説明

フレキシブルデバイス用基板及びその製造方法

【課題】フレキシブルデバイス用基板であって、膜厚を非常に薄くしても断線等による電気的性質の低下が抑えられ、それにより歩留まりの向上した基板を提供する。
【解決手段】基材2と、前記基材2上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層3とを有し、該平坦化層3表面の測定領域10μm角での表面粗さRaが5nm以下であり、かつ該平坦化層3表面の測定領域1μm角での表面粗さRaが5nm以下であるフレキシブルデバイス用基板1。ポリイミドの数平均分子量が2,000〜1,000,000であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、電子ペーパー等のフレキシブルデバイスに用いられる可撓性を有する基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルデバイスの部材である薄膜トランジスタ、薄膜太陽電池、エレクトロルミネッセンス素子等の薄膜素子を製造するための基板として、金属基板ならびにプラスチック基板が用いられている(特許文献1等)。
【0003】
基板上に形成される素子は、フレキシブル性を得るため、及びスパッタ法の生産性向上等のため従来のものと比べて薄層化が進んでおり、ナノスケールの厚みで形成されるようになっている。
【0004】
以上のような状況のため、従来の素子よりも薄膜化がさらに進んでいるが、当該薄膜化により、従来では問題とならなかった基板表面の極微小な凹凸に起因して、断線等の素子の電気的性質の低下が生じてしまうという問題が生じている。その結果、素子製造の歩留まりが低くなってしまっている。従って、基板の表面にナノスケールの表面平坦性が必要となっている。
【0005】
しかし、例えば、金属箔の表面はロールによる圧延の跡等の影響で、ナノオーダーの平坦性までは得られていない。また、フィルム単体の場合も、製造時に支持するものを有さないこと、支持体からの剥離が必要なこと等から、高い平坦性をもたらすことが困難である。以上のような状況の下、基板表面に非常に高い平滑性を備え、歩留まりのよいフレキシブルデバイス用基板の開発が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−147207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フレキシブルデバイス用基板であって、膜厚を非常に薄くしても断線等による電気的性質の低下が抑えられ、それにより歩留まりの向上した基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような状況の下、本発明者らは鋭意研究した結果、金属箔、樹脂フィルム等の基材の上に平坦化層を積層し、平坦化層表面の測定領域10μm角及び1μm角での表面粗さRaが共に5nm以下という、非常に表面平滑性の高いフレキシブルデバイス用基板を製造することに成功した。本発明は、かかる表面平滑性の高い新規フレキシブルデバイス用基板に関する。
【0009】
従って、本発明は、以下に示すフレキシブルデバイス用基板及びその製造方法を提供する:
項1.基材と、前記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層とを有し、該平坦化層表面の測定領域10μm角での表面粗さRaが5nm以下であり、かつ該平坦化層表面の測定領域1μm角での表面粗さRaが5nm以下であるフレキシブルデバイス用基板。
【0010】
項2.前記ポリイミドの数平均分子量が2,000〜1,000,000である、請求項1に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0011】
項3.前記平坦化層の膜厚が0.2〜1000μmである、請求項1又は2に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0012】
項4.前記平坦化層の吸湿膨張係数が0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることを特徴とする項1〜3のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0013】
項5.前記基材上に前記平坦化層が部分的に形成されている項1〜4のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0014】
項6.前記平坦化層の線熱膨張係数が0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内である項1〜5のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0015】
項7.前記平坦化層の線熱膨張係数と前記基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下である項1〜6のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0016】
項8.前記基材の厚みが1μm〜1000μmの範囲内である項1〜7のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【0017】
項9.ダイコート法によって基材上にポリイミド樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する絶縁層形成工程を含む、項1〜8のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板の製造方法。
【0018】
また、本発明は、以下に示すフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板、フレキシブルデバイス、有機エレクトロルミネッセンス表示装置及び電子ペーパーを提供する:
項10.項1〜8のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板と、前記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された薄膜トランジスタとを有することを特徴とするフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
【0019】
項11.前記薄膜トランジスタが、酸化物半導体層を有する項10に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板。
【0020】
項12.項10又は11に記載のフレキシブルデバイス用薄膜トランジスタ基板を備えることを特徴とするフレキシブルデバイス。
【0021】
項13.基材、前記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および前記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、
前記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層および薄膜トランジスタと、
前記背面電極層上に形成され、少なくとも有機発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、
前記エレクトロルミネッセンス層上に形成された透明電極層と
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【0022】
項14.基材、前記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および前記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、
前記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層および薄膜トランジスタと、
前記背面電極層上に形成された表示層と、
前記表示層上に形成された透明電極層と
を有することを特徴とする電子ペーパー。
【発明の効果】
【0023】
フレキシブルデバイス用の素子を薄膜化しようとすると、従来問題とされなかった極微小な表面の凹凸であっても、断線等の原因となってしまう。また、有機EL等の素子を薄膜化しようとするとごく微小な凹凸であっても、当該凹凸部分で素子層の膜厚ムラに起因する電気抵抗の差が生じた結果、電流密度が異なることとなり、素子の一部にのみ過剰な熱が生じる等の不具合も考えられる。このように素子を薄膜化しようとすると微小な凹凸であっても電気的性質の低下をもたらしてしまう。しかし、本発明のフレキシブルデバイス用基板は、平坦化層表面の測定領域1μm角及び10μm角での表面粗さRaが5nmと非常に平滑性が優れているため、電気的性質の優れた素子を製造することができる。また、表面の平滑性向上により上記のような不具合が非常に抑制されるため、製品の歩留まりを向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のフレキシブルデバイス用基板の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のフレキシブルデバイス用基板の一例を示す概略断面図である。
【図3】典型的なダイコート法の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のフレキシブルデバイス用基板、フレキシブルデバイス用TFT基板、フレキシブルデバイス、有機EL表示装置、電子ペーパー、薄膜素子用基板、薄膜素子、TFT、薄膜素子用基板の製造方法、薄膜素子の製造方法およびTFTの製造方法について詳細に説明する。
【0026】
A.フレキシブルデバイス用基板
まず、本発明のフレキシブルデバイス用基板について説明する。
【0027】
本発明のフレキシブルデバイス用基板は、基材と、前記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層とを有し、該平坦化層表面の測定領域10μm角での表面粗さRaが5nm以下であり、かつ該平坦化層表面の測定領域1μm角での表面粗さRaが5nm以下であることを特徴とするものである。
【0028】
本発明のフレキシブルデバイス用基板について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のフレキシブルデバイス用基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示するフレキシブルデバイス用基板1は、基材2と、基材2上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層3とを有している。
【0029】
本発明のフレキシブルデバイス用基板は、上記基材及び平坦化層の上に、さらに、無機化合物を含む密着層を有していてもよい。図2は、本発明のフレキシブルデバイス用基板の別の実施形態を示す概略断面図である。図2に例示するフレキシブルデバイス用基板1は、基材2と、基材2上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層3と、平坦化層3上に形成され、無機化合物を含む密着層4とを有している。
【0030】
以下、本発明のフレキシブルデバイス用基板の各構成について説明する:
1.基材
本発明における基材は、上記の平坦化層を支持するフィルム状の支持体を示す。基材のとしては、金属箔、樹脂フィルム等が挙げられる。
【0031】
基材の線熱膨張係数としては、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。なお、上記線熱膨張係数の測定方法については、基材を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする以外は、上記平坦化層の線熱膨張係数の測定方法と同様である。
【0032】
また、基材は耐酸化性を有することが好ましい。本発明のフレキシブルデバイス用基板上にTFTを作製する場合、通常、TFTの作製時に高温処理が施されるからである。特に、TFTが酸化物半導体層を有する場合には、酸素の存在下、高温でアニール処理が行なわれることから、基材は耐酸化性を有することが好ましい。
【0033】
