説明

ビルダグリプチン塩

本発明は、ビルダグリプチン(LAF237)の新規塩形態、すなわち(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンの塩形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルダグリプチン(LAF237)の新規塩形態、すなわち(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンの塩形態に関する。
【背景技術】
【0002】
WO−A−00/34241は、N−置換−2−シアノピロリジンは、DPP−IV阻害剤であり、故に、非インスリン依存性真性糖尿病、関節炎、肥満、骨粗鬆症および耐糖能障害のさらなる状態の処置に有用であることを教示する。本N−置換−2−シアノピロリジンは遊離塩基または酸付加塩形態で存在できる。特定の化合物は(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン(“ビルダグリプチン”または“LAF237”)である。
【0003】
ここに記載の全ての文献は、このような文献が、本発明の全ての請求項の特許性に関する直接関係する先行技術文献である、または考察文献であるとの容認であることを意図しない。全ての文献の内容または日にちに関する記載は、出願時に出願人が入手可能であった上方に基づき、このような記載の正確さに関する容認を構成するものではない。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約
本発明は、ビルダグリプチン(LAF237)の新規塩形態、すなわち(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンの塩形態に関する。
【0005】
本発明の第一の局面はビルダグリプチンの酸付加塩、またはその塩混合物である。本酸は全ての薬学的に許容される酸であってよく、酸付加塩の例は、4−アセトアミド安息香酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、4−アミノサリチル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、炭酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、2,2−ジクロロ酢酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン−1,2−ジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、2−オキソグルタル酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピドール酸塩(L−ピログルタミン酸塩)、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、セバシン酸水素塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、およびウンデカン酸塩を含む。多塩基性酸の場合、例えばクエン酸塩の場合のように、全ての酸性プロトンが移動しているか、例えば硫酸水素塩、マロン酸水素塩、フマル酸水素塩、リンゴ酸水素塩、マレイン酸水素塩、酒石酸水素塩およびガラクタル酸水素塩の場合のように2個のプロトンが移動している酸を含む。
【0006】
記載の塩のある態様において、塩は塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、乳酸塩または酢酸塩の1種以上ではない。
一つの態様において、酸およびビルダグリプチンが実質的に1:1化学量論であるビルダグリプチンの酸付加塩が提供される。本酸は一塩基性または多塩基性酸であり得る;多塩基性酸の例は二塩基性および三塩基性である
【0007】
本発明は、多塩基性酸が実質的に個々に脱プロトン化されている、ビルダクリプチンと多塩基性酸との塩を提供する。
さらに、ビルダグリプチンの塩酸塩、硫酸塩または二カルボン酸塩(例えば、フマル酸塩またはマロン酸塩)塩も本発明に含まれる。
【0008】
他の態様において、ビルダグリプチンのカルボン酸塩が提供される。これらの塩の一つのクラスにおいて、本酸は2個以上のカルボン酸基を有するポリカルボン酸である。第一のサブクラスにおいて、これらの塩中のポリカルボン酸は、例えばビルダグリプチンおよびジカルボン酸の1:1化学量論を有するジカルボン酸塩の場合のように、個々に脱プロトン化されている。第二のサブクラスにおいて、本多塩基性カルボン酸および本ビルダグリプチンは、酸中のカルボン酸基の数と無関係に1:1化学量論である。
【0009】
本発明の他の局面は、治療的使用のための本発明の塩である。
本発明の他の局面は、本発明の塩および、所望により、薬学的に許容される希釈剤または担体を含む、医薬製剤である。
【0010】
本発明のさらなる局面は、治療において同時に、別々にまたは連続的に使用するための組み合わせ製剤として本発明の塩および治療剤を含む、製品、すなわち組み合わせ製品である。
【0011】
本発明の他の局面は、非インスリン依存性真性糖尿病、関節炎、肥満、同種移植片移植、カルシトニン−骨粗鬆症、心不全、障害されたグルコース代謝または耐糖能障害、神経変性疾患、心血管または腎臓疾患、および神経変性または認知障害、高血糖、インスリン抵抗性、脂質障害、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、膵炎、網膜症、腎症、神経障害、シンドロームX、卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、2型糖尿病、成長ホルモン欠乏、好中球減少症、神経障害、腫瘍転移、良性前立腺肥大、歯肉炎、高血圧および骨粗鬆症から選択される疾患または状態の処置または予防用薬剤の製造のための、本発明の塩の使用である。
【0012】
本発明の他の局面は、鎮静または不安緩解作用を引き起こす、術後異化変化またはストレスに対するホルモン応答を減弱する、心筋梗塞後の死亡率および罹病率を減少させる、高脂血症または関連状態を調節する、またはVLDL、LDLもしくはLp(a)レベルを低下させるための薬剤の製造のための、本発明の塩の使用である。
【0013】
本発明の他の局面は、治療的有効量の本発明の塩を投与することを含む、患者における疾患または状態の処置方法である。
【0014】
本発明のさらなる局面は、本発明の塩を結晶形態で製造する方法であって:
i)ビルダグリプチンおよび薬学的に許容される酸を含む溶液を形成し、
ii)塩の結晶化を誘導し、そして
iii)結晶ビルダグリプチン塩を回収する
ことを含む、方法である。
【0015】
本方法の態様において、ビルダグリプチンおよび酸は1:1化学量論である。
塩の例は上記の通りであり、例えば酸は塩酸、硫酸またはジカルボン酸であり得る。ジカルボン酸は好ましくはマロン酸またはフマル酸であり、すなわち塩は好ましくは各々マロン酸塩またはフマル酸塩である。
【0016】
遊離塩基と比較して、本発明の塩、またはその無定形形態、結晶形態、溶媒和物、水和物、およびまた多形形態は、有利には1種以上の改善された特性を有する。
【0017】
本発明の結晶塩は、貯蔵および分配中も、遊離塩基と比較してより安定でありより良好な品質であり得る。
【0018】
加えて、本発明の結晶および無定形塩の両方とも水中での解離度が高く、故に、実質的に改善された水溶性を有し得る。これらの特性は、一方で溶解過程が速く、他方でこのような溶液のために少量の水しか必要としないため、有利である。本発明の塩はまた固体投与形態の場合の塩または塩水和物の増加した生物学的利用能に至り得る。
【0019】
ある種の塩またはある種の塩水和物の改善された物理化学特性は、薬学的活性物質として製造するときおよびガレヌス製剤(galenic preparations)を製造、貯蔵および適用するときの両用で非常に重要である。このように、物理的パラメータの改善された定常性で出発して、幾分高い品質の製剤を保証できる。塩または塩水和物の高い安定性はまた後処置中に行う行程の単純化を可能にすることにより経済的利点を達成する可能性を与える。ある種の塩水和物の高い結晶性が、それらの成されるべき放出の明瞭で単純な分析を可能にする、分析法、とりわけ種々のX線法の選択の使用を可能にする。この因子は、製造、貯蔵および患者への投与中の活性物質およびそのガレヌス形態の品質のために非常に重要である。加えて、ガレヌス製剤中の活性成分の安定化のための複雑な設備を避け得る。
【0020】
乾燥、篩い分け、粉砕のような物理的−化学的過程、および医薬賦形剤と行うガレヌス過程、すなわち混合過程、造粒、噴霧乾燥、打錠の両用における純粋活性物質の品質の必須の特性は、対象となる環境の温度および相対湿度に依存したこの活性物質の水吸収または水損失である。ある種の製剤で、自由水および結合水は疑いなく賦形剤と共に挿入されおよび/または水を各製剤過程に関連する理由のために加工する塊に添加する。このように、医薬活性物質は、異なる作業の温度に依存して(一部蒸気圧)、かなり長時間にわたり自由水に暴露される。本塩は、それらが測定可能な水吸収または損失を示さない点で、有利であり得る。この特性は、化学製造の最終段階およびまた種々の投与形態の全ガレヌス工程段階において重要である。この優れた安定性は、同様に、活性成分の一定の利用能を通して、患者のためになる。
【0021】
本発明の塩はまた遊離塩基形態と比較して、改善された溶解または圧縮硬度特性も有し得る。その有利な結晶性のために、本塩は直接対応する錠剤製剤を形成するために圧縮するのに適し得る。錠剤形態の改善された溶解特性もまた可能である。
【0022】
本発明の塩はまた改善された薬物動態学的プロファイルを有し得て、特にそれらはジペプチジルペプチダーゼIV酵素の24時間阻害または24時間にわたるジペプチジルペプチダーゼIV酵素の少なくとも90%または95%の阻害を維持するために特に適する。故に、本発明の塩は、患者への1日1回投与のための医薬単位投与形態、例えば錠剤の開発に特に適し得る。ビルダグリプチンのAUC0−24(血漿濃度−0時から24時の時間曲線下面積[ng*時間/mL])および/またはCmax(最大血漿濃度)は故に改善でき、1日1回医薬単位投与形態に適する。
【0023】
本発明の塩はまたさらなる活性成分を含む製剤中に包含したとき、改善された安定性も有し得る。本塩はまたさらなる活性成分の分解を避けるまたは減らすための利点も有し得る。故に、本発明の塩は、さらなる活性成分、例えば、メトホルミン、ピオグリタゾン、またはロシグリタゾンのような第二の抗糖尿病剤またはバルサルタンのような抗高血圧剤との組み合わせ治療およびこれらを含む製剤の製造のために、またはスタチン、例えばシンバスタチンまたはプラバスタチンと組み合わせて特に有用である。
【0024】
本塩はまたそれらが、当分野で既知の化合物より有効であり、毒性が少なく、長時間作用し、より広い範囲の活性を有し、より強力であり、少ない副作用をもたらし、より容易に吸収され、または他の有用な薬理学的特性を有する点で、利点も有し得る。このような利点はまた、さらなる活性成分、例えばメトホルミン、ピオグリタゾン、またはロシグリタゾンのような第二の抗糖尿病剤またはバルサルタンのような抗高血圧剤との組み合わせ治療中に、またはスタチンと組み合わせて特に生じ得る。
【0025】
保護の範囲は、実際にそのような化合物を含むか否かに無関係にそして何らかのこのような化合物が治療的有効量で含まれているか否かに無関係に本発明の化合物を含む、または本発明の化合物を含むと主張する偽造または不正製品を含む。故に、包装物が本発明の種または医薬製剤を含むことを指示する文書または指示書を含む包装物、および、このような製剤または種を含む、または含むと主張する製品は保護範囲に含まれる。
【0026】
本明細書および特許請求の範囲の記載を通して、文脈から他の解釈が必要でない限り単数表現は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用されているとき、その記載は文脈から他の解釈が必要でない限り、複数ならびに単数を含むことを意図すると理解すべきである。
【0027】
本発明の特定の局面、態様または実施例に記載の特性、整数、特徴、化合物、化学部分または基は、それらが矛盾しない限り、ここに記載の任意の他の局面、態様または実施例に適用できることは理解すべきである。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲の記載を通して、用語“含む”および“含み”および、例えば“含んで”および“包含する”のようなその用語の変化形は、“限定せずに含む”ことを意味し、他の部分、付加物、要素、整数または工程を除外することを意図しない(そして除外しない)。
【0029】
本明細書のさらなる局面および態様を、以下の記載および特許請求の範囲により明示する。
【0030】
種々の態様の記載
以下の用語および略語を本明細書で使用する:
ここで使用する用語“本発明の塩”は、そのような塩の無定形形態、結晶形態、溶媒和物、水和物、およびまた多形形態を含む。
【0031】
ここで使用する用語“結晶形態”は、無水結晶形態、部分的に結晶形態、結晶形態の混合物、水和物結晶形態および溶媒和物結晶形態を含む。
【0032】
ここで使用する用語“水和物”は、1個以上の水分子を三次元周期的配置中に含む結晶形態を意味する。
【0033】
ここで使用する用語“溶媒和物”は、1個以上の水以外の溶媒分子を三次元周期的配置中に含む結晶形態を意味する。
用語“本発明の化合物”は本発明の塩を意味する。
【0034】
