用いて熱融着などによって袋状の容器を作製し、その開口部からビタミンB1類含有水性製剤を充填した一次容器またはビタミンB1類含有水性製剤と他の水性製剤を隔離して充填した一次容器を、脱酸素剤と共に入れ、開口部を熱融着などによって封止することによって、二重包装容器にすることができる。
本発明の安定化方法は、二重包装容器の一次容器に充填されている水性製剤の種類、水性製剤中の成分の種類などに応じて、上記したように、健康維持や栄養補給のために飲まれる飲料、目薬、ビタミン注射液、医療用輸液などに有効に用いられる。

【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
なお、以下の実施例または比較例で用いた、二次容器用のフィルム(i)〜(v)の内容は次のとおりである。
【0053】
(i) 2軸延伸ナイロン(ON)(厚さ25μm)/ポリエチレン(PE)(厚さ15μm)/アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(Al−PET)(アルミニウム蒸着層厚さ0.1μm、PET厚さ12μm)/PE(厚さ50μm)よりなる遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルム[23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定した酸素透過度=0.55ml/m2・day]
【0054】
(ii) PET(厚さ15μm)/アルミニウム蒸着EVOH(アルミニウム蒸着層厚さ0.1μm、EVOH厚さ12μm)/PE(厚さ30μm)よりなる遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルム[23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定した酸素透過度=0.55ml/m2・day]
【0055】
(iii) 1軸延伸ポリプロピレン(CPP)(厚さ15μm)/ON・エチレン−ビニルアルコール系共重合体(EVOH)・ON(厚さ25μm)/PE(厚さ50μm)よりなる遮光性で且つ気体難透過性の着色した積層フィルム[23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定した酸素透過度=0.44ml/m2・day;着色料としてアンスラキノン系イエロー、キナクリドンマゼッダ、カーボンブラックを含有し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するインクで外表面を塗布してオレンジ色に着色して遮光性を付与した積層フィルム]
【0056】
(iv) ON(厚さ15μm)/EVOH(厚さ15μm)/超低密度ポリエチレン(LLDPE)(厚さ60μm)よりなる気体難透過性積層フィルム[23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定した酸素透過度=0.47ml/m2・day]
【0057】
(v) PET(厚さ12μm)/着色PE(着色料としてアンスラキノン系イエロー、キナクリドンマゼッダ、カーボンブラックを含有し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含有するPE)(厚さ20μm)/ナイロン(厚さ20μm)/EVOH(厚さ20μm)/LLDPE(厚さ60μm)よりなる着色した気体難透過性積層フィルム[23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定した酸素透過度=8.01ml/m2・day]
【0058】
なお、二次容器用の上記フィルム(i)〜(v)の酸素透過度は、23℃、90RH、101kPa下で、JIS−K7126 B法によって測定した。
【0059】
《実施例1》
(1)ビタミンB1およびブドウ糖を含有する水性製剤の調製:
下記の表1に記載した成分のうち、ブドウ糖と電解質を約60℃に加温した注射用蒸留水500mlに溶解し、室温まで冷却し、これに塩酸チアミンを加え溶解した。次いで塩酸およびコハク酸を用いてpH4.5に調製し、注射用蒸留水にて全量を700mlにし、0.22μmのメンブランフィルターで濾過して、下記の表1に示す成分組成を有する、ビタミンB1とブドウ糖を含有する水性製剤を調製した。
【0060】
【表1】

【0061】
(2)アミノ酸含有水性製剤の調製:
下記の表2に示すアミノ酸のうち、L−リジン亜硫酸塩およびL−システインリンゴ酸塩を除くアミノ酸を約80℃の注射用蒸留水300mlに溶解し、室温まで冷却した後、L−リジン亜硫酸塩およびL−システインリンゴ酸塩を加えて溶解した。次いでクエン酸およびコハク酸を用いてpH6.5に調製し、注射用蒸留水にて全量を400mlにし、0.22μmのメンブランフィルターで濾過して、下記の表2に示す成分組成を有するアミノ酸含有水性製剤を調製した。
【0062】
【表2】

