説明

ビーム照射装置およびレーザレーダ

【課題】目標領域に対するレーザ光の照射精度を高く維持しながら、制御回路の処理負担を軽減できるビーム照射装置およびレーザレーダを提供する。
【解決手段】スキャン制御部1aは、Tilt方向におけるミラー制御の半分の頻度で、Pan方向におけるミラー制御を行う。また、スキャン制御部1aは、PSD308上に設定された目標軌道上のQn、Qn+1、…に対応する位置にサーボ用レーザ光の実測位置が到達したことに応じて、レーザ光源401をパルス状に発光させる。これにより、走査用レーザ光は、サーボ用レーザ光の実測位置がQn’、Qn+1’、…に到達したタイミングで、目標領域に照射される。こうすると、Pan方向におけるミラー制御をラフに行いながら、略一定振り角毎に、走査用レーザ光を目標領域に照射できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目標領域にレーザ光を照射するビーム照射装置に関し、特に、目標領域にレーザ光を照射したときの反射光をもとに、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出する、いわゆるレーザレーダに搭載されるビーム照射装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の安全性を高めるために、走行方向前方にレーザ光を照射し、その反射光の状態から、目標領域内における障害物の有無や障害物までの距離を検出するレーザレーダが、家庭用乗用車等に搭載されている。一般に、レーザレーダは、レーザ光を目標領域内でスキャンさせ、各スキャン位置における反射光の有無から、各スキャン位置における障害物の有無を検出し、さらに、各スキャン位置におけるレーザ光の照射タイミングから反射光の受光タイミングまでの所要時間をもとに、そのスキャン位置における障害物までの距離を検出するものである。
【0003】
これまで、レーザ光のスキャン機構として、ポリゴンミラーを用いるスキャン機構や、走査用レンズを二次元駆動するレンズ駆動タイプのスキャン機構(たとえば、特許文献1参照)が知られている。この他、ミラーによってレーザ光を走査させるミラー回動タイプのスキャン機構も知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
この種のレーザレーダでは、スキャン開始時からの経過時間をもとに、レーザ光源の駆動制御が行われる。たとえば、スキャン開始時から一定時間間隔毎に、目標領域に向かってレーザ光がパルス発光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−83988号公報
【特許文献2】特開2001−290100
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザ光を目標領域内において適正にスキャンさせるためには、スキャン機構を制御する回路の演算量ないし演算頻度を高める必要がある。他方、スキャン機構をラフに制御することで、制御回路の処理負担を軽減できるが、こうすると、レーザ光が目標領域内において適正にスキャンされなくなる。この場合、上記の如くスキャン開始時からの経過時間に基づいてレーザ光を発光させると、パルス発光されたレーザ光の照射位置が所期の位置からずれてしまい、目標領域に対するレーザ光の照射精度が低下する惧れがある。
【0007】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、目標領域に対するレーザ光の照射精度を高く維持しながら、制御回路の処理負担を軽減できるビーム照射装置およびレーザレーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、目標領域においてレーザ光を走査させるアクチュエータの制御のために用いる光検出器の出力を、レーザ光源の駆動制御にも用いることで、目標領域に対するレーザ光の照射精度を高く維持しながら、アクチュエータ制御回路の処理負担を効果的に軽減するものである。
【0009】
本発明の第1の態様は、ビーム照射装置に関する。第1の態様に係るビーム照射装置は、レーザ光を出射するレーザ光源と、目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、サーボ光を発するとともに前記アクチュエータの駆動に伴って前記サーボ光の進行方向を変化させるサーボ光学系と、前記サーボ光を受光して受光位置に応じた信号を出力する光検出器と、前記光検出器から出力される信号に基づいて前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、前記光検出器から出力される信号に基づいて前記レーザ光源を制御するレーザ制御部とを備える。ここで、前記レーザ制御部は、前記サーボ光の前記受光位置が予め決められた目標位置に到達したことに応じて、前記レーザ光源をパルス状に発光させる。
【0010】
第1の態様に係るビーム照射装置によれば、光検出器からの出力に基づいてレーザ光源の制御が行われる。よって、アクチュエータに対する制御をラフに行っても、目標領域に対するレーザ光の照射精度を高く維持することができる。
【0011】
第1の態様に係るビーム照射装置において、前記アクチュエータは、前記レーザ光の進行方向を変化させる光学素子を、前記目標領域における前記レーザ光の走査方向に対応する第1の方向に駆動する第1の駆動部と、前記目標領域上の走査軌道に対する前記レーザ光の位置ずれを補正する第2の方向に前記光学素子を駆動する第2の駆動部とを備える構成とされ得る。このとき、前記アクチュエータ制御部は、前記第1の駆動部に対する制御の精度を前記第2の駆動部に対する制御の精度よりも低下させる構成とされ得る。
【0012】
この場合、前記アクチュエータ制御部は、前記第1の駆動部に対する制御の頻度を前記第2の駆動部に対する制御の頻度よりも低下させるよう構成され得る。また、前記光学素子はミラーにより構成することができ、前記第1の駆動部は、前記ミラーを第1の回動軸で回動させ、また、前記第2の駆動部は、前記第1の回動軸に垂直な第2の回動軸で前記ミラーを回動させる構成とされ得る。
【0013】