基材の厚みとしては、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは1μm〜200μmの範囲内、さらに好ましくは1μm〜100μmの範囲内である。基材の厚みが薄すぎると、酸素や水蒸気に対するガスバリア性が低下したり、フレキシブルデバイス用基板の強度が低下したりするおそれがある。また、基材の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、コスト高になったりする。
【0034】
基材の表面粗さRaとしては、上記の平坦化層の表面粗さRaよりも大きいものであり、金属箔を用いた場合例えば50nm〜200nm程度である。なお、上記表面粗さの測定方法については、後述する平滑層の表面粗さの測定方法と同様である。
【0035】
基材として金属箔を用いる場合、これを構成する金属材料としては、箔になり得るものであり、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、銅、銅合金、リン青銅、ステンレス鋼(SUS)、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、スズ、スズ合金、チタン、鉄、鉄合金、亜鉛、モリブデン等が挙げられる。中でも、大型の素子に適用する場合、SUSが好ましい。SUSは耐酸化性に優れ、また耐熱性にも優れている上、銅などに比べ線熱膨張係数が小さく寸法安定性に優れる。また、SUS304については特に入手しやすいという利点があり、SUS430については入手しやすく、線熱膨張係数がSUS304より小さいという利点もある。一方、本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いてTFT基板を作製する場合、金属箔およびTFTの線熱膨張係数を考慮すると、線熱膨張係数の観点からは、SUS430よりさらに低線熱膨張係数のチタンやインバーが好ましい。ただし、線熱膨張係数のみでなく、耐酸化性、耐熱性、金属箔の展性および延性などに起因する箔の加工性や、コストも考慮に入れて選択するのが望ましい。
【0036】
金属箔は、圧延箔であってもよく電解箔であってもよく、金属材料の種類に応じて適宜選択される。通常、金属箔は圧延により作製される。
【0037】
基材として樹脂フィルムを用いる場合、ポリイミド樹脂、ポリエチレンナフタレート含有樹脂、ポリエチレンテレフタレート含有樹脂、エポキシ含有樹脂等が挙げられる。平坦化層の原料として後述するポリイミド含有樹脂を用いることができる。
【0038】
基材として樹脂フィルムを用いる場合の表面粗さRaとしては、上記の平坦化層の表面粗さRaよりも大きいものであり、例えば5nm〜100nm程度である。なお、上記表面粗さの測定方法については、後述する平滑層の表面粗さの測定方法と同様である。
【0039】
基材上にポリイミドを含む平坦化層を形成した後に、基材をパターニングすることにより、基材が部分的に形成されたフレキシブルデバイス用基板とすることもできる。すなわち、基材は、平坦化層に対して全面に形成されていてもよく、平坦化層に対して部分的に形成されていてもよい。さらに言い換えると、基材は、フレキシブルデバイス用基板の全面に形成されていてもよく、フレキシブルデバイス用基板に部分的に形成されていてもよい。基材がフレキシブルデバイス用基板の全面に形成されている場合には、酸素や水蒸気に対するガスバリア性を付与することができ、また放熱性を高めることができる。一方、基材が部分的に形成されている場合には、不必要な基材部分を除去することにより、軽量化を図ることができる。
【0040】
基材のパターニング方法としては、フォトリソグラフィー法、レーザー等で直接加工する方法を用いることができる。フォトリソグラフィー法としては、例えば、基材および平坦化層の積層体の状態で、基材上にドライフィルムレジストをラミネートし、ドライフィルムレジストをパターニングし、そのパターンに沿って基材をエッチングした後、ドライフィルムレジストを除去する方法が挙げられる。
【0041】
基材として金属基材を用いる場合、当該金属基材は、薬液処理を施されたものであってもよい。
【0042】
当該実施形態において、金属基材の薬液処理の方法としては、金属基材に対するポリイミド樹脂組成物の濡れ性を良くすることができる方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ洗浄、電界脱脂、酸洗等が挙げられる。
【0043】
アルカリ洗浄とは、アルカリ性の薬液に漬ける、ペースト状のアルカリ洗浄剤を塗る等により、金属基材表面を溶出させて洗う方法である。光沢は出ないが、安価で大型の製品に対応できる。光沢のある部分もつや消し状態になってしまうので、溶接焼けによる黒ずみを取るためなど、外観を問題にしないものであれば、アルカリ洗浄を適用することができる。
【0044】
電解脱脂は、薬液の中で電気を通す(電解)ことによって、金属基材表面の凸部(ミクロンレベル)を溶出させることで、平滑で光沢のある表面にする方法である。金属基材表面に付いている汚れや不純物を取り除き、皮膜を強化するので、耐食性を向上させることもできる。これは、金属基材表面の鉄が電解で先に溶け出すため、相対的に鉄以外の金属成分(例えばクロム)が濃くなり、不動態皮膜が強固になるためであると考えられる。
【0045】
酸洗は、強酸性の薬液に漬ける、ペースト状の酸洗剤を塗る等により、金属基材表面を溶出させて洗う方法である。光沢は出ないが、安価で大型の製品に対応できる。光沢のある部分もつや消し状態になってしまうので、溶接焼けによる黒ずみを取るためなど、外観を問題にしないものであれば、酸洗を適用することができる。
【0046】
本発明の当該実施形態においては、金属基材表面のポリイミド樹脂組成物に含まれる溶媒に対する接触角が低下するように、薬液処理を施すことが好ましい。具体的には、金属基材表面のポリイミド樹脂組成物に含まれる溶媒に対する接触角が30°以下となるように、薬液処理を施すことが好ましい。薬液処理後の金属基材表面のポリイミド樹脂組成物に含まれる溶媒に対する接触角は30°以下であることが好ましく、より好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下である。
【0047】
また、上記薬液処理後の金属基材表面において、X線光電子分光分析(XPS)により検出された全元素に対する炭素(C)の元素量の比が0.25以下であることが好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。
【0048】
2.平坦化層
本発明における平坦化層は、基材上に形成され、ポリイミドを含むものであり、基材表面の凹凸を平坦化するために設けられる層である。
【0049】
本発明は、該平坦化層表面の測定領域10μm角での表面粗さRaが5nm以下であり、かつ該平坦化層表面の測定領域1μm角での表面粗さRaも5nm以下であることを特徴とする。
【0050】
なお、上記表面粗さRaは、原子間力顕微鏡(AFM)もしくは走査型白色干渉計を用いて測定した値である。例えば、AFMを用いて測定する場合は、Nanoscope V multimode(Veeco社製)を用いて、タッピングモードで、カンチレバー:MPP11100、走査範囲:1μm×1μm、10μm×10μm、100μm×100μm、走査速度:0.5Hzにて、表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することよりRaを求めることができる。
また、測定エリアが100μm×100μmの場合は、走査型白色干渉計を用いて測定することができる。この場合は、New View 5000(Zygo社製)を用いて、対物レンズ:100倍、ズームレンズ:1倍、Scan Length:15μmにて、100μm×100μmの範囲の表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することよりRaを求めることができる。
【0051】
得られるフレキシブルデバイスの歩留まりの観点から、本発明において、平坦化層表面の測定領域10μm角での表面粗さRaは、5nm以下、好ましくは2nm以下、より好ましくは1nm以下である。また、本発明において、かつ該平坦化層表面の測定領域1μm角での表面粗さRaは、5nm以下、好ましくは2nm以下、より好ましくは1nm以下である。また、平坦化層表面の測定領域100μm角での表面粗さRaは、測定領域10μm角及び1μm角での表面粗さRaが上記範囲となる限りにおいて特に限定されないが、好ましくは、30nm以下、より好ましくは20nm以下である。
【0052】
本平坦化層の厚みは、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。膜厚が薄すぎると、塗布により形成した際に、基材表面の凹凸を平坦化することが困難であるからである。
【0053】
金属箔上に形成する場合は、平坦化層は、絶縁性を有する必要があるため、平坦化層の膜厚は、1μm以上であることが好ましい。樹脂フィルムなどのあらかじめ絶縁性を有する基材を用いる際には、この限りではない。
【0054】
本発明において、前記平坦化層の膜厚は、1000μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下がさらに好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、平坦化層の厚みが厚すぎると、フレキシブル性が低下したり、過重になったり、製膜時の乾燥が困難になったり、材料使用量が増えるためにコストが高くなったりするからである。
【0055】
さらには、基材として金属箔を用い、本発明のフレキシブルデバイス用基板に放熱機能を付与する場合には、平坦化層の厚みが厚いとポリイミドは金属よりも熱伝導率が低いために熱伝導性が低下するため、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
平坦化層はポリイミドを含むものであり、好ましくはポリイミドを主成分とする。一般にポリイミドは吸水性を有する。TFTや有機EL表示装置などに用いられる半導体材料には水分に弱いものが多いことから、素子内部の水分を低減し、湿気存在下において高い信頼性を実現するために、平坦化層は吸水性が比較的小さいことが好ましい。吸水性の指標の一つとして、吸湿膨張係数がある。したがって、平坦化層の吸湿膨張係数は小さければ小さいほど好ましく、具体的には0ppm/%RH〜15ppm/%RHの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/%RH〜12ppm/%RHの範囲内、さらに好ましくは0ppm/%RH〜10ppm/%RHの範囲内である。吸湿膨張係数が小さいほど、吸水性が小さくなる。例えば本発明のフレキシブルデバイス用基板を有機EL表示装置に用いる場合、有機EL表示装置は水分に弱いことから、素子内部の水分を低減するために、吸湿膨張係数は比較的小さいことが好ましい。また、平坦化層の吸湿膨張係数が上記範囲であれば、平坦化層の吸水性を十分小さくすることができ、フレキシブルデバイス用基板の保管が容易であり、フレキシブルデバイス用基板を用いて例えばTFT基板や有機EL表示装置を作製する場合にはその工程が簡便になる。さらに、吸湿膨張係数が小さいほど、寸法安定性が向上する。平坦化層の吸湿膨張係数が大きいと、吸湿膨張係数がほとんどゼロに近い基材との膨張率の差によって、湿度の上昇とともにフレキシブルデバイス用基板が反ったり、平坦化層および基材の密着性が低下したりする場合がある。したがって、製造過程においてウェットプロセスが行われる場合にも、吸湿膨張係数が小さいことが好ましい。
【0057】
なお、吸湿膨張係数は、次のように測定する。まず、平坦化層のみのフィルムを作製する。平坦化層フィルムの作成方法は、耐熱フィルム(ユーピレックス S 50S(宇部興産(株)製))やガラス基板上に平坦化層フィルムを作製した後、平坦化層フィルムを剥離する方法や基材上に平坦化層フィルムを作製した後、基材をエッチングで除去し平坦化層フィルムを得る方法などがある。次いで、得られた平坦化層フィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。吸湿膨張係数は、湿度可変機械的分析装置(Thermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。例えば、温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持する。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を吸湿膨張係数(C.H.E.)とする。測定の際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重は1g/25000μm2とする。