表現“薬学的に許容される”は、ここでは、堅実な医学的判断の範囲内で、ヒトまたは動物の組織と過度の毒性、刺激、アレルギー性応答または他の問題もしくは合併症なしに接触して使用するのに適し、合理的な利益/危険比で釣り合う、化合物、物質、組成物、および/または投与形態を意味する。
【0035】
ビルダグリプチンの合成方法はWO−A−00/34241に開示されており、その内容を引用により本明細書に包含させる。
【0036】
ここでの本発明の塩に関する記載は、適当であり、予期される限り、対応する溶媒和物、例えば水和物、および多形変形、およびまた無定形形態もまた言うことを理解すべきである。塩混合物は、(i)異なるアニオンから形成された一つの塩形態または(ii)例えば集合体の形で存在するこれらの一つの塩形態の混合物である。
【0037】
本発明の塩好ましくは単離され、本質的に純粋な形で、例えば>95%、好ましくは>98%、より好ましくは>99%の純度で存在する。本発明の塩のエナンチオマー純度は好ましくは>98%、より好ましくは>99%である。
【0038】
本塩は結晶、部分的に結晶、無定形または多形形態であり得る。ビルダグリプチンのマロン酸塩およびフマル酸塩形態がとりわけ好ましい。典型的に、本発明の塩の化学量論は1:1である。
本塩は乾燥し得る。一つの態様において、本塩は無水である。
【0039】
本塩は溶媒和物または水和物形態であり得る。本発明の塩の溶媒和物およびまた水和物は、例えば、各々ヘミ、一、二、三、四、五、六溶媒和物または水和物として存在できる。結晶化に使用する溶媒、例えばアルコール、とりわけメタノール、エタノール、アルデヒド、ケトン、とりわけアセトン、エステル、例えば酢酸エチルは結晶格子中に取りこまれ得る。選択した溶媒または水が結晶化およびその後の工程において溶媒和物または水和物に至るかまたは直接遊離塩基に至る程度は、一般に予測不能であり、工程条件の組み合わせおよび遊離化合物と選択した溶媒、とりわけ水の間の種々の相互作用に依存する。塩、溶媒和物および水和物、ならびに対応する塩溶媒和物または塩水和物の形の得られる結晶または無定形固体の各安定性は実験により決定しなければならない。故に、これらの状況下で種々の結晶固体および種々の無定形物質が産生され得るため、単に得られる固体の分子の化学組成および化学量論に焦点を当てることは不可能である。
【0040】
対応する水和物についての塩水和物の記載は、結晶構造中の水分子が、強い分子間力により結合され、それにより、一部極めて安定であるこれらの結晶の構造形成の必須要素となるため、好ましいことがある。しかしながら、水分子はまたある種の結晶格子中に存在してもよく、それはむしろ弱い分子間力で結合する。このような分子は多かれ少なかれ結晶構造形成中に統合されるが、低いエネルギー効果までである。無定形固体の水含量は、一般に、結晶水和物と同様明確に決定できるが、乾燥および環境条件に非常に依存する。対照的に、安定な水和物の場合、医薬活性物質と水の間に明らかな化学量論比が存在する。多くの場合、これらの比は完全に化学量論値を満たさず、通常ある結晶の欠陥により理論量よりも低い値に近づく。弱く結合している水についての有機分子対水分子の比は、例えば、二、三または四水和物を越えてかなりの程度変化し得る。他方、無定形固体において、水の構造分類は化学量論ではない;この分類は、しかしながらたまたま化学量論ともなり得る。ある場合、層構造が形成され、取りこまれた水分子が規定の形態で決定できないため、水分子の正確な化学量論を分類することが不可能である。
【0041】
故に本発明はまた本発明の化合物の固体状態物理特性にも関する。これらの特性は、本発明の化合物を固体形態で得る条件の制御に影響され得る。固体状態物理特性は、例えば、粉砕した固体の流動性を含む。流動性は医薬製品に加工する間の物質の取り扱いの容易さに影響する。粉末にした化合物の粒子が互いを乗り越えて流動することが不可能であるとき、製剤専門家は錠剤またはカプセル製剤の開発においてこの事実を考慮しなければならず、それはコロイド状二酸化ケイ素、タルク、デンプンまたは三塩基性リン酸カルシウムのような流動促進剤の使用を必要とし得る。
【0042】
医薬化合物の他の重要な固体状態特性は、その水性流体中への溶解速度または薬剤のバイオアベイラビリティである。患者の胃液への活性成分の溶解速度は、経口投与した活性成分が患者の血流に到達できる速度の上限を決定するため、治療的意義を有し得る。
【0043】
例えば、同じ薬剤の異なる結晶形態または無定形形態は、溶解速度およびバイオアベイラビリティのような薬学的に重要な特性において実質的差異を有し得る。同様に、異なる結晶または無定形形態は、吸湿性(hydroscopicity)、流動性などのような異なる加工特性を有し得て、それは、商業用製品のための活性医薬品の適性に影響し得る。
【0044】
溶解速度はまたシロップ、エリキシルおよび他の液体医薬の製剤においても考慮すべき事項である。化合物の固体状態形態はまた圧縮およびその貯蔵安定性にも影響し得る。
【0045】
これらの実際的な物理特性は、物質の特定の多形形態を定義する、単位セル中の分子の配座および配向により影響される。多形形態は、無定形物質または他の多形形態と異なる熱行動を起こし得る。熱行動は、毛細管融点、熱重量分析(TGA)および示差走査熱量測定(DSC)のような技術で実験室で測定され、ある多形形態と他の形態を区別するために使用できる。特定の多形形態はまた粉末X線結晶学、固体状態13C NMR分光分析および赤外線分光分析により検出できる、異なる分光特性も起こし得る。結晶形態の特徴付けに使用される方法:IR、X線粉末回折、融点決定。
【0046】
本発明の結晶形態はX線回折および/または赤外線分光学、または当分野で既知の任意の単方法により同定され、識別され得る。
【0047】
本発明の一つの態様は、約15.0°、17.6°、18.2°および19.9°±0.3° 2−シータのピークまたは約6.7°、13.5°、15.0°、16.1°、17.1°、17.6°、17.8°、18.2°、19.9°、20.5°、22.2°および22.4°±0.3° 2−シータのピークおよび好ましくは約6.7°、13.5°、15.0°、16.1°、17.1°、17.6°、17.8°、18.2°、19.9°、20.5°、22.2°、22.4°、24.5°、24.8°、25.4°、26.7°、27.1°および27.9°±0.3° 2−シータのピークを有するX線回折パターンにより特徴付けされる結晶形態のビルダグリプチン塩酸塩である。本発明のさらなる態様は、本質的に図1に記載のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチン塩酸塩である。
【0048】
本発明の他の態様は、約8.5°、16.3°、17.1°および22.3°±0.3° 2−シータのピークまたは約7.3°、8.5°、12.8°、13.9°、15.2°、15.4°、16.3°、17.1°、18.6°、18.9°、19.7°、20.4°、22.3°および23.9°,±0.3° 2−シータのピーク、好ましくは約4.2°、7.3°、8.5°、11.25°、12.8°、13.9°、15.2°、15.4°、16.3°、17.1°、18.6°、18.9°、19.7°、20.4°、22.3°、23.9°、24.6°および25.8°±0.3° 2−シータのピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチンフマル酸水素塩である。本発明のさらなる態様は、本質的に図4に記載のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチンフマル酸水素塩である。
【0049】
本発明のさらなる態様は、約7.3°、16.6°、18.2°、および21.8°±0.3° 2−シータのピークまたは約7.3°、14.5°、15.2°、16.6°、18.2°、20.0°、20.5°、21.8°、23.1°、23.4°and 23.6°±0.3° 2−シータのピーク、好ましくは約7.3°、14.5°、15.2°、16.6°、18.2°、19.6°、20.0°、20.5°、21.8°、23.1°、23.4°、23.6°、26.3°および27.9°±0.3° 2−シータのピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチン硫酸水素塩である。本発明のさらなる態様は、本質的に図2に記載のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチン硫酸水素塩である。
【0050】
本発明のさらなる態様は、約7.1°、17.7°、19.9°、および21.6°±0.3° 2−シータのピークまたは約7.1°、14.1°、16.8°、17.7°、18.0°、19.9°、21.6°、23.1°および24.3°±0.3° 2−シータのピーク、好ましくは約7.1°、14.1°、16.3°、16.8°、17.7°、18.0°、19.9°、20.1°、21.4°、21.6°、23.1°、24.3°、27.8°および29.4°±0.3° 2−シータのピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチン硫酸水素塩である。本発明のさらなる態様は、本質的に図3に記載のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチン硫酸水素塩である。
【0051】
本発明のさらなる態様は、約15.1°、17.0°、17.3°、17.8°および21.0°±0.3° 2−シータのピーク、または約7.1°、8.8°、10.4°、12.0°、14.3°、15.1°、17.0°、17.3°、17.8°、18.6°、19.0°、21.0°、22.0°、22.9°、23.3°、24.5°、25.0°、および28.4°±0.3° 2−シータのピーク、好ましくは約7.1°、8.8°、10.4°、12.0°、14.3°、15.1°、16.0°、17.0°、17.3°、17.8°、18.6°、19.0°、19.7°、21.0°、21.5°、22.0°、22.9°、23.3°、24.5°、25.0°、26.2°、26.6°、28.0°、28.4°および31.7°±0.3° 2−シータのピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチンマロン酸水素塩である。本発明のさらなる態様は、本質的に図5に記載のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチンマロン酸水素塩である。
【0052】
さらなる態様において、本発明は、図1、2、3、4および5、および表1に提供する(実質的に記載された)X線粉末パターンにより特徴付けられるビルダグリプチンの結晶形態を考慮する。
【0053】
上記の通り、本発明の結晶系はX線回折により特徴付けられ得る。X線回折パターンは特定の結晶形態に独特である。各結晶形態は、2−シータ角、d−間隔値および相対的ピーク強度として示し得る独特な一連の回折ピークを有する回折パターンを示す。2−シータ回折角および対応するd−間隔値は、X線粉末回折パターンにおける種々のピークの位置を明らかにする。D−間隔値は観察される2−シータ角および銅K(al)波長で、当業者に既知の等式であるBragg等式を使用して計算する。
【0054】
回折計は、X線源の角度に関して回折X線強度(秒当たりカウント、cps)を測定する。結晶サンプルのみが明確な角度で回折し、故に鋭いピークが結晶形態の性質に依存して観察される。各形態は、独特な回折パターンとなる。ピークの強度は粒子サイズおよび形に依存し、故にそれは結晶形態ではなくバッチの特性である。回折ピーク(パターン)は分子内の各原子の位置を定義し、そしてある結晶系についての結晶対称性および空間基を定義する。
【0055】
用いる特定の回折計、分析者、およびサンプル調製法に基づき、観察された2−シータ角またはd−間隔値のわずかな違いが予測されることは注意すべきである。相対的ピーク強度についてより大きな差異が予測される。
【0056】
化合物の正確な結晶形態の同定は、主に観察された2−シータ角に基づくべきであり、相対的ピーク強度に重きを置くべきではない。幾分かの誤差の範囲が2−シータ角およびd−間隔の値付与において可能であるため、特定の結晶形態を同定するためのX線粉末回折パターンの比較のための好ましい方法は、未知のX線粉末回折パターンを既知形態のX線粉末回折パターンに重ねることである。
【0057】
2−シータ角またはd−間隔値は結晶形態同定のための主要な豊富ではあるが、また相対的ピーク5強度の比較も望ましいことがある。上記の通り、相対的ピーク強度は用いる特定の回折計および分析者のサンプル調製技術に依存して変化し得る。ピーク強度は、最強ピークのピーク強度に対する強度として記載する。ピーク強度は品質制御のためには有用であるが、結晶形態同定に使用すべきではない。
【0058】
X線回折は、固体混合物中の結晶および/または無定形形態の相対量の定量的決定の簡便で実際的な手段を提供する。X線回折は、混合物中のある化合物の回折ピーク強度が、混合物中の対応する粉末の画分に比例するため、定量的適用に適合できる。結晶化合物の組成%は未知組成において決定できる。
【0059】
好ましくは、本測定は、固体粉末形態の化合物で行う。未知組成のX線粉末回折パターンを、結晶形態の比率パーセントを同定するために純粋結晶形態を含む既知品質標準と比較し得る。これは、未知固体粉末の回折パターンからのピークの相対強度を、純粋既知サンプルのX線回折パターン由来の較正曲線と比較することにより行い得る。本曲線は、純粋結晶サンプル由来の最強ピークについてのX線粉末回折パターンに基づき較正できる。
【0060】