さらに、第1の態様に係るビーム照射装置において、前記レーザ制御部は、一連の前記目標位置をテーブルとして記憶する記憶部を備え、前記サーボ光の受光位置が前記テーブル上の前記目標位置に到達したことに応じて、順次、前記レーザ光源をパルス状に発光させる構成とされ得る。このようにテーブルを用いてレーザ光源の発光タイミングを制御するようにすると、アクチュエータ制御部による処理を簡素化することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、レーザレーダに関する。本態様に係るレーザレーダは、上記第1の態様に係るビーム照射装置と、前記目標領域内において反射された前記レーザ光を受光する反射光検出器と、前記反射光検出器から出力される信号に基づいて前記目標領域における障害物の状況を検出する障害物検出部とを備える。
【0015】
第2の態様に係るレーザレーダによれば、上記第1の態様に係るビーム照射装置と同様の効果を奏することができる。すなわち、目標領域に対するレーザ光の照射精度を高く維持しながら、制御回路の処理負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のとおり、本発明によれば、目標領域に対するレーザ光の照射精度を高く維持しながら、制御回路の処理負担を軽減できるビーム照射装置およびレーザレーダを提供することができる。
【0017】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態に係るミラーアクチュエータの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図3】実施の形態に係るビーム照射装置の光学系を示す図である。
【図4】実施の形態に係るPSDの構成を示す図である。
【図5】実施の形態に係る位置検出信号の生成方法を説明する図である。
【図6】実施の形態に係るレーザレーダの回路構成を示す図である。
【図7】実施の形態に係るレーザ光の出力レベルを示す図である。
【図8】実施の形態に係るPSDの出力する位置情報を示す図である。
【図9】実施の形態に係るスキャン制御を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るレーザ光が適正にスキャンされることを示す図である。
【図11】実施の形態に係るパルス発光位置を説明する図である。
【図12】実施の形態に係る他のスキャン制御を説明する図である。
【図13】実施の形態に係るパルス発光位置を説明する図である。
【図14】実施の形態に係るパルス発光位置が調整されることを説明する図である。
【図15】実施の形態に係る光検出器の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に、本実施の形態に係るミラーアクチュエータ100の構成を示す。なお、同図(a)はミラーアクチュエータ100の分解斜視図、同図(b)はアセンブル状態にあるミラーアクチュエータ100の斜視図である。
【0020】
同図(a)において、110は、ミラーホルダである。ミラーホルダ110には、端部に抜け止めを有する支軸111と、端部に受け部112aを有する支軸112が形成されている。受け部112aには透明体200の厚みと略同じ寸法の凹部が配され、この凹部に透明体200の上部が装着される。さらに、ミラーホルダ110の前面には平板状のミラー113が装着されており、背面にはコイル114が装着されている。なお、コイル114は、方形状に巻回されている。
【0021】
支軸112には、上記の如く、受け部112aを介して平行平板状の透明体200が装着される。ここで、透明体200は、2つの平面がミラー113の鏡面に平行となるようにして支軸112に装着される。
【0022】
120は、ミラーホルダ110を支軸111、112を軸として回動可能に支持する可動枠である。可動枠120には、ミラーホルダ110を収容するための開口121が形成されており、また、ミラーホルダ110の支軸111、112と係合する溝122、123が形成されている。さらに、可動枠120の側面には、端部に抜け止めを有する支軸124、125が形成され、背面には、コイル126が装着されている。コイル126は、方形状に巻回されている。
【0023】
130は、支軸124、125を軸として可動枠120を回動可能に支持する固定枠である。固定枠130には、可動枠120を収容するための凹部131が形成され、また、可動枠120の支軸124、125と係合する溝132、133が形成されている。さらに、固定枠130の内面には、コイル114に磁界を印加するマグネット134と、コイル126に磁界を印加するマグネット135が装着されている。なお、溝132、133は、それぞれ固定枠130の前面から上下2つのマグネット135間の隙間内まで延びている。
【0024】
140は、ミラーホルダ110の支軸111、112が可動枠120の溝122、123から脱落しないよう、支軸111、112を前方から押さえる押さえ板である。また、141は、可動枠120の支軸124、125が固定枠130の溝132、133から脱落しないよう、支軸124、125を前方から押さえる押さえ板である。
【0025】
ミラーアクチュエータ100をアセンブルする際には、ミラーホルダ110の支軸111、112を可動枠120の溝122、123に係合させ、さらに、支軸111、112の前面を押さえるようにして、押さえ板140を可動枠120の前面に装着する。これにより、ミラーホルダ110が、可動枠120によって、回動可能に支持される。
【0026】
このようにしてミラーホルダ110を可動枠120に装着した後、可動枠120の支軸124、125を固定枠130の溝132、133に係合させ、さらに、支軸132、133の前面を押さえるようにして、押さえ板141を固定枠130の前面に装着する。これにより、可動枠120が、回動可能に固定枠130に装着され、ミラーアクチュエータ100のアセンブルが完了する。
【0027】
ミラーホルダ110が可動枠120に対し支軸111、112を軸として回動すると、これに伴ってミラー113が回動する。また、可動枠120が固定枠130に対し支軸124、125を軸として回動すると、これに伴ってミラーホルダ110が回動し、ミラーホルダ110と一体的にミラー113が回動する。このように、ミラーホルダ110は、互いに直交する支軸111、112と支軸124、125によって、二次元方向に回動可能に支持され、ミラーホルダ110の回動に伴って、ミラー113が二次元方向に回動する。このとき、支軸112に装着された透明体200も、ミラー113の回動に伴って回動する。
