プラスチックレンズの製造方法
【課題】 インクジェット方式により顔料を用いて着色されたプラスチックレンズを製造する方法を提供する。
【解決手段】 レンズを成形するためのモールド型50の成形面51の側に、レンズ基材35と一体で離型される膜32〜34を形成するための組成物を付着させる膜付着工程と、これらの膜付着工程の後または間に、顔料40をインクジェット方式で付着させる着色工程と、モールド型50を合わせてレンズ基材35を形成する組成物を注入し、熱硬化する重合工程と、レンズをモールド型50から離型する工程とを有するプラスチックレンズの製造方法を提供する。顔料40をモールド型の中に塗布できるので、市販の顔料インクを用いて着色されたプラスチックレンズを製造できる。
【解決手段】 レンズを成形するためのモールド型50の成形面51の側に、レンズ基材35と一体で離型される膜32〜34を形成するための組成物を付着させる膜付着工程と、これらの膜付着工程の後または間に、顔料40をインクジェット方式で付着させる着色工程と、モールド型50を合わせてレンズ基材35を形成する組成物を注入し、熱硬化する重合工程と、レンズをモールド型50から離型する工程とを有するプラスチックレンズの製造方法を提供する。顔料40をモールド型の中に塗布できるので、市販の顔料インクを用いて着色されたプラスチックレンズを製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡などに用いられるプラスチック製のレンズの染色に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズ(ガラスレンズ)と比較して割れにくく、染色が可能であるという特徴を有するため、ファッション性、遮光性の点で好まれ普及している。従来、プラスチックレンズの着色方法は一般的に次のような方法で行われている。まず、染料が分散または溶解した染色液中に、レンズ生地を浸漬してレンズ生地を直接染色する方法がある。さらに、異なる染色方法としては、プラスチックレンズ生地にハードコート処理を行い、ハードコート被膜を形成したプラスチックレンズを染色液に浸漬して主としてハードコート被膜を染色する。
【0003】
近年、カラーレンズにおいては、単に色を付すだけではなく、色調や濃度の均一さが求められたり、階調性(グラデーション)を付すことを求められたり、レンズ以外の紙などに色を付す場合と同様の要求がある。特許文献1には、レンズに階調性を付して着色する方法として、光学レンズを保持して着色する際に、展色剤を含む着色剤を吐出機構により光学レンズの表面に吐出して着色することが記載されている。
【特許文献1】特開2000−111701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、着色剤吐出手段としては、インクジェットプリンタにおけるインク吐出機構、例えば、バブル方式のインク吐出機構、ピエゾ方式のインク吐出機構と同様の構成のものが使用できるとしている。しかしながら、着色剤としては、展色剤を含み、その展色剤は少なくとも染料または顔料を均一に溶解あるいは分散させることができると同時に、染料または顔料をレンズ表面に付着させる機能を有していることが要求され、さらに、ハードコートと同じような機能も要求されている。したがって、特許文献1に記載された技術では、実際に光学レンズの表面に吐出する液体は、インクジェットプリンタにおいて紙に向けて吐出する液体とは性質が全く異なり、プリンタとして市販された、信頼性の高い吐出機構、あるいは、その他の実績のある吐出機構をそのまま使用してレンズに着色することはできない。このため、実際に、あるいは量産可能な技術として、レンズの表面に、紙と同様に、様々な色を様々な態様で着色することは実現されていない。
【0005】
特に、ユーザが眼鏡レンズを使用する際には、眼鏡レンズは直接太陽光に曝露されるため、染色眼鏡レンズ(カラーレンズ)においても、耐光性が必要であり、顔料を含んだ着色剤の使用を求められている。近年、顔料インクを用いて印刷を行うことができるプリンタが登場しており、カラーレンズにおいても顔料を含んだ着色剤の使用が可能になると考えられている。しかしながら、現実には、インクジェット方式で実際に塗布する技術が確立されていないために、顔料系の着色剤を用いたカラーレンズを市販できるところまで至っていない。
【0006】
そこで、本発明においては、実際に、インクジェット方式でレンズに着色することができる製造技術を提供することを目的としている。特に、プリンタに使用している吐出機構をそのまま、あるいはほとんどそのまま使用してカラーレンズを製造することができる製造方法を提供することを目的としている。さらに、耐光性の高い顔料系の着色剤を使用したカラーレンズを製造することが可能な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、プラスチックレンズ面を成形する成形面を有するレンズを成形するためのモールド型の成形面の側に、レンズ基材と一体で離型される膜を形成するための組成物を付着させる膜付着工程と、膜付着工程の後に、モールド型の成形面の側にインクジェット方式により顔料を含む着色剤を付着させる着色工程と、一対のモールド型を合わせてレンズ基材を形成する組成物を注入し、硬化させる重合工程と、モールド型から膜およびレンズ基材を一体で離型する離型工程とを有するプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【0008】
このようなレンズ基材と一体で離型される膜は、レンズ表面を保護し擦傷性を向上させたり、レンズの光学特性(反射防止等)を改善する機能など、それぞれの機能を付与するものであり、機能膜と呼ぶこともできる。
【0009】
また、レンズを成形するためのモールド型の成形面の側に、ハードコート膜などを付着してから、そのモールド型を組み立てて、熱硬化型モノマー等のレンズ基材の組成物(原料)を注入し硬化させる方法は、インモールド法とも呼ばれている。一対のモールド型を、成形面を内側として対向配置し、モールド型の側面全周へ粘着テープを巻き付けてキャビティを形成し、このキャビティの中へレンズ基材を形成する組成物を注入することにより、成形面で規定されたレンズ面を備えたプラスチックレンズを製造できる。
【0010】
本発明の製造方法においては、このインモールド法において、膜が形成された成形面の側、すなわち、組み合わせたときの膜のレンズ基材側にインクジェット方式で着色剤を付着させる。さらに、膜のレンズ基材側に付された着色剤は、その膜のレンズ基材側に塗布される膜あるいはレンズ基材との間に挟まれた状態になり、膜と膜あるいは膜とレンズ基材とにより保持される。
【0011】
したがって、本発明の製造方法においては、インクジェット方式で吐出する着色剤としては、染料または顔料をレンズ表面に付着させる機能を有している展色剤を含んでいることは要求されず、インクジェットプリンタにおいて用紙に吐出するインクと同じ成分の着色剤であっても、それを使用してレンズに色を付けることができる。
【0012】
さらに、レンズ基材を硬化する重合工程において、他の膜も同時に硬化されるので、膜と膜、あるいは膜とレンズ基材との間に挟みこまれた着色剤は、染料系でも、顔料系でもレンズと確実に一体となって保持され、所望の色あるいは模様にカラーリングされたレンズを製造できる。また、インクジェット方式で着色剤を塗布した後に、着色剤を硬化するためだけの染着アニール工程も省略できる。
【0013】
さらに、レンズに色を施す作業は、モールド型を保持して実行できる。このため、着色剤を塗布する対象となる膜の表面の状態は、染料系あるいは顔料系といった着色剤を付着させることを中心に選択でき、ハンドリングに適しているか否かを条件とする必要がない。したがって、着色する際の膜が未硬化であることが望ましければ、膜を塗布したままの状態で染色することが可能であり、半硬化した状態が望ましければ、塗布した後に熱を加えて半硬化することが可能である。さらに、硬化した状態が好ましければ、塗布し完全に硬化させた後に、着色剤を塗布することも可能である。特に、本発明の製造方法であれば、被染色膜(機能膜またはレンズ基材)が、半硬化である程度、粘性がある状態で着色剤を塗布できるので、浸透性のない顔料系の着色剤を用いて確実にレンズを着色できる。
【0014】
したがって、本発明の製造方法においては、実際に、プリンタなどの他の用途で信頼性が確立されたインクジェットの技術を用いてカラーレンズを製造することが可能となる。また、膜の素材やレンズの素材によらず、所望の色を塗布できるので、多種多様なレンズ基材のプラスチックレンズに対して精度良く、着色することが可能となる。難染色性といわれるプラスチック基材の1つは、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を重合して得られる透明樹脂あって、屈折率が1.72以上の高屈折率を有するものであるが、本発明の製造方法により確実に、どのような色にも、また、階調表現された模様にでも着色することが可能となる。レンズ基材の組成は、これに限定されず、必要により、(チオ)エポキシ化合物、チオール化合物、メルカプト有機酸類等の改質剤、および3級アミン、ホスフィン類、ルイス酸、ラジカル重合触媒、カチオン重合触媒等の硬化触媒を含む重合性組成物を含むものであっても良い。さらに、本発明の製造方法により着色可能な難染色性のプラスチックレンズは上記に限らない。例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)、(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリチオウレタン等を挙げることができる。
【0015】
本発明の着色プラスチックレンズの製造方法は、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、調光用レンズ、サングラス、カメラレンズ、望遠鏡レンズ、拡大鏡レンズ、プロジェクターレンズ、ピックアップレンズ、マイクロレンズ等の各種光学レンズ、その他の光学素子、例えば、プリズムなどにも適用できる。
【0016】
また、本発明の製造方法においては、ガラス製、金属製さらにはプラスチック製のモールド型を使用できる。特に、眼鏡用のレンズを製造する場合には、度付きのプラスチックレンズは多種にわたるため、個々のレンズカーブを容易に成形できるガラス製のモールド型が好適である。特に、重合工程において、UV(紫外線)等を用いて光重合させる場合にガラス製など透明なモールド型が好適である。
【0017】
モールド型の内面の成形面に予め離型層を形成しておくことが好ましい。機能膜が施されたプラスチックレンズと、モールド型との離型性を良くするためである。
【0018】
インモールド法において、レンズ基材と一体で離型される膜の代表的なものは、ハードコート膜であるが、この膜のみならず、反射防止膜あるいはプライマー膜も含まれる。したがって、複数の膜を形成する複数の膜付着工程を有する製造方法では、着色工程を、最後の膜付着工程の後、または、いずれかの膜付着工程の間で行うことができる。本発明の製造方法では、膜と膜、または膜とレンズ基材との間に着色剤を保持すれば所望の色あるいは模様をレンズに付すことができるので、後の重合工程で形成されるレンズ基板と最上層の膜との間に着色剤を塗布すれば良い。したがって、着色のタイミングは、製造工程の条件、膜と着色剤、例えば顔料系の塗料とのマッチングなどを勘案してフレキシブルに設定できる。
【0019】
プラスチックレンズの表面に形成される膜(機能膜)として最も重要なものは、ハードコート膜である。そして、本発明においては、そのハードコート膜を顔料を含めた着色剤を担持する膜として利用してレンズにインクジェット方式で着色できる。
【0020】
さらに、プラスチックレンズの性能を向上させるために、複数の膜(機能膜)が設けられている。複数の膜(機能膜)としては、ハードコート膜に加えて、ハードコート膜とレンズ基材、または反射防止膜とレンズ基材との密着を図るプライマー膜、光の透過性を確保する反射防止膜がある。したがって、本発明に含まれる複数の膜付着工程は、ハードコート膜を形成するための組成物を付着させるハードコート膜付着工程、ハードコート膜付着工程の前に反射防止膜を形成するための組成物を付着させる反射防止膜付着工程、および、ハードコート膜付着工程の後にプライマー膜を形成するための組成物を付着させるプライマー膜付着工程の少なくともいずれか2つの工程を含むものである。
【0021】
また、反射防止膜は、有機系の組成物をモールド型のレンズ成形面の側に塗布することにより形成できる。したがって、従来の真空蒸着法による反射防止膜の成膜工程を省き、モールド型を用いて一括で形成できるので、この点でも、製造コストや製造リードタイム面において有利である。ハードコート膜まで本発明の製造方法で製造し、蒸着により反射防止膜を形成することも可能であり、本発明に含まれる。
【0022】
本発明の製造方法において用いられる、反射防止膜用組成物、ハードコート膜用組成物、およびプライマー膜用組成物は、インモールド法に適しており、それぞれの膜としての機能を発揮できる組成物であれば良い。各々の膜をモールド型のレンズ成形面の側に塗布する方法としては、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法などを挙げることができる。浸漬法も採用可能であるが、モールド型の非使用面および外周側面に組成物が付着するので洗浄を必要とする場合がある。また、モールド型の不要な部分に付着した組成物が、組み立てたときの密閉性の低下の要因となり、レンズ基材の組成物(液状硬化性化合物)が漏れだす可能性がある。
【0023】
本発明の製造方法において、着色工程では、顔料を含む着色剤を付着させることができる。すなわち、顔料インクを用いて印刷できるプリンタが市販されているが、その技術をそのまま使用して、顔料を含む着色剤によりカラーレンズを製造することが可能となり、耐光性の高いカラーレンズを提供できる。また、プリンタに用いられているヘッドを利用して、あらゆる色彩を眼鏡レンズに着色できる。グラデーション染色や、一方の側の色彩から他方の側の色彩に順次色が変化するツイン染色等も容易になる。コンピュータに、色調に関するデータベースを構築し、それに基づき所望の濃度および色調を備えた眼鏡レンズを製造することが可能となる。
【0024】
顔料は染料と異なり、水に溶解しないため、水性の着色剤として顔料系のものを使用する場合には、樹脂等の分散剤を顔料の表面に吸着させ、水系媒体に顔料粒子として分散させて使用することになる。顔料を水系媒体に分散させて顔料分散液を調製し、各膜に付着させる。この水系媒体としては、主に水が用いられるが、有機溶媒、粘度調整剤、pH調整剤、界面活性剤などを配合し、塗布性を調製することができる。
【0025】
浸漬法では、様々なカラーバリエーションに対応するために、多色の染色槽を必要としたため、広い設置面積、電力エネルギー、および煩雑な管理を必要とした。これに対し、本発明の製造方法において、着色工程でインクジェット方式を用いて、色調をコンピュータ管理することにより、プリンタの技術を用いて、一台のプリンタ程度のスペースで、様々なカラーバリエーションを備えた眼鏡レンズを製造できる。
【0026】
本発明に使用できるインクジェット方式とは、10〜100μm径の微小なノズル開口部と圧力発生素子とが設けられた圧力室にインクが充填され、圧力発生素子を電子的に制御することによって圧力室内のインクを加圧し、その圧力で、ノズル開口部からインクを微小な液滴として吐出するものである。圧力発生素子の種類により、ピエゾ素子による圧電振動子を用いたピエゾ方式や、発熱素子を用い、インクを加熱して気泡を発生させ、その圧力を利用するバブルジェット(登録商標)方式など、種々の方式がある。本発明では、いずれの方式も用いることができる。
【0027】