さらなる局面において、本発明は、170℃±4℃の融点(例えば示差走査熱量測定(DSC)法、10K/分により得られる)により特徴付けられる、結晶形態のビルダグリプチンマロン酸塩に関する。
【0061】
さらなる局面において、本発明は、130℃および196℃±4℃の融点(例えば示差走査熱量測定(DSC)法、10K/分により得られる)により特徴付けられる、結晶形態のビルダグリプチン硫酸I塩に関する。
【0062】
さらなる局面において、本発明は、164℃±4℃の融点(例えば示差走査熱量測定(DSC)法、10K/分により得られる)により特徴付けられる、結晶形態のビルダグリプチンフマル酸塩に関する。
【0063】
さらなる局面において、本発明は、234℃±4℃の融点(例えば示差走査熱量測定(DSC)法、10K/分により得られる)により特徴付けられる、結晶形態のビルダグリプチン塩酸塩に関する。
【0064】
さらなる局面において、本発明は、191℃±4℃の融点(例えば示差走査熱量測定(DSC)法、10K/分により得られる)により特徴付けられる、結晶形態のビルダグリプチン硫酸II塩に関する。
【0065】
さらなる局面において、本発明は、…℃±4℃の融点(例えば示差走査熱量測定(DSC)法、10K/分により得られる)により特徴付けられる、結晶形態のビルダグリプチン臭化物塩に関する。
【0066】
示差走査熱量測定(DSC)曲線を、Perkin ElmerまたはMettlerシステムを使用して記録する。粉末は、147℃±4℃でDSC温度記録図において遷移を示し(方法DSC、2C/分)、物質の融点に対応する。
【0067】
さらなる局面において、本発明は、ここに記載のX線回折パターンおよびDSC融点により実質的に特徴付けられる結晶形態のビルダグリプチン塩に関する。
【0068】
合成
本発明の塩は、遊離塩基から慣用の化学方法により合成できる。一般に、このような塩は、ビルダグリプチンの遊離塩基形態を、適当な酸と水または有機溶媒、またはこれら2種の混合物中で反応させることにより製造できる。酸およびビルダグリプチンは所望の化学量論比、例えば1:1で合わせる。多くの場合、非水性媒体、例えばエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルを使用する。特定の溶媒として、完全にまたは一部水混和性の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルカノール;アセトン;メチルエチルケトン;アセトニトリル;DMF;DMSOを特記し得る。特別な場合、溶媒はアルコール、例えばアルカノールを、所望により水と組み合わせて含む。溶媒の例はメタノール、n−ブタノール、エタノールまたはイソプロパノールである。有機溶媒、例えば本段落で上記のアルコールは、ある態様において完全に無水である。
【0069】
したがって本発明の塩または塩水和物は、例えば、遊離塩基形態のビルダグリプチンを、各アニオンに対応する酸で中和することにより得ることができる。本塩は結晶化させてよく、または結晶化を誘導し得る。本塩は、所望により結晶化前に、無定形固体を形成させてよく、またはその形成を誘導してよい。本固体塩は、例えば減圧下の加熱により乾燥させ得る。
【0070】
結晶化は有機溶媒、特に水混和性有機溶媒、水または、水と、水と混和性または一部混和性少なくとも1種の溶媒、すなわち非極性すぎない、例えばアルカノール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、DMF、DMSOから成る水性媒体中で、行い得る。アルカノール部分は、例えば約10から90、または20から70、有利には30から50容量%の量である。高級アルカノールについて、低い極性の溶媒もまた低濃度で存在し得る。好ましい変法において、結晶化を、例えば少なくとも1個の種晶添加により最適化、例えば加速し得る。
【0071】
塩結晶化のための溶媒の具体例は、n−ブタノール、エタノールおよびイソプロパノールである。
【0072】
例示の目的で、その無定形または結晶形態を含む塩の製造方法は以下の通りである。
【0073】
塩の形成のために、2種の反応体、すなわち遊離塩基および各酸が十分に溶解できる溶媒系において本方法を行う。結晶化または沈殿を達成するために、得られる塩がわずかにしか溶解しないかまたは完全に溶解しない溶媒または溶媒混合物を使用することが好都合である。本発明の塩の一つの変法は、この塩が非常に可溶性である溶媒を使用し、その後、得られる塩がその溶液にほとんど溶けない溶媒である貧溶媒を添加する。塩結晶化のためのさらなる変法は、塩溶液を、例えば必要であれば減圧下加熱により、または、例えば室温でゆっくり溶媒を蒸発させることにより、または種晶結晶の添加による種晶添加により、または水和物形成に必要な水活性のセットアップ(setting-up)により濃縮することを含む。さらに別の変法において、無定形塩を、例えば溶媒の除去により反応溶液から得て、無定形塩を結晶化溶媒に溶解し、その後結晶化を、例えば高温の溶液を冷ますかまたは冷却を引き起こすことにより、溶液を濃縮することにより、または貧溶媒の添加により誘発する。
【0074】
使用できる溶媒は、例えばC−Cアルカノール、好ましくはエタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノールである。他の特記すべきアルカノールはメタノールであるが、塩結晶化がメタノール中では起こらない可能性が判明している。他の特記すべき溶媒はC−Cジアルキルケトン、好ましくはアセトンである。前記のいずれの溶媒も水と混合し得る。
【0075】
塩結晶化のための貧溶媒は、例えば、C−Cアルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、エステル、とりわけC−Cアルカンカルボン酸C−Cアルキルエステル、例えばエチルまたはイソプロピルの酢酸エステル、ジ−(C−Cアルキル)−エーテル、例えばtert−ブチルメチルエーテル、さらにテトラヒドロフラン、およびC−Cアルカン、とりわけペンタン、ヘキサンまたはヘプタンであり得る。これらの中で、tert−ブチルメチルエーテルを特記し得る。
【0076】
本発明は、例えば、適当には結晶形態の塩の、減圧下および/または高温(例えば50−60℃および所望により約15mbar)での乾燥により製造した乾燥塩を含む。本塩は乾燥前に有機溶媒、例えば結晶化溶媒(特に結晶の場合)で洗浄し得る。
【0077】
特記すべきは、ビルダグリプチンおよび酸を1:1化学量論でアルカノール、特にメタノール、n−ブタノール、エタノールまたはイソプロパノールに溶解することによる、本発明の塩の形成方法である。本溶液は環境温度または高温(例えば40−75℃、よりしばしば45−70℃)であり得る。結晶化溶媒を選択するならば、塩を、反応混合物の溶媒中で結晶の形成を誘導できる。結晶化溶媒として、以下を特記し得る:
ビルダグリプチン硫酸水素塩: n−ブタノール
ビルダグリプチンマロン酸水素塩: エタノール
ビルダグリプチンフマル酸水素塩: エタノール
ビルダグリプチン塩酸塩: イソプロパノール。
【0078】
上記の塩の対応する溶媒からの結晶化の方法として、以下を特記し得る:
ビルダグリプチン硫酸水素塩: 種晶添加および、例えば5℃未満、例えば0−3℃への冷却。
ビルダグリプチンマロン酸水素塩: 種晶添加、次いで混合物の、例えば25℃未満、所望により20℃未満への維持および適当には例えば5℃未満、例えば0−3℃未満への冷却を含む。
ビルダグリプチンフマル酸水素塩: 種晶添加、次いで混合物の、例えば25℃未満、所望により20℃未満への維持および適当には例えば5℃未満、例えば0−3℃への冷却を含む。
ビルダグリプチン塩酸塩: 所望により種晶添加と組み合わせた、および40℃未満、例えば30℃、またはそれ以下で行う貧溶媒(具体的にtert−ブチル−メチルエーテル)の添加。
ビルダグリプチン臭化物塩: 種晶添加、次いで混合物の、例えば25℃未満、所望により20℃未満への維持および適当には例えば5℃未満、例えば0−3℃への冷却を含む。
【0079】
非結晶化溶媒を反応において使用するとき(少なくともビルダグリプチン硫酸水素塩の場合、例えばメタノール)、無定形塩を結晶化溶媒に差異溶解し、そして結晶化でき、例えば硫酸水素塩はn−ブタノールから結晶化できる。
【0080】
水和物を溶解および結晶化工程を使用して製造できる。溶解および結晶化工程は、以下により特徴付けられる:
(i)遊離塩基形態および適当な酸を、好ましくは水含有、有機溶媒中で反応させ;
(ii)溶媒系を、例えば必要ならば減圧下の加熱により濃縮し、次いで種晶の種晶添加または、例えば室温でのゆっくりした蒸発により、結晶化または沈殿を開始し;そして
(iii)得られた塩を単離する。
【0081】
溶解および結晶化工程において、水含有、有機溶媒系は、有利にはアルコール、例えばエタノールと水;またはアルキルニトリル、とりわけアセトニトリルと水の混合物である。
【0082】
あるいは、水和物を水平衡化結晶化工程において製造できる。本平衡化結晶化工程は、以下により特徴付けられる:
(i)遊離塩基形態および適当な酸を、水含有有機溶媒に添加し;
(ii)溶媒を、例えば必要ならば減圧下の加熱によりまたは例えば室温でのゆっくりした蒸発により濃縮し;
(iii)蒸発残渣を必要量の水で
(a)有利にはまだ暖かく、そしてまだ幾分かの水を含む蒸発残渣を適当な溶媒に懸濁させるか;または
(b)溶媒中に過剰の水を平衡化する;
ことにより平衡化し、ここで、a)およびb)において、既に存在するまたは添加した水は、水が有機溶媒に溶解し、さらなる層を形成しない量で存在し;そして
(iv)得られた塩を単離する。
【0083】
平衡化工程において、水含有有機溶媒は、有利には適当なアルコール、例えばC−Cアルカノール、とりわけエタノールと水の混合物である。平衡化に適当な溶媒は、例えば、エステル、例えばC−Cアルカンカルボン酸−C−Cアルキルエステル、とりわけ酢酸エチル、またはケトン、例えばジ−C−C−アルキルケトン、とりわけアセトンである。本平衡化工程は、例えばその高い収率および優れた再現性により注目すべきである。
【0084】
上記工程において使用するのに適当な他の溶媒は、エステル、例えばC−Cアルカンカルボン酸−C−Cアルキルエステル、とりわけ酢酸エチル、ケトン、例えばジ−C−C−アルキルケトン、とりわけアセトン、C−Cアルキルニトリル、とりわけアセトニトリル、またはエーテル、例えばジ−(C−C−アルキル)−エーテル、例えばtert.−ブチルメチルエーテル、またテトラヒドロフラン、または溶媒混合物を含む。
【0085】
溶解および結晶化工程、または水平衡化結晶化工程の使用により、結晶および多形形態で存在する定義された水和物は再現性よく得ることができる。
【0086】
投与および医薬製剤
本発明の化合物は、通常経口、静脈内、皮下、バッカル、直腸、皮膚、鼻腔、気管、気管支で、何らかの他の経皮経路で、経口または経鼻スプレーとしてまたは吸入を介して投与される。本塩は薬学的に許容される投与形態で投与できる。処置すべき障害および患者および投与経路に依存して、本組成物は種々の用量で投与できる。
【0087】
典型的に、故に、医薬本発明の化合物は、宿主に経口または非経腸的(ここで使用する“非経腸的”は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および点滴を含む投与形態を意味する)に投与し、プロテアーゼ阻害効果を得る。ヒトのような大型動物の場合、化合物は単独で、または薬学的に許容される希釈剤、賦形剤または担体と組み合わせた組成物として投与できる。
【0088】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方法に対応する治療応答を達成するのに有効な活性化合物(複数もある)の量を得るように変化し得る。選択した用量レベルは特定の化合物の活性、投与経路、処置する状態の重症度ならびに処置する患者の状態および以前の薬歴に依存する。しかしながら、化合物を所望の治療効果を得るのに必要なレベルよりも低い用量で開始し、望む効果が達成されるまで用量を増加させることは当業者の技術の範囲内である。
【0089】
DPP−IV酵素活性の阻害が必要な状態の処置、予防、制御、改善、または危険性の軽減において、適当な用量レベルは、一般に約0.01から500mg/kg患者体重/日であり、それは1回または複数回投与で投与できる。好ましくは、用量レベルは約0.1から約250mg/kg/日;より好ましくは約0.5から約100mg/kg/日である。適当な用量レベルは、約0.01から250mg/kg/日、約0.05から100mg/kg/日、または約0.1から50mg/kg/日であり得る。この範囲内で、用量は0.05から0.5、0.5から5または5から50mg/kg/日であり得る。経口投与のために、本組成物は、好ましくは、処置すべき患者に投与するための対症的調節のために、1.0から1000mgの活性成分、特に1.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、150.0、200.0、250.0、300.0、400.0、500.0、600.0、750.0、800.0、900.0および1000.0mgの活性成分を含む錠剤の形態で投与する。本化合物は、1日1から4回、好ましくは1日1回または2回のレジメンで投与する。投与レジメンは、最適治療応答を提供するために調節し得る。
【0090】
本発明のさらなる局面に従い、故に本発明の化合物を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤または担体と混合して含む、医薬組成物が提供される。
【0091】
