説明

ブラシレスモータ

【課題】HDDにおいて、融着銅線巻回モータでは、加熱融着により発生するコンタミが読み取りに影響する。清浄面で有意性がある非融着銅線巻回モータでは、コイルの緩み止め巻回処理に伴う相間インダクタンスが不均一となり、精度・効率に優れたインダクタンスによる回転検出方式・PWM制御駆動の適用はむずかしかった。
【解決手段】最初と最後に巻く相の巻き線のみに緩み止め処理を施すと共に、緩み止め巻回に伴う自己・相互インダクタンスの変動発生要因を回避して相間インダクタンスを均一化する。回転時の相間インダクタンスを測定することにより、低速回転時でも精度よく回転状態を検出できるので、この情報を用いてPWM制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに関するものであり、詳しくは、インダクタンスのコイル相間のアンバランスを抑えて、インダクタンスによる回転検出方式PWM制御駆動を可能にしたモータステータ及びそれを組み込んだスピンドルモータ及び情報記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パソコンのハードディスク駆動用モータに代表される小型高速モータには、3相ブラシレスモータ等の同期モータ型ブラシレスモータが用いられている。このブラシレスモータは、回転自在のシャフトを軸心とするロータと、その外周を囲むステータとで構成されている。円柱状のロータには、S極、N極の異なる磁極が周方向で交互に出現するように、複数個の界磁石が円周方向に配列されている。モータとしては、ステータコアの径方向内側でロータが回転するインナーロータタイプのものと、逆にステータコアの外側でロータが回転するアウターロータタイプのものがある。そして、ステータを構成する金属薄板を複数枚積層してなる環状のステータコアには、周方向の各位相位置に複数個のティースが半径方向(界磁石の方向)に放射状に突出して形成され、各ティースの間にはスロットが形成されている。各ティースには各コイルが巻回され、各相の巻き線が形成されている。各相の巻き線に、正弦波状或いは矩形波状(台形波状を含む)に変化する3相のモータ電流が給電されることによってロータが回転し、ブラシレスモータは駆動される。磁石の磁界とステータのティースあるいはスロットが発生する磁界の相互作用の不均一性によってトルクが脈動する現象が発生し、これを極力抑えるために、ブラシレスモータでは、ロータの磁極形状やステータのティース形状、あるいは巻き線方法等に種々工夫が凝らされ、最適化が進められてきた。
【0003】
そして近年、低消費電力化の要求が強く、パソコンのハードディスク駆動用モータの駆動制御方式も従来のリニア駆動方式から消費電力の低減化が可能なPWM(Pulse Width Modulation)制御に変わりつつある。PWM制御方式とは、コイルへの通電時に高速パルス電流を入力にすることにより、そのOFF時にモータのインダクタンスによって発生する逆起電力をも自身の駆動力として利用することによって、運転に必要な動力を低減するものである。したがって、モータのインダクタンスのばらつきを小さく抑えることは、従来以上に、非常に重要な要素となる。
【0004】
また、通電するパルス幅もモータの回転数に合わせて適切に制御することで、さらに効率良い運転が可能となる。リニア駆動方式では逆起電力を利用して回転数を求めているが、低速域では小さな逆起電力しか得られないため検出しにくく、制御性はよくない。そこでPWM方式では、インダクタンスの検出値を利用して低速領域での回転制御特性をあげる方法が採用されている。このような意味からも、インダクタンスによる回転検出方式PWM制御駆動では、インダクタンスの均一化が重要な要素項目になっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−164580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハードディスク装置の情報記録密度は日進月歩での急速な高密度化が進んでおり、超微細なギャップを介しての記録情報の読み書きが必要とされている。このため、コンタミの発生や記録ディスクへの付着を回避すべく、ハードディスク装置内の清浄化が、なお一層、強く求められている。
【0006】
ハードディスク装置に用いる3相ブラシレスモータにおいては、各相のコイルを3つ置きのティースで巻線することになり、隣接する巻線箇所間を接続する渡り線が緩まないように、適切な保持を行う必要がある。従来は、絶縁皮膜(例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂など)で覆われたワイヤの外表面に、さらに熱可塑性樹脂あるいは熱硬化型樹脂の融着皮膜(例えば、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、エポキシ系樹脂等)を焼付けた2層構造の自己融着銅線を使用し、巻き線後に加熱処理することでコイル巻き線が緩まないように融着固定していたが、融着する際に発生するガスの一部はステータ内部に溜まり、ステータをハードディスク装置へ取り付けした後に漏出してくることから、ハードディスク装置内を清浄化するために、融着皮膜で覆われていない非融着銅線への切り替えが検討されている。非融着銅線はコイル巻き線が緩みやすいので、緩み止めのためにティースへの余分な巻回処理が必要になり、ステータ内の相間インダクタンスを不揃いにしていた。特に、高速サーバー機用では、逆起電力を小さくする都合上コイルの線径は太く、巻き数を少なくする必要があり、緩み止め用の1〜2回の巻回処理の影響も顕著になっていた。
【0007】
なお、積層方向の一端部における金属薄板の表面に合成樹脂リングを取り付け、この合成樹脂リングに設けた突起に上記渡り線を係止する方法も考えられるが、薄肉化を志向している通常の構造では、金属薄板以外に上記合成樹脂リングを設けるだけの構造上の余裕はとれない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するため、インダクタンスの不揃いを小さく抑えたステータの巻き線方法、あるいは渡り線の処理方法を採用したモータステータ及び、係るモータステータを備えたモータを提供することを目的とする。