【0058】
また、平坦化層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、基材の線熱膨張係数との差が15ppm/℃以下であることが好ましく、より好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは5ppm/℃以下である。平坦化層と基材との線熱膨張係数が近いほど、フレキシブルデバイス用基板の反りが抑制されるとともに、フレキシブルデバイス用基板の熱環境が変化した際に、平坦化層と基材との界面の応力が小さくなり密着性が向上する。また、本発明のフレキシブルデバイス用基板は、取り扱い上、0℃〜100℃の範囲の温度環境下では反らないことが好ましいのであるが、平坦化層の線熱膨張係数が大きいために平坦化層および基材の線熱膨張係数が大きく異なると、フレキシブルデバイス用基板が熱環境の変化により反ってしまう。
【0059】
なお、フレキシブルデバイス用基板に反りが発生していないとは、フレキシブルデバイス用基板を幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出し、得られたサンプルの一方の短辺を水平で平滑な台上に固定した際に、サンプルのもう一方の短辺の台表面からの浮上距離が1.0mm以下であることをいう。
【0060】
具体的に、平坦化層の線熱膨張係数は、寸法安定性の観点から、0ppm/℃〜30ppm/℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0ppm/℃〜25ppm/℃の範囲内、さらに好ましくは0ppm/℃〜18ppm/℃の範囲内、特に好ましくは0ppm/℃〜12ppm/℃の範囲内、最も好ましくは0ppm/℃〜7ppm/℃の範囲内である。
【0061】
なお、線熱膨張係数は、次のように測定する。まず、平坦化層のみのフィルムを作製する。平坦化層フィルムの作成方法は、上述したとおりである。次いで、得られた平坦化層を幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとする。線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばThermo Plus TMA8310(リガク社製))によって測定する。測定条件は、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲内の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とする。
【0062】
平坦化層は絶縁性を備えるものである。具体的に、平坦化層の体積抵抗は、1.0×109Ω・m以上であることが好ましく、1.0×1010Ω・m以上であることがより好ましく、1.0×1011Ω・m以上であることがさらに好ましい。
【0063】
なお、体積抵抗は、JIS K6911、JIS C2318、ASTM D257 などの規格に準拠する手法で測定することが可能である。
【0064】
平坦化層を構成するポリイミドとしては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリイミドの構造を適宜選択することで、吸湿膨張係数や線熱膨張係数を制御することが可能である。
【0065】
ポリイミドとしては、平坦化層の線熱膨張係数や吸湿膨張係数を本発明のフレキシブルデバイス用基板に好適なものとする観点から、芳香族骨格を含むポリイミドであることが好ましい。ポリイミドの中でも芳香族骨格を含有するポリイミドは、その剛直で平面性の高い骨格に由来して、耐熱性や薄膜での絶縁性に優れ、線熱膨張係数も低いことから、本発明のフレキシブルデバイス用基板の平坦化層に好ましく用いられる。
【0066】
ポリイミドは、低吸湿膨張、低線熱膨張であることが求められるため、下記式(I)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。このようなポリイミドは、その剛直な骨格に由来する高い耐熱性や絶縁性を示すとともに、金属等の基材と同等の線熱膨張を示す。さらには、吸湿膨張係数も小さくすることが可能である。
【0067】
【化1】

【0068】
(式(I)中、R1は4価の有機基、R2は2価の有機基であり、繰り返されるR1同士およびR2同士はそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。nは1以上の自然数である。)
式(I)において、一般に、Rはテトラカルボン酸二無水物由来の構造であり、Rはジアミン由来の構造である。
【0069】
ポリイミドに適用可能なテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、ピリジンテトラカルボン酸二無水物、スルホニルジフタル酸無水物、m−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、9−フェニル−9−(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、12,14−ジフェニル−12,14−ビス(トリフルオロメチル)−12H,14H−5,7−ジオキサペンタセン−2,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物、1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、1−(トリフルオロメチル)−2,3,5,6−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0070】
これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0071】
ポリイミドの耐熱性、線熱膨張係数などの観点から好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物である。特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が挙げられる。
【0072】
中でも、吸湿膨張係数を低減させる観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が特に好ましい。
【0073】
併用するテトラカルボン酸二無水物としてフッ素が導入されたテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの吸湿膨張係数が低下する。しかしながら、フッ素を含んだ骨格を有するポリイミド前駆体は、塩基性水溶液に溶解しにくく、アルコール等の有機溶媒と塩基性水溶液との混合溶液によって現像を行う必要がある。
【0074】
また、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直なテトラカルボン酸二無水物を用いると、ポリイミドの線熱膨張係数が小さくなるので好ましい。中でも、線熱膨張係数と吸湿膨張係数とのバランスの観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0075】
テトラカルボン酸二無水物として脂環骨格を有する場合、ポリイミド前駆体の透明性が向上するため、高感度の感光性ポリイミド前駆体となる。一方で、ポリイミドの耐熱性や絶縁性が芳香族ポリイミドと比較して劣る傾向にある。
【0076】
芳香族のテトラカルボン酸二無水物を用いた場合、耐熱性に優れ、低線熱膨張係数を示すポリイミドとなるというメリットがある。したがって、ポリイミドにおいて、上記式(I)中のRのうち33モル%以上が、下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0077】
【化2】

【0078】
ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
【0079】
上記のような構造を有するポリイミドは、高耐熱性、低線熱膨張係数を示すポリイミドである。そのため、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、少なくとも上記式(I)中のRのうち33%以上含有すればよい。中でも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0080】
一方、ポリイミドに適用可能なジアミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は特に限定されるものではなく、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンのような芳香族アミン;1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンのような脂肪族アミン;1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンのような脂環式ジアミンなどが挙げられる。グアナミン類としては、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなどを挙げることができ、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
【0081】
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0082】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、ポリイミドは低膨張係数となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0083】
さらに、2つ以上の芳香族環が単結合により結合し、2つ以上のアミノ基がそれぞれ別々の芳香族環上に直接または置換基の一部として結合しているジアミンが挙げられ、例えば、下記式(II)により表されるものがある。具体例としては、ベンジジン等が挙げられる。
【0084】
【化3】

【0085】
(式(II)中、aは0または1以上の自然数、アミノ基はベンゼン環同士の結合に対して、メタ位または、パラ位に結合する。)
さらに、上記式(II)において、他のベンゼン環との結合に関与せず、ベンゼン環上のアミノ基が置換していない位置に置換基を有するジアミンも用いることができる。これら置換基は、1価の有機基であるがそれらは互いに結合していてもよい。具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0086】
また、芳香環の置換基としてフッ素を導入すると吸湿膨張係数を低減させることができる。しかしながら、フッ素を含むポリイミド前駆体、特にポリアミック酸は、塩基性水溶液に溶解しにくく、基材上に平坦化層を部分的に形成する場合には、平坦化層の加工の際に、アルコールなどの有機溶媒との混合溶液で現像する必要がある場合がある。
【0087】
一方、ジアミンとして、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンなどのシロキサン骨格を有するジアミンを用いると、金属箔等の基材との密着性を改善したり、ポリイミドの弾性率が低下し、ガラス転移温度を低下させたりすることができる。
【0088】
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いてもよい。
【0089】
また、ポリイミドにおいては、上記式(I)中のRのうち33モル%以上が下記式で表わされるいずれかの構造であることが好ましい。
【0090】
【化4】

【0091】
(Rは2価の有機基、酸素原子、硫黄原子、またはスルホン基であり、RおよびRは1価の有機基、またはハロゲン原子である。)
ポリイミドが上記式のいずれかの構造を含むと、これら剛直な骨格に由来し、低線熱膨張および低吸湿膨張を示す。さらには、市販で入手が容易であり、低コストであるというメリットもある。
【0092】
上記のような構造を有する場合、ポリイミドの耐熱性が向上し、線熱膨張係数が小さくなる。そのため、上記式で表される構造の含有量は上記式(I)中のRのうち100モル%に近ければ近いほど好ましいが、上記式(I)中のRのうち少なくとも33%以上含有すればよい。中でも、上記式で表わされる構造の含有量は上記式(I)中のRのうち50モル%以上であることが好ましく、さらに70モル%以上であることが好ましい。