インクジェット方式で顔料を塗布する場合には、微小ノズルでの乾燥、増粘による目詰まりを抑制するため、例えば、顔料の固形分を1〜30重量%、水分を0.5〜90重量%の範囲とすることが好ましい。また、沸点が200℃以上の高沸点の水溶性有機溶媒を目詰まり防止の液状湿潤剤として配合することができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜10の2価〜5価のアルコール類、ホルムアミド類、イミダゾリジノン類、ピロリドン、アミノ類等の含窒素炭化水素溶媒、あるいは含硫黄炭化水素溶媒の1種を単独でまたは2種以上を混合して添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下では本発明の実施例を幾つか説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL1を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図2に、インモールド法により製造される途上のレンズL1の構成をモールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。一対のモールド型50は、レンズ面を成形するための成形面を内側(内面)として対向配置し、それら一対のモールド型50の側面全周へ粘着テープ52を巻き付けてキャビティを形成し、このキャビティの中へレンズ基材35を形成する組成物を注入することによりプラスチックレンズを形成できる。したがって、モールド型50のレンズ成形面51の側(レンズ成形面側)は、モールド型50のレンズ基材35の側となる。
【0030】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、カチオン性界面活性剤からなる離型剤58をスピンコート法で塗布した。本実施例および以下の実施例において、離型剤58は、花王(株)製 コータミン60W(塩化セチルトリメチルアンモニウム水溶液)を、IPA(イソピルアルコール)溶媒で1000ppmに希釈したものを用いた。
【0031】
なお、プラスチックレンズを製造するためのモールド型50は、上型と下型との組み合わせで構成されるが、以降においてはこれらを含めてモールド型50として示してある。
【0032】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、反射防止膜用組成物(AR塗布液)をスピンコート法で塗布し、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0033】
なお、この工程における反射防止膜32の「形成」とは、反射防止膜用組成物をモールド型50のレンズ成形面側に塗布し付着させた状態を示し、完全に硬化した状態まで処理を行うことを意味していない。以下の実施例においても同様である。すなわち、本発明の製造方法では、モールド型50の内面に膜を付着させてからレンズ基材の形成を行うので、膜が付着した状態のモールド型50をワークとしてハンドリングすることが可能であり、膜が完全に硬化する前に次の工程に進めることができる。したがって、この工程においては、反射防止膜用組成物をモールド型50の内面に塗布したままの状態あるいは短時間、熱を加えて半硬化した状態で、次の工程に進むことができる。
【0034】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、シリコン系(シラン有機化合物)のハードコート膜用組成物(HC塗布液)をスピンコート法で塗布し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。この工程におけるハードコート膜33の「形成」も、ステップ12における膜の「形成」と同様の意味である。以下の実施例においても同様である。
【0035】
このハードコート膜用組成物(HC塗布液)は、次のように調製した。以下の実施例においても同様である。まず、ブチルセロソルブ68g、メタノール139g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61gを混合した。この混合液に0.1規定塩酸水溶液17gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散SiO2微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、商品名「オスカル1132」固形分濃度30%)181g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−421」)26g、過塩素酸マグネシウム3g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.05g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業(株)製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、商品名「TINUVIN213」)3.7gを添加し、4時間撹拌後、一昼夜熟成させてHC塗布液とした。
【0036】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32およびハードコート膜33が形成されたそれぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、ポリウレタン系プライマー膜用組成物(PL塗布液)をスピンコート法で塗布し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。この工程におけるプライマー膜34の「形成」も、ステップ12における膜の「形成」と同様の意味である。以下の実施例においても同様である。
【0037】
プライマー膜用組成物(PL塗布液)は、次のように調製した。以下の実施例においても同様である。まず、市販の水性エマルジョンポリウレタン「ネオステッカー700」(日華化学(株)製、固形分濃度37%、アクリル変性ポリウレタン)126g、メタノール258g、水74g、ブチルセロソルブ37gを混合する。さらに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.1gを加え3時間攪拌した。
【0038】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とが形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、プリンタの顔料インクとして市販されている、顔料40を分散させた顔料分散液(着色剤)を市販のプリンタのインクジェットヘッドを用いて塗布し、自然乾燥した。
【0039】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図2に示すように、それぞれの成形面51に、反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、2枚のモールド型50を、成形面51の間に所定間隔が開くように位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定し、レンズ基材35を形成するための成形型(キャビティ)を組み立てた。
【0040】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、チオウレタン系のレンズモノマー(樹脂液)を注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化することによりプラスチックレンズを製造した。この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、さらに、顔料40により着色されたレンズL1が製造された。
【0041】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL1を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたプラスチックレンズL1が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL1が製造された。このレンズL1の外観は色ムラがなく良好であった。
【0042】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL1について、キセノンランプ式フェードメーターで、200時間曝露し、長期使用に対する耐光性試験を行った。
【0043】
曝露後のレンズの色抜け(耐光性)を、CIE表色法のY値差(ΔY値)が5未満のものを「A」、5以上10未満のものを「B」、10以上のものを「C」とし、「A」を良品、「B」および「C」を不良品として評価した。以下の実施例においても同様である。また、本実施例の着色プラスチックレンズL1の耐光性評価は「A」であった。
【0044】
(実施例2)
図3に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL2を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図4に、インモールド法により製造される途上のレンズL2の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0045】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様に離型剤58を塗布した。
【0046】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0047】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。
【0048】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32とハードコート膜33とが形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散した顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液(着色剤)を塗布した。
【0049】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32およびハードコート膜33を形成し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した後に、プライマー膜用組成物(PL塗布液)を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、プライマー膜34を形成した。
【0050】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図4に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32と、ハードコート膜33とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにプライマー膜34が形成された、2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、ハードコート膜33とプライマー膜34の間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0051】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化することによりプラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL2が製造される。
【0052】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL2を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたレンズL2が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL2が製造された。このレンズL2の外観は色ムラがなく良好であった。
【0053】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL2について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL2の耐光性評価は「A」であった。
【0054】
(実施例3)
図5に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL3を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図6に、インモールド法により製造される途中のレンズL3の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0055】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0056】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0057】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32が形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、反射防止膜32の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散した顔料分散液を塗布した。
【0058】
(ハードコート膜の形成)
次に、反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散した顔料分散液を塗布した後に、ハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0059】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにハードコート膜33が形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。
【0060】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図6に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにハードコート膜33およびプライマー膜34が形成された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32とハードコート膜33との間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0061】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化することによりプラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたプラスチックレンズL3が製造される。
【0062】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、モールド型50を分解し、モールド型50とレンズL3を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたプラスチックレンズL3が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL3が製造された。このレンズL3の外観は色ムラがなく良好であった。
【0063】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL3について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL3の耐光性評価は「A」であった。
【0064】
(実施例4)
図7に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL4を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図8に、インモールド法により製造される途上のレンズL4の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0065】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0066】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0067】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。