【0009】
そのため、本発明の請求項1のモータステータは、円環状のコアバック及び該コアバックから等ピッチ角度毎に径方向へ突設した3S個(Sは正の整数)のティースを有する金属薄板を複数枚積層して構成されたステータコアと、ティースの各々に巻回された3相のコイルと、を備えたモータステータにおいて、コイルは非融着銅線であって、かつ、コイルのうちの各相のコイルは、最初に巻く相(第1の相)から、中間に巻く相(第2の相)、そして最後に巻く相(第3の相)と順番にステータコアに巻回処理されてなり、第1の相と第3の相の巻き線のみに緩み止めの巻線処理が施されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2のモータステータは、請求項1の構成において、各相のコイルは、相毎に別々に選定された2個おきS個のティースに対して、当該ティース毎に少なくともN回(Nは2より大きい正の整数)ずつ巻回されており、第1の相もしくは第3の相のうち少なくともいずれか一方の相のコイルが、当該相以外の一つの相の前記コイルがN回巻回される前記ティース2個において、一方のティースではn回、さらに他方のティースでは逆方向にn回(nは4より小さい正の整数)巻回されることで緩み止めの巻線処理が行われていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3のモータステータは、請求項1又は2の構成において、各相のコイルは、相毎に別々に選定された2個おきS個のティースに対して、ティース毎に少なくともN回(Nは2より大きい正の整数)ずつ巻回されており、第1の相もしくは前記第3の相のうち少なくともいずれか一方の相のコイルが、当該相以外の一つの相の前記コイルがN回巻回される前記ティース1個において、一度はn回、さらにもう一度は逆方向にn回(nは4より小さい正の整数)巻回されることで緩み止めの巻線処理が行われていることを特徴としている。
【0012】
請求項4のモータステータは、請求項1乃至3の何れかに記載の構成において、第1の相のコイルが緩み止め巻きされるティースは、第3の相のコイルがN回巻回されるティースであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5のモータステータは、請求項1乃至4の何れかに記載の構成において、第3の相のコイルが緩み止め巻きされるティースは、第2の相のコイルがN回だけ巻回されるティースであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6のモータステータは、請求項1乃至5の何れかに記載の構成において、ステータコアを構成する複数枚の金属薄板のうち、少なくとも1枚の金属薄膜のティース間にティースと同方向にコアバックから突設したリテーナが1個以上成形されており、リテーナは金属薄板に対しほぼ直角に折り曲げられ、ステータコアの周面に当接されるとともに、リテーナの先端部はステータコアの軸方向端面よりも突出してフック状をなし、第1の相と第3の相の少なくとも何れか一方の相のコイルは、リテーナに巻回することで緩み止めの巻線処理が施されたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項7のモータステータは、請求項1乃至6の何れかに記載の構成において、隣接する2個の前記ティースと前記コアバックで囲まれた空間をスロットと呼び、ステータコアにおける第1、第2、第3の相のコイルの巻き線処理の終端部は、同一スロットから引き出し配線されてコモン端子となることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8のスピンドルモータは、請求項1乃至7の何れかに記載のモータステータと、モータステータが固定されるブラケットと、モータステータと半径方向に隙間をもって対向するロータマグネットが取り付けられて、付加される電源電圧によってブラケットに対し回転自在に支持されるモータロータを備え、第1、第2、第3の相は、3相交流のU相、V相、W相の組み合わせに対応し、付加される電源電圧は、モータインダクタンスを利用して回転方向又は回転数を求めて制御するPWM駆動方式によって運転制御されることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9の情報記録装置は、請求項8のスピンドルモータを取り付けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1のステータステータは、最初に巻く第1の相と最後に巻く第3の相の巻き線で緩み止めの巻線処理を施すので、その間に巻く第2の相の巻き線には緩み止めの巻線処理を施されなくとも構造機械的に緩むことはなく、融着銅線を用いて加熱融着処理を行う必要はない。非融着銅線のコイルを使用できるので、ガスの発生・漏出がない、清浄なモータステータを提供でき、高密度記録装置への適用が可能となる。
【0019】
さらに、非融着銅線の方が、コイルへの表面処理が不要な分だけ融着銅線より安価であるので、モータの低コスト化も可能である。
【0020】
請求項2のモータステータは、緩み止めのために行う選定された2個のティースへの巻回処理が、一方のティースではn回、さらに他方のティースではキャンセルするように逆方向にn回(nは4より小さい正の整数)巻回されているので、相間でのインダクションの不均一性は発生しない。また、それらの2個のティースは同一相のコイルが巻回されるティースとしているので、相互インダクタンスによる不均一も発生しない。したがって、相間のインダクタンスに不均一性を発生することなく、緩み止めをすることができる。
【0021】