【0063】
(3) ポリプロピレン系樹脂65質量部およびスチレン系エラストマー(JSR社製「ダイナロン」)35質量部の混合物からなる方形のシート(厚さ300μm)を2枚重ね、シートの上部中央と下部中央に水性製剤を充填するためのポリプロピレン樹脂製の短管を配置した状態で、方形シートの周縁部を130℃でヒートシールした。次いで、隔離手段形成予定部を105℃でヒートシールして隔離手段を形成し、互いに連通可能に隔離された第1室と第2室を上下に有する一次容器を作製した。
(4) 上記(3)で得られた一次容器の第1室に、上記(1)で調製したビタミンB1とブドウ糖を含有する水性製剤を充填した後、その充填口を密封した。次に、該一次容器の第2室に、上記(2)で調製したアミノ酸含有水性製剤を充填した後、その充填口を密封した。
(5) 上記(4)で得られた水性製剤を充填した一次容器を、実質的に酸素の存在しない飽和水蒸気雰囲気中で、温度110℃の条件下に20分間高圧蒸気滅菌を行った後、冷却した。
【0064】
(6) 上記(5)で得られた加熱滅菌済みの一次容器を、上記(i)のアルミニウム蒸着層を有する遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムを用いて製造した袋状の二次容器に、脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製「エージレス」;200mlの酸素吸収用)と共に封入して、二重包装容器にした。
【0065】
《実施例2》
(1) 実施例1の(1)〜(5)と同様の操作を行って、一次容器の第1室にビタミンB1とブドウ糖を含有する水性製剤が充填され、第2室にアミノ酸含有水性製剤が充填された、加熱滅菌済みの一次容器を調製した。
(2) 上記(1)で得られた加熱滅菌済みの一次容器を、上記(ii)のアルミニウム蒸着層を有する遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムを用いて製造した袋状の二次容器に、脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製「エージレス」;200mlの酸素吸収用)と共に封入して、二重包装容器にした。
【0066】
《比較例1〜3》
(1) 実施例1の(1)〜(5)と同様の操作を行って、一次容器の第1室にビタミンB1とブドウ糖を含有する水性製剤が充填され、第2室にアミノ酸含有水性製剤が充填された、加熱滅菌済みの一次容器を製造した。
(2) 上記(1)で得られた加熱滅菌済みの一次容器を、上記した、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を持たない積層フィルム(iii)(比較例1)、(iv)(比較例2)および(v)(比較例3)を用いて同様に製造した袋状容器に、実施例1で用いたのと同じ脱酸素剤と共に封入して、二重包装容器にした。
【0067】
《試験例1》
上記の実施例1〜2および比較例1〜3で得られたそれぞれの二重包装容器について、一次容器の第1室に充填されているビタミンB1とブドウ糖を含有する水性製剤中におけるビタミンB1の残存率を下記のようにして測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0068】
[ビタミンB1の残存率の測定法]
(1) 上記の実施例1〜2および比較例1〜3で得られたそれぞれの二重包装容器を、温度50℃の条件下に30日間置いて、14日目と30日後における一次容器の第1室内の水性製剤中のビタミンB1の含有量を液体クロマトグラフィーを用いた方法により測定し、試験の開始直前におけるビタミンB1の含有量を100%として、それに対する残存率(%)を求めた。
(2) 上記の実施例1〜2および比較例1〜3で得られたそれぞれの二重包装容器を、温度40℃、湿度75%RHの条件下に30日間置いて、30日後における一次容器の第1室内の水性製剤中のビタミンB1の含有量を上記(1)と同様にして測定し、試験の開始直前におけるビタミンB1の含有量を100%として、それに対する残存率(%)を求めた。
【0069】
【表3】