【0028】
なお、同図(b)に示すアセンブル状態において、2つのマグネット134は、コイル114に電流を印加することにより、ミラーホルダ110に支軸111、112を軸とする回動力が生じるよう配置および極性が調整されている。したがって、コイル114に電流を印加すると、コイル114に生じる電磁駆動力によって、ミラーホルダ110が、支軸111、112を軸として回動する。
【0029】
また、同図(b)に示すアセンブル状態において、2つのマグネット135は、コイル126に電流を印加することにより、可動枠120に支軸124、125を軸とする回動力が生じるよう配置および極性が調整されている。したがって、コイル126に電流を印加すると、コイル126に生じる電磁駆動力によって、可動枠120が、支軸124、125を軸として回動し、これに伴って、透明体200が回動する。
【0030】
図2は、ミラーアクチュエータ100が装着された状態の光学系の構成を示す図である。
【0031】
図2において、500は、光学系を支持するベースである。ベース500には、ミラーアクチュエータ100の設置位置に開口503aが形成され、この開口に透明体200が挿入されるようにして、ミラーアクチュエータ100がベース500上に装着されている。
【0032】
ベース500の上面には、ミラー113にレーザ光を導くための光学系400が装着されている。この光学系400は、レーザ光源401と、ビーム整形用のレンズ402、403からなっている。レーザ光源401は、ベース500の上面に配されたレーザ光源用の基板401aに装着されている。
【0033】
レーザ光源401から出射されたレーザ光(以下、「走査用レーザ光」という)は、レンズ402、403によって、それぞれ、水平方向および鉛直方向の収束作用を受ける。レンズ402、403は、目標領域(たとえば、ビーム照射装置のビーム出射口から前方100m程度の位置に設定される)におけるビーム形状が、所定の大きさ(たとえば、縦2m、横1m程度の大きさ)になるよう設計されている。
【0034】
レンズ402は、鉛直方向にレンズ効果があるシリンドリカルレンズであり、レンズ403は、走査用レーザ光を略平行光とするための非球面レンズである。レーザ光源から出射されたビームは、鉛直方向と水平方向で広がり角が異なる。1つ目のレンズ402は、鉛直方向と水平方向におけるレーザ光の広がり角の比率を変える。2つ目のレンズ403は、出射ビームの広がり角(鉛直方向と水平方向の両方)の倍率を変える。
【0035】
レンズ402、403を透過した走査用レーザ光は、ミラーアクチュエータ100のミラー113に入射し、ミラー113によって目標領域に向かって反射される。ミラーアクチュエータ100によってミラー113が二次元駆動されることにより、走査用レーザ光が目標領域内において二次元方向にスキャンされる。
【0036】
ミラーアクチュエータ100は、ミラー113が中立位置にあるときに、レンズ403からの走査用レーザ光がミラー113のミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するよう配置されている。なお、「中立位置」とは、ミラー面が鉛直方向に対し平行で、且つ、走査用レーザ光がミラー面に対し水平方向において45度の入射角で入射するときのミラー113の位置をいう。
【0037】
ベース500の下面には、回路基板300が配されている。さらに、ベース500の裏面と側面にも回路基板301、302が配されている。
【0038】
図3(a)は、ベース500を裏面側から見たときの一部平面図である。同図(a)には、ベース500の裏側のうちミラーアクチュエータ100が装着された位置の近傍が示されている。
【0039】
図示の如く、ベース500の裏側周縁には、壁501、502が形成されており、壁501、502よりも中央側は、壁501、502よりも一段低い平面503となっている。壁501には、半導体レーザ303を装着するための開口が形成されている。この開口に半導体レーザ303を挿入するようにして、半導体レーザ303が装着された回路基板301が壁501の外側面に装着されている。他方、壁502の近傍には、PSD308が装着された回路基板302が装着されている。
【0040】
ベース500裏側の平面503には、取り付け具307によって集光レンズ304と、アパーチャ305と、ND(ニュートラルデンシティ)フィルタ306が装着されている。さらに、この平面503には開口503aが形成されており、この開口503aを介して、ミラーアクチュエータ100に装着された透明体200がベース500の裏側に突出している。ここで、透明体200は、ミラーアクチュエータ100のミラー113が中立位置にあるときに、2つの平面が、鉛直方向に平行で、且つ、半導体レーザ303の出射光軸に対し45度傾くように位置づけられる。
【0041】
半導体レーザ303から出射されたレーザ光(以下、「サーボ用レーザ光」という)は、集光レンズ304を透過した後、アパーチャ305によってビーム径が絞られ、さらにNDフィルタ306によって減光される。その後、サーボ用レーザ光は、透明体200に入射され、透明体200によって屈折作用を受ける。しかる後、透明体200を透過したサーボ用レーザ光は、PSD308によって受光され、PSD308から、受光位置に応じた位置検出信号が出力される。
【0042】
図3(b)は、透明体200の回動位置がPSD308によって検出されることを模式的に示す図である。なお、同図(b)では、便宜上、同図(a)の透明体200、半導体レーザ303、PSD308のみが図示されている。
【0043】
サーボ用レーザ光は、レーザ光軸に対し傾いて配置された透明体200によって屈折され、光検出器308に受光される。ここで、透明体200が破線矢印のように回動すると、サーボ用レーザ光の光路が図中の点線のように変化し、光検出器308上におけるサーボ用レーザ光の受光位置が変化する。これにより、光検出器308にて検出されるサーボ用レーザ光の受光位置によって、透明体200の回動位置を検出することができる。
【0044】
図4(a)は、PSD308の構成を示す図(側断面図)、図4(b)はPSD308の受光面を示す図である。
【0045】