非経腸注射用の本発明の医薬組成物は、適当には、薬学的に許容される滅菌水性または非水性溶液、分散、懸濁液またはエマルジョンならびに使用直前に滅菌注射可能溶液または分散に再構成するための滅菌粉末を含む。適当な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または媒体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、および適当なそれらの混合物、植物油(例えばオリーブ油)およびオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルを含む。適切な流動性が、例えば、レシチンのようなコーティング物質の使用により、分散の場合必要な粒子サイズの維持によりおよび界面活性剤の使用により維持できる。
【0092】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントも含み得る。微生物の影響の保護は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸の包含により確実にし得る。例えば糖または塩化ナトリウムのような等張剤の包含が望ましいこともあり得る。注射可能医薬形態の長時間の吸収は、吸収を遅延する薬剤(例えばアルミニウム一ステアリン酸塩およびゼラチン)の包含によりもたらし得る。
【0093】
ある場合、薬剤の作用を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅くすることが望ましい。これは、乏しい水溶性の結晶または無定形物質の液体懸濁液の使用により達成できる。薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、それもまた結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経腸的に投与した医薬形態の遅延した吸収が、薬剤を油媒体に溶解または懸濁することにより達成される。
【0094】
注射可能デポ形態は、生物分解性ポリマー、例えばポリラクチド−ポリグリコリドへの薬剤のマイクロカプセル封入マトリックスの形成により適当に成し得る。薬剤対ポリマーの比率および用いる特定のポリマーの性質に依存して、薬剤放出速度を制御できる。他の生物分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。デポ注射可能製剤はまた身体組織と適合性のリポソームまたはマイクロエマルジョンに薬剤を入れることによりまた製造できる。注射可能製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過により、または使用直前に滅菌水または他の滅菌注射可能媒体に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を包含させることにより滅菌できる。
【0095】
経口投与用固体投与形態は、カプセル、錠剤、ピル、粉末および顆粒を含む。このような固体投与形態において、活性化合物は、典型的に少なくとも1種のクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムのような不活性な、薬学的に許容される賦形剤または担体および/または1種以上の:a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸のような増量剤またはエキステンダー;b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアのような結合剤;c)グリセロールのような湿潤剤;d)寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および炭酸ナトリウムのような崩壊剤;e)パラフィンのような溶解遅延剤;f)4級アンモニウム化合物のような吸収加速剤;g)セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートのような湿潤剤;h)カオリンおよびベントナイト粘土のような吸収剤およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよびそれらの混合物のような滑剤と混合する。カプセル、錠剤およびピルの場合、投与形態は緩衝化剤もまた含み得る。類似のタイプの固体組成物もまた、例えばラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を使用して、軟および硬充填ゼラチンカプセル中の増量剤として用い得る。
【0096】
適当には、経口製剤は溶解助剤を含む。溶解助剤はそれが薬学的に許容される限り、その同一性について限定されない。例は、非イオン性界面活性剤、例えばスクロース脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタントリオレイン酸塩)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルキルオールアミド、およびアルキルアミンオキシド;胆汁酸およびその塩(例えば、ケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびそれらの塩、およびそれらのグリシンまたはタウリン接合体);イオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸石鹸、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、エーテルホスホネート、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩;トリエタノールアミン石鹸、およびアルキル4級アンモニウム塩;および両性界面活性剤、例えばベタインおよびアミノカルボン酸塩を含む。
【0097】
錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル、および顆粒の固体投与形態は、製剤分野で既知の腸溶性コーティングおよび他のコーティングのようなコーティングおよび殻を施し得る。それらは所望により乳白剤を含んでよく、そしてまた活性成分(複数もある)を、腸管の特定の場所でのみまたは優先的に放出するおよび/または遅延方式で放出するような組成物であってもよい。包埋組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。
【0098】
活性化合物はまた、適当であれば上記の1種以上の賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態でもあり得る。活性化合物はまた粉砕された形態でよく、例えばそれは微粉化されていてよい。
【0099】
経口投与用の液体投与形態は、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。活性化合物に加えて、液体投与形態は、水または他の溶媒のような当分野で一般的に使用されている不活性希釈剤、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸塩、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、ピーナッツ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物を含み得る。不活性希釈剤以外に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および芳香剤のようなアジュバントも含み得る。懸濁液は、活性化合物に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天、およびトラガカントおよびそれらの混合物のような懸濁化剤を含み得る。
【0100】
直腸または膣投与用組成物は、好ましくは、室温では固体であるが体温で液体であり、故に、直腸または膣腔で融解し、活性化合物を放出するカカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐薬蝋のような適当な非刺激性賦形剤または担体と本発明の化合物の混合により製造できる坐薬の形である。
【0101】
本発明の化合物はまたリポソームの形態で投与もできる。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定化剤、防腐剤、賦形剤などを含み得る。好ましい脂質は、天然および合成の両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームの形成法は当分野で既知である。
【0102】
本発明の化合物の局所投与用の投与形態は、粉末、スプレー、軟膏および吸入剤を含む。活性化合物を滅菌条件下薬学的に許容される担体と混合し、全ての必要な防腐剤、緩衝剤または必要であり得る噴射剤を混合する。眼科用製剤、眼軟膏、粉末および溶液もまた本発明の範囲内であると意図される。
【0103】
有利には、本発明の化合物は経口活性を有し、活性の速い発生および低毒性であり得る。
【0104】
本発明の化合物は、好ましくは錠剤の形態、好ましくは直接圧縮により得られる錠剤である。
【0105】
1種、2種、3種またはそれ以上の希釈剤を選択できる。薬学的に許容される増量剤および薬学的に許容される希釈剤の例は、精製糖、圧縮可能糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、ソルビトール、スクロースおよびタルクを含むが、これらに限定されない。増量剤および/または希釈剤は、組成物の例えば約15%から約40重量%の量で存在し得る。好ましい希釈剤は微結晶性セルロースを含む。適当な微結晶性セルロースは約20nmから約200nmの平均粒子サイズを有する。微結晶性セルロースは、数社から入手可能である。適当な微結晶性セルロースはFMC Corporationにより製造されたAvicel PH 101、Avicel PH 102、Avicel PH 103、Avicel PH 105およびAvicel PH 200を含む。本発明の実施に際して特に好ましいのは、Avicel PH 102である。好ましくは微結晶性セルロースは、錠剤製剤中、約25%から約70重量%の量で存在する。
【0106】
他の希釈剤はラクトースである。好ましくは、ラクトースを製剤前に約50μmから約500μmの平均粒子サイズとなるように挽く。ラクトースは、錠剤製剤中に、約5%から約40重量%の量で存在する。
【0107】
1種、2種、3種またはそれ以上の崩壊剤を選択できる。薬学的に許容される崩壊剤の例は、デンプン;粘土;セルロース;アルギネート;ガム;架橋ポリマー、例えば架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルシウムカルボキシメチルセルロースおよび架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース;大豆ポリサッカライド;およびグアールガムを含むが、これらに限定されない。崩壊剤は、例えば組成物の約2%から約20重量%の量で存在し得る。典型的崩壊剤は、デンプン誘導体およびカルボキシメチルセルロース塩を含む。ナトリウムデンプングリコラートは、本製剤で好ましい崩壊剤である。好ましくは崩壊剤は、錠剤製剤中に約0%から約10重量%の量で存在し、約1%から約4重量%であり得る。
【0108】
1種、2種、3種またはそれ以上の滑剤を選択できる。薬学的に許容される滑剤および薬学的に許容される流動促進剤の例は、コロイド状シリカ、マグネシウムトリシリケート、デンプン、タルク、三塩基性リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ポリエチレングリコール、粉末化セルロースおよび微結晶性セルロースを含むが、これらに限定されない。滑剤は、例えば組成物の約0.1%から約5重量%の量で存在し得る;一方、流動促進剤は、例えば約0.1%から約10重量%の量で存在し得る。このような滑剤は、最終錠剤混合物に通常1重量%未満の量で一般に包含される。滑剤成分は疎水性でも親水性でもよい。このような滑剤の例は、ステアリン酸、タルクおよびステアリン酸マグネシウムを含む。ステアリン酸マグネシウムは、錠剤の圧縮および排出中の金型壁と錠剤混合物の摩擦を減らす。好ましい滑剤、ステアリン酸マグネシウムもまた製剤に使用する。好ましくは、滑剤は錠剤製剤中、約0.25%から約6%の量で存在する。他の可能な滑剤は、タルク、ポリエチレングリコール、シリカおよび硬化植物油を含む。本発明の所望の態様において、滑剤は製剤に存在しないが、それを製剤に直接添加するよりむしろ金型およびパンチに噴霧する。
【0109】
他の慣用の固体増量剤または担体、例えば、コーンデンプン、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリルモノおよびジステアリン酸塩、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、天然または合成ガム、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸塩、デキストラン、アカシアガム、カラヤガム、ローカストビーンム、トラガカントなど、希釈剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、着色剤および香味剤も所望により用いる。
【0110】