【0093】
一般に金属箔等の基材の線熱膨張係数、すなわち金属の線熱膨張係数はある程度定まっているため、使用する基材の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
【0094】
また、本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いてTFT基板を作製する場合には、TFTの線熱膨張係数に応じて基材の線熱膨張係数を決定し、その基材の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
【0095】
さらに、本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いて有機EL表示装置や電子ペーパーを作製する場合には、有機EL表示装置や電子ペーパーの線熱膨張係数に応じて基材の線熱膨張係数を決定し、その基材の線熱膨張係数に応じて平坦化層の線熱膨張係数を決定し、ポリイミドの構造を適宜選択することが好ましい。
【0096】
本発明においては、平坦化層が上述の式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを含有していればよく、必要に応じて適宜、このポリイミドと他のポリイミドとを積層したり組み合わせたりして、平坦化層として用いてもよい。
【0097】
また、上記式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、感光性ポリイミドまたは感光性ポリイミド前駆体を用いて得られるものであってもよい。感光性ポリイミドは、公知の手法を用いて得ることができる。例えば、ポリアミック酸のカルボキシル基にエステル結合やイオン結合でエチレン性二重結合を導入し、得られるポリイミド前駆体に光ラジカル開始剤を混合し、溶剤現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。また例えば、ポリアミック酸やその部分エステル化物にナフトキノンジアジド化合物を添加し、アルカリ現像ポジ型感光性ポリイミド前駆体とする、あるいは、ポリアミック酸にニフェジピン系化合物を添加しアルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とするなど、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加し、アルカリ現像ネガ型感光性ポリイミド前駆体とすることができる。
【0098】
これらの感光性ポリイミド前駆体には、ポリイミド成分の重量に対して15%〜35%の感光性付与成分が添加されている。そのため、パターン形成後に300℃〜400℃で加熱したとしても、感光性付与成分由来の残渣がポリイミド中に残存する。これらの残存物が線熱膨張係数や吸湿膨張係数を大きくする原因となることから、感光性ポリイミド前駆体を用いると、非感光性のポリイミド前駆体を用いた場合に比べて、素子の信頼性が低下する傾向にある。しかしながら、ポリアミック酸に光塩基発生剤を添加した感光性ポリイミド前駆体は、添加剤である光塩基発生剤の添加量を15%以下にしてもパターン形成可能であることから、ポリイミドとした後も添加剤由来の分解残渣が少なく、線熱膨張係数や吸湿膨張係数などの特性の劣化が少なく、さらにアウトガスも少ないため、本発明に適用可能な感光性ポリイミド前駆体としては最も好ましい。
【0099】
ポリイミドに用いられるポリイミド前駆体は、塩基性水溶液によって現像可能であることが、基材上に平坦化層を部分的に形成する際に、作業環境の安全性確保およびプロセスコストの低減の観点から好ましい。塩基性水溶液は、安価に入手でき、廃液処理費用や作業安全性確保のための設備費用が安価であるため、より低コストでの生産が可能となる。
【0100】
平坦化層はポリイミドを含むものであればよいが、中でもポリイミドを主成分とすることが好ましい。ポリイミドを主成分とすることにより、絶縁性、耐熱性に優れた平坦化層とすることが可能となる。また、ポリイミドを主成分とすることにより、平坦化層の薄膜化が可能となり平坦化層の熱伝導性が向上し、熱伝導性に優れたフレキシブルデバイス用基板とすることができる。
【0101】
なお、平坦化層がポリイミドを主成分とするとは、上述の特性を満たす程度に、平坦化層がポリイミドを含有することをいう。具体的には、平坦化層中のポリイミドの含有量が75質量%以上の場合をいい、好ましくは90質量%以上であり、特に平坦化層がポリイミドのみからなることが好ましい。平坦化層中のポリイミドの含有量が上記範囲であれば、本発明の目的を達成するのに十分な特性を示すことが可能であり、ポリイミドの含有量が多いほど、ポリイミド本来の耐熱性や絶縁性などの特性が良好となる。
【0102】
ここで、ポリイミドの数平均分子量は、2,000〜1,000,000であることが好ましい。分子量を2,000未満とすると、粘度は低下するがが、膜物性も低下してしまう。また、溶媒の量を増やして固形分量を下げると、粘度が低下するが、膜厚が薄くなってしまう。従って、上記数平均分子量が好ましい。数平均分子量は、核磁気共鳴スペクトルを用いて、高分子鎖の末端部と主鎖部の比率を定量することにより算出することができる。
【0103】
ポリイミド樹脂は溶剤に対する溶解性が低いため、溶剤への溶解性が高いポリアミック酸などのポリイミド前駆体を基材へ塗布後、熱処理等により、イミド化する方法が一般的に用いられる。
【0104】
平坦化層には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0105】
平坦化層は、基材上に全面に形成されていてもよく、基材上に部分的に形成されていてもよい。すなわち、基材の平坦化層および密着層が形成されている面に、平坦化層および密着層が存在せず、基材が露出している基材露出領域が設けられていてもよい。このような基材露出領域を有する場合には、本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いて有機EL表示装置を作製する際に、封止部材と基材とを直に密着させることが可能となり、有機EL表示装置への水分の浸入をより強固に防ぐことが可能となる。また、封止部を基材露出領域に選択的に形成することで、有機EL表示装置を面内で区分けしたり、多面付けした状態で封止したりすることが可能となり、高い生産性で素子を製造できるといった利点を有する。また、基材露出領域は、平坦化層および密着層を貫通し基材に電気的に導通をとるための貫通孔にもなり得る。なお、本発明において、平坦化層が基材上に部分的に形成されているとは、平坦化層が基材の全面に形成されていないことを意味する。平坦化層は、基材の外縁部を除いて基材上に一面に形成されていてもよく、基材の外縁部を除いて基材上にさらにパターン状に形成されていてもよい。
【0106】
3.その他の構成
本発明のフレキシブルデバイス用基板は、上記基材及び平坦化層の上に、さらに、無機化合物を含む密着層を有していてもよい。当該密着層を備えることにより、ポリイミドを含む平坦化層と本発明のフレキシブルデバイス用基板上に作製されるTFTとの間で十分な密着力を得ることができるため、好ましい。
【0107】
密着層は素子の電気的性質の観点から、記平坦化層と同様の表面平滑性を有することが好ましい。なお、上記表面粗さの測定方法については、前述した平滑層の表面粗さの測定方法と同様である。
【0108】
また、密着層は耐熱性を有することが好ましい。本発明のフレキシブルデバイス用基板上にTFTを作製する場合、TFTの作製時には通常、高温処理が施されるからである。密着層の耐熱性としては、密着層の5%重量減少温度が300℃以上であることが好ましい。
【0109】
なお、5%重量減少温度の測定については、熱分析装置(DTG−60((株)島津製作所製))を用いて、雰囲気:窒素雰囲気、温度範囲:30℃〜600℃、昇温速度:10℃/minにて、熱重量・示差熱(TG−DTA)測定を行い、試料の重量が5%減る温度を5%重量減少温度(℃)とした。
【0110】
密着層は、通常、絶縁性を有する。本発明のフレキシブルデバイス用基板上にTFTを作製する場合には、フレキシブルデバイス用基板に絶縁性が求められるからである。
【0111】
また、本発明のフレキシブルデバイス用基板上にTFTを作製する場合、密着層は、ポリイミドを含む平坦化層に含まれる不純物イオンなどがTFTの半導体層に拡散するのを防ぐものであることが好ましい。具体的に、密着層のイオン透過性としては、鉄(Fe)イオン濃度が0.1ppm以下であることが好ましく、あるいはナトリウム(Na)イオン濃度が50ppb以下であることが好ましい。なお、Feイオン、Naイオンの濃度の測定方法としては、密着層上に形成された層をサンプリングして抽出した後、イオンクロマトグラフィー法により分析する方法が用いられる。
【0112】
密着層を構成する無機化合物としては、上述の特性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロム、酸化チタンを挙げることができる。これらは1種であってもよく2種以上であってもよい。
【0113】
密着層は、単層であってもよく多層であってもよい。
【0114】
密着層が多層膜である場合、上述の無機化合物からなる層が複数層積層されていてもよく、上述の無機化合物からなる層と金属からなる層とが積層されていてもよい。この場合に用いられる金属としては、上述の特性を満たす密着層を得ることができれば特に限定されるものではなく、例えば、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素を挙げることができる。
【0115】
また、密着層が多層膜である場合、密着層の最表層は酸化ケイ素膜であることが好ましい。すなわち、本発明のフレキシブルデバイス用基板上にTFTを作製する際、酸化ケイ素膜上にTFTが作製されることが好ましい。酸化ケイ素膜は上述の特性を十分に満たすからである。この場合の酸化ケイ素はSiO(Xは1.5〜2.0の範囲内)であることが好ましい。
【0116】
中でも、密着層は、平坦化層上に形成され、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化クロムおよび酸化チタンからなる群から選択される少なくとも1種からなる第1密着層と、第1密着層上に形成され、酸化ケイ素からなる第2密着層とを有することが好ましい。第1密着層により平坦化層と第2密着層との密着性を高めることができ、第2密着層により平坦化層と本発明のフレキシブルデバイス用基板上に作製されるTFTとの密着性を高めることができるからである。また、酸化ケイ素からなる第2密着層は上述の特性を十分に満たすからである。
【0117】
密着層の厚みは、上述の特性を満たすことができる厚みであれば特に限定されないが、具体的には、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。中でも、密着層が上述したように第1密着層および第2密着層を有する場合、第2密着層の厚みは第1密着層よりも厚く、第1密着層は比較的薄く、第2密着層は比較的厚いことが好ましい。この場合、第1密着層の厚みは、0.1nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5nm〜20nmの範囲内、さらに好ましくは1nm〜10nmの範囲内である。また、第2密着層の厚みは、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは50nm〜300nmの範囲内、さらに好ましくは80nm〜120nmの範囲内である。厚みが薄すぎると、十分な密着性が得られないおそれがあり、厚みが厚すぎると、密着層にクラックが生じるおそれがあるからである。
【0118】
密着層は、基材又は平坦化層上に全面に形成されていてもよく、基材又は平坦化層上に部分的に形成されていてもよい。中でも、後述するように平坦化層が基材上に部分的に形成されている場合には、密着層も平坦化層と同様に基材上に部分的に形成されていることが好ましい。基材上に直に無機化合物を含む密着層が形成されていると、密着層にクラックなどが生じる場合があるからである。すなわち、密着層および平坦化層は同様の形状であることが好ましい。
【0119】