【0068】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32とハードコート膜33とが形成された2枚のガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0069】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図8に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32と、ハードコート膜33とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、2枚のモールド型50を所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、プライマー膜が形成されておらず、ハードコート膜33のレンズ成形面側に染料が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0070】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型へ、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化させることによりプラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL4が製造される。
【0071】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、モールド型50を分解し、モールド型50とレンズL4を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたプラスチックレンズL4が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL4が製造された。このレンズL4の外観は色ムラがなく良好であった。
【0072】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL4について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL4の耐光性評価は「A」であった。
【0073】
(実施例5)
図9に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL5を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図10に、インモールド法により製造される途上のレンズL5の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0074】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0075】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0076】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32が形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、反射防止膜32の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0077】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した後に、ハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0078】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図10に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにハードコート膜33が形成された2枚のモールド型50を、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することにより成形型を組み立てた。この成形型は、プライマー膜が形成されておらず、反射防止膜32とハードコート膜33との間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0079】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化し、プラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL5が製造される。
【0080】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL5を離型した。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面にハードコート膜33および反射防止膜32を備えたレンズL5が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL5が製造された。このレンズL5の外観は色ムラがなく良好であった。
【0081】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL5について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL5の耐光性評価は「A」であった。
【0082】
(実施例6)
図11に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL6を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図12に、インモールド法により製造される途上のレンズL6の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0083】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0084】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0085】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32が形成された2枚のモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33のレンズ基材側ではなく、反射防止膜32のレンズ基材側にプライマー膜組成物を塗布する以外は、実施例1と同様にプライマー膜34を形成した。
【0086】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20では、反射防止膜32およびプライマー膜34が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。
【0087】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図12に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32と、プライマー膜34とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、ハードコート膜が形成されていない以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0088】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化し、プラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL6が製造される。
【0089】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL6を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34および反射防止膜32を備えたレンズL6が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL6が製造された。このレンズL6の外観は色ムラがなく良好であった。
【0090】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL6について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL6の耐光性評価は「A」であった。
【0091】
(実施例7)
図13に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL7を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図14に、インモールド法により製造される途上のレンズL7の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0092】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様に離型剤58を塗布した。
【0093】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0094】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32が形成されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、反射防止膜32の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0095】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33の内面に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した反射防止膜32の内面に、プライマー膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、プライマー膜34を形成した。
【0096】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図14に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにプライマー膜34が形成された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、ハードコート膜33がなく、反射防止膜32とプライマー膜34の間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0097】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化して、プラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備えたレンズL7が製造される。
【0098】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL7を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34および反射防止膜32を備えたレンズL7が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL7が製造された。このレンズL7の外観は色ムラがなく良好であった。
【0099】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL7について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL7の耐光性評価は「A」であった。
【0100】
(実施例8)
図15に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL8を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図16に、インモールド法により製造される途中のレンズL8の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0101】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0102】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、離型剤58が塗布されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に塗布するのではなく、モールド型50の内面にハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0103】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、ハードコート膜33が形成されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。
【0104】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、ハードコート膜33およびプライマー膜34が形成されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。
【0105】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図16に示すように、それぞれの成形面51にハードコート膜33およびプライマー膜34が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32がない以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0106】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に対し、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化してプラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着されたハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備えたレンズL8が製造される。
【0107】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL8を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34およびハードコート膜33を備えたレンズL8が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL8が製造された。このレンズL8の外観は色ムラがなく良好であった。
【0108】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL8について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL8の耐光性評価は「A」であった。
【0109】
(実施例9)