薬学的に許容される結合剤の例は、デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロースおよびヒドロキシルプロピルメチルセルロース;スクロース;デキストロース;コーンシロップ;ポリサッカライド;およびゼラチンを含むが、これらに限定されない。結合剤は、例えば組成物の約10%から約40重量%の量で存在し得る。
【0111】
有用な賦形剤のさらなる例は、Handbook of pharmaceutical excipients, 3rd edition, Edited by A.H.Kibbe, Published by:American Pharmaceutical Association, Washington DC, ISBN:0-917330-96-X, またはHandbook of Pharmaceutical Excipients(4th edition), Edited by Raymond C Rowe - Publisher:Science and Practiceに記載され、それらは引用により本明細書に包含する。
【0112】
ここに記載の塩および結晶を含む好ましい製剤は特許出願WO2005/067976に記載されており、引用により本明細書に包含する。
【0113】
本発明はまた、20から200mg、好ましくは20から160mg、好ましくは25から150mgの本発明の化合物を含む、ここに記載の組成物も提供する。
【0114】
ビルダグリプチン遊離塩基形態の好ましい用量は、25から200mg、最も好ましくは50から150mgまたは50から100mgである。最も好ましくは50mgまたは100mgまたは150mgである。故に、本発明の好ましい投与形態は、対応する量のその塩の形態の化合物、すなわち同じモル数またはミリモル数(ビルダグリプチン分子数)を含む。最終量は対応する塩の重量に依存する。
【0115】
本発明はまた20から200mg、好ましくは20から160mgの本発明の化合物を含む、ここに記載の組成物、医薬単位投与形態、組み合わせ、または使用も提供する。好ましくは20から200mgの本発明の化合物を患者に毎日投与する。
【0116】
ビルダグリプチン塩がルダグリプチンマロン酸水素塩およびビルダグリプチンフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択される、ここに記載の製剤、組み合わせ、医薬単位投与形態、または指示。
【0117】
ここに記載の比率は、本化合物および希釈剤の乾燥重量を素にして得られている。単位投与形態は、カプセル、錠剤、顆粒、チュワブル錠などのような任意の種類の医薬投与形態である。
【0118】
好ましくは、本発明は:
(a)乾燥重量ベースで20−40%または20−35重量%の本発明の化合物;
(b)乾燥重量ベースで40−95%、好ましくは62−78重量%の薬学的に許容される希釈剤;
(c)乾燥重量ベースで0−10%または1−6重量%の薬学的に許容される崩壊剤;および所望により
(d)乾燥重量ベースで0.1−10%または0.25−6重量%の薬学的に許容される滑剤
を含む医薬組成物に関する。
【0119】
好ましくはここに記載の組成物は;
i)微結晶性セルロースおよびラクトースから選択した1種または2種の希釈剤、
ii)2種の希釈剤、微結晶性セルロースおよびラクトース、
iii)乾燥重量ベースで25−70%、好ましくは35−55重量%の薬学的に許容される微結晶性セルロース、または
iv)乾燥重量ベースで25−70%、好ましくは35−55重量%の薬学的に許容される微結晶性セルロースおよび5−40%、好ましくは18−35%のラクトース
を含む。
【0120】
最も好ましくは、本医薬組成物は薬学的に許容される滑剤(d)を含む。
【0121】
本明細書で薬学的に許容される“崩壊剤”または“希釈剤”の記載は、少なくとも1種の崩壊剤または少なくとも1種の希釈剤、例えば2種もしくは3種の崩壊剤または2種もしくは3種の希釈剤の混合物もカバーする。
【0122】
好ましい希釈剤は、微結晶性セルロースまたはラクトースであるか、または好ましくは微結晶性セルロースおよびラクトースの組み合わせであり、好ましい崩壊剤はナトリウムデンプングリコラートであり、そして好ましい滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0123】
好ましい組成物中の具体的成分は以下の通りである:
(a)乾燥重量ベースで20−35重量%の本発明の化合物;
(b)乾燥重量ベースで25−70%、好ましくは35−55%または45−50重量%の薬学的に許容される微結晶性セルロース;
(c)乾燥重量ベースで5−40%、好ましくは18−35重量%の薬学的に許容されるラクトース;
(d)乾燥重量ベースで0−10%、好ましくは1−4重量%の薬学的に許容されるナトリウムデンプングリコラート;
(e)乾燥重量ベースで0.25−6%、好ましくは0.5−4重量%のステアリン酸マグネシウム。
【0124】
上記の慣用の固体増量剤または担体のような慣用の賦形剤を、所望によりここに記載の製剤に添加してよい。
【0125】
上記の新規化合物および組成物は、医薬錠剤、例えば圧縮錠剤または好ましくは直接圧縮錠剤、カプレットまたはカプセルの製造に特に適合し、物理技術の分野の当業者に必要とされる必要な物理特性、溶解および薬剤放出プロファイルを提供する。故に、さらなる態様において、本発明は医薬錠剤、カプレットまたはカプセルの製造のための、特に造粒、直接圧縮および乾式造粒(スラッギングまたはローラー圧縮)のための、上記化合物および製剤のいずれかの使用に関する。特に上記化合物および製剤で得られた錠剤は、とりわけ錠剤または直接圧縮錠剤の形態で処理したとき、非常に低い破砕性問題、直接圧縮中のホッパーでの粉末の低いセグリゲーション、粉末ブレンドの良好な圧縮性、凝集性および流動性、非常に良好な破壊強度、改善された製造ロバスト性、最適錠剤厚対錠剤重量比、製剤、とりわけ直接圧縮錠中の少ない水、英国薬局方1988に従う良好な分散崩壊時間DT、良好な分散品質を有し得る。請求の化合物および組成物の上記利点はまた、例えばローラー圧縮または湿式造粒のために、またはカプセル充填にも有用である。
【0126】
ここに記載の医薬組成物の開発中、本出願人は、圧縮錠剤、とりわけ直接圧縮錠が:
i)本発明の化合物を含む粒子が、250μm未満、好ましくは10から250μmの粒子サイズ分布を有するとき、および/または
ii)1週間、25℃および60%部屋湿度(RH)の後の錠剤の水含量が10%未満であるとき、および/または
iii)錠剤厚対錠剤重量比が0.002から0.06mm/mgであるとき
特に有利であることを発見した。
【0127】
故に一つの態様(a)において、本発明は、分散が本発明の化合物(塩またはその結晶形態)を含む粒子を含み、錠剤中の少なくとも40%、好ましくは60%、最も好ましくは80%、さらに好ましくは90%の粒子サイズ分布が250μm未満または好ましくは10から250μmである、医薬組成物/製剤、または圧縮錠剤、好ましくは直接圧縮医薬錠剤に関する。好ましくは本粒子は、ここで求する塩結晶形態の1種を含む。
【0128】
本発明は、分散が本発明の化合物を含む粒子を含み、錠剤中の少なくとも40%、好ましくは60%、最も好ましくは80%、さらに好ましくは90%の粒子サイズ分布が10μmより大きい、医薬組成物、または圧縮錠剤、好ましくは直接圧縮医薬錠剤に関する。
【0129】
用語“少なくとも40%、好ましくは60%、最も好ましくは80%、さらに好ましくは90%”は、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%を意味する。用語“少なくとも25%、好ましくは35%および最も好ましくは45%”は、少なくとも25%、好ましくは少なくとも35%および最も好ましくは少なくとも45%を意味する。
【0130】
特に本発明は、分散が本発明の化合物を含む粒子を含み、錠剤中の少なくとも25%、好ましくは35%および最も好ましくは45%の粒子サイズ分布が50から150μmである圧縮錠剤、好ましくは直接圧縮医薬錠剤に関する。
【0131】
他の態様(b)において、本発明は、分散が本発明の化合物を含む粒子を含み、錠剤厚対錠剤重量比が0.002から0.06mm/mg、好ましくは0.01から0.03mm/mgである圧縮錠、好ましくは直接圧縮医薬錠剤に関する。
【0132】
上記態様(a)および(b)の組み合わせは、良好な圧縮特性の圧縮錠剤、好ましくは直接圧縮錠剤を提供する。故に本発明はまた分散が本発明の化合物を含む粒子を含み;
i)錠剤中の少なくとも40%、好ましくは60%、最も好ましくは80%、さらに好ましくは90%の粒子サイズ分布が10から250μmであり、そして
ii)錠剤厚対錠剤重量比が0.002から0.06mm/mgまたは0.01から0.03mm/mgであり、そして所望により(好ましくは)、
iii)1週間、25℃および60%RH後の錠剤の水含量が10%未満である;
好ましくは;
i)錠剤の少なくとも25%、好ましくは35%および最も好ましくは45%の粒子サイズ分布が50から150μmである、そして
ii)錠剤厚対錠剤重量比が0.002から0.06mm/mgまたは0.01から0.03mm/mgである、および所望により(好ましくは)、
iii)1週間、25℃および60%RH後の錠剤の水含量が10%、好ましくは5%未満である
圧縮錠、好ましくは直接圧縮錠に関する。
【0133】
非常に好ましい態様において、上記3つの態様、すなわち圧縮錠剤および直接圧縮錠剤はここに記載の医薬組成物を含む。
【0134】
好ましくは粒子は60%の本発明の化合物、最も好ましくは90%または95%以上、およびさらに好ましくは98%以上の本化合物を含む。粒子は、あるいは当分野で既知の方法であるマイクロ造粒により形成され、40%までの薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0135】
活性成分の選択した粒子サイズ分布は、錠剤の最良の圧縮を提供するために特に重要であることが判明した。故に、さらなる好ましい態様において、選択した賦形剤(b)、(c)および/または(d)の粒子サイズ分布は、本化合物を含む粒子の粒子サイズ分布と同様である。用語“同様”は、錠剤中の賦形剤の粒子サイズ分布が5から400μm、または10から300μm、好ましくは10から250μmであることを意味する。適合した粒子サイズ分布の好ましい賦形剤は、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients(4th edition), Edited by Raymond C Rowe, Publisher:Science and Practiceから選択できる。
【0136】
薬剤の粒子サイズは結晶化、乾燥および/または製粉/篩い分けにより制御できる。粒子サイズはまたローラー圧縮および製粉/篩い分けを使用して粉砕できる。正確な粒子サイズの製造は当分野で既知であり、“Pharmaceutical forms:volume 2, 2nd edition, Ed.:H.A.Lieberman, L.Lachman, J.B.Schwartz(Chapter 3:Siize Reduction)”のような文献に記載されている。
【0137】
粒子サイズ分布は、当業者に既知の方法である篩分析、光子相関分光学またはレーザー回折(国際標準ISO 13320-1)、または電子センシング・ゾーン、光障害、沈降または顕微鏡法を使用して測定できる。篩い分けは、粒子サイズ分布により粉末を分類する最も古い方法の一つである。このような方法は既知であり、何らかの分析化学教科書のような文献またはUS食品医薬品局(FDA)施行標準を記載する米国薬局方(USP)刊行USP−NF(2004 - Chapter 786 -(The United States Pharmacopeial Convention, Inc., Rockville, MD))に記載されている。使用する技術は、例えばPharmaceutical dosage forms:volume 2, 2nd edition, Ed.:H.A.Lieberman, L.Lachman, J.B.Schwartzに記載されており、良い例である。それはまたさらなる方法も記載する(187頁):電子センシング・ゾーン、光障害、空気浸透、およびガスまたは液体中の沈降。
【0138】
粒子サイズの空気ジェット篩い測定において、空気は篩いを通って回転するスリットから上向きに流れ、篩上の物質が流動する。同時に陰圧を篩の底に適用し、それは微粒子を回収デバイスに移す。サイズ分析および平均粒子サイズの決定は、連続的に単一の篩を使用することにより、サイズ分布の微細末端からの除去により行う。これに対するさらなる詳細は、また“Particle Size Measurement”, 5th Ed. , p 178, vol. 1;T. Allen, Chapman & Hall, London, UK, 1997も参照。当業者にとって、サイズ測定それ自体故に通常の特性である。
【0139】
錠剤の水含量は、当業者に既知の方法である乾燥減量法またはカール・フィッシャー法を使用して測定できる(例えば水含量は、サーモグラメトリーによる乾燥減量で測定できる)。このような方法は既知であり、何らかの分析化学の教科書(J.A. Dean, Analytical Chemistry Handbook, Section 19, McGraw-Hill, New York, 1995)またはUS食品医薬品局(FDA)施行標準を記載する米国薬局方(USP)刊行USP−NF(2004)((2004 - USP - Chapter 921)に記載されている。
【0140】
錠剤厚は、定規、ノギス、ねじゲージまたは寸法を測定するための何らかの電子的方法を使用して測定可能である。我々は錠剤厚をmmで取り、錠剤重量mgで割って、比を得た。このような方法は既知であり、何らかの分析化学教科書、またはUS食品医薬品局(FDA)施行標準を記載する米国薬局方(USP)刊行USP−NF(2004)に記載されている。