密着層の形成方法としては、上述の無機化合物からなる層や上述の金属からなる層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、DC(直流)スパッタリング法、RF(高周波)マグネトロンスパッタリング法、プラズマCVD(化学気相蒸着)法等を挙げることができる。中でも、上述の無機化合物からなる層を形成する場合であって、アルミニウムやケイ素を含む層を形成する場合には、反応性スパッタリング法を用いることが好ましい。平坦化層との密着性に優れる膜が得られるからである。
【0120】
本発明においては、基材と平坦化層との間に中間層が形成されていてもよい。例えば、基材として金属箔を用いる場合、金属箔および平坦化層の間に、金属箔を構成する金属が酸化された酸化膜からなる中間層が形成されていてもよい。これにより、金属箔と平坦化層との密着性を高めることができる。この酸化膜は、金属箔表面が酸化されることで形成される。
【0121】
また、金属箔の平坦化層が形成されている面とは反対側の面にも上記酸化膜が形成されていてもよい。
【0122】
4.フレキシブルデバイス用基板の製造方法
本発明は、ダイコート法によって基材上にポリイミド樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する絶縁層形成工程を含む、前述のフレキシブルデバイス用基板の製造方法を提供する。本発明において、ポリイミド樹脂組成物とは、前述のポリイミドまたはポリイミド前駆体及び溶剤を含む組成物を示す。ポリイミド樹脂組成物には、必要に応じて、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等の添加剤が含有されていてもよい。
【0123】
また、組成物に使用される溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。これらの溶媒は単独若しくは組み合わせて用いられる。
【0124】
また、ポリイミド樹脂組成物はダイコート法による塗布の際、ポリイミド前駆体の溶解性によっては、流路で溶媒の蒸発が起きると、ポリイミド前駆体の析出が起こり、表面平坦性の悪化の原因となる場合がある。また。塗布後すぐに乾燥が始まると、乾燥ムラが生じ、表面平坦性の悪化の原因となる場合がある。上記の観点から本案件については、沸点が比較的高い溶媒を使うことが好ましく、具体的には沸点が100℃以上であることが好ましい。
【0125】
また、分子量が2,000以上のポリイミド前駆体は、分子量2,000未満のポリイミド前駆体と比較して、溶剤可溶性が低下する。そのため、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホアミド、N−アセチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等の極性溶媒が好適なものとして挙げられる。特に、溶解性の観点からN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0126】
本発明においては、前述のポリイミドを含む樹脂組成物を、ダイコート法により塗布することにより、非常に高い表面平滑性を得ることができる。尚、ポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液を塗布する場合、塗布後にポリイミドまたはポリイミド前駆体のガラス転移温度以上に加熱することで、膜の流動性を高め、平滑性を良くすることもできる。
【0127】
ここで、ダイコート法とは、基材に対向してダイヘッドを配置し、そしてダイヘットを基材に対して相対的に移動させつつダイヘットから塗布液を吐出すること基材に塗装を施す方法を示す。図3に、ダイコート法の概略を示す。ダイコート法においては、走行中の基材2に対向してダイヘッド5を配置するか(a)、または固定した基材2に対向して配置させてダイヘッド5を移動しつつ(b)、そのダイヘッド5から塗布液6を一定幅で吐出することで基材に塗装が施される。通常、塗布液6は、ダイヘッド5のスリット部分から吐出されるため、スリットコート法と呼ばれる方法も本発明のダイコート法に含まれ得る。ダイコート法により塗布された塗膜を、硬化することにより、平坦化層が形成される。硬化方法は特に限定されず、本発明の属する技術分野において知られている方法を広く採用することができる。ここで、ダイコートは、塗工ヘッドに供給された塗工液の100%が基材に塗布される前計量塗布の1つであるので、過剰塗工液や液の循環などが発生しないため、安定的に塗布液を供給することが可能であることから、基材の塗布方向に対する膜の変化を抑えることができるため、表面平坦性の向上の観点から好ましい。また、ダイヘッド部によって幅方向にも均一に塗工液を広げることが可能であることから、基材の幅方向に対する膜の変化についても抑えることができるため、表面平坦性の向上の観点から好ましい。
【0128】
塗布により膜を形成する方法としては、他にスピンコート法が知られている。ガラス基板などの、リジッドな基板を用いて、低粘度の溶液を用いる際には、スピンコート法を用いても平滑な面を形成することが可能である。
【0129】
しかし、本案件については、フレキシブル性を有する基板を用いるため、安定的に基材を回転させることが困難であることならびに、膜物性ならびに形成膜厚の関係から、溶液の粘度を下げることが困難であることからスピンコート法を用いて、表面平坦性が高い塗布面を形成することは困難である。
【0130】
本発明の典型的な実施形態におけるダイコート法の条件を以下に示すが、本発明の方法は、以下の条件に限定されるものではない:
ダイヘッドのスリット幅は、塗布する膜厚にもよるが、0.02〜3mm程度であることが好ましい。
【0131】
ダイヘッドと基材の位置関係は特に限定されず、ダイヘッドの塗出部を下方向に向ける場合は、ダイヘッドと基材とを比較的離して基材に対して上側から塗布液を滴下してもよいし、ダイヘッドと基材とをより接近させるように基材に対して上側から塗布液を塗工してもよい。また、ダイヘッドの塗出部を上方向に向ける場合は、ダイヘッドと基材とを接近させた状態でダイヘッドの上部に基材を配置した上で、塗工することができる。また、ダイヘッドの塗出部を水平方向ならびに、斜め方向に向ける場合においても、上方向に向けた場合と同様の位置関係になるように基材を配置して塗布することができる。基材とダイヘッドの先端との距離は、上面から滴下する場合、カーテンコートのように、1cm〜100cm程度自由落下させて塗布をおこなうことも可能であるが、得られる塗膜の表面平坦性の観点からダイヘッドと基材とを接近させた状態で塗布することが好ましく、具体的には0.01mm以上5mm以下であることが好ましい。ダイヘッドの塗出部を上方向以外に向ける場合においても、0.01mm以上5mm以下であることが好ましい。基材とダイヘッドの相対速度は、0.1〜500m/minであることが好ましい。
【0132】
前述のように、ポリイミドの溶解性の点から極性溶媒を用いることが好ましいが、極性溶媒は樹脂製の物品を侵しやすい傾向がある。しかし、ダイヘッドは主に金属から構成されており、極性溶媒に侵されないため、安定的に塗布することが可能であるため好ましい。
【0133】
ダイコート法により塗布されるポリイミド樹脂組成物の粘度は、1〜50,000cPであることが好ましく、100〜40,000cPであることが好ましく、300〜30,000であることがさらに好ましい。物性面から、分子量を2,000以上に保つ必要があり、さらに、上記にあげた極性溶媒は他の溶媒(ケトン系、アルコール系)と比較して粘度が高いため、粘度を下げることが困難である点、および、固形分量を下げることにより、低粘度化すると、所望の膜厚を得ることが困難になるからである。また、低粘度とすると、乾燥時などに膜の表面荒れの原因となり得る。また、粘度が高すぎると、スリットから、均一に押し出すことが困難となり表面平坦性を損なうこととなるから好ましくない。
【0134】
ポリイミド前駆体の固形分量としては、5%以上50%未満であることが好ましい。固形分量が低すぎると、粘度を上記の好ましい範囲内とすることが困難となるとともに、溶剤の揮発によって、膜厚が薄くなり、所望の膜厚を得ることが困難であるからである。また、固形分が高すぎると粘度を上記の好ましい範囲内とすることが困難となるとともに、溶剤への溶解性の観点から、溶解可能な量が実質的な上限となるからである。また、上述のダイコートに適した粘度領域にする観点から、ポリイミドの数平均分子量は4000以上500,000以下であることがより好ましい。
【0135】
尚、本発明においては、塗布前に、上記ポリイミド樹脂組成物を脱気してもよい。当該実施形態においては、例えば、相対溶存酸素飽和率相対溶存酸素飽和率が95%以下となるようポリイミド樹脂組成物を脱気する。ここで、相対溶存酸素飽和率は以下のように測定する。まず、ポリイミド樹脂組成物に含まれる溶媒に空気を30分以上バブリングした溶存酸素飽和溶媒を用いて、全く酸素が溶存していない上記溶媒の溶存酸素量の測定値が0、上記溶存酸素飽和溶媒の溶存酸素量の測定値が100となるように、溶存酸素量計の校正を行う。次に、校正された上記溶存酸素量計により、ポリイミド樹脂組成物を大気下で1時間以上静置した基準ポリイミド樹脂組成物の溶存酸素量の相対値と、ポリイミド樹脂組成物を脱気した脱気ポリイミド樹脂組成物の溶存酸素量の相対値とを測定する。そして、上記基準ポリイミド樹脂組成物の溶存酸素量の相対値を100%としたときの、上記脱気ポリイミド樹脂組成物の溶存酸素量の相対値を、相対溶存酸素飽和率とする。
【0136】
ここで、液体中の泡は、気体がガス状のままで液体中に混合している状態である。この泡は、外部から混入するだけでなく、液体から発生することが非常に多く見られる。一方、溶存気体とは、液体中に溶解している気体を意味し、これは泡のように目で見ることはできない。本発明は、この液体中の「溶存気体」を除去するものである。
【0137】
気体の液体に対する溶解量は、液体の種類、温度や圧力、さらには接液材質によって変化し、飽和量以上の溶存気体は泡となって出現する。つまり、泡のない状態の液体であっても、温度や圧力等が変化すると泡を発生することになる。一方で、液体中に泡が存在しても、所定の温度や圧力等である場合、または気体の溶解量が飽和値に満たない場合、泡は液体中に溶解してなくなってしまう。すなわち、単に泡を除去するだけでは不十分であり、溶存気体を除去することが重要である。
【0138】
したがって、ポリイミド樹脂組成物が大気と充分な時間接していて、ポリイミド樹脂組成物に空気が定常的に溶解した状態においては、少しの圧力や温度の変化で飽和量以上の溶存気体が泡として発生してしまうことが予想される。しかしながら、空気が定常的に溶解した状態のポリイミド樹脂組成物の溶存気体量を100%としたとき、ポリイミド樹脂組成物の溶存気体量が95%程度である場合には、圧力や温度の変化によってもすぐには溶存気体の飽和量を超えることがないため、泡の発生を抑制することが可能になる。
【0139】
溶存気体について、ポリイミド樹脂組成物が大気に接している状況下では、ポリイミド樹脂組成物中に溶解している気体の大部分は窒素または酸素となる(大気中の存在量が酸素の次に多いアルゴンでも酸素の1/20以下であるため)。窒素は不活性ガスのため測定が困難であるが、酸素は測定可能である。また、多くの溶媒に関して同一温度・同一圧力下での溶媒に対する酸素と窒素の溶解度の比は1.4〜2.0であり(酸素の方が溶解しやすい)、大気中では窒素の分圧は酸素の分圧より3.7倍程度高いので、ヘンリーの法則から、大気に接している状態では、窒素が酸素の1.9〜2.7倍程度溶解していると考えられる。この比は、圧力が高くない状態では、溶媒の種類が同じであれば一定であり、溶媒の種類が変わっても変動幅は1.9〜2.7倍程度とさほど大きくないので、溶存酸素量を求めることにより、窒素および酸素を合せた溶存気体の量を見積ることが可能である。
【0140】
溶存酸素量は、水以外の溶媒中では絶対値を測定することが困難である。そこで、本発明においては、ポリイミド樹脂組成物に含まれる溶媒に空気を30分以上バブリングした溶存酸素飽和溶媒の溶存酸素量を基準として、相対値(相対溶存酸素飽和率)で評価する。
【0141】
ポリイミド樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する場合、ポリイミド樹脂組成物を塗布して乾燥する際に塗膜の表面にスキン層が生成し、溶媒や水が蒸発し難くなったり、気体が脱離し難くなったりするおそれがある。そのため、ポリイミド樹脂組成物中に気泡が含まれていたり、ポリイミド樹脂組成物中に気体が溶存していたりすると、気泡を内包する絶縁層が形成されてしまう。
【0142】