図4(a)を参照して、PSD308は、N型高抵抗シリコン基板の表面に、受光面と抵抗層を兼ねたP型抵抗層を形成した構造となっている。抵抗層表面には、同図(b)の横方向における光電流を出力するための電極X1、X2と、縦方向における光電流を出力するための電極Y1、Y2(同図(a)では図示省略)が形成されている。また、裏面側には共通電極が形成されている。
【0046】
受光面にレーザ光が照射されると、照射位置に光量に比例した電荷が発生する。この電荷は光電流として抵抗層に到達し、各電極までの距離に逆比例して分割されて、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される。ここで、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流は、レーザ光の照射位置から各電極までの距離に逆比例して分割された大きさを有している。よって、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流値をもとに、受光面上における光の照射位置を検出することができる。
【0047】
たとえば、図5(a)の位置Pにサーボ用レーザ光が照射されたとする。この場合、受光面のセンターを基準点とする位置Pの座標(x,y)は、電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流量をそれぞれIx1、Ix2、Iy1、Iy2、X方向およびY方向における電極間の距離をLx、Lyとすると、たとえば、以下の式によって算出される。
【0048】
【数1】

【0049】
図5(b)は、この算出式を実現する演算回路の構成を示す図である。電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号Ix1、Ix2、Iy1、Iy2は、アンプ21、22、23、24によって増幅される。そして、加算回路25、27によって、それぞれ、(Ix2 + Ix1)、(Iy2 + Iy1)の演算が行われ、また、減算回路26、28によって、それぞれ、(Ix2 − Ix1)と(Iy2 − Iy1)の演算が行われる。さらに、除算回路29、30によって、それぞれ、式(1)および式(2)の左辺の除算が行われ、この除算回路29、30から、サーボ用レーザ光の受光位置PにおけるX方向位置(2x/Lx)とY方向位置(2y/Ly)を示す位置検出信号が出力される。
【0050】
図6は、本実施例に係るレーザレーダの構成を示す図である。図示の如く、レーザレーダは、DSP(Digital Signal Processor)制御回路1と、D/A変換回路2と、レーザ駆動回路3と、アクチュエータ駆動回路4と、走査光学系5と、サーボ光学系6と、I/V変換回路7と、PSD信号処理回路8と、A/D変換回路9と、受光光学系10と、I/V変換回路11と、PD(Photo Detector)信号処理回路12と、A/D変換回路13を備えている。
【0051】
なお、走査光学系5は図2で示した光学系を備え、サーボ光学系6は図3(a)で示した光学系を備える。走査光学系5には、便宜上、レーザ光源401と、ミラーアクチュエータ100と、ミラー113のみ示されている。また、サーボ光学系6には、便宜上、半導体レーザ303と、透明体200と、PSD308のみ示されている。
【0052】
DSP制御回路1は、レーザ駆動回路3およびアクチュエータ駆動回路4を駆動制御するためのデジタル信号をD/A変換回路2に出力する。また、A/D変換回路13から入力されるデジタル信号をもとに、走査領域内に含まれる障害物の位置と障害物までの距離を検出する。
【0053】
また、DSP制御回路1は、クロック生成部(図示せず)と、スキャン制御部1aと、距離測定部1bを有する。クロック生成部は、高周波のクロックを出力する。
【0054】
スキャン制御部1aは、ミラーアクチュエータ100を制御するための制御信号を生成し、これを、D/A変換回路2を介してアクチュエータ駆動回路4に供給する。これにより、走査用レーザ光が走査領域において二次元方向にスキャンされる。なお、ミラーアクチュエータ100が制御される手順については、追って図8を参照して説明する。
【0055】
また、スキャン制御部1aは、後述の如く、A/D変換回路9から入力される受光信号に基づいて、D/A変換回路2を介してレーザ駆動回路3を駆動し、レーザ光源401および半導体レーザ303の出力を制御する。
【0056】
距離測定部1bは、後述の如く、A/D変換回路13から入力される受光信号とクロックに基づき、障害物までの距離を測定する。
【0057】
D/A変換回路2は、DSP制御回路1から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換してレーザ駆動回路3およびアクチュエータ駆動回路4に出力する。レーザ駆動回路3は、D/A変換回路2から入力された制御信号に応じて、走査光学系5内のレーザ光源401と、サーボ光学系6内の半導体レーザ303を駆動する。アクチュエータ駆動回路4は、D/A変換回路2から入力された制御信号に応じて、走査光学系5内のミラーアクチュエータ100を駆動する。
【0058】
走査光学系5において、レーザ光源401から出射された走査用レーザ光は、ミラーアクチュエータ100に支持されたミラー113に入射される。ミラー113は、上記の如く、2軸を軸として回動可能にミラーアクチュエータ100によって支持されている。また、ミラー113は、受光した走査用レーザ光を走査領域へと反射する。
【0059】
サーボ光学系6において、半導体レーザ303から出射されたサーボ用レーザ光は、上記の如く、透明体200によって屈折された後、PSD308の受光面に入射される。これにより、サーボ用レーザ光の受光位置に応じた電流信号(図5(a)中の電極X1、X2、Y1、Y2から出力される電流信号)が、I/V変換回路7に入力される。
【0060】
I/V変換回路7は、入力された電流信号を電圧信号に変換し、PSD信号処理回路8に出力する。PSD信号処理回路8は、図5を用いて説明した演算に基づき、入力された電圧信号からサーボ用レーザ光の受光位置を表す信号を生成し、これをA/D変換回路9に出力する。なお、図5(b)では、電流値をもとに演算がなされているが、図6の構成では、各電極からの電流値が電圧値に変換され、変換後の電圧値をもとに、同様の演算処理にて受光位置を表す信号が生成される。A/D変換回路9は、入力された電圧信号をデジタル信号に変換してDSP制御回路1内のスキャン制御部1aに出力する。
【0061】