【0070】
上記の表3の結果から、ビタミンB1を含有する水性製剤を充填した一次容器を、脱酸素剤と共にアルミニウム蒸着層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にした実施例1および実施例2では、アルミニウム蒸着層を持たないフィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にした比較例1および2、並びにアルミニウム蒸着層を持たず且つ気体透過性の高い積層フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にした比較例3に比べて、ビタミンB1の残存率が高く、安定性に優れていることがわかる。
【0071】
《実施例3》
(1)ビタミンB1含有水性製剤の調製:
注射用蒸留水に、ビタミンB1を6mg、ビタミンB2を10mg、ビタミンB6を8mgおよびニコチン酸アミドを80mg溶解し、希塩酸を加えてpHを3.5に調整した後、注射用蒸留水を加えて全量10mlとし、0.22μmのメンブランフィルターで濾過を行って、下記の表4に示す組成を有するビタミンB1含有水性製剤を調製した。
【0072】
【表4】

【0073】
(2)脂溶性ビタミン含有水性製剤の調製:
(i) 注射用蒸留水にビタミンCを250mg溶解し、水酸化ナトリウムを加えてpHを10に調整した後、葉酸を1.0mg、ビオチンを0.25mg、ビタミンB12を25μgおよびパンテノールを35.1mgの割合で順に溶解し、注射用蒸留水を加えて、全量を5mlとした。
(ii) 上記(i)の液とは別に、注射用蒸留水にビタミンAを8250IU、ビタミンD2を25μg、ビタミンEを37.5mgおよびビタミンK1を5mg、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(可溶化剤)(日光ケミカルズ株式会社製「ポリソルベート80」:商品名TO−10M)を200mgの割合で溶解し、注射用蒸留水を加えて全量を5mlとした。
(iii) 上記(i)で調製した液4mlと上記(ii)で調製した液4mlを加温混合し、それにプロピレングリコール(安定剤)2.0gを加えて溶解させ、この液にクエン酸を加えてpHを6.0に調整した後、注射用蒸留水を加えて全量を10mlとし、0.22μmのメンブランフィルターで濾過を行って、下記の表5に示す組成を有する脂溶性ビタミン含有水性製剤を調製した。
【0074】
【表5】

【0075】
(3) ポリプロピレン系樹脂65質量部およびスチレン系エラストマー(JSR社製「ダイナロン」)35質量部の混合物からなる方形のシート(厚さ300μm)を2枚重ね、シートの上部中央と下部中央に水性製剤を充填するためのポリプロピレン樹脂製の短管を配置した状態で方形シートの周縁部を130℃でヒートシールした。次いで、方形シートのほぼ中央の高さ位置で横方向に105℃でヒートシールを行って隔離手段を形成し、互いに連通可能に隔離された第1室と第2室を上下に有する一次容器を作製した。
(4) 上記(3)で得られた一次容器の第1室に、上記(1)で調製したビタミンB含有水性製剤5mlを充填した後、その充填口を密封した。次に、該一次容器の第2室に、上記(2)で調製した脂溶性ビタミン含有水性製剤5mlを充填した後、その充填口を密封した。
(5) 上記(4)で得られた水性製剤を充填した一次容器を、実質的に酸素の存在しない飽和水蒸気雰囲気中で、温度110℃で20分間高圧蒸気滅菌を行った後、冷却した。
【0076】
(6) 上記(5)で得られた加熱滅菌済みの一次容器を、上記(i)のアルミニウム蒸着層を有する遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムを用いて製造した袋状の二次容器に、脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製「エージレス」;200mlの酸素吸収用)と共に封入して、高カロリー輸液剤への混注用総合ビタミン製剤としての二重包装容器にした。
【0077】
《実施例4》
(1) 実施例3の(1)〜(5)と同様の操作を行って、一次容器の第1室にビタミンB1含有水性製剤が充填され、第2室に脂溶性ビタミン含有水性製剤が充填された加熱菌滅済みの一次容器を調製した。
(2) 上記(1)で得られた加熱菌滅済みの一次容器を、上記(ii)のアルミニウム蒸着層を有する遮光性で且つ気体難透過性の積層フィルムを用いて製造した袋状の二次容器に、脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製「エージレス」;200mlの酸素吸収用)と共に封入して二重包装容器にした。
【0078】
《比較例4〜6》
(1) 実施例3の(1)〜(5)と同様の操作を行って、一次容器の第1室にビタミンB1含有水性製剤が充填され、第2室に脂溶性ビタミン含有水性製剤が充填された加熱滅菌済みの一次容器を製造した。
(2) 上記(1)で得られた加熱滅菌済みの一次容器を、上記した、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を持たない積層フィルム(iii)(比較例4)、(iv)(比較例5)および(v)(比較例6)を用いて同様に製造した袋状容器に、実施例3で用いたのと同じ脱酸素剤と共に封入して、高カロリー輸液剤への混注用総合ビタミン製剤としての二重包装容器にした。
【0079】
《試験例2》
上記の実施例3〜4および比較例4〜6により得たそれぞれの二重包装容器について、一次容器の第1室に充填されているビタミンB1含有水性製剤中のビタミンB1の残存率を、試験例1と同様にして測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0080】
【表6】