これに対し、脱気工程を含む実施形態においては、絶縁層を形成する前にポリイミド樹脂組成物を脱気するので、絶縁層中の気泡を低減することができる。特に、所定の方法で算出した相対溶存酸素飽和率が95%以下となるように、ポリイミド樹脂組成物を脱気するので、絶縁層においてマイクロメートルオーダーの気泡だけでなくナノメートルオーダーの気泡も低減することができる。これにより、表面平滑性に優れる絶縁層を形成することが可能である。また、基材表面に凹凸が存在する場合であっても、基材上に絶縁層を形成することで基材表面の凹凸を平坦化することができ、薄膜素子用基板の表面平滑性を改善することができる。よって、本発明により製造される薄膜素子用基板を用いることにより、特性の良好な薄膜素子を得ることが可能となる。
【0143】
5.用途
本発明のフレキシブルデバイス用基板は、TFT基板、電極基板等にも適用することができる。当該電極基板は、トップエミッション型の有機EL表示装置に用いることができ、照明用途に適用することができる。さらに、本発明のフレキシブルデバイス用基板は、パッシブマトリクス型の電子ペーパーにも適用することができる。
【0144】
B.フレキシブルデバイス用TFT基板
次に、本発明のフレキシブルデバイス用TFT基板(以下、単にTFT基板と称する場合がある。)について説明する。
【0145】
本発明のTFT基板は、上述のフレキシブルデバイス用基板と、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されたTFTとを有することを特徴とするものである。
【0146】
一つの実施形態において本発明のTFT基板は、フレキシブルデバイス用基板上にトップゲート・ボトムコンタクト構造を有するTFTを備えていても、トップゲート・トップコンタクト構造を有するTFTを備えていてもよい。
【0147】
本発明によれば、上述のフレキシブルデバイス用基板を用いるので、平坦化層によって基材表面の凹凸を平坦化することができる。よって、凹凸によるTFTの電気的性能の低下を抑制することができる。また本発明によれば、上述のフレキシブルデバイス用基板を用いるので、フレキシブルデバイス用基板とTFTとの密着性に優れている。よって、本発明のTFT基板の製造時に水分や熱が加わってポリイミドを含む平坦化層の寸法が変化した場合であっても、電極や半導体層に剥離やクラックが生じるのを防ぐことができる。
【0148】
また、基材として金属箔を用いる場合、本発明のTFT基板は、酸素や水蒸気に対するガスバリア性を有している。よって、本発明のTFT基板を用いて有機EL表示装置を作製した場合には、水分や酸素による素子性能の劣化を抑制することができ、また本発明のフレキシブルデバイス用基板を用いて液晶表示方式の電子ペーパーを作製した場合には、液晶が水蒸気に曝されるのを抑制することができる。さらに、本発明のTFT基板は金属箔を有しており、一般に金属箔は熱伝導性に優れているので、放熱性を有している。よって、本発明のTFT基板を用いて有機EL表示装置を作製した場合、有機EL表示装置の発熱による素子性能の劣化を抑制することができる。
【0149】
また、当該実施形態においては、本発明のTFT基板は金属箔で支持されているので、耐久性に優れるTFT基板とすることができる。
【0150】
なお、フレキシブルデバイス用基板については、上記「A.フレキシブルデバイス用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明のTFT基板の他の構成について説明する。
【0151】
本発明におけるTFTは、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されるものである。
【0152】
TFTの構造としては、例えば、トップゲート構造(正スタガ型)、ボトムゲート構造(逆スタガ型)、コプレーナ型構造を挙げることができる。トップゲート構造(正スタガ型)およびボトムゲート構造(逆スタガ型)の場合には、さらにトップコンタクト構造、ボトムコンタクト構造を挙げることができる。これらの構造は、TFTを構成する半導体層の種類に応じて適宜選択される。
【0153】
TFTを構成する半導体層としては、フレキシブルデバイス用基板上に形成することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、シリコン、酸化物半導体、有機半導体が用いられる。
【0154】
シリコンとしては、ポリシリコン、アモルファスシリコンを用いることができる。
【0155】
酸化物半導体としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化マグネシウム亜鉛(MgZn1−xO)、酸化カドミウム亜鉛(CdZn1−xO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウム(In)、酸化ガリウム(Ga)、酸化スズ(SnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化タングステン(WO)、InGaZnO系、InGaSnO系、InGaZnMgO系、InAlZnO系、InFeZnO系、InGaO系、ZnGaO系、InZnO系を用いることができる。
【0156】
有機半導体としては、例えば、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を挙げることができる。より具体的には、ペンタセン、テトラセン、チオフェンオリゴマ誘導体、フェニレン誘導体、フタロシアニン化合物、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、シアニン色素等が挙げられる。
【0157】
中でも、半導体層は、上述の酸化物半導体からなる酸化物半導体層であることが好ましい。酸化物半導体は水や酸素の影響によりその電気特性が変化するが、本発明のTFT基板は上述したように水蒸気に対するガスバリア性を有するため、半導体の特性劣化を抑制することができる。また、例えば本発明のTFT基板を有機EL表示装置に用い、基材として金属箔を用いる場合には、有機EL表示装置は水や酸素に対する耐性に劣るが、金属箔によって酸素および水蒸気の透過を抑制することができるので、素子性能の劣化を抑制することができる。
【0158】
半導体層の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0159】
TFTを構成するゲート電極、ソース電極およびドレイン電極としては、所望の導電性を備えるものであれば特に限定されるものではなく、一般的にTFTに用いられる導電性材料を用いることができる。このような材料の例としては、Ta、Ti、Al、Zr、Cr、Nb、Hf、Mo、Au、Ag、Pt、Mo−Ta合金、W−Mo合金、ITO、IZO等の無機材料、および、PEDOT/PSS等の導電性を有する有機材料を挙げることができる。
【0160】
ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0161】
TFTを構成するゲート絶縁膜としては、一般的なTFTにおけるゲート絶縁膜と同様のものを用いることができ、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の絶縁性無機材料、および、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料を用いることができる。
【0162】
ゲート絶縁膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0163】
TFT上には保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、TFTを保護するために設けられるものである。例えば、半導体層が空気中に含有される水分等に曝露されることを防止することができる。保護膜が形成されていることにより、TFT性能の経時劣化を低減することができるのである。このような保護膜としては、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の絶縁性無機材料、および、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、カルド系樹脂、ビニル系樹脂、イミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の絶縁性有機材料が用いられる。
【0164】
保護膜の形成方法および厚みとしては、一般的なものと同様とすることができる。
【0165】
半導体層が酸化物半導体層である場合、酸化物半導体層上に保護膜をスパッタリング法等により形成すると、酸化物半導体では酸素が欠損するおそれがあるが、保護膜の形成後に酸素の存在下でアニール処理を行なうことで、酸素欠陥を補うことができる。このアニール処理は数百度と高温で行なわれるため、ポリイミドを含む平坦化層の寸法変化が懸念されるが、本発明においては密着層が形成されているので、アニール処理によって平坦化層の寸法が変化した場合であっても、平坦化層とTFTとの密着性を維持することができ、TFTの剥離やクラックを抑制することが可能である。
【0166】
C.フレキシブルデバイス
次に、本発明のフレキシブルデバイスについて説明する。
【0167】
本発明のフレキシブルデバイスは、上述のTFT基板を備えることを特徴とするものである。
【0168】
本発明によれば、上述のTFT基板を用いるので、基材表面の凹凸によるTFTの電気的性能の低下を防ぐとともに、本発明のフレキシブルデバイスの製造時や使用時に電極や半導体層に剥離やクラックが生じるのを防ぐことができる。
【0169】
また、本発明のフレキシブルデバイスが有機EL表示装置である場合には、フレキシブルデバイス用基板が水蒸気や酸素に対するガスバリア性を有するので、素子性能の良好な有機EL表示装置とすることができる。さらに、本発明のフレキシブルデバイスが有機EL表示装置である場合、フレキシブルデバイス用基板は放熱性を有するので、有機EL表示装置の発熱による性能劣化を抑制することができる。
【0170】
また基材として金属箔を用いる実施形態では、フレキシブルデバイスが金属箔で支持されているので、耐久性に優れるフレキシブルデバイスとすることができる。
【0171】
本発明のフレキシブルデバイスは、TFTを備え、可撓性を有するデバイスであれば特に限定されるものではないが、中でも、フレキシブルディスプレイであることが好ましい。フレキシブルディスプレイとしては、例えば、有機EL表示装置、電子ペーパー、反射型液晶表示装置が挙げられる。特に、本発明のフレキシブルデバイスは、有機EL表示装置または電子ペーパーであることが好ましい。フレキシブルディスプレイ以外には、RFIDなどの回路、およびセンサーを例示することができる。
【0172】
なお、有機EL表示装置については後述の「D.有機EL表示装置」の項に詳しく記載し、電子ペーパーについては、後述の「E.電子ペーパー」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。また、TFT基板については、上記「B.フレキシブルデバイス用TFT基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0173】
D.有機EL表示装置
本発明の有機EL表示装置は、上述のTFT基板を備える、すなわち上述のフレキシブルデバイス用基板を備えることを特徴とするものである。具体的に、本発明の有機EL表示装置は、基材、上記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および上記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、上記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層およびTFTと、上記背面電極層上に形成され、少なくとも有機発光層を含むEL層と、上記EL層上に形成された透明電極層とを有することを特徴とするものである。
【0174】
典型的な実施形態において、本発明の有機EL表示装置は、前述の密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された駆動用TFTおよびスイッチング用TFTと、駆動用TFTおよびスイッチング用TFTを覆うように形成された保護膜と、保護膜上に形成され、スルーホールを介して駆動用TFTのドレイン電極と電気的に接続された背面電極層(画素電極)と、背面電極層上に形成され、有機発光層を含むEL層と、EL層上に形成された透明電極層とを有している。フレキシブルデバイス用基板は、基材と、基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層と、平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層とを有している。駆動用TFTおよびスイッチング用TFTはいずれもボトムゲート・トップコンタクト構造を有し、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成された半導体層ならびにソース電極およびドレイン電極とを有している。