請求項3のモータステータは、同一のティースにおいて、一度はn回、さらにもう一度はキャンセルするように逆方向にn回(nは4より小さい正の整数)巻回されているので、相間でのインダクションの不均一性は発生しない。また、同一のティースで実施しているので、相互インダクタンスによる不均一も発生しない。さらに、同一のティースでキャンセルしているので、モータロータへの界磁の影響も発生せず、安定した回転が可能である。
【0022】
なお、通常、1個のティースへの巻き数であるNは25程度であり、緩み止めの巻き数であるnは1であるので、1つの相でキャンセル巻きをしない場合には、例えば9スロットのモータステータでは、{[1+(1÷(25×3))]−1}×100=2.7%程度の、巻き数差に起因した相間インダクタンスの不均一が生じるが、これを回避することができる。
【0023】
請求項4のモータステータは、最初に巻く第1の相のコイルが緩み止め巻きされるティースは、最後に巻く第3の相のコイルがN回巻回されるティースであるので、第1の相のコイルを巻く際には未だ第3の相のコイルは巻かれていない。したがって、第1の相のコイルの緩み止め巻きの作業性がよい。
【0024】
請求項5のモータは、最後に巻く第3の相のコイルが緩み止め巻きされるティースは、既に巻かれた緩み止め巻き線処理を施さない第2の相のコイルがN回だけ巻回されたティースであるので、比較的シンプルな巻き線状態であり、線積率も過大ではない。したがって、断線を引き起こしやすい作業である逆方向へのキャンセル巻き作業も比較的行いやすいので、同一のティースで時計方向と反時計方向の2度の緩み止め巻きをすることも対応できる。
【0025】
請求項6のモータステータは、ステータコアを構成する複数枚の金属薄板のうち、少なくとも1枚の金属薄膜のティース間にティースと同方向にコアバックから突設したリテーナが1個以上成形されており、リテーナは金属薄板に対しほぼ直角に折り曲げられ、ステータコアの周面に当接されるとともに、リテーナの先端部はステータコアの軸方向端面よりも突出してフック状をなし、第1の相と第3の相の少なくとも何れか一方の相のコイルは、リテーナに巻回することで緩み止めの巻線処理が施されている。したがって、ティース部分に巻回して行う緩み止めが不要であり、インダクションの不均一性の発生を回避できる。また、ステータコアを構成する金属薄板を折り曲げて形成されているので、高さ方向寸法の増加は僅かであり、部品の増加がなく低コストである。
【0026】
請求項7のモータステータは、3つの相のコイルの終端部が同一スロットから引き出されてコモン端子となるので、コンパクトで作業性の良いモータステータを得られる。
【0027】
請求項8のスピンドルモータは、上記に記載の何れかのモータステータを適用したモータであり、相間のインダクタンスの不均一性がないので、インダクタンスを測定することによって回転方向を正確に検知すると同時に回転数を精度良く測定することが可能である。したがって、低速回転域も含めて、広範囲にわたって高効率なPWM方式の運転制御が可能であるので、小型で高効率なモータを得ることができる。
【0028】
請求項9の情報記録装置は、請求項8のスピンドルモータを取り付けたものであり、高記憶密度に耐える清浄性と高効率な特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係るモータステータ、及びこのモータステータを備えたスピンドルモータ、並びに記録ディスク駆動装置を図1乃至図14を参照して説明する。尚、本発明の実施形態の説明では、便宜上、各図面の上下方向を「上下方向」とするが、実際の取付状態における方向を限定するものではない。
【0030】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、例えばハードディスク駆動装置に使用されるスピンドルモータ1を示す縦断面図である。このスピンドルモータ1は、略カップ形状のブラケット2と、ブラケット2の中央部の円形貫通孔に挿着されるハウジング4、及びハウジング4の内周面に嵌挿されたスリーブ6と、を備える。
【0031】
ハウジング4は中空円筒状に形成された部材であり、ハウジング4の下端部には閉止板11をレーザー溶接によって接合することで一体構造としている。閉止板11をシール溶接することによって、ハウジング4の内部に保有するオイル3が漏洩しないように保持できる。
【0032】
スリーブ6の内周面はロータ10と半径方向に微小間隙を介して対向し、スリーブ6の内周面に動圧発生溝が形成され、シャフト14の外周面との間で上部ラジアル動圧軸受部20及び下部ラジアル動圧軸受部22が軸線方向に離間されて設けられている。動圧溝を有するスリーブ6の下端面はロータ10の下端部に配するシャフトフランジ14aの上面と、動圧溝を有する閉止板11の上面はシャフトフランジ14aの下面と、軸線方向(図1の上下方向に対応)に微小間隙を介し対向し、スラスト動圧軸受部24、25が形成されている。回転に伴い発生する動圧効果により、ロータ10は上部ラジアル動圧軸受部20及び下部ラジアル動圧軸受部22で安定に回転保持される。そして、ロータ10の回転時には動圧効果によってオイルの内圧が高められ、ロータ10は安定に浮上保持される。
【0033】
また、スリーブ6の上端側にはシール部材5を装着し、ロータ10との間でテーパー状のキャピラリーシール部を構成して、上記軸受部分の隙間部に途切れなく充填されたオイル3の飛散、漏出を防止している。
【0034】
ロータ10は、シャフト14と、シャフト14に固着されたロータハブ12と、を備えている。シャフト14は、スリーブ6に対して回転中心軸Xを中心として回転する。ロータハブ12は、略円板状の上壁部12aと、上壁部12aの外周部から垂下する周壁部12bとを備えている。この周壁部12bの内周面には、ロータマグネット16が接着剤によって固着されると共に、ロータマグネット16は、モータステータ7と半径方向に間隙を介して対向している。また、周壁部12bの外周側面には、記録ディスク51(図示せず)が配置されている。
【0035】
モータステータ7は、ケイ素鋼板等の金属からなる複数枚の環状金属薄板が積層されて構成されたステータコア8に、3相のコイル9が巻回されて構成され、回転中心軸Xと同芯を保ってステータコア8の内周部はブラケット2に固定されている。