【0141】
本発明の製剤および錠剤のさらなる利点は、本発明の化合物の特徴のため、得られる錠剤が短い溶解時間を有し、故に薬剤が血流に速く吸収され得ることである。さらに本発明の化合物で得られる速い分散時間および相対的に細かい分散は、嚥下錠剤用に有利である。故に本発明の製剤および錠剤は水中の分散およびまた直接嚥下両方のために提供できる。
【0142】
薬剤溶解速度(放出%)を測定するためのパドル法を、1000mlの0.01N HClと共に使用する。このような方法は既知であり、何らかの分析化学の教科書に、またはUS食品医薬品局(FDA)施行標準を記載する米国薬局方(USP)刊行USP−NF(2004 - Chapter 711)に記載されている。
【0143】
ここに記載の錠剤、または本発明の化合物の粒子の製造法は、特許出願WO2005/067976に記載され、それは引用により本明細書に包含する。粒子はWO2005/067976の実施例7に記載の方法に従い得ることができる。
【0144】
他の態様において、本発明は、上記の医薬組成物を含むカプセルを包含し、好ましくはここで;
i)カプセル中の本発明の化合物を含む粒子の少なくとも60%、好ましくは80%および最も好ましくは90%が10から500μmの粒子サイズ分布を有し、
ii)1週間、25℃および60%RH後の錠剤の水含量が10%未満である。
【0145】
より好ましくは、カプセルは上記の医薬組成物を含み、好ましくはここで;
i)少カプセル中の本発明の化合物を含む粒子の少なくとも60%、好ましくは80%および最も好ましくは90%が250μm未満、好ましくは10から250μmの粒子サイズ分布を有し、
ii)1週間、25℃および60%RH後の錠剤の水含量が5%未満である。
【0146】
最終製品は、通常の打錠または類似の機械を使用して、錠剤、カプセルなどの形態で製造する。
【0147】
組み合わせ治療
本発明の化合物は、1種以上の治療剤と組み合わせで投与できる。したがって、本発明はさらなる薬剤を含む医薬組成物を提供する。本発明はまた、本発明の化合物および薬剤を含む;治療に置いて同時に、別々にまたは連続的に使用するための組み合わせ製剤としての製品すなわち組み合わせ製品も提供する。
【0148】
特に、本発明の組成物または製品は、抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満または食欲調節剤、抗高血圧剤、HDL増加剤、コレステロール吸収モジュレーター、Apo−A1類似体および摸倣体、トロンビン阻害剤、アルドステロン阻害剤、血小板凝集阻害剤、エストロゲン、テストステロン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、化学療法剤、および5−HTまたは5−HT受容体モジュレーター;またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグから選択される治療剤をさらに含み得る。
【0149】
抗糖尿病剤の例は、インスリン、インスリン誘導体および摸倣体;インスリン分泌促進物剤、例えばスルホニルウレア(例えばグリピジド、グリブリドまたはアマリール);インスリン分泌性スルホニルウレア受容体リガンド、例えばメグリテニド(例えばナテグリニドまたはレパグリニド);インスリン増感剤、例えばタンパク質チロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤(例えばPTP−112);GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3)阻害剤、例えばSB−517955、SB−4195052、SB−216763、NN−57−05441またはNN−57−05445;RXRリガンド、例えばGW−0791またはAGN−194204;ナトリウム依存性グルコース共輸送体阻害剤、例えばT−1095;グリコーゲンホスホリラーゼA阻害剤、例えばBAY R3401;ビグアナイド、例えばメトホルミン;アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、例えばアカルボース;GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GLP−1類似体および摸倣体、例えばエキセンジン−4;DPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤、例えばDPP728、MK−0431、サクサグリプチンまたはGSK23A;AGEブレーカー;およびチアゾリドン誘導体、例えばグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾンまたは(R)−1−{4−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−オキサゾル−4−イルメトキシ]−ベンゼンスルホニル}−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−2−カルボン酸(WO03/043985の実施例19の化合物4)または非グリタゾン型PPAR−アゴニスト(例えばGI−262570);またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0150】
脂質低下剤の例は、3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリルコエンザイムA(HMG−CoA)レダクターゼ阻害剤、例えばロバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロスタチン(ベロスタチン)、フルバスタチン、ダルバスタチン(ダルバスタチン)、アトルバスタチン、ロスバスタチンまたはリバスタチン(リバスタチン);スクアレンシンターゼ阻害剤;FXR(ファルネソイドX受容体)リガンド;LXR(肝臓X受容体)リガンド;コレステリルアミン;フィブラート;ニコチン酸;およびアスピリン;またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0151】
抗肥満/食欲調節剤の例は、フェンテルミン、レプチン、ブロモクリプチン、デキストロアンフェタミン、アンフェタミン、フェンフルラミン、デキシフェンフルラミン、シブトラミン、オーリスタット、デキシフェンフルラミン、マジンドール、フェンテルミン、フェンジメトラジン、ジエチルプロピオン、フルオキセチン、ブプロピオン、トピラメート、ジエチルプロピオン、ベンズフェタミン、フェニルプロパノールアミンまたはエコピパム(ecopipam)、エフェドリン、シュードエフェドリンおよびカンナビノイド受容体アンタゴニスト、例えばリモナバン;またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0152】
抗高血圧剤の例は、ループ利尿剤、例えばエタクリン酸、フロセミドまたはトルセミド;利尿剤、例えばチアジド誘導体、クロルチアジド、ヒドロクロロチアジドまたはアミロライド;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えばベナゼプリル、カプトプリル、エナラプリル、フォシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリノドプリル(perinodopril)、キナプリル、ラミプリルまたはトランドラプリル;Na−K−ATPase膜ポンプ阻害剤、例えばジゴキシン;中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤、例えばチオルファンterteo−チオルファンまたはSQ29072;ECE阻害剤、例えばSLV306;2重ACE/NEP阻害剤、例えばオマパトリラート、サムパトリラート(sampatrilat)またはファシドトリル;アンギオテンシンIIアンタゴニスト、例えばカンデサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、テルミサルタンまたはバルサルタン;レニン阻害剤、例えばアリスキレン、テルラキレン(terlakiren)、ジテキレン(ditekiren)、RO−66−1132またはRO−66−1168;b−アドレナリン受容体ブロッカー、例えばアセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メトプロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロールまたはチモロール;変力剤、例えばジゴキシン、ドブタミンまたはミルリノン;カルシウムチャネルブロッカー、例えばアムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ニフェジピン、ニソルジピンまたはベラパミル;アルドステロン受容体アンタゴニスト;およびアルドステロンシンダーゼ阻害剤;またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0153】
コレステロール吸収モジュレーターの例は、Zetia(登録商標)およびKT6−971、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0154】
アルドステロン阻害剤の例は、アナストラゾール、フェドラゾールおよびエプレレノン、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0155】
血小板凝集阻害剤の例は、アスピリンまたは硫酸クロピドグレル、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0156】
化学療法剤の例は、タンパク質キナーゼ活性を低下させる化合物、例えばPDGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例えばイマチニブまたは4−メチル−N−[3−(4−メチル−イミダゾル−1−イル)−5−トリフルオロメチル−フェニル]−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンズアミド)、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0157】
5−HTまたは5−HT受容体モジュレーターの例は、テガセロッド、マレイン酸水素テガセロッド、シサプリドまたはシランセトロン(cilansetron)、またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含む。
【0158】
本発明の化合物対さらなる活性成分(複数もある)の重量比は変わり得て、各成分の有効量に依存する。一般に、各々の有効量を使用する。故に、例えば、本発明の化合物を他の薬剤と組み合わせるとき、本発明の化合物対他の薬剤の重量比は、一般に約1000:1から約1:1000、好ましくは約200:1から約1:200の範囲である。
【0159】
本発明の化合物と他の活性成分の組み合わせは、一般にまた上記の範囲内であるが、各場合において、各活性成分の有効量を使用すべきである。
【0160】
このような組み合わせにおいて本発明の化合物および他の活性剤を、別々にまたは連続して投与して良い。加えて、一つの成分の投与は、他の薬剤(複数もある)投与の前、同時または後であってよい。
【0161】
i)ビルダグリプチンマロン酸水素塩およびビルダグリプチンフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択されたビルダグリプチン塩、および
ii)好ましくはシンバスタチン、プラバスタチン、およびフルバスタチンから成る群から選択されたHMG−CoAレダクターゼ阻害剤
を含む上記の組み合わせ。
【0162】
i)ビルダグリプチンマロン酸水素塩およびビルダグリプチンフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択されたビルダグリプチン塩、および
ii)好ましくはメトホルミン、スルホニルウレア、チアゾリドン、およびインスリンから成る群から選択された抗糖尿病化合物
を含む上記の組み合わせ。
【0163】
i)ビルダグリプチンマロン酸水素塩およびビルダグリプチンフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択されたビルダグリプチン塩、および
ii)好ましくはリモナバンのようなカンナビノイド受容体アンタゴニストから成る群から選択された抗肥満剤
を含む上記の組み合わせ。
【0164】
i)ビルダグリプチンマロン酸水素塩およびビルダグリプチンフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択されたビルダグリプチン塩、および
ii)好ましくはベナゼプリル、バルサルタン、アリスキレンアムロジピンおよびヒドロクロロチアジドから成る群から選択された高血圧剤
を含む上記の組み合わせ。
【0165】
使用
本発明の化合物は種々の疾患および状態の治療に有効であり得る。
【0166】