受光光学系10は、集光レンズ410とPD411を有する。集光レンズ410は、走査領域内の障害物によって反射された走査用レーザ光を集光し、PD411へと導く。PD411は、集光レンズ410によって集光されたレーザ光を受光し、受光量に応じた大きさの電流信号をI/V変換回路11に出力する。
【0062】
I/V変換回路11は、入力された電流信号を電圧信号に変換し、PD信号処理回路12に出力する。PD信号処理回路12は、I/V変換回路11から入力された電圧信号を増幅およびノイズ除去し、A/D変換回路13に出力する。A/D変換回路13は、入力された信号をデジタル信号に変換して距離測定部1bに出力する。
【0063】
次に、走査領域内の障害物までの距離の測定手順について説明する。
【0064】
スキャン制御部1aは、走査用レーザ光がスキャンされるときに、半導体レーザ303(サーボ用レーザ)をパワーレベルPwbにて常時発光させるための信号を、D/A変換回路2を介してレーザ駆動回路3に出力する。このとき、同時に、所定のタイミングにて、レーザ光源401(走査用レーザ)の出力が一定時間だけパルス状に変化される。すなわち、スキャン制御部1aは、レーザ光源401の出力レベルが所定のタイミングでゼロからレベルPwaに立ち上げるための信号を、D/A変換回路2を介してレーザ駆動回路203に出力する。レベルPwaは、障害物検出および距離検出を円滑に行い得るレベルに設定される。
【0065】
図7(a)を参照して、レーザ光源401の出力は、所定のタイミングにて、パルス状にゼロからレベルPwaに立ち上げられる。これにより、走査用レーザ光は、走査領域内をスキャンしながら、所定のタイミングにてパルス状に発光される。また、同図(b)を参照して、半導体レーザ303の出力レベルは、レーザ光源401のパルス発光のタイミングに対応するか否かに関わらず、レベルPwbに維持される。
【0066】
図6に戻って、距離測定部1bは、A/D変換回路13から入力されたデジタル信号をもとに反射光の受光タイミングを検出し、この受光タイミングと、スキャン制御部1aから入力される走査用レーザ光のパルス発光のタイミングにより、スキャン位置における障害物までの距離を検出する。
【0067】
具体的には、各スキャン位置において出力されるパルス発光のタイミングから、その反射光の受光タイミングまで、DSP制御回路1内のクロック発生部から出力されるクロック数Nをカウントする。そして、カウントしたクロック数Nをもとに、当該スキャン位置における障害物の有無と障害物までの距離Lを検出する。たとえば、クロックの周期をTとして、L=C(光速)×T×N/2を演算することにより障害物までの距離を検出する。なお、予め決められた時間内に反射光を受光できない場合、当該スキャン位置には障害物が存在しないとされる。
【0068】
次に、ミラーアクチュエータ100の制御手順について説明する。なお、本実施の形態では、ミラー113が中立位置から水平方向に回動すると、サーボ用レーザ光が、図5(a)の受光面の中央から同図X軸方向(電極X1、X2が並ぶ方向)に移動するよう、PSD308が配置されている。
【0069】
図8(a)は、走査用レーザ光のスキャン時に参照される軌道テーブルを示す図である。軌道テーブルには、走査領域内を走査用レーザ光が適正に走査したときのサーボ用レーザ光の軌道が規定されている。すなわち、走査動作中の各クロックタイミング(CL1、CL2、…)におけるPSD308上のサーボ用レーザ光の適正受光位置(以下、「適正値」という)(P1、P2、…)が保持されている。ここで、適正値(P1、P2、…)は、走査用レーザ光が一定の角速度で水平に走査するときのサーボ光の挙動を表すように規定されている。軌道テーブルは、DSP制御回路1内に配されるメモリ(図6には図示せず)によって保持されている。また、クロックタイミングは、DSP制御回路1内のクロック発生部から出力されるクロックを分周することによって生成される。
【0070】
同図(b)は、軌道テーブルに従ってサーボを掛けながら走査用レーザ光を走査させたときの、各クロックタイミングにおけるPSD308上のサーボ用レーザ光の受光位置の実測値(P1’、P2’、…)を示す図である。
【0071】
図9は、軌道テーブルに基づくミラーアクチュエータ100のサーボ制御を説明する図である。
【0072】
Pnは、軌道テーブルにおいてクロックタイミングCLnに対応付けられたサーボ用レーザ光の適正値を表している。また、Pn’は、クロックタイミングCLnにおけるサーボ用レーザ光の受光位置の実測値を表している。また、ΔXnおよびΔYnは、それぞれ、Pn’のPnに対する図5(a)のX軸方向およびY軸方向の位置ずれを表している。また、IpnおよびItnは、クロックタイミングCLnから次のクロックタイミングCLn+1までの区間において、それぞれ、ミラーアクチュエータ100をPan方向(水平方向)およびTilt方向(鉛直方向)に駆動させる電流値を表している。Pan方向およびTilt方向の電流値の電流が、それぞれ、図1のコイル114およびコイル126に印加される。なお、同図では、クロックタイミングCLn〜CLn+2の期間について図示されている。
【0073】
図6も併せて参照して、スキャン制御部1aは、クロックタイミングCLnにおいて、A/D変換回路9から入力されるサーボ用レーザ光の受光位置の実測値Pn’と、軌道テーブルにて規定された適正値Pnとを比較する。これにより、Pn’が、Pnに対して、図5(a)のX軸方向およびY軸方向に、それぞれ、ΔXnおよびΔYnずれていると判断される。
【0074】
続いて、スキャン制御部1aは、位置ずれΔXnおよびΔYnがゼロに収束するよう、次のクロックタイミングCLn+1においてアクチュエータ駆動回路4に印加するための電流値Ipn+1、Itn+1を次のクロックタイミングCLn+1までの期間に算出する。すなわち、スキャン制御部1aは、サーボ用レーザ光の受光位置の実測値が、軌道テーブルにて規定される軌道に引き込まれるよう、次のクロックタイミングCLn+1において、ミラーアクチュエータ100のPan方向のコイル114に電流値Ipn+1を、Tilt方向のコイル126に電流値Itn+1を印加する。なお、このような電流値の調整制御には、例えば、PID制御が用いられる。
【0075】