図17に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL9を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図18に、インモールド法により製造される途上のレンズL9の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0110】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0111】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に塗布するのではなく、モールド型50の内面にハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0112】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、ハードコート膜33が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0113】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、ハードコート膜33が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した後に、プライマー膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、プライマー膜34を形成した。
【0114】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図18に示すように、それぞれの成形面51にハードコート膜33が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにプライマー膜34が形成された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32がなく、ハードコート膜33とプライマー膜34の間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0115】
(重合工程)
組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化して、プラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着されたハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備えたレンズL9が製造される。
【0116】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド50とレンズL9を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34およびハードコート膜33を備えたレンズL9が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL9が製造された。このレンズL9の外観は色ムラがなく良好であった。
【0117】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL9について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL9の耐光性評価は「A」であった。
【0118】
(実施例10)
図19に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL10を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図20に、インモールド法により製造される途上のレンズL10の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0119】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0120】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に塗布するのではなく、モールド型50の内面51にハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0121】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、ハードコート膜33が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0122】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図20に示すように、それぞれの成形面51に、ハードコート膜33が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32およびプライマー膜34が無く、ハードコート膜33のレンズ基材側に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0123】
(重合工程)
組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、レンズ基材を重合させてプラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着されたハードコート膜33は最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の膜を備えたレンズL10が製造される。
【0124】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL10を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面にハードコート膜33を備えたレンズL10が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL10が製造された。このレンズL10の外観は色ムラがなく良好であった。
【0125】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL10について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL10の耐光性評価は「A」であった。
【0126】
図21に、実施例1〜10で製造した着色レンズL1〜L10の耐光性および外観の評価結果を纏めて示してある。レンズL1〜L10の評価結果は、耐光性および外観とも全て良好であった。本発明の製造方法により、顔料系の着色剤をインクジェット方式により反射防止膜、ハードコート膜またはプライマー膜のレンズ基材側に塗布できるので、これらの膜をレンズ基材と一体で離型したときに、顔料もそれらと一体となってレンズに取り込まれた状態で離型される。したがって、顔料系の着色剤により簡単にカラーレンズを製造することができ、外観も良く、また、耐光性も高いカラーレンズを製造できる。
【0127】
また、本発明の製造方法においては、モールド内に顔料を塗布するので、プラスチックレンズを製造する途上でプラスチックレンズの着色に用いられない顔料はほとんどなく、全量をプラスチックレンズの着色に確実に使用することができる。したがって、モールド内に塗布する顔料の量により色調を完全に制御できる。このため、ユーザの希望通りの色調のレンズを提供できると共に、色抜けや色ムラがなく、さらに耐光性の良い着色レンズを提供できる。
【0128】
さらに、プリンタ用のインクとして市販されている顔料系の着色剤を、市販のインクジェットプリンタで塗布できるので、経済的であり、また、実際に顔料系の着色剤を用いて着色されたカラーレンズを大量生産することが可能となる。さらに、本発明の製造方法においては、プリンタ用のインクとして市販されているインク、特に、顔料インクを、プリンタのインクジェットヘッドを用いて塗布することにより、カラーレンズを製造することができる。このため、インクジェットヘッドをコンピュータと連動させてレンズに染色を施すことが可能となり、プリンタにより紙に印刷するのと同様の感覚で、様々なカラーバリエーションのレンズを製造することが可能となる。
【0129】
なお、上記の実施例に示した反射防止膜、ハードコート膜、プライマー膜などの組成および膜厚は一例にすぎず、本発明はそれらの組成に限定されるものではない。例えば、反射防止膜32は、レンズの表面反射によるゴーストやちらつきを低減するために形成するが、その膜厚は、所望の反射防止特性を確保するために、50〜150nm、好ましくは、70〜130nmである。
【0130】
ハードコート膜33は、プラスチックレンズ表面の耐摩耗性を向上させるために形成するが、その膜厚は、0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmである。膜厚が0.5μmを下回ると、ハードコート膜としての効果が得られにくい。また、10μmを上回ると、外観を確保することが困難になる。また、ハードコート膜の組成も上記で説明した粒径1〜100mμの無機微粒子と、有機ケイ素化合物と、多官能性エポキシ化合物と、硬化触媒とを主成分とした組成に限らない。例えば、多官能性エポキシ化合物を含有しないハードコード膜を有するプラスチックレンズであっても本発明の製造方法であれば、容易に染色できる。
【0131】
プライマー膜34は、プラスチックレンズ基材35とハードコート膜33との密着性向上、耐衝撃性向上等の機能を付与するためには、膜厚は、0.1〜5μm、さらには、0.5〜3μmであることが望ましい。膜厚が0.1μmを下回ると、耐衝撃性が得られにくい。また、3μmを上回ると、外観を確保することが困難になる。プライマー膜の組成は、水性化アクリル−ウレタン樹脂を主成分とする組成に限らず、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とするようなものであっても良い。
【0132】
本発明の製造方法において、モールド型のレンズ成形面側に反射防止膜等の各機能膜を塗布(形成)した後に、光や熱を与えて反射防止膜等の各機能膜の硬化作業を行うが、この際に、半硬化状態で、またはそれ以前の状態として次の工程に移行できることは上述したとおりであるが、ほぼ完全に硬化させても勿論良く、硬化温度や硬化時間は適宜調整すればよい。
【0133】
それぞれの機能膜に対しては、密着性や塗布性を向上させるために、表面処理を行うことが望ましい。具体例としては、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオンビーム照射処理や物理的に表面を研磨する方法等が挙げられる。
【0134】
モールド型50を所定間隔に位置決めして固定する粘着シートとしては、テープ52を使用した例を説明しているが、テープ52の基材となるシートは、プラスチックフィルム、金属箔、紙、布等から適宜選択すればよいが、耐薬品性、耐熱性、強度、コスト等の点から、プラスチックフィルムが好ましい。このフィルムの厚みは、ガラスモールドへの追従性を考慮すると2〜100μm程度が好ましい。
【0135】
また、各種のコーティング膜(機能膜)が施された着色プラスチックレンズをモールド型50から離型した後に、無機系の反射防止膜を形成したり、反射防止膜32の表面に、防汚膜や防曇膜等の他の機能膜をさらに形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施例1に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図2】実施例1に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図3】実施例2に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図4】実施例2に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図5】実施例3に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図6】実施例3に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図7】実施例4に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図8】実施例4に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図9】実施例5に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図10】実施例5に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図11】実施例6に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図12】実施例6に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図13】実施例7に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図14】実施例7に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図15】実施例8に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図16】実施例8に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図17】実施例9に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図18】実施例9に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図19】実施例10に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図20】実施例10に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図21】実施例1〜10で製造した着色レンズL1〜L10の評価結果を示す図。
【符号の説明】
【0137】
11〜18 各製造工程、20 顔料の付着(塗布)工程
32 反射防止膜、33 ハードコート膜、34 プライマー膜、35 レンズ基材
50 モールド型、51 成形面(内面)
L1〜L10 着色プラスチックレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡などに用いられるプラスチック製のレンズの染色に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズ(ガラスレンズ)と比較して割れにくく、染色が可能であるという特徴を有するため、ファッション性、遮光性の点で好まれ普及している。従来、プラスチックレンズの着色方法は一般的に次のような方法で行われている。まず、染料が分散または溶解した染色液中に、レンズ生地を浸漬してレンズ生地を直接染色する方法がある。さらに、異なる染色方法としては、プラスチックレンズ生地にハードコート処理を行い、ハードコート被膜を形成したプラスチックレンズを染色液に浸漬して主としてハードコート被膜を染色する。
【0003】
近年、カラーレンズにおいては、単に色を付すだけではなく、色調や濃度の均一さが求められたり、階調性(グラデーション)を付すことを求められたり、レンズ以外の紙などに色を付す場合と同様の要求がある。特許文献1には、レンズに階調性を付して着色する方法として、光学レンズを保持して着色する際に、展色剤を含む着色剤を吐出機構により光学レンズの表面に吐出して着色することが記載されている。