【0036】
本発明のスピンドルモータ1は、PWM制御される3相駆動モータであって、各相はそれぞれU相、V相、W相であり、これらの結線としてコモン相を有する。したがって、このコイル9の端末は4つとなる。FPC30は略円弧状であり、半径方向内側に向いた4つの突部31が設けられている。これら突部31の中央には、各々ランド部31aが形成されており、このランド部31aにコイル9を半田等の導電部材で接続固定することによって、コイル9とFPC30との通電を確保する。FPC30は、ブラケット2に設けられた貫通孔2aを通ってブラケット2の上面側から下面側に出て、ブラケット2の下面に固定される。外部電源&制御回路(図示せず)からFPC30を介してモータステータ7に通電されることにより、モータステータ7に磁場を形成し、この磁場とロータマグネット16との相互作用により所定の回転トルクが得られ、スピンドルモータ1を回転駆動する。
【0037】
なお、本実施例では、スピンドルモータ1を支えるブラケット2と、それを取り付ける記録ディスク駆動装置のベース53とを別体にした例を示したが、これらは一体に形成されてもよい。また、軸受の形式や配置についても、上記の構造に限定される必要はない。
【0038】
図2、図3並びに図5、図6を用いて、本願発明の主要点であるモータステータ7の構造及び配線について、さらに詳しく説明する。
【0039】
図2に示すように、ステータコア8は、円環状のコアバック8aから複数のティース8bが周方向等間隔に半径方向外側に突出してなる薄板を複数枚積層取り付けし、ティース8bの周囲をコイル9が巻回することにより形成される。本実施例のステータコア8では、9個のティース8bが半径方向に突出し、先端側が開口した9個のスロット8cを構成している。本発明のスピンドルモータは3相駆動モータであり各相はそれぞれU相、V相、W相なので、各相のコイル9は2個おきのティース8bに順次N回(Nは2より大きい正の整数)巻回し、最後に同一スロットにおいて3つの相のコイル9を結線したコモン相を形成することで合計4つの端末を持ち、FPC30(図示せず)を介して外部電源&制御回路(図示せず)と通じている。
【0040】
図3に巻き線の状態を概念的に示すが、小型モータにおいてはスロット8cの空間は狭いので、コイル9を多数回巻回したり、限られた隙間に渡り線を通すことは非常に困難であり、接触あるいはねじれによって断線を引き起こしやすい。ちなみに、隣接するティース先端部の隙間は約1.3mm、コイルの外径は約0.3mm、ステータコアの高さは約6.0mmであり、隣接するティース先端部の隙間が狭いほど、あるいはコイルの外径が大きいほど、あるいはステータコアの高さが大きいほど、スロット内での巻き線は行い難くなる。
【0041】
コイルを巻回する手順を、従来の方法を図5に、本発明の方法を図6に示し、その相違点を比較して説明する。図5及び図6は、ステータコアを切り開いて展開して、その側面から見た展開模式図であり、ティース、スロットの位置を番号で示している。また実線は、巻回するコイルの巻回方向を模式的に表したものである。なお、説明の都合上、既出の図2及び図3に表示したように、9個のティース8bの位置を区別するために便宜上1乃至9の番号を付し、同様に、9個のスロット8cの位置を区別するために便宜上1乃至9の番号を付し、以下の説明においては、その番号で該当するティース及びスロットの位置を示している。また、Nは2より大きい正の整数、nは4より小さい正の整数を示す。
【0042】
先に図5によって、従来の方法による巻き方を説明する。
【0043】
最初に巻回する第1の相としてV相を選定する。第9スロットの下から入り、第9ティースを時計方向にN回巻回した後、第1スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3ティースで時計方向にN回巻回した後、第4スロットで上から下へ、第5スロットで下から上へ配線し、第6ティースで時計方向にN回巻回した後、第6スロットで下から上へ、第4スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ配線し、第2ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、第3スロットからコモン線を下に出す。
【0044】
次に、2番目に巻回する第2の相としてW相を選出する。第4スロットの下から入り、第5スロットで上から下へ、第6スロットで下から上へ渡り配線し、第7ティースで時計方向にN回巻回した後、第8スロットで上から下へ、第9スロットで下から上へ渡り配線し、第1ティースで時計方向にN回巻回した後、第2スロットで上から下へ、第3スロットで下から上へ渡り配線し、第4ティースで時計方向にN+1回巻回した後、第4スロットで下から上へ、第3スロットで上から下へ渡り配線し、第2ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、第3スロットからコモン線を下に出す。
【0045】
さらに、最後に巻回する第3の相としてU相を選定する。第1スロットの下から入り、第1ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、続いて第2ティースで時計方向にN回巻回した後、第3スロットで上から下へ、第4スロットで下から上へ渡り配線し、第5ティースで時計方向にN回巻回した後、第6スロットで上から下へ、第7スロットで下から上へ渡り配線し、第8ティースで時計方向にN回巻回した後、第9スロットで上から下へ、第1スロットで下から上へ渡り配線し、第2ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、第3スロットからコモン線を下に出す。第3スロットに集結された3つのコモン線はひとつにまとめられる。
【0046】
このような配線によって、各相のターン数はある程度まで揃えられ、また配線上の緩みも止められるが、U,V,Wのどの相も第2ティースで緩み止めの巻回処理を行っており、相間での相互インダクタンスの調整は不十分である。