【0175】
本発明によれば、上述のフレキシブルデバイス用基板を用いるので、基材表面の凹凸によるTFTの電気的性能の低下を防ぐとともに、本発明の有機EL表示装置の製造時や使用時にTFTに剥離やクラックが生じるのを防ぐことができる。また、フレキシブルデバイス用基板が水蒸気や酸素に対するガスバリア性を有するので、素子性能を良好に維持することができる。さらに、フレキシブルデバイス用基板が放熱性を有するので、有機EL表示装置の発熱による性能劣化を抑制することができる。また、基材として金属箔を用いる場合、本発明の有機EL表示装置は金属箔で支持されているので、耐久性に優れたものとすることができる。
【0176】
なお、フレキシブルデバイス用基板については、上記「A.フレキシブルデバイス用基板」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明の有機EL表示装置の他の構成について説明する。
【0177】
1.TFT
本発明におけるTFTは、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されるものである。一般に有機EL表示装置においては、画素毎に駆動用TFTとスイッチング用TFTの2つのTFTが設けられる。
【0178】
なお、TFTについては、上記「B.フレキシブルデバイス用TFT基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0179】
2.背面電極層
本発明における背面電極層は、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されるものであり、TFTのドレイン電極と電気的に接続される画素電極である。
【0180】
背面電極層の材料としては、導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、Au、Ta、W、Pt、Ni、Pd、Cr、Cu、Mo、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属単体、これらの金属の酸化物、およびAlLi、AlCa、AlMg等のAl合金、MgAg等のMg合金、Ni合金、Cr合金、アルカリ金属の合金、アルカリ土類金属の合金等の合金などを挙げることができる。これらの導電性材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上を用いて積層させてもよい。また、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることもできる。
【0181】
背面電極層の形成方法および厚みとしては、一般的な有機EL表示装置における電極と同様とすることができる。
【0182】
3.EL層
本発明におけるEL層は、背面電極層上に形成され、有機発光層を含むものであり、少なくとも有機発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。すなわち、EL層とは、少なくとも有機発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布法でEL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、EL層は1層もしくは2層の有機層を有する場合が多いが、溶媒への溶解性が異なるように有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0183】
有機発光層以外にEL層内に形成される層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層を挙げることができる。正孔注入層および正孔輸送層は一体化されている場合がある。同様に、電子注入層および電子輸送層は一体化されている場合がある。その他、EL層内に形成される層としては、キャリアブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
【0184】
このようにEL層は種々の層を積層した積層構造を有することが多く、積層構造としては多くの種類がある。
【0185】
EL層を構成する各層としては、一般的な有機EL表示装置に用いられるものと同様とすることができる。
【0186】
4.透明電極層
本発明における透明電極層は、EL層上に形成されるものである。本発明の有機EL表示装置においては透明電極層側から光を取り出すため、透明電極層は透明性を有している。
【0187】
透明電極層の材料としては、透明電極を形成可能な導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることができる。
【0188】
透明電極層の形成方法および厚みとしては、一般的な有機EL表示装置における電極と同様とすることができる。
【0189】
5.その他の構成
本発明の有機EL表示装置は、上述の構成の他に、必要に応じて、絶縁層、隔壁、封止部材などを有していてもよい。
【0190】
E.電子ペーパー
本発明の電子ペーパーは、上述のTFT基板を備える、すなわち上述のフレキシブルデバイス用基板を備えることを特徴とするものである。具体的に、本発明の電子ペーパーは、基材、上記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層、および上記平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、上記フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成された背面電極層およびTFTと、上記背面電極層上に形成された表示層と、上記表示層上に形成された透明電極層とを有することを特徴とするものである。
【0191】
典型的な実施形態において、本発明の電子ペーパーは、前述した密着層を有するフレキシブルデバイス用基板と、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されたTFTと、TFTを覆うように形成された保護膜と、保護膜上に形成され、スルーホールを介してTFTのドレイン電極と電気的に接続された背面電極層(画素電極)と、背面電極層上に形成された表示層と、表示層上に形成された透明電極層とを有している。フレキシブルデバイス用基板は、基材と、基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層と、平坦化層上に形成され、無機化合物を含む密着層とを有している。TFTはボトムゲート・トップコンタクト構造を有し、フレキシブルデバイス用基板の密着層上に形成されたゲート電極と、ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成された半導体層ならびにソース電極およびドレイン電極とを有している。
【0192】
本発明によれば、上述のフレキシブルデバイス用基板を用いるので、基材表面の凹凸によるTFTの電気的性能の低下を防ぐとともに、本発明の電子ペーパーの製造時や使用時にTFTに剥離やクラックが生じるのを防ぐことができる。また、基材として金属箔を用いる場合、本発明の電子ペーパーは金属箔で支持されているので、耐久性に優れたものとすることができる。
【0193】
電子ペーパーの表示方式としては、公知のものを適用することができ、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、粉体移動方式(電子粉流体方式、帯電トナー型方式)、液晶表示方式、サーマル方式(発色方式、光散乱方式)、エレクトロデポジション方式、可動フィルム方式、エレクトロクロミック方式、エレクトロウェッティング方式、磁気泳動方式などが挙げられる。
【0194】
電子ペーパーを構成する表示層としては、電子ペーパーの表示方式に応じて適宜選択される。
【0195】
背面電極層および透明電極層としては、上記有機EL表示装置における背面電極層および透明電極層と同様とすることができる。
【0196】
なお、フレキシブルデバイス用基板については上記「A.フレキシブルデバイス用基板」の項に詳しく記載し、TFTについては上記「B.フレキシブルデバイス用TFT基板」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0197】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0198】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
【0199】
[製造例]
1.ポリイミド前駆体溶液の調製
(製造例1)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA) 4.0g(20mmol)とパラフェニレンジアミン(PPD) 8.65g(80mmol)とを500mlのセパラブルフラスコに投入し、200gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ、窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA) 29.1g(99mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後室温まで冷却し、ポリイミド前駆体溶液1を得た。
【0200】
(製造例2)
反応温度および溶液の濃度が、17重量%〜19重量%になるようにNMPの量を調整した以外は、製造例1と同様の方法で、下記表1に示す配合比でポリイミド前駆体溶液2〜17を合成した。
【0201】
酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、p−フェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(TAHQ)、p−ビフェニレンビストリメリット酸モノエステル酸二無水物(BPTME)を用いた。ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PPD)、1,4-Bis(4-aminophenoxy)benzene(4APB)、2,2′-Dimethyl-4,4′-diaminobiphenyl(TBHG)、2,2′-Bis(trifluoromethyl)-4,4′-diaminobiphenyl(TFMB)の1種または2種を用いた。
【0202】
【表1】

【0203】
(製造例3)
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液11に{[(4,5-dimethoxy-2-nitrobenzyl) oxy]carbonyl} 2,6-dimethyl piperidine (DNCDP)を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液1とした。
【0204】
(製造例4)
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液1に2−ヒドロキシ−5−メトキシ−桂皮酸とピペリジンとから合成したアミド化合物(HMCP)を溶液の固形分の10重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液2とした。
【0205】
【化5】

【0206】
(製造例5)
感光性ポリイミドとするために、上記ポリイミド前駆体溶液11に2−ヒドロキシ−5−メトキシ−桂皮酸とピペリジンとから合成したアミド化合物(HMCP)を溶液の固形分の15重量%添加し、感光性ポリイミド前駆体溶液3とした。
【0207】
(線熱膨張係数および吸湿膨張係数の評価)
上記ポリイミド前駆体溶液1〜17を、ガラス上に貼り付けた耐熱フィルム(ユーピレックスS 50S:宇部興産(株)製)に塗布し、80℃のホットプレート上で10分乾燥させた後、耐熱フィルムから剥離し、膜厚15μm〜20μmのフィルムを得た。その後、そのフィルムを金属製の枠に固定し、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μm〜15μmのポリイミド1〜17および感光性ポリイミド1〜3のフィルムを得た。