【特許文献1】特開2000−111701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、着色剤吐出手段としては、インクジェットプリンタにおけるインク吐出機構、例えば、バブル方式のインク吐出機構、ピエゾ方式のインク吐出機構と同様の構成のものが使用できるとしている。しかしながら、着色剤としては、展色剤を含み、その展色剤は少なくとも染料または顔料を均一に溶解あるいは分散させることができると同時に、染料または顔料をレンズ表面に付着させる機能を有していることが要求され、さらに、ハードコートと同じような機能も要求されている。したがって、特許文献1に記載された技術では、実際に光学レンズの表面に吐出する液体は、インクジェットプリンタにおいて紙に向けて吐出する液体とは性質が全く異なり、プリンタとして市販された、信頼性の高い吐出機構、あるいは、その他の実績のある吐出機構をそのまま使用してレンズに着色することはできない。このため、実際に、あるいは量産可能な技術として、レンズの表面に、紙と同様に、様々な色を様々な態様で着色することは実現されていない。
【0005】
特に、ユーザが眼鏡レンズを使用する際には、眼鏡レンズは直接太陽光に曝露されるため、染色眼鏡レンズ(カラーレンズ)においても、耐光性が必要であり、顔料を含んだ着色剤の使用を求められている。近年、顔料インクを用いて印刷を行うことができるプリンタが登場しており、カラーレンズにおいても顔料を含んだ着色剤の使用が可能になると考えられている。しかしながら、現実には、インクジェット方式で実際に塗布する技術が確立されていないために、顔料系の着色剤を用いたカラーレンズを市販できるところまで至っていない。
【0006】
そこで、本発明においては、実際に、インクジェット方式でレンズに着色することができる製造技術を提供することを目的としている。特に、プリンタに使用している吐出機構をそのまま、あるいはほとんどそのまま使用してカラーレンズを製造することができる製造方法を提供することを目的としている。さらに、耐光性の高い顔料系の着色剤を使用したカラーレンズを製造することが可能な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、プラスチックレンズ面を成形する成形面を有するレンズを成形するためのモールド型の成形面の側に、レンズ基材と一体で離型される膜を形成するための組成物を付着させる膜付着工程と、膜付着工程の後に、モールド型の成形面の側にインクジェット方式により顔料を含む着色剤を付着させる着色工程と、一対のモールド型を合わせてレンズ基材を形成する組成物を注入し、硬化させる重合工程と、モールド型から膜およびレンズ基材を一体で離型する離型工程とを有するプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【0008】
このようなレンズ基材と一体で離型される膜は、レンズ表面を保護し擦傷性を向上させたり、レンズの光学特性(反射防止等)を改善する機能など、それぞれの機能を付与するものであり、機能膜と呼ぶこともできる。
【0009】
また、レンズを成形するためのモールド型の成形面の側に、ハードコート膜などを付着してから、そのモールド型を組み立てて、熱硬化型モノマー等のレンズ基材の組成物(原料)を注入し硬化させる方法は、インモールド法とも呼ばれている。一対のモールド型を、成形面を内側として対向配置し、モールド型の側面全周へ粘着テープを巻き付けてキャビティを形成し、このキャビティの中へレンズ基材を形成する組成物を注入することにより、成形面で規定されたレンズ面を備えたプラスチックレンズを製造できる。
【0010】
本発明の製造方法においては、このインモールド法において、膜が形成された成形面の側、すなわち、組み合わせたときの膜のレンズ基材側にインクジェット方式で着色剤を付着させる。さらに、膜のレンズ基材側に付された着色剤は、その膜のレンズ基材側に塗布される膜あるいはレンズ基材との間に挟まれた状態になり、膜と膜あるいは膜とレンズ基材とにより保持される。
【0011】
したがって、本発明の製造方法においては、インクジェット方式で吐出する着色剤としては、染料または顔料をレンズ表面に付着させる機能を有している展色剤を含んでいることは要求されず、インクジェットプリンタにおいて用紙に吐出するインクと同じ成分の着色剤であっても、それを使用してレンズに色を付けることができる。
【0012】
さらに、レンズ基材を硬化する重合工程において、他の膜も同時に硬化されるので、膜と膜、あるいは膜とレンズ基材との間に挟みこまれた着色剤は、染料系でも、顔料系でもレンズと確実に一体となって保持され、所望の色あるいは模様にカラーリングされたレンズを製造できる。また、インクジェット方式で着色剤を塗布した後に、着色剤を硬化するためだけの染着アニール工程も省略できる。
【0013】
さらに、レンズに色を施す作業は、モールド型を保持して実行できる。このため、着色剤を塗布する対象となる膜の表面の状態は、染料系あるいは顔料系といった着色剤を付着させることを中心に選択でき、ハンドリングに適しているか否かを条件とする必要がない。したがって、着色する際の膜が未硬化であることが望ましければ、膜を塗布したままの状態で染色することが可能であり、半硬化した状態が望ましければ、塗布した後に熱を加えて半硬化することが可能である。さらに、硬化した状態が好ましければ、塗布し完全に硬化させた後に、着色剤を塗布することも可能である。特に、本発明の製造方法であれば、被染色膜(機能膜またはレンズ基材)が、半硬化である程度、粘性がある状態で着色剤を塗布できるので、浸透性のない顔料系の着色剤を用いて確実にレンズを着色できる。
【0014】
したがって、本発明の製造方法においては、実際に、プリンタなどの他の用途で信頼性が確立されたインクジェットの技術を用いてカラーレンズを製造することが可能となる。また、膜の素材やレンズの素材によらず、所望の色を塗布できるので、多種多様なレンズ基材のプラスチックレンズに対して精度良く、着色することが可能となる。難染色性といわれるプラスチック基材の1つは、分子内に1つ以上のジスルフィド結合を有する(チオ)エポキシ化合物を重合して得られる透明樹脂あって、屈折率が1.72以上の高屈折率を有するものであるが、本発明の製造方法により確実に、どのような色にも、また、階調表現された模様にでも着色することが可能となる。レンズ基材の組成は、これに限定されず、必要により、(チオ)エポキシ化合物、チオール化合物、メルカプト有機酸類等の改質剤、および3級アミン、ホスフィン類、ルイス酸、ラジカル重合触媒、カチオン重合触媒等の硬化触媒を含む重合性組成物を含むものであっても良い。さらに、本発明の製造方法により着色可能な難染色性のプラスチックレンズは上記に限らない。例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)、(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリチオウレタン等を挙げることができる。
【0015】
本発明の着色プラスチックレンズの製造方法は、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、調光用レンズ、サングラス、カメラレンズ、望遠鏡レンズ、拡大鏡レンズ、プロジェクターレンズ、ピックアップレンズ、マイクロレンズ等の各種光学レンズ、その他の光学素子、例えば、プリズムなどにも適用できる。
【0016】
また、本発明の製造方法においては、ガラス製、金属製さらにはプラスチック製のモールド型を使用できる。特に、眼鏡用のレンズを製造する場合には、度付きのプラスチックレンズは多種にわたるため、個々のレンズカーブを容易に成形できるガラス製のモールド型が好適である。特に、重合工程において、UV(紫外線)等を用いて光重合させる場合にガラス製など透明なモールド型が好適である。
【0017】
モールド型の内面の成形面に予め離型層を形成しておくことが好ましい。機能膜が施されたプラスチックレンズと、モールド型との離型性を良くするためである。
【0018】
インモールド法において、レンズ基材と一体で離型される膜の代表的なものは、ハードコート膜であるが、この膜のみならず、反射防止膜あるいはプライマー膜も含まれる。したがって、複数の膜を形成する複数の膜付着工程を有する製造方法では、着色工程を、最後の膜付着工程の後、または、いずれかの膜付着工程の間で行うことができる。本発明の製造方法では、膜と膜、または膜とレンズ基材との間に着色剤を保持すれば所望の色あるいは模様をレンズに付すことができるので、後の重合工程で形成されるレンズ基板と最上層の膜との間に着色剤を塗布すれば良い。したがって、着色のタイミングは、製造工程の条件、膜と着色剤、例えば顔料系の塗料とのマッチングなどを勘案してフレキシブルに設定できる。
【0019】
プラスチックレンズの表面に形成される膜(機能膜)として最も重要なものは、ハードコート膜である。そして、本発明においては、そのハードコート膜を顔料を含めた着色剤を担持する膜として利用してレンズにインクジェット方式で着色できる。
【0020】
さらに、プラスチックレンズの性能を向上させるために、複数の膜(機能膜)が設けられている。複数の膜(機能膜)としては、ハードコート膜に加えて、ハードコート膜とレンズ基材、または反射防止膜とレンズ基材との密着を図るプライマー膜、光の透過性を確保する反射防止膜がある。したがって、本発明に含まれる複数の膜付着工程は、ハードコート膜を形成するための組成物を付着させるハードコート膜付着工程、ハードコート膜付着工程の前に反射防止膜を形成するための組成物を付着させる反射防止膜付着工程、および、ハードコート膜付着工程の後にプライマー膜を形成するための組成物を付着させるプライマー膜付着工程の少なくともいずれか2つの工程を含むものである。
【0021】
また、反射防止膜は、有機系の組成物をモールド型のレンズ成形面の側に塗布することにより形成できる。したがって、従来の真空蒸着法による反射防止膜の成膜工程を省き、モールド型を用いて一括で形成できるので、この点でも、製造コストや製造リードタイム面において有利である。ハードコート膜まで本発明の製造方法で製造し、蒸着により反射防止膜を形成することも可能であり、本発明に含まれる。
【0022】
本発明の製造方法において用いられる、反射防止膜用組成物、ハードコート膜用組成物、およびプライマー膜用組成物は、インモールド法に適しており、それぞれの膜としての機能を発揮できる組成物であれば良い。各々の膜をモールド型のレンズ成形面の側に塗布する方法としては、スピンコート法、インクジェット法、スプレーコート法などを挙げることができる。浸漬法も採用可能であるが、モールド型の非使用面および外周側面に組成物が付着するので洗浄を必要とする場合がある。また、モールド型の不要な部分に付着した組成物が、組み立てたときの密閉性の低下の要因となり、レンズ基材の組成物(液状硬化性化合物)が漏れだす可能性がある。
【0023】
本発明の製造方法において、着色工程では、顔料を含む着色剤を付着させることができる。すなわち、顔料インクを用いて印刷できるプリンタが市販されているが、その技術をそのまま使用して、顔料を含む着色剤によりカラーレンズを製造することが可能となり、耐光性の高いカラーレンズを提供できる。また、プリンタに用いられているヘッドを利用して、あらゆる色彩を眼鏡レンズに着色できる。グラデーション染色や、一方の側の色彩から他方の側の色彩に順次色が変化するツイン染色等も容易になる。コンピュータに、色調に関するデータベースを構築し、それに基づき所望の濃度および色調を備えた眼鏡レンズを製造することが可能となる。
【0024】
顔料は染料と異なり、水に溶解しないため、水性の着色剤として顔料系のものを使用する場合には、樹脂等の分散剤を顔料の表面に吸着させ、水系媒体に顔料粒子として分散させて使用することになる。顔料を水系媒体に分散させて顔料分散液を調製し、各膜に付着させる。この水系媒体としては、主に水が用いられるが、有機溶媒、粘度調整剤、pH調整剤、界面活性剤などを配合し、塗布性を調製することができる。
【0025】
浸漬法では、様々なカラーバリエーションに対応するために、多色の染色槽を必要としたため、広い設置面積、電力エネルギー、および煩雑な管理を必要とした。これに対し、本発明の製造方法において、着色工程でインクジェット方式を用いて、色調をコンピュータ管理することにより、プリンタの技術を用いて、一台のプリンタ程度のスペースで、様々なカラーバリエーションを備えた眼鏡レンズを製造できる。
【0026】
本発明に使用できるインクジェット方式とは、10〜100μm径の微小なノズル開口部と圧力発生素子とが設けられた圧力室にインクが充填され、圧力発生素子を電子的に制御することによって圧力室内のインクを加圧し、その圧力で、ノズル開口部からインクを微小な液滴として吐出するものである。圧力発生素子の種類により、ピエゾ素子による圧電振動子を用いたピエゾ方式や、発熱素子を用い、インクを加熱して気泡を発生させ、その圧力を利用するバブルジェット(登録商標)方式など、種々の方式がある。本発明では、いずれの方式も用いることができる。
【0027】
インクジェット方式で顔料を塗布する場合には、微小ノズルでの乾燥、増粘による目詰まりを抑制するため、例えば、顔料の固形分を1〜30重量%、水分を0.5〜90重量%の範囲とすることが好ましい。また、沸点が200℃以上の高沸点の水溶性有機溶媒を目詰まり防止の液状湿潤剤として配合することができる。水溶性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜10の2価〜5価のアルコール類、ホルムアミド類、イミダゾリジノン類、ピロリドン、アミノ類等の含窒素炭化水素溶媒、あるいは含硫黄炭化水素溶媒の1種を単独でまたは2種以上を混合して添加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下では本発明の実施例を幾つか説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL1を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図2に、インモールド法により製造される途上のレンズL1の構成をモールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。一対のモールド型50は、レンズ面を成形するための成形面を内側(内面)として対向配置し、それら一対のモールド型50の側面全周へ粘着テープ52を巻き付けてキャビティを形成し、このキャビティの中へレンズ基材35を形成する組成物を注入することによりプラスチックレンズを形成できる。したがって、モールド型50のレンズ成形面51の側(レンズ成形面側)は、モールド型50のレンズ基材35の側となる。
【0030】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、カチオン性界面活性剤からなる離型剤58をスピンコート法で塗布した。本実施例および以下の実施例において、離型剤58は、花王(株)製 コータミン60W(塩化セチルトリメチルアンモニウム水溶液)を、IPA(イソピルアルコール)溶媒で1000ppmに希釈したものを用いた。
【0031】
なお、プラスチックレンズを製造するためのモールド型50は、上型と下型との組み合わせで構成されるが、以降においてはこれらを含めてモールド型50として示してある。
【0032】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、反射防止膜用組成物(AR塗布液)をスピンコート法で塗布し、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0033】
なお、この工程における反射防止膜32の「形成」とは、反射防止膜用組成物をモールド型50のレンズ成形面側に塗布し付着させた状態を示し、完全に硬化した状態まで処理を行うことを意味していない。以下の実施例においても同様である。すなわち、本発明の製造方法では、モールド型50の内面に膜を付着させてからレンズ基材の形成を行うので、膜が付着した状態のモールド型50をワークとしてハンドリングすることが可能であり、膜が完全に硬化する前に次の工程に進めることができる。したがって、この工程においては、反射防止膜用組成物をモールド型50の内面に塗布したままの状態あるいは短時間、熱を加えて半硬化した状態で、次の工程に進むことができる。
【0034】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、シリコン系(シラン有機化合物)のハードコート膜用組成物(HC塗布液)をスピンコート法で塗布し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。この工程におけるハードコート膜33の「形成」も、ステップ12における膜の「形成」と同様の意味である。以下の実施例においても同様である。