【0047】
次に、本願発明の巻き線方法を図6で説明する。
【0048】
最初に巻回する第1の相としてV相を選定し、第9スロットの下から入り、第9ティースを時計方向にN回巻回した後、第1スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3ティースで時計方向にN回巻回した後、第4スロットで上から下へ、第5スロットで下から上へ渡り配線し、第6ティースで時計方向にN回巻回した後、第6スロットで下から上へ出し、第5ティースで緩み止めと巻き数キャンセルのために反時計方向にn回巻回して、第4スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第2ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、第3スロットからコモン線を下に出す。
【0049】
次に、2番目に巻回する第2の相としてW相を選出し、第4スロットの下から入り、第4ティースで時計方向にN回巻回した後、第5スロットで上から下へ、第6スロットで下から上へ渡り配線し、第7ティースで時計方向にN回巻回した後、第8スロットで上から下へ、第9スロットで下から上へ渡り配線し、第1ティースで時計方向にN回巻回した後、第3スロットからコモン線を下に出す。
【0050】
そして、最後に巻回する第3の相としてU相を選定する。第1スロットの下から入り、第1ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、続いて第2ティースで時計方向にN回巻回した後、第3スロットで上から下へ、第4スロットで下から上へ渡り配線し、第5ティースで時計方向にN回巻回した後、第7スロットで上から下へ、第8スロットで下から上へ渡り配線し、第8ティースで時計方向にN回巻回した後、第1スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3スロットからコモン線を下に出す。第3スロットに集結された3つのコモン線はひとつにまとめられる。
【0051】
このようにすることで、各相の巻き線ターン数は略同一となり、またV相で調整のために巻回方向を変更した第2ティース及び5はどちらもU相がNターンの巻回を行っているところであるために、相互インダクタンスの影響はない。
【0052】
本発明では、第1相での巻き線において、第5ティースで緩み止めと巻き数キャンセルのために反時計方向にn回のキャンセル巻きを行っている。一般的には、このような逆方向の巻き線を行うと、巻線機に対してステータコアがずれて、巻き線を行うノズルの調整が難しくなる、あるいはコイルが捩れたり、既に巻回されている箇所に引っ掛かったりして断線するリスクが高くなるという生産技術上の困難性がある。しかし、本発明で行っている第1の相においては、未だ他に巻かれた線がないので、そのような弊害はほとんどない。なお、最後に巻くU相においては、コモン線として出す第3スロットは、既に3つの相のコイルが多数配線されている箇所で空隙が少なく巻き緩みの危険性は低いので、緩み止めの巻回を省略することが可能である。そこで本実施例では作業性を重視して、最後の緩み止め巻き及びキャンセル巻きを省略している。
【0053】
以上の配線方法による相間インダクタンスの実測結果を、図10、図11に示す。本実測は、高速サーバー用スピンドルモータの仕様を念頭に置き、逆起電力を小さくするために線径が太く、巻き数が少ない条件の仕様で行った。巻き数が少ない程、巻き数の不均一性の影響は顕著になる。因みに、モバイル用であれば巻き数Nは約50であり、高速サーバー用ではこの約半分で約22〜約25と言われている。そこで、巻き数N=22、緩み止め巻き数n=1として測定したものである。測定結果は、回転角度に対するUV、VW、WUの3つの相間インダクタンスの変化を示している。図10は従来方法によるものであるが、3つの相間インダクタンスは不均一であり、VWの相間インダクタンスが最も大きく、WUの相間インダクタンスが最も小さく、約7%(約15μH)の差が見られた。3つの相間インダクタンスの値が同一の値になることはなく、このデータから回転数を精度良く読み取ることは困難と考えられる。これに対して本発明による実測結果を示す図11では、約2%(約5μH)の差に止まっており、若干のエラーは避けられないものの、実用上は支障ない範囲での回転方向検知、回転数読み取り、PWMによる効率良い制御運転は可能である。
【0054】
(第2の実施の形態)
本発明の第2実施形態について説明する。基本的な構造は第1の実施形態と同一であり、第1の実施形態において、図1及び図2、図3説明したとおりであるので、説明を割愛する。
【0055】
ステータコア8へのコイル巻き線の方法のみ異なるので、図7によって本願発明の巻き線方法について説明する。図7の表示方法は既出図5、図6と同じである。本巻き線方法についても、先に説明した図6とほとんど同一であり、U相における最後の処理が異なるだけである。したがって、第1の相(V相)、第2の相(W相)の巻き線方法・手順については、記載を省略する。
【0056】
即ち、第3相としてU相を選択し、第1スロットの下から入り、第1ティースで緩み止めを時計方向にn回巻回して、続いて第2ティースで時計方向にN回巻回した後、第3スロットで上から下へ、第4スロットで下から上へ渡り配線し、第5ティースで時計方向にN回巻回した後、第7スロットで上から下へ、第8スロットで下から上へ渡り配線し、第8ティースで時計方向にN回巻回する。以降の配線が異なっており、引き続き、第9スロットで上から下へ渡り配線し、第1ティースで緩み止めと巻き数キャンセルのために反時計方向にn回巻回して、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3スロットからコモン線を下に出す。
【0057】