特に、本発明の化合物は、非インスリン依存性真性糖尿病、関節炎、肥満、同種移植片移植、骨粗鬆症、心不全、障害されたグルコース代謝または耐糖能障害、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病)、心血管または腎臓疾患(例えば糖尿病性心筋症、左または右心室肥大、動脈および/または大血管の肥大性内側性肥厚、腸間膜脈管構造肥大または糸球体間質肥大)、神経変性または認知障害、高血糖、インスリン抵抗性、脂質障害、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(例えばクローン病または潰瘍性大腸炎)、膵炎、網膜症、腎症、神経障害、シンドロームX、卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、2型糖尿病、成長ホルモン欠乏、好中球減少症、神経障害、腫瘍転移、良性前立腺肥大、歯肉炎、高血圧および骨粗鬆症から選択される疾患または状態の処置または予防に有用であり得る。
【0167】
本化合物はまた鎮静または不安緩解作用を引き起こす、術後異化変化またはストレスに対するホルモン応答を減弱する、心筋梗塞後の死亡率および罹病率を減少させる、高脂血症または関連状態を調節する;およびVLDL、LDLまたはLp(a)レベルを低下させるのにも有用であり得る。
【0168】
本化合物はまた良好な脳組織分布のために神経変性または認知障害の処置に特に有用であり得る。ビルダグリプチンを本発明の化合物(ビルダグリプチンの塩形態)を介した血液脳関門を越えた輸送は、効率的な神経変性または認知障害の処置または予防の達成に有用である。
【0169】
故に本発明はまた;
− 活性成分(すなわちビルダグリプチンまたはその塩)の脳組織中の濃度を改善するための、すなわち血液脳関門の通過能を改善するための本発明の化合物の使用、
− ビルダグリプチンを血液脳関門を越えて輸送するための本発明の化合物の使用、
− 患者に治療的有効量の本発明の化合物を含む、ビルダグリプチンを血液脳関門を越えて輸送するための方法
に関する。
【0170】
ビルダグリプチン塩がビルダグリプチンマロン酸水素塩およびビルダグリプチンフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択される、上記の使用。
【実施例】
【0171】
以下の実施例は本発明を説明する。
以下の塩を選択プログラムで使用した:
【表1】

【0172】
LAF237塩の製造。
方法:
1. 90.9mgの原体を2ml エタノールに40℃で溶解する。
2. 等モル量の対イオンをエタノールに40℃で溶解する。
3. 2つの溶液を混合する。
【0173】
実施例1:ビルダグリプチン塩酸塩
4.0g LAF237塩基(13.18mmoles)を24ml イソプロパノールに70℃で溶解した。次いで1.36g 塩酸(37%水溶液)(13.80mmoles)を約5分にわたり滴下した。溶液を冷却させた。30℃での種晶添加の後、5ml tert−ブチル−メチルエーテルの一定流速で約10分添加した。得られた濃厚懸濁液を室温で3時間撹拌し、次いで濾過した。結晶を10ml イソプロパノールで洗浄し、60℃/15mbarで20時間乾燥させた。
収率:4.40g 白色粉末(93.8%)
元素分析:
計算値:60.08%C;7.71%H;12.36%N;9.42%O;10.43%Cl
実測値:60.03%C;7.88%H;12.33%N;9.69%O;10.36%Cl
【0174】
実施例2:ビルダグリプチン硫酸水素塩(I)
0.614g LAF237塩基(2.023mmoles)および0.209g 硫酸(アッセイ95%)(2.023mmoles)を10ml メタノールに室温で溶解した。得られた溶液を40℃で真空で濃縮した。0.50gの得られた無定形残渣を次いで5ml n−ブタノールに50℃で溶解した。溶液を撹拌下冷却させた。ゆっくりした結晶化が起こった。懸濁液を19時間、室温で撹拌し、濾過した。結晶を2ml n−ブタノールで洗浄し、50℃/約15mbarで20時間乾燥させた。
収率:0.41gの表題化合物が得られた。
元素分析:
計算値:50.86%C;6.78%H;10.47%N;7.99%S;23.91%O
実測値:50.64%C;6.68%H;10.44%N;7.81%S;23.97%O
【0175】
実施例3:ビルダグリプチン硫酸水素塩(II)
13.0g LAF237塩基(42.84mmoles)を120ml n−ブタノールに60℃で溶解した。4.33g 硫酸(アッセイ95%)(41.94mmoles)を次いで5分にわたり滴下した:得られた溶液をゆっくり冷却した。結晶化が、32℃で種晶添加後に起こった。懸濁液を5時間、室温で撹拌し、次いで3℃に冷却した。混合物をさらに0−3℃で17時間撹拌した。懸濁液を濾過した。結晶を0℃の50ml n−ブタノールで洗浄し、50℃/15mbarで20時間乾燥させた。
収率:13.70g 白色粉末(81.3%)
元素分析:
計算値:50.86%C;6.78%H;10.47%N;7.99%S;23.91%O
実測値:50.89%C;6.71%H;10.43%N;7.90%S;24.02%O
【0176】
実施例4:ビルダグリプチンフマル酸水素塩
13.0g LAF237塩基(42.84mmoles)および4.88g フマル酸酸(41.99mmoles)を150ml エタノールに50℃で溶解した。溶液を冷却させた。結晶化が42℃で種晶添加後に起こった。懸濁液を4時間、室温で、次いでさらに1時間、約3℃で撹拌した。得られた沈殿を濾過した。回収した結晶を50ml冷エタノールで洗浄し、50℃/15mbarで20時間乾燥させた。
収率:17.10 g(97.1%)
元素分析:
計算値:59.87%C;6.92%H;9.88%N;23.32%O
実測値:59.71%C;6.97%H;10.03%N;23.43%O
【0177】
実施例5:ビルダグリプチンマロン酸水素塩
13.0g LAF237塩基(42.84mmoles)および4.37g マロン酸(41.99mmoles)を150ml エタノールに45℃で溶解した。溶液を冷却させた。結晶化が33℃で種晶添加後に起こった。懸濁液を4時間、室温で、次いでさらに1時間、約3℃で撹拌した。得られた沈殿を濾過した。回収した結晶を50ml冷エタノールで洗浄し、50℃/15mbarで20時間乾燥させた。
収率:15.05g 白色結晶(88%)
元素分析:
計算値:58.95%C;7.17%H;10.31%N;23.56%O
実測値:58.96%C;7.16%H;10.46%N;23.71%O
【0178】
実施例6:X線回折
実施例1から5の各々の構造をX線回折により決定した。使用した粉末回折計はType XDS 2000またはX1, Scintag, Santa Clara, USAであった。
方法:試験物質を標本ホルダーに載せた。X線回折パターンを2°から35°(2−シータ)で、Cu Ka照射と共に記録した。
測定を約45kVおよび40mAで以下の条件下で行った:
スキャン速度: 0.5°(2−シータ)/分
チョッパー増大: 0.02°
スリット(左から右): 2、3、0.3、0.2mm
【0179】
試験物質のX線回折パターン中の全線の位置と、参照物質のX線回折パターンのそれと比較した。試験物質のX線回折パターンは、強いおよび中度に強いバンドの位置および相対強度が一致し、参照物質と比較して付加ピークまたは無定形バックグラウンドがないならば、参照物質と対応する。
【0180】
実施例1から5の結晶のX線粉末回折図(diffractogram)を各々図1から5に示す。明瞭なバンドのリストを表1に提供する。
【表2】

表1
【0181】
実施例7:
賦形剤を含むバルク物質の2週間、50℃および50℃/75%r.h.での安定性
要約:
全三種の塩形態は、tおよび50℃サンプルの間でアッセイ値にわずかな差異を示す。全形態は、賦形剤混合物に関係なく加湿条件下で幾分不安定性を示す。混合物Aの存在下、塩形態の全ては、全不純物%の点では同様の行動をした;しかしながら、アッセイ値における損失%の点では、遊離塩基が不純物レベルと相容れ得ない大きな損失を示した。混合物A中の遊離塩基を2回繰り返し、両方の場合において質量バランスの明らかな損失との変則的な結果であった。これは混合物A中の何らかの成分(複数もある)と遊離塩基との抽出問題、または恐らく検出されていない不純物の指標であり得る。加えて、LAF237のヒドロキシル基とトリグリセリド(水素化ヒマシ油)であるcutinaの間のエステル交換反応が低アッセイ値を説明し得る。遊離塩基の高い反応性は、恐らくこれら2相の塩と比べてより高い相互の溶解性によるものであろう。さらなる実験が仮説の確認のために必要である。
【0182】
乾燥混合の方法:25mgの遊離塩基原体をサンプルチューブに計り入れ、約2.5gの混合物A、または25mgのラクトースをチューブに添加した。重量調節を各塩について行った。
1条件あたり1サンプル調製および1サンプルあたり1注入。
【0183】
コントロール:原体の賦形剤でのコントロールを調製し、0データ点として、そして賦形剤からの原体の抽出の効率を試験するために分析する。
【表3】

*混合物A中の遊離塩基の50℃サンプルについてのオリジナルのアッセイ値は50/75およびtサンプルの純度レベルとも、同等な他の塩のサンプルとも一致せず、そのため混合物Aの遊離塩基を全ての条件で繰り返し、表中のデータは2回目の分析のものである。
【0184】
混合物A:(経口)マンニトール/Avicel PH 102/Cutina HR 57:38:5(m/m/m)
上記の実験は、ビルダグリプチン遊離塩基よりも、請求されているHCl塩またはフマル酸塩または結晶形態の方が良好な安定性を示す。マロン酸塩はまた改善された安定性も示し得る。
実施例7は、開発し、請求した新規塩およびその結晶形態の利点を示す非限定的実施例である。
【0185】
実施例8:
強制分解
要約:全塩形態は、3日間、80℃でのアッセイ後、顕著な損失なく良好なバルク安定性を示した。LAF237はまた室温で酸性条件下で良好な安定性も示す。しかしながら、遊離塩基水溶液は、3日間後に相当な分解が起こり、非常に不安定であることが証明された。遊離塩基水溶液は塩基性であり、分解は塩基性溶液中であるかのように起こる。過酸化物サンプルにおいて同じ主要な不純物が観察され、3日後3%のLAF237しか残っていなかった。
【0186】
ラセミ化試験:遊離塩基および塩化物両方の固体状態の薬剤はラセミ化の徴候を示さなかった。溶液中で、環境温度および80℃両方の塩化物塩水溶液もまたラセミ化の徴候を示さなかった。遊離塩基水溶液は化学的に分解し、ラセミ化の検出は不可能であった。
【0187】
注:遊離塩基原体の水への溶解は、遊離塩基原体が塩基性であり、非緩衝化溶液のpHを挙げるため、推奨されない。故に、分解を避けるために、遊離塩基原体は常に酸性範囲の緩衝か溶液に溶解する。故に、請求したLAF237塩は、例えば湿式造粒法による錠剤の製造にはるかに適合する。
【0188】
方法:25mg 原体を試験チューブに計り入れ、5mlの適当な溶液を添加する。
1条件あたり1サンプル調製および1サンプルあたり1注入。
HPLC分析のためにサンプルを水で1mg/mLに希釈。
全塩形態をバルクおよび水溶液で試験した。
【0189】
【表4】

塩化物塩およびフマル酸塩は、水中、80℃で3日後に安定なままである。マロン酸塩は遊離塩基よりも良好な安定性を示す。
【0190】
中:強制分解のために使用したHPLC法は、pH2.5の移動相を有し、その場合、酸分解産物がアミド分解産物の後に溶出する。新しい勾配法を選択するならば、酸分解産物とアミド分解産物の溶出順序は逆になり、酸分解産物が速く約1.8分で、そしてアミド分解産物が2番目に約2.5分で溶出する。長期間安定性(3ヶ月)サンプルのみを本勾配HPLC法で分析した。
【図面の簡単な説明】
【0191】
(原文に記載なし)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルダグリプチンと薬学的に許容される酸の1:1化学量論での塩。
【請求項2】
4−アセトアミド安息香酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、4−アミノサリチル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、炭酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、2,2−ジクロロ酢酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン−1,2−ジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、2−オキソグルタル酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピドール酸塩(L−ピログルタミン酸塩)、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、セバシン酸水素塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、またはウンデカン酸塩である、請求項1記載の塩。
【請求項3】
ビルダグリプチンの塩酸塩、硫酸塩または二カルボン酸塩である、請求項1記載の塩。
【請求項4】