【0035】
このハードコート膜用組成物(HC塗布液)は、次のように調製した。以下の実施例においても同様である。まず、ブチルセロソルブ68g、メタノール139g、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61gを混合した。この混合液に0.1規定塩酸水溶液17gを攪拌しながら滴下した。さらに3時間攪拌後、一昼夜熟成させた。この液にメタノール分散SiO2微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、商品名「オスカル1132」固形分濃度30%)181g、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製、商品名「デナコールEX−421」)26g、過塩素酸マグネシウム3g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)0.15g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.05g、フェノール系酸化防止剤(川口化学工業(株)製、商品名「アンテージクリスタル」)0.6g、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャルティケミカルズ(株)製、商品名「TINUVIN213」)3.7gを添加し、4時間撹拌後、一昼夜熟成させてHC塗布液とした。
【0036】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32およびハードコート膜33が形成されたそれぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、ポリウレタン系プライマー膜用組成物(PL塗布液)をスピンコート法で塗布し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。この工程におけるプライマー膜34の「形成」も、ステップ12における膜の「形成」と同様の意味である。以下の実施例においても同様である。
【0037】
プライマー膜用組成物(PL塗布液)は、次のように調製した。以下の実施例においても同様である。まず、市販の水性エマルジョンポリウレタン「ネオステッカー700」(日華化学(株)製、固形分濃度37%、アクリル変性ポリウレタン)126g、メタノール258g、水74g、ブチルセロソルブ37gを混合する。さらに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.1gを加え3時間攪拌した。
【0038】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とが形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、プリンタの顔料インクとして市販されている、顔料40を分散させた顔料分散液(着色剤)を市販のプリンタのインクジェットヘッドを用いて塗布し、自然乾燥した。
【0039】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図2に示すように、それぞれの成形面51に、反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、2枚のモールド型50を、成形面51の間に所定間隔が開くように位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定し、レンズ基材35を形成するための成形型(キャビティ)を組み立てた。
【0040】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、チオウレタン系のレンズモノマー(樹脂液)を注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化することによりプラスチックレンズを製造した。この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、さらに、顔料40により着色されたレンズL1が製造された。
【0041】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL1を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたプラスチックレンズL1が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL1が製造された。このレンズL1の外観は色ムラがなく良好であった。
【0042】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL1について、キセノンランプ式フェードメーターで、200時間曝露し、長期使用に対する耐光性試験を行った。
【0043】
曝露後のレンズの色抜け(耐光性)を、CIE表色法のY値差(ΔY値)が5未満のものを「A」、5以上10未満のものを「B」、10以上のものを「C」とし、「A」を良品、「B」および「C」を不良品として評価した。以下の実施例においても同様である。また、本実施例の着色プラスチックレンズL1の耐光性評価は「A」であった。
【0044】
(実施例2)
図3に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL2を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図4に、インモールド法により製造される途上のレンズL2の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0045】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様に離型剤58を塗布した。
【0046】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0047】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。
【0048】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32とハードコート膜33とが形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散した顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液(着色剤)を塗布した。
【0049】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32およびハードコート膜33を形成し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した後に、プライマー膜用組成物(PL塗布液)を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、プライマー膜34を形成した。
【0050】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図4に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32と、ハードコート膜33とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにプライマー膜34が形成された、2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、ハードコート膜33とプライマー膜34の間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0051】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化することによりプラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL2が製造される。
【0052】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL2を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたレンズL2が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL2が製造された。このレンズL2の外観は色ムラがなく良好であった。
【0053】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL2について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL2の耐光性評価は「A」であった。
【0054】
(実施例3)
図5に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL3を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図6に、インモールド法により製造される途中のレンズL3の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0055】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0056】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0057】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32が形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、反射防止膜32の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散した顔料分散液を塗布した。
【0058】
(ハードコート膜の形成)
次に、反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散した顔料分散液を塗布した後に、ハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0059】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにハードコート膜33が形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。
【0060】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図6に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにハードコート膜33およびプライマー膜34が形成された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32とハードコート膜33との間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0061】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化することによりプラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたプラスチックレンズL3が製造される。
【0062】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、モールド型50を分解し、モールド型50とレンズL3を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたプラスチックレンズL3が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL3が製造された。このレンズL3の外観は色ムラがなく良好であった。
【0063】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL3について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL3の耐光性評価は「A」であった。
【0064】
(実施例4)
図7に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL4を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図8に、インモールド法により製造される途上のレンズL4の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0065】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0066】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0067】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。
【0068】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32とハードコート膜33とが形成された2枚のガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0069】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図8に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32と、ハードコート膜33とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、2枚のモールド型50を所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、プライマー膜が形成されておらず、ハードコート膜33のレンズ成形面側に染料が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0070】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型へ、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化させることによりプラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL4が製造される。
【0071】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、モールド型50を分解し、モールド型50とレンズL4を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、ハードコート膜33および反射防止膜32を備えたプラスチックレンズL4が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL4が製造された。このレンズL4の外観は色ムラがなく良好であった。
【0072】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL4について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL4の耐光性評価は「A」であった。
【0073】
(実施例5)