【0208】
<線熱膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。線熱膨張係数は、熱機械的分析装置Thermo Plus TMA8310(リガク社製)によって測定した。測定条件は、評価サンプルの観測長を15mm、昇温速度を10℃/min、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とし、100℃〜200℃の範囲の平均の線熱膨張係数を線熱膨張係数(C.T.E.)とした。
【0209】
<湿度膨張係数>
上記の手法により作製したフィルムを幅5mm×長さ20mmに切断し、評価サンプルとして用いた。湿度膨張係数は、湿度可変機械的分析装置Thermo Plus TMA8310改(リガク社製)によって測定した。温度を25℃で一定とし、まず、湿度を15%RHの環境下でサンプルが安定となった状態とし、概ね30分〜2時間その状態を保持した後、測定部位の湿度を20%RHとし、さらにサンプルが安定になるまで30分〜2時間その状態を保持した。その後、湿度を50%RHに変化させ、それが安定となった際のサンプル長と20%RHで安定となった状態でのサンプル長との違いを、湿度の変化(この場合50−20の30)で割り、その値をサンプル長で割った値を湿度膨張係数(C.H.E.)とした。この際、評価サンプルの断面積当たりの加重が同じになるように引張り加重を1g/25000μm2とした。
【0210】
【表2】

【0211】
(基板反り評価)
厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記のポリイミド前駆体溶液1を用い、イミド化後の膜厚が10μm±1μmになるように線熱膨張係数評価のサンプル作成と同様のプロセス条件で、ポリイミド1のポリイミド膜を形成した。その後、SUS304箔およびポリイミド膜の積層体を幅10mm×長さ50mmに切断し、基板反り評価用のサンプルとした。
【0212】
このサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、100℃のオーブンで1時間加熱した後、100℃に加熱されたオーブン内で、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
【0213】
同様にこのサンプルを、SUS板表面にサンプルの短辺の片方のみをカプトンテープにより固定し、23℃85%Rhの状態の恒温恒湿槽に1時間静置したときの、サンプルの反対側の短辺のSUS板からの距離を測定した。そのときの距離が、0mm以上0.5mm以下のサンプルを○、0.5mm超1.0mm以下のサンプルを△、1.0mm超のサンプルを×と判断した。
【0214】
次に、厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)に代えて厚さ20μmのSUS430箔(東洋精箔製)を用い、ポリイミド前駆体溶液1に代えてポリイミド前駆体溶液2を用いる以外、上記と同様にして、基板反り評価を行った。
【0215】
これらの評価結果を以下に示す。
【0216】
【表3】

【0217】
(数平均分子量)
ポリイミド1及び2の数平均分子量を、核磁気共鳴スペクトルを用いて測定したところ、ともに、約20000であった。
【0218】
(粘度)
ポリイミド1及び2の粘度を、デジタル粘度計TVE−22HT形(東機産業株式会社製)を用いて、ローター:3°×R17.65、測定レンジ:R、回転速度:10rpm、温度:25℃で測定したところ、ともに、約5000cpsであった。
【0219】
2.平坦化層(絶縁層)の形成
(平坦化層(絶縁層)の形成1)
16cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔(東洋精箔製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μmのポリイミド膜を形成し、積層体1を得た。
【0220】
(平坦化層(絶縁層)の形成2)
16cm角に切り出した厚さ20μmのポリイミドフィルム:カプトン80EN(東レ・デュポン社製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1をダイコーターでコーティングし、80℃のオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃、1時間熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、膜厚9μmのポリイミド膜を形成し、積層体2を得た。
【0221】
(平坦化層(絶縁層)の形成3)
9cm角に切り出した厚さ18μmのSUS304−HTA箔をカプトンテープを用いて10cm角のガラス板(厚み:0.7mm)に貼り付けた。上記ポリイミド前駆体溶液1をスピンコートでコーティングする以外、上記平坦化層(絶縁層)の形成1と同様にして、積層体3を得た。
【0222】
(平坦性評価)
積層体1〜3のポリイミド(PI)塗布面及びSUS箔およびポリイミドフィルム:カプトン80ENの表面粗さRaを測定した。
【0223】
まず、Nanoscope V multimode(Veeco社製)を用いて、タッピングモードで、カンチレバー:MPP11100、走査範囲:10μm×10μm及び1μm×1μm、走査速度:0.5Hzにて、表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することより、積層体1の表面粗さRaを求めた。 次いで、New View 5000(Zygo社製)を用いて、対物レンズ:100倍、ズームレンズ:1倍、Scan Length:15μmにて、100μm×100μmの範囲の表面形状を撮像し、得られた像から算出した粗さ曲線の中心線からの平均のずれを算出することより、積層体1の表面粗さRaを求めた。
【0224】
積層体1〜3およびSUS箔の表面粗さRaを以下に示す:
【0225】
【表4】

【0226】
表4に示すように、ダイコートを用いて塗装した基板は、該平坦化層表面の測定領域10μm角及び1μmでの表面粗さRaがいずれも5nm以下であり、非常に平滑性が高い。これに対して、スピンコートで塗装した基板は、Raが大きくなってしまっている。このような基板は、表面の凹凸に起因して、電気的性質が低下し、その結果素子製造の歩留まりが低下してしまう。
【0227】
[製造例1]TFT基板及びフルカラーELディスプレイの製造方法
以下の方法によりTFT基板及びフルカラーELディスプレイを製造することができる:
10%硫酸(v/v)中に1分間浸漬した後、純水により洗浄、乾燥することにより酸洗を行った厚さ100μmのSUS304−HTA板(小山鋼材社製)上に、上記ポリイミド前駆体溶液1を用いて、イミド化後の膜厚が7μm±1μmになるようにダイコーターでコーティングし、100℃のホットプレートオーブン中、大気下で60分乾燥させた後、窒素雰囲気下、350℃1時間、熱処理し(昇温速度 10℃/分、自然放冷)、平坦化層を形成する。
【0228】
次に、平坦化層上に、第1密着層としてのアルミニウム膜をDCスパッタリング法(成膜圧力0.2Pa(アルゴン)、投入電力1kW、成膜時間10秒)により厚さ5nmで形成した。次いで、第2密着層としての酸化シリコン膜をRFマグネトロンスパッタリング法(成膜圧力0.3Pa(アルゴン:酸素=3:1)、投入電力2kW、成膜時間30分)により厚さ100nmで形成する。これにより、フレキシブルデバイス用基板を得られる。
【0229】
ボトムゲート・ボトムコンタクト構造のTFTを上記フレキシブルデバイス用基板上に作製する。まず、厚さ100nmのアルミニウム膜をゲート電極膜として成膜した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後に燐酸溶液でウェットエッチングし、アルミニウム膜を所定パターンにパターニングしてゲート電極を形成する。次に、そのゲート電極を覆うように厚さ300nmの酸化ケイ素をゲート絶縁膜として全面に形成した。このゲート絶縁膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、6インチのSiOターゲットに投入電力:1.0kW(=3W/cm)、圧力:1.0Pa、ガス:アルゴン+O(50%)の成膜条件で形成する。この後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後にドライエッチングを施し、コンタクトホールを形成する。次に、ゲート絶縁膜上の全面に厚さ100nmのチタン膜、アルミニウム膜、IZO膜をソース電極及びドレイン電極とするために蒸着した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後に過酸化水素水溶液、燐酸溶液で連続的にウェットエッチングし、チタン膜を所定パターンにパターニングしてソース電極及びドレイン電極を形成する。このとき、ソース電極及びドレイン電極は、ゲート絶縁膜上であってゲート電極の中央部直上以外に離間したパターンとなるように形成する。
【0230】
次に、ソース電極及びドレイン電極を覆うように、全面に、In:Ga:Znが1:1:1のInGaZnO系アモルファス酸化物薄膜(InGaZnO)を厚さ25nmとなるように形成する。アモルファス酸化物薄膜は、RFマグネトロンスパッタリング装置を用い、室温(25℃)、Ar:Oを30:50とした条件下で、4インチのInGaZnO(In:Ga:Zn=1:1:1)ターゲットを用いて形成する。その後、アモルファス酸化物薄膜上にレジストパターンをフォトリソグラフィーで形成した後、シュウ酸溶液でウェットエッチングし、そのアモルファス酸化物薄膜をパターニングし、所定パターンからなるアモルファス酸化物薄膜を形成する。こうして得られたアモルファス酸化物薄膜は、ゲート絶縁膜上であってソース電極及びドレイン電極に両側で接触するとともに該ソース電極及びドレイン電極を跨ぐように形成される。続いて全体を覆うように、厚さ100nmの酸化ケイ素を保護膜としてRFマグネトロンスパッタリング法で形成した後、レジストパターンをフォトリソグラフィー法で形成した後にドライエッチングを施す。大気中300℃1時間のアニールを施した後、アクリル系のポジ型レジストを用いてELの隔壁層を形成し、TFT基板を作製する。
【0231】
上記TFT基板上に白色となるようにEL層を蒸着した後、電極としてIZO膜を蒸着し、バリアフィルムを用いてELの封止を行った。次にPENフィルム上に形成したフレキシブルなカラーフィルターを貼り合わせ、フレキシブルな対角4.7インチ、解像度85dpi、320×240×RGB(QVGA)のアクティブマトリックス駆動のフルカラーELディスプレイを作製する。
【符号の説明】
【0232】
1 … フレキシブルデバイス用基板
2 … 基材
3 … 平坦化層
4 … 密着層
5 … ダイコーター
6 … 塗布液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成され、ポリイミドを含む平坦化層とを有し、該平坦化層表面の測定領域10μm角での表面粗さRaが5nm以下であり、かつ該平坦化層表面の測定領域1μm角での表面粗さRaが5nm以下であるフレキシブルデバイス用基板。
【請求項2】
前記ポリイミドの数平均分子量が2,000〜1,000,000である、請求項1に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【請求項3】
前記平坦化層の膜厚が0.2〜1000μmである、請求項1又は2に記載のフレキシブルデバイス用基板。
【請求項4】
ダイコート法によって基材上にポリイミド樹脂組成物を塗布して絶縁層を形成する絶縁層形成工程を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレキシブルデバイス用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206382(P2012−206382A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73748(P2011−73748)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】