4−アセトアミド安息香酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、4−アミノサリチル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、炭酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、デカン酸塩、2,2−ジクロロ酢酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタン−1,2−ジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、2−オキソグルタル酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピドール酸塩(L−ピログルタミン酸塩)、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、セバシン酸水素塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、酒石酸水素塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、またはウンデカン酸塩である、ビルダグリプチンの塩。
【請求項5】
ビルダグリプチンの塩酸塩、硫酸塩または二カルボン酸塩。
【請求項6】
塩酸塩である、請求項1記載の塩。
【請求項7】
結晶形態であり、以下のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項6記載の塩:
i)約15.0°、17.6°、18.2°および19.9°±0.3° 2−シータ、または
ii)約6.7°、13.5°、15.0°、16.1°、17.1°、17.6°、17.8°、18.2°、19.9°、20.5°、22.2°および22.4°±0.3° 2−シータ、または
iii)約6.7°、13.5°、15.0°、16.1°、17.1°、17.6°、17.8°、18.2°、19.9°、20.5°、22.2°、22.4°、24.5°、24.8°、25.4°、26.7°、27.1°および27.9°±0.3° 2−シータ、または
iv)本質的に図1に記載の通り。
【請求項8】
硫酸水素塩である、請求項1記載の塩。
【請求項9】
結晶形態であり、以下のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項8記載の塩:
i)約7.3°、16.6°、18.2°、および21.8°±0.3° 2−シータ、または
ii)約7.3°、14.5°、15.2°、16.6°、18.2°、20.0°、20.5°、21.8°、23.1°、23.4°および23.6°±0.3° 2−シータ、または
iii)約7.3°、14.5°、15.2°、16.6°、18.2°、19.6°、20.0°、20.5°、21.8°、23.1°、23.4°、23.6°、26.3°および27.9°±0.3° 2−シータ、または
iv)本質的に図2に記載の通り。
【請求項10】
結晶形態であり、以下のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項8記載の塩:
i)約7.1°、17.7°、19.9°、および21.6°±0.3° 2−シータ、または
ii)約7.1°、14.1°、16.8°、17.7°、18.0°、19.9°、21.6°、23.1°および24.3°±0.3° 2−シータ、または
ii)約7.1°、14.1°、16.3°、16.8°、17.7°、18.0°、19.9°、20.1°、21.4°、21.6°、23.1°、24.3°、27.8°および29.4°±0.3° 2−シータ、または
iv)本質的に図3に記載の通り。
【請求項11】
フマル酸水素塩である、請求項1記載の塩。
【請求項12】
結晶形態であり、以下のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項11記載の塩:
i)約8.5°、16.3°、17.1°および22.3°±0.3° 2−シータ、または
ii)約7.3°、8.5°、12.8°、13.9°、15.2°、15.4°、16.3°、17.1°、18.6°、18.9°、19.7°、20.4°、22.3°および23.9°,±0.3° 2−シータ、または
iii)約4.2°、7.3°、8.5°、11.25°、12.8°、13.9°、15.2°、15.4°、16.3°、17.1°、18.6°、18.9°、19.7°、20.4°、22.3°、23.9°、24.6°および25.8°±0.3° 2−シータ、または
iv)本質的に図4に記載の通り。
【請求項13】
マロン酸水素塩である、請求項1記載の塩。
【請求項14】
結晶形態であり、以下のピークを有するX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項13記載の塩:
i)約15.1°、17.0°、17.3°、17.8°および21.0°±0.3° 2−シータ、または
ii)約7.1°、8.8°、10.4°、12.0°、14.3°、15.1°、17.0°、17.3°、17.8°、18.6°、19.0°、21.0°、22.0°、22.9°、23.3°、24.5°、25.0°、および28.4°±0.3° 2−シータ、または
ii)約7.1°、8.8°、10.4°、12.0°、14.3°、15.1°、16.0°、17.0°、17.3°、17.8°、18.6°、19.0°、19.7°、21.0°、21.5°、22.0°、22.9°、23.3°、24.5°、25.0°、26.2°、26.6°、28.0°、28.4°および31.7°±0.3° 2−シータ、または
iv)本質的に図5に記載の通り。
【請求項15】
結晶、部分的に結晶、無定形または多形形態である、請求項1から5のいずれかに記載の塩。
【請求項16】
結晶、部分的に結晶、無定形または多形形態のビルダグリプチンの塩酸塩。
【請求項17】
溶媒和物の形の、請求項1から16のいずれかに記載の塩。
【請求項18】
水和物、例えば四水和物または六水和物の形である、請求項1から12のいずれかに記載の塩。
【請求項19】
乾燥している、請求項1から16のいずれかに記載の塩。
【請求項20】
無水である、請求項19記載の塩。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の塩を含む溶液。
【請求項22】
非水性である、請求項21記載の溶液。
【請求項23】
溶媒がアルカノールである、請求項22記載の溶液。
【請求項24】
水性である、請求項21記載の溶液。
【請求項25】
治療に使用するための、請求項1から20のいずれかに記載の塩。
【請求項26】
請求項1から20のいずれかに記載の塩を含む、医薬製剤。
【請求項27】
薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、請求項26記載の製剤。
【請求項28】
抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満または食欲調節剤、抗高血圧剤、HDL増加剤、コレステロール吸収モジュレーター、Apo−A1類似体および摸倣体、トロンビン阻害剤、アルドステロン阻害剤、血小板凝集阻害剤、エストロゲン、テストステロン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、化学療法剤、および5−HTまたは5−HT受容体モジュレーター;またはそれらの薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグから選択される治療剤をさらに含む、請求項26または27に記載の製剤。
【請求項29】
薬剤がテガセロッド、イマチニブ、メトホルミン、チアゾリドン誘導体、スルホニルウレア受容体リガンド、アリスキレン、バルサルタン、オーリスタットまたはスタチン、または薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグである、請求項29記載の製剤。
【請求項30】
薬剤がバルサルタン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、インスリン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、およびリモナバンから成る群から選択される、請求項28記載の製剤。
【請求項31】
20から200mgの請求項1から20のいずれかに記載の塩を含む、請求項26から30のいずれかに記載の製剤。
【請求項32】
ビルダグリプチン塩がマロン酸水素塩およびフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択される、請求項26から31のいずれかに記載の製剤。
【請求項33】
分散が請求項1から20のいずれかに記載の塩を含む粒子を含み、そして錠剤中の少なくとも40%、または少なくとも60%、または少なくとも80%、または少なくとも90%の粒子サイズ分布が250μm未満または好ましくは10から250μmである、請求項26から32のいずれかに記載の製剤。
【請求項34】
圧縮錠または直接圧縮医薬錠剤である、請求項33記載の製剤。
【請求項35】
治療において同時に、別々にまたは連続して使用するための、組み合わせ製剤として、請求項1から20のいずれかに記載の塩と、請求項28、29、および30のいずれかに記載の薬剤を含む、製品。
【請求項36】
20から200mgの請求項1から20のいずれかに記載の塩を含む、請求項35記載の製品。
【請求項37】
ビルダグリプチン塩がマロン酸水素塩およびフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態から成る群から選択される、請求項35または36記載の製品。
【請求項38】
非インスリン依存性真性糖尿病、関節炎、肥満、同種移植片移植、カルシトニン−骨粗鬆症、心不全、障害されたグルコース代謝または耐糖能障害、神経変性疾患、心血管または腎臓疾患、および神経変性または認知障害、高血糖、インスリン抵抗性、脂質障害、異脂肪血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベル、高LDLレベル、アテローム性動脈硬化症、血管再狭窄、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、膵炎、網膜症、腎症、神経障害、シンドロームX、卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群)、2型糖尿病、成長ホルモン欠乏、好中球減少症、神経障害、腫瘍転移、良性前立腺肥大、歯肉炎、高血圧および骨粗鬆症から選択される疾患または状態の処置または予防用薬剤の製造における、請求項1から20のいずれかに記載の塩の使用。
【請求項39】
神経変性または認知障害の処置または予防用薬剤の製造における、請求項1から20のいずれかに記載の塩の使用。
【請求項40】
脳組織中の活性成分濃度の改善のための、請求項1から20のいずれかに記載の塩の使用。
【請求項41】
ビルダグリプチンを血液脳関門を越えて輸送するための、請求項1から20のいずれかに記載の塩の使用。
【請求項42】
ビルダグリプチンを血液脳関門を越えて輸送するための方法であって、患者に治療的有効量の請求項1から20のいずれかに記載の塩を投与することを含む、方法。
【請求項43】
患者における疾患または状態を処置または予防する方法であって、患者に治療的有効量の請求項1から20のいずれかに記載の塩を投与することを含む、方法。
【請求項44】
疾患または状態が請求項38または39のいずれかに定義のものである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
ビルダグリプチン塩がマロン酸水素塩およびフマル酸水素塩、またはいずれの場合もそれらの結晶形態からなる群から選択される、請求項38から41のいずれかに記載の使用または請求項42から44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
請求項1から20のいずれかに記載の塩を結晶形態で製造する方法であって:
i)ビルダグリプチンおよび薬学的に許容される酸を含む溶液を形成し、
ii)塩の結晶化を誘導し、そして
iii)結晶ビルダグリプチン塩を回収する
ことを含む、方法。
【請求項47】
溶媒がメタノール、n−ブタノール、エタノールまたはイソプロパノールである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
結晶化を溶液に貧溶媒を添加することにより誘発する、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
結晶化を、所望により種晶添加と組み合わせてよい冷却により誘発する、請求項46または47に記載の方法。
【請求項50】
結晶化を、反応溶液から無定形塩を回収し、本塩を結晶化溶媒に再溶媒し、そして該溶媒中で血腫丘を誘発することにより誘発する、請求項46または47に記載の方法。
【請求項51】
回収した塩を乾燥させる、請求項46から50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
回収した塩を減圧下の加熱により乾燥させる、請求項51記載の方法。
【請求項53】
20から200mgの請求項1から20のいずれかに記載の塩を患者に毎日投与する、請求項38から41もしくは45のいずれかに記載の使用または請求項42から44もしくは45のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−503108(P2009−503108A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525197(P2008−525197)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/030335
【国際公開番号】WO2007/019255
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】