【0081】
上記の表6の結果から、ビタミンB1含有水性製剤を充填した一次容器を、脱酸素剤と共にアルミニウム蒸着層を有する気体難透過性フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にした実施例3および実施例4では、アルミニウム蒸着層を持たないフィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にした比較例4〜5、およびアルミニウム蒸着層を持たず且つ気体透過性の高い積層フィルムからなる二次容器に封入して二重包装容器にした比較例6に比べて、ビタミンB1の残存率が高く、安定性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明による場合は、ビタミンB1類含有水性製剤を、ビタミンB1類の分解や変質を防止しながら長期にわたって安定に保つことができるので、ビタミンB1類含有水性製剤の安定化方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB1類を含有する水性製剤を充填した気体透過性の一次容器を、脱酸素剤と共に、アルミニウム蒸着層またはアルミニウム箔層を有する遮光性で且つ気体難透過性のフィルムからなる二次容器に封入することを特徴とする、ビタミンB1類を含有する水性製剤の安定化方法。
【請求項2】
ビタミンB1類を含有する水性製剤が、さらにブドウ糖を含有する請求項1に記載の安定化方法。
【請求項3】
一次容器が、1室型の容器であって、該室にビタミンB1類またはビタミンB1類とブドウ糖を含有する水性製剤を充填する請求項1または2に記載の安定化方法。
【請求項4】
一次容器が、連通可能な隔離手段によって少なくとも2室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器であって、一次容器の第1室にビタミンB1類およびブドウ糖を含有する水性製剤を充填し、且つ第2室にアミノ酸を含有する水性製剤を充填する請求項2に記載の安定化方法。
【請求項5】
一次容器が、連通可能な隔離手段によって3室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器であって、一次容器の第1室にビタミンB1類、ブドウ糖、ビタミンB6、ニコチン酸アミド並びに電解質としてナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、塩素および亜鉛の各イオンを含有する水性製剤を充填し、第2室にアミノ酸、ビタミンB2、ビタミンCおよびパンテノールを含有する水性製剤を充填し、且つ第3室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12、ビオチンおよび葉酸を含有する水性製剤を充填する請求項4に記載の安定化方法。
【請求項6】
一次容器が、連通可能な隔離手段によって少なくとも2室に区画した気体透過性の可撓性材料からなる多室型の容器であって、一次容器の第1室にビタミンB1類を含有する水性製剤を充填し、且つ第2室に脂溶性ビタミン類を含有する水性製剤を充填する請求項1に記載の安定化方法。
【請求項7】
一次容器を、水性製剤を充填した状態で加熱滅菌する請求項1〜6のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項8】
二次容器の酸素透過量が、23℃、90%RH、101kPa(1気圧)で測定したときに1.0ml/m2・day以下である請求項1〜7のいずれかに記載の安定化方法。

【公開番号】特開2006−187636(P2006−187636A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24499(P2006−24499)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【分割の表示】特願2000−275940(P2000−275940)の分割
【原出願日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(000002956)田辺製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】