こうすると、続くクロックタイミングCLn+2における実測値の位置ずれΔXn+2およびΔYn+2は、クロックタイミングCLn+1に比べ改善される。さらに、クロックタイミングCL+2においても、同様に、クロックタイミングCLn+1における実測値Pn+1’と適正値Pn+1とのずれに基づいてミラーアクチュエータ100が制御されると、これに続くクロックタイミングにおける実測値の位置ずれは、さらに改善される。
【0076】
このように、サーボ用レーザ光に基づくミラーアクチュエータ100の駆動制御(以下、「スキャン制御」という)が行われると、走査用レーザ光は、走査領域内を順次適正にスキャンするよう制御される。
【0077】
なお、クロックタイミングの間隔を短くして、Pan方向の電流値とTilt方向の電流値を細かく調整する程、走査用レーザ光のスキャン精度が高まる。すなわち、かかる調整を細かく行う程、走査用レーザ光は、走査領域内を水平方向にずれなく所定の角速度でスキャンするようになる。その一方、かかる調整を細かくする程、これら電流値を演算するスキャン制御部1aの処理負担が増加する。
【0078】
図10は、ミラーアクチュエータ100が適正に(理想的に)スキャン制御されるときの走査用レーザ光の走査状態を示す図である。同図(a)は、走査用レーザ光によってスキャンされる走査領域の斜視図である。同図(b)および(c)は、走査用レーザ光がスキャンされるときのPan方向およびTilt方向における走査用レーザ光の振り角の変化を示す図である。同図(d)は、走査領域と目標領域の関係を示す図である。
【0079】
同図(a)を参照して、走査領域は、Pan方向に2H(deg)の角度幅を有し、Tilt方向に2V(deg)の角度幅を有する。すなわち、Pan方向およびTilt方向の走査幅の中心を0(deg)とすると、走査用レーザ光によるスキャン位置は、Pan方向に−H(deg)からH(deg)まで、Tilt方向に−V(deg)からV(deg)まで変化する。また、走査領域は、Tilt方向に走査区間A、B、Cに分割されており、走査用レーザ光は走査区間A、B、Cの順にPan方向にスキャンする。
【0080】
同図(b)を参照して、走査用レーザ光のPan方向の角速度は、各走査区間において一定となっている。また、同図(c)を参照して、走査用レーザ光のTilt方向の角度は、各走査区間において一定となっている。
【0081】
同図(d)を参照して、目標領域は、Pan方向にH0(deg)の幅を有し、Tilt方向にV0(deg)の幅を有する。また、目標領域は、走査が必要とされる範囲を覆うように設定されている。走査領域は、目標領域内に収まるよう設定され、走査対象の位置に応じて目標領域内で自由に設定される。このように、走査領域が目標領域の一部として設定されれば、1回の走査における所要時間および所要演算量が、必要最低限に抑制され得る。
【0082】
なお、図8(a)に示す軌道テーブルは、走査区間A、B、Cのそれぞれに対して個別に準備されている。各軌道テーブルは、目標領域の中央に走査領域が割り当てられているときのものである。走査領域が目標領域の中央から変位すると、それに応じて各軌道テーブルにおける適正位置(P1、P2、…)が修正され、修正後の軌道テーブルをもとに、上述のスキャン制御が行われる。
【0083】
図11(a)は、走査用レーザ光が図10で示したように適正に(理想的に)スキャンされたときの、時間と走査用レーザ光のPan方向の振り角との関係を示す図である。同図の横軸は経過時間であり、縦軸は、走査区間AないしCの何れかの区間において、走査開始位置(水平方向の左端)を0(deg)としたときの走査用レーザ光のPan方向の振り角である。
【0084】
この場合、図示の如く、Pan方向の振り角は時間とともに線形に変化する。よって、走査用レーザ光を一定の周期Tでパルス発光させると、一定角度毎に、走査用レーザ光が走査領域に照射される。同図(b)は、このように一定周期で走査用レーザ光をパルス発光させたときの、走査領域内における走査用レーザ光の照射角度位置(以下、「スキャン位置」という)を示す図である。図中、スキャン位置は縦長四角形で示されている。
【0085】
このように、ミラーアクチュエータ100が適正に(理想的に)制御され、これにより、走査領域内において走査用レーザ光が適正に(理想的に)走査されている場合には、一定周期で走査用レーザ光をパルス発光させることにより、等角度間隔で、走査用レーザ光を走査領域に照射することができる。しかし、このようにミラーアクチュエータ100を適正に(理想的に)制御するには、各走査区間において、Pan方向のスキャン位置が一定の速度で移動し、且つTilt方向のスキャン位置が一定となるよう、ミラーアクチュエータ100におけるPan方向およびTilt方向の制御を厳密に行う必要がある。具体的には、上記の如く、スキャン制御が行われるクロックタイミングの時間間隔が短く設定される必要がある。
【0086】
しかしながら、クロックタイミングの時間間隔が短くなれば、Pan方向およびTilt方向のコイルに印加する電流値の演算頻度を高める必要があり、また、かかる演算を行うに必要な時間を短縮する必要がある。このため、スキャン制御部1aの処理負担が増大するという問題が生じる。
【0087】
図12は、図9に比べて、Pan方向のスキャン制御の頻度を半分に削減した場合の電流値の設定状態を示す図である。
【0088】
図示の如く、クロックタイミングCLnでPan方向のコイル111に電流値Ipnが印加された後、クロックタイミングCLn+1ではPan方向の電流値調整が行われず、Pan方向のコイル111には電流値Ipnが印加されたままとなっている。すなわち、クロックタイミングCLn+1では、サーボ用レーザ光の受光位置の実測値Pn’と適正値Pnの差分ΔXnに基づく電流値Ipn+1の設定が行われない。ここでは、かかる差分ΔXnを用いて、クロックタイミングCLn+2における電流値Ipn+2が設定される。
【0089】
こうすると、Pan方向のスキャン制御におけるスキャン制御部1aの演算処理負担を軽減させ得る。しかしながら、このようにPan方向のスキャン制御を削減すると、実測値Pn+2’のPan方向の位置は、クロックタイミングCLn+1においてPan方向の電流値調整が行われる場合に比べ、適正値Pn+2から離れることとなる。なお、Tilt方向の電流値調整は、図9の場合と同様、クロックタイミングごとに行われているため、サーボ用レーザ光のTilt方向の位置ずれは図9の場合と同程度に抑制されることとなる。
【0090】