このようにすることで、各相の巻き線ターン数は3Nターンで同一となり、またV相で調整のために巻回方向を変更した第2ティース及び5は、どちらもU相がNターンの巻回を行っているところであるために、相互インダクタンスの影響はでない。さらに、第1の実施形態と異なる点は、U相で緩み止めの時計方向にn回の巻回後、反時計方向にn回のキャンセル巻きを追加してU相内の巻き数を調整しているところにあり、しかも、どちらも同じ第1ティースで調整しているので相互インダクタンスの面でも、起磁力の面でも影響が生じない。したがって、第1の実施形態よりも良好な特性を得ることができる。
【0058】
実測した結果を図12に示す。ステータ及びコイルの仕様は、第1の実施形態と同じである。UV、VW、WUの3つの相間インダクタンスは、約220〜230μHの間で変動する、非常に良く一致した安定波形を示している。したがって、相間のインダクタンスは均等であり、回転方向の正確な検知、精度の良い回転数の検出、そして効率の良いPWM制御運転が可能であることがわかる。
【0059】
なお、前述のように、キャンセル巻きの部分はコイルをねじるために断線しやすく、特にU相は最後の工程で行うことから作業スペースも少なく、断線などの不具合を発生させやすい。したがって、モータの寸法や必要とする特性、あるいは生産コストに応じて選択すればよい。
【0060】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態を図面に基づいて説明する。スピンドルモータ1の全体構造・構成については、第1、2の実施の形態と同じなので、記載を省略する。
【0061】
図4(A)に示すように、ステータコア8は、ケイ素鋼板等の金属からなる複数枚(例えば24枚)の環状金属薄板が積層されて構成されている。積層する金属薄板は、環状のコアバック8aの外周側端部から等角度毎に径方向外側に突設された複数(本実施例では9個)のティース8bを備えている。
【0062】
また、図4(B)に示すように、積層する金属薄板のうちの一枚には、隣接するティース8bとの間に、コアバック8aの外周側端部から径方向外側に突出する少なくとも1つ以上のリテーナ8dが設けられている。リテーナ8dの長さL(例えば2.2mm)は、ティース8bよりは短いが、当該金属薄板より上側に配置される複数枚の金属薄板の厚み寸法H(例えば0.25mm×5枚=1.25mm)よりは長く、折り曲げ成形した際にコアバック8aの上端より、上に出るように設定されている。
【0063】
ステータコア8の組立に際しては、図4(A)に示すように、リテーナ8dを有する金属薄板18上に所定枚数(例えば5枚)の金属薄板18を積層してティース8bの位置を一致させ、この状態で同図中に示すように当該金属薄板のリテーナ8dを上向きに略90度折り曲げて、リテーナ8dを各金属薄板18のコアバック8aの外周面に当接させる。
【0064】
このように、リテーナ8dがコアバック8aの外周面に当接することにより、金属薄板18間の回止めが施される。なお、予めリテーナ8dをコアバック8aに対して直角に折り曲げた上で、この金属薄板18上に他の金属薄板18を積層するようにしてもよい。
【0065】
なお、ステータコア8の上部端面からのリテーナ8dの垂直方向への突出寸法Iは、リテーナ8dに係止されるコイル9の渡り線の本数に応じて作業性を考慮して決定され、通常、実際に係止される本数より若干本(例えば、1〜2本程度)多めの渡り線が係止可能な寸法とされる。
【0066】
後述のように、本実施例では一つのリテーナ8dに係止される渡り線の本数は最大2本で済むこと、かつ個々のコイル9の線径が0.3mm程度であれば、上記突出寸法Iは、例えば、2〜3本程度の渡り線18が係止可能な寸法として、具体的には、0.6〜0.9mm程度とされ、ティース8bへのコイル9の重ね巻き高さと同等であれば、組み立て寸法上は許容できる。
【0067】
各金属薄板18を結合した後、これらの金属薄板18の表面に図示しない絶縁膜が形成され、その後、ティース8bにコイル9が巻回される。本実施例の9スロットのブラシレスモータにおいては、コイル9は、120度間隔で3相に施される。
【0068】
図8に基づいて、コイルを巻回する手順を説明する。図の表記要領、ティース8b及びスロット8cの位置を区別するための番号は、先の説明の通りであり、リテーナ8dの位置番号はスロット8cの番号と同じである。また、Nは2より大きい正の整数、nは4より小さい正の整数を示す。
【0069】
最初に巻回する第1の相としてV相及び、2番目に巻回する第2の相としてW相の巻き線の方法は先の第1の実施の形態、第2の実施の形態と同じであるので、説明を割愛する。
【0070】
そして、最後に第3の相としてU相を巻回する。第1スロットの下から入り、第2リテーナで緩み止めをn回巻回して、続いて第2ティースで時計方向にN回巻回した後、第3スロットで上から下へ、第4スロットで下から上へ渡り配線し、第5ティースで時計方向にN回巻回した後、第7スロットで上から下へ、第8スロットで下から上へ渡り配線し、第8ティースで時計方向にN回巻回した後、第9スロットで上から下へ、第1スロットで下から上へ渡り配線し、第3リテーナで緩み止めをn回巻回して、第3スロットからコモン線を下に出す。第3スロットに集結された3つのコモン線はひとつにまとめられる。
なお、本実施例では、リテーナ8dは2つとしたが、数を増やして、中途の渡り線をこのリテーナ8dに巻きつけて行うことで簡便化してもよい。
【0071】
このように第2と第3のスロット位置に対応する位置に2つのリテーナ8dを設け、U相においては、当該リテーナ(第2、第3リテーナ)に緩み止め巻回することで、各相の巻き線ターン数は3Nで同一となる。また、先の実施態様同様に、V相で調整のために巻回方向を変更した第2ティース及び5はどちらもU相がNターンの巻回を行っているところであるために、相互インダクタンスの影響もないので、均一性の高い、安定した相間インダクタンスを得ることができる。さらに、コア折り曲げ部にコイルを渡すだけなので、巻線機に対してステータコアがずれる程の力がかからず巻線しやすい。
【0072】
実測した結果を図13に示す。ステータ及びコイルの仕様は、第1、第2の実施形態と同じである。UV、VW、WUの3つの相間インダクタンスは、約220〜230μHの間で変動する、非常に良く一致した安定波形を示している。したがって、相間のインダクタンスは均等であり、回転方向の正確な検知、精度の良い回転数の検出、そして効率の良いPWM制御運転が可能であることがわかる。