図9に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL5を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図10に、インモールド法により製造される途上のレンズL5の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0074】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0075】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0076】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32が形成された、それぞれのガラス製のモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、反射防止膜32の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0077】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、反射防止膜32が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した後に、ハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0078】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図10に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにハードコート膜33が形成された2枚のモールド型50を、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することにより成形型を組み立てた。この成形型は、プライマー膜が形成されておらず、反射防止膜32とハードコート膜33との間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0079】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化し、プラスチックレンズを製造した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、ハードコート膜33とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL5が製造される。
【0080】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL5を離型した。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面にハードコート膜33および反射防止膜32を備えたレンズL5が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL5が製造された。このレンズL5の外観は色ムラがなく良好であった。
【0081】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL5について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL5の耐光性評価は「A」であった。
【0082】
(実施例6)
図11に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL6を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図12に、インモールド法により製造される途上のレンズL6の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0083】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0084】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0085】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32が形成された2枚のモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33のレンズ基材側ではなく、反射防止膜32のレンズ基材側にプライマー膜組成物を塗布する以外は、実施例1と同様にプライマー膜34を形成した。
【0086】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20では、反射防止膜32およびプライマー膜34が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。
【0087】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図12に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32と、プライマー膜34とが形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、ハードコート膜が形成されていない以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0088】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化し、プラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備え、顔料40により着色されたレンズL6が製造される。
【0089】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL6を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34および反射防止膜32を備えたレンズL6が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL6が製造された。このレンズL6の外観は色ムラがなく良好であった。
【0090】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL6について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL6の耐光性評価は「A」であった。
【0091】
(実施例7)
図13に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL7を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図14に、インモールド法により製造される途上のレンズL7の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0092】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様に離型剤58を塗布した。
【0093】
(反射防止膜の形成)
次に、ステップ12において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約100nmの反射防止膜32を形成した。
【0094】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、反射防止膜32が形成されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、反射防止膜32の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0095】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33の内面に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した反射防止膜32の内面に、プライマー膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、プライマー膜34を形成した。
【0096】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図14に示すように、それぞれの成形面51に反射防止膜32が形成され、顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにプライマー膜34が形成された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、ハードコート膜33がなく、反射防止膜32とプライマー膜34の間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0097】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化して、プラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着された反射防止膜32と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備えたレンズL7が製造される。
【0098】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL7を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34および反射防止膜32を備えたレンズL7が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL7が製造された。このレンズL7の外観は色ムラがなく良好であった。
【0099】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL7について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL7の耐光性評価は「A」であった。
【0100】
(実施例8)
図15に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL8を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図16に、インモールド法により製造される途中のレンズL8の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0101】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0102】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、離型剤58が塗布されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に塗布するのではなく、モールド型50の内面にハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0103】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、ハードコート膜33が形成されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。
【0104】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、ハードコート膜33およびプライマー膜34が形成されたそれぞれのモールド型50の成形面51に対し、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。
【0105】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図16に示すように、それぞれの成形面51にハードコート膜33およびプライマー膜34が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32がない以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0106】
(重合工程)
モールド型50により組み立てられた成形型に対し、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化してプラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着されたハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備えたレンズL8が製造される。
【0107】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL8を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34およびハードコート膜33を備えたレンズL8が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL8が製造された。このレンズL8の外観は色ムラがなく良好であった。
【0108】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL8について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL8の耐光性評価は「A」であった。
【0109】
(実施例9)
図17に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL9を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図18に、インモールド法により製造される途上のレンズL9の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0110】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0111】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に塗布するのではなく、モールド型50の内面にハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0112】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、ハードコート膜33が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0113】
(プライマー膜の形成)
次に、ステップ14において、ハードコート膜33が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約1μmのプライマー膜34を形成した。本例においては、ハードコート膜33の内面に直に塗布するのではなく、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した後に、プライマー膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、プライマー膜34を形成した。
【0114】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図18に示すように、それぞれの成形面51にハードコート膜33が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布され、さらにプライマー膜34が形成された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32がなく、ハードコート膜33とプライマー膜34の間に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0115】
(重合工程)