図13(a)は、図12に示したようなスキャン制御が行われた場合の、時間と走査用レーザ光のPan方向の振り角との関係を模式的に示す図である。この場合、図示の如く、Pan方向の振り角は時間とともに線形に変化しないため、走査用レーザ光を一定の周期Tでパルス発光させると、同図(b)に示す如く、走査用レーザ光は、Pan方向に不均等な状態で、走査領域に照射される。
【0091】
このように、Pan方向のスキャン制御の頻度を削減すれば、Pan方向のスキャン位置が等間隔にならない。このため、このように一定周期で走査用レーザ光をパルス発光させると、走査用レーザ光が照射されない隙間領域が走査領域内に生じ、レーザレーダの検出精度が低下するという問題が生じる。
【0092】
そこで、本実施の形態では、かかる問題を解消するために、走査用レーザ光のパルス発光タイミングを、PSD308による位置検出に基づいて制御するようにしている。
【0093】
図14(a)は、走査用レーザ光のパルス発光タイミングを図12の最上段および中段のタイミングチャートに重ねて示した図である。同図中、Qn、Qn+1、Qn+2、Qn+3、Qn+4は、PSD308上に設定された目標軌道上において、走査用レーザ光をパルス発光させる目標位置を表している。ここで、目標位置Qn、Qn+1、Qn+2、Qn+3、Qn+4は、走査用レーザ光のパルス発光が水平方向において一定角度毎に行われるよう設定されている。同図(a)の例では、走査用レーザ光の発光間隔が、図8(a)に示す軌道テーブルのクロックタイミングの間隔の半分に設定されている。Qn’、Qn+1’、Qn+2’、Qn+3’、Qn+4’は、実際にパルス発光が行われた発光位置を表している。
【0094】
パルス発光のための目標位置は、同図(c)に示す発光テーブルに規定されている。発光テーブルには、目標位置として、PSD受光面上のX軸方向(図5(a)参照)の位置のみが記述されている。この発光テーブルは、DSP制御回路1内に配されるメモリ(図6には図示せず)によって保持されている。
【0095】
なお、発光テーブルは、図10(a)に示す走査区間A、B、Cについてそれぞれ個別にテーブルが準備されている。発光テーブルは、走査領域が目標領域の中央にある場合のものである。発光テーブルは、走査領域が目標領域の中央からPan方向に変位すると、この変位に応じて修正され、修正後の発光テーブルに基づいて走査用レーザ光のパルス発光が制御される。
【0096】
図14(a)を参照して、PSD受光面上におけるサーボ用レーザ光の照射位置は、上記スキャン制御により、Pn’→Qn’→Qn+1’→Pn+1’→Qn+2’→Qn+3’→Pn+2’→Qn+4’と移行する。このとき、スキャン制御部1aは、PSD308からの出力信号をもとに、サーボ用レーザ光のX軸方向の位置を随時モニタし、サーボ用レーザ光のX軸方向の位置が、Qn、Qn+1、Qn+2、Qn+3、Qn+4になったタイミングで走査用レーザ光をパルス発光させる。これにより、走査用レーザ光は、サーボ用レーザ光が実軌道上のQn’、Qn+1’、Qn+2’、Qn+3’、Qn+4’になったタイミングでパルス発光される。
【0097】
かかる発光制御により、走査用レーザ光は、水平方向における一定振り角毎に、パルス発光される。同図(b)は、図13の模式図上に、走査用レーザ光の発光タイミングを重ねて表したものである。同図を参照して、本実施の形態による走査用レーザ光の発光制御によれば、走査用レーザ光のPan方向の振り角が2H/kだけ変化する毎に、走査用レーザ光がパルス発光される。ここで、kは、図14(c)の発光テーブルに記述された目標位置の個数に対応する。
【0098】
このようにパルス発光されれば、図12に示す如くPan方向のスキャン制御がラフに行われた場合でも、走査用レーザ光は水平方向に一定振り角毎にパルス発光され、走査領域内における発光位置は図11(b)と略同じとなる。
【0099】
以上、本実施の形態によれば、Pan方向におけるミラーアクチュエータの制御をラフに行った場合にも、一定の振り角毎に走査用レーザ光のパルス発光が行われるため、スキャン制御部の処理負担を軽減しながらも、走査領域における走査用レーザ光の照射精度を高く維持することができる。
【0100】
なお、本実施の形態では、Pan方向におけるミラーアクチュエータの制御のみをラフに行い、Tilt方向における制御は厳密な状態に維持した。これは、走査用レーザ光のTilt方向のずれは、走査用レーザ光の発光タイミングを調整することによっては補償できないためである。よって、上記実施の形態のように、Pan方向における制御のみをラフに行い、Tilt方向におけるミラーアクチュエータの制御は、スキャン制御部1aにおける処理負担が大きくとも、厳密に行うのが望ましい。
【0101】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0102】
たとえば、上記実施の形態では、サーボ用レーザ光の光源として半導体レーザを用いたが、これに替えて、LED(Light Emitting Diode)を用いることもできる。
【0103】
また、上記実施例では、ミラー113を駆動することによってレーザ光を目標領域内で走査させたが、ミラー113の替わりにレンズを用い、レンズを二次元駆動することによってレーザ光を目標領域内で走査させるようにすることもできる。この場合、たとえば、レンズホルダにサーボ用レーザ光を発光する光源を配置すれば良い。あるいは、レンズを透過した後のレーザ光の一部をビームスプリッタによって分岐させ、分岐したレーザ光をサーボ用レーザ光としてPSDで受光するようにすることができる。ただし、この場合には、サーボ用レーザ光がPSDに常時導かれるよう、レーザ光源を微弱発光させ、目標領域への照射タイミングで、レーザ光源の出射パワーをパルス状に高める等の構成が必要である。
【0104】
また、上記実施の形態では、透明体200を用いてサーボ用レーザ光の進行方向を変化させるようにしたが、透明体に替えてサーボ用のミラーをミラーアクチュエータ100の支軸112に装着し、かかるサーボ用のミラーによってサーボ用レーザ光を反射させることによりサーボ用レーザ光の進行方向を変化させるようにしても良い。この他、ミラーホルダ110、支軸111または支軸112にサーボ用レーザ光を発光する光源を配置するようにしても良い。
【0105】