【0073】
(第4の実施の形態)
本発明の構造及び構成は、基本的に第3の実施の態様で説明したものと同一であり、また、図9の表示方法も同一であり、繰り返しての説明を省略する。図9に示すように、配線の巻き方が第3の実施の態様と異なっており、リテーナによる緩み止めを積極利用すると共に、巻き線配線において3相共に渡り線を長くして、ティースでの緩み止め巻き及びキャンセル巻きを止めたものである。ティース8b及びスロット8cの位置を区別するための番号は、先の説明の通りであり、リテーナ8dの位置番号はスロット8cの番号と同じである。また、Nは2より大きい正の整数、nは4より小さい正の整数を示す。以下に詳述する。
【0074】
最初に巻回する第1の相としてV相を選定する。第9スロットの下から入り、第1リテーナで緩み止め巻きをし、第1スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3ティースで時計方向にN回巻回した後、第4スロットで上から下へ、第5スロットで下から上へ渡り配線し、第6ティースで時計方向にN回巻回した後、第7スロットで上から下へ出し、第8スロットで下から上へ渡り配線し、第9ティースで時計方向にN回巻回した後、第1スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3リテーナで緩み止め巻きをして、第3スロットからコモン線を下に出す。
【0075】
次に、2番目に巻回する第2の相としてW相を選出する。巻き方は第1、第2、第3の実施の態様と同一であるので、記載を割愛する。
【0076】
そして、最後に巻回する第3の相としてU相を選定する。第1スロットの下から入り、第1リテーナで緩み止め巻きをし、続いて第2ティースで時計方向にN回巻回した後、第3スロットで上から下へ、第4スロットで下から上へ渡り配線し、第5ティースで時計方向にN回巻回した後、第6スロットで上から下へ、第7スロットで下から上へ渡り配線し、第8ティースで時計方向にN回巻回した後、第1スロットで上から下へ、第2スロットで下から上へ渡り配線し、第3リテーナで緩み止め巻きをし、第3スロットからコモン線を下に出す。第3スロットに集結された3つのコモン線はひとつにまとめられる。
【0077】
このようにすることで、各相の巻き線ターン数は完全に同一となり、ティースにおける調整巻回がないので相互インダクタンスの影響もない。各相で軸対称となる界磁が発生するので、安定回転が可能である。また、緩み止めのために大きな力を加える必要もないので、安定した製造が可能である。
【0078】
なお、以上では、アウターロータタイプのモータステータ7につき説明したが、ティース8bをコアバック8aから径方向内側へ突出させたインナーロータタイプのステータコア8においても同様に、径方向内側へ突出させた上記と同様のリテーナ8dによって、コアバック8aの内径側に当接させて上側に折り曲げ、コイル9の渡り配線の緩み止めとして使用しても良い。
【0079】
(第5の実施の形態)
図14は、本発明を実施したモータステータ107、スピンドルモータ101及び記録ディスク駆動装置50の断面図である。
【0080】
この記録ディスク駆動装置50は、記録ディスク51と、記録ディスク51を回転させるスピンドルモータ101と、記録ディスク51に対して情報のアクセスを行なうヘッド52と、それら全体を収容するケース55とを備える。
【0081】
スピンドルモータ101は、第1乃至第2の実施形態によって説明されたモータステータ107を備えている。本実施例では、スピンドルモータ101は、インナーロータタイプの例を示す。モータステータ107を構成するステータコア108の外径部は、ブラケットと一体構造になったベース53に固定され、複数の放射状に配列されたティース108bは内径側を向き、ロータハブ112の外径側に取り付けられたロータマグネット106と径方向に対向している。モータステータ107は複数のコイル109を備えており、第1及び第2の実施形態で説明した方法によって巻回・配線され、それらコイル109への通電はケース55の外部から制御回路(図示せず)によって制御される。
【0082】
スピンドルモータ101のロータハブ112には記録ディスク51が載置され、ロータハブ112と一体に回転される。制御回路(図示せず)によって、ステータ107のコイル109に通電されると、動圧流体軸受に支持されたスピンドルモータ101が回転をする。駆動はPWM制御で行われており、電源オフ時に発生する逆起電力も駆動源として駆動に利用するために非常に効率の良い運転が可能である。また、各相間の不均一性が小さくなるように調整されたインダクタンスの回転中の変動値によって回転方向及び回転数を検出しているので、低速回転域でも正確に回転方向及び回転数を把握することができ、広い運転範囲において高効率を得ることが可能である。
【0083】
また、本発明のモータステータ107は、コイル109に非融着銅線を用い、機械的な方法で緩み止め処置を講じているのでガスの発生がなく、高清浄な雰囲気を維持することができるので、高密度での情報記録・読み出しが可能である。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、例えば、U相、V相、W相の入れ替えやティース番号、スロット番号の変更など、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態に係るスピンドルモータを示す断面図。
【図2】上記ステータコアを示す概略正面図と概略断面図。
【図3】上記ステータコアの巻き線概略図。
【図4】第3、第4の実施形態におけるステータコアの概略正面図と概略断面図及びリテーナ部分図。
【図5】従来の方法における巻き線配線図。
【図6】第1の実施態様における巻き線配線図。
【図7】第2の実施態様における巻き線配線図。
【図8】第3の実施態様における巻き線配線図。