組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、重合を完結させ、レンズ基材35を熱硬化して、プラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着されたハードコート膜33と、プライマー膜34とは最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の各膜を備えたレンズL9が製造される。
【0116】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド50とレンズL9を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面に、プライマー膜34およびハードコート膜33を備えたレンズL9が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL9が製造された。このレンズL9の外観は色ムラがなく良好であった。
【0117】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL9について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL9の耐光性評価は「A」であった。
【0118】
(実施例10)
図19に、本発明の製造方法により、インモールド法を用いて着色プラスチックレンズL10を製造する過程をフローチャートで示してある。さらに、図20に、インモールド法により製造される途上のレンズL10の構成を、モールド型50を含めた状態で、断面図により示してある。
【0119】
(離型剤の塗布)
先ず、ステップ11において、予め洗浄した2枚のガラス製のモールド型50のそれぞれの内面(成形面)51に対し、実施例1と同様の方法で、離型剤58を塗布した。
【0120】
(ハードコート膜の形成)
次に、ステップ13において、離型剤58が塗布された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、膜厚約2μmのハードコート膜33を形成した。本例においては、反射防止膜32の内面に塗布するのではなく、モールド型50の内面51にハードコート膜用組成物を塗布する以外は、実施例1と同様の方法で、ハードコート膜33を形成した。
【0121】
(顔料分散液の塗布)
次に、ステップ20において、ハードコート膜33が形成された、それぞれのモールド型50の成形面51に対し、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布し、自然乾燥した。本例においては、プライマー膜34の内面ではなく、ハードコート膜33の内面に塗布する以外、実施例1と同様の方法で、顔料40を分散させた顔料分散液を塗布した。
【0122】
(モールド型の組み立て)
次に、ステップ15において、図20に示すように、それぞれの成形面51に、ハードコート膜33が形成され、さらに顔料40を分散させた顔料分散液が塗布された2枚のモールド型50を、実施例1と同様に、所定間隔に位置決めし、側面周囲をプラスチックフィルム製のテープ52で固定することで成形型を組み立てた。この成形型は、反射防止膜32およびプライマー膜34が無く、ハードコート膜33のレンズ基材側に顔料40が塗布されている以外は、実施例1の成形型と同じである。
【0123】
(重合工程)
組み立てられた成形型に、実施例1と同様に、チオウレタン系のレンズモノマーを注入し、30℃から120℃まで12時間かけて昇温し、120℃で2時間一定に保ち、レンズ基材を重合させてプラスチックレンズを形成した。本実施例においても、この重合工程において加えられる熱により、モールド型50のレンズ成形面側に付着されたハードコート膜33は最終的に熱硬化され、所望の硬度あるいは性能の膜を備えたレンズL10が製造される。
【0124】
(離型工程)
室温まで徐冷した後、ステップ17において、成形型を分解し、モールド型50とレンズL10を離型する。これにより、プラスチックレンズ基材35の側から両面にハードコート膜33を備えたレンズL10が一体で離型され、顔料40により着色された着色レンズL10が製造された。このレンズL10の外観は色ムラがなく良好であった。
【0125】
(耐光性試験)
上記で説明したステップ11〜17を経て得られた着色プラスチックレンズL10について、実施例1と同様に、耐光性試験を行った。本実施例の着色プラスチックレンズL10の耐光性評価は「A」であった。
【0126】
図21に、実施例1〜10で製造した着色レンズL1〜L10の耐光性および外観の評価結果を纏めて示してある。レンズL1〜L10の評価結果は、耐光性および外観とも全て良好であった。本発明の製造方法により、顔料系の着色剤をインクジェット方式により反射防止膜、ハードコート膜またはプライマー膜のレンズ基材側に塗布できるので、これらの膜をレンズ基材と一体で離型したときに、顔料もそれらと一体となってレンズに取り込まれた状態で離型される。したがって、顔料系の着色剤により簡単にカラーレンズを製造することができ、外観も良く、また、耐光性も高いカラーレンズを製造できる。
【0127】
また、本発明の製造方法においては、モールド内に顔料を塗布するので、プラスチックレンズを製造する途上でプラスチックレンズの着色に用いられない顔料はほとんどなく、全量をプラスチックレンズの着色に確実に使用することができる。したがって、モールド内に塗布する顔料の量により色調を完全に制御できる。このため、ユーザの希望通りの色調のレンズを提供できると共に、色抜けや色ムラがなく、さらに耐光性の良い着色レンズを提供できる。
【0128】
さらに、プリンタ用のインクとして市販されている顔料系の着色剤を、市販のインクジェットプリンタで塗布できるので、経済的であり、また、実際に顔料系の着色剤を用いて着色されたカラーレンズを大量生産することが可能となる。さらに、本発明の製造方法においては、プリンタ用のインクとして市販されているインク、特に、顔料インクを、プリンタのインクジェットヘッドを用いて塗布することにより、カラーレンズを製造することができる。このため、インクジェットヘッドをコンピュータと連動させてレンズに染色を施すことが可能となり、プリンタにより紙に印刷するのと同様の感覚で、様々なカラーバリエーションのレンズを製造することが可能となる。
【0129】
なお、上記の実施例に示した反射防止膜、ハードコート膜、プライマー膜などの組成および膜厚は一例にすぎず、本発明はそれらの組成に限定されるものではない。例えば、反射防止膜32は、レンズの表面反射によるゴーストやちらつきを低減するために形成するが、その膜厚は、所望の反射防止特性を確保するために、50〜150nm、好ましくは、70〜130nmである。
【0130】
ハードコート膜33は、プラスチックレンズ表面の耐摩耗性を向上させるために形成するが、その膜厚は、0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmである。膜厚が0.5μmを下回ると、ハードコート膜としての効果が得られにくい。また、10μmを上回ると、外観を確保することが困難になる。また、ハードコート膜の組成も上記で説明した粒径1〜100mμの無機微粒子と、有機ケイ素化合物と、多官能性エポキシ化合物と、硬化触媒とを主成分とした組成に限らない。例えば、多官能性エポキシ化合物を含有しないハードコード膜を有するプラスチックレンズであっても本発明の製造方法であれば、容易に染色できる。
【0131】
プライマー膜34は、プラスチックレンズ基材35とハードコート膜33との密着性向上、耐衝撃性向上等の機能を付与するためには、膜厚は、0.1〜5μm、さらには、0.5〜3μmであることが望ましい。膜厚が0.1μmを下回ると、耐衝撃性が得られにくい。また、3μmを上回ると、外観を確保することが困難になる。プライマー膜の組成は、水性化アクリル−ウレタン樹脂を主成分とする組成に限らず、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを主成分とするようなものであっても良い。
【0132】
本発明の製造方法において、モールド型のレンズ成形面側に反射防止膜等の各機能膜を塗布(形成)した後に、光や熱を与えて反射防止膜等の各機能膜の硬化作業を行うが、この際に、半硬化状態で、またはそれ以前の状態として次の工程に移行できることは上述したとおりであるが、ほぼ完全に硬化させても勿論良く、硬化温度や硬化時間は適宜調整すればよい。
【0133】
それぞれの機能膜に対しては、密着性や塗布性を向上させるために、表面処理を行うことが望ましい。具体例としては、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオンビーム照射処理や物理的に表面を研磨する方法等が挙げられる。
【0134】
モールド型50を所定間隔に位置決めして固定する粘着シートとしては、テープ52を使用した例を説明しているが、テープ52の基材となるシートは、プラスチックフィルム、金属箔、紙、布等から適宜選択すればよいが、耐薬品性、耐熱性、強度、コスト等の点から、プラスチックフィルムが好ましい。このフィルムの厚みは、ガラスモールドへの追従性を考慮すると2〜100μm程度が好ましい。
【0135】
また、各種のコーティング膜(機能膜)が施された着色プラスチックレンズをモールド型50から離型した後に、無機系の反射防止膜を形成したり、反射防止膜32の表面に、防汚膜や防曇膜等の他の機能膜をさらに形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】実施例1に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図2】実施例1に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図3】実施例2に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図4】実施例2に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図5】実施例3に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図6】実施例3に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図7】実施例4に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図8】実施例4に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図9】実施例5に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図10】実施例5に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図11】実施例6に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図12】実施例6に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図13】実施例7に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図14】実施例7に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図15】実施例8に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図16】実施例8に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図17】実施例9に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図18】実施例9に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図19】実施例10に係るレンズの製造工程を示すフローチャート。
【図20】実施例10に係るレンズの構成をモールド型を含めた状態で示す断面図。
【図21】実施例1〜10で製造した着色レンズL1〜L10の評価結果を示す図。
【符号の説明】
【0137】
11〜18 各製造工程、20 顔料の付着(塗布)工程
32 反射防止膜、33 ハードコート膜、34 プライマー膜、35 レンズ基材
50 モールド型、51 成形面(内面)
L1〜L10 着色プラスチックレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックレンズ面を成形する成形面を有するモールド型の前記成形面の側に、レンズ基材と一体で離型される膜を形成するための組成物を付着させる膜付着工程と、
前記膜付着工程の後に、前記モールド型の前記成形面の側にインクジェット方式により顔料を含む着色剤を付着させる着色工程と、
一対の前記モールド型を合わせて前記レンズ基材を形成する組成物を注入し、硬化させる重合工程と、
前記モールド型から前記膜および前記レンズ基材を一体で離型する離型工程とを有するプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、複数の前記膜を形成する複数の前記膜付着工程を有し、
前記着色工程を、最後の前記膜を形成する前記膜付着工程の後、または、いずれかの前記膜を形成する前記膜付着工程の間で行う、プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1において、前記膜は、ハードコート膜である、プラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項2において、前記複数の膜を形成する複数の膜付着工程は、ハードコート膜を形成するための組成物を付着させるハードコート膜付着工程、前記ハードコート膜付着工程の前に反射防止膜を形成するための組成物を付着させる反射防止膜付着工程、および、前記ハードコート膜付着工程の後にプライマー膜を形成するための組成物を付着させるプライマー膜付着工程の少なくともいずれか2つの工程を含む、プラスチックレンズの製造方法。
【請求項1】
プラスチックレンズ面を成形する成形面を有するモールド型の前記成形面の側に、レンズ基材と一体で離型される膜を形成するための組成物を付着させる膜付着工程と、
前記膜付着工程の後に、前記モールド型の前記成形面の側にインクジェット方式により顔料を含む着色剤を付着させる着色工程と、
一対の前記モールド型を合わせて前記レンズ基材を形成する組成物を注入し、硬化させる重合工程と、
前記モールド型から前記膜および前記レンズ基材を一体で離型する離型工程とを有するプラスチックレンズの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、複数の前記膜を形成する複数の前記膜付着工程を有し、
前記着色工程を、最後の前記膜を形成する前記膜付着工程の後、または、いずれかの前記膜を形成する前記膜付着工程の間で行う、プラスチックレンズの製造方法。
【請求項3】
請求項1において、前記膜は、ハードコート膜である、プラスチックレンズの製造方法。
【請求項4】
請求項2において、前記複数の膜を形成する複数の膜付着工程は、ハードコート膜を形成するための組成物を付着させるハードコート膜付着工程、前記ハードコート膜付着工程の前に反射防止膜を形成するための組成物を付着させる反射防止膜付着工程、および、前記ハードコート膜付着工程の後にプライマー膜を形成するための組成物を付着させるプライマー膜付着工程の少なくともいずれか2つの工程を含む、プラスチックレンズの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−264109(P2006−264109A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85705(P2005−85705)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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