また、上記実施例では、Pan方向のスキャン制御が、クロックタイミング2周期毎に行われるようにしたが、走査用レーザ光が適正に行われる範囲において、Pan方向のスキャン制御の頻度は、適宜変更され得る。なお、ミラーアクチュエータ100に対するPan方向の駆動制御は、予め決められた駆動信号をコイル114に印加する等、PSD308からの信号を参照することなく行うようにすることもできる。
【0106】
さらに、上記実施の形態では、走査用レーザ光の発光間隔が、軌道テーブルのクロックタイミングの間隔の半分に設定されるよう、発光テーブルを構成したが、走査用レーザ光の発光間隔は、これに限定されるものではなく、クロックタイミングの間隔と同じ間隔等、他の間隔に適宜設定可能である。
【0107】
なお、上記実施の形態では、サーボ用レーザ光を受光する光検出器としてPSD308を用いたが、これに替えて、4分割センサを用いることもできる。
【0108】
図15は、サーボ用レーザ光を受光する光検出器として4分割センサ310を用いる場合の構成を示す図である。サーボ用レーザ光は、ミラー113が中立位置にあるときに、4分割センサ310の中央位置に照射される。また、ビームスポットのX方向位置とY方向位置は、図示の如く、各センサからの出力信号をS1、S2、S3、S4とすると、たとえば次式から求められる。
【0109】
【数2】

【0110】
図15には、この算出式を実現する演算回路の構成が併せて示されている。各センサから出力される信号S1、S2、S3、S4は、アンプ31、32、33、34によって増幅される。そして、加算回路35、36、37、38によって、それぞれ、(S1+S2)、(S3+S4)、(S1+S4)、(S2+S3)の演算が行われ、また、減算回路39、40によって、それぞれ、(S1+S2)−(S3+S4)と(S1+S4)−(S2+S3)の演算が行われる。さらに、加算回路41によって、(S1+S2+S3+S4)の演算が行われる。そして、除算回路42、43によって、それぞれ、式(3)および式(4)の左辺の除算が行われ、この除算回路42、43から、X方向およびY方向におけるサーボ用レーザ光の受光位置を示す位置検出信号が出力される。
【0111】
なお、この場合も、図6の構成においては、各センサからの信号(電流値)が電圧値に変換され、変換後の電圧値をもとに、同様の演算処理にて受光位置を表す信号が生成される。
【0112】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1a … スキャン制御部(アクチュエータ制御部、レーザ制御部)
1b … 距離測定部(障害物検出部)
100 … ミラーアクチュエータ(アクチュエータ)
110 … ミラーホルダ(第1の駆動部)
111、112 … 支軸(第1の駆動部、第1の回動軸)
113 … ミラー(光学素子)
114 … コイル(第1の駆動部)
120 … 可動枠(第2の駆動部)
124、125 … 支軸(第2の駆動部、第2の回動軸)
126 … コイル(第2の駆動部)
134 … マグネット(第1の駆動部)
135 … マグネット(第2の駆動部)
200 … 透明体(サーボ光学系)
303 … 半導体レーザ(サーボ光学系)
308 … PSD(光検出器)
310 … 4分割センサ(光検出器)
411 … PD(反射光検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
目標領域において前記レーザ光を走査させるアクチュエータと、
サーボ光を発するとともに前記アクチュエータの駆動に伴って前記サーボ光の進行方向を変化させるサーボ光学系と、
前記サーボ光を受光して受光位置に応じた信号を出力する光検出器と、
前記光検出器から出力される信号に基づいて前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、
前記光検出器から出力される信号に基づいて前記レーザ光源を制御するレーザ制御部と、を備え、
前記レーザ制御部は、前記サーボ光の前記受光位置が予め決められた目標位置に到達したことに応じて、前記レーザ光源をパルス状に発光させる、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビーム照射装置において、
前記アクチュエータは、前記レーザ光の進行方向を変化させる光学素子を、前記目標領域における前記レーザ光の走査方向に対応する第1の方向に駆動する第1の駆動部と、前記目標領域上の走査軌道に対する前記レーザ光の位置ずれを補正する第2の方向に前記光学素子を駆動する第2の駆動部とを備え、
前記アクチュエータ制御部は、前記第1の駆動部に対する制御の精度を前記第2の駆動部に対する制御の精度よりも低下させた、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載のビーム照射装置において、
前記アクチュエータ制御部は、前記第1の駆動部に対する制御の頻度を前記第2の駆動部に対する制御の頻度よりも低下させた、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のビーム照射装置において、
前記光学素子はミラーであり、
前記第1の駆動部は、前記ミラーを第1の回動軸で回動させ、
前記第2の駆動部は、前記第1の回動軸に垂直な第2の回動軸で前記ミラーを回動させる、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のビーム照射装置において、
前記レーザ制御部は、一連の前記目標位置をテーブルとして記憶する記憶部を備え、前記サーボ光の受光位置が前記テーブル上の前記目標位置に到達したことに応じて、順次、前記レーザ光源をパルス状に発光させる、
ことを特徴とするビーム照射装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のビーム照射装置と、
前記目標領域内において反射された前記レーザ光を受光する反射光検出器と、
前記反射光検出器から出力される信号に基づいて前記目標領域における障害物の状況を検出する障害物検出部と、を備える、
ことを特徴とするレーザレーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−175856(P2010−175856A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18734(P2009−18734)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】