【図9】第4の実施態様における巻き線配線図。
【図10】従来の方法における相間インダクタンス実測値。
【図11】第1の実施態様における相間インダクタンス実測値。
【図12】第2の実施態様における相間インダクタンス実測値。
【図13】第3の実施態様における相間インダクタンス実測値。
【図14】第5の実施態様における情報記録装置概略断面図。
【符号の説明】
【0086】
1、101 スピンドルモータ
2 ブラケット
3 オイル
4 ハウジング
5 シール部材
6 スリーブ
7、107 モータステータ
8、108 ステータコア
9、109 コイル
10 ロータ
11 閉止板
12、112 ロータハブ
14 シャフト
16、116 ロータマグネット
18 金属薄板
20 上部ラジアル動圧軸受部
22 下部ラジアル動圧軸受部
24 上部スラスト動圧軸受部
25 下部スラスト動圧軸受部
30 FPC
31 突部
31a ランド部
50 記録ディスク駆動装置
51 記録ディスク
52 ヘッド
53 ベース
54 ピボット軸受
55 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のコアバック及び該コアバックから等ピッチ角度毎に径方向へ突設した3S個(Sは正の整数)のティースを有する金属薄板を複数枚積層して構成されたステータコアと、
前記ティースの各々に巻回された3相のコイルと、
を備えたモータステータにおいて、
前記コイルは非融着銅線であって、かつ、
前記コイルのうちの各相のコイルは、最初に巻く相(第1の相)から、中間に巻く相(第2の相)、そして最後に巻く相(第3の相)と順番に前記ステータコアに巻回処理されてなり、前記第1の相と前記第3の相の巻き線のみに緩み止めの巻線処理が施される、
ことを特徴とするモータステータ。
【請求項2】
前記各相のコイルは、相毎に別々に選定された2個おきS個の前記ティースに対して、当該ティース毎に少なくともN回(Nは2より大きい正の整数)ずつ巻回されており、
前記第1の相もしくは前記第3の相のうち少なくともいずれか一方の相の前記コイルが、当該相以外の一つの相の前記コイルがN回巻回される前記ティース2個において、一方のティースではn回、さらに他方のティースでは逆方向にn回(nは4より小さい正の整数)巻回されることで緩み止めの巻線処理が行われている、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータステータ。
【請求項3】
前記各相のコイルは、相毎に別々に選定された2個おきS個の前記ティースに対して、ティース毎に少なくともN回(Nは2より大きい正の整数)ずつ巻回されており、
前記第1の相もしくは前記第3の相のうち少なくともいずれか一方の相の前記コイルが、当該相以外の一つの相の前記コイルがN回巻回される前記ティース1個において、一度はn回、さらにもう一度は逆方向にn回(nは4より小さい正の整数)巻回されることで緩み止めの巻線処理が行われている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のモータステータ。
【請求項4】
前記第1の相の前記コイルが緩み止め巻きされる前記ティースは、前記第3の相の前記コイルがN回巻回される前記ティースであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のモータステータ。
【請求項5】
前記第3の相の前記コイルが緩み止め巻きされる前記ティースは、前記第2の相の前記コイルがN回だけ巻回される前記ティースである、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモータステータ。
【請求項6】
モータステータにおいて、
前記ステータコアを構成する前記複数枚の金属薄板のうち、少なくとも1枚の金属薄膜の前記ティース間に前記ティースと同方向に前記コアバックから突設したリテーナが1個以上成形されており、前記リテーナは前記金属薄板に対しほぼ直角に折り曲げられ、前記ステータコアの周面に当接されるとともに、前記リテーナの先端部は前記ステータコアの軸方向端面よりも突出してフック状をなし、
前記第1の相と前記第3の相の少なくとも何れか一方の相のコイルは、前記リテーナに巻回することで緩み止めの巻線処理が施された、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のモータステータ。
【請求項7】
隣接する2個の前記ティースと前記コアバックで囲まれた空間をスロットと呼び、
前記ステータコアにおける前記第1、第2、第3の相のコイルの巻き線処理の終端部は、同一スロットから引き出し配線されてコモン端子となる、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のモータステータ。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の何れかのモータステータと、
前記モータステータが固定されるブラケットと、
前記モータステータと半径方向に隙間をもって対向するロータマグネットが取り付けられて、付加される電源電圧によって前記ブラケットに対し回転自在に支持されるモータロータを備え、
前記第1、第2、第3の相は、3相交流のU相、V相、W相の組み合わせに対応し、付加される電源電圧はモータインダクタンスを利用して回転方向又は回転数を求めて制御するPWM駆動方式によって運転制御されることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項9】
請求項8に記載のスピンドルモータを取り付けた情報記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2008−61331(P2008−61331A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233377(P2006−